ヤドカリ「宿は?」
カニ「え?」
ヤドカリ「いや、だから、宿だよ。ほら、俺の背中についてるだろ」フリフリ
カニ「ぼくそんなの知らない」
ヤドカリ「どこかで落としたのか? しょうがないやつだなあ」
カニ「え?」
ヤドカリ「まったく、おちおちしてると天敵に狙われるぜ」
カニ「うん」
ヤドカリ「つうかお前、やけに横に長いな」
カニ「え?」
ヤドカリ「いや、それだと宿の中に入れねえだろ」
カニ「え?」
ヤドカリ「だからー……お、餌が落ちてきた」パクッ
カニ「うん」
ヤドカリ「お前さ、ここには宿おちてないぞ?」
カニ「え?」
ヤドカリ「ほら、浜辺に行かないと。ここ岩場だし、貝もあんまりいないから」
カニ「貝食べるの?」
ヤドカリ「いや、お前の宿を探すんだよ」
カニ「え?」
ヤドカリ「あーもう。仕方ない、一緒に行ってやるよ」
カニ「ありがとう」
ヤドカリ「えーっと、浜辺は……」
カニ「あっちのほうだよ」
ヤドカリ「そっかそっか。じゃあ海底散歩でも行きますか」ノソノソ
カニ「うん」シャカシャカシャカ
ヤドカリ「え?」ノソノソ
カニ「え?」シャカシャカシャカ
ヤドカリ「お前歩き方おかしくね?」
カニ「え?」
ヤドカリ「なんで横歩きなの?」
カニ「え、だってそういうものだから」
ヤドカリ「そういうものなのか」
カニ「うん」
ヤドカリ「……」ノソノソ
カニ「……」シャカシャカシャカ
ヤドカリ「……」ノソノソ
カニ「……」シャカシャカシャカシャカ
ヤドカリ「歩くの早くね?」
カニ「え」
ヤドカリ「いや、お前早いな」
カニ「そういうものだと思うけど」シャカシャカ
ヤドカリ「あー、宿がないからかなあ」ノソノソ
カニ「え? うん」
ヤドカリ「浜辺に着いた」
カニ「静かだね」
ヤドカリ「いや、波の音がさ、ほら」
ゴポポポポポポ
カニ「うん」
ヤドカリ「お、海草流れてきた」
海草「わーい」ユラユラ
カニ「うん」
ヤドカリ「うまそうだな」
カニ「うん」
ヤドカリ「海草ウマウマ」バリバリ
海草「ひいいいいいいい」
ヤドカリ「おまえも食う?」
カニ「いらない」
ヤドカリ「そっか」バリバリ
カニ「貝がいっぱい落ちてるね」
ヤドカリ「うまうま」バリバリ
ヤドカリ「喰った喰った」ゲプッ
カニ「うん、よかったね」
ヤドカリ「よし、じゃあ、手ごろな宿探すか!」ノソノソ
カニ「え、うん」
ヤドカリ「お」
カニ「?」
ヤドカリ「これなんかよくね? 割と大きいし、丈夫そうだ」ツンツン
カニ「それ貝殻だけど」
ヤドカリ「ん?」
カニ「こっちの方が良さそうだよ」コツコツ
貝「キョエエエエエエエエエエエエ」
ヤドカリ「いや、それ生きてるじゃん」
カニ「え?」
カニ「貝食べるんじゃないの?」コツコツ
ヤドカリ「腹減ってるのか? なんだ、自分の体が無防備なのに食い意地の張ったやつだなあ」
カニ「え?」
ヤドカリ「ん?」
カニ「ぼくお腹へってないよ」
ヤドカリ「ん?」
カニ「え?」
ヤドカリ「え、宿探すんだろ?」
カニ「え?」
ヤドカリ「もう、しっかりしてくれよな」
カニ「うん。しっかりするよ」
ヤドカリ「えーっと……お、あっちの深みの方に貝の群生地があるぜ」
カニ「ほんとうだ」
ヤドカリ「いってみるか」ノソノソ
カニ「うん」シャカシャカ
二枚貝「……」
巻貝「……」
カニ「貝がいっぱいだね」
ヤドカリ「おう」
カニ「おいしそうだね」
ヤドカリ「お前って貝食うの?」
カニ「え、食べるよ。おいしいよ」
ヤドカリ「あ、そうか。お前やけに鋏でかいからな。それで貝殻を抉じ開けて食うのか」
カニ「うん」
ヤドカリ「へえー……お、これなんか良さそうだ。お前、ちょっと、ちょっと」チョイチョイ
カニ「うん」
ヤドカリ「ちょっと中に入ってみろよ」
カニ「え?」
ヤドカリ「え?」
カニ「なんで?」
ヤドカリ「え、なんでって……今、お前の宿探してるんだぜ?」
カニ「う、うん」
ヤドカリ「お前ってほんと抜けてるよな。おれらにとっちゃあ大事な事だろ?」
カニ「え? うん」
カニ「中に入ればいいの?」
ヤドカリ「そうだよ」
カニ「よいしょ」ガツンガツン
ヤドカリ「え、なんで頭から突っ込んでんの?」
カニ「え?」
ヤドカリ「いや、普通尾の方から入るだろ?」
カニ「入り方とか決まってるの?」
ヤドカリ「当たり前だろ」
カニ「あたりまえなんだ」ヨイショ
ヤドカリ「おまえ、変わった奴だなあ」
カニ「よいしょ」ガツン
ヤドカリ「……」
カニ「よいしょ」ガツン
ヤドカリ「……お前って横に長いよな」
カニ「え?」
ヤドカリ「じゃあさ」
カニ「え?」
ヤドカリ「お前を引っ張ったら縦にのばせんじゃね?」
カニ「のびるの?」
ヤドカリ「いや、実際のびたやつもいるんだってさ」
カニ「すごいね」
ヤドカリ「やってみるか?」
カニ「うん」
カニ「じゃあ、ぼくは岩にしがみついておくから、おしりをひっぱってよ」
ヤドカリ「おう」ガシッ
ヤドカリ「……あれ、お前、腹がけっこう固いのな」
カニ「え?」
カニ「コウカクルイだから当たり前じゃないの?」
ヤドカリ「え、俺の腹、ぷにぷにだぜ?」
カニ「そうなんだ」
ヤドカリ「ほら、引っ張るぞー」グググググ
カニ「うん」
ヤドカリ「よーいしょ」グググググ
カニ「あ、挟みとれた」バキッ
ヤドカリ「あ、すまん」
ヤドカリ「引っ張るのはダメだな」
カニ「そっか」
鋏「」
ヤドカリ「お」
カニ「え?」
ヤドカリ「なんか音聞こえね?」
カニ「え?」
ゴポポポポポポ
タコ「wryyyyyyyyyyy!!」スゴゴゴゴ
ヤドカリ「て、天敵だ!」
カニ「わわっ」
ヤドカリ「殻にこもる!」サッ
カニ「岩影に隠れるっ」サッ
カニ「え?」
>>21を見るにアザラシの人か
タコ「ヤモノはどこじゃあああああワシは腹減ったんじゃあああああ」ズゴゴゴゴゴ
カニ「なんで岩陰に隠れないの?」
ヤドカリ「え? いや、お前こそ何してんの」
カニ「え?」
ヤドカリ「は? いやだって、新しい宿見つかったろ? そこに隠れりゃいいじゃん」
カニ「え、隠れるものなの?」
ヤドカリ「当たり前だろ」
カニ「そうなんだ」
ヤドカリ「ほら、俺もそうしてるだろ?」
カニ「うん、そうだね」
タコ「見つからないよぉ……」ゴポポポポ
ヤドカリ「……」
カニ「……」
ヤドカリ「……よし、去ったな」ノソ...
カニ「そうだね」ノソノソ
ヤドカリ「なあ、お前さ、ほんと変わった奴だな」
カニ「え?」
ヤドカリ「だって、目の前に宿があるんだから普通そこに隠れるだろ?」
カニ「そうなんだね」
ヤドカリ「もしかして、隠れ方忘れたのか?」
カニ「え?」
ヤドカリ「お前なんか抜けてるからなあ。しょうがない奴だなあ」
カニ「ごめんね」
ヤドカリ「仕方ねえな、もう。俺が教えてやるよ」
カニ「ありがとう」
ヤドカリ「ほら、俺が入ってるの、これが宿だ。巻貝の貝殻だよ」
カニ「でも二枚貝の方がおいしいよ?」
ヤドカリ「は? そうなの?」
カニ「うん」
ヤドカリ「まあ、実際に口で言うより見せた方が良いかもな……」ノソノソ
カニ「え?」
ヤドカリ「え?」
カニ「なんかお尻の方がくるくるしてるね」
ヤドカリ「え、そういうもんだろ」
カニ「そういうもんなんだ」
ヤドカリ「でだ」
カニ「うん」
ヤドカリ「これが宿の入り口な」ツンツン
カニ「うん、入口だね」
ヤドカリ「ここからこうやって……鋏と顔が外が出るように隠れるんだ」モゾモゾ
カニ「わあ」
ヤドカリ「わかったか?」
カニ「つまり、それに隠れればいいの?」
ヤドカリ「うん、宿に隠れたら安全だろ?」
ヤドカリ「よし、じゃあもう一回やるぞ」モゾモゾ
カニ「くるくるだね」
ヤドカリ「おい、弱点をそんなに見ないでくれるか」
カニ「ごめん」
ヤドカリ「ここの穴に、こうやって……」
カニ「そこの入口から入るんだね」
ヤドカリ「おう」
タコ「お」
ヤドカリ「あ」
カニ「え?」
タコ「wryyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!」ズゴオオオオオオオオオ
ヤドカリ「ま、まずった! お前、隠れろ!」ガチン
カニ「う、うん。わかった!」ガチン
ヤドカリ「え?」ガチガチ
カニ「え?」ギチギチ
ヤドカリ「ば、ばか! お前邪魔だ! なんでこっちくるんだ!」ガチガチ
カニ「え、だ、だって、ここの入り口から入れって」ギチギチ
ヤドカリ「え?」
カニ「え?」
タコ「餌ゲット」ガシッ
ヤドカリ「え?」
カニ「え?」
タコ「」バリッボリッ
ヤドカリ「」
カニ「」
タコ「うまかった。満たされた気分だ」ゲプッ
タコ「いやー。久しぶりに生き返った気がするよ」ユラユラ
オウムガイ「おーい」スイー
タコ「お、オウムガイさん」
オウムガイ「いやいや、奇遇だなあ」ユラユラ
タコ「相変わらずすごい触手だねえ」
オウムガイ「お、君、カニの臭いがするね」
タコ「あ、さっき食ってきたんだよ、そろこで」
オウムガイ「いいねえ。ぼくなんてもう三日も口にしてないんだ……」
タコ「おお」ユラユラ
オウムガイ「……」
タコ「……?」
オウムガイ「……ねえ、前から気になってたんだけどさ」
タコ「ん?」
オウムガイ「お前宿は?」
タコ「え?」
そして話はループへ!
おしまい!
オウムガイ「」
>>38訂正
そろこ→そこで
>>38また訂正(笑)(笑)(笑)
最後の
オウムガイ「」
ってやつは気にしなくてもいいさね
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません