「ちょっと通りますよー。ぷっぷー」「……何してんだ」 (25)

「……あ」

「俺は見てはいけないものを見てしまったのか?」

「このことは秘密」

「恥ずかしくて誰にも言えねえよ」

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「何でこんなところに?」

「いつも帰ってる道が工事してたんだ」

「そう」

「で、何してたんだ?」

「忘れて」

「夢に出てくるほどインパクトが強くてな」

「……」

「悪かった、ちょっと意地悪しただけだ」

「そう」

「じゃあ、また明日。学校でな」

「うん」

「うーん、うーん」

「通りますよー。ぷっぷー。ぷっぷー」

「くそっ……」







「おはよう」

「目の下にクマ。どうしたの?」

「お前が夢に出てきたんだよ」

「そう」

「ぷっぷーってな」

「……そう」

「すまん、八つ当たりだ」

「なあ、ストレスでも溜まってんのか?」

「なんで?」

「ぷっぷーって」

「別にストレスは溜まってない」

「あれが素か?」

「……知らない」

「そうか、じゃあ俺帰るわ」

「うん。ばいばい」





「ぷっぷー。とおりまーす。危ないですよー」

「やっぱり素じゃねえか」

「何故いるの」

「お前こそ昨日の今日で同じ場所でやってるんじゃねえよ」

「迂闊」

「何か変なものでも見えてるのか?」

「何故?」

「だったら何を避けさせてるんだよ!」

「車でひいたら危ない」

「答えになってねえよ!」

「ごめんなさい」

「いや怒ってるわけじゃ」

「そこ危ないですよ、すみませーん。ぷっぷー。どいてくださーい」

「もう少し我慢できないわけ?」

「とりあえずお前に不思議な趣味があるということは分かった」

「趣味ではない」

「なんとか飲み込もうとしたのに!」

「私は、好きでやっているわけじゃない」

「そうかいそうかい」

「うん」

「じゃあ、程々にするんだぞ」

「またね」

「ぷっぷー。ぷっぷー。とおりますよー」

「よく飽きないな」

「飽きる飽きないではない」

「じゃあなんだというんだ」

「……」

「本当に不思議な奴だよ」

「ありがとう」

「褒めてはいない」

「ショック」

「クラス内では大人しくしてるのに、普段はなんでそんななんだ?」

「分からないから」

「何が?」

「何も」

「俺にも分かるように喋ってくれ……」

「私も分からないだけ」

「なあ、お前さあ」

「何」

「お前、好きな人とかいるの?」

「なんで?」

「お前の事が好きだっていう不思議な奴がいるんだよ。同じクラスの奴なんだけど」

「そう」

「お前その変な趣味治せよ。せっかくモテるのに」

「治したい」

「やめればいいだけじゃん?」

「やめようとは思ってる」

「はあ……?」

「あなたには分からないだけ」

「あっそ。まあ、とりあえず秘密は黙っといてやるから頑張れよ」

「うん」

「で、どうだったの?」

「何が」

「告白」

「うん」

「されたんでしょ?」

「された」

「結果は?」

「断った」

「まじ?」

「うん」

「なんで? あいつめっちゃイケメンだし、性格もいいじゃん」

「どうでもいい」

「あっそ。お前が決めることだもんな」

「うん」

「じゃ、帰るわ。お前も気を付けて帰れよ」

「分かった」






「ぷっぷー、ってな」

「……え?」

「……は?」

「お前、今、え? その年になって、ぷっぷーって。え?」

「見間違いだろ」

「いや、まあ、いいや。うん」

「ぷっぷー、ぷっぷー」

「うわー車がきたああああ」

「「あははははは」」

「もしかして、言ったの?」

「いや、あれは俺が馬鹿にされてるんだ」

「……なんで?」

「ちょっと真似した所を見られちまった」

「そう」





「ぷっぷー。ぷっぷー。通りまーす、道を開けてくださーい」

「……」

「ぷっぷー……なに?」

「いや。その、なんだ」

「……?」

「通行人だよ。危ないからクラクション鳴らしてくれよ。轢かれちまう」

「うん。ぷっぷー、そこの人危ないですよー。どいてくださーい」

「わー、危なかった! ありがとう運転手さん!」

「……」

「なんか言えよ」

「あいつあいつ。いい年してぷっぷーとか言いながら走り回ってたらしいよ」

「完全に頭おかしい人だよね」




「ちょっと泣きそうだ」

「元気を出して」

「女の子連れてドライブデートでちゅかー?」

「そんな車降りてこっちで一緒にドライブなんてどうだい? ぶおんぶおん」

「「あははははは!」」

「……ぷっぷー。危ないですよ。どかないと轢いちゃいます。ぷっぷー」

「え?」「は?」

「おい……いやー、すまんすまん。言えって言ったんだよ。ノリいいだろ? はは」

「だ、だよなー! でもお前まじでつまんねーぞ、そういうの。二度と言わせるんじゃねえぞ」

「そんな奴と一緒に居たら頭おかしくなっちゃうから、こっちにおいで」

「何度も言わせないで。どかないと危ないですよ、早く消えてください。ぷっぷー」

「はあ……お前。何であんなことしたんだ」

「分からない」

「おかげでお前も一緒に頭がおかしい人だと思われてるぞ」

「別に」

「まあ、なんかあったら俺を頼れよな。仲間同士、頑張って卒業しようぜ」

「仲間……」

「おう、仲間だ。もしいじめられたりしたら言えよ?」

「うん」





「ぶるんぶるん!」

「ぷっぷー! あぶねーぞこら!」

「ふぁんふぁんふぁん」

「当事者じゃなけりゃ笑える光景なんだろうな」

「別に、面白くもなんともない」

「俺らはな。あいつらは面白くてたまんねーんだろうよ」

「なんで?」

「さあ、正当化して子供っぽいことできるからかもしれないし。他人を馬鹿にして楽しんでるだけなのかもしれないし」

「そう」

「図書室行こうぜ」

「うん」

「あー、みんなが帰るの待ってたら雨が降って来た」

「今日の天気予報は雨」

「夕方からだったから、傘持ってきてない」

「ある」

「そうか、じゃあな」

「何故?」

「いや、傘あるなら帰れよ」

「あなたは?」

「小降りになった時を狙って帰る」

「風邪をひく」

「そしたら学校も休めて万々歳だな」

「……」

「っと、すまん。俺がいないといざって時に頼れないよな。大丈夫、馬鹿は風邪ひかないから」

「ダメ。一緒に帰る」

「一緒にって、相合傘でもすんのか?」

「うん」

「いや、うん。俺は別にいいんだけどさ、嫌じゃないの?」

「嫌じゃない」

「あ、そう。ほんとに?」

「うん」

「そっかー……。あー、じゃあ、帰るか。途中まででいいから」

「うん」

「……」

「……」

「……あのさ」

「なに?」

「どこに向かってるの、これ」

「私の家」

「いやいやいやいや、いやいや。ダメだって、ね?」

「何がダメなのか分からない」

「いやいろいろダメだって!」

「着いた」

「着いちゃった」

「上がって」

「ほら、親に迷惑掛けちゃうから。急に男が来たりしたら、ほら、いろいろ、ね?」

「親はいない」

「なおさらダメだって! 帰って来た時に俺殺されちゃうよ!」

「帰ってこない。気にしないで上がって」

「……分かった」

「あー、その。一人暮らし?」

「そう」

「なんというか、偉いね」

「そう」

「いつから?」

「覚えていない」

「……お金は?」

「たまにポストに入ってる」

「……あー、その」

「シャワー使って。風邪ひくよ」

「ありがとう。上がってから気付いたんだけど、先に使ってごめんね」

「気にしないで、私はあまり濡れてない」

「そっか、ジャージもごめんね。ゴムとか伸びちゃったら」

「気にしないで」

「うん、じゃあ。待っとけばいいのかな……?」

「上がったらご飯を作る。よかったら食べて行ってほしい」

「あ、じゃあ親に……いや、なんでもない。ゆっくり入ってきてくれ」





「ごめん母さん。友達の家でご飯食べて帰るわ」

「そう。親御さんにちゃんとお礼言っておくのよ」

「……うん。分かった」

ちょっと休憩

「お、上がったか」

「お待たせ」

「で、飯作るんだっけ? 何手伝えばいい?」

「いい、座ってて」

「手伝わせてくれ」

「……そう」





「で、これ皮むき終わったけど。生ごみはここでいい?」

「うん」

「お湯沸騰したぞ」

「うん」

「鶏肉も多分茹で上がったんじゃないか? よく分からないから見てくれ」

「……うん」

「何で泣いてるんだ」

「……分からない」

「たまねぎ、染みたか」

「玉ねぎを使う料理ではない」

「気使ったんだよ」

「そう」





「あー、美味かった。ごちそうさま」

「ありがとう」

「いやいや、礼を言うのはこっちだって! 皿洗うわ。座ってて」

「そう言うわけには」

「こういう時は甘えておけって」

「甘える……うん。分かった」

「よしよし。良い子だ……って、ごめん。なんかつい子ども扱いしちまった」

「……」

「あー、すまん。馴れ馴れしく頭撫でちまって。じゃあ、洗ってくるわ」

「……ぁっ、お父さん……」

「っ! ごめん」

「洗い終わったぞーっと……」

「……うん」

「ごめん。何か辛いこと思い出させたか?」

「分からない」

「俺で良ければ話聞くけど」

「……分からないの」

「何が、分からないんだ?」

「何も、なんにもっ!」

「お父さんって、どんな人なんだ?」

「分かんない」

「お母さんは?」

「……分かんない!」

「俺は何か力になれるか?」

「……あ」

「何?」

「頭を、撫でてほしい」

「お安い御用で」

「……ぅっ、ぐすっ」

「泣け泣け、辛かったな」

「うわあああああん!」

「落ち着いたか?」

「……うん」

「そっか。そりゃ、良かった」

「私ね」

「ん?」

「私、思い出したの」

「何を?」

「お母さんが、死んだ時のこと」

「……辛かったら、言わなくていいんだぞ」

「ううん、聞いて?」

「ああ」

「お母さんね、私のせいで死んじゃったの」

「……」

「それでね、私。私ね」

「ゆっくりでいいから、ね?」

「うん、うん……。私、覚えてるのが、クラクションの音と、必死に車を退かそうとしてる声だったの」

「退かそうとする声?」

「道を開けてくださいって、必死に! でも! それだけしか……覚えてないの」

「そっか……お父さんについては、聞いてもいい?」

「多分、お父さんは愛想を尽かしちゃったんだと思う。お父さんは、小さい時は一緒にいたの」

「……うん」

「でも、お父さん泣きながら、家を出て行っちゃって」

「そっか……」

「ごめんなさい」

「あのさ、もしよかったらなんだけど」

「……何?」

「俺が……お父さんの代わりになることはできないかな?」

「……ううん、ダメだよ」

「あー、ごめん。ちょっと思い付きで言っただけだからさ」

「うん……ごめんなさい。やっぱりお父さんはお父さんで、あなたのことはお父さんだとは思えないから」

「分かってる。ごめん」

「でも、お父さんじゃなくて、一緒に居てほしいなって。そのままで、一緒に居たいなって」

「え?」

「こういうのは、男から言うものだと思ってたんだけど、私から言わせてください」




「こんな子供っぽい私ですが、付き合って下さい!」

終わり

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