モバP「だりやすかれんと冬の思い出」 (20)


―――事務所


加蓮「…………」ボーッ…


李衣菜「はー、寒いねぇ。12月だよ12月」

泰葉「ね……。朝なんてお布団から中々出られなくて大変よね」

李衣菜「分かる分かる! 私も寒くて寒くて全然起きれなくてさー」

泰葉「李衣菜は年中じゃない?」

李衣菜「うっ。そ、そんなことナイヨ……」

泰葉「ふふっ……加蓮はどう、朝ちゃんと起きられて――加蓮?」


加蓮「……はぁ……」

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李衣菜「加蓮? どしたの、ぐでっとして」

加蓮「……ん。なんでもない」

泰葉「なんでもないって……。どう見ても……」

李衣菜「なんでもあるような顔してるじゃん……」

加蓮「…………」

泰葉「熱は……ないみたいだけど」ペタッ

李衣菜「あ、みかん食べる? 美味しいよ、元気出してっ」

加蓮「うん……あとで食べる」

李衣菜「……ほんと大丈夫? なにかあったなら相談乗るよ?」

泰葉「私たち、出来る限り力になるから……」

加蓮「ん……ごめん、迷惑かけちゃって」

泰葉「迷惑だなんて、そんなこと全然……!」

李衣菜「そうだよっ、遠慮しないで言っていいんだから!」

加蓮「……えへへ、ありがと。じゃあ……ちょっとだけ、話してもいいかな?」

泰葉「ええ、もちろんっ」

李衣菜「どんと来いっ」

加蓮「ふふ……♪ ――昔、今くらいの時期に入院したことがあってね」

泰葉「入院……」

加蓮「うん、そう。昨日ね、そのときの夢を見ちゃって」

李衣菜「…………」ギュ

加蓮「あ……ふふっ、大丈夫だよ李衣菜。……手、あったかい」

李衣菜「うん。いいよ」

加蓮「……でね、年末だったから……クリスマスも大晦日もお正月も、病院で過ごしたの」

泰葉「……うん……」

加蓮「『お家帰りたい』って泣き喚いたの、今も覚えてる。……入院自体は何度もしてたんだけど。あはは」

李衣菜「っ……」

泰葉「……加蓮」

加蓮「やっぱりさ、特別な日くらい友だちや家族と過ごしたい、って思ってたんだろうなぁ……」

加蓮「今がすごく幸せだからかな……昔のことだけど、思い出すと結構心に来るもんだね」

加蓮「……とまぁ、こんな感じ。なんかごめんね、心配かけちゃったみたいで。話したら楽に――」


泰葉「……すんっ」

李衣菜「ぐすっ」

加蓮「あれなんで二人が泣くの!?」

李衣菜「ひぐっ、だ、だってさぁ……!」グシュ

加蓮「あぁもう、ほらティッシュ! 泰葉も!」

泰葉「かれんん……!」ギュウ

加蓮「ちょ、な、なんで抱きついて……ちょっとぉ!」

李衣菜「つらかったね加蓮……! もう私たちがいるからね……大丈夫だから……!」

泰葉「いっぱいいっぱい、思い出作りましょうっ……昔のこと忘れるくらい、たくさんの思い出……!」

加蓮「う、うん……もう、私なんかのために泣かなくてもいいのに……」

李衣菜「『なんか』じゃないよっ……このバカ、アホ加蓮」ペシ

加蓮「あうっ」

泰葉「……加蓮は」

加蓮「え? な、なに?」

泰葉「加蓮はっ! 大切な、大切な友だちなんだからっ……!」

加蓮「あ……」

李衣菜「友だちのためにくらい、泣かせてよ……!」

泰葉「っ……!」コクン

加蓮「……うん、ありがとう。……なんだか私までうるうるしてきたんだけど」

李衣菜「ぐす……へへ、泣いてもいいよ?」

泰葉「泣き止むまで慰めてあげるから……ふふっ」

加蓮「んーん、やっぱ泣かないっ。代わりに、二人がつらい目にあったら、そのときに泣いてあげる」

加蓮「……だから、ずっとそばにいてね。約束だよ♪」

李衣菜「あはは、言われなくてもっ」

泰葉「年末まで……ううん、年が明けても予定は詰まってるものね」

加蓮「うんっ、だよね!」


加蓮「これからもよろしくねっ、李衣菜、泰葉!」


―――

――


―――朝


加蓮「――ん……」パチッ


加蓮「ふあ……。朝、か……」


加蓮(なんか……夢を見てた気がする。なんだっけ)

加蓮(誰か……とっても大切な、二人がいたような……)

加蓮「うーさむっ……もう少しだけ……」モゾモゾ…


むにっ


加蓮「……むに?」


ばさっ


李衣菜「むにゃ」Zzz…

加蓮「……は? なんでりーな?」

李衣菜「んんぅ……しゃむいぃ……」コロン

加蓮「……あっ。そっか、昨日――」


李衣菜『加蓮が寂しくないように、泊まりに行ってあげるよ!』

泰葉『また変な夢を見たら、遠慮なく起こしてね。ふふふっ』


加蓮「……えへ。おかげでいい夢、見れたよ」ナデ…

李衣菜「んん……んぇへへ……♪」


かちゃり


泰葉「二人とも、朝ご飯出来たから――あ、おはよう加蓮」ヒョコッ

加蓮「泰葉。うん、おはよ……朝ご飯って、もしかしてお母さんの手伝いしてたの?」

泰葉「ええ、少しだけ。ふふ、加蓮のかわいいエピソードを聞かせてもらいながらね」

加蓮「は!?」

泰葉「いつもニコニコしながら私たちのこと話してくれてるんだ? ふふふ、嬉しい♪」クスクス

加蓮「わぁー! わーわーわー!!」

李衣菜「うぅ~ん……うるさいぃ」ムクリ

泰葉「あ、李衣菜。おはよう」

李衣菜「うん、おぁよーやすは……」クシクシ…

李衣菜「ってあれ、泰葉の部屋じゃない……あ、そっか! 昨日は加蓮んちに泊まったんだっけ」

加蓮「」

李衣菜「……なんで加蓮突っ伏してるの? まだ寝てる?」

泰葉「ふふ、あとで話すね」

加蓮「だめぇーッ!」ガバッ

李衣菜「うわぁ!?」

加蓮「ほ、ほら李衣菜も起きたし! 下行ってご飯食べよ!?」

李衣菜「え、えええ? なんかすごく気になるんだけど」

加蓮「気にしないの! しちゃだめ! したら殴る!」

李衣菜「えっ怖い!?」

泰葉「くすくす……♪」

加蓮「早くしないとお仕事遅れちゃうでしょ!」

李衣菜「そ、そうだけどっ。だめって言われたら余計気になるじゃん!」

泰葉「李衣菜、あとでこっそり……ね?」ヒソ

李衣菜「……おっけー♪」ヒソッ

加蓮「こらぁ!」

泰葉「ふふっ♪ さ、今日もお仕事、頑張りましょう!」

李衣菜「へへっ! もうすぐクリスマスだもんね、気合い入れてこうっ!」

加蓮「もぉ~、いつか絶対泣かしてやるんだから!」



加蓮(――冬の思い出……楽しい、素敵な思い出にしようね。ねっ、二人とも♪)



おわり

というお話だったのさ
もっと加蓮の闇に迫ろうと思ったけどくっそ重くなりそうだったのでいつか書く(であろう)長編に持ち越し
しかし年末の入院は本当に切ない

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