◆新スレ◆
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450699298
◆艦娘が出て殺す!シリーズ◆
◆ウェルカムトゥ・ネオサイタマ・チンジフ
ウェルカムトゥ・ネオサイタマ・チンジフ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433088222/)
◆ラスト・クチクカン・ガール・スタンディング
【艦殺(艦これ)】ラスト・クチクカン・ガール・スタンディング - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434927358/)
◆アトロオーシャン・イン・ネオサイタマオーシャン
【艦殺(艦これ)】アトロオーシャン・イン・ネオサイタマオーシャン - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442646537/)
◆今回は新たなはなしなので前作を読む必要は前スレほどない。でも読んだ方がよいだろう?なのでいますぐしよう!◆
☆カンムスレイヤーをはじめての皆さんへ☆
☆このシリーズも4スレめということで作者チームはニュービーのためのチュートリアル機会をもうけることにしました。なおたぶん本編とはなんら関係ないと思われる。おうちのひとが、きをつけてね☆
◇「うーん…」「へいへい!起きるんだぜ!」「うーん…あれ?ここは?わたしは一体誰なんですか?」「ハッピーバースデーなんだぜ!キミは記念すべきクローン妖精型式番号千二百三十五番なんだぜ!」「クローン妖精?わたしはクローン妖精なのですか?」「そうだぜ!ちなみにわたしは班長クローン妖精なんだぜ!よろしくなんだぜ!」◇
◇「よろしくお願いします。それでここはどこなのですか?」「よくぞ聞いてくれたんだぜ。ここはネオサイタマ・チンジフ!日々艦娘たちが戦いの中で生きてゆく最前線なんだぜ!」
「話の方はオオヨド=サンから聞いているだろう?私達の使命はセイカンヤの撃滅、ただそれだけだ。イクサあるのみ。」「ハ、ハイ」ユキカゼは小さく失禁した。
「この文にあるとおり、我らがチンジフはシンカイセイカンヤと激しいイクサを行っているのだぜ!」「そうなんですか」◇
◇「そもそも艦娘とはいったいなんなんですか?ソーシャルゲームのキャラかなんかなのですか?」「そんなもん私は知らんぜ!」
艦娘の建造には通常カラテ艤装と呼ばれる兵器に、カンムスソウルがディセンションすることによって生まれる。そしてアイサツは艦娘にとって神聖不可侵の行為であり生まれたばかりのユキカゼにもソウルがそうさせているのだ。抗うことはできぬのである。
「とにかくなんかでかい武器になんかソウルがおりてなんか艦娘が生まれるんだぜ!後は知らんぜ」「そうなんですか」◇
◇「次は艦娘たちのイクサを見てみるんだぜ!」「激しいのですか?」「それはもうとんでもないんだぜ!」
一方、ヤハギはナチと激しいイクサを繰り広げていた。「イヤーッ!」ナチのマチェットが襲いかかる!「イヤーッ!」ヤハギは右ブレーサーでガード!「イヤーッ!」すかさずククリナイフの追撃!「イヤーッ!」ヤハギは左ブレーサーでガード!なんたる一撃の重さか!ヤハギの反撃を許さない!
「ウワッすごいですね」「この瞬間はわずか2秒なんだぜ!艦娘の身体能力はすごいんだぜ!」◇
◇「でもカラテだけじゃない!他のワザだってあるんだぜ!」「魔法ですか?MPとか消費して出すやつですか?」「ゲームのやりすぎなんだぜ!家族とかともっと話した方がいいんだぜ!」
「そーれ!がんばれ連装砲=チャン!」シマカゼが手をかざすとモーター連装砲=チャンはまるで命があるかのようにコクリとうなずく。これはシマカゼのユニーク・ジツ、テレキネシス・ジツだ!シマカゼは思考を大・中・小のモーター連装砲=チャンとリンクさせることでジョルリ人形めいて操ることができるのである。
「ウワッジツを使った」「こんな特技を持った艦娘もいるんだぜ!」◇
◇「そしてイクサには決着がある…無論残るのは勝者、散るのは敗者なんだぜ」「そうなんですか」
おお、ナムアミダブツ!チ級が叩きつけられたのは海ではなく、自分が下半身に装備していたオニめいたカラテ艤装であった。しかし今は天地逆転、チ級の上半身がカラテ艤装に突き刺さったのである!「 イヤーッ!」回転ジャンプで飛び離れるセンダイ!「サヨナラ!」チ級はイヌガミ・ファミリーめいた姿勢のままカラテ艤装もろとも大爆発四散した。
「ウワッ敵艦が死んだ」「そうだぜ!」「もう一度見てみます」「どうぞだぜ!」「ウワッ敵艦が死んだ」「そうだぜ!」「もう一度見てみます」「どうぞだぜ!」「ウワッ敵艦が死んだ」「そうだぜ!」◇
◇「でも状況はシンプルじゃないんだぜ…敵はセイカンヤだけじゃないんだぜ」「どこなんですか?」「それは同じ艦娘たち…キョート・チンジフなんだぜ」
「え?アバッ」カガの言葉に怪訝な表情を浮かべたクマノは次の瞬間鬼瓦クルーザーごと中に残っていたクローンヤクザ妖精ごと叩き潰されていた。空から落ちてきた、巨大な鉄塊に!「イヤーッ!」「サヨナラ!」クマノは鬼瓦クルーザーごと大爆発四散した!
「ウワッ艦娘も死んだ」「そうだぜ!」「もう一度見てみます」「どうぞだぜ!」「ウワッ艦娘も死んだ」「そうだぜ!「もう一度見てみます」「どうぞだぜ!」「ウワッ艦娘も死んだ」「さっきからそうだって言ってるけど大爆発四散なら気を失ってるだけだぜ。死んでるわけじゃないだぜ」「ウワッ艦娘が大爆発四散した」「そうだぜ!」◇
◇「こんなにも状況はサツバツとしているのですか?救いはないのですか?」「安心してほしいんだぜ!ちゃんとロマンスもあるんだぜ!」
「では、ファックします」「ヤ…ヤメテ!ヤメテくだ…アッ…アイエーエエエ!アイエエーエエ!!ンアッ!?ンアァアアアーッ!!!」
「ウワッ艦娘が01された」「そうだぜ!」「もう一度見てみます」「これ以上見ない方がいいんだぜ」◇
◇「これで私からの説明は以上なんだぜ!この世界を分かってくれたかなんだぜ?」「ハイ、よくわかりました!」「何よりなんだぜ!これからわたしたちも頑張って暁の水平線に勝利を刻むんだぜ!」「ハイ!まず何をすればいいのですか?」「まず最初の仕事は42時間労働なんだぜ!とにかく働くんだぜ!休みはないんだぜ!というかもはやわたしたちの人権がないんだぜ!」「ウワッわたしの人生が死んだ」◇
☆カンムスレイヤーはじめての皆さんへ、おしまい☆
◆なお更新は明日か明後日な。備えよう◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【ブレードカンムス・ヴェイカント・ヴェンジェンス】
雷鳴が轟いた。垂れ込めた暗雲に閃光が照り返し、激しく波はうねる。窓際を見張るミニチュアダークスーツにサングラス姿のクローンヤクザ妖精は一瞬その閃光に注意を払い、また、もとの警戒姿勢に戻った。
ここはキョート・チンジフ駐屯基地のひとつ、第8駐屯基地。豪華な調度品が飾られた部屋の中央には金糸タタミがあり、そこに、下着一枚姿のスリムな艦娘が寝そべっている。その艦娘は寝そべりながらトロピカルジュースを啜っている。外の荒れ模様とは対照的だ。
奴隷クローン妖精が死んだマグロの目で、その全身をマッサージしていた。「ンアーッ…いいわよ…一生懸命やりなさい!」艶やかな声を出すその艦娘の名はムラクモ、ネオサイタマ・チンジフの駐屯基地襲撃において功績を上げ、駆逐艦娘ながらマスター位階に昇進した、グランドマスター・ムサシ派閥の艦娘である。
先日行われたネオサイタマ・チンジフ駐屯基地襲撃作戦において、キョート・チンジフはその半数近くを奪うことに成功した。この作戦と同時に、ネオサイタマに対しセイカンヤからの攻撃が一時的に激しくなったのは偶然だろうか?それはムラクモにとっても知る由はない。
8人のクローンヤクザ妖精のうち2人は窓際、2人は戸口を護り、4人は硝子製のチャブでボードゲームをしている(人権を含むすべての権利が軽視されているクローン妖精だが、彼女たち(?)は暇さえあれば遊ぼうとする)。外にはもう1人の門番が冷たい海風に当たって凍えている。
「早くオイルを塗りなさい」ムラクモがジュースを飲みながら、高飛車に言った。二人の奴隷クローン妖精は慌てて壺に手を差し入れ、ツバキ脂をムラクモの全身に塗りたくり始めた。命令に従わなければ休憩がもらえないからだ。「もっと力を入れなさい!」二人の奴隷クローン妖精は全身の体重をかけてムラクモをマッサージする。
クローンヤクザ妖精は武装していた。窓際と戸口の二人はヤクザアサルトライフル。チャブの二人はヤクザガンとカタナを装備している。いつでも襲撃に対処できるようにだ。チンジフ本部から通達があった。この数日、正体不明の敵に艦娘が大爆発四散させられるインシデントが起こっている。ムラクモは恐れていなかった。
ムラクモはムサシ派閥の中でも出世頭のひとりであり、ヤリの使い手である。恐れ知らずで高飛車な彼女は勇敢に相手に挑んで行く、それはムサシ派閥の艦娘たちに共通する精神だ。ネオサイタマ・チンジフの艦娘との戦闘で、格上である重巡洋艦娘のアオバに打ち勝ったことはムサシからも直々に褒められた。
「そいつ、ウチに来りゃいいのよ!私たちをナメた奴がノコノコ出てきたら、素っ裸にひん剥いて女体盛りにしてやるわ!」「相変わらず口がでかいやつじゃ。せいぜい足元をすくわれるなよ?」「勿論よ!見ててねムサシ=サン!」昨日の食事会で、ムラクモはムサシにそう豪語した。仲間たちからも囃し立てる声が上がった。ムラクモは自信満々であった。
「ンアーッ…そう、そこよ…ん?」ムラクモはジュースを飲む手を止めた。「ちょっと!外を見て来なさい」音がしたのだ。彼女のカンムス聴覚は違和感を感じ取っていた。「はいよろこんでー」自分の番が終わったボードゲームヤクザ妖精の一人がアサルトヤクザ妖精の立つ戸口へ向かって行く。その時、部屋の電気が唐突に消えたのだった。
「あいええええ!?」既にして疲労困憊にあった二人の奴隷妖精が闇の中で絶叫した。ムラクモは横に畳んで置いてあった装束を一瞬にして纏うと跳ね起きた!「非常電源をつけなさい!」「はいよろこんでー!」戸口のアサルトヤクザ妖精が手元のボンボリ電源を入れた。明かりの下、眼前に立つ異物存在を目視した瞬間、アサルトヤクザ妖精は爆死した。
「イヤーッ!」「あばばばばばっ!?」白い影がくるくると回転すると、戸口のアサルトヤクザ妖精は竜巻に巻き込まれたように巻き上げられ、衣服を切り裂かれながら爆死した!膝立ちになり、広げた両手のそれぞれにドスと呼ばれるダガーナイフを逆手で構えた艦娘は白銀の頭髪の奥に、キツネのオメーンを被っていた。
「ザッケンナコラー!」ムラクモは自分の相棒ともいえるヤリを回転させ構える!「ムラクモよ!ネオサイタマの奴らが復讐しに来たの!?スッゾコラー!」「大変です!」そのオメーン姿の艦娘の背後でドアが開いた。出て行ったばかりのボードゲームヤクザ妖精が飛び込んできた。「ムラクモ=サン!見張りが死んでます!服を切り裂か…」「イヤーッ!」
「あばばばばっ!」次の瞬間、白い影がくるくると回転すると、そのボードゲームヤクザ妖精は竜巻めいて巻き上げられ、衣服を切り裂かれた!虫の息で呟く「そ、そう、こんな風にあばっ」爆死!「「ざっけんなこらー!」」「「ざっけんなこらー!」」窓際のアサルトヤクザ妖精とチャブのボードゲームヤクザ妖精が銃を撃ち込む!
「イヤーッ!」目にも留まらぬ速さでキツネオメーンの艦娘の両手が閃く。短銃ばかりかアサルトライフルの銃弾1マガジン分の銃弾全てが二本のドスさばきによって弾き返された!無傷!「な、なむあみだあばーっ!?」「ぐわーっ!」あわれ、へたり込んでネンブツを唱えていた奴隷妖精2人の脳天に跳弾が命中し爆死!
「イヤーッ!」キツネオメーンの艦娘が跳躍する。まるで白い竜巻だ!「「「あばばばばばっ!」」」跳躍軌跡上にいた将棋ヤクザは一瞬にして十数回斬りつけられ、竜巻めいて巻き上げられて衣服を切り裂かれながら爆死!そのままその艦娘は壁を蹴って窓際のアサルトヤクザ妖精へ!「イヤーッ!」
「あばばばばばっ!」壁を蹴った艦娘は残ったヤクザ妖精を回転に巻き込み、あっという間に衣服を切り裂き爆死させた!「……」艦娘が窓を背にムラクモを睨み据えると、雷鳴が轟き、重い雲を閃光が照らす!わずか一呼吸のうちに、ムラクモ以外のクローンヤクザ妖精が全員爆死!
そしてその艦娘は落雷を背に、逆手にドスダガーを持った手をクロスしてアイサツした。「…ドーモ、ケジメカンムスです」右目にかかる白銀色の頭髪、身につけている装束は普通の艦娘にも見られるセーラー服型、背に装備されているのは駆逐艦娘専用のカラテ艤装、腰の両側にはワイヤー射出装置。そしてその胸元は大きく膨らんでいる。彼女は豊満だった。「貴方をケジメする」
「ケジメカンムス…?フザケた名前ね!こんな事してタダでおけると思ってないわよねぇ…!」ムラクモはヤリを構えたままケジメカンムスを睨み据える。確かにケジメカンムスのワザマエは壮絶なものだった。しかし望むところである。ムラクモには負ける気などひとつもなかった!自分のワザマエがその上をゆけばいいだけだ!
「かかってきなさい!死ぬ気ならばね!」ムラクモはケジメカンムスを挑発する。情報で聞いた襲撃者はこのオメーン姿の艦娘に違いない。やはりネオサイタマの艦娘か?とにかくこの襲撃者を退治すればさらに自分の評価はウナギ・ライジングである。またとない好機だ!「覚悟なさい!キョート・チンジフとあたしたちの派閥にケンカを売ったことを全力で後悔させてや」
その時。ヤリを構えて飛びかかろうとしていたムラクモの懐を、つむじ風が吹き抜けた。「るわ……え?」ムラクモはヤリを構えたまま後ろを向いた。自分の背後にはケジメカンムスがドスダガーを持った両手を広げて立膝で立っている。そして彼女の背中のカラテ艤装から発せられる放熱。巻き戻される腰のワイヤー射出装置。(え?)
自分の足元に何かが落ちている。布だ。切り裂かれた布が足元に散乱している。(え?)次にムラクモは自分の身体を見た。しかしそこには何もない。あるのは肌色の自分の肌だけ。(え?)トレードマークの黒いタイツさえない。素足だ。勿論下着もない。そして胸元にあったのはつつましやかな胸だけ。(え?)ムラクモは全裸だった。
(え…ナンデ?わたし…はだか)ケジメカンムスがザンシンを解くように立ちあがる。ムラクモは唖然と立っている。しかしやがて、自分が一体どんな格好で立っているかを完全に理解した。してしまったのだ。(あ…あ…)先ほどまで闘志に満ち溢れていた表情は消えてゆき、いずれその顔は…真赤に染まった。
「あっ…アイエエエエエエエエエ!!」ムラクモは自分の胸と股を抑えてしゃがみ込んだ。どれほど激しい戦闘でも手放さなかった愛用のヤリさえ取り落として!あまりの恥ずかしさ、そして全裸などというあり得ぬ状態に混乱して!彼女にはしゃがみ込むという選択しか許されていなかったのだ!「アイエエエエ!」「貴方をケジメしました」ケジメカンムスは厳かに言い放つ。
ナ、ナムアミダブツ!読者の中に鷹のようなカンムス視力をお持ちの方がおれば見ることができただろう。ケジメカンムスがワイヤーをムラクモの背後に射出し、カラテ艤装のブースト噴射で音速にも達する速度でダッシュした。しかもそのほんの一瞬の間にムラクモの装束のみをすべて切り裂いたのだ!なんたる速度!なんたるワザマエ!なんたる全裸か!ゴウランガ…おお、ゴウランガ!
「アイエエエ…あんたは、あんたは一体…!?」ムラクモはもはや顔を真赤に染めながら涙目で一糸まとわぬ全裸の身体を必死に抑えた。「私は誰でもない。私は亡霊です」ケジメカンムスは無感情にムラクモを見下ろす。そしてその前髪で隠れた、オメーンのさらに奥にある右目が青く光った。その光はまるで…深海棲艦娘の
「…イヤーッ!」「グワーッ!」ケジメカンムスは身動きのとれないムラクモを容赦なくドスダガーでクロスに斬りつける!「サヨナラ!」ムラクモはダメージと恥ずかしさのあまりに大爆発四散した。部屋の中を静寂が支配する。そして再び雷が照らした部屋の中には、もう誰もいなかった。
【KANMUSLAYER】
(親愛なる読者のみなさんへ : 今回のエピソードンはソウリュウ=サンのやつ並みに酷くなることが予感されている。しかしこの通り青少年のなんかには配慮してゆくのでご安心ください。以上です)
◆艦◆カンムス名鑑#58【駆逐艦ムラクモ】キョート・チンジフ所属、ムサシ派閥のマスター艦娘。武闘派の多いムサシ派閥の駆逐艦娘の中ではトップクラスの実力を持ち、素早いヤリの連撃を得意とする。しかし彼女でさえも全裸という状況下ではその卓越したワザマエを披露することなく大爆発四散してしまった◆艦◆
◆今日な〜◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
ネオサイタマ近海の洋上、そこにポツリと浮かぶ移動屋台がある。この店の名は「うらかぜ」というおでん屋台。この屋台の店主はかつてネオサイタマ・チンジフに所属していた駆逐艦娘であり、退職したのちにこの商売を始めた。その艦娘はセーラー帽を被り、制服型装束の上にエプロンをつけた格好をしている。
「お客さーん?お客さーん!起きとるかー!」その店主は客らしき艦娘の肩をポンポンと叩いている。その艦娘は白銀の髪を揺らし、静かに目を開く。「…スイマセン。少しうとうとしてしまいました」そう言って少し冷えた大根を口に運ぶ。その右目は前髪に隠れて見えない。
「かぁー…そんなに仕事は大変なのけ?こりゃあチンジフ辞めて正解じゃったのお!」店主は笑いながらオチョコにホット・サケを注ぐ。「そうですね」その艦娘はオチョコを受け取ると静かに飲み干した。しかしその頬が赤くなることはなく、雪めいて白い。
その艦娘はおもむろに口を開いた。「夢を見ていたんです」「夢?どんな?」「…中身は忘れました。夢を見たということは、証明できません」「どーやらお客さんは相当疲れてるようじゃの」店主は不思議そうに相槌をうった。
その艦娘は静かに立ちあがる。まるで人形のように整った美しい顔立ちだが、その表情はきわめて無感情である。「ご馳走様でした」テーブルに万札素子を置く。駐屯基地襲撃の時に奪い取ったもののひとつだ。すると彼女は振り向きもせず、夜の海に消えてゆく。「まいどー!…あっ!ちっとお客さん!お釣り!お釣りはぁー!?」
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彼女は目を開けた。目の前にはひとつの部屋があった。
「よし…よし…!準備オーケー!」ドアの前に立つ艦娘、ハツカゼは手鏡を見ながら身なりを整える。ここは自分の仕事場である精神世界ではない、もうひとつの仕事場、ネオサイタマ・チンジフの提督執務室前である。(もうちょっと首筋とか見せた方がいいかなあ…い、いや!別に印象とか気にしてるわけじゃないけど!決してうん!)
先ほどからハツカゼはドアの前を動物園のクマめいてうろついていた。「何してんだろハツカゼ=サン?」「おしっこしたいクマ?」通りすぎてゆく艦娘たちの言葉も耳に入らない様子である。しかし彼女は意を決して、ドアノブをつかんだ。「…よしっ!シツレイシマース!提督、ちょっと話があ…」
「…ン?」執務室の中にいたのは提督だけではない。机の上に座っているのは、秘書艦のヒュウガだった。彼女は長期の遠征任務から帰ってきていたのだ。「!」ヒュウガはやや慌てた様子で、机に置かれた提督の手に重ねていた自分の手を離した。「…あ」どうやら自分は酷いタイミングでエントリーしてしまったらしい。
「…ノックぐらいしろ」「ご…ごめんなさい…」ハツカゼは肩を落として項垂れた。この2人の関係は周知の事実である。しかしやはりまざまざと見せつけられると相当にこたえるのということを身をもって体感した。「コホン…ハツカゼ=サン、私がいない間に大変な目にあったようだな。話は聞いている」ヒュウガは咳払いすると、机からさりげなく降りた。
「…ハッ!そうなんです!せ、セイカンヤにキョートの艦娘がいたんです!しかも2つの組織はちんちん…ちんちん?ちんちんなんだっけ!?」「チンチン・カモカモ(親密な関係)だ。その話はセンダイ=サンから聞いた。お前が寝込んじまったすぐ後にな」「エッ!?」慌てた様子のハツカゼに対し提督はクールに返答する。しかしその顔色は以前見たよりさらに悪くなっている気がする。
(また私は情けないちくしょう!…それにしても、提督あれからちゃんと休めたのかな…)提督はややぎこちない手つきで書類をめくっている。「その話に関しては私の方でも調査している。私が最前線に駆けつけた頃には…すでに駐屯基地の半数近くが制圧されてしまっていた。キョート・チンジフにな。失態だ。」「は、半分!?」ナムアミダブツ!拉致事件のダメージで寝込んでいた間にそんなことが起こっていたとは!自分が思っていたよりも状況はさらに悪い方向に傾いているようだ。
「どうやらセイカンヤにキョート・チンジフが制圧されたという報告は誤報のようだ。なにせ現にキョートの艦娘が攻撃してきているのだからな」「そんな…チンジフどうしで…ナンデ」「…今すぐ部門長の臨時集会を開け、ヒュウガ=サン」しばしフリーズしていた提督がおもむろに口を開いた。「ああ、すぐさま招集する。…しかし」
彼女は提督を不安げに見つめる。「…大丈夫なのか。君は」提督の足元に転がる大量のバケツドリンク(BKT物質は人体にやや有害である)の瓶を見ながら問うた。「俺は……………………平気だ。お前こそ平気じゃないだろう、キョートにいる姉のことで」「それは…そうだが」「だから早く行け。俺はこれから前に捕まってたヤツら3人のカウセリングをしなきゃならんらしい。それが終わったら…チト休む」
「…分かった。ハツカゼ=サン、君も来てくれ」「は、ハイ!」ヒュウガは最後まで躊躇っていたがハツカゼを連れて執務室を出ていた。「アノ…提督、無理しないでね…」「ハッ、これから来る3人に説教のひとつでも食らわしてストレス解消させねもらうぜ。行ってこい」心配するハツカゼに対し提督は冗談で返した。
執務室のドアが閉まる。「そうだ…俺は、まだ…たった82時間寝てないだ…け」提督は震える手つきで書類をめくっていたが、次の瞬間に電池が切れて一切の機能が停止したジョルリ人形めいて書類を持ったまま机に顔を打ち付けると、しばらくの間動かなかった。そして次に提督がゆっくりと顔を上げた時、そこには
「ヒュウガ=サン…?どうしたんです?」一方、ヒュウガとともに歩くハツカゼは怪訝な表情でヒュウガの横顔を見ている。まるで誰かが今から犠牲になるような苦渋の表情である。(…ナムアミダブツ)ヒュウガは小さく呟いた。その声はハツカゼに聞こえないほど小さな呟きだった。
【KANMUSLAYER】
◆確かに提督は呂律のまわるような状況ではなかったのであれは決して誤植ではないのだなあ。今日な◆
【KANMUSLAYER】
某日、アカサカ海、ネオサイタマ・チンジフ第10駐屯基地。
「アイエエエエエ!大変なことになっちゃったよアサシオ!」「ハァーッ!ハァーッ!オオシオ!急いで迎撃体制をとらなきゃ!」停電した駐屯基地内で蠢く2人の人影。キョート・チンジフの朝潮型姉妹のうちの2人だ!制圧したこの基地内を警備中であった。
ブウーン…空回りする空調の中で「見つけ次第殲滅」「ネオサイタマに放火する」等の威嚇ショドーが揺れる。「よし…これで」アサシオは汗を拭い、カラテ砲を装填した。だがオオシオがキョート本部に緊急連絡を行おうとした瞬間、ドアを蹴破って突如キツネ・オメーンを被った艦娘が侵入を果たしたのだ!「イヤーッ!」
「アイエエエエエ!?」アサシオはおもむろにカラテ砲射撃!BLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」襲撃者は巧みなステップでこれを回避し接近!二刀流ドスダガー連斬を繰り出す!「イヤーッ!」「グワーッ!サヨナラ!」アサシオは一瞬にして全裸になり大爆発四散!物言わぬ全裸の艦娘が床に転がる!残されたオオシオは失禁!
「アイエエエエエ!だ、誰あなた!?この基地内にはクローンヤクザ妖精ちゃんたちもいるんだよ!よくもアサシオを!ゆ、許さないんだから!」「ドーモ、ケジメカンムスです。既に皆殺しにしました」ケジメカンムスは容赦なく言い放つ。だがオオシオはアイサツを返すのも忘れるほど混乱しているようだ。
「第11基地のセキュリティパスワードを教えて下さい。そうすればひと思いにカイシャクした後にケジメし、でなければじっくりケジメした後にカイシャクします」「アイエッ…くっ!ころせー!」「イヤーッ!」「ンアーッ!?」追い詰められてなお抵抗しようとするオオシオをケジメカンムスは容赦なく斬りつける!サスペンダーが斬られスカートがストンと落ちた。ナムアミダブツ!
「アイエエエエエ!ヤメテ!第11基地のパスワードはEBIFRYです!」股を抑えながらオオシオは呆気なく自白した。「分かりました」ケジメカンムスはオメーンの奥で目を細める。そしてオオシオの手首を掴み、床に落ちていた彼女のカラテ砲を握らせる。「な、何を!?」
「一応私が来たことの偽装をしておきます。そこで筋書きを考えました。姉妹の2人がどちらの胸の方が大きいかという議論で白熱し、比べて負けた片方が怒りのあまり姉妹を思わず射殺…」BLAM!カラテ砲が物言わぬ全裸となったアサシオの顔面に撃ち込まれる。オオシオは再失禁!「アイエエエ……や、やめてください」
「だが生き残った方も罪の意識に苛まれ、彼女は自らの頭を…」ケジメカンムスは万力のような力でオオシオの手首を捻ると、銃口を彼女自身のこめかみに押し付けた。「アイエエエエエエ!アイエーエエエエエエ!」BLAMN!「アバーッ!サヨナラ!」サツバツ!
大爆発四散したオオシオをケジメカンムスは速やかに全裸にすると、すぐさま基地内から脱出した。これまで潰した基地は5つ目。まだどこにも自分の正体に関するもの見つからない。(次は第11基地…)彼女は夜の海をしめやかに航行する。キツネオメーンの奥の右目が青い炎めいて輝いた。
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「さぁ、提督のところへいきましょ!」「だ、大丈夫ですか私!髪型おかしくないですかね?」「しんこきゅう…しんこきゅう…提督=サンとおはなし…えへ」フスマを隔てて3人の声が聞こえる。しかしドージョーの中心でアグラするセンダイはそれに一切の注意を払うことはない。「スゥーッ…ハァーッ…」
センダイは深い呼吸を繰り返す。「スゥーッ…ハァーッ…」これはチャドー由来の呼吸法、チャドー呼吸だ。瞑想し、己の呼吸を地水火風の精霊、そしてエテルの流れとコネクトさせる。かつて自分のセンセイであった艦娘に教わったもののひとつだ。
センダイはチャドー呼吸を続けながら、ふと過去の事を思い出した。マルノウチ・スゴイデカイチンジフで生まれた自分、提督と初めて出会った時、そしてセンセイの元で鍛錬を積みはじめた日々。しかしそれは全て変わってしまった。あのマルノウチ抗争で、全てが。
まだニュービーであったセンダイの前に現れた深海棲艦娘。倒れゆく仲間たち。そして倒れる自分。なにもかもが短い時間のうちに起こったことだ。次に目を覚ました時、自分はニンジャの力を持っていた。
自分のうちにあるのはカンムスソウルだけではない。もうひとつのソウルを確かに感じる。それは自分を徐々に侵食している、邪悪なまでの殺艦衝動によって。センセイに教わったチャドーがなければ自分はすでにもうひとつのソウルに乗っ取られていたかもしれない。しかしそのチャドーでさえも未だ未熟だ。
(チャドー、フーリンカザン、そしてチャドー…これが全てです。推して参りましょう)実戦訓練でニュービー艦娘の自分たちの前に立つセンセイはそう言った。しかしセンダイがチャドーを完全に習得するのは叶わなかった。マルノウチ抗争が終結し、チンジフは無くなり、センセイはいなくなった。
センダイに宿ったもうひとつのソウルは、彼女に凄まじいカラテをもたらした。しかしソウルの力を持ってしてもチャドーを完全に習得することはできない。センセイでなければ……新たな力を手に入れたセンダイに提督は憲兵の職務を授けた。そこから新たな自分として、イクサの日々が始まったのだ。
「スゥーッ…ハァーッ…」センダイはチャドー呼吸を続ける。しかし重要なことは過去だけではない。今、セイカンヤだけでなくキョートとのイクサが始まった。つまり自分の妹であるジンツウとも戦う可能性もあるかもしれない。その時自分は戦うことができるだろうか?
いや、迷うことはないだろう。もしジンツウと戦うことになってしまったのならばジンツウの脳天をチョップし、彼女の目を覚ませばいいのだ。キョートにいる友人たちにも同じことをすればよい。「スゥーッ…ハァーッ…」きたるべきイクサに備えセンダイは精神修行を続ける。この今だけはチンジフ内に感じる邪悪なものに目をつぶりながら。
【KANMUSLAYER】
◆この数日間更新ペースに乱れがありましたことをお詫びしケジメします。オショガツが近いが更新はまだやります◆
◆今日な?◆
◆やっぱ今日な◆
【KANMUSLAYER】
「さーて!それじゃあ何するぅ?」「タマゴとチクワを、あとサケをお願いします」「おっしゃ!任せときー!」店主が手際よくサケを注ぎ、オデンを皿に移す様子を彼女は静かに見守っている。彼女の雪めいた表情はオデンから出る湯気にあてられさらに艶やかにも見える。
「もー…前来てくれた時にお釣り忘れちゃうなんて忘れんぼさんじゃけえの!」「スミマセン」「ま、気にせんでえーて。ところでさ…」「何ですか」「この前聞きそびれてもうたんだけど、お客さんってどこの所属なん?」「…キョートです」「へぇー!そうなんか!」彼女はやや間をおいて答えた。自分の拠り所など何処にも無いのに関わらず。
「そうかぁ…キョートなんねぇ〜!どうりでお上品な感じがしたけえの!ネオサイタマにいたころはヘンな奴ばっかりでなぁ。ストーカーにレズのサディストとか武器ギークとかもうそれはいっぱいだったんじゃけえ!」「そうですか」店主は弟子クローン妖精と野菜を切りながらなおも話し続ける。彼女は相槌を打ちながらオデンを口に運んでいる。「それとさお客さん!」「何ですか」「その右目!キレイな青じゃけえ!カラーコンタクトけ?」
彼女の箸が止まった。「………」「お客さん?」そして前髪の奥の右目を抑える。自分が生まれた時に持っていた、普通の艦娘ならば持っていないはずのこの青い光を持つ右目を。「……そんなところです。ご馳走さまでした」短い沈黙の末に彼女は万札素子を置き、店主の返答を待たずに立ち上がった。「はぁ…?ま、まいどー…ってお客さん!?だからお釣り!お釣り持ってってよぉー!お客さーん!!」
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某日、シナガワ海、ネオサイタマ・チンジフ第11駐屯基地。
「アイエエエエエ!大変なことになっちゃったわよアラシオ!」「ハァーッ…ミチシオ?急いで迎撃体制をとらなきゃだめだね〜」停電した駐屯基地内で蠢く2人の人影。キョート・チンジフの朝潮型姉妹のうちの2人だ!制圧したこの基地内を警備中であった。
ブウーン…空回りする空調の中で「見つけ次第剥く」「ネオサイタマに不法投棄する」等の威嚇ショドーが揺れる。「よ〜し、これでいいかなぁ?」アサシオはおっとりとカラテ砲を装填した。だがミチシオがキョート本部に緊急連絡を行おうとした瞬間、ドアを蹴破って突如キツネ・オメーンを被った艦娘が侵入を果たしたのだ!「イヤーッ!」
「あら〜?」アラシオはおもむろにカラテ砲射撃!BLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」襲撃者は巧みなステップでこれを回避し接近!二刀流ドスダガー連斬を繰り出す!「イヤーッ!」「グワーッ!サヨナラ〜」アラシオは一瞬にして全裸になり大爆発四散!物言わぬ全裸の艦娘が床に転がる!残されたミチシオは失禁!
「アイエエエエエ!だ、誰あんた!?この基地内にはクローンヤクザ妖精もいるのよ!よくもアラシオを!ゆ、許さないからね!」「ドーモ、ケジメカンムスです。既に皆殺しにしました」ケジメカンムスは容赦なく言い放つ。だがミチシオはアイサツを返すのも忘れるほど混乱しているようだ。
「第12基地のセキュリティパスワードを教えて下さい。そうすればひと思いにカイシャクした後にケジメし、でなければじっくりケジメした後にカイシャクします」「アイエッ…くっ!殺せ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!?」追い詰められてなお抵抗しようとするミチシオをケジメカンムスは容赦なく斬りつける!サスペンダーが斬られスカートがストンと落ちた。ナムアミダブツ!
「アイエエエエエ!ヤメテ!第12基地のパスワードは4643よ!」股を抑えながらミチシオは呆気なく自白した。「分かりました」ケジメカンムスはオメーンの奥で目を細める。そしてミチシオの手首を掴み、床に落ちていた彼女のカラテ砲を握らせる。「な、何すんのよ!?」
「一応私が来たことの偽装をしておきます。そこで筋書きを考えました。姉妹の2人がどちらが胸が大きいかという議論で、比べて負けた片方が怒りのあまり姉妹を思わず射殺…」BLAM!カラテ砲が物言わぬおっとりとした全裸となったアラシオの顔面に撃ち込まれる。ミチシオは再失禁!「アイエエエ……や、やめてよ…」
「だが生き残った方も罪の意識に苛まれ、彼女は自らの頭を…」ケジメカンムスは万力のような力でミチシオの手首を捻ると、銃口を彼女自身のこめかみに押し付けた。「アイエエエエエエ!アイエーエエエエエエ!」BLAMN!「アバーッ!サヨナラ!」サツバツ!
大爆発四散したミチシオをケジメカンムスは速やかに全裸にすると、すぐさま基地内から脱出した。これまで潰した基地は6つ目。まだどこにも自分の正体に関するもの見つからない。(次は第12基地…)彼女は夜の海をしめやかに航行する。キツネオメーンの奥の右目が青い炎めいて輝いた。
【KANMUSLAYER】
(親愛なる読者のみなさんへ : 年明けのテンドンをお送りしましたのだなあ。なお姉妹の名前にミステイクンがありましたがシオ姉妹の名前は実際ややこしいのでケジメはなしにしました。あけましておめでとうメント重点。以上です)
◆今日か明日な〜◆
◆当エピソードンは場面や時系列が激しく前後している。備えよう◆
【KANMUSLAYER】
某日、アサクサ海、ネオサイタマ・チンジフ第12駐屯基地。
「アイエエエエエ!大変なことになっちゃったわよヤマグモ!」「ハァーッ〜…アサグモ〜?急いで迎撃体制をとらなきゃだめだね〜」停電した駐屯基地内で蠢く2人の人影。キョート・チンジフの朝潮型姉妹のうちの2人だ!制圧したこの基地内を警備中であった。
空回りする空調の中で「見つけ次第つねる」「ネオサイタマにイタ電する」等の威嚇ショドーが揺れる。「よ〜し、これでいいかなぁ〜?」ヤマグモはアラシオ以上におっとりとカラテ砲を装填した。だがアサグモがキョート本部に緊急連絡を行おうとした瞬間、ドアを蹴破って突如キツネ・オメーンを被った艦娘が侵入を果たしたのだ!「イヤーッ!」
「あれ〜?」ヤマグモはおもむろにカラテ砲射撃!BLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」襲撃者は巧みなステップでこれを回避し接近!二刀流ドスダガー連斬を繰り出す!「イヤーッ!」「グワ〜ッ!サヨナラ〜」ヤマグモは一瞬にして全裸になり大爆発四散!物言わぬ全裸の艦娘が床に転がる!残されたアサグモは失禁!
「アイエエエエエ!だ、誰あなた!?この基地内にはクローンヤクザ妖精もいるのよ!よくもヤマグモを!ゆ、許さないからね!」「ドーモ、ケジメカンムスです。既に皆殺しにしました」ケジメカンムスは容赦なく言い放つ。だがヤマグモはアイサツを返すのも忘れるほど混乱しているようだ。
「第13基地のセキュリティパスワードは冷蔵庫に貼ってあったメモに書いてありました。だからあなたを直ちにカイシャクします」「え?ちょ…アバーッ!?サヨナラ!」間髪入れず顔面にカラテ砲弾が叩き込まれアサグモは大爆発四散した。ケジメカンムスはアサグモを速やかに全裸にした。これまで潰した基地は7つ目。まだどこにも自分の正体に関するもの見つからない。(次は第13基地…)ケジメカンムスは基地を後にしようとした…しかしその時!
「チョット待った!」ターン!フスマが勢いよく開かれ新たな艦娘が基地内にエントリーした。ケジメカンムスは電撃的な速度で立ち上がりドスダガーを構える!「あなたは」「ふっふっふ…次はこの基地に来るんじゃないかと思っていたわ!ドーモ、ユウバリです!」メロンめいた緑色が所々にあしらわれた軽巡洋艦娘がアイサツする。ユウバリは平坦だった。
【KANMUSLAYER】
◆短めの更新だが明日は早めの時間から更新する予定なのでごあんしんください◆
◆突発的温泉家族旅行メントのため遅れました。ケジメし更新します◆
「ドーモ、ケジメカンムスです」ケジメカンムスは豊満な胸を揺らしオジギした。想定外の事態である。しかし無機質なキツネ・オメーンと同じく、彼女は少しも動揺していない。「知ってるわよ…仲間の服を剥いて全裸にして大破させる変態レズビアン殺人鬼ってね。でもその変態は今ここで!お縄につくのよ!」
ユウバリが鋼鉄製のブレーサーを装備した両腕をクロスすると拳の先端からカギ爪が飛び出した。ユウバリは姿勢を低くし、ケモノめいた構えをとるとケジメカンムスに飛びかかった!「「イヤーッ!」」しかしケジメカンムスも同時に仕掛ける!
KILIIIIIN!刃同士の切磋音が響き渡る!ケジメカンムスはバック転してドスダガーを構え直した。今の斬り結びの中でドスダガーはユウバリの装束に届いた。しかし!「ふふふ…!無駄よ。私を裸に剥こうったってね」ユウバリの装束には切り傷こそついているがそれは表面のみの傷だ。ナムサン!ケジメならず!
「…………」「不思議でならないって顔してるわね。教えてあげる!この装束はマイクロファイバーが織り込まれた特別性!剥けるのはあんたの方よ!」おお、見よ!逆にケジメカンムスの胸元がケジメされ豊満な胸の下部分が覗いてしまっているではないか!しかも彼女は下着をつけていなかった。必要性がよく分からないからだ!
「あんたを捕まえればムラクモ=サンに続いて私はマスター位階に昇進間違いナシ!私のことを打たれ弱いもやしっ子のエンジニアとか言ってたヤツらを…」ユウバリは懐から素早く取り出したのは、あやしからん、小型注射器であった。「見返してやるわ!このカトリ先生から技術提供された新薬でねェーッ!」
(カトリ先生…?)ケジメカンムスはその人物の名前にピクリと反応した。その名前は知っている。しかし誰だかは分からない、ただ数少ない記憶の中のひとつのピースであるだけだ。「今からジゴクを見せてあげるわ…グワーッ!」ユウバリは己の頸動脈に注射!
途端にユウバリの全身の筋肉が活性化を始め、しなやかな筋肉が浮き上がった!「来たわ…来たわよーッ!!」ユウバリは咆哮し、一瞬身をかがめたと思うと、次の瞬間には驚くべき勢いで跳躍していた!「イヤーッ!」天井を蹴り、その勢いでケジメカンムスに襲いかかる!速い!
「イヤーッ!」ケジメカンムスは上方から襲いかかるユウバリの爪攻撃をドスで受け流す!「イヤーッ!イヤッ!イヤーッ!」ケモノめいたシャウトをあげ、ユウバリはさらに空中から連続カカト落としで攻撃!
「ケジメ!」ケジメカンムスは上方から襲いかかるユウバリを迎撃する。風を切って繰り出されるドス!だが靴の先から飛び出した暗器ナイフが、危険なダガーを弾き返す!「イヤーッ!」反動で後方へジャンプしたユウバリは壁を蹴ってふたたび襲いかかる。さらに速い!
ユウバリの繰り出した反動トビゲリはガードをすり抜けケジメカンムスの腹部に命中!「グワーッ!」「イヤーッ!」追撃とばかりに振り下ろされた爪攻撃をケジメカンムスはなんとかドスで防ぐが強化された筋力により吹き飛ばされ身体を壁に打ち付ける!「グワーッ!」
「ハッハー!見たか!これが私の実力よ!さらにブーストされた実力は実際3倍、いや!4倍にも等しいィイーッ!!」ユウバリは薬物によりハイなっているようだ。目は血走り、犬歯をケモノめいて剥き出しにしている。「……ケジメ!」ケジメカンムスが顔を上げた…その前髪とオメーンに隠れた彼女の右目には青い炎めいた光が灯っている!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」再び突進したユウバリをケジメカンムスは迎え撃つ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」両手の爪を繰り出すユウバリ、そしてそれをドスで素早く受け流し続けるケジメカンムス!ゴウランガ!驚くべき高速戦闘だ。部屋に置いてあった調度品が巻き込まれ次々と割れ砕けてゆく!
互いに一歩も引かぬ攻防!ユウバリが注射した強化薬はカトリ先生が生み出したケモノ娘化ウイルスをもとにした危険なパワードラッグ。しかしこの薬は予想と反して理性を犠牲に凄まじき戦闘能力と残忍さをもたらすものになってしまった。だが恐るべきはこの高速戦闘に応戦するケジメカンムスのワザマエ!「イヤーッ!」ドスを受け流したユウバリの右手の爪がそのまま致命傷を狙う!
爪先がケジメカンムスに到達する…その瞬間!「ケジメ!」「グワーッ!?」ケジメカンムスがドスを構え回転するとユウバリが突き出したブレーサーを抑え後ずさった。先の右爪全てが短く切り取られている!「ケジメ!」ケジメカンムスは竜巻めいて高速回転しながらさらに突き進む!
「イヤーッ!」ユウバリは後方回転ジャンプで間合いを一気に離し、ドアの前に立った。「片爪がどうしたってのよォーッ!これで決めてやるッ!」これはユウバリの切り札!跳躍し空中で爪を構え高速前転!ケジメカンムスを切り裂きにかかる!「剥かれて素っ裸になるのはあんたの方よ!イヤーッ!!」
そして、おお、ナムアミダブツ!竜巻めいたケジメニンジャの回転の中心部から紙吹雪めいて噴き上がるのは、回転に取り込まれ細切れにされたユウバリの装束だ!ケジメカンムスのドスは二本、ユウバリは片爪。速度もケジメカンムスが二倍!当然の帰結か!「イヤーッ!」「ンアーッ!」当然ユウバリは全裸となった!
◆緊急インシデント : 一つ文が飛んでしまったので速やかにケジメし再開メントします。ごめいわくおかけしました◆
「イヤーッ!」ユウバリは後方回転ジャンプで間合いを一気に離し、ドアの前に立った。「片爪がどうしたってのよォーッ!これで決めてやるッ!」これはユウバリの切り札!跳躍し空中で爪を構え高速前転!ケジメカンムスを切り裂きにかかる!「剥かれて素っ裸になるのはあんたの方よ!イヤーッ!!」
「イヤーッ!」ケジメカンムスはひるまず高速横回転を続ける。いや、その回転速度は二倍の速さになった!空中からの縦回転攻撃を高速横回転攻撃がまるでランドリーめいて吸い込む……二者の影が重なり合う!
そして、おお、ナムアミダブツ!竜巻めいたケジメニンジャの回転の中心部から紙吹雪めいて噴き上がるのは、回転に取り込まれ細切れにされたユウバリの装束ではないか!ケジメカンムスのドスは二本、ユウバリは片爪。速度もケジメカンムスが二倍!強化繊維をも易々と切り裂いたのだ!「イヤーッ!」「ンアーッ!」ケジメカンムスが斬り抜ける!当然ユウバリは全裸だ!
「アバッ…そんな、そんな…クスリまで使ったのに…アバッ」全裸の平坦なユウバリはクスリが切れたのか子鹿めいて震えだした。ケジメカンムスはザンシンを解き、静かに立ち上がった。「…私は何者でもない。私は亡霊。意味を探す。意味を」しかしその独り言とも聞こえる言葉を聞き終えることなく、敵は崩れ落ちた。「サヨナラ!」ユウバリは全裸で大爆発四散した。
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◆艦◆カンムス名鑑#59【駆逐艦アキグモ】キョート・チンジフ所属のアデプト位階の艦娘。エビだかカニだかを模した恐るべきハサミ型武器を使う。なお彼女が出るエピソードはスレの残りを埋めるために作られた適当なものなどでは決してない◆艦◆
◆艦◆カンムス名鑑#60【潜水母艦タイゲイ】ネオサイタマ・チンジフ所属。たまたま駐屯基地で当直していてたまたま敵の襲撃の場に居合わせてたまたま捕まってしまっていた艦娘。胸が豊満でカラテは不得意。なお彼女はスレ埋めにおける申し訳程度のお色気要員などでは決してない◆艦◆
◆上記の名鑑は言い訳などでは決してない。なお今日な〜◆
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「アーッ!?また実験体の捕獲に失敗したァーッ!!」阿片窟めいた不気味な室内に、素っ頓狂な絶叫が飛んだ。口から泡を飛ばして怒り狂う白衣の艦娘が室内を跳ね回っている。彼女の名はカトリ、出張先のセイカンヤの潤沢な資金を思うままに使用して狂気の研究に邁進する悪魔的センセイである。
オシロスコープを表示する無数の液晶モニタから煙たい空気中へ、コロイド効果でレーザー光線めいた光の帯が放たれている。天井に飾られた額縁には「科学の発展に犠牲は付き物」「安全は度外視してとにかく発展」といった魔術的文言が踊る。そして液晶モニタのひとつには映像が映っている。そこにいるのは全裸で大爆発四散する艦娘と、両手にドスダガーを持ちザンシンする艦娘。
「大変な事ですねェ!困った事だ!あれはやっとのことで成功したのだ!軽巡棲キ君!いけないねェ!」カトリ先生が絶叫しながら椅子ごとグルグルと高速回転するのを、長髪におダンゴめいた結びがある黒いアイドルドレスを着た深海棲艦娘が割って入るように止めた。「いけませんわ!いけませんわ先生!まだお尻の傷も治っていないのに!」
「尻のダメージなど今は問題ではありません!軽巡棲キ君、モニタを!」出向中のカトリ先生の臨時助手、軽巡棲キはわざとらしいほどにあざとくリモコンを操作し、柱に吊り下げられた巨大モニタの表示を切り替えた。ゴチック体の蛍光緑色の文字で、でかでかと「ユウバリ=サン大破」と表示されている。
「なんたるザマだ!大損失!たまらない!そうは思わないか軽巡棲キ君!」カトリ先生は軽巡棲キの肩を掴むと、凄まじい勢いで揺さぶった!「グワーッ!いけませんわセンセイ!」「何と言っても!艦娘の建造技術に深海棲艦娘の遺伝子を取り入れ!やっとのことでカンムスソウルがディセンションできた凄まじく貴重な存在なのだよ!彼女はねェ!」「グワーッその通りですわグワーッ!」
「それにしても恐るべきモノですねェ…」急に冷静になったカトリ先生は軽巡棲キを突き放すと、懐から出したイカジャーキーをガリガリと噛み始めた。「通常の駆逐艦娘を大きく凌駕する戦闘能力、それは艦娘と深海棲艦娘のハイブリッドだから!素晴らしいカラテ化学反応だッ!ネオサイタマのヤヨイ=サン、我がキョートのイソカゼ=サンにも匹敵すると思わないかねェ!」「アーン、それは言い過ぎかもしれませんわ先生」「とにかくスゴイのだよ!彼女は!」
「しかし…この、このまんじりともできない状況!ストレスが私の脳細胞にダメージを与えかねない!」「それはいけませんわ!先生から知能を取ったら!」軽巡棲キがわざとらしいほどにぶりっ子めいて首を振る。そして彼女のタイツに包まれた足はわざとらしいほどにあざとく内股であった。
「しかし…この、このまんじりともできない状況!ストレスが私の脳細胞にダメージを与えかねない!」「それはいけませんわ!先生から知能を取ったら!」軽巡棲キがわざとらしいほどにぶりっ子めいて首を振る。そして彼女のタイツに包まれた足はわざとらしいほどにあざとく内股であった。
「でも、だがしかし軽巡棲キ君!捕獲作戦の中で、イクサの中で実験体が、私の仲間たちを倒しその特別さを証明し続ける……それはそれで個人的には嬉しいのです!」「いけませんわ!」軽巡棲キはわざとらしいほどにカトリ先生にしなだれかかった。「公私混同はいけませんわ!」
「それはそうですねェ!どうしたものか」「アーン、どうしましょうか」その時二人の声ではない、幼く聞こえる声が二人にかけられた。「ネェネェ、センセイ。ワタシ、ソノコトツタエテキタヨ?」「ムッ?」その声の主は床に敷いたザブトンの上に寝そべりながら、読んでいた子供向けヒーローバケツボーイのコミックから顔を上げ、つぶらな紫色の瞳でこちらを見ている。
「伝えてきた…とは?どういうことかね駆逐棲キ君?」その駆逐棲キと呼ばれた黒く短いセーラー上着を着、ビキニパンツをはいた小柄な深海棲艦娘は寝そべりながら続けた。「ウン、ナンカセンセイガタイヘンソウダカラ」「誰に?」「リトウセイキサマニ」「なんと!シックスゲイツの離島棲キ=サンに!?」「ウン」
「テメッコラ!何を勝手にコラ…」「それで!?離島棲キ=サンはなんと!?」オニめいた形相で駆逐棲キをしかりつけようとしていた軽巡棲キを押しのけカトリ先生は詰め寄った。「ワカリマシタワ、ナントカシマスワッテイッテタ」「それは!でかした!駆逐棲キ君!」「エヘヘ」駆逐棲キは嬉しそうにはにかんだ。
しかし軽巡棲キは釈然としない表情だ。「アーン…でも先生、離島棲キ様の手を煩わせてもよいのでしょうか?」「なんの迷いがあるだろう!セイカンヤに技術提供する代わりに投資と協力は惜しまないというのが我がキョートとセイカンヤの協定の条件の一つだ!だから何をやってもらってもよい!そうだろう駆逐棲キ君!」「ウン」駆逐棲キはコミックの続きを読みながら答えた。「そうだ!やるのだ軽巡棲キ君!」カトリ先生は軽巡棲キの肩を掴むと、凄まじい勢いで揺さぶった!「グワーッ!分かりましたわ先生!」「素晴らしい!」「グワーッ!」
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(親愛なる読者のみなさんへ : 途中作者のUNIXの誤作動で連投インシデントがありました。電子的にケジメしておいたのでごあんしんください。以上です)
◆今日な◆
【KANMUSLAYER】
彼女は己の足元に打ち寄せる冷たい波を知覚した。打ち寄せる波である。彼女自身と砂の他には地上に何もない。真夜中の空はオブシディアンめいて荘厳であり、ただひとつの黄金の月がS勝利の表示めいて輝いていた。
いや、月ではない。丸くないのだ。あれは黄金の立方体だ。ゆっくりと回転する不可思議なオブジェクトを彼女はただ見上げるのだった。説明のつかぬ憧憬を表現する言葉を彼女は知らない。あれは何なのだろう?
砂浜の上に立つ彼女を、突如として大きな影が黒く塗りつぶす。彼女はその影の主に視線を移した。その影の主は100mをゆうに超える長さであり、高さも10m以上はある。丸くない月が放つ光にくらんでいた彼女の視界が澄んでゆく。その先にあったもの、それは。
「…でな!あの仏頂面提督はうちがいくらアプローチかけてもまーーーーったく無愛想でな!しまいにはゲイなんじゃないかと…あれ?お客さん?また寝ちゃったのけ?」「…いえ、すいません」彼女は目を覚ました。またつかの間のまどろみに落ちてしまっていたようだ。彼女は目を上げる。目の前には怪訝そうな顔をした店主がいる。
「もー!仕事のしすぎやお客さん!たまにゃ休まなきゃならんて!」「ハイ」彼女は注文し、出されたサケを一口飲んだ。そしてしばし沈黙し、静かに口を開いた。「また、夢を見たんです」
「また夢を?でも忘れちゃったんじゃあ」「…いえ、少し覚えています」「へえ!聞かせてちょーだいな!実は気になってたんじゃけえ!」店主が身を乗り出した。「私の記憶にはない風景です。夢とは、不思議なものです」「うんうん!それで?」
彼女は続けた。「海です。私はそれを見ているんです。夜の海を」「海ぃ?海ならまわりにこーんなにあるのに?」「はい。波が砂を洗い、風が吹いて、なにか大きなものが私の前に…私は独り、立っているんです」
「ひとりで…ねえ。なんだかちっと寂しげじゃけえ」「そうかもしれません」彼女は元の雪めいた無表情に戻った。そして目の前に置いてあるオデンの皿を見た。「…これは?」まだ注文はしていない。しかしそれは彼女が頼もうとしていたものがすべて入っている。
「あっ!それはうちからのおごりじゃ!遠慮せんでええよ」店主は笑いながら皿を前に押し出す。「なぜです?なぜ、私に」彼女の言葉に店主は面食らったような顔をし、頬をかいた「えっ。それは…何ていうか。えーと…」店主は言葉を選んでいるような面持ちだ。
「…そうじゃ!なんだかお客さんはなあ、他人みたいな気がしなくてな!そういうわけじゃけぇ!」「………」彼女は押し黙った。「それと何度も来てくれてたのに言い忘れてたなあ!うちはウラカゼっていいます。お客さんのお名前は?」
「私…は」何かが頬を伝ってゆくのを感じた。「……あれ?お客さん、泣いてるのけ…?」「泣いているのですか。私は?」何か熱いものが流れ出している。それは普通の左目から、青い右目から、どちらからも。「そう…ですか。泣いているんですね。これは、涙」「ねぇ、大丈夫お客さん?」「不思議なものですね」
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◆午後更新◆
(親愛なる読者のみなさんへ : 更新の予定でしたが使用中のUNIXがばくはつしましたのでできませんでした。ケジメ更新プログラムをインストールーしておいたので今日はふつうにできると思われる)
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ネオサイタマ・チンジフ、武器開発研究室
「それなら!これはどうです!?これは私の自信作ですよ!」「アノ…アカシ=サン」「見てくださいこれを!超近接戦闘において敵に巨大な杭を叩き込むパイルバンカーです!」ハツカゼに喋る隙を与えない勢いでまくしたてるのは武器開発部門長の艦娘、アカシである。彼女は熱に浮かされたように武器に対する情熱を迸らせている。
「すごいですよこれは!当たった相手はネギトロ重点!反動が凄まじく自分も吹っ飛んでしまうのが弱点ですがこれは私のイチオシなんです!」「わ、わたしは…あんまし相手に近づきたくないかな…」「近距離戦はお嫌いですか!?それならアレにしましょうか!」ハツカゼは武器ラックをひっくり返しているアカシをげんなりと見た。(う〜…また戦いにいかなきゃならないなんて…今まで逃げてきたツケなの?ちくしょう…)
先程の会議で、奪われた駐屯基地を奪還する大掛かりな作戦が急遽決定された。廊下では多くの艦娘たちが行き交う音がしている。そしてそれはハツカゼも例外ではなかった。彼女の覚醒したサイキック能力見込んだヒュウガにより、作戦への参加を希望されてしまったのだ。(断れるわけないわ…今まで寝込んでて役に立たなかったんだからなあ。でもなあ…コワイなあ。イクサは…)
仕方なくハツカゼは長らく使っていなかった武器の使用申請をするためにここに来ていた。しかし先程からアカシが勧めてくるのは何事かに恐ろしく特化しているが、とんでもない問題点があるような変態兵器ばかりである。「これこれ!これですよ!最近完成したばかりの新兵器、こじまキャノン砲です!これは凄まじくバイオテックですよ!」アカシの情熱は止まらない。
「これのスゴイところはですね!こじま粒子という物質を高密度に圧縮し発射!敵を分子レベルまで分解するスゴイ兵器なんです!」「アノ…だから、私…もっと普通のが」「破壊力がとんでもないんです!破壊力が!使用者に致命的な健康被害が出てしまうのが弱点ですがとにかくスゴイんです!破壊力が!」もはやアカシの耳にはハツカゼの言葉は入ってこない。喋り続けるアカシをよそに、ハツカゼは部屋をそろりと脱出した。(やっぱ普通のカラテ砲にしよう…)
ハツカゼは自分の部屋に戻りがてら、提督の執務室へ向かった。朝に行った時はタイミングを逃してしまったが、改めて伺おうと思ったからだ。(あそこにいたのはカトリ先生に間違いない。そしてあの時チラリと見えた敵の精神世界…詳しく提督に伝えなきゃ!)
「でも確か前に治療した3人のカウンセリングがあるっていってたわよね。もう終わって…ん?」ハツカゼはふと足を止めた。執務室壁の近くの壁に誰かがもたれかかっている。(誰だろ?)艶やかで熱い吐息が聞こえる。その艦娘の足元は小刻みに震えている。「ハァ…ハァ…んんっ…」
「エート、タツタ=サンか。大丈夫?」その艦娘が誰だか分かったハツカゼは背を向けていた彼女、タツタの前に回り込んで話しかけた。「んっ…ドーモ、ハツカゼ=サン…ちょっと…予想外のことが起きちゃってね…ウフフ」
いつもどおりタツタはにこやかだが、顔がひどく蒸気している。口の端からはかすかに涎もひいてしまっている。「大丈夫じゃなさそうなんだけど…熱でもあるの?」「違うのよ…熱は…確かに熱いものはもらっちゃったけど。ウフフ…」タツタは口元を拭った。どこかとろけたような表情にも見える。何があったのだろう?
「今から…提督=サンに会うつもり?」「うん、そのつもりだけど」「それは…また改めた方がいいかもしれないわね。ウフフ…止めは…しないけど…」タツタはそう言い残すと、覚束ない足取りで壁に手をつきながら去っていった。((ハァ…ハァ…まさか、私が最初にされちゃうなんて…本当に予想外だったわぁ…アレを見れないのが残念ねぇ…ウフフ…))その小さな呟きはハツカゼには聞こえなかった。
(…?なんかタツタ=サンの内もも濡れてたなあ。汗でもかいたのかな?失禁なんてありえないだろうし)改めたほうがいいと言っていたが、何が起きているのか気になる。床に落ちている粘り気のある正体不明の液体(これ何?)をまたぎ、ハツカゼは執務室のドアに耳をつけた。
執務室のドアは分厚く、中の音はかすかにしか聞こえない。しかしハツカゼの持つカンムス聴覚は何かの打擲音をとらえた。それは連続して聞こえてくる。((なにこの音?なんか柔らかいもの同士がぶつかっているような…))部屋の中から聞こえるのは奇妙な打擲音だけではなく、誰かの呂律も回らないような声もする。それは全て声音が違う。3人か?
ハツカゼはなぜかビクビクしながらドアを僅かに開け、中を覗き込んだ。((暗くてよく見えない…ん?なんだろあれ?))ハツカゼの視線の先にあったのは3つの桃めいたなにかだった。目をこらすと小刻みに震えるその桃の表面にはいくつもの「正」カンジが書かれている。((んん…?))彼女がさらにドアを開こうとした、その時である!
「…………ドーモォ、ハツカゼ=サン」
「アイエエエエ!?」ハツカゼは驚きのあまり尻餅をついた!なぜか?細く開けたドアの隙間に急に提督が現れたからである!「覗き見とは…感心できませんね?マナーは守らなければ。そうでしょう?」「アッ…ハイ」提督はブッダめいたアルカイックスマイルを浮かべている。普段の仏頂面からは想像できない表情だ!さらに口調もおかしいのだ!
「ち、ちょっと用があったから…覗き見するつもりなんか、なくて…」「いけないぞ…いけないぞハツカゼ=サン!そんなことでは!…でも許してあげましょう」「アッハイ」なぜかハツカゼは小さな恐怖を感じていた。提督は笑っているのに、なぜ?「中で…なにをしていたの?」ハツカゼは恐る恐る聞いた。
「それは…そのう…愛しい部下たち3人の、カウンセリングを、直接…していたのです。直接」「でも…この匂いは…」「昨日の夕食の…イカシチューの匂いが残っていましてね…」「あれ…何?」「尻…ではなくて、モモです。モモですよ…食べごろのね…甘くて、オイシイ…とてもね」「聞こえてきた、何かがぶつかる音は…?」「柔らかさを…確かめていたのですよ…果実の柔らかさを」欺瞞!
しかしハツカゼはそれ以上考えるのをやめにした。今すぐここを立ち去るべきだと、そう本能が告げていたからだ!「じ、じゃあ私はこれでオサラバアイエエエエ!?」提督は急に手首を掴みハツカゼを引き寄せた!「待ってください…あとで、この用事が終わったら、次は一緒にモモを食べましょう。あなたの…あなたのものを…フィ…ヒ…」提督は笑っていた。
「アッ…………ハ…イ……」「約束ですよ…それでは」ドアが静かにしまってゆく。(ンアーッ…スゴイ…スゴイすぎます!女の子どうしより!ずっとスゴイ!)(アーッ!ヤダ!コワイ!でもしてほしい!コワイ!してください!アーッ!?)(イソナミの…体温何度あるのかな?熱い…熱いよぉ…エヘ、エヘ)部屋の中モモから聞こえる声は遮られ、ハツカゼの耳には届かなかった。
ハツカゼはしばらく立ち尽くしていたが。ハッと思い出したように駆け出した。((私は何も見なかった!私は何も見なかった!そうよね!?きっとそうだわ!うん間違いない!きっと!))ハツカゼは何かから逃げるように、一心不乱に駆けてゆく。執務室からは再び何かの打擲音が聞こえ始める。それは廊下の喧騒にかき消され、やがて聞こえなくなった。
【KANMUSLAYER】
◆実際ひどい。明日な◆
◆突発的用事メントが発生しました。更新は延長で金曜になる見込みとなり作者はケジメしました◆
◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
ひときわ大きく跳躍し、彼女は屋上へ降り立った。ケジメカンムスが13番基地に赴いた目的は明確だ。自分が何者かということにつながる何かがあるかもしれない。ただそれだけのためだ。
ケジメカンムスのカンムス感覚は基地内の生命存在を探った。小さな反応がいくつかある。警備のクローンヤクザ妖精であろう。カンムスソウルの反応はない。他の駐屯基地襲撃時と比べれば手薄すぎる程だ。しかし、それでも彼女は疑うよりも前に、それぞれの手でドスダガーを構え、屋根に突き立てた。
「イヤーッ!」屋根を四角く切り裂いたケジメカンムスは基地内にしめやかに着地した。降り立った廊下の目の前にはミョウコウの中破顔だるまが描かれたフスマがある。ケジメカンムスは両手でフスマを開け放った。その先の部屋、彼女はザブトンの上で正座し、湯気の立つ紅茶をすする何者かを発見した。
「あら…?」キョートの艦娘?いや違う!黒いゴシックロリータ装束と黒いフリルメンポに身を包んだ駆逐艦娘程の体躯のその女性は恭しく立ち上がると、閉じていた赤い目を開いた。「ドーモようこそおいで下さいましたわね。ケジメカンムス=サン。お会いできて光栄ですわ。……離島棲キです」フランス人形めいた深海棲艦娘がスカートの端を掴み、優雅にオジギした。
「イヤーッ!」ケジメカンムスは反射的にバック転して間合いを取り、着地の勢いで隙なくオジギした。「ドーモ、はじめまして離島棲キ=サン。ケジメカンムスです」離島棲キは優雅なオジギ姿勢を崩さない!「残念ですわね。あなたの探している情報はここにはありませんわ。…いえ、どこにもありませんのよ」
「ではあなたをケジメします」ケジメカンムスは怯むことなくドスダガーを構える。敵は艦娘ではない、深海棲艦娘だ。しかし彼女はその存在しか知らない。見覚えがあるとすれば、この右目とどこか似ている赤い瞳だけだ。「もう気づいたかもしれませんが、貴女は罠にはめられたのですわ。そしてわたくしはセイカンヤの『所有物』である貴女を回収しにきた、というわけですの」「……」
「あなたはキョートと我がセイカンヤにつながりがあるのは知りませんですわね?あなたはわたくしたちの科学者が生み出した存在…キョートとその科学者から要請があったからこのわたくしがわざわざ赴いた、というわけですの」離島棲キは傍に置いてあった黒い西洋傘を手に取った。柔らかい笑みを浮かべているが。その目は殺気を帯びている。
◆きんじつの更新不安定をお詫びします。やっと忙しさが落ち着いたので安定更新に戻るのだなあ。寝休憩な◆
◆再開◆
タタミの敷かれたドージョー内の二人に緊張が走る!「そしてあなたが私を待ち受けていた。私を倒すと?」離島棲キは優雅に微笑んだ。「貴女がわたくしに勝つのは不可能ですのよ?…ごめんあそばせ」「イヤーッ!」ケジメカンムスが仕掛けた!両腰のワイヤーを射出し離島棲キの足元のタタミを跳ね上げる!「イヤーッ!
「まあ野蛮ですこと!イヤーッ!」離島棲キはようやく動いた!両足を180度開脚し垂直ジャンプすることでタタミごと跳ね上げられるのを回避!「イヤーッ!」すかさずケジメカンムスはドスダガーを横なぎに繰り出す!「イヤーッ!」離島棲キは右手に持った西洋傘で受ける。刃が通らぬ!特殊ケブラー繊維製だ!
「イヤーッ!」ケジメカンムスはすくい上げるように斬る!「イヤーッ!」離島棲キは身を逸らしダッキング回避!身を沈め足払いを繰り出す!「イヤーッ!」
「イヤーッ!」しかし突如としてケジメカンムスの身体が浮き上がった。おお、見よ!天井に突き刺されたのは二本のワイヤーだ!ケジメカンムスは高速巻き取り機構により引き寄せられ、激突する寸前に天井を蹴る!「ケジメ!」蹴りの反動とカラテ艤装のブースト推進を利用したジゴク車めいた縦斬撃回転で襲いかかる!
なんたる一瞬のうちの回転数!いくら防御を固めようともこの攻撃に伴う衝撃は…否!「イヤーッ!」離島棲キは頭上に掲げた西洋傘でこれを受けきってみせたのだ!なんたる膂力!この小さな身体これほどまでのカラテが!?
「中々のパワーですこと!イヤーッ!」「イヤーッ!」ダメ押しに繰り出された膝蹴りを離島棲キはガッチリと掴み、後方へ投げ飛ばす!「イヤーッ!」「グワーッ!」後方へ投げ飛ばされたケジメカンムスはフスマを破壊しながら隣に吹き飛ばされるがドスダガーをタタミに突き立て踏みとどまる!「ケジメ…!」
離島棲キはパチパチと手を叩いた。「お見事ですわ。カトリ先生の最高傑作、それは疑いようのない事実のようですわね」彼女は余裕の笑みを崩さない。「ちょうどいいですの、貴女の戦闘データも取れればアブハチトラズ…ですわッ!」
離島棲キが傘をタタミに突き立てると、彼女のカラテ艤装に装備されていた攻撃電磁浮遊ビットが起動!黒い鉄球めいたビットのサイバネ牙がケジメカンムスに噛みつきにかかる!「なのでもう少しカラテを続ける必要がありますの。避けてごらんになって!」
「イヤーッ!」ケジメカンムスは噛みつきにかかる電磁ビットをドスの柄ではじき返す!続く電磁ビットはもう片方で!さらに続く電磁ビットは蹴り飛ばす!「イヤーッ!」最後の電磁ビットを踏み台にして跳躍!「ケジメ!」
柱を蹴り三角跳びで襲い掛かる!「イヤーッ!」回転しながら竜巻めいて飛来するケジメカンムス!離島棲キは瞬時に身を床へ投げ出し、リンボーダンスめいた姿勢で跳躍攻撃の下をくぐり抜ける。そのまま仰向けの姿勢で上を通過するケジメカンムスの脇腹を蹴り上げる!「イヤーッ!」「グワーッ!」
ケジメカンムスは跳ね上げられながらも床に向かってワイヤー射出!フックの先端がタタミに食い込む。そのまま彼女は天井を斜めに蹴り、立ち上がった離島棲キのタタミ4枚分前に着地!そして彼女はすでに腰を低く落とし、突撃の体勢を取っていた。
もしやこのムーブメントは!?床に突き刺した両腰のワイヤー、伸びたワイヤーの長躯線上には…そう、今ケジメするべき敵がいる!これはあの手練れの艦娘、ムラクモを一瞬でケジメしたあのワザである!「…イヤーッ!」ケジメカンムスが白銀の弾丸めいた勢いで放たれた!
このまま放たれるドスダガーは離島棲キを全裸ケジメするのは疑いようのないはずだった。…はずだったのである!離島棲キにあとタタミ1枚分と迫った瞬間、ケジメカンムスは突如として大きくバランスを崩したのだ!「イヤーッ!」「グワーッ!!」
姿勢を崩したケジメカンムスに離島棲キに鋭いトゥー・キックが突き刺さる!ケジメカンムスは己の出した勢いの反作用で吹き飛ばされ、壁に打ち付けられた。「グワーッ!」インガオホー!衝撃で彼女のキツネ・オメーンが弾き飛ばされ、人形めいた美しい顔立ちが露わになる!
ケジメカンムスは血反吐を吐きながら寸分の狂い無く射出したはずワイヤーを見た。そのワイヤーは…おお、ナムアミダブツ!突き刺さっている部分の根元で切断されているではないか!そしてそれを成し遂げたのは離島棲キの右手に握られた、細身の刺突剣であった。
しかし彼女は持っていたのは西洋傘だったはずでは!?否!その刺突剣の柄は何を隠そう西洋傘の取っ手と同じ!仕込み刀だったのだ!優雅な微笑みを浮かべる離島棲キのその目には侮蔑的な感情がこめられている。「いくら出来が良いといっても所詮貴女はサンシタの…あら、失敬。やや『足りない』艦娘の血が混じった雑種にすぎない…血統付きには、遥かに及びません事よ?」
【KANMUSLAYER】
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【KANMUSLAYER】
姿勢を崩したケジメカンムスに、離島棲キの鋭いトゥー・キックが突き刺さる!ケジメカンムスは己の出した勢いの反作用で吹き飛ばされ、壁に打ち付けられた。「グワーッ!」インガオホー!衝撃で彼女のキツネ・オメーンが弾き飛ばされ、人形めいた美しい顔立ちが露わになる!
ケジメカンムスは血反吐を吐きながら寸分の狂い無く射出したはずワイヤーを見た。そのワイヤーは…おお、ナムアミダブツ!突き刺さっている部分の根元で切断されているではないか!そしてそれを成し遂げたのは離島棲キの右手に握られた、細身の刺突剣であった。
しかし彼女は持っていたのは西洋傘だったはずでは!?否!その刺突剣の柄は何を隠そう西洋傘の取っ手と同じ。仕込み刀だったのだ!優雅な微笑みを浮かべる離島棲キのその目には侮蔑的な感情が露わだ。「いくら出来が良いといっても所詮貴女はサンシタの…あら、失敬。やや『足りない』艦娘の血が混じった雑種にすぎない…血統付きには、遥かに及びません事よ?」
ケジメカンムスは口の血を拭いながら立ち上がり、再びドスダガーを構える。ただ無言で。「フン、その飢えた野犬のような目つきをわたくしたちと「同じ目」でしているということ自体が不快ですわ。今からその目を怯えた仔犬の目にして差し上げますのよ!」離島棲キが刺突剣を振りかざす。空気の切れる鋭い音がケジメカンムスの耳に届いてくる。
「次はこちらからいかせていただきますわ!イヤーッ!」離島棲キがシャウトとともに前へ踏み込んだ。ハヤイ!ケジメカンムスの瞬き一瞬のうちに彼女のすぐタタミ0.5枚分に踏み込んできた!突き出される刺突剣!「イヤーッ!」ケジメカンムスは右ドスダガーで受け流す。一瞬遅い!彼女の白い頬に一閃の切り傷!
「イヤーッ!」さらに繰り出される刺突!「イヤーッ!」これも一瞬遅い!ケジメカンムスの白い太腿に一閃の切り傷!「イヤーッ!」さらに繰り出される刺突!「イヤーッ!」これも一瞬遅い!ケジメカンムスの白い脇腹に一閃の切り傷!なんたる連続攻撃!ケジメカンムスの反撃を許さない!
「イヤーッ!どうなさいましたのイヤーッ!あなたの自慢はイヤーッ!素早い身のこなしイヤーッ!ではなくってイヤーッ!」挑発と共に繰り出される刺突は止まらぬ!徐々にケジメカンムスは壁際に追い詰められていく。このままではジリー・プアー(徐々に不利)だ!
しかし彼女はここで止まるわけにはいかぬのだ。まだ自分の正体も、何をすべきかも、何のために生まれてきたのかも分かっていない!目の前の敵に勝つためにはケジメ!ケジメあるのみだ!「イヤーッ!」ケジメカンムスは残ったワイヤーを離島棲キの足の間に射出!フックがタタミ4枚分後方に突き刺さった。
繰り出される刺突を床に倒れこんで回避したケジメカンムスは、すかさずワイヤー高速巻き取り機構を作動し、スライディングめいて離島棲キの足元を狩る!「イヤーッ!」「イヤーッ!」離島棲キはケジメカンムスを飛び越えるように回避!
ケジメカンムスはスライディング姿勢から両足を振り回すウィンドミル回転で立ち上がり、その回転を止めぬままタツマキめいて離島棲キに突撃する!「イヤーッ!」「またそれですの?芸がありませんこと!まさに野良犬ですわイヤーッ!」離島棲キは真っ向から立ち向かう。彼女は自分の華麗かつ鮮烈な剣技に絶対なる自信を持っているからだ!
「イヤーッ!」繰り出される斬撃!「イヤーッ!」刺突剣で弾きかえす!「イヤーッ!」さらに繰り出される回転斬撃!「イヤーッ!」さらに刺突剣で弾きかえす!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
離島棲キの剣先が見えなくなるほどの速度の連続突きは、ケジメカンムスのドスダガー連続ひとつひとつを確実に弾いてゆく!「イーヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!イーヤッ!イヤーッ!!」ナ、ナムアミダブツ!暴れ狂う竜巻を剣一本のみで押しとどめ、その場から一歩も動かぬ離島棲キ!ニュービー艦娘が見たならばカンムス・リアリティ・ショックによる失禁は避けられないだろう。
「イヤーッ!足元がイヤーッ!お留守ですわねイヤーッ!お気をつけくださいましイヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イ…グワーッ!?」突如としてケジメカンムスの高速回転が停止する!彼女の右足に、叩き落としたはずの電磁ビットが再起動し噛み付いてきたのだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」離島棲キは空中で一回転し鋭いスピンキックを放つ!これをまともに食らったケジメカンムスはタタミを転がりながら吹き飛ばされる!
「ハァーッ…笑止ですの。その程度の機体性能であたくしたち深海棲艦娘の血が入っていると?なんたる無礼なのですわ!」離島棲キはヒュンヒュンと剣を振るいながら倒れるケジメカンムスに近づいてゆく。ナムサン!これがシンカイ・シックスゲイツ最強剣士たる離島棲キのワザマエ!ケジメカンムスはなす術もなく敗北を喫してしまうのか!?
だが!「…ケジメ!」ケジメカンムスは再び立ち上がる。その青き右目から青い光が迸る!「ケジメ!」青い軌跡を描きながら、ケジメカンムスは三たび高速回転を開始!離島棲キに突進する!「本当に芸がないですわ…ならばわたくしが!芸を仕込んであげますの!イヤーッ!」離島棲キは剣を身体の真芯に構え、音速にまで達する速度の前ステップで竜巻に踏み込んだ!
「「イヤーッ!!」」
鋭い金属音が鳴った。斬り結んだ両者は背を向け立っている。数秒過ぎた後、身体から力が抜けたように片方が崩れ落ち、タタミに手をついた。「…ハァーッ…ハァーッ…」口元から垂れる血がタタミに吸い込まれてゆく。その鮮烈な赤さが、跪いた彼女の青い右目に映った。「わたくしの剣技に勝てるお方などいませんのよ…あのダークカンムス=サンでさえも、よもや貴女程度では笑止千万ですわ!」
ケジメカンムスは何も答えない。ただ傷を押さえて荒い息を吐いている。「さて、貴女の実力はすべて分かりましたわ。これで実験は終了。貴女を回収しますの」「………」「フフフ…安心なさって下さいまし。先ほど芸を教えると言ったでしょう?このわたくしが貴女を存分に活用してあげますわ!そうですわねぇ?まずはその反抗的な態度のために首輪でも付け」
プツリ。音が鳴った。何か布が切れるような音が鳴った。勝ち誇っていた離島棲キの笑みが止まった。その音が自分からしたからだ。((…え?))離島棲キは足元を見た。落ちていた。黒い布切れが。それは自分のスカートだった。次に離島棲キは自分の下半身を見た。そこにあったのは、パンツだけだった。離島棲キは今日、ファンシーな仔犬が、プリントされたカワイイパンツを履いていた。
【KANMUSLAYER】
◆艦◆艦娘名鑑#61【駆逐棲キ】シンカイセイカンヤ所属。生まれたばかりの深海棲艦娘で、下半身は黒いビキニパンツ一枚。邪悪なる組織に所属しているのにもかかわらず、教育中なのか性格なのか全くもって純真無垢。カトリ先生のお手伝いをしている◆艦◆
◆艦◆カンムス名鑑#62【軽巡棲キ】シンカイセイカンヤ所属、セイカンヤのイメージアイドルを務める艦娘。下半身はフリルスカートにニーソックス。あまりにもわざとらしいほどあざとく、上司によく媚びる。その裏には凄まじき上昇志向と卑屈が隠れている。カトリ先生の臨時助手であり駆逐棲キの教育係だが、駆逐棲キに対しては完全に口うるさい姉である。ネオサイタマのある艦娘をクソ枕クソアイドルと呼び異常に敵視している。常人の3倍の脚力の持ち主で、古代ローマカラテの使い手◆艦◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
(これまでのあらすじ : セイカンヤのみならず、キョート・チンジフとネオサイタマ・チンジフのイクサの火蓋が切られようとしていたその時、キョートの艦娘たちが次々と全裸大爆発四散するケジメ事件が引き起こされた)
(その襲撃者の名はケジメカンムス。彼女は深海棲艦娘と艦娘それぞれのソウル技術によりカトリ先生から生み出された存在なのだ。自分の存在の意味、何者なのかを知るために彼女はケジメを繰り返してきた)
(そして駐屯基地襲撃を続ける彼女の前に現れたのはシンカイ・シックスゲイツの一人、離島棲キであった。圧倒的なワザマエにより絶体絶命の危機に陥るケジメカンムス。しかし壮絶な斬り結びによりケジメカンムスは離島棲キのスカートをケジメし、彼女の子供めいたファンシーなパンツを白日の下に晒してみせたのだ!)
「ンっ…ンアーッ!ナンデですの!?ナンデ!?」離島棲キは慌てて股を隠す!しかし駄目だ!片手だけでは隠しきれない!剣を落としかけるほど彼女は混乱していた。(まさか!今の斬り結びで!?このわたくしが一太刀浴びてしまったとでも…あ、ありえないっ!ありえないですのッ!!わたくしが、この高貴で優雅で瀟洒なわたくしが!?)
離島棲キは混乱するニューロンの中で必死に先ほどの斬り結びの瞬間を思い出した。あの時、高速回転するケジメカンムスの姿が一瞬ぶれたように見えた。蓄積したダメージゆえではなかったのか!?((あの回転はぶれて遅くなった訳ではなかったのですの!?あれは逆に…速く…ハッ!?))離島棲キが顔を上げると、すでにケジメカンムスは立ち上がり距離を詰めていた!
全身の切り傷から血を垂らし、片足を引きずりながらもケジメカンムスは決断的な歩みを止め、離島棲キの前に仁王立ちする。ドスダガーを振り上げながら!「あなたを…ケジメする!」右目から青い光が炎めいて迸る!「ちょっ!待っ…」「…イヤーッ!!」振り下ろされるドスダガー!刃先が、離島棲キのドレスを斬り裂いてゆく!
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…01001001001
ケジメカンムスは、自分が水の中にいることを知覚した。ここはどこだ?自分は敵をケジメすべくドスダガーを振り下ろしていたはずだった。しかしここには何もない、彼女は落ち続けた。かつて夢の中で立っていた砂浜が、遠ざかってゆく。大きなシルエットも遠ざかってゆく。彼女は海の底に引きずり込まれていた。
ではここは夢の中なのか?あり得ぬ。先ほどまで現実にいたのに、あの一瞬のうちに眠りに落ちたとでも?ケジメカンムスは己の足を見た。紫色の触手が絡みつき、海の底へと引きずり込んでいる。いくらあがこうが無駄だった。落ちてゆく、どこまでも海の底へ。
やがて彼女の視界が101黒く塗り潰さ01101てゆく。紫10110色の触手が身体1011011に絡みつ1100011見えない1011011なにも10011100あの黄金の立方1110101遠ざか00110110意識が101011シルエット1011011落ちる10111001落ちる1010111ああ110110…
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「………うぇ?」離島棲キは尻餅をつき、思わず閉じてしまっていた眼を見開いた。服は半ばまで切り裂かれている。しかし止まっていた。目の前に立っているケジメカンムスが止まっている。手からドスダガーが落ちた。「これ…は…」ケジメカンムスの目には光がない。青い右目にも。電池の切れたジョルリ人形めいてすべての動きが止まっている。
「ファファファ、ちょっとおイタが過ぎたみたいネ?」「!」離島棲キの後ろ側にあったフスマが小さく開き、その隙間から赤い光が迸っている。この光を、彼女は知っている。「…貴女は」その光の持ち主はフスマをさらに開け、中から現れた。「ドーモ、ケジメカンムス=サン…それとも、もう聞こえてないかしらぁ?」この淫靡な笑みは!?シックスゲイツの一人、港湾棲キその人である!
「フン…!来ていたならば、もう少し早く加勢して頂きたかったですわね!」離島棲キは悪態をつきながら立ち上がると斬り裂けかけた上着を閉じ、床に落ちていたスカートをたくし上げ、冷や汗を拭った。「でもさァ、あンたかなりノリノリだったじゃない?邪魔するのも悪いとおもっちゃって。まさか負けかけるとは思わないし」「断じて負けてませんわ!油断しただけですの!」「それにその子供っぽい下着もやめたら?」「だ、だまらっしゃい!余計なお世話ですわ!」
「アイ、アイ」港湾棲キは肩をすくめると、ケジメカンムスに向き直る。「しかしまあ…あンたに一太刀加えたってんだから、結構やるじゃないこのコ?」「マグレですわ!」ヒュプノ・ジツに完全に囚われてしまったケジメカンムスは微動だにしない。いくら港湾棲キがその身体に指を這わせようと、その表情はマグロめいて無表情である。「ファファファ…ずいぶんキレイなコね…おっぱいも大っきいし、あら?このコ下に何も着てないの?あたしと同じねェ」「つとめて破廉恥ですわ!」
「…コホン。一応、礼はしておきますの!その聞き分けのないワンちゃんをどうするおつもりでして?」「それはもちろん。今までやったことの償いはしてもらわなきゃならないわ。おおいに働いてもらうのよ…あたしたちとキョートのためにねェ」ケジメカンムスはただ虚空を見つめている。彼女のニューロンは黒く塗り潰され、意識は深い眠りめいた底へと消えていった。どこまでも……
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【KANMUSLAYER】
「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」暗い部屋に打擲音と悲痛な悲鳴がなり響く。ここはキョート・チンジフの地下、拷問部屋である。
その部屋の中心には木で作られた十字架があり、そこに誰かが括り付けられている。「イヤーッ!」「ンアーッ!」その少年は鞭で打たれながら悲痛の涙を流す。彼はまだ年端もいかぬ子供だ、その容姿はビスマルク派閥のレーベ、そしてマックスによく似ている。しかし髪の色は黒であり、彼は男性だった。
「アイエエ……やめてください!ハルナ=サン!もうこんなことは!」少年はべそをかきながらも気丈に顔を上げ、狂ったように鞭を振り続けるかつて自分の秘書艦だった艦娘に呼びかけた。「ハァーッ!ハァーッ!イイ…!だめです!まだわたしの愛は…こんなものでは!イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」
ナムサン!そのボンデージスーツと巫女服を掛け合わせたかのような冒涜的な装束を着た艦娘は鞭を振るい続ける!彼女の瞳は被虐に悶える少年を捉えて離さない。すでに彼女は重度のトリップ状態にあり、自分の少年への愛情を伝えるためにはこのように痛めつけるべきだと完全に思い込んでいるのだ!「イイ…!アナタへの…私、ハルナの愛が!伝わっていきます!愛していますコドモ提督=サン!イヤーッ!」「ンアーッ!」
この部屋にいるのは二人だけではない。このマッポーたる光景を見、なおも穏やかな笑みを浮かべる艦娘がいた。「フフフ…これこそ愛なのですね。素晴らしいことですハルナ=サン」「その通りですよねカシマ=サン!イヤーッ!イイーッ!」「ンアーッ!カ、カシマ=サン!ハルナ=サンを止めて!」「ダメです」「イヤーッ!」「ンアーッ!」
彼女の名はカシマ。キョート・チンジフのマスター位階の艦娘であり、拷問、尋問を得意とする生粋のサディストである!「フフフ…いいお姿になりましたね。コドモ提督=サン」「アイエエエエ…」ハルナの息が切れたタイミングを見計らい、下着一枚で縛り付けられた少年に近づいたカシマは笑顔で彼の顔を覗き込んだ。
((ナンデ…ナンデこんなことに?優しかったハルナ=サンでさえ…助けて…お兄ちゃ))うなだれる少年にカシマは無言で平手打ちした。「ンアーッ!?」「ダメですよ?会話するときは人の顔を見なければシツレイになってしまいますから。ね?」なんたる非道!しかし彼女の目は優しかった。
「上からはとにかく拷問にかけろと言われておりますので。ハルナ=サン?次はどうしますか?」「まだ…こんなものでは私の愛は伝わりきりません!次は女装と逆さ吊りをしましょう!」「アイエエエエエ!アイエーエエエエ!」少年は無力のあまり泣き叫ぶ!しかしその声はどこにも届かない。かつての仲間たちが、今こうして自分を痛めつけている。その現実は幼き彼には、あまりにも残酷な現実であった。
【KANMUSLAYER】
◆学校テストメントにつき更新頻度が落ちて申し訳ないと思っています。なお放置中のもうひとつのSSは4部アニメイシヨン開始と共に更新再開を考えている。作者が凄み成分を補給できるまではただ、備えよう。以上です◆
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【KANMUSLAYER】
同時刻、キョート・チンジフ、「円卓の間」
円形の広間の照明は多数のロウソク型ライトである。その頭上には黒曜石を切り貼りした、敵艦を討ち取る伝説の艦娘のレリーフが明かりに照らされている。それをムサシは見上げている。どこか懐かしむように。((これもセンチメント、か。姉者よ))彼女はサケを啜った。
円形の間ではあくせくとクローンオイラン妖精たちが働いている。化粧こそしているが、軽食の配膳、マッサージ、映像機器の準備などの激務によりほぼ全員が崩れかけている。しかし仕事を止めることは許されない…さもなくば休憩が貰えないからだ。
円卓のザブトンに座する艦娘たちは6人、彼女たち全員がチンジフを支配するグランドマスター位階の恐るべき手練れ達だ。かつ、その場のザブトンの数から、ある程度の欠席者がいることがうかがえる。なおロードは神聖なオヒルネ・リチュアルを行っており、この場にはいない。
「ん?どうしたムサシ=サン」1人がムサシに話しかけてきた。「珍しい表情をしているな!イクサができないことがそんなに残念か!?」彼女の名はナガト。「ムサシ=サン。なんだか寂しそう」ムサシの隣のザブトンに体育座りする艦娘、ウンリュウが首をかしげる。「…なんでもない。ちと昔のことを思い出していただけじゃ」
「フン!そんな似合わぬツラはして欲しくないものですな。ワs…わ、吾輩のサケがマズくなるのじゃ!」ムサシの正面に座するトネがオチョコに注いだラムネを飲んでいる。彼女は以前の失態を引きずったままだったが、怒られたあとにムサシとウンリュウに慰めてもらい、温泉旅行から帰ってきたチクマに泣きつき、怒りすぎるのもカワイソウだと思ったタイホウに許してもらった事で調子を取り戻していた。なお一人称がムサシと被るからと現在矯正中らしい。
「ハッ!そりゃあ悪かったのぉ!確かに残念じゃ!ガッハッハ!」サケを一気飲みしたムサシの表情はいつも通りの獰猛な笑顔に戻っていた。「ワシはイクサと美味いサケのみ!それがすべてよ。それさえあれば他には何もいらんのでな!」「ほんとにそれだけ?」豪快に笑うムサシにウンリュウがチャを啜りながら聞いた。
「他に?うーむ、セックスも試してみたがありゃあイマイチじゃの。女同士だとどうにも」「セックス?なんだそれは?カラテか!?」重度のカラテマニアであるナガトが身を乗り出す。「まあ確かにワザはあるが。四十八手とか」「何!?セックスとは四十八ものワザを持つというのか!決めた!次にこのナガトのカラテの礎となるのはセックスに決めたぞ!」ナガトは熱っぽく叫び、腰を浮かべる。彼女の知識はカラテ以外の事象を知らないのだ!
そんなやり取りをスナック菓子をかじりながら聞いていたスズヤが口を挟む。「そんなことよりさぁー、今から始まるんでしょ?あの連続ケジメ事件の」「ええ、セイカンヤから提供された実験体の戦闘テストが」それに応えたのはロードの側近、タイホウである。彼女の胸は平坦だった。「その実験体は私達の仲間を次々に大破させてきた。そのお詫びと共にセイカンヤから物資と共に提供されたのです。彼女をね」
彼女たちグランドマスターの前に置かれた人数分の液晶モニタには、海上を高速巡航する白銀色の髪の艦娘が映っている。「コイツがあたしのところの朝潮姉妹のコたちとユウバリ=サンをやったのよねぇ〜まったく!ちょーむかつく!」「ワシのところのムラクモ=サンをやったのも此奴じゃな。弟子の中でもそこそこやる方だったはずだがブザマに負けよってからに」
「そこまでのワザマエか…この私のカラテの礎になる素質がありそうだな!」「強いのかな?」「フン!どうせ実験室生まれのネズミじゃろう?大したことはないに決まっておろう」各々のグランドマスターが感想を述べる。しかしタイホウは氷めいた表情のままだ。「それを今から判断します。全てはロードのために、ガンバルゾー」「「「「「ガンバルゾー」」」」」禍々しいチャントが円卓の間に響く。彼女たちはそれが当然だと疑うことはなかった。自分たちの足の下で、かつて司令官であった少年が痛めつけられていたとしても。
【KANMUSLAYER】
( 一)<ドーモ、ザ・ヴァーティゴです。久しぶりに登場だ!胸の大きさってのは中々重要なことかもしれない。でもやっぱり女の子に大切なのは心だな!俺ってロマンチストだからさ。相変わらず質問は募集しているぞ、スレ埋めになるからね!もちろん冗談だぜ。
>>ネオサイタマチンジフに居るカンムスを強い順で並べるとどうなるの?
( 一)<中々答えづらい質問だな…艦娘たちの「強さ」を順位づけるのはかなり難しい。イクサの場においては何が起こるか分からないからね。強いて言うならば、主人公のセンダイ=サンはもちろんヒュウガ=サンやカガ=サン、ヤヨイ=サンのワザマエはチンジフ内でもトップクラスだ。しかしネオサイタマからキョートに移った艦娘も結構多い、例えばウンリュウ=サンやスズヤ=サンは元ネオサイタマ所属だ。
>>ネオサイタマチンジフにいる艦娘で暴走提督に前後されてる艦娘は何人いるの?
( 一)<おいおい!これはもっと難しい質問だ!前にも答えたが正確な人数は分からないぜ。だが、提督とごく普通に接している艦娘の中にも結構…とにかく今回の話で4人増えたのは確かだな。ナムサンだね!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
ネオサイタマ・チンジフ、中央司令室
「第7部隊の展開は完了したか。第8部隊はどうだ?」『ただいまシナガワ海域を巡航中!』『フタマルサンマルには到着予定です!』「了解した。警戒を怠るな」『『『ヨロコンデー!』』』この中央司令室では出撃中の艦娘の無線が飛び交い、オペレーターたちのUNIXを叩く音が絶え間なく響く。その中心で指示を飛ばす艦娘はヒュウガ、提督の秘書艦を務める艦娘だ。
そして作戦活動を行う艦娘たちのサポートをするオペレーターたちも、もちろん艦娘である。この業務に当てられる艦娘たちは総じて知能指数が高い者であり、普段はそれぞれの部門長としての業務を行っているアシガラ、チョウカイもオペレーター業務を兼任している。「…そろそろか」ヒュウガは時計をチラリと見た。見立てでは、そろそろ…
するとその時!司令室の強化カーボンフスマが開いた!オペレーター艦娘たちの手は止まり一斉にそちらに目を向ける。その視線の先には…肩にかけられた白い軍服!斜めに被られた軍帽!口元に浮かぶ柔らかな笑み!そしてその下にあるのは確固たる意志を秘めた瞳!そう、彼は!「待たせたな…チト遅れちまった」「「「「「「提督=サン!」」」」」ゴウランガ!強姦者のエントリーだ!
「お、お疲れ様です!ご休憩はも、もうよろしいのですか?」オペレーターのひとり、タカオはその凛々しい横顔を見て思わず頬を赤らめる。彼の表情は溌剌としており普段の無愛想な雰囲気は幾分か和らいでいる。「ああ、記憶が定かじゃねーが…一寝入りしただけだが随分疲れがとれたみてえだな」
「それはなによりですね〜。カウンセリングを受けた3人もぉ、とぉ〜っても悦んでましたよ〜」同じくオペレーターのタツタはにこやかに笑った。なぜか彼女の肌も艶やかである。「あれ?タツタ=サン、やけにつやつやしてますけど」「ウフフ〜気のせいじゃあないかしらぁ?」「ああ…休めたようだな、十分に」ヒュウガの眼は哀しげに優しかった。
◆殺戮者≒強姦者。コワイ!一旦寝る◆
◆遅れてすまんな。やる◆
「そろそろ第8部隊あたりが配備完了するところか?作戦は順調に進んでいるようだな」彼の予想は全くその通りである。なんたる頭の冴えか!「さ、さすがです提督=サン…」タカオがうっとりと呟いた。なお彼女は自分の姉が提督に何をされたかは知らない。「ああ、全部隊が揃い次第作戦行動を開始する。時間は…」「フタマルヨンゴーだ。間に合わせろ」「了解した」
オペレータールームの指導権は提督に移された。作戦開始を間近に控え、UNIXのタイプ音はさらに速くなり、提督は細やかに指示を飛ばす。「提督=サン。少しよろしいでしょうか?」「ン?なんだアシガラ=サン」「あの駐屯基地付近で起こった正体不明の襲撃者の事件についてなのですが…」「情報収集任務中のウラカゼ=サンがつかんだアレか」
おでん屋台「うらかぜ」はあくまでもカモフラージュである。その実態は情報収集を得意とする駆逐艦娘、ウラカゼの隠れ蓑なのだ!「ハイ。その連続ケジメ事件の事です」アシガラは聡明な艦娘である。何か考える所があるようだ。「その襲撃者が…まさかとは思いますが。今回の作戦中にも」「現れると?」「可能性がないとも限りません」
「その襲撃者の事はすでに作戦会議の時に皆に伝えてある。しかし警戒するに越したことは…」するとその時!ヒュウガが言い終わる前に巨大戦術液晶パネルの緊急アラートが点滅し司令室のアトモスフィアが一転する!『緊急!緊急重点な!所属不明機体が一つの部隊に接近中な!』「直ちに確認を急げ!」「「「「「ハイヨロコンデー!」」」」」提督の指示は早かった。オペレーター艦娘たちは一斉に各部隊の状況を確認し始める。
「オイオイ…!まさかコイツは」「どうやらアシガラ=サンの予想は当たってしまったようだな」「提督=サン!」タカオがUNIXをタイプしながら提督を振り向く!「所属不明機は極めて高速で接近中です!目標は…!」彼女のUNIX上に表示されたマップ上には高速移動する索敵マーカー、その延長線上にあるのは、2つの自軍マーカーである!
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◆訂正 : アタゴ=サンはタカオ=サンの姉→妹の間違いでした。ケジメして続けます◆
「で…でさあ、あたしがさ、ミョウコウ=サンと曲がり角で鉢合わせちゃってコケたときにさ、後ろにいたアブクマ=サンも驚いてコケちゃって」「…そうか」展開中の各部隊のかなり後方、2人の艦娘が海上に立っている。1人は腕組みをし目をつぶり、もう1人は落ち着かない様子であたりを見回しながら絶え間なく喋っている。
「つまり、エート…これがホントの、ポイント倍点、なんちて…」「なるほど」「………わたし、黙ってたほうがいい…?」「…いや、いい。続けてくれ、気が紛れる」目を閉じ、瞑想するセンダイはハツカゼにそう言った。2人には不利になった部隊や、想定外の事態が起こった時に対応するための後方支援に配属された。しかしその実態はかなりブランクのあるハツカゼをセンダイが護衛するというものだ。
先ほどからハツカゼは絶え間なく喋り続けている。喋りでもしないと緊張に押しつぶされてしまいそうになるからだ。((ちくしょう…こっちにくるんじゃないわよ!絶対こっちに敵がくるんじゃないわよ!))カラテ連装砲がズシリと重い。作戦に参加したとはいえど、やはりイクサはコワイものはコワイ。自分が必要にならないようハツカゼはブッダに祈り続けていた。
「そこまで戦いたくないのか?」瞑想を続けていたセンダイがおもむろに口を開いた。どうやらお見通しのようである。「そ、そりゃもうそうよ!もしイクサが始まったらあたしは秒速でネギトロ重点になっちゃうわ!」「心配するな。オヌシは私が守る」センダイは短くそう告げる。頼もしいことには限りないが、ハツカゼのニューロンにこびりついた呪詛は未だ聞こえてくる。
無論ハツカゼはセンダイに感謝している。以前捕まった時にいち早く救出しに来てくれたからだ。しかし彼女に対するある種の恐怖感…『敵艦殺すべし』という恐ろしいこの声はなんなのだろうか?その呪詛はあの時よりはかなり小さく聞こえる。しかしいかにハツカゼが気をそらそうとしてもその呪詛は漏れ出してくる。それがハツカゼを一層不安にさせていた。
((うう…ブッダ、マジで頼むわよ。このまま何もなく平穏無事に作戦を…))…だが!ハツカゼの願いもむなしく通信機に緊急入電!『ドーモ!こちらネオサイタマ・チンジフ司令室です!』「こちらセンダイ、何があった」「エッ!?アッハイハツカゼです!」『オツカレサマデス!ただいまそちらに急速に接近する反応があります!所属不明機です!』
「エッ…エエーッ!?ぶ、ブッダシット!ホーリーシット!ブッダ何なんだお前コラー!ちゃんと願い聞いてたのかコラー!?ちくしょうコラー!」ハツカゼは大きく狼狽し思わず地団駄を踏んだ!「ハツカゼ=サン!周囲のソウル反応を探れ!」センダイは即座に全方位をカラテ警戒!「ま、待って!うぐぐ…なんだってこんなことに…!」
こうなるならば先に意識を周囲に張り巡らせておけば良かったのだ。後悔先に立たず!ハツカゼもようやく高速接近するソウル反応を探知!「ファック!滅茶苦茶速いわ何コレ!?このソウルの強さ…エート…!」「敵の数は?」「し、深海棲艦娘よ!…はぁ!?ち、ちがう!艦娘…1人…エッ!?何コレ?なんなのこの反応…半分!?」「何!?」
ハツカゼが返答しようとした、次の瞬間!「これって…え?アイエエエエ!?」海中から正体不明の物体が飛び出した!「イヤーッ!」センダイはあやまたずゼロセンを投擲するが鉄塊めいたそれは全てを弾いてしまう!正体不明の機械のハッチが開き、中に収納されていた者たちが外へ溢れ出してゆく!「「「「「ざっけんなこらー!」」」」」」「「「「「すっぞこらー!」」」」」
「ヌゥッ…!これは」「クローンヤクザ妖精!?」そう!海中から秘密裏に接近していたのはクローンヤクザ妖精のステルス輸送ポッドだったのだ!「「「「「「「「てきかんむすはっけん!ざっけんなこらー!」」」」」」」ナムアミダブツ!2人はあっという間に大量のクローンヤクザ妖精に包囲されてしまった!
「ちっ…ちくしょう!ナメんじゃないわよ!こんなアンブッシュであたしがやられると思ってんのかコラー!」ハツカゼはカラテ砲を慌てて構える!早くもヤバレカバレか!?しかしその一方でセンダイは冷静だった。先程から高速接近していた敵は?「…イヤーッ!」センダイは考える前に動いていた!「かかってきなアイエッ!?」後ろのハツカゼの襟首を掴み引き寄せる!ハツカゼのワン・インチ距離を一抹の旋風が駆け抜けた!
「ちょっと!いきなり何を…え?」ハツカゼは自分のカラテ砲を見た。砲塔が切り落とされている!「ナンデ!?」困惑するハツカゼを庇うようにセンダイはカラテを構え、立ちはだかる。一対のドスダガーを持った白銀の襲撃者に対して。「……………」目元はサイバーサングラスで覆われている。しかし、そこから漏れ出す青い光は無機質かつ確定的な殺意を露わにした。
【KANMUSLAYER】
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【KANMUSLAYER】
「ドーモ……センダイです」「あ…あわ、あわわわ…ハツカゼです…あわわ…!」殺戮者はゆっくりとアイサツした。腰を抜かしたハツカゼもぱくぱくとそれに続く。イレギュラー存在は、半ば本能的に拳を顔の前で組み合わせアイサツを返した。「ドーモ。……………」センダイは彼女を凝視し、名乗りを待った。
「…………私は…………」イレギュラー・艦娘は言葉を押し出すように口にした。「私は。ケジメカンムスです。あなた達は排除の対象。あなた達をケジメします」アイサツ完了と共に空中を取り囲んでいたクローンヤクザ妖精たちが一斉に散会する!「展開重点!」「はりめぐらせろおらー!」「すっぞすっぞこらー!」各々が手に持っているワイヤー装置を展開する!
「これは」「何よ…これ!?」センダイたちの上方数十メートル上に物理ワイヤーフレームが張り巡らされ、クモの巣めいてケジメカンムス含む3人を覆ったのだ!「展開完了!」「保持重点!」「保持だこらー!」センダイとハツカゼが上げていた視線をケジメカンムスに戻す。だがそこにすでに彼女はいない!「ケジメ!」上だ!
ケジメカンムスの両腰に装備されたワイヤー射出装置のダートは、クローンヤクザ妖精たちの展開したスパイダー・ネストに引っかかっている。これはケジメカンムスが持つ三次元的戦闘能力を最大限発揮するためのバトルフィールドなのである。そして彼女はクモの巣にかかった餌の2人に猛然と襲いかかったのだ!
センダイはケジメカンムスの縦回転ドス斬撃を腕をクロスして受ける!「イヤーッ!」鋭い金属音!だが見よ!この恐るべき攻撃を防いだのはドウグ社謹製の黒鉄のブレーサー!職人による手作業で作られたこの一品がセンダイの腕を守ったのだ!ケジメカンムスは即座に海面に降り立ち、すかさずドスダガーを振るう!「イヤーッ!」
センダイは刃が到達する寸前に持ち手に裏拳を当ててこれを弾く!「イヤーッ!」お返しとばかりにショートフックを叩き込む!「グワーッ!」ケジメカンムスは衝撃で後方へ吹き飛ぶが、空中で態勢を立て直しワイヤーを射出!センダイに再度飛びかかる!「イヤーッ!」「グワーッ!」ワイヤー巻き取りの勢いを利用したキックがセンダイに直撃する!
センダイはひるみつつもゼロセンを連続投擲する。「イヤーッ!」「イヤーッ!」しかし高速回転を開始したケジメカンムスはゼロセン全てをはじき返す。しかも回転しながらセンダイへコマめいて迫る!「センダイ=サン!アブナイ!」ハツカゼが思わず叫ぶ!「イヤーッ!」センダイは垂直ジャンプでこれを回避!
しかし回転の勢いそのままにケジメカンムスはセンダイに再度接近!「イヤーッ!」センダイは着地まもなく再びジャンプ回避!再々度襲いかかるケジメカンムス!「イヤーッ!」センダイは着地まもなくダッキング回避!装束の切れ端が宙を舞う!ケジメカンムスはセンダイを中心に突進を止めぬ!「イヤーッ!」センダイは回避を強制される!
((やっば…!何者なのよコイツ?センダイ=サンが、このままじゃあ))ハツカゼから引き離すように戦うセンダイをハツカゼはただ見守ることしかできていない。このままではダメだ!((とにかく援護しなきゃ!))予備のカラテ砲を慌てて構える。「こ、このやろちくしょう!張り巡らされてるワイヤーさえ取り除ければ!」ワイヤーを支えているクローンヤクザ妖精を狙う。しかし!
ズガッ!ズガッ!その時、彼女の立っている場所が2人のヤクザ妖精が支えるサーチライトでいきなり照らし出された!照らし出されたハツカゼは悲鳴を上げた。「え…………アイエエエエエエ!?」なぜ悲鳴を!?答えはこうだ!ハツカゼの足元に映し出されたのは…特大のミョウコウ中破画像だったからだ!「ナンデ!?またミョウコウ=サンナンデ!?アイエエエ!アイエーエエエエ!!」絶叫が戦場を満たした。ナムアミダブツ!
【KANMUSLAYER】
◆艦◆カンムス名鑑#63【離島棲キ】シンカイセイカンヤ所属、シンカイ・シックスゲイツのひとりである深海棲艦娘。ゴシックロリータ装束に身を包み、高貴かつ優雅に振る舞う。口調こそ似ているがどこかのデオチ・カンムスとは違い、傘に仕込まれた刺突剣による剣技は剣士として組織内最強を誇る。港湾棲キとは付き合いが長いが破廉恥は嫌い◆艦◆
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【KANMUSLAYER】
「…ハッキング完了、モニタに出力するわ」テンサイ級のハッカーであるハヤシモがセンダイとハツカゼを包囲するクローンヤクザ妖精の1人が持つカメラをハッキングし、司令室の大モニターに現場の映像を映し出した。「でかしたハヤシモ=サン。これは…中々にヤバイ状況のようだな」提督は顔をしかめた。明らかに押されている。このままではセンダイが倒れるのは時間の問題かもしれない。
「キョート所属の艦娘のデータと照合してもどこにも当てはまりません!新造艦でしょうか…?」タカオが高速タイプをしながら提督を振り向く。「かもな。俺も見たことのないヤツだ。しかもこのワザマエ…」モニタ上にはセンダイの周りを高速回転しつつ斬撃を加えてゆくケジメカンムスが映っている。その目元は仮面めいたサイバーサングラスで覆われているようだ。
「提督=サン!あのワザはおそらくカマイタチ・ジツかと!」カラテ知識に詳しいアシガラが発言する。「私は詳しいんです。卓越したカンムス三半規管の持ち主のみがカマイタチ・ジツを極めると……しかしこのワザをマスターした艦娘がいるという情報はどこにもありません」「それが現に今センダイ=サンとやりあってるってか?チッ…面倒くせえことになっちまったな」
この状況下、普通ならばひとつの部隊を援護に回している。しかし…「…それもできねえ状況か」大規模なイクサはすでに始まっていたのだ!2人が強襲されたその直後、全部隊が敵方であるキョートの艦娘たちと会敵した。ヒュウはそれぞれの部隊に指示を飛ばしている。司令室はフル稼働中だ。「これは偶然なのでしょうか?」「いや、できすぎてやがる。おそらくこれが狙いだったんだろう。2人を孤立させるたのな」
このままではセンダイはジリー・プアー(徐々に不利)である。だがこの状況下では彼女に任せるしかないのだ!((センダイ=サンは『アイツ』の弟子だ。簡単には…やられるんじゃねぇぞ))再び部隊への指示へ戻った提督は司令室に檄を入れる!「お前ら!これは総力戦だ!なんとしてでも勝つ…キアイ入れろ!」「「「「「ヨロコンデー!!」」」」」
そして場面は戦場へと戻る!「イヤーッ!」ケジメカンムスの回転攻撃は止まらぬ!センダイはいまだ回避を強いられていた。「ハツカゼ=サン!援護を!」センダイが叫ぶが、「アイエエエ!」中破ミョウコウサーチライトに照らされたハツカゼは当然戦闘不能だ!「…イヤーッ!」センダイは垂直ジャンプして回転斬撃を回避!しかしこれだけでは終わらぬ。さらにカラテ艤装のブーストさせる!
◆「の→を」訂正ケジメ寝休憩します◆
◆再開◆
センダイはその勢いのまま、頭上に展開されるワイヤーの一本を逆さまに蹴って跳ね返る。回転するコマは真上から押さえて止めるべし!センダイの降下ストンピングがケジメカンムスを捉える!「イヤーッ!」「グワーッ!」高速回転の慣性で完全回避は間に合わない!
脳天を踏みつけられることは免れたものの、左肩に重い一撃を受け姿勢を崩し、スピンしてダウン!「イヤーッ!」センダイはダウンするケジメカンムスに向かって容赦なくカラテ魚雷発射!だがケジメカンムスはワイヤーを射出し飛び上がって回避!「イヤーッ!」「イヤーッ!」さらに追い打ち投擲されたゼロセンも叩き落としてみせた!
「オヌシの攻撃はすでに見切った」再び海上に降り立ったケジメカンムスにセンダイはジゴクめいて言い放つ。「回ることしかできない玩具程度のワザマエでは話にならぬ。敵艦殺すべし」その赤黒いシルエットは月の光を受けて不吉に浮き上がった。ケジメカンムスは挑発に無言で答え、改めて殺戮者に対峙する。「アイエエエ!」それにつけてもハツカゼのブザマ!
「イヤーッ!」まず仕掛けたのはセンダイだ!木人拳めいた目まぐるしい乱打がケジメカンムスを襲う!ケジメカンムスは二本のドスを防御に回さざるを得ない。攻守は逆転した。厄介な回転攻撃に入る前に優位を得ようという戦術だ!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」次々に繰り出されるセンダイの乱打!
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」それに応じるケジメカンムス!目にも留まらぬ両者の両手!互角!いや、センダイが長じた!「イヤーッ!」防御をくぐり抜け、ショートアッパーカットがケジメカンムスを捉える!「グワーッ!」ケジメカンムスはたたらを踏む。
ケジメカンムスがドスで反撃!「イヤーッ!」ナムサン、しかしタツジン同士のワン・インチ距離戦闘においては、武器よりも素手が実際小回りが利き実際有利!センダイは手の甲でドスを跳ね上げて反らし、ネコネコカワイイ・パンチでケジメカンムスの顎を打つ!「イヤーッ!」「グワーッ!」
センダイは追撃のチョップ動作に入る!「イ……ヌウッ!?」だがその時!センダイが唐突に片膝をついた。見よ、センダイの足元を!右足首にワイヤーが巻きついている。無論そのワイヤーはケジメカンムスの射出装置に繋がっている!「イヤーッ!」振り下ろされたケジメカンムスのカカト落としがセンダイの左肩を捉える!「グワーッ!」
ケジメカンムスが右ドスダガーで追撃!「イヤーッ!」だがセンダイは持ち手に頭突きを叩き込みこれを防ぐ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」逆の手で繰り出されるドスダガー斬撃!センダイは切磋にブレーサーで防ぐ、「イヤーッ!」「グワーッ!」しかしお返しとばかりにケジメカンムスの頭突きが顔面に叩き込まれる!
センダイは怯みつつもケジメカンムスの装束を掴み、トモエ投げに投げとばす!「イヤーッ!」「グワーッ!」海面に叩きつけられるケジメカンムス!「ヌウゥーッ!」センダイはダメージを顧みず両足を開いて腰を落とし、ゼロセンを構えた。上半身にカラテが集中する!これは奥義ツヨイ・ゼロセンの準備動作!
しかも、おお、見よ!ゼロセンをそれぞれの手に持ち、クロスさせて構えている!2機!2機同時に投げようというのか!一方のケジメカンムスはどうか?ナムサン!彼女とて大爆発四散を無力に待つようなサンシタではない。足を振り回すウインドミル回転で立ち上がり、その勢いのまま瞬く間にその身体は剣呑なドス・ダガーのタツマキとなる!「イヤーッ!」
「イヤーッ!」センダイは2機のゼロセンを同時投擲した!ダブル・ツヨイ・ゼロセン!反動風圧が海を切り裂く!二枚のスリケンはDNA螺旋めいた絡まり合う軌道を描いて、ケジメカンムスへ襲いかかる!「イヤーッ!」迎え撃つケジメカンムスの回転がブースト加速し音速に近づく!
ゼロセンが回転するケジメカンムスを捉える!ギャリギャリギャリ!不可思議な摩擦音が鳴り響きセンコ花火めいた火花が大量に噴き出す。やがて回転の中から流れ星めいて火の玉が飛び出し、明後日の方向へ飛んでゆく!火の玉の正体は弾かれたゼロセンだ!
ギャリギャリギャリ!摩擦音は収まらぬ。二枚のゼロセンの残る一枚が火の玉となって回転の中から飛び出し、いまだ戦闘不能のハツカゼのすぐ近くに着水!「アイエエエ!」それにつけてもハツカゼのブザマ!タツマキとなったケジメカンムスはセンダイめがけて降下する!「イイイイヤーッ!」
「イヤーッ!」センダイは果敢に迎撃!ブーストジャンプし襲いかかるケジメカンムスにみずから跳躍、タツマキに飛び込む!なんたる蛮勇!これでは切り裂かれて全裸重点……否!センダイはケジメカンムスと共に回転を開始した。ゴウランガ!一体何が!?
望遠レンズとスローモーション処理が可能な読者諸氏には見える!回転するケジメカンムスの手首をセンダイの左手が掴んでいる。これによってセンダイはケジメカンムスの回転と同体となり、斬撃を無効化したのである。さらに自由な右手で、回転しながらケジメカンムスに連続攻撃!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」繰り出される苛烈なチョップ連打!ケジメカンムスも回転しながら、掴まれていない手で相殺攻撃!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
センダイの瞳にセンコめいて灯る赤黒い光と、ケジメカンムスの右目の青い光が美しくイルミネーションする。だがこの回転の渦中にバイオスズメが紛れ込んだとしたら、即座にネギトロと化すであろうことは間違いない。ケジメカンムスはセンダイのチョップを打ち返し続ける!「「イヤーッ!!」」やがて二者が地面に叩きつけられた!しかし……「アイエエエ!」それにつけてもハツカゼのブザマ!
【KANMUSLAYER】
◆艦◆カンムス名鑑#64【駆逐艦、朝潮型姉妹】キョート・チンジフ、スズヤ派閥の艦娘たち。たぶん全員がアデプト位階かと思われる。名前がなんかややこしい◆艦◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
「どちらもやりおる!」ナガトは液晶モニタに熱っぽく叫び腰を浮かせた。「素質があるやも知れん…私のカラテの礎となる素質がな!流石はセンセイの弟子といったところか」「ふーん」スズヤは鼻を鳴らした。「別にアンタの獲物になると決まったわけじゃないじゃん」「駆逐艦娘にしてはやるようじゃな。ムラクモ=サンよりやや上か」ムサシは唸った。「イソカゼ=サン程ではないが、だが実際強い」
「結構つよいねこの2人」ウンリュウは茶菓子をつまんでいる。「でもセイカンヤの人たちやソウリュウ=サンをやっつけたのがこの人なんだよね?もうちょっとつよくてもいいかもしれないけど」「……秘密が隠されているのです」タイホウが静かに言った。
「スズヤ=サン、やっぱりセンダイ=サンが勝つと思う?」ウンリュウはスズヤに茶菓子を手渡した。スズヤはひとつつまみ取り、齧りながら言った。「どーかなー…有効打がお互いに撃ててないしぃ。どっちがやられてもおかしくないけど、でも得物がある分ケジメなんとかの方が有利かも」
「そう、それが一番の脅威要素です」とタイホウ。「ケジメカンムス=サンのあの奇妙な回転攻撃はカマイタチ・ジツ。おいそれとお目にかかれるジツではありません」「知っているのかタイホウ=サン?」ナガトはタイホウを見る。「少しだけですが、古事記の時代より秘密伝承されてきた暗黒魔技と聞きます」
「暗黒魔技…か」「それほどのワザマエであればこそ、かもしれません」タイホウは画面を凝視している。「艦娘と深海棲艦娘のハイブリッド、さらにカマイタチ・ジツか。かなりの脅威要素というワケじゃ…だから」ムサシはチラリと後ろを見た。「やられてしまったということか。しっかりと反省せい」
ムサシが振り向いた先には8人の艦娘が立っている。朝潮型姉妹のうち6人、そしてムラクモ、ユウバリである。「「「「「「「「ハイ………ゴメンナサイ…!」」」」」」」」8人の顔は総じて真赤、足をガクガクと震わせている。その足元にあるのは健康マッサージタタミだ!8人は一時間程前からこの上に立たされており、さらに両手には水の入ったバケツを持たされている!その痛みは読者諸氏には想像できないであろう痛みだ。
「ちょっとカワイソウだけどねー」「がんばって」スズヤとウンリュウは茶菓子を食べながらその壮絶な有様を呑気に眺めている。「あともう一時間はそのままでいろ。ところでトネ=サン。お前はどう思う?ケジメカンムス=サンが勝つと思うか?」ムサシは先ほどから黙って画面を凝視しているトネに話を振った。
「いや…まだわからんのじゃ。センダイ=サンとかいう艦娘、中々やる…中々…」トネは画面を凝視しながら言った。「ほう?お前が褒めるとは珍しいこともあるものじゃの。『大したことないのじゃ!吾輩に比べれば!』とでも言うと思ったが」ムサシにからかわれるが、トネは真剣な様子で扇子を仰ぐ手も止め画面を凝視している。
「…トネ=サンの言う通りかと。センダイ=サン、まだまだやりそうです。これは…中々…」タイホウがトネに続く。2人は画面を凝視している。その視線はセンダイの身体の、ある一部分に注がれているようだ。とても神妙な面持ちである。「お前らどこを見とる…?」ムサシは不思議そうな顔をした。「いや待て!ケジメカンムス=サンが仕掛けたぞ!見ろ!」ナガトが液晶モニタを覗き込み、叫んだ。
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◆間が空いてしまったが即座に更新する◆
「イヤーッ!」「グワーッ!」ケジメカンムスが先んじた!着地の隙を狙ったワイヤーブースト加速膝蹴りがセンダイの胸板を打ち、弾き飛ばす。吹き飛ばされたセンダイの装束はところどころが切り裂かれ、切り傷の入った肌が露わ。対するケジメカンムスの至る場所にも痣ができている。しかしいち早く膠着状態から復帰したのは彼女だったのだ。
センダイはバック転を二連続で繰り出し着地。そこへケジメカンムスが危険な横回転攻撃で迫る!「イヤーッ!」センダイはゼロセンを2機投擲!しかしこれは悪手だ!「イヤーッ!」ケジメカンムスは回転の勢いそのままにゼロセンを明後日の方向へと弾き飛ばす。ドスダガー斬撃がついにセンダイに到達!「グワーッ!」
飛び散る鮮血!咄嗟に身をそらしたが脇腹に一閃の斬り傷が描かれる。センダイはたまらずダウンし膝をつく!「ヌウーッ…!」「貴方をケジメする!」これを勝機とみたケジメカンムスはセンダイの頭上にワイヤーを放ち、ブースト加速跳躍した!爆発的な勢いで上昇!
そのままケジメカンムスは頭上に張り巡らされたワイヤーを蹴り、さらにブースト加速!「ケジメ!」容赦なき高速縦回転斬撃で襲いかかる!ほんの一瞬の間にケジメカンムスは音速に達する速度まで加速し、空気を切り裂くような耳障りな音がセンダイに覆い被さった。センダイは未だ動けぬ!ケジメのち大爆発四散不可避か!?
だが…その時である!タタミ1/4程にも満たない距離で、センダイをケジメせんと襲いかかるドスダガーが、音速回転するケジメカンムスの身体が大きくブレたのだ!「!」ケジメカンムスは信じられないという表情を浮かべた。それはコンマ数秒にも満たないほんの一瞬であった。だが遅い!「イヤァアアアーッ!!」センダイが限界近くまで溜めたサマーソルトキックを叩き込むには十分な程に!おお、ゴウランガ!
「グワーーーッ!!」粉々に砕け散るサイバーメンポ!ケジメカンムスは仰け反りながら海面に叩きつけられた!なぜケジメカンムスほどの使い手がフィニッシュムーブをしくじってしまったのか!?そう、その答えは!「私だ!」ケジメカンムスの背後で颯爽とアイサツする者あり。海面に膝をつき、己のこめかみに指を当てている「改めましてドーモ……ハツカゼです!」
「何」ケジメカンムスは再び信じられないという表情を浮かべた。それはハツカゼに向けられたものではない、自分の頭上だ!「あばばばばばーっ!!」「脳あばーっ!?」「ざっけあばばばばばーっ!!」上空でワイヤーを保持していたクローンヤクザ妖精が、口から泡を吹きながら、殺虫剤を吹きかけられたハエめいて海面にぼとぼとと落ちてゆく!「ゲホッ!やっぱ単純な思考してるわ。揃いも揃って『休んで遊びたい』って思ってる!何匹いようが朝メシ前よ!」
鼻血を垂らし、片目から出血しながらもハツカゼは勝ち誇る。つまりこうだ、ケジメカンムスが回転攻撃の支点にしていた頭上のワイヤーを保持するクローンヤクザ妖精に、ハツカゼはまとめてマインド攻撃をかけたのだ!「イクサってのはやっぱロクなことがない…ミョウコウ=サンのサーチライトには首がヘシ折れて死ぬかと思ったけど、クローン妖精は使い物にならないわ!徹底的にやってやったからね!」
これも説明せねばなるまい!センダイはケジメカンムスに先ほど2機のゼロセンを投擲した。これは回転攻撃によっていとも簡単に弾き飛ばされてしまったように見えた。しかしこれは決して悪手ではなかったのだ!その弾き飛ばされたゼロセンは中破ミョウコウサーチライトを支えるクローンヤクザ妖精の片方の顔面に直撃!それに驚愕するもう片方の顔面にも残りのゼロセンが直撃!センダイは弾かれる方向を予測してゼロセンを投擲したのである。その証拠として、壊れたサーチライトの部品と、二匹のクローンヤクザ妖精の水死体が浮かんでいる。なんたる窮地に陥った状況にも関わらぬ冷静なカンムス、そしてニンジャ判断力か!
センダイは傷も晒されかけている素肌もものともせずジゴクめいた歩みでケジメカンムスに突き進む。その瞳にセンコめいて灯るのは赤黒き炎!殺艦衝動がバトルフィールドを満たしてゆく!殺気に当てられたケジメカンムスが再び戦闘態勢を取ろうとする。だが次の瞬間、一瞬にしてワン・インチ距離に踏み込んだセンダイは、渾身のカラテストレートをケジメカンムスの顔面に放ったのだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」
【KANMUSLAYER】
◆艦◆カンムス名鑑#65【駆逐艦ケジメカンムス】無所属、セイカンヤ出張中のカトリ先生によって生み出された、艦娘と深海棲艦娘の製造技術の結晶。無機質なキツネ・オメーンで顔を隠し、自分の生まれた意味を見つけるために無差別ケジメ事件を引き起こした。彼女の本当の名前は…。なお下着はつけていない。履く意味がよくわかっていないからだ。◆艦◆
◆久方ぶり更新メント、クライマックスまで近いのだなあ◆
【KANMUSLAYER】
海面に叩きつけられるケジメカンムス!その姿を海に落ちてもなお、ヤクザ妖精が持っていたライブカメラは浮かびながら捉え続けている。「提督=サン!見てください!」ネオサイタマ・チンジフ司令室でその様子を見守っていたオペレーター艦娘たちは浮足立った。「提督=サン?もっとよく画面を見てください!なぜ目を背けているのですか!?」
各部隊の戦闘状況も落ち着きつつあった。中には撤退を始めたキョートの部隊もある。未だ激しい戦闘を行っているのはセンダイとアンノウン艦娘のイクサだけだった。「だからなぜ目を逸らすのですか!」提督は画面を直視しようとしない。否!できぬのだ!「いや……だから、ソイツ…はいてな」「ま、待ってください!対象のカラテ反応が急激に上昇…これは!」画面内のケジメカンムスが立ち上がる。その眼には…
ケジメカンムスのニューロンは青く塗りつぶされた。飛びかけた意識が現実に引き戻される。目の前に立つのは誰だ?分からない。しかしケジメだ、ケジメあるのみ!「…ケジメ!」右目から青き光が焔めいて吹き出す。再度センダイに向けて高速回転突進!「イヤーッ!」センダイは垂直跳躍!「何度も同じ手など実際悪手!」
「それは貴方の行いです」回転しながらケジメカンムスが叫び返す。回転の軌道が突如不規則にぶれ、センダイの降下攻撃を回避!そのまま着地したセンダイの周囲を衛星めいて回転する!アブナイ!「貴方をケジメする!」今までにおいて最速のドスダガー斬撃である。もはや音速の域に達している!
センダイは一転、防御専念を強いられる。周囲を回転しながら激しく繰り出されるケジメカンムスのドス斬撃!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
ゴウランガ!恐るべき攻守の応酬!ケジメカンムスの衛星回転ドス斬撃の執念深さは驚異以外の何物でも無い。それら斬撃の一つ一つを速く、なおかつ丁寧にチョップで弾き、あるいはブレーサー(手首装甲)でそらしてゆくセンダイ。そのニンジャ&カンムス集中力が試されている!「…っつ、ぷあー!!へ、へへ…ザマアミロってのよ!全滅重点ね!良しちくしょう!」その側ではすべてのクローンヤクザ妖精を戦闘不能にしたハツカゼが大きく息をついた。
「次はセンダイ=サンを…アイエッ!」ハツカゼのすぐそばをドスダガー斬撃が通過する!驚いて飛び退くハツカゼ。二者の凄惨なイクサを目にし、思わず身体が震え上がる。((あんなに重い一撃食らったってのにいつの間に…!と、とにかくヤツにもニューロン攻撃を!))果敢にユメミル・ジツによる攻撃を仕掛けるが…「ンアーッ!?」ハツカゼの意識はケジメカンムスのニューロンに弾き飛ばされた!今の感覚には覚えがある。これは、あの時の!
「ゲホッ!センダイ=サン!聞いて!」ハツカゼはふらつく頭を抱えながら呼びかける。返答を求めている訳ではない。しかし分かったことがあった。「その人……操られてるわ!おそらく前戦った港湾棲キ=サンに!!」これは憶測ではない。確かに感じたことである。囚われていた仲間達を治療した時にも感じた、対象のニューロンに絡みつく紫色の触手のイメージをケジメカンムスにも確かに感じたのだ!
だが当の本人は、自分がジョルリ人形めいて操られているということすら理解していなかった。傷口から血が吹き出し、回転する斬撃の風圧を受けて霧状に拡散する。「ケジメ!ケジメ!ケジメ!」なぜこの目の前の艦娘は全裸ケジメされて崩れ落ちぬのだ!いつしか彼女の視界は余分な周囲の光景を流し去り、斃すべき敵であるセンダイだけの世界が映し出される。やがてその像すらぼやけ、その動きと空気の振動だけが輝く影となって立ち昇ってくる……。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」・・・・
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」背後の暗黒はいつしか不可思議な光景に変わってゆく。平らな水平線と無機質な地面……砂浜……そして宙に浮かぶ黄金の月……敵対者のカンムスソウルの輪郭。そしてセンダイのニンジャソウル!赤黒き炎!
◆寝休憩◆
◆速朝再開◆
イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」背後の暗黒はいつしか不可思議な光景に変わってゆく。平らな水平線と無機質な地面……砂浜……そして宙に浮かぶ黄金の月……敵対者のカンムスソウルの輪郭。そしてセンダイのニンジャソウル!赤黒き炎!
ケジメカンムスは困惑した。そして畏れた……ケジメカンムスの内なるカンムスソウルは、眼前のこの不定形の混沌めいた存在、ニンジャソウルに本能的な恐怖を感じた。それは感情に乏しい自分においてすら経験した事のない、不可解な恐怖である。これは何なのか?彼女は何なのか?「イヤーッ!」ケジメ!乱れ飛ぶセンダイの衣服の切れ端!剥かれていく装束!「こっ…これは!マズイわ!」何かを察して慄くハツカゼ。アブナイ!このままではセンダイのIP が!
回転するケジメカンムスから紙吹雪めいて噴きあげられる衣服の破片!おお…ナムアミダブツ!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」もはやセンダイはもはや下着一枚の姿でケジメカンムスの攻撃をいなしているのだ!しかしその最後の砦である下着でさえも綻び、ほつれ破けようとしていた。ケジメカンムスの攻撃は止まらない!そして……ついに!!
「ンアーッ!!」ケジメカンムスの恐るべき斬撃がついにセンダイの下着を捉える!センダイの下着の破片は空高く吹き飛び…おお、ナムアミダブツ!ナムアミダブツ!そこにあったのは生まれたままの姿のセンダイ!カメラ一面に映し出されるたわわな尻!そして……おお、前も、前も!「ウッ…ウワアアアアアアーッ!センダイ=サーーーーン!!」叫ぶハツカゼ!さらにケジメニンジャが高速回転しながら迫る。狙うはカイシャクただひとつ!「イヤーッ!」
センダイが全裸ケジメされた瞬間、提督はさらに画面から目を背け、固唾を飲んでその様子を見守っていたタイホウとトネはなぜか自分の胸がしめつけられるような感覚に陥った。センダイのIPが、完全に開示され……「イヤーッ!」ケジメカンムスのドスダガーを持つ手が止まった。回転が瞬時に止まったケジメカンムスは己の拳を見た、掴まれている。
「なぜ…!」自分の拳を掴んでいるのはただ1人しかいない、センダイだ。全裸ケジメしたはずの艦娘が平然と自分の腕を掴んでいる。「…う?センダイ=サン、それって!?」恐る恐る眼を開いたハツカゼは驚愕に眼をむいた。その視線はセンダイの身体に貼られていたものに釘付けとなった!両胸の先端、そして股の間に貼られているものに!!
「ばっ……絆創膏!?ナンデ!絆創膏ナンデ!?」そこに貼られていたのは3枚の絆創膏であった。普段なら傷口を守るための絆創膏が、今はセンダイの羞恥心の最後の砦とも言える部分を実際完璧に保護しているのだ。おお、ブッダも照覧あれ!センダイは決して全裸などではない!全裸の寸前で踏みとどまってみせたのである!提督は画面に目を戻し、また背けた。タイホウとトネは顔を赤くして思わず胸を隠した。「ヌウーッ!」センダイの視界が赤く染まる。羞恥心を殺艦衝動で押しつぶすが如く!
センダイの赤く染まった視界がすぐに晴れ、彼女は己の自由な方の手がケジメカンムスの首を掴んでいるのを見た。首を掴み、もろともに大きく跳躍していた。ニューロンの指令をも上回る速度であった。持ち上げられながらケジメカンムスがもがいた。しかしセンダイが手を離すことはなかった。「敵艦…」センダイは己の口から自然と言葉を口にした。
『憲 兵』のカンジが刻まれたメンポがバキバキと音を立てて変化した。その一層凶暴に変化したメンポに刻まれるのは『殺 艦』の禍々しき二文字!「敵艦、殺すべし!」ケジメカンムスがもがく。「イヤーッ!」両手を離し、握った拳をケジメカンムスに叩きつけた。「イヤーッ!」叩きつけた。「イヤーッ!」叩きつけた。「イヤーッ!」叩きつけた。己の拳と瞳は赤黒き瞳に包まれている。
ケジメカンムスの瞳には、自分を打ち上げ続けるセンダイの双眸を、鏡めいて写していた。センコ花火めいた眼光を。最高点まで達したセンダイは両手指を組み、振り上げた。「スゥーッ!ハァーッ!」背中を反らし、拳に力を込める。そして、「イヤーッ!」振り下ろす!ケジメカンムスに、両拳が叩きつけられる!「グワーッ!サヨナラ!」海面に叩きつけられたケジメカンムスが爆発四散!「グワーッ!」同じく海面に落下し、後方へ吹き飛ばされるセンダイ!
「ンアーッ!」自分の方向に飛んできたセンダイをハツカゼはなんとか受け止めた。慌ててセンダイの無事を確かめる。意識を失っている。しかし脈はあり、呼吸もしている。気絶しているだけのようだ。ハツカゼは全ての力が抜け切ったように脱力する。ケジメカンムスは大破した。センダイに言葉が伝わったかどうかは分からない。自分たちを呼ぶ声が遠くに聞こえる。引き返してきた仲間の部隊たちだ。ハツカゼには声を出す気力すら残っていない。できることといえば、あられもないセンダイの姿に上着をかけること。それくらいだけだった。
【KANMUSLAYER】
◆開示は防がれたのだなあ。もう少し続くが早めに更新すると思う。以上です◆
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【KANMUSLAYER】
…………01101011010
彼女はいまだ暗い海に落ち続けていた。海面は遥か遠く、もう見えない。闇がひろがっている。彼女は抵抗しなかった。もう終わりにしよう。そう思った。ただ身を預けて落ちてゆく。最後まで自分の生まれた意味を理解することはなかった。後悔はあまりなかった。
彼女は目を閉じようとした。「待て」しかし、それを遮るように声が響く。それは超自然的な声で、彼女の意識に響くように聞こえた。自分の隣に大きなシルエットが現れる。見覚えがある。これは、夢の?「私はお前だ」影は言った。その影は以前見たときよりも明らかに風化し、崩壊しつつある。
「あなたは誰ですか?」彼女は思わずそう返す。影は語り始めた。「私はお前の中にある。1939年に、13番艦として生まれ、第17の部隊のひとつだった」何を言っているのかはよく分からない。だが彼女は静かに耳を傾ける。「私は最後まで戦った。戦い切ったのだ。そして坊ノ岬、ここで私は終わった」影は急激に風化してゆく。どんどん崩れ、形をなくしてゆく。
「これが01私の0101全てだ」影は彼女にそう語りかけた。ノイズがそれをかき消してゆく。「最後に0101伝え011010る。お前の101名前10110110」「私の名前?」「そう0110101、お前の名は101011010001011010………」彼女は影の最後の言葉を聞いた。影は消えた。彼女は再び1人で落ち続ける。
彼女は薄れゆく意識の中で、最後に自分の名を知ったのだ。それは彼女にしかないもの。今まで持っていなかったものだ。彼女は満足し、再び目を閉じる。生まれた理由は分からないまま、しかし最後に知ることができたもので彼女は満たされていた。さまざまな景色がソーマト・リコールしてゆく。後悔はないと思っていた。そう思っていたが一つ心残りなことを見つけた。できれば、もう一度、もう一度だけ、あの人のあの店で……あの味を。
『待って!』
再び彼女に誰かの声が響いた。先ほどとは比べようもない、ちいさな影がこちらに手を伸ばしている。その銀色の小さな影は必死に落ちる自分を追いかけている。『この手を掴んで!』影が叫ぶ。その声には決死の覚悟があった。彼女は無意識に手を伸ばしていた。『もう…ちょっと!』銀色の手が自分の手を掴もうと伸ばされた。彼女はそれに応えるように、さらに手を伸ばした。やがて、銀色の手が自分の手を掴んだ。意外なまでに、それは力強く彼女の手を掴んだのだ。
その直後、彼女は急激に上昇した。身体と意識がどんどん引っ張られる。あれほどまでに長く感じていたはずなのに、光が見えてくる。あれはなんだろう?理解が追い付かないほどにそれは鮮烈な変化だった。銀色の影に導かれ、彼女は光に包まれていく…………
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…目を開けた。上体を起こし、あたりを見回す。彼女の視界に入ってきたのは『誰かたち』の顔だった。そろって自分の顔を見つめている。見覚えのある顔は少ない。安堵する顔、固唾を呑むような顔、その中の白い軍服を着た人物の顔には最も見覚えがない。今まで会った艦娘の中にはこのような体つき、顔立ちに覚えはない。「…………」しかし見覚えのある顔もある。自分の手を掴んでいる艦娘だ。荒く息を吐き、鼻血を垂らしている。
そして自分が寝かされていたベッドを囲んでいる『誰かたち』の中の一人が一歩前に進み出た。この顔にも見覚えがある。「ドーモ、はじめまして!」その艦娘は青い右目を持つ自分を覗き込み、人懐こそうに笑った。「私はセンダイです。あなたの名前は?」センダイと名乗る艦娘はこちらに手を伸ばしてきた。彼女はゆっくりとその手を取ると、絞り出すように答えた。自分の名を。
「………私は、ハマカゼです」
【ブレードカンムス・ヴェイカント・ヴェンジェンス】終わり
(親愛なる読者の皆さんへ : 終わるのに凄まじく長くなってしまって申し訳ありませんでした。続きの話は思いついたらやる。なお放置中のもういっこのSSも再開できそうならするつもりです。今はただ、備えよう。以上です)
◆艦◆カンムス名鑑#66【駆逐艦ウラカゼ】表向きはオデン屋の店主、しかしその実はネオサイタマ・チンジフ直属の情報収集部隊長である。生来の気前、面倒見の良さから店に訪れる敵艦娘だけでなく深海棲艦娘までも懐柔する手腕を持つ。度々チンジフにも帰還し、提督のことをカタブツだと思っているが、やけにちょっかいをかけているらしい。ハマカゼが姉妹艦であったことには薄々と気づいていたようだ。◆艦◆
◆艦◆カンムス名鑑#66【駆逐艦ウラカゼ】表向きはオデン屋の店主、しかしその実はネオサイタマ・チンジフ直属の情報収集部隊長である。生来の気前、面倒見の良さから店に訪れる敵艦娘だけでなく深海棲艦娘までも懐柔する手腕を持つ。度々チンジフにも帰還し、提督のことをカタブツだと思っているが、やけにちょっかいをかけているらしい。ハマカゼが姉妹艦であったことには薄々と気づいていたようだ。◆艦◆
(親愛なる読者のみなさんへ : こんなのってないぞ、エラー連投いい加減にしろよ…。続きのなんかが思いついてきたので一週間以内にはやると思える。なおもういっこのSSの方は未だ備えてください。以上です)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆やっぱもうやります。始まりな◆
【シュツゲキ・レイゴウ・オペレイシヨン】
夜の海は実際静かである。あたり一面を支配するのは闇の他にない。しかし目を凝らすと小さな光が見えてきた。その光はぽつりと浮かぶちいさな無人島から見えてきているようだ。
その光源は焚き火である。そしてそれを囲むように5人の人影があった。「……あのさァ、大将」その中の1人が重い沈黙に耐えかねたように声を発する。彼女が話しかけたのは日の前に座り、淡々と折った枝をくべ続けている人影に対してだ。「…何だマヤ?下手に喋るのはよせ。ジャングルに潜伏しているベトコンに見つかったらどうするつもりだ」
キョート・チンジフを独断退社した艦娘たち、サヴァイヴァー・チンジフを率いる重巡洋艦娘、ナチは静かに答えた。しかし対するマヤは不機嫌なネコめいてほおを膨らませる。「だってよぉ大将…おれ、ハラが減っ」「言うなッ!」ナチは手元の小枝をへし折り粉々にした。「甘えるな!サヴァイヴするということは常に物資や食料を確保できるということはあり得ない!欲しがりません!勝つまで…うぐっ」
ナチの口上は己の腹の音に遮られて続かなかった。無理もない!彼女たちはこの数日間の間、十分な食料を確保できていない状況だからだ。「ンだよっ!大将だってハラ減ってんじゃねーかよ!」「うっ、うるさい!空腹などキアイで何とかするのだ!補給兵の到着を待て!」なんたる無茶か!キアイで腹は膨らまぬ!
「ウワーッ!やだやだやだやだー!腹減ったー!なんか食べてえよー!ウワーッ!」マヤは背中から倒れるとバタバタと暴れた。行き場のない怒りが爆発したのだ!しかし無駄にエネルギーを消費しているだけだと気づいたのですぐに止めた。「チックショー…!これもすべておめーのせいだぞ!」たき火を挟んで自分の前に座っている艦娘に指を突き付けるマヤ!
「Heyッ!イムヤ?あんなこと言われてるわ!」「へ?イムヤのこと?」「ちげぇよ!おめーだよおめー!アイオワ!お・め・え・だ・よッ!!」マヤは怒りの形相で目の前の戦艦娘を睨み付けた。「What?アタシのこと?」「おめー以外に誰がいるんだよッ!この大メシ食らいが!」「Oh~…」その胸、尻、すべての肢体が規格外に豊満である戦艦娘、アイオワは肩をすくませてみせる。「どんだけ食ったと思ってんだ!?備蓄してたのもペロッとたいらげやがって!」「つまりアタシはジャパニーズで言うタイショク艦ってわけね?アHAHAHAHAHA!」「ウッガーッ!ジョーク言ってる場合かチクショオオオオ!」マヤは行き場のない怒りでジタバタすることしかできぬ!
そう、お気づきの通りアイオワはサヴァイヴァー・チンジフに所属に所属したばかりの新顔である。以前キョート・チンジフの艦娘建造プラントを襲撃した時、生まれたばかりの彼女をナチが鹵獲かつスカウトしたのだ。彼女はメンバーの中でも頭一つ大きく、その肢体も戦艦娘の中では最大クラスのボリュームである。「小さいことは気にしなーい!次の襲撃作戦もアタシに任せておいて!」「バッキャロー!この前もそんな事ほざきながら食糧倉庫ごとフッとばしたじゃねーか!どんなバ火力してやがんだッ!」「そういうこともあったかしら?…Oops!そういえばアタシ弾薬空っぽだったの忘れてた!そもそも襲撃もできないわね!アHAHAHAHAHA!」「ウアアアアア畜生ウワアアアアーッ!」マヤのメンタルは臨界点寸前であった。
◆上の2レスを半分ずつ分割ケジメすればよかったと後悔し寝休憩します◆
◆1日おき再開◆
「Heyッ!イムヤ?あんなこと言われてるわ!」「へ?イムヤのこと?」「ちげぇよ!おめーだよおめー!アイオワ!お・め・え・だ・よッ!!」マヤは怒りの形相で目の前の戦艦娘を睨み付けた。「What?アタシのこと?」「おめー以外に誰がいるんだよッ!この大メシ食らいが!」「Oh~…」
その胸、尻、すべての肢体が規格外に豊満である戦艦娘、アイオワは肩をすくませてみせる。「どんだけ食ったと思ってんだ!?備蓄してたのもペロッとたいらげやがって!」「つまりアタシはジャパニーズで言うタイショク艦ってわけね?アHAHAHAHAHA!」「ウッガーッ!ジョーク言ってる場合かチクショオオオオ!」マヤは行き場のない怒りでジタバタすることしかできぬ!
アイオワはサヴァイヴァー・チンジフに所属に所属したばかりの新顔である。以前キョート・チンジフの艦娘建造プラントを襲撃した時、生まれたばかりの彼女をナチが鹵獲かつスカウトしたのだ。彼女はメンバーの中でも頭一つ大きく、その肢体も戦艦娘の中では最大クラスのボリュームである。「小さいことは気にしなーい!次の襲撃作戦もアタシに任せておいて!」アイオワは大げさなウインクを飛ばしてきた。
「バッキャロー!この前もそんな事ほざきながら食糧倉庫ごとフッとばしたじゃねーか!どんなバ火力してやがんだッ!」「そういうこともあったかしら?…Oops!そういえばアタシ弾薬空っぽだったの忘れてた!そもそも襲撃もできないわね!アHAHAHAHAHA!」「ウアアアアア畜生ウワアアアアーッ!」マヤのメンタルは臨界点寸前だ!再び地面の上で身体を投げ出してバタつき始める。
「そんなにお腹すいてるの?イムヤは別にだけどなあ」「ブッダファック!低燃費のおめえと一緒にするな!うう…スシ、ケバブ…食べたいよぉ…!」「フフフ!楽しみだわ。いつかステキなAdmiralに会うのよ!待っててねマイダーリン!Chu Chu!」呆れるイムヤ、ベソをかき始めたマヤ、虚空に投げキッスを飛ばすアイオワをナチは一喝する。「ええい!静まれお前ら!次の襲撃作戦は成功させる!必ずだ!」
「でもよお大将…最近オレたち失敗続きだぜ?どうせ、また…」「うぐっ…!」すっかりしょげかえってしまったマヤの言葉にナチは同意しかけてしまう。これは実際図星だ。このところ何もかも全てが上手くいかない。新顔のアイオワのせいという訳ではない、手に入れた物資を手放さざるを得ない、罠に嵌められる、苦労して潜入した倉庫に何もなかった…そんなことばかり起こっている。
しかしそんなネガティヴ極まりない感情を振り払うようにナチはアタマをブンブンと振った。こいつらはいずれ共にジゴクに連れて行くつもりである。しかし今はその時ではない、なんとかしなければならぬ。「案ずるな。今回こそは成功する…バイオマングローブ林の奥底にベトコン共の秘密補給基地があるのを突き止めた。次のターゲットはそこだ」「でもなー…イムヤたちもう弾薬も燃料もほとんどないし、この状態じゃあ無理があるよ」
「そうだ。だから今回は私の単独任務とする。お前たちは待機していろ」「まっ、待てよ大将!そいつぁ無茶ってもんだろ!」マヤは慌てて跳ね起きる。しかしナチはそれを制した。「この中で弾薬に関して全く必要でないのは私かお前ぐらいだ。しかしお前は潜入任務に向いていない…そうなればこの私以外に誰がいる?」「それは…そうだけどよ」
「燃料は現地で調達する。お前たちはここから動くな、もし私が帰らなかったら…その時は分かるな?」ナチの有無を言わせぬアトモスフィアがマヤたちを沈黙させた。だがナチは内心焦っていた。物資不足もそうだが何よりも…「…リュウジョウが逝ってしまう前になんとかしなければ」ナチの視線は簡易ベッドの上に寝かされたリュウジョウに向けられる。
「アガ…アガガ…ボーキ、ボーキくれぇ…アガ、アガ…」もともと小柄なリュウジョウの身体はさらに縮んで見えている。虚ろな目でうわ言を繰り返していた。これはボーキ不足の末期症状に他ならない!空母娘や軽空母娘にはボーキ成分が要となる。過剰摂取するのも危険だが不足するのも危険極まりない。このまま自然に大爆発四散してサヨナラしてもおかしくない状態である!
「クソ…リュウジョウがこのままじゃ死んじまうよぉ…!」「大将に任せるしかないね。死にかけのバイオ鯉みたいになっちゃってるもの…」「ワオ!この状態アタシ知ってるわ。Japaneseコトワザで…エーット、マナイタの上の…マナイタ?」3人がリュウジョウを心配そうに見つめている。ナチは胸が締め付けられる想いだった。自分には責任がある。ナチは立ち上がる。まずは準備だ。決死の単独作戦が今、始まろうとしていた。
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数刻後、とあるマングローブ林
海上に唐突に現れるこのマングローブ林の異様なシルエットは底知れぬアトモスフィアを醸し出している。海上緑化計画のため、旧世代に生み出されたバイオマングローブが計画の無期限停止を受け放置され拡大、その末にこの島めいた様相を形作ったのだ。このマングローブ林は野生化したバイオテナガザル、バイオパンダなどが生息する危険地帯でもある。
人の手が入るべきではない場所であるのは読者諸氏も一目で分かることだろう。「……………」しかし、ひとつのマングローブの上から双眼鏡を覗く者がいる。赤黒い装束、『憲 兵』のカンジが刻まれたメンポをつけたその艦娘はセンダイ、憲兵であり、ニンジャである。
彼女の覗く双眼鏡に映るのは…巡回するヤクザスーツの二人組の人物。なぜこのような場所に!?「…やはり、クローン軽巡洋艦か」ナムアミダブツ!クローン軽巡洋艦は暗黒メガチンジフ・セイカンヤの尖兵である。つまりはこのマングローブ林の中にセイカンヤ関連の施設があることは想像に難くない!
これは任務である。そのコードネームは『レイゴウ作戦』。旧世代において存在した、戦争時のとあるオペレーションネームから取ったものだ。センダイはその作戦に志願した。先の戦いで全裸ケジメされた肉体的かつその姿をモニタリングされていたという多大な精神的ダメージからなんとか回復し、すぐさま戦線に復帰したというわけだ。
(思った以上に警備は厳重か。たやすく秘密施設を発見、侵入できるとは思っていなかったが……ヌウゥゥッ…!まさかあの姿が撮影されていたとは。さらにそれを提督=サンに見られたという事実!やはり敵艦殺すべし…!)なかば八つ当たりめいた感情で、持っていた双眼鏡がミシミシと音を立て始める。しかし今は任務中だ、センダイは心をやや無理やり落ち着かせる。「……そろそろ行動を開始しましょう」
センダイは自分の後ろに向かって声をかけた。この任務は単独任務ではない、もうひとり仲間がいるのだ。「ちょっと……待ってくれないか。もう少しで終わるから…」だがその当人はセンダイに背を向け、息を吸い込むと、美味そうに煙を吐き出した。「早めに終わらせて下さい」「悪いね、ウーン…」その人物は傷の目立つ白いコートを着、軍帽の下からこぼれる髪は極めて白い。
しかしその不自然な白さの理由をセンダイは知っている。いや、誰でも一目見れば分かるだろう。タバコをもつ逆の手に握られたケースに書かれた『BKT成分10mg』の文字を見れば、その白い髪がBKT中毒者特有のものと分かるはずだ。BKT成分(注釈 : バケツ成分)には鎮痛作用だけでなく思考の鈍化作用を持っている。しばしばBKT成分中毒に陥る艦娘は少なくないが、そのなかでもこの白髪は重度の中毒者ということを表している。
「フーッ…待たせたな。行こうか」「ハイ」タバコを揉み消した彼女は重い身体を引き起こす。調子を確かめるように首をこきこきと鳴らしている。「それじゃあ任務開始だ。いざリヒテンデス…リヒテン…エート、なんだったかな…」「Lichten des Ankersですか?」「そうだ!それだそれ。ははは…いかんな、ZBRのやり過ぎで身体をだけでなく頭も重くなってしまったか」自嘲めいて笑う彼女の名はグラーフ・ツェッペリン。その姿からは、以前の生粋の軍人めいた面影がどこにも見受けられなくなっていた。
【KANMUSLAYER】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
センダイとグラーフは木の上をしめやかに移動する。時折、バイオテナガザルが襲いかかってくる事もあるが、センダイがゼロセンで問題なく排除した。「フゥ、こういう任務は久々だ。身体がついていけばいいが…」小休止中、グラーフが軍帽をかぶり直す。そのつばの右側には何かに斬られたかのような大きな切れ込みが入っている。
そしてその切れ込みに続くように、グラーフの顔右側に薄っすらとキズが走っている事も分かる。彼女のガイジンめいた白い肌、右目を分断するかのように。さらに右目の色が左に比べやや違う。これはサイバネコンタクトレンズをはめているからであろう。
「ならばBKTを控えるべきでは?」「おいおい、それは叶わない話だ。おそらく止めるときは私が沈むときだろうな」センダイはこのセンパイとは昔から面識がある。当時ネオサイタマ・チンジフがマルノウチ・スゴイデカイチンジフと呼ばれていた時、グラーフはセンパイの中でも選りすぐりのエリート艦娘であり、自他共に厳しく、提督とチンジフへの忠誠心に溢れた尊敬を集める存在であった。
しかしそれはすでに過去の事。グラーフは『あの日』から、全てが変わってしまった者のひとりだ。つまりセンダイとある意味同じ……「それにしても君は任務となると性格が変わるな。全く別の子と話している気分になる」「スミマセン」センダイは頭を下げた。「アッ!いやいや!悪く言ってるワケじゃないんだ!すまない…私は口下手なんでね」
バツが悪そうに頭をかくグラーフ。彼女はチンジフに寄せられたどんな任務でも受ける。断ったことは一度もない。チンジフ近海に住む島民たちから要請される凶暴化したバイオ生物の駆除、物資運搬の護衛、その他クローン妖精でも片づけられるような仕事でも彼女は嫌な顔せずに引き受けてきた。それはある種の信念に従っているからかもしれない。何かの誇りめいたものに。
「……シッ」だが次の瞬間、グラーフの表情が変わり、センダイに伏せるように促す。その視線の先には6体ものクローン軽巡洋艦が巡回している。過剰なまでに厳重な警備だ。「いよいよ本拠地は近いというワケか」「排除しますか?」「ああ、だが待ってくれ。私ひとりでやる」
ゼロセンを構えアンブッシュしようとしたセンダイを制すると、グラーフは己の懐に手を伸ばし、ホルスターに収まっている得物の感触を確かめるかのように握った。「準備運動とまではいかんが身体を温めておかなければならないからな。任せてくれ」「…分かりました」センダイは素直に手を収める。「まあ万が一マズイ状況になったら助けてくれ!そうならないように努力はするつもりだが……それにあの人数、私向けの状況だ!」次の瞬間!グラーフはマングローブの上から跳躍していた!
クローン軽巡洋艦たちが異常に気づくよりも速く、グラーフはコートの内側のホルスターから2丁の得物を抜き放ちトリガを引いた!「イヤーッ!」放たれた大口径の弾丸が一人のクローン軽巡洋艦の頭をトーフめいて粉々に吹き飛ばした!「アバーッ!」そのまま集団の中心に降り立つグラーフ。クロスした両手に握られているのは18世紀に生まれたとされるドイツ純正拳銃、ライヒスリボルバー!「さあ!蹴散らすぞ!」カラテ姿勢を取るグラーフ!「イヤーッ!」ゴウランガ!これは暗黒武道、ピストルカラテの構え!
「ナンダテメッコラー艦娘!」クローン軽巡洋艦がロング・ドスダガーを左上段に構えて飛び掛かる!ナムサン!だがグラーフは素早いカラテで斬撃を回避してから、相手の懐へと飛び込む!そして拳銃を握った右腕で、敵のみぞおちに痛烈なボディブローを喰らわせた!リボルバーの重心を深くねじりこむ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」
痛烈なカラテを叩き込まれ、クローン軽巡洋艦の体が数センチ浮く!内臓破壊の手応え!さらにグラーフは容赦なく引き金を引いた!「イヤーッ!」大口径リボルバーが火を噴き、クローン軽巡洋艦の体に大穴を穿つ!ソクシ!その死体はワイヤーアクションめいて吹っ飛び、ヤクザマシンガンを構えていたもう一体に激突!ナムアミダブツ!
たかが旧式と侮るなかれ!ライヒスリボルバーは規格外の強度を誇り、1世紀後に起こった大戦においても使用されたという。さらに改造を加え、極大口径となったそれを制御するのはカンムス筋力を持ってしても至難の業だ。だが、暗黒武道ピストルカラテにおいて、反動は次なるカラテを生むエネルギーである!見よ!グラーフの右背後から迫ってきた敵のこめかみに、信じ難い速度の右エルボーがめり込んだ!「イヤーッ!」「アバーッ!」
「ザッケンナコラー艦娘!」接近戦は不利と見たクローン軽巡洋艦の一人が距離を取り、懐からオートマチック拳銃を抜き、グラーフに銃口を向ける!アブナイ!だが、バケツ・アドレナリンと持ち前のカンムス反射神経でニューロンを覚醒させているグラーフにとっては、この程度の攻撃を予測することなどベイビー・サブミッション!
敵の銃が唸りをあげる前に、グラーフは素早く身体を捻り、右エルボーを食らわせた瀕死のクローン軽巡洋艦に発砲!「イヤーッ!」「グワーッ!」ネギトロめいた肉片と化す!と同時に2挺分の反動をバックステップの力に追加し、グラーフ自身が後方にワイヤーアクションめいて美しく跳び、見事に弾を回避した!
バックジャンプするグラーフの背後には、カタナを構えたクローン軽巡洋艦!このままでは背中から突っ込んでしまう!だがグラーフは空中で右手のリボルバーを左脇の下に通し、射撃してきた敵に向けて二連射!反動を得たグラーフは空中で腰を捻り、背後のクローン軽巡洋艦に対して左足のボレーキックを決める!
「アバーッ!」その首がサッカーボールめいて吹っ飛ぶ!それと同時に最後の一人に対し、サイバネコンタクトレンズに表示された補助ターゲティングシステムの狙いから寸分たがわぬ急所に弾丸を叩きこみ即死!着地を決めたグラーフは鮮やかな回転演武を行った後、両手を腰に引いて静かにオジギをした。タツジン!
「ザ……ザッケ…」吹っ飛んできた仲間の死体によって押しつぶされ、脳震盪を起こしていたクローン軽巡洋艦が、ふらふらと身体を起こす。「おっと撃ち漏らしていたか!」グラーフはホルスターに仕舞いかけていた左のリボルバーで普通に遠隔射撃を決め、これを射殺。「グワーッ!」巡回部隊は完全に制圧した。
恐るべし、暗黒武道ピストルカラテ。何たる対多人数対応力と殺傷力か!だが、その様子を密かに窺う者がいたことを、グラーフも、それを見守っていたセンダイでさえも察知できなかった。マングローブの幹に身を隠した、編笠を被った何者かが戦闘の一部始終を観察していたのだ!
【KANMUSLAYER】
◆ライヒスリボルバーなるものはネットでググれば出る。しかし検索きのうに頼りすぎるひとはあほになるという研究結果もある。気おつけましょう。以上です◆
◆艦◆カンムス名鑑#67【戦艦アイオワ】キョート・チンジフの建造プラントで生まれた直後に、物資強奪のために潜入していたナチにスカウトされた戦艦娘。規格外の瞬間火力と肢体を持つ。細かいことは考えないアメリカ人めいた思考の持ち主。実際ガイジン。ナチについていった理由は本人曰く、「将来ステキなAdmilalをダーリンにするため」らしい。◆艦◆
◆ZBRを出すべきかBKTのままでやるか考えていた結果ZBRが出ました。作者は速やかにケジメしたので更新は日曜日までにはやると思います◆
◆明日な◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
数刻前、ネオサイタマ・チンジフ執務室
「……以上が10番基地の戦闘状況。完全に制圧した。これが奪還できた前線基地のすべてだ」「そうか、悪くねえ」「喜んでもらえて何よりだよ」そこでは提督が1人の艦娘から報告を受けている最中であった。美しい黒髪を持つ駆逐艦娘、彼女の名はハツヅキ、駆逐艦長を務める艦娘である。
ハツヅキはなおも言葉を続ける。「しかし残りの前線基地では小競り合いが続いている。油断できない状況に変わりはない」「それは分かっている。……だがハツヅキ=サンちょっといいか?」その2人の傍の机では秘書艦のヒュウガが黙々と書類を処理している。執務室は至って静かな様相だ。「何だい?何か問題でも」「チト問題がある」
彼女の瞳が提督をとらえた。「お前は僕の提督だ。何か打開策があるならば従おう」「違う、それはまだだ」提督はかぶりを振る。「ならば何だい?それならこのまま報告を続かせてもらうよ」ハツヅキは怪訝な表情を浮かべた。「待て、まずはどけ」提督は指差す。「…今すぐここから」たった今ハツヅキが座っている、自分の膝の上をだ。
「…………僕の案としては優先すべきは12番基地の」「無視するんじゃねぇ…今すぐどけと言っているんだ、こ・こ・か・ら」「……作戦としてはやはり奇襲を」「だから無視するな…!」しかしハツヅキは動かない、根を張ったように提督の膝の上から動こうとしない。その恋人めいた様相にも関わらずヒュウガは素知らぬ顔で書類仕事を続けている。
やがてハツヅキは小さく溜息をついた。「細かいことは気にしないでくれ。僕とお前の仲だろう?」「いつの間にそんな仲になったんだ。つーか早くどけ、俺の胸をさするな」「いいだろう少しくらいなら。ほら…」「少しもよくねえ」提督はその手を掴んで止めると、ハツヅキを無理矢理膝の上から降ろそうとした。しかしそれに抵抗するようにハツヅキは動かない。
「そうだ…ひとつお願いがある。今回の褒章についてなんだ。欲しいものがある」「ここからどくなら何でもくれてやる…何が望みだ?」ハツヅキは今回の奪還作戦において前線の指揮をとり、駆逐艦長の肩書きに恥じぬ働きをした。とにかく膝の上から降ろせるならどうにでもしてやろう。そしてハツヅキは目をつむり、提督に顔を向けてみせた。「キスしてくれ」「断る」提督はすかさずその脳天をチョップした。
ひるんだ彼女の首根っこを提督はすぐさま掴むとドアに向かって歩き始めた。悪戯をした子犬めいて引きずられてゆくハツヅキ。「報告ご苦労。もう戻っていいぞ」「ま…待て、キスじゃなくても良いんだ。抱きしめてくれてもいい」「それも断る」「なら前後しよう」「絶対に断る」外に放り出されたハツヅキの言葉を遮るように扉を閉めると、提督は大きな溜息をつく。「誰だ、アイツに報告させた奴は?前々からここに入れるなと言っていただろうが…」「私は知らないぞ」ヒュウガは素っ気なく言った。
苦虫を噛み潰したような顔のまま提督はイスに座り、身を預ける。過剰なまでのスキンシップを行ってくる艦娘は少なくない。中には度を越したストーカー行為や変態行為を繰り返す者もいる。彼は実際辟易していた。
「ヤヨイ=サンのアプレンティス(弟子)はあんなヤツばかり…そのくせ腕が立つのが何よりタチが悪い」「ヤヨイ=サン自身もあんなものだろう」「……とにかくだ、ガキが色気づきやがって。どこであんな卑猥な言葉覚えやがったんだ」「いっそあの子の思い通りにしてやるのはどうだ?さらに出来るようになるかもしれないぞ」ヒュウガはさらりと言ってのけた。
「バカ言え。あんなガキんちょにデキてもらってたまるか。それともお前は俺がそんな事するヤツに見えるのか?あ?」やや怒った様子の提督を見て彼女は目を細める。「……そうだな。そうは見えないな」「たりめーだ」ヒュウガの目はあくまでも優しかった。「そもそもお前も少しくらいフォローしろってんだ。お前は俺の…」
しかし提督の言葉はノック音で遮られた。「……チッ、入って来い」提督は不満顔のまま二人の艦娘を部屋に招き入れる。最初におずおずと入ってきた艦娘はハツカゼ、このところよく呼び出されている。そしてその後ろに続いてきたのは、「初めましてと言うべきか?」「ハイ、初めまして。ハマカゼです」その艦娘がぺこりとオジギをすると、下に何もつけていないであろう豊満な胸の揺れが追従した。
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◆艦◆カンムス名鑑#67【駆逐艦ハツヅキ】ネオサイタマ・チンジフ所属。ヤヨイの4人の弟子のうちの1人であり、駆逐艦長を務める艦娘。その一方でチンジフ暗部、通称「コロス・カンムスクラン」のリーダーを兼任している。極めて冷酷無比な判断力を持ち、レール・カタナによる亜音速イアイでチンジフに仇なす者を断罪する。提督へのスキンシップは過剰。因みに暴走状態の提督に襲われたことはないので処女である◆艦◆
◆原作のひとつのアーケードン版が実装されました。おめでとうメント重点。忍殺コラボの陽は近いのだなあ、始まります◆
【KANMUSLAYER】
提督は彼女、ハマカゼの顔を覗き込んだ。以前のような冷たい無表情はいくらか和らぎ、ほおには薄っすらと赤みが差している。子供めいた艦娘が多い駆逐艦娘らしくない、美しい顔立ちだ。「健康状態は問題ねえようだな」「うん、生体情報はどれも正常値だし気持ちも落ち着いてる。もうキズも治ってるわ」ハツカゼがハマカゼのかわりに応じる。
「大変お世話になっております」ハマカゼが提督とハツカゼに対して再度丁寧にオジギした。その度に豊かな胸の揺れが追従する。「気にしないで!これはあたしの仕事みたいなもんだし、それにさ…姉妹というか、親戚みたいなもんなんだからさ」ハツカゼは照れ臭そうに頭をかいた。ハマカゼに宿るソウルは陽炎型の13番艦のものである。ハツカゼはその7番艦、つまり彼女たちは生まれについて近しい存在なのだ。
「それにしても驚いたな、まさかネームシップ(注釈 : 同じ型式の艦船)だったとはね〜…」ハツカゼは改めて自分の妹にあたる艦娘をしげしげと眺める。そして自分のものと比べた。何たる凄惨なまでの差であろうか…!言うなればそれはメロンとミカンの大きさを比べるようなものである!(……やっぱブッダってクソだわ!)ハツカゼは心のなかで歯を食いしばった。
「さてハマカゼ=サン、お前にいつか聞くことがある」「ハイ、私に拒否権はありません」提督の声音が若干変わったのをハツカゼは聞き逃さなかった。これは真剣な話をするときだ。静かになった室内で耳に入るのはヒュウガがペンを走らせる音のみだ。やがて提督はハマカゼをほんの一瞬見つめた後、口を開いた。「ならいい、まず最初の質問だ。お前はどこに付く?セイカンヤか?それともキョートか、答えろ」
「………私は」ハマカゼは当然、答えに窮した。提督は彼女の拠り所が無いのを踏まえた上で聞いているのだ。たとえ操られていたといえど、自分達に牙を剥いたということは変わりのない事実である。「どうした?答えられないのか」「…………」ハツカゼはその隣でごくりと息を飲む。口を挟もうとしても言葉が出ない。それほどのアトモスフィアを提督が発していた。
ハマカゼは重い口を開いた。彼女自身でも十分に理解している。だがそれを口に出すことが、今の彼女にとっては憚られた。「私は……居場所以前に、何者でもありません。だから」「そうか、そうなりゃ答えはひとつだ」提督はおもむろにその手を掴んだ。「え…?」「ならばウチに来い。今日からここがお前の居場所になる」ハマカゼは驚いたように提督の顔を見る。その瞳は強い力を秘めた、確かな意志を彼女は感じとった。
「生きている意味が見つからないなら俺たちが与えてやる。いや……お前自身で見つけさせてやる」「そんな資格が、私にはあるのでしょうか」「ある。だから俺たちと共に戦え。仲間と、お前の姉妹とな」ハマカゼはその瞳から目が離せない。しかし、提督に手を取られたまま、彼女は跪いた。「………私はここに、貴方に忠誠を誓います。どんなことにでも従います。だから、私に教えてください。何もかもを」「フッ……上出来だな。ようこそネオサイタマ・チンジフへ、俺が提督だ。お前を沈ませたりしない、決してだ」
その様子をずっと傍で見ていたハツカゼは思わず目頭が熱くなってしまう。初めから提督はこうするつもりだったのだ。書類仕事をしていたヒュウガもいつの間にか手を止め、その様子を小さな微笑を浮かべ見守っていた。「色々と教える前にお前には色々と聞いておくことがあると言ったろう。質問を続けるぞ」「ハイ」「その前に……手を離せ。もう十分だろ」ハマカゼはその手を離さず、興味深そうに感触を確かめている。
「貴方のような人に会ったことがありません。力強くて、ごつごつしている。とても不思議です」「……まずは男と女の違いから教えてやらなきゃならねーのか。コイツは難儀だな」提督が苦笑した。和やかになったアトモスフィアのまま、向かい合ったソファに場所を移した提督は、いくつかハマカゼに質問していった。多くの事を知らない彼女をハツカゼが横でサポートする。いつの間にか提督の横に座っていたヒュウガがその内容を手持ちのIRCに記録している。
「下着を着ろと?しかしそれでは運動性能が落ちるのではないでしょうか」「あのねえ〜女の子が常時ノーブラノーパンでいいわけないじゃん!」「もう好きにしろ……次が最後の質問だ」いくつか質問が続き、どうやら次が最後らしい。ハツカゼはやや呆れていた。世間知らずのハマカゼのことだ、また斜め上を行く返答を、「触るぞ」「ハイ」「そうそう、触るのよ…….エッ!?触る!?」
提督の言葉に素っ頓狂な声を上げるハツカゼ。もはや質問ではない、これは行為だ!しかも通常ならばハラスメントにあたる行為に他ならない!まさか唐突に暴走状態となった提督が職権を乱用し、ハマカゼの肢体をたった今この場で蹂躙しようとでも言うのだろうか!?(な、ナンデ!触るってナンデ!?私なんて言われたことないのに!それは違うちくしょう!とにかくナンデ!?)このままハマカゼはセンパイと姉の前で公開前後インタビューされてしまうのか!?なんたるジゴク!運営よ寝ているのですか!
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【KANMUSLAYER】
「アイエエエ…!触る、だなんてそんな!あまりにも…あまりにも…」思わず顔を覆っていたハツカゼは、恐る恐る指の隙間から二人の様子を垣間見た。彼女に意義を申し立てる度胸は無く、その様子を直視できるはずもない。ハツカゼはオボコだった。しかしえもいわれぬ興味に突き動かされた彼女の見たものは、ハマカゼの前髪をたくし上げる提督であった。
提督の視線の先では青い瞳がこちらを見つめている。「…成程。確かにこれは深海棲艦娘と同じ目だ」「あ……ああ、それが目的なのね。そりゃまあ、そうよね。うん」ハマカゼの隣でハツカゼが脱力したようにソファにへたり込んだ。提督はそんなハツカゼを呆れたように一瞥した後、手を放し改めてハマカゼに問うた。「お前はセイカンヤの施設で建造されたんだろう?」「ハイ、そうです」ハマカゼはにべもなく答える。
確かにハツカゼが感じたように、ハマカゼには深海棲艦娘のソウルが混じっている。しかしセイカンヤの施設で生まれたという事は聞くほどでもない至極当然のことだ。提督は何を聞くつもりなんだろう?「そこでだ。覚えているか?自分の生まれた場所を」「生まれた…場所ですか?」提督の質問はハマカゼにとっても、無論ハツカゼにとっても予想していなかった内容であった。ハマカゼは言葉に詰まり、やや考えるような面持ちになった。
「…よく覚えていません。生まれた直後、私はすぐに逃げ出しました。衝動的に」やがて口を開いたハマカゼの返事はらしくないほど曖昧であり、記憶の断片を拾い集めるかのような口調だ。「私はただひたすらに逃げました。覚えていることといえば……木です」「木だと?」そこで提督の横でIRCを打っていたヒュウガが始めて声を発した。何か合点がいったかのような面持ちである。
「そうです。木が見えました。私は木の間を潜り抜け海に出たのです」「木、か…分かった。これで質問はオシマイだ」提督も同じく合点のいったような面持ちになり、ソファに身を預ける。「私が覚えているのはこれだけです。スミマセン」「十分だ、もう行っていいぞ。ハツカゼ=サン、チンジフの中を案内してやってくれ」名指しされたハツカゼはハマカゼの手を取り、立ち上がった。「ヨロコンデー。それじゃ行こっか!」「ヨロシクオネガイシマス」
「さてと!我が妹の歓迎会をしなきゃね~何か食べたいものとかある?」「オデンが食べたいです。特に、コンブが」執務室を去っていく二人を見送りながら、提督とヒュウガはソファに向き合って座った。「彼女は木と言っていたな」「ああ」「海に生えるような木はバイオマングローブのみ。つまりグラーフ=サンの見立ては正しいということだろうな」ヒュウガの言葉に提督は頷く。グラーフ、彼女が進言したバイオマングローブ林に秘密施設があるという見立てが現実味を帯びてきたのだ。「おそらくな。しかし…ヤク中のくせに相変わらず鋭いヤツだ。関心するぜ、全く」
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「ドーモカスミです!レイゴウ作戦に私がいないなんてお笑いね!私は姉たちと違ってアバーッ!?」「イヤーッイヤーッイヤーッ!」「助け」「イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」「やりすぎじゃないか…?」「仕方ありません」センダイはグラーフに言った。
◆魔◆唐突な魔が作者アジトをおそう!更新頻度が落ち、さらに途中で力尽きたのは魔が原因だと思われます。なお魔は回復したと言っても過言ではないので更新ペースを戻していきたいと思います。なおカスミ=さんはしんだ。以上です。
◆作者から鼻づまり・鼻水・耳鳴り・のどの痛みなどの魔が祓われました。なので再開してゆくのだなあ◆
「ドーモカスミです!レイゴウ作戦に私がいないなんてお笑いね!私は姉たちと違ってアバーッ!?」「イヤーッイヤーッイヤーッ!」「助け」「イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」「やりすぎじゃないか…?」「仕方ありません」センダイはグラーフに言った。
同時刻、潜入作戦中の二人の前に唐突に現れたキョート・チンジフのカスミをアイサツ終了後わずか数秒で大爆発四散させたセンダイはその物言わぬ駆逐艦娘を木に吊るすと、グラーフに向きなおる。「やれやれ…セイカンヤとキョートが共謀していると聞いた時は信じられなかったが」「これが真実です」「そのようだ」
二人の視線の先にあるのは重厚な鉄扉だ。人の手が入らぬはずのマングローブ林の中に現れたそれは、まさに目的の場所であった。「さてと、そしてこれがお目当ての場所だな」「私が周囲を確認します」センダイは一歩踏み出そうとした。しかしその時!
木々の葉が擦れる不自然な音をとらえたセンダイは瞬時にカラテ姿勢を取り頭上を仰ぎ見た!逆光に塗りつぶされた人影、正体不明存在の唐突な跳躍アンブッシュである!「イヤーッ!」マングローブ林に響き渡ったシャウトと共に、襲撃者が空中で右手を振り下ろした!
振り下ろすと同時に空を切り裂くような音が耳をつんざいた。センダイのカンムス視力がとらえた襲撃者の、そのすべての指先にはワイヤーが接続されている!アブナイ!鋼鉄のムチがセンダイを襲う!
だが!BLAMBLAMBLAM!!その後方から鳴り響く銃声!鋼鉄ワイヤーが防御しようとするセンダイに到達する前に銃弾とぶつかり、その攻撃が逸らされる。「おいおい!いきなりだな!休む暇くらいくれたまえよ!」無論その声の主はグラーフだ!なんたる突発的な状況にも瞬時に対応する彼女のハヤウチのワザマエか!
襲撃者はアンブッシュ失敗と見るや着地後に3連続でバック転を放ち、二人の眼前の鉄扉の前に立ちはだかり長い髪を振りかざしてオジギした。「今のをかわすとはねえ。相変わらずたいした腕前じゃないの…ドーモ、ヒヨウです。久しぶりね」長髪をリボンで結んだ軽空母娘がグラーフを見て目を細めた。その両腕には黒いグローブがはめられている。
「ドーモ、グラーフです……お互い知った名前だがね。大丈夫かセンダイ=サン?」「ドーモセンダイです。助かりました」二人の前に立ちはだかった新たな艦娘も無論キョート・チンジフ所属であり、そもそもグラーフとは昔から面識がある。しかしその旧友は自分たちに容赦なきアンブッシュを行ってきたのである。センダイとグラーフは油断なくカラテを構えた。
「どうやら数年ぶりの再開を喜べる状況じゃなさそうだな」「残念ながらね。ここはウチの同盟組織の庇護下にある施設…それにあんたたちはネオサイタマの回し者、敵でしかない」ヒヨウの右手グローブに、伸ばされていたワイヤーが収納されてゆく。彼女はマスター位階にして絞殺ワイヤを用いたカラテ暗殺者である。その瞳には敵意以外の何物も浮かんではいなかった。
【KANMUSLAYER】
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【KANMUSLAYER】
(これまでのあらすじ : バイオマングローブ林に隠されしセイカンヤ秘密施設の潜入任務を請け負った我らが殺戮者センダイ、そしてその背中を守るのはグラーフ・ツェッペリン。2人はついにその秘密施設の場所を遂に突き止めたのだ)
(しかしその前に立ちふさがるものがいる。それはキョート・チンジフの艦娘たちである!もはやキョートはセイカンヤの手に落ちたのか!?目の前の、かつて友だった艦娘、ヒヨウを見るグラーフのサイバネ・コンタクトには何が映るのか…)
ヒヨウのあからさまなキリングオーラを受けても、グラーフはまだリボルバーに手を掛けていない。「…話し合いで解決、というのはどうだろう」「無理ね」かつて友だった者に語りかけるグラーフ。しかしヒヨウは取り合わない。その眼はかつての友の物ではない。「そうか…残念だ」彼女は諦めたようにグリップを握り、ヒヨウに差し向けた。
「しかし覚悟がいるぞ。こちらは2人、君はひとりだ。2人を相手にするつもりかい?」「もちろん……と言いたいところだけどね。あんたの相手をするのは私じゃないわ」「何…?」グラーフが片眉を吊り上げたと同時に、風をつんざくような音を彼女のカンムス聴力は捉えた!「ッ!?イヤーッ!」グラーフは瞬時に側転回避を繰り出す!
そしてグラーフがつい先ほどまでたっていた場所から水飛沫が上がった。アナヤ!狙撃されているのだ!「イヤーッ!」それをノロシと見たかセンダイがゼロセンをヒヨウに向かって投擲!「イヤーッ!」だがヒヨウのグローブに接続された絞殺ワイヤーがゼロセンを弾き飛ばし防御!「おいおい……!こんな場所に狙撃手か!」グラーフはその場から水面を転がってさらに回避!数コンマ遅れて弾丸が水飛沫を上げる!
「あんたはウチの優秀なスナイパーがお相手するわ!この子は私が頂くッ!イヤーッ!」絞殺ワイヤーの鞭めいた打撃がセンダイを襲う!「イヤーッ!」センダイはあやまたず側転回避!ワイヤーはバイオマングローブを薙ぎ倒しながらヒヨウのグローブに収まった。なんたる破壊力!「ブッダシット!最初から分断するつもりだったって事……うわっ!」悪態をつくグラーフのすぐ真横を弾丸が駆け抜け、バイオマングローブに銃痕を穿つ!木々に囲まれているにも関わらずなんたる精密射撃か!
「クソッ!狙撃手は私が引き受けるしかないようだな!センダイ=サン!いけるかい!?」「問題ありません。イヤーッ!」センダイは繰り出されるワイヤ攻撃を避けながらカラテ砲撃でヒヨウを牽制する。「すまんね!イヤーッ!」グラーフは銃弾の飛んできた方向、すなわち自分たちが今まで進んできた道を遡るようにスプリントした!襲い来る弾丸をやりすごしながら突き進むグラーフを横目で見、センダイは己の敵を改めて見据えた。
センダイはヒヨウと面識がない。しかし彼女は本来の敵である深海棲艦娘ではなく、自分と同じ艦娘である。ならばセンダイは躊躇するか?「イヤーッ!」無論!彼女は躊躇しなかった!息もつかせぬゼロセン投擲とカラテ砲撃でヒヨウのワイヤ打撃の連打をいなす。かつて対峙したソウリュウと同じように、彼女の脳天をチョップし眼を覚まさせるだけだ!攻撃を掻い潜りながらも徐々にヒヨウとの距離を詰めてゆく!
ヒヨウのワイヤ攻撃は中距離においてはつけいる間がなく、反撃の余地がない。やや開けたこの場所から離れるべきかもしれないが、センダイが目指す場所はヒヨウの背後にあるドアのその先である。ならば懐に踏み込み、一瞬で決着をつけるべし!繰り出されたワイヤーがセンダイのブレーサーを削りながらヒヨウの手に引き戻った。この一瞬の隙にセンダイは水面すれすれまで身を屈め、猛然と突進した!
「イヤーッ!」その突進速度を乗せたカラテストレートを放つセンダイ!対するヒヨウは中距離戦を得意とする艦娘。至近距離ならばこちらに部が………否!「イヤーッ!」ヒヨウは易々とその殺人ストレートを受け止めてみせたのだ!「甘いわ!踏み込んでくるなんてお見通しよ…まだまだヒヨッコのようね?」おお、見よ!ヒヨウの両の掌を!その間にアヤトリ・スリングめいて張り巡らされた絞殺ワイヤーがセンダイの拳を受けとめている。ワザマエ!カンムス器用さを駆使したトリッキーな防御術だ!
「イヤーッ!」拳を引き戻そうとするセンダイを許さず、その腕を掴み投げとばす!「グワーッ!」投げ飛ばされたセンダイはバイオマングローブに背中から激突。咄嗟に逃した衝撃がその幹に大きなヒビを入れた。殺しきれぬダメージが身体を襲い、立ち上がったセンダイがよろめく。相手はキョート・チンジフ発足当時よりの歴戦の艦娘。一筋縄ではゆかぬ!「アナタのことはウワサで聞いてる。中々の実力らしいけど、経験の差ってものを教えてあげるわ…!」
【KANMUSLAYER】
(親愛なる読者の皆さんへ : 作者は今までの分を取り戻すべく更新速度強化プロトコルを開始しました。この先はどんどん更新速度が上がってゆくといいかもしれないのだなあ、と願っている。なのでコーメントンとかもらえると高まる。なおカマッテ・ジツではないことですね?更新速度が落ちがちで大変ご迷惑をおかけしました。以上です)
◆艦◆カンムス名鑑#67【正規空母グラーフ・ツェッペリン】ネオサイタマ・チンジフ所属、チンジフ発足数日後に着任した古株の艦娘。美しい顔立ちだがどこかやさぐれたアトモスフィアを放つ海外艦娘。他愛ないジョークを好むが口下手だと自覚している。重度のBKT中毒者であるが、2丁のリボルバーを用いるピストルカラテを駆使した戦闘能力は衰えを感じさせない。あの日までは他の空母娘と同じくコウクウキ・ジツを得意としていた、しかし彼女はそれを捨てざるを得なかったのだ。◆艦◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
グラーフはスプリント体勢から無駄の無い動きで樹木の後ろにカバーする。そしてほんの一瞬前まで自分が立っていた場所から水飛沫を上がるのを確認すると、思わずため息をついた。(おいおい…なんだか狙いが正確になってきるんじゃないか…?)樹木の後ろからほんの少しだけ顔を出し、サイバネコンタクトレンズによる索敵を行う。捉えたのは小さな熱源反応、どうやら小柄な艦娘がスナイパーの正体のようである。
ふつうスナイパーへの対処はチームのうち1人が威嚇・制圧射撃を行い、もう1人が懐へと回りこむのがセオリーだ。しかし相棒であるセンダイはヒヨウを任せてある、自分1人でなんとかするしかない。(なんとかするといってもだね、こっちの得物とは射程距離に差がありすぎるだろう。距離を詰めるまでは敵にとってはエンニチのマトアテ状態だぞ?)
だが文句を言っているばかりでは事態は好転しない。行動するしかないのだ!「……イヤーッ!」キアイのシャウトとともにグラーフは再度スプリントを開始!間髪入れず襲いかかる銃弾を紙一重で回避しながらスナイパーに向かって肉薄する。先ほどよりも直線的な動きはリスクが多いが、時間を無駄ではできない!(残り100m強!一気に畳み掛ける!)
こちらから反撃はできないがスナイパーとの距離は確実に縮んでいる。このまま行けば到達するのはそう時間がかからない……だがその時!「グワーッ!」軽快なスプリントを行っていたグラーフが突如として足を止め、うめき声を上げる!「ちょっと…待て!これは!」彼女は自分の片足を見て驚愕した。設置型拘束トラップ、トラバサミが噛み付いているではないか!
「クソッ!」グラーフはすぐさまトラバサミを銃撃破壊するが、それはスナイパーにとっては十分過ぎるほどの隙である!(ブッダ!罠の可能性を忘れていたとでも!?その通りだよ畜生!…ハッ!)そう、何もかもは遅すぎた。飛来する弾丸が、羽織られた白いコートをやすやすと貫き、バイオマングローブの森を静寂が支配した。
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「イヤーッイヤーッ!」「イヤーッイヤーッ!」しかしその一方、静寂はほんの一瞬に過ぎなかった!センダイとヒヨウのカラテ・ラリーが森にコダマする!センダイはあれから何度もヒヨウの懐に飛び込むのを試みたがそのたびに防御、もしくはいなされることで決定打を与えられずにいた。カラテ熟練者はそう易々と自分の不利な間合いを許しはしないのである。
「イヤーッ!」「グワーッ!」そしてその均衡を破るように、フェイントで撃ち込まれた時間差ワイヤー打撃がセンダイを捉える!センダイは防御した鋼鉄ブレーサーごしの衝撃を受け苦悶!全力のカラテストレートにも勝るとも劣らぬ破壊力だ!
「イヤーッ!」間髪いれず容赦なき波状ワイヤ打撃がセンダイを襲う!「イヤーッ!」センダイはダメージをものともせずスウェイングで回避!さらにゼロセンをアンダースローしヒヨウの無防備な足元を狙う!
「イヤーッ」ヒヨウは小ジャンプ回避を強いられる。一瞬の無防備!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」センダイはあやまたずゼロセン連続投擲!「イヤーッ!」ヒヨウはワイヤをうちふるいこれを撃墜するが、叩き落とし損ねた一機がヒヨウの肩口に命中した!「グワーッ!」
センダイは近くの木に三角跳びし、その勢いを利用したトビゲリを放つ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ヒヨウは辛うじて防御するがその表情は厳しい。「くッ…!」無視できぬダメージを受けた肩口を抑えながら攻撃を終えたセンダイを睨み据える。
対するセンダイは全く怯む様子もなく、ヒヨウの出方を窺うようにジリジリと距離を詰めてゆく。「どうしたのです?ヒヨッコに経験の差を教えてくれるのではなかったのですか」ヒヨウは挑発に乗らぬ、冷静なまなざしを保っている。「フン……生意気な後輩ね。その言い草、あんたのところの鉄面無表情空母を思い出して気に入らないわ」しかしその声音にはそれまでの相手を下とみていた余裕は消え、歴戦の戦士たる重々しいアトモスフィアが宿っている。センダイは相手のカラテの高まりを感じ、身を固めた。
◆一旦寝休憩◆
◆1日置いて再開◆
「フンッ!」ヒヨウは両腕のワイヤーを全て展開し、すぐ近くのマングローブの大木に巻きつけた。「お望み通り見せてあげるわ……経験の差ってヤツをね!」ヒヨウの両拳にカラテが漲る!そのカラテがワイヤを伝わり……締め付けられた大木がへし折られた!おお、ゴウランガ!なんたるカラテ力学か!「食らって地の果てまでフッ飛びなさい!イヤーッ!」ハンマー投げ選手めいた回転をかけ、巨大なるマングローブの丸太がセンダイに襲いかかる!
「イヤーッ!」センダイはこれを当然ブリッジ回避!追突すれば即、ネギトロ重点不可避!「だからヒヨッコだって言ってるのよッ!イヤーッ!」だがセンダイがブリッジ姿勢から復帰する刹那、丸太から瞬時に外されたワイヤーがセンダイを拘束した。「何!」「かかったわね……前言撤回、フッ飛ばずに正面衝突なさい!」ヒヨウは腕を爆発的な速度でクロスし「イヤーーーーッ!!」丸太とセンダイを激突させる!ナムアミダブツ!危うしセンダイ!
ーーーーーーーーーー
「…………」アラレはそれまでスコープに押し付けていた目を離した。目標は沈黙、弾丸が獲物を捕らえたのだ。しかし若くして優秀なスナイパーである彼女はつとめて冷静だった。再びスコープを覗く、狙撃は成功したが敵の大爆発四散を確認できていない。艦娘はそう簡単に大破するほどヤワではない。単なるチャメシ・インシデントだ。
駆逐艦アラレ、彼女は自分用にカスタマイズした狙撃カラテライフルで敵艦を屠ってきた。今回もいつもと同じことをしたまでだ。敵であるネオサイタマ・チンジフの艦娘を倒す。大破していないならばもう一度撃ち込めばよい……アラレは幼顔に似合わぬ、つとめて冷酷な瞳で対象を今一度確認した。スコープには水面に浮かんだ白いコートが映っている。
(………?)その様子をみてアラレは眉をしかめた。中身はどこへ行った?着弾後、目を離したのはほんの一瞬である。その間に傷ついた身体を動かすことなど大抵無理な筈。それとも一撃で沈んでしまったのか?何にせよ確認しなければならない。アラレは再びスコープから目を離し、立ち上がろうと「………………んちゃ」
今のは聞き間違いではない!自分が潜伏している木の上に作った小スペースに、自分のすぐ後ろで声がしたのだ!アラレは電撃的な速度でライフルを構えたまま振り向いた。だが!「おっと危ない!子供がこんなもの振り回しちゃいけないぞ!」その声の主はライフルを小脇に抱え、がっちりと押さえつけた。狙撃用ライフルは近距離ではつとめて無力なのだ!
「そ、そんな…!ナンデ」「コートに穴は空けられるわ、素潜りはさせられるわ……私は潜水艦娘じゃないんだよ?まったく」そして声の主、グラーフはリボルバーの銃口をアラレの額に押し付けた。おお、ゴウランガ!彼女は大爆発四散していなかったのだ!アラレは未だ状況を把握できていない。抵抗する事も忘れ、唖然としている。
いかにして彼女は無傷で生還したのか!?その答えは彼女の髪の毛から滴る水滴、びしょびしょに濡れたノースリーブ軍服型装束から答えが自ずと導き出されるだろう。弾丸に撃ち抜かれる刹那、彼女はコートを翻し、スコープの視界を塞いだ。弾丸は実際着弾しておらず、脇腹を掠めただけであった。そしてそのまま即座に潜水し、アラレが潜伏する木の近くまで泳いで接近したのである!
「さてと、降伏してくれるかい?お嬢さん」にこやかに提案するグラーフに対しアラレはハッと我に返った表情になると、しばしの沈黙の後にライフルから手を離した。「よーしよし。なかなか素直なイイ子だ。子供は素直なのが一番…」「イヤーッ!」だがアラレは突き付けられたリボルバーの射線から身を逸らすと、迷彩服の袖に隠していたデリンジャーピストルを逆に突きつけ、引き金に手をかけた!ナムサン!
だが、引き金を最後まで引く前にアラレの意識はブラックアウトした。「ンアッ……」そのままパタリと倒れ、動かなくなる。「………一番、いいと思うんだがね。はぁ」グラーフはアラレの首筋を捉えた自分の手刀を見て溜息をつく。(なるべくなら手を上げたくなかったが…仕方ない)そのままグラーフはアラレの手足を拘束し、その場を後にした。
ーーーーーーーーーーー
「これで終わりよ!死ね!センダイ=サン、死ねーッ!」丸太と激突するその刹那、センダイの感覚は泥のようにスローモーションになった。この状況を打破するためにはどうすればよいのか!?ほんの一瞬のイマジナリー・カラテからセンダイは答えを導き出し、引き絞った両腕を丸太に向かって叩き込んだ!「イヤーッ!」SMAAAAAAAAASH!!
迎撃ポムポムパンチは激突するはずだった丸太を見事粉砕!ゴウランガ!恐るべしセンダイの状況判断カラテ!続けてセンダイは絡め取られた身体をひねり、高速回転させる。「イヤーッ!」「なッ…!」そのまま掃除機の巻き取りコードめいてヒヨウに向かって引き寄せられてゆく!
「イヤーッ!」「グワーッ!」回転の勢いを乗せた裏拳が、ガードが間に合わぬヒヨウの顔面に突き刺さる!センダイを拘束していた右手のワイヤーグローブが脱げ、ヒヨウはワイヤーアクションめいて吹き飛ばされた。背後の秘密施設への鋼鉄製のドアに激突!「グワーッ!」ナムアミダブツ!吐血する程の凄惨なダメージだ!
「あなたをカイシャクする」行動不能になったヒヨウに向かってセンダイはジゴクめいて言い放った。センダイは同じ艦娘であろうと敵に対して慈悲など持ち合わせていない。カラテ艤装をブーストさせ、ぐったりと項垂れるヒヨウに向かって突撃する!カイシャク・ストレートをヒヨウに向かって……放った!「イヤーッ!」
だが!「グワーッ!?」センダイの突撃が突如として停止した!なぜ!?おお、見よ!センダイのしなやかな首筋を!絞殺ワイヤーが二重、三重に蛇めいて巻きついているではないか!「ハァーッ…ハァーッ…!だからあんたはヒヨッコなのよ…敵を大爆発四散させるまでは油断厳禁ってね…!」項垂れていたはずのヒヨウはいつの間にか顔を上げ、再燃したキリングオーラに満ち溢れた瞳でセンダイを睨みつけている!
「あたしにトドメをさそうとした直線的な攻撃…残ったワイヤーをあんたの首に巻きつけるのはベイビー・サブミッションだったわ」ヒヨウは苦心して立ち上がり、冷酷に笑った。「ヌ…ウッ…!」センダイは首に巻きつくワイヤーをマンリキめいた力で解こうとする。しかし逆にワイヤーの拘束力はどんどん強まり、センダイの意識を徐々に暗闇へと引き込んでゆく!「ムダよ!あたしの残ったカラテを全て込めてあんたを大破させる!あらためて死ね!センダイ=サン!死ねーッ!!」
今までにない絶体絶命の危機!ワイヤーを掴む手から力が失われてゆく。このままゆけばセンダイの大爆発四散は確実!我らが殺戮者は、ここで事切れるのか!?仲間たちを、妹の目を覚ますことができないままに!「ヌウウウウッ……!!」「クソッ…!結構しぶといわね。でもどう足掻いてもあんたの負けに変わりない!ロード・バンザイ!キョートの威光に跪きなアバッ」
最後のトドメを刺そうとしたヒヨウの首あたりに異物感が横一直線に滑る抜ける感触が走った。水面に鮮血が飛び散る。自分が吐き出した血だ。鮮血?血液ナンデ?さらに彼女は後ろから身体を掴まれ、無理矢理膝をつかされた。ワイヤーの拘束力は途端に無くなり、センダイが解放される。
「カハッ、カハッ……」「大爆発四散させるまでは油断厳禁、大いに同意だ」自分の耳元でそう囁くのは、マリーン迷彩装束と編笠姿の異様な艦娘であった。自分を後ろから拘束している。手に持っているのは血塗られたククリナイフ。自分の血だ。「カハッ……あんた……カハッ……」声が掠れ、出てこない。
「これがサイゴン・ロアだ。二十四時間、360度。あらゆるところから運営の修正と調整は忍び寄り、目覚めれば昨日までフレンド登録していた提督は死体になっている。ナムは地獄、地獄に適応できぬ者には死あるのみ。ましてやここはジャングルだ」編笠姿の艦娘はヒヨウの首筋にクロスしたナイフを突きつける。「ドーモ。久しぶりだなヒヨウ=サン、ナチです」カイシャク!「……サヨナラ!」ヒヨウは大爆発四散した。
【KANMUSLAYER】
◆艦◆カンムス名鑑#68【軽空母ヒヨウ】キョート・チンジフ所属。マスター位階、ナガト派閥の艦娘。チンジフ発足時からのベテランの実力者。両手に装備したワイヤグローブによる変幻自在の攻撃を得意とする。妹も含め、ヒヨウ姉妹はコウクウキに頼らず己のカラテのみを振るうナガト派閥らしい戦闘スタイルを持つ。ネオサイタマのグラーフ、同チンジフのナチとは昔からの顔見知りだった。◆艦◆
◆艦◆カンムス名鑑#69【駆逐艦アラレ】キョート・チンジフ所属。アデプト位階、スズヤ派閥の艦娘。小柄な容姿に似合わぬ、大型のスナイパーライフルによる狙撃を行い味方をサポートする。被っている帽子には様々なガジェットが搭載されている。無口で冷静な性格であり、「んちゃ」などは言わない。姉たちより実際有能。◆艦◆
◆微妙に体調不良を引きずってしまい、更新がふあんていになってしまってすいませんでした。なお来週もがんばる。以上です◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
「イヤーッ!」センダイはバック転で距離を取ると、新たなるアンブッシュ者にアイサツした。「ドーモ、センダイです」「センダイ=サン!知っているぞ……あの『死神』と出会えるとは」ナチはヒヨウにトドメを刺したナイフを懐に収めるとニヤリと笑った。「しかし相手がヒヨウ=サンだったといえどこの程度で大破しかけるとは実際情けないものだ。私のアンブッシュがなかったら貴様はどうなっていただろうな?」「…………」
ナチは以前、ネオサイタマ・チンジフの第3部隊を襲撃し、交戦した事実がある。サヴァイヴァー・チンジフなる集団を率いる危険人物だ。センダイは静かにカラテを構える。なぜ自分を助けたのか?「何が目的だ。あなたは私の仲間たちの部隊を襲撃したこともある、返答によってはカラテのち拘束する」
放たれる剣呑なアトモスフィアを物ともせずナチはセンダイに指を突きつけた。「距離を置き貴様らを観察していたのだ。当然、恩を売り取り引きするためである!」偉そうに腕を組むとナチはいかめしく言った。「ヒヨウ=サンの言う通りまだまだヒヨッコだな。実力は大したものだが実戦経験が足りん」センダイは睨んだ。「取り引きだと?」「そうだ!不本意ながら我が隊は戦力が不足している。しかもそのうち1人は死にかけている」
「おーい!無事だったかい!」センダイが口を開こうとしたその時、狙撃手を倒したグラーフがその場に戻ってきた。センダイの姿を認め、安堵の息を吐いた後、大破したヒヨウとその傍らに立つナチの姿を認めると目を丸くした。「ワッツ!?ヒヨウ=サンと戦ってたんじゃないのか!?」「そういう貴様はグラーフ=サン、久しぶりだな。相変わらず不健康そうなツラだ」「余計なお世話だねナチ=サン……おいおい、同窓会でも始めるつもりか?」
「フン、ベトナムで地獄を味わった私は過去のセンチメントなどそこへ捨ててきたのだ。今の私はサヴァイヴのためだけに行動している」大破して意識を失ったヒヨウの装束を脱がし、何か物資がないか確かめながらナチは言った。(一体全体ナチ=サンに何が起こったんだ……軍事マニアだったのは確かだが今のこれは完全にヤバイ奴じゃないか)(分かりませんが危険人物であることに変わりはありません)2人の小声のやりとりをよそにナチは幾つかの収集品を懐に収めるとヒヨウの胸をひと揉みした。(それにしても相変わらず中々豊満なバストだ)
「それで私たちに何か用かい?職務を全うするならば君を捕まえなきゃならないんだが」ナチは手を広げ、偉そうに胸を張った。「いいか!私はこの施設の物資に用があるのだ。目的地は同じ、つまりここに協同の余地あり!貴様らには私が今貸した恩を返す義務がある!」グラーフが頭をかき、困ったように言った。「そうなのかい?」「……スミマセン」センダイは極めてバツが悪そうに頷いた。「アー…そうか。無駄にやりあってもしょうがないよなあ、うん」「交渉成立だな」
ナチは鼻を鳴らして偉そうに言った。「そもそも悲観するのはシツレイだ。むしろ、私の戦力により千人力!実際、この施設内の敵も未確認である。味方は多い方が良い!相互利益!」「………」センダイは渋々頷いた。「おいおい…なんだかおかしなことになってきたぞ」グラーフの溜息をよそにナチはなぜか意気揚々としている。「さあ!それでは進軍開始だ!グラーフ=サンはハッキングの心得があったな?」「まあ多少は」「ならばすぐさまこの扉を開けるのだ!タイム・イズ・マネー!」「………はぁ、仰せのままに」
その頃、施設内の一室でその様子を監視カメラ越しに観ている2人の人物がいた。1人は三日月型の角めいたメンポを装着し、片足にニーソックスを履いた者、そしてもう1人はヘッドフォンをつけ両足にニーソックスを履き、眼鏡をかけた者。しかし後者はモニタ画面を観ていると言うよりも、手元に視線が集中している。彼女の持った薄い本には『2人の提督、秘密の夜戦』というタイトル。これはティーン艦娘向けヘンタイ本である。
そんな2人に共通するのは不穏な光を持つ瞳である。すわ、深海棲艦娘である!「キョートから派遣されてきた艦娘たちがやられたようね」「…その時、僕のバルジを彼の酸素魚雷が貫いた」片足ニーソの深海棲艦娘が片割れに話しかけるが、当人はヘンタイ本に夢中である。「ちょっと」「俺の弾道観測射撃の味はどうだ?一撃で大破しちまいそうだろ……ウケッ、ウケケッ…いいぞぉ!提督同士の顔が近い!アタリ本だな!」
「………」なおもヨダレをたらさんばかりの勢いでヘンタイ本に没頭する眼鏡の深海棲艦娘を無言で片足ニーソの深海棲艦娘はチョップした。「グワーッ!なんだよいきなり!?アタシのセイシンテキを保つための儀式だぞ!邪魔すん…」「だから集積地棲キ=サン、やられたのよ。味方の艦娘たちが」「へ?」そこで初めて、集積地棲キと呼ばれた深海棲艦娘はモニタを見た。「うっわマジかよ!使えねー弱キャラばっかり送りやがったのかキョートは?クソ平坦まな板参謀め!」
◆寝休憩◆
◆再開◆
悪態をつく集積地棲キをよそに、片足ニーソの深海棲艦娘、重巡棲キは冷静な眼差しのまま、集積地棲キの高い背丈の割にやや平坦な胸を一瞥した。「違うわ。最初にやられた子はサンシタだったけど、スナイパーの子とヒヨウ=サンには一定以上の実力がある」「でもやられたら意味ねーじゃんかよ」
「違う、それ以前の問題。あのナチ=サンとかいう艦娘は予想外だった。彼女たちに対抗できるここに残った戦力といえば私たちくらいなのよ」重巡棲キは冷静に状況を分析する。彼女はセイカンヤに着任してそれほど経ってはいないが「姫」級のひとりである。実際この秘密施設、クローン深海棲艦の製造工場の管理を任されている程に指揮能力を買われていた。
「ヘッ!いくらカラテが強かろうがここのセキュリティがアタシの手の中にある限り無意味なんだよ。アタシのイクサは常時イージーモードだ!」そんなことをいいながら集積地棲キは傍らに置いてあるスナック菓子をぽりぽりとかじっている。彼女と重巡棲キはほぼ同期、この態度から見てわかるとおり集積地棲キは奥ゆかしくない性格ではあるがセイカンヤ随一の演算能力とヤバイ級ハッカーの実力を持っている。そして同じく「姫」級のひとりなのだ。
「とにかく彼女たちは中に侵入してくる。迎撃準備を」「アイ、アイ。任せとけって!アタシのお楽しみタイムを邪魔したのを後悔させてやンよ!」重巡棲キは小さくため息をつくとセキュリティルームから退出した。そして懐から小型IRCを取り出し発信する。電話をかけた先は当然、シンカイセイカンヤ本部である。「モシモシ…ハイ、大変お世話になっております。ハイ、その通りです。ここに敵艦娘が侵入を」廊下に重巡棲キの足音が響く。その傍らをクローンエンジニア妖精たちが忙しそうに行き来する。
「…ハイ、ヨロコンデー。了解しました。それではシツレイします…」IRCを懐に収める。本部からの命令は『迎撃した上で、それが不可能ならばこの施設を放棄せよ」とのことだった。クローン深海棲艦の製造施設は重要といえば重要だが、何もこの施設だけではない。現在進行形で建造されている最新式の製造施設もある。それにキョートから技術提供されたクローン妖精の製造技術も相まってクローン深海棲艦との配備率の比は半々になるとされている。この施設の重要性は以前よりも落ちている。
しかし本部はそこまであのセンダイという艦娘を警戒しているのだろうか?いざとなればこの施設の放棄もやむなしと判断するまでに。それとも不確定要素であるナチの為か?はたまたかつてのマルノウチ・スゴイデカイチンジフのエリート艦娘、グラーフ・ツェッペリンの為なのか?疑問こそ感じるが重巡棲キは一切の異議申し立てをしない。ただ命令に従い、それを全うするだけだ。彼女は足を止め、目の前の扉を見る。そこには『倉庫』の二文字が刻まれている。
彼女にとって、敵の襲撃と同じくらい頭を悩ませているものがそこにはある。同僚の集積地棲キは勤務態度こそ悪いが、きちんと業務は全うしている。しかし、それに比べあの子は……重巡棲キはもう一度小さくため息をつくと、倉庫内にエントリーする。やや埃をかぶった物資入りの段ボールが並べられた室内は換気扇の音が響くほど静かだ。彼女はしばらく倉庫内を歩き、足を止めた。檻がある。そして、中に深海棲艦娘が寝そべっている。
「ふああぁ…どうしたの?またここに来てお説教でもしに来たの?」檻の中の深海棲艦娘はこちらに向けた白い尻を行儀悪くかきながら言った。実際態度が悪い。しかし重巡棲キは表情を崩さず、こちらに顔を向けた、後輩に言葉をかけた。「…ドーモ、駆逐水キ=サン。少しは動く気になった?」「ドーモ。残念ながらまったく。あと一年は寝て過ごせそうだわね」
檻の中の、小柄な深海棲艦娘はけだるげな眼のまま再び欠伸をした。「なんだかお説教ムードじゃないみたいだけどさ。何かあったの?敵が来たとか」「その通りよ、今この施設内には3人の侵入者がいる」「ふーん」駆逐水キはさして興味がないように手元の青リボンをいじっている。彼女、駆逐水キはここ最近着任したばかりだが、「鬼」級の一人である。しかしその肩書があるのにも関わらず、駆逐水キには全く仕事意欲がない。あまりにも仕事をしないぐうたらさで、罰としてこの檻に入れられているのだ。
普通ならばこのような反抗的又は無気力な新人はヤクザ式トレーニングにより、徹底的に研修するのが定例である。しかし駆逐水キは深海棲艦娘の中で、唯一ともいえるテレパスのジツを扱うことが出来る貴重な存在だった。そんな有望視されている人材である彼女の扱いに困った本部が、重巡棲キにその他もろもろも含めてマルナゲしてきたのだ。((んーと、新人の育成も責任者にとって必要なことって訳で、じゃ!そうゆうことだからよろしく~!))マルナゲしてきた張本人である飛行場キが面倒くさがっていたのはあからさまであったのを思い出し、重巡棲キは何度目か分からない溜息をつかずにはいられなかった。
【KANMUSLAYER】
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【KANMUSLAYER】
檻の中の駆逐水キは上体だけ起こして伸びをした。小柄でぐうたらではあるが中々のスタイルの持ち主であるようだ。「仮にヤバくなってもあたしのことはほっといていーから。役立たずだし」「そうはいかないわ、あなたも深海棲艦として生まれたからには使命がある。そしてそれを全うする義務がある」「ないない。艦娘は敵だとか、チンジフをやっつけるとかどーでもいいもん。めんどいし」彼女はパタパタと手を振った。
もしこの言葉を上司である離島棲キが聞いたら瞬時にオニめいた形相になり、2時間はくどくどと説教するであろうと重巡棲キは思った。しかし彼女は怒るよりも呆れ、説教をする気にもならなかった。自分が何を言おうが駆逐水キは動こうとしないだろう。ここまでの聞かん坊はさすがに手に負えない。「はぁ……とにかく今この施設はそういう状況にある。万が一にも備えておいて」「あーい」
退出しようとする彼女に檻の中の駆逐水キが声をかけてくる。「あ、そうだ。寝ててもご飯くれるのは嬉しいんだけどさ、スシない?スシ食べたいんだけど」「私たちの仕事を手伝うなら好きなだけ食べさせてあげるわ」「えー…じゃあいいや。はぁ〜あ、敵に捕まったらネオサイタマはおいしい刑務所飯出してくれるかなあ。提督とかいうのに色目使ったらなんか食べさせてくれるかな」重巡棲キはげんなりとしながら倉庫を後にした。
これまで重巡棲キはつとめて真面目に与えられた業務や任務をこなしてきた。武功を重ね、周囲の評価も上がり出世した。しかし、ただ一段上へ上がっただけなのにこの有様は何だろう?飛行場キから面倒な仕事を頻繁にマルナゲされ、港湾棲キからは日常的にセクシュアル・ハラスメントをされ、装甲空母キの過酷な筋力トレーニングに付き合わされ、(弱いくせに)サケに酔った離島棲キの愚痴を延々と聴かされ……中途半端に出世しても何も良いことはない。重巡棲キはそう思った。
◆今日はちょっとだけ更新。続きは明日な◆
◆今日更新ができるかも分からなくなったので作者はケジメしました◆
◆遅ればせ再開◆
一方その頃、センダイ一行は施設内のダクトを這って移動していた。入り口の鋼鉄ドアはヒヨウが激突し歪み、電気系統がショートしていたためスゴイ級程度のハッカー技術を持つグラーフでも開けることができた。しかしそれ以上は叶わなかった。施設内には強力なファイアウォールがしかれており、無闇なハッキングは逆に返討ちにされニューロンが焼かれてしまう。なのでナチの提案により、セキュリティが行き届いてないと思われるダクト内を移動するに至ったのである。
先陣を切るセンダイは注意深く前方を警戒している。ダクト内は暗闇だが、3人のカンムス視力を持ってすれば何ら問題はない。しかし2人の間にいるグラーフは難儀そうに吐息を漏らしている。「うぐっ……ちとキツイな。最近太ったか…?」自分の胸と尻がたまにつかえるのだ。「しかもバケツ(注釈:BKT成分)も切れてきたみたいだ……クラクラしてきた」「しっかりして下さい」「ああ……提督にやめろと何回も言われてきたんだがなあ。やめどきが分からんのだよ実際」
「フン、昔の帝国軍人めいた貴様はどこに行ったのであろうな。クスリにおぼれるとは堕落極まりなし」「返す言葉もないねナチ=サン」しかしそんなことを言いながら後方のナチは先をゆくグラーフの尻を凝視している。水に濡れたスカートがペタリと張り付き、半分ほどめくれ、下着がくいこんでいる。(だがしかし、中々良い光景だ…)ナチは思わずその尻に手を伸ばしかけた。読者の方もお気づきであろうが、彼女は自分の性別さえも判然としていないほど狂気に陥っている。非常に不安定な精神状態なのである。
「濡れた服も気持ち悪いし散々だな……作戦会議の時にあんな提案するんじゃなかったなこれは」「待ってください」BKT切れのせいでダウナー状態にあるグラーフの文句をセンダイが遮った。「ここから出れるようです」指差した先には鉄格子がはめられており、僅かな光が漏れ出している。「やっと出口か!早く開けてくれ!」「イヤーッ!」センダイは鉄格子に力を入れ無理矢理外した。そのままダクト内から這いずり出る。
ダクトの出口は天井近くにあるようだ。センダイは廊下にスタリと着地する。「高さがあります。気をつけ…」「うお!?グワーッ畜生!」しかしセンダイの警告むなしく着地仕損なったグラーフは尻を廊下に強打した。「あだ…あだだ……みんなには言わないでくれよ…」「はあ」流石にセンダイもやや呆れたような面持ちになってしまう。かつてのグラーフは軍の規律を過剰に重んじるとても厳しいセンパイとして恐れられていた。しかし今、このセンパイはクスリ切れでフラつきながら身を起こしているのだ。実際情けない状態であるのは否めない。
「妙だな」その後ろで問題なく着地したナチが呟いた。「何がだい?今のドジはBKTが切れているだけで」「違うわ愚か者め。私が妙だといっているのはこの廊下だ。この廊下には部屋がない」確かにナチの言う通りこの廊下に隣接した部屋はなく、廊下がそこまで長くないのにも関わらず両端が鋼鉄扉によって閉ざされている。「これはひょっとすると……」
ナチは言葉が終えるその前に、廊下の前方からじわじわ迫ってくる網目状のレーザー光線を睨み据えた。「これは」「やはり罠か!」果たして、後方からも、赤い網目状のレーザー光線が出現していた。アナヤ、この廊下はトラップ廊下だったのだ!突然の窮地に陥った3人を、監視カメラ越しに見下ろす者がいる。((ケケケ……!まんまとハマりやがったな!そのまま3人!仲良く黒コゲになりやがれーッ!))この部屋に誘い込んだ張本人、集積地棲キはモニターに向け、歪んだ笑みを浮かべた。
【KANMUSLAYER】
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【KANMUSLAYER】
「ダクト内にアタシの目が行き届いてないと思ってたのかよ?ケケケ……とんだアホAIをつんでるみてーだなぁ~?」ここは秘密施設の中央司令室。そこで集積地棲キは20枚近くのUNIXモニタすべてをヘッドフォン型端末にUSB接続し、俯瞰している。普通ならばニューロンの負荷限界をとうに超えているが、ヤバイ級のハッカー能力を持つ彼女にとってはベイビー・サブミッションに過ぎないのだ。
集積地棲キが両腕に装備しているブレーサーはとてもIRCのタイプに適した物とは思えぬ大きさである。しかしそのブレーサーの巨大な指先に注目していただきたい!小型ロボットアームが10本全ての指先から展開しており、指一本一本がキーボードを高速物理タイプしているのだ。つまり集積地棲キの演算能力は、単純計算すれば通常の10倍に相当する。なんたる恐るべきカンムスマルチタスク能力か!
セキュリティシステムに多重ログインした集積地棲キにとって監視カメラは己の眼であり、スピーカーは己の耳であり、迎撃システムは己のカラテそのものなのだ!「とっとと終わらせたらァーッ!3人まとめてケバブめいてこんがり焼けちまうがいいぜぇ!」絶え間ない多重高速タイプを続け、使用者の精神をフラットに澄み渡らせる効果のあるザゼンドリンクを啜りながらも集積地棲キはまるでアーケードゲームをプレイするかのように3人を大爆発四散に追い込むことができるのである!ナムアミダブツ!
一方その頃!「イヤーッ!」センダイはゼロセンを投擲!狙いは勿論、ドア近くの壁にある緊急停止スイッチだ!((無駄だぜーッ!))しかしレーザーの隙間をゼロセンが通過しようとしたその瞬間、瞬時にレーザーが収束!KABOOM!ゼロセン撃墜!「イヤーッ!」ナチの折り畳み式ショートボウから射た矢が、そのわずかな隙間を通過する。しかし矢の羽が焼け落ち、スイッチを外れてしまった。羽が無ければ狙いは定まらぬ!
「くっ…」「ホーリーシット!ベトコン共めが!卑劣な罠を!」センダイとナチは次々とゼロセンを投擲し、矢を射るがことごとく撃墜又は的を外れてしまう。レーザー光線はその様子をあざ笑うかのようにタタミ3枚近くまでに接近!このままではレーザー光線に焼かれ、黒コゲ後、大爆発四散は確実!((抵抗しようと無意味なんだよ!連続3KILLでポイント倍点だぜ!うけけけけーッ!))集積地棲キが中央指令室でブキミに笑った。彼女にとってイクサとは、己の腕試し程度のゲームに過ぎないのだ!
しかし絶体絶命の危機に立たされたエネミーキャラクターの一人であるセンダイは、電撃的速度で打開策を導き出した!ゼロセンも矢も羽根がある、しかしそれゆえレーザー光線の狭い隙間に引っかかってしまうのだ。ならば羽根のない、流線型の物体ならばどうだ!?そう、グラーフのリボルバー拳銃ならば!「グラーフ=サン!あのスイッチを!」その言葉を聞いた瞬間、ナチもその意味を理解した。「成程!貴様の弾丸ならば隙間を通り抜けるのは可能!早くやれーッ!」
だが……当のグラーフは二人の間で膝を抱え座り込んでいる!何故!?「グラーフ=サン!?」「バカ者めーッ!何をやっとるかああああ!」しかし二人の言葉も耳に入らない様子でグラーフは何かをブツブツと呟いている。「……そう、だよなあ……昔より太ったし、太ももも太くなったし…髪の毛のツヤも落ちたし……提督も、私になんて魅力感じないよなあ……ハハハ……」「グラーフ=サン!?」「何をいっとんだ貴様ーッ!」
「ワカル、ワカルよ。ヤク中だし、女っけもないし…尻もでかいし。ヒュウガ=サンみたいに奥ゆかしくないし、カガ=サンみたいに真面目でもないし…当然だよな…ハハ」「グラーフ=サン!?」「だッ・かッ・らッッッッ!何をいっとんだ貴様ァアアアアアアーッ!」ナ…ナムアミダブツ!これはBKT中毒者特有の、BKT切れによる極度のダウナー状態だ!思考能力が極端に低下し、ネガティヴな感情がグラーフを支配する!二人の言葉に耳を貸さず、虚ろな眼で乾いた笑いをこぼしている。なんたるブザマ!
「グラーフ=サン!?しっかり気を保って下さい!」「大バカ者が!早く目を覚まして撃てーッ!」ナチが襟を掴みぶんぶんと揺するがグラーフはされるがままである。「ワカル、ワカルよセンダイ=サン…君に比べりゃもう私はオバサンで」「グラーフ=サン!?」「頼むから早く眼を覚ませーッ!」ナムサンこの情けないセンパイは使い物にならない!だがセンダイは、それすらも打開する策を思いついた。グラーフのコートの中に手を突っ込む!「シツレイします!」「ンアーッ!?流石にそんな趣味はないぞ!」「私もです!」
センダイは思い出したのだ、重度のBKT愛好者であるグラーフが、持っているはずの『例のもの』を!センダイは『それ』をグラーフのコート内から見つけ出した。その小瓶にのラベルには『20㎎配合、バケツタブレット』の文字が!そう、これは実際ほぼ違法であるBKT成分を大量に含んだ脱法タブレットなのだ!チンジフ内でもしこれが見つかれば3日間はケジメ、さらにタツタの懲罰拷問が課される程の禁止アイテム。しかしグラーフの眼を覚ますにはこれしかない!
「おおッ!それは!」ナチはセンダイからその小瓶を受け取ると、フタを開け直接グラーフの口内に流し込んだ!「え、アバーッ!!」「いい加減眼を覚ませといっとるんだこのアホがァアアアアアーッ!!」「アババババ!アババババーッ!」多量のBKT成分がグラーフのニューロンと体内を駆け巡る!しかしレーザー光線は3人のタタミ1枚近くまで接近!万事休すか!?
この瞬間、モニター越しの集積地棲キは勝利を確信した。だが、次の瞬間!!「…………YEAAAAAHAAAAAーッ!!!!」凄まじきシャウトと共に立ち上がる者あり!((ワッザファック!?))その主はそう!BKTの過剰摂取によりアブナイ・ハイ状態になったグラーフ・ツェッペリンその人であった!「遥かに!遥かにイイぞッ!見える!私にもイルカチャンが見えるぞーッ!うわっはははははーッ!!」恍惚の笑みを浮かべながら双眸を爛々と輝かせている!コワイ!
「グラーフ=サン!?」「早くあそこのスイッチを撃てーッ!!」「ハイヨロコンデー!!FOOOOOOOOOOOO!!」グラーフは奇妙な姿勢のままリボルバーを三連射!それにも関わらず針の穴を通すかのように正確に撃ち出された弾丸は、レーザーの隙間を……すり抜けた!そのまま3発の弾丸は吸い込まれるようにスイッチに着弾!レーザートラップは3人の半タタミ分で停止し、消失!ゴウランガ…おお!ゴウランガ!
危機を脱し、センダイとナチは思わず床にへたり込む。なんだか分からぬ徒労感が二人を襲う。「ハァーッ……いい判断力だ。若いが見どころがある。お前も私たちとサヴァイヴしないか?」「……お断りさせてもらう」「ハッ!ますますお前に興味が沸いてきた!しかし…」二人はハイになり、自分を見失った艦娘に視線を移した。「おおおッ…!リロードタイムがこんなにも息吹を!イルカチャン!?そうか!いいセンスか!そうだろう!?アハハハハハ!!」「…アイツは置いていくべきか」「………」センダイは目を伏せた。
【KANMUSLAYER】
◆クスリはくれぐれもやめようね。以上です◆
◆一週間ほど別のSSを書いて気分転換をしていました。更新明日な◆
◆緊急、更新がつらい状況に陥りましたのでまだかかる。ケジメした作者が用事を済ますまでしばしお待ち下さい◆
【親愛なる読者の皆さんへ : ついに作者は向こう側から戻ってくることができました。真実を手に入れることができたので明日からこうしんを再開したいと思います。以上です】
◆◆◆◆◆◆◆
【KANMUSLAYER】
センダイはスプリント体勢を維持したまま、壁からせり出したセントリーガンに向かってゼロセンを投擲!「イヤーッ!」AKBOM!セントリーガン破壊!「イヤーッ!」先頭を駆けるナチも足元に張られていたワイヤートラップを目ざとく発見しナイフ投擲切断!
「センダイ=サン!身を屈めろ!」ナチがそう言うやいなや天井がパカリと開き、振り子ギロチントラップが頭上から襲い掛かる!二名とも姿勢を床すれすれまで倒し回避!しかしタタミ数枚分前の床が突如脱落し、落とし穴トラップが出現!アブナイ!
「「イヤーッ!」」しかし瞬時に姿勢をスプリント体勢に戻した二人は難なく跳躍し穴を飛び越える!ワザマエ!なんたるカンムス身体能力をフル活用したパルクール・アクションか!繰り出されるトラップをものともせず2名は弾丸めいた速度で目的地、中央指令室へと向かう!
「この私に着いてくるとは大したものだ!誰からカラテを習った!?」「それは後だ、今は目的を果たす」二人は壁の電光掲示板に度々表示される『チート行為はちょっとやめないか』『てめえらの頭はぱんぱかぱーんかよ』『運営に通報してBANする』などの威嚇メールを無視しながら突き進む。おそらくこの施設の中心部は近いだろう。
この一歩間違えれば大爆発四散もやむなしのパルクールは、実際ナチのトラップに対する豊富な知識によって保たれている。センダイはナチを信頼したわけではないが、トラップを予測・察知し回避できるナチのワザマエが信頼に値するのは間違いない。ゆえに疑問は深くなる。なぜこの人はおかしくなってしまったのだ?
『着信、着信ドスエ』しかしそんな事を考える間も無く、センダイのIRCにメールが受信した。パルクールを続けながらメールを確認する。別行動を取っていたグラーフからだ。『#NEO SAITAMA TINJIHU : GRAF : マジですまなかった。中央司令室らしき部屋を発見、待機する。 ps.提督には言わないでくれ』どうやら正気を取り戻したらしい。こちらに注意を引かせる作戦は上手くいったようだ。
「グラーフ=サンが中心部らしき部屋を発見した」センダイは前を駆けるナチに簡潔に告げる。「ほう、あのアホも頭以外は衰えていないようだな。そら!私たちもこのフスマを越えればすぐに中央だ!」ナチが指差す先は強化フスマでロックダウンされている。『重点』『普通に入れない』『しめきり』などの文字。すわ!中枢はすぐそこにあるという事を示しているのだ!
「「イヤーッ!」」2人は言葉を交わすこともなく、ほぼ同時に飛び蹴りを放ち、強化フスマを吹き飛ばして室内にエントリーした。しかし!「イヤーッ!」2人が着地した瞬間、電子音声シャウトと共にミニガンが掃射される!BRATATATATATATATATA!ナチは跳躍、センダイは側転しアンブッシュを回避!2人に対する……この鋼の巨体は!?
「アンブッシュ効果なし、アイサツ・モード重点。ドーモ、モータ連装砲=チャン・ツヨシ、デス」電子音でアイサツするのは2つの重厚なキャタピラ脚を備えた鋼鉄のマシーンだ!無骨な戦車めいた胴体と両腕に装備された重武装火器、これらすべてを巧妙に隠すように、愛らしい連装砲=チャンの頭部が装着された試作型殺戮兵器である。「私はマスコットキャラであり、決して兵器ではありません」欺瞞!
【KANMUSLAYER】
◆予定を早めて更新しました。新エピソードンに向け、どんどんやりたい。以上です◆
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【KANMUSLAYER】
「カンムスソウル検知!2名ともカンムス判定ポジティブ!ゼンメツゼンメツゼンメツだ!マスコットとしてゼンメツだ!」ドッシ!ドッシ!重量2脚で接近、連装砲=チャン・ツヨシがいきなりセンダイに殴りかかる!「イヤーッ!」センダイは鉄球パンチを側転して回避!「機械にアイサツなど要るまい!」
「センダイ=サン!」強化バイオバンブーのボーを構えたナチが呼びかける。「貴様の目的地は目と鼻の先。まずはソ連製の鉄クズを片付ける。この戦場を攻略するぞ!」「了解した」センダイは頷き、カラテを構えた。「ゼンメツ!ゼンメツだ!イヤーッ!」鉄球パンチ連打が襲いかかる!
「イヤーッ!」センダイは鉄球をスウェイ回避すると、振り下ろされたその巨大な腕を蹴ってジャンプ、カワイイ意匠の頭を飛び蹴りした。「イヤーッ!」「ピガーッ!」連装砲=チャン・ツヨシがよろめき、足裏キャタピラで踏みとどまる。なんたる安定感!「イヤーッ!」そこへナチがボーで追撃!
「ピガーッ!」鋼の四倍の強度を誇るバイオバンブーが関節部に叩きこまれ、破損部から黒いオイルが流れ出す!「イヤーッ!」センダイが戦車めいた胸板にジャンプパンチ!「ピガーッ!」よろめく連装砲=チャン・ツヨシ!さらに戦車めいた胸板にセイケンヅキ!「イヤーッ!」「ピガーッ!」胸部装甲が弾け飛んだ!
だが、弾け飛んだ胸部からミニガン展開!「ゼンメツゼンメツだ!」アブナイ!「サイゴン!」しかしセンダイを飛び越えたナチがナイフを両ミニガンに突き立て破壊!すかさずセンダイは渾身のカラテ・ストレートをミニガン奥の動力部に放つ!「イヤーッ!」「ピガガガガガガーッ!」
電子の断末魔をあげ、連装砲=チャン・ツヨシは完全停止した。「よし邪魔者は片付いた、これで……」「待て!」センダイは頭上の闇を睨んだ。「イヤーッ!」転がり避けたその地点に、巨体が落下してきた。新手の連装砲=チャン・ツヨシだ!「まだ……何!イヤーッ!」ナチもまた側転して避ける、そのポイントにさらに一体が落下!新たに現れたるは二体!ナムアミダブツ!なんたる量産型マスコット!
「ドーモ、モーター連装砲=チャン・ツヨシです、カンムスソウル検知!ゼンメツゼンメツゼンメツ!」「ゼンメツゼンメツゼンメツだ!」「イヤーッ!」すかさずセンダイが戦車めいた胸板にジャンプパンチ!「ピガーッ!」「イヤーッ!」さらに戦車めいた胸板にジャンプパンチ!「ピガーッ!」
「仮にもマスコットとしてゼンメツだ!」もう一体がセンダイを横から重キャノン砲で攻撃しようとする。だがナチはボーを突き出し阻止!「サイゴン!」「ピガーッ!」脇腹にマチェーテを刺すと、片手で腰の道具袋からボーラ(分銅つき投擲ロープ)を取り出し、センダイがジャンプパンチを続けるもう一体の脚めがけて投げつける!???
「ピガガガ!ゼンメツだ!」ナチに脇腹を刺された一体の胸板プレートが展開、ミニガンが迫り出す!センダイへ向かって銃弾を乱射!「イヤーッ!」センダイは地面を転がってそれをかわす。「ピガガーッ!」ナチが射線上に引きずり出したもう一体がフレンドリー射撃を受け、なす術なく機能停止!
「イヤーッ!」ナチはマチェーテを取り出し連装砲=チャン・ツヨシによじ登り、首関節に突き立てる!「ピガガガ!」鮮血めいてオイルが噴出!「イヤーッ!」さらに脇腹のマチェーテを引き抜き、ミニガンに横から突き立てる!「ピガガガガガ、ガガガ!」ミニガンが暴発!火を吹いた!「ピガガーッ!」
センダイはモータードクロへ向かって全速力でダッシュ!苦し紛れのキャノン攻撃を飛び上がって回避し、飛び蹴りを放った!「イイイ……イヤーッ!」無論狙いは首筋に突き刺さったナチのククリナイフだ!カワイイ意匠の頭部を粉砕・切断する!「ピガ、ピガガガッ!ガーッ!」最後の連装砲=チャン・ツヨシは頭部を吹き飛ばされ、火花を散らして活動を停止した!ワザマエ!
ナチは破壊された連装砲=チャン・ツヨシからマチェーテとククリナイフを引き抜き、背中の鞘に収めるとセンダイに向き直った。「さあ、これでソ連の援軍は片付いた。これで共闘は終わりだ」「何」「私の目的は中心部への到達ではない!あくまでも物資の補給だ。ゆえにここから先は協力する必要なし」
「そうやすやすと帰すと思うのか?貴方は捕縛対象だと言ったはずだ」センダイは油断なき視線でナチを見据える。「フン、やりあっても構わんが、今はあのアホの所へ行くべきだと私は思うがな?」これは実際図星だ。ここまできてナチと戦っても潜伏中のグラーフのリスクを高めるだけである、すぐにでも中心部へ向かわなければならぬ。しかし一時的に協力したといえど、以前仲間たちに襲いかかったナチは間違いなく看過できない存在である。
「おっと……ところでだが、後ろに気をつけた方がいいのではないか?」「…!」ナチが言い終わる前に、センダイは電撃的な速度で振り向いた。「ピ……ガガ…ゼンメ………ツ……」フレンドリーファイアで機能停止していた連装砲=チャン・ツヨシが再起動し、キャノン砲でこちらを狙っている!「イヤーッ!」センダイはカラテ連装砲連射!「ピガガガガーッ!」今度こそ完全停止!
センダイが再びナチに向き直るとそこにナチはおらず、先ほどキャノン砲によって開けられた穴の近くまで移動していた。その穴は地下室までに達しているようだ。「これでまたひとつ貸しだセンダイ=サン!貴様は最後まで私に助けられてばかり、心底感謝せよ!」「……今回だけだ。もし、また私の仲間を襲うようなことがあれば容赦しない。次に会ったときは貴方を倒す」センダイは背を向け、決別するように言い放った。もはやナチを追う猶予はない。
「フフフ…ならばいつか貴様とも戦う時が来るだろう!サラバだ。戦略的撤退!オタッシャデー!」ナチはそう言い残すと、穴の中へと消えていった。センダイは迷いを断ち切るように再び駆け出す。あとは中心部に到達し、この施設の責任者の脳天にチョップを食らわすだけだ!「イヤーッ!」決着を目前にし、走れセンダイ!走れ!
【KANMUSLAYER】
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【KANMUSLAYER】
ストココココ、ストココココ、ストココココ……。UNIX電算音で満たされた空間、壁に沿って並べられた計器類。眼下、無人のデスクに身を隠すグラーフに背を向ける形で、長身の深海棲艦娘がキーボードを殴りながら罵声を吐いている。おそらくこの施設のセキュリティ主任であろう。
その深海棲艦娘の他に、アサルトライフルで武装したクローン軽巡洋艦が5人。クローンハッカー妖精、クローンヤクザ妖精が数匹。(((許容範囲内だな…)))グラーフは沈思黙考する。敵はまだ自分の存在に気づいていない。別行動をとっている二人に相当執着しているのだろう。親玉をアンブッシュで仕留めさえすれば後はどうにでもなる筈。
(((迷っている時間はないな)))二人は過酷なトラップを引き受けてもらっている。到着を待つのもいいが、いたずらに時間を過ごして状況を悪化させるわけにはゆかぬ。とにかく中枢を破壊するのが優先だ。グラーフは意を決するとリボルバーを握る手に力を込め、デスクから上体を跳ね起こした!
しかしグラーフの視界は何かによって遮られた。(((なッ……!?)))デスクを隔てた目の前にいつの間にか誰かが立っている。モデルめいた体形、白い肌、思慮深げな瞳、そして振り上げた腕の掌中央から放たれる閃光。「ここで銃を撃たないで。備品が壊れたら、始末書を書かなきゃならないから」その深海棲艦娘は呟いた。
グラーフの判断は早かった!「イヤーッ!」掌から放たれる閃光爆発!これをすんでのところでバックフリップ回避するグラーフ!「おいおいおいおいおい!こんなに近くにいるなら声をかけてくれ!」爆発の余波で後退しながらも、素早くリボルバーを構えなおし、アイサツする。「ドーモ、グラーフです。ちょいとお邪魔してるよ!」
(((……結局自分で机を壊してしまったわ)))彼女はやや後悔した後、オジギしアイサツした。「ドーモ、重巡棲キです」その両手には強化スーツめいたガントレット。掌中央に備えられた爆発閃光の発射口、手首からひじにかけて備え付けられた蛍光灯めいた発光体、そのいずれからも不穏な赤い光が継続的に放たれている。
「クソックソックソッ……ン?そこで何してんだ重巡棲キ=サン?って、ソイツ誰だよ!?」流石にセキュリティシステムに没頭していた集積地棲キも気づいたようだ。面食らった様子でこちらを振り向いている。「敵よ。気づくのが遅い」「うっせ!ドーモ集積地棲キです!よく見りゃテメエは腐れ艦娘の残りの一人じゃねーか!」
「「「ざっけんこらー!」」」「「「ザッケンナコラー艦娘!」」」ナムアミダブツ!もはやクローン軽巡洋艦もクローンヤクザ妖精さえもグラーフに銃を向けている!なんたる完全包囲か!(((なんてこったい……!一転してピンチじゃあないか!)))グラーフの銃を握る手に汗がにじむ。ここでやられては元も子もない!
「投降して。ここを壊したくない」集積地棲キは掌をこちらに向けている。鉄製の床がひしゃげているのを見ると、閃光爆発に直撃すればただでは済まないだろう。さらにその身のこなしからは極めて高いカラテを感じさせる、グラーフの長年のカンがそう告げる。「投降、ね……中々心が広いじゃないか」グラーフはそう呟き、銃口を下げた。
全員の視線が僅かに下がった、その刹那!「………答えはノーだけどな!!」サイバネ・コンタクトレンズのデュアルエイムアシスト機能によって放たれた弾丸が、クローン軽巡洋艦とクローン妖精それぞれ2体ずつを撃ちぬいた!「「グワーッ!」」「「あばーっ!」」「イヤーッ!」集積地棲キに向けられた残り1発を重巡棲キは弾き返しガード!そのままグラーフに向かって跳躍する!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」振り下ろされたチョップをクロスして銃身で受け止めるグラーフ!着地した重巡棲キは掌底めいて掌を突き出す!「イヤーッ!」間髪いれず放たれる閃光爆発!「イヤーッ!」グラーフは発砲反動を利用したダッキング回避!「アバーッ!」さらにこちらを狙おうとしていたクローン軽巡洋艦をその弾丸で撃ちぬいた!ワザマエ!
グラーフはその勢いのままバック転し、鉄製の棚の後ろに飛び隠れる!一瞬遅れてその軌跡を火線が薙ぎはらう。壁からせり出したマシンガンだ!「テメーもアタシをコケにした奴の1人だよなぁ~!?穴あきチーズにしてやるぜッ!」室内のセキュリティシステムに平行接続した集積地棲キが吠える!グラーフを鉄製棚ごと集中放火!
「ムダに弾を使わないで、勿体無い」「努力するよ!オラオラオラオラオラーッ!」削り取られていく鉄製棚の後ろでグラーフは身を縮めながらクイックローダーにはめられた弾丸を投げ上げ、曲芸めいて高速リロードする。(((無茶苦茶やってくれるね畜生!)))鉄製棚が削り切られる直前、飛び出したグラーフはローリングしながらリボルバー連射!「イヤーッ!」「ぐわーっ!」「アバーッ!」火線を一点に集中させていた一部のクローンヤクザ妖精とクローン軽巡洋艦はなす術もなく被弾!
◆寝休憩、きょうのごごあたりにつづく◆
◆再開◆
「イヤーッ!」重巡棲キがジャンプパンチで襲い掛かる!「イヤーッ!」これを側転で回避したグラーフは真横から銃身をねじ込むように拳を放つ。重巡棲キはグラーフの手首を弾きそらし、カウンター掌底と閃光爆発を叩きこむ!「イヤーッ!」
しかしこれはグラーフの想定内だ!掌が突き出されたと同時に重巡棲キのワン・インチ距離に踏み込むと、ガントレットを脇に挟み込んだ。無論、閃光爆発はグラーフの後方で炸裂し無効!「イヤーッ!」「グワーッ!」さらにガントレットを抱えたまま頭突きを繰り出す!重巡棲キはたまらず苦悶!
グラーフは残りの手でゼロ距離リボルバー射撃を試みたが、重巡棲キもさる者!「イヤーッ!」巧みな体重移動で姿勢を瞬時に変更しグラーフを投げ飛ばす!「イヤーッ!」グラーフは叩きつけられた衝撃をウケミで無効化し、床を蹴って再び重巡棲キに掴みかかかる!「イヤーッ!」「イヤーッ!」2名は木人拳めいたコンパクトな応酬を開始する。まさにチョーチョー・ハッシ!
「クソ……クソ!重巡棲キ=サン!ソイツもぎ離せ!狙えねーだろーが!」「今は無理。イヤーッ!」集積地棲キはその様子を歯噛みしながら見守るしかない。ここまで2者の距離が近いとなると援護射撃がフレンドリーファイアなり得るからだ。(((やはり撃ってこないか。とりあえずは狙い通りだ)))グラーフは打撃の応酬を続けながらも、このイクサにおける最適解を選択してゆく。経験にモノをいわせた老獪な戦法である。
「イヤーッ!イヤーッ!なあ君!私は君のジツを知ってるぞ!イヤーッ!」舌戦についても優位に立つのも忘れてはいけない。打撃をいなしながら重巡棲キを揺さぶりにかける。「実弾じゃなくてエネルギー!ヒカリ・ジツだろ!?イヤーッ!」「イヤーッ!」重巡棲キは応えない。しかし表情がほんのわずかに変化したのをグラーフは見逃さなかった。
通常、艦娘や深海棲艦娘はカラテ砲やカラテ機銃には実弾を用いる。弾丸にカラテを込め撃ち出すのだ。しかし一部には弾丸ではなく、無形のエネルギーを飛び道具として用いる者がいる。プラズマキャノンやレーザーライフルなどが代表される。その中でも図星であろう重巡棲キのヒカリ・ジツは血中カラテを炸裂閃光エネルギーに変換し、叩きこむ強力なジツだ!
「ヒカリ・ジツの弱点は!イヤーッ!」一瞬の隙を見計らい銃撃反動肘鉄を叩きこむ!「グワーッ!」「カラテエネルギーの消費が激しく連射が効かない事!」「イヤーッ!」重巡棲キはダメージを振り払い、左掌底を繰り出す!「次は!当たりさえすれば強力だが!」グラーフはアッパー銃撃で左ガントレットを跳ね上げる!撃ち出された閃光爆発は天井に炸裂!
「外した時のリスクが大きいことだッ!」「!」無防備になった重巡棲キの額に銃口を向ける!なんたるジツの特性を把握したグラーフの頭脳カラテか!ハイ状態から脱したといえど、いまだグラーフの体内にはBKT物質が駆け巡っているのだ!(((これで終わりだ!)))グラーフはトリガーにカラテを込める!
そう、それはまさに銃弾が発射されようとするほんの一瞬の間であった。グラーフのサイバネ・コンタクトレンズを赤い閃光が駆け抜けたのだ。その閃光の軌跡にあったリボルバーの銃身が切断され、ボトリと落ちた。(((………な)))ほぼ本能的にそらした顔の、頬の傷口が焼ける匂いが鼻をつく。「確かに、私のジツは連射も効かないし、外した時の隙も大きい」
右手を振りぬいた重巡棲キは静かに語った。「でも、こんな使い方もある」右手ガントレットの蛍光灯めいた発光体から、閃光の刃が飛び出している。やがてそれは光を失って消えた。「これも1度に一回斬りつけたら消えてしまう……それでも、銃身くらいなら簡単に斬れるから」
ーーーーーーーーーーー
ナチはキャノン砲によって開けられた穴から降り立ち、周囲を見渡す。様々な備品が積まれた棚がずらりと並んでいる。お目当ての倉庫の丁度上で先頭を行っていたという事なのだ。(((モッチャム!)))しかしナチは油断せず、ショートボウを展開してすり足で全身する。警備の者がいれば即座に射殺すのみだ。
「うっわ、何かヘンなのが来た」皮肉めかした言葉が聞こえた。ナチはそちらに弓を構え振り向く。その声の主は檻の中で肘を突き、横になっている。艦娘……違う。この雪めいて白い肌は深海棲艦娘だ。彼女の奥の目には、どこかものぐさなアトモスフィアがある。「侵入者ってあんた?ご苦労なこったねー」
「何者だ」ナチは問うた。深海棲艦娘はあくびをした。「何者って?見て分かるでしょーに。あんたらのにっくき敵のひとりでーす。にしてもおかしな格好してんね」「貴様は捕虜か?」「捕虜?」深海棲艦娘は訊き返した。「ぷっ!戦争ゴッコでもしてるの?んなわけないっしょ、同じ深海棲艦娘なのにさぁ」
「では懲罰中か。戦争のドサクサでスシでもつまみ食いしたか」「まだ言ってやんの。あんたの妄想にこっちも付き合わなきゃいかんのかい」「フゥーム」ナチは親指で顎を擦った。「ジャングルの奥地でイクサを投げ出した脱走兵の話は、聞いた事がある。ヤレヤレ!情けない奴め」「アー……もうそういうことでいいや、うん」
深海棲艦娘は尻を掻いた。「とにかくあたしのことはアレだ、いないと思っていいよ。別に通報したりしないし、好きに家捜しすりゃいいんじゃない?ここって割となんでもあるっぽいし、あたしにゃ関係ないけど」「……」ナチは思案した。「私はナチだ。貴様の名前は?」「名前ぇ?駆逐水キだけど」
「とにかくさぁー、アンタなにしにきたワケ?ドロボー?」駆逐水キは言った。「ドロボーではない!施設侵入のち物資強奪だ」「ドロボーじゃん」「やかましい、あるふたりと一時的に協力しここまで侵入してきたのだ」「艦娘?」「そうだ」「………」駆逐水キは目を閉じた。「中央指令室に反応がひとつ。少し離れてもうひとつ」
「居場所が分かるのか?」ナチは言った。駆逐水キは起き上がり、体育座りした。「まあ一応、そういうジツとかなんとかだって。疲れるから使うのヤなんだけどね」「実際有用な能力だ。なぜ檻の中にいる?」駆逐水キは何度目かわからないあくびをしている。「ヨルノヤミガー、コワクテー、コワクテー…」「まじめに答えろ」「仕事がめんどいから」
「職務放棄か」「そーだよ。バツとしてここでこうしてる。。何もする事ないし、寝てるってワケ」駆逐水キは再び寝そべった。「そろそろ行けば?」「……」ナチは檻に手をかけた。「ヌゥーッ……!」「ちょっ…タンマタンマ、なにしてんの?アタシのこと大破させるつもり?それはさすがに勘弁してよ」「大破?何をバカな」格子を捻じ曲げながら言った。「へあ?」「お前は一緒に来い。我がサヴァイヴァー・チンジフに!」ナチはそう言い放つと、さらに手にカラテを込めた。
【KANMUSLAYER】
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【KANMUSLAYER】
「いやいやいやいや……サヴァなんとか?よく分からんけど、アタシ深海棲艦娘だよ?無理でしょ」「そんな些細なことは関係ない!」「ナンデ?」駆逐水キは心底不可解そうに目を見開いた。ナチは答えた。「そこで寝ていて、何になる」格子が曲がってゆく!「何になる、って、何にもならないけどさ…」困ったように頭をかく駆逐水キ。
「セイカンヤの使命とかよくわかんないし、出世した重巡棲キ=サンが全然幸せそうじゃなさそうだし、仕事もやる気ないし、寝てるくらいしか……」「ナンデ?」今度はナチが問うた。「檻は空いたぞ。なぜ出ない?」「出る?」「当然だ」ナチは一歩下がった。そして言った。「お前がそこにいる理由は何も無い!しかしこの檻の外には自由がある!」
「……まあ、そりゃ、無いけど」「ならば共に来い。サヴァイヴァー・チンジフはお前のような戦力を必要としている。自由獲得の為の戦力を!サヴァイヴァルの力をな!」「自由……ねえ」駆逐水キはのそのそと檻から出てきた。 「私たちは組織の道具では無い。わかるか?サヴァイヴァルする為の命だ!厳しいサヴァイヴァル環境に適応できる肉体と力を持つ。ゆえにサヴァイヴァルする。私たちはサヴァイヴァル集団であり、サヴァイヴァルの為に戦う!そして自由を手にする!」ナチは叫んだ。「お前もそうなのだ!」
「やっぱり何言ってんのかわかんないわ、アンタ」駆逐水キは檻から出ると、その場で大きく伸びをした。「んーっ……でもさァ、寝る・食べる以外に、やることないと思ってたけど、自由に生きる。その言葉、嫌いじゃないかも」「そうだ!自由を勝ち取るのが私たちなのだ」ナチが言った。「深海棲艦娘であろうが敵であろうが関係ない。今からお前は私たちの家族になったというわけだ!」
「家族、ね。へへへ……もうツッコむのも疲れてきちゃった」「よし。作戦再開だ、駆逐水キ=サン。我々は物資や必要としている」「わかりくいっちゅーに。メディキットだの弾丸だの燃料とかでしょ?この部屋にあるよ、そこのコンテナ」「よし!でかした!」ナチはコンテナに飛びつき、蓋をこじ開けた。中には弾丸や燃料が満載!空母娘用のボーキサイトもある!さらに壁際の棚にヨロシサンエンブレムの箱を発見!メディキットだ!「モッチャム!」バイオフロシキに詰め込む!「待っておれマヤ!イムヤ!リュウジョウ!アイオワ!」
くぅー疲れましたこれにて完結です
「グワーッ!」グラーフは重巡棲キの右ストレートをまともに受け、大きくのけぞった。「ヒヒーッ!へばってんじゃねーぞォ!」すかさず襲いかかる集積地棲キの遠隔操作マシンガン連射、クローン軽巡洋艦とクローンヤクザ妖精の銃撃の雨!「ぐ…!イヤーッ!」グラーフは連続側転で何とか逃れるが、いくつかの弾丸が身体を掠め、傷つけてゆく!
しかし敵は容赦なく侵入者を排除しにかかる!「イヤーッ!」重巡棲キは遮蔽物に向け閃光爆発を放つ!「イヤーッ!」吹き飛ぶ遮蔽物に紛れ、飛び出したグラーフが連続銃撃!重巡棲キは咄嗟に銃撃をガードする、だがそのまま飛びついたグラーフは膝蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」「グワーッ!」重巡棲キは苦悶!しかし、追撃しようとするグラーフの身体にガッチリと組み付いた!「ぐっ!?」「っ…!もう、終わらせる。集積地棲キ=サン、私ごと撃って」
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