P「765・961合同M@S-1グランプリ」 (248)



 ――――――優勝賞金1000万円。

 頂点に約束されたスターへの架け橋。
 勝者以外には何も与えられない、熾烈なサドンデスゲーム。

 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449073369

 笑顔の王者を決める祭典。
 その戦いの火蓋は、静かに切って落とされた……。





 年齢、不問。

安部菜々&長富蓮実「「信じてください『ハイティーン』です! キャハッ☆」」

 国籍、不問。

エミリー スチュアート「私、日本の大和撫子に憧れておりまして」
ヘレン「グレイト。まさに世界レベルの目標ね」

 性別、不問。

秋月涼「うちの事務所にもあいちゃんって子がいるんですよ」
東郷あい「奇遇だね。うちにも涼という娘がいるんだ」

 本名、不問。

アスラン=BBⅡ世「子羊どもよ! 今宵我らが闇の神託を聞き、哄笑の限りを尽くして狂乱せよ!」
ジュリア「フツーに『みなさん今日はアタシらの漫才聞いて笑ってね』でいいだろそこは!」ベシッ

 種族、不問。

ぴにゃこら太「ぴにゃー」
ハム蔵「ヂュイ! ヂュヂュイッ!」ペチペチ



 参加資格はただ一つ、『ユニット結成10年以内』

 勝ち残る条件はただ一つ、『面白いこと』

 

 アイドルたちは、一年のすべてをかけて、

難波笑美「今年やってきた全部がここに繋がっとるんや」

 人生のすべてをかけて、

服部瞳子「この舞台一つで未来が変わる……。そういう大会だもの」

 自分のすべてをかけて、ステージに臨む。

東豪寺麗華「あそこでは、偽物は通用しない」

 わずか8つの席を巡る、熾烈な戦い。

豊川風花「いざ始まると思うと、やっぱり怖いですね……怖いです」

 強豪たちも、

小日向美穂「まだまだいっぱい……グスッ、頑張らなきゃ、いけないところがあるなって……」

 次々に、

日高愛「うわぁぁぁぁぁん!!! 負けたよーーーーーー!!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 その姿を、

牙崎漣「クソッ! もっと面白ぇはずなんだよ、オレ様は……!!」

 消していく……。

ハナコ「クゥーン……」

 

 それでも、ただ、証明したい!

北上麗花「茜ちゃん! 今日やるネタをさっき思いついたからやってみましょ!」
野々原茜「練習してきたネタやろうよ!」

 自分たちが、一番!!

黒野玄武「神速一魂、舞台がでかくなろうがやることは変わらねえ」
紅井朱雀「おうよ! いつも通り、全力全開だ!!」

 観客を笑顔にできる!!!

アナスタシア「行きましょう、未央」
本田未央「オーケー……。 はいどうもー! 『ツインスター』ですよろしくお願いします――――――!」





デッデデッデデッデデデデ デッデデッデデッデデ

P「――――――M@S-1グランプリ、決勝の出場者を発表いたします」

 



 そして今宵、決勝の舞台に集う8組の戦士たち!!



1.高槻やよい&菊地真


2.双海亜美&天海春香


3.水瀬伊織&天ヶ瀬冬馬


4.我那覇響&三浦あずさ


5.秋月律子&御手洗翔太


6.双海真美&四条貴音


7.伊集院北斗&萩原雪歩


8.星井美希&如月千早

 






M @ S - 1 グ ラ ン プ リ




 

パーパーパー パパパーパーパパー パパパー パーパーパーパーパーパパパー

P「全国1億2000万人のアイドルファンのみなさん、お待たせいたしました!」

P「優勝賞金1000万! プロもアマチュアも関係なし!」

P「今日一番笑顔をもたらすアイドルを決める究極の漫才頂上決戦! それがM@S-1グランプリなのです!」

P「新たなお笑いアイドルスター誕生の瞬間を目撃できるあなたは今年一番の幸せ者だ――――――!!」



この番組は

 ・アイマス
 ・漫才
 ・ジュピターはなんだかんだで961プロ
 ・コンビと出場順はフリーソフトの抽選王で決定

の提供でお送りします

 

P「さあブーブーエス赤坂スタジオより生放送でお送りいたします、生っすか!?サンデー特別企画!」

P「本日の司会進行を務めさせていただくPでございます、よろしくお願いします!」

小鳥「アシスタントを務めさせていただきます、音無小鳥です。よろしくお願いします!」ペコリ

P「いやー、ついにこの日がやってまいりました!」

小鳥「きましたねー! だいぶ手垢がついた企画感は否めないですが」

P「本来なら元ネタよろしく別のプロダクションをもっとガッツリ巻き込んでやってみたかったんですけれどね」

小鳥「生っすかのコーナー1つでそんな大がかりなことはできませんからね……」

P「ただ、先ほどのVTRのために876プロ、346プロ、315プロ、1054プロ、未来の765プロの方々に大変お世話になりました」

小鳥「十分大規模じゃないですか」

P「ちなみに優勝賞金1000万円というのは真っ赤な嘘です」

小鳥「代わりに豪華賞品を用意してありますので、参加するアイドルには頑張ってもらいましょう」

P「というわけで今回はその縮小版! 765・961合同アイドル漫才頂上決戦『M@S-1グランプリ2015』を開催いたします!」

P「まずはこのM@S-1グランプリの厳正なる審査をしていただく、審査員のみなさんを紹介します!」

M@S-1グランプリ JUDGEMENT!!



全てのアイドルはこの男の取材を受けて育った! 生涯インタビュアー!

善澤記者!

善澤「いやはは、まさか私がこんな場に呼ばれるとはね……」アセアセ



プロデュース歴30年以上、その全てをアイドルの育成に捧げ続け、ステージに一切の妥協を許さない芸能界の黒きリーダー!

黒井崇男!!

黒井「フン、下らん芸を見せたら承知せんぞ」



アイドルの歴史は彼女以前と以降に分けられる! 全アイドルがリスペクトする、生きる伝説!

日高舞!!

舞「こっとりー! 何よあんたやっぱりおめかししたら舞台映えするんじゃなーい!」

小鳥「ま、舞さん! 今はあたしの話はいいですから!」



全てはこの男から始まった! 誰よりもアイドルを愛する765プロの創始者にして、大会委員長!

高木順二朗!!

高木「いや~、懐かしいねぇ。昔は私も黒井と二人でブラック漫才を……」

黒井「ばっ! 黙っていろ貴様!」



 

小鳥「審査員の方々に一言ずつお伺いしましょう。まず善澤記者から」

善澤「おかしいなぁ、今日の舞台を彩るアイドルたちの取材って名目で呼ばれたはずなんだが……」

小鳥「しょっぱなからゲスト騙して連れてきたんですか!?」

P「いやほら、人数足りなかったし……(小声)」

小鳥「つ、次! 黒井社長お願いします!」

黒井「勘違いするな! 私がこんな場にわざわざ来てやったのは、我が最高傑作ジュピターが貴様ら765プロを蹂躙する姿を間近で見るために……」

P「本音は?」

黒井「漫才楽しみ」

小鳥「はい、ありがとうございます。では次は舞さん!」

舞「冒頭のVTRでうちの愛をあんな風に扱ったんだから、半端なステージ見せたら承知しないからね☆」

小鳥「は、はい! きっと大丈夫ですぅ! では最後は高木社長!」

高木「ウォッホン! やはりショーとしてのアイドルと漫才というのは笑顔を生み出すという点でとても親和性が高いわけで、この場に私が期待するのh」

小鳥「は長くなりそうなので飛ばしまーす」

高木「(´・ω・`)」

P「では、さっそく最初の一組に登場してもらいましょう! どうぞ!」

 




――― 双璧 ―――

 大会のトップを飾るのは高槻やよいと菊地真の765プロが誇る総受け元気印!
 いつもはみんなのなだめ役に回りがちなこの二人、今日はどんな漫才を見せてくれるのか!

<<エントリーナンバー01 『フラット2』!!>>



 



レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





真「はいどうもよろしくお願いします! フラット2です!」

やよい「ハイターッチ!」

やよい・真「「イェイッ」」パシンッ

やよい「わたし高槻やよいとこちら菊地真との二人でやらせていただいてまーす!」

真「残念ながら千早はいないんですがね、頑張っていこうかと」

やよい「はい! せっかくこうしてお話させていただく機会をもらったということで」

真「話題考えてあるの?」

やよい「今日は私の大好きな、野球の面白さをお伝えできたらいいかなーって!」

真「野球の話か。いいじゃない! どんなところを教えてくれるの?」

やよい「代走」

真「渋いところ突いてくるね」

 

真「代走ってあの出てるランナーの代わりに走る人のことでしょ?」

やよい「そうですねーあれですよ」

真「ちょっと地味すぎない? 自分で打ったりするわけでもないし」

やよい「そうですか?」

真「もっと逆転ホームランとか奪三振ショーとか、二遊間のファインプレーとかさ!

やよい「…………」

真「そういう派手で格好良いところ紹介しようよ」

ζ*'ヮ')ζ「どうやら死にたいらしいな」

真「やよい!?」

やよい「はわっ! す、すみません! あまりの怒りについ我を忘れてしまいそうになってました!」

真「そんなに怒らせちゃった!?」

やよい「真さんは地味だから代走のお話をするのは嫌なんですか?」

真「そういうわけじゃないけど、あんまりすごいとか面白いってイメージはないかなぁ」

やよい「じゃあたとえばこんな状況を想像してみてください」

 

やよい『――――――1点を追う9回裏。相手のマウンドにはここまで五試合連続無失点の絶対的守護神』

真「やよい?」

やよい『剛腕から繰り出される強力なストレートとキレの良い変化球を武器に、これまで何度も我がチームを苦しめてきた相手だ』

やよい『冴え渡る相手内野手の好守も手伝い、先頭・二番目とあっさり凡打に討ち取られ万事休す』

やよい『しかし後続が粘りの末の四球、そして主砲の意地のセンター前ヒットで二死一・三塁』

やよい『ツーアウトから首の皮一枚をつなげ、守護神を前に千載一遇の好機』

やよい『同点の……否、勝ち越すならばここしかない。ベンチが動く』

やよい『チームを勝利へと導くために、逆転サヨナラのランナーとしてお前が必ず本塁を陥れてこい――――――』





やよい「――――――そんな願いを背に受けて、『代走の切り札』菊地真は一塁ベースを託された!」

真「めっちゃくちゃ格好いいじゃないか!」

 

やよい「代走だって格好いいし、すっごく役に立つんですよ」

真「一塁ランナーの足が速ければ、少ないチャンスでホームに帰ってこれるもんね」

やよい「プロ野球だと読売の鈴木選手あたりが有名ですよね」

真「お、知ってる知ってる。重量打線の中で異彩を放つ走塁の神様! ああいう職人芸は痺れるね」

やよい「奴には何度煮え湯を飲まされたことか……」

真「応援してるわけじゃないのか……」

やよい「4番やピッチャーがかっこいいのはみなさんもう知ってると思うので、いぶし銀なところを紹介できたらいいかなーって」

真「そういうことなら喜んで」

やよい「じゃあ代走に真さんがコールされるところから始めましょう」

真「格好よくだね」

やよい「格好よくです」

 

やよい「――――――さあ試合も大詰め9回裏、1点を追う765エンジェルスはツーアウトからフォアボールとヒットでランナー一・三塁とチャンスを広げました!」

真「おお、やよいが実況やってくれるんだ」

やよい「しかしマウンド上の守護神、ピンチでも落ち着いているように見えます」

ζ*'ヮ')ζ「そうですね、ここはバッター集中でしょう」

真「一人二役で解説もやってくれるみたい」

やよい「おっとここで代走が起用されるようです!」

ζ*'ヮ')ζ「となると当然あの人でしょうね」

真「よおし、僕の出番だ!」バッ

やよい「ご覧ください。代走菊地が出てきた瞬間、会場からは割れんばかりの大爆笑」

真「僕何やらかしたの!?」

やよい「どうやら今日の舞台にピンクのフリフリスカートを着てきたことが不評だったようです」

真「なんでさ!」

ζ*'ヮ')ζ「漫才始まる前から笑いを取ってましたからねー」

真「可愛いじゃないかこの衣装! 我ながら結構イケてるよ!」

やよい「観客からは『ちゃんとユニフォームをきろー!』とヤジが飛びます」

真「この格好で試合出てるの!?」

やよい「さあ気を取り直してランナー菊地、ジリジリとリードを広げます」

真「その『リード』っていうのは何なの?」

やよい「今いるベースから離れて次のベースのちょっと近くで待っていることで、早く次のベースに辿りつけるんです」

真「少しフライングしてるわけか」

やよい「ただ、それに対してピッチャーは『けんせい球』というのをランナーがいる塁に投げることができて」

やよい「塁から離れているランナーにそのボールで野手がタッチするとアウトになっちゃうんです」

真「強気なリードも考えものってことだね」

やよい「そうですね。いくら真さんでもあまり無理にリードしすぎると、お相手の女性も嫌気が差して離れていっちゃうかもしれませんからね」

真「何の話?」

やよい「そりゃあ優柔不断なよりはちょっとくらい強引な方がいいですけれど……」

真「ねえ何の話?」

やよい「だから……優しくしてくださいね?///」

真「だから何の話!? なんでちょっと顔赤らめてるのさ!?」

やよい「そりゃ憧れのデートシチュエーションの話ですよ!」

真「野球の話をしようか!」

 

やよい「こんな風に、ランナーとピッチャーの間でも駆け引きが起こっているわけです」

真「なるほど」

やよい「高校野球とかではよく見られますが、『リードしてますよー!』って自分で声を出してアピールしたりもしますね」

真「走塁でチャンスを広げるっていうのは、バッターに集中させないって意味もあるんだね」

やよい「そういうわけです。さあ一塁ランナー菊地、さらにリードを取っていきます」

真「リーリー!」ジリジリ

やよい「まだまだ強気にリードを取っていく!」

真「リーリー!」ジリジリ

やよい「おっとここで菊地、彼女の腕を引っ張り水族館に入っていった!」

真「だからそういうリードはしなくていいってば!」

やよい「ここぞとばかりにお魚さんのマメ知識をまくしたてる菊地!」

真「試合中に何やってんの!?」

やよい「リードしてますよーというアピールでしょうか」

真「誰に向かってアピールしてんのさ!」

ζ*'ヮ')ζ「お相手の女性は若干ひき気味ですねぇ」

真「解説もしなくていいよ! てかなんでナチュラルに相手が女性なのさ!」

やよい「ピッチャーもチラチラと様子が気になっているようです!」

真「ただの野次馬じゃないか!」

 

やよい「おーっとここで一塁ランナーの菊地が盗塁だー!」

真「へっ?」

やよい「ほら、真さん! 早く二塁に走って走って!」

真「う、うん!」ダダダーッ

やよい「さあキャッチャーがボールを二塁へ転送! ランナー菊地は弾丸のようなスライディングーーーーー!!」

真「うおぉぉぉーーーーー!!」ズザザーッ

やよい「……セーーーーーフッ!!! 菊地、みごと盗塁に成功!!」

真「やった! 足が役に立つってこういうことなんだね!」

やよい「ところで解説の高槻さん、この場面での盗塁というのはどうなんですかね?」

ζ*'ヮ')ζ「ありえませんね」

ζ*'ヮ')ζ「なに考えてるんでしょう」

ζ*'ヮ')ζ「頭おかしいんじゃないですかね」

真「けなされすぎじゃない!?」

ζ*'ヮ')ζ「でも、そんな場面でさえ走塁でチャンスを広げるからこそ『代走の切り札』なんでしょうねぇ」

真「この持ち上げ上手! 俄然やる気出てきちゃったよ!」

 

やよい「さあ、なんと守護神を前にヒット一本で逆転という場面を作り出しました代走菊地!」

真「うんうん、我ながらいい仕事した!」

やよい「しかし一塁が空いたことで、逆に強気に投げられるんじゃないですか?」

ζ*'ヮ')ζ「ランナーやフォアボールを気にしなくていいですからね」

やよい「そうなるとここからはしばらく代走菊地は空気ですね」

真「えっ?」

やよい「さあピッチャー2球目を投げた! インコース高めにはずれてワンボールワンストライク」

ζ*'ヮ')ζ「初球と続けて内角を意識させてますね」

やよい「3球目! カーブが真ん中に甘く入ったがこれをファール!」

ζ*'ヮ')ζ「ストレート待ちですかねえ。振り急いだ感じがあります」

やよい「4球目……落ちる球! かろうじて当ててファール!」

ζ*'ヮ')ζ「いい球なだけにこれで仕留められなかったのは厳しいですねー」





真「…………」

真「代走の活躍は!?」

やよい「どうしたんですかいきなり大声出して?」

真「どうしたもこうしたもないよ! ここまで来て放置プレイってそりゃあんまりだよ!」

やよい「真さん」

真「な、何……?」

やよい「こうして試合の一面一面の中に静と動のメリハリがあるからこそ、いざ走塁の場面になった時に盛り上がるんですよ」

真「そういうものなのかな……?」

やよい「見えないところでどれだけ集中していられるかが試合の明暗を分けるんです」

やよい「普段目立ちにくい代走には、特にそれが必要なんです」

真「な、なるほど……」

やよい「アイドルだって同じですよ。いつでも最高のパフォーマンスができるように、陰にいる時でもずっと準備して!」

真「はっ……!」

やよい「そうしているからこそ! 輝く舞台でみんなを感動させられるんじゃないですかっ!!」

真「そ、そうだ……そうだよね。ごめんねやよい、僕が間違ってた! 集中して待ってるよ!」

やよい「ちょろい」

真「聞こえてるよ」

 

やよい「さあ5球目セットポジションに入る! 緊張の一瞬! 二塁ランナー菊地も集中した表情!」

真「とっても集中してるよー」キリッ

やよい「ピッチャー振りかぶって……投げたっ!」

ζ*'ヮ')ζ<カキーン!

やよい「三遊間痛烈な当たりーーーーー!!」

真「来たかっ!!」ダッ

やよい「内野破ってヒットになる! 三塁ランナーホームインで同点! 二塁ランナー菊地も俊足飛ばして迷わず三塁を蹴った!」

真「行くぞっ!!」ダッ

やよい「試合も蹴った!」

真「蹴っちゃダメだよ!」

 

やよい「全速力でホームへ向かう!」

真「うおぉぉぉーーーーー!!」ダダダーッ

やよい「彼女が待つ駅のホームへ!」

真「だから試合は蹴っちゃダメだって!」

やよい「でもこの機会を逃したらもう一生彼女と逢えないとしたら」

真「それなら試合だってなんだって蹴ってやるよ!!」ダッ

やよい「……! そんな、真さん……どうしてここに!?」

真「待たせてごめんね、やよい……。でも、もう絶対に君を悲しませたりはしないよ」

やよい「うれしい! 私、一生あなたを愛します!」

ダキッ

やよい「逆転のホームイーーーーーン!!!」

真「何の茶番だよこれは!?」

やよい「だから女性の憧れのシチュエーションの話で」

真「野球の話をしよう! 野球の話がしたいなあ僕は!!」

ζ*'ヮ')ζ「最初のリードが効きましたねー」

真「解説もいらない!」

やよい「ピッチャーもチラチラと様子が気になっているようです!」

真「野次馬もいいから! もう一回同じ所からね!」

 

ζ*'ヮ')ζ<カキーン!

やよい「さあ打った三遊間を抜けてヒットになったーーーーー!」

真「今度こそっ!」ダッ

やよい「三塁ランナーホームインで同点! 二塁ランナー菊地も三塁を蹴った!」

真「うおぉぉぉーーーーー!!」ダダダーッ

やよい「ここでレフトがボールを掴んでバックホーム! ものすごい送球が返ってきたーーーーーー!!」

真「負けるかぁぁぁーーーーー!!」ズザザーッ

やよい「菊地がスライディング!! キャッチャー捕球!! クロスプレーになる!!!」

やよい「タッチはどうか!? どうなのかーーー―ー!!??」





ζ*'ヮ')ζ「午後九時になりました。ニュースをお伝えします」

真「うおおぉぉぉーーーーーい!!!」

真「いま一番いい所なんだからニュースは後にしてよ!」

ζ*'ヮ')ζ「本日午後3時ごろ、765プロダクション所属アイドル天海春香さんの転倒を震源にマグニチュード7.2の地震が発生しました」

真「そのトピックちょっと気になるけど!」

やよい「大体試合終盤のいいところでニュースになっちゃうんですよね」

真「そういうリアリティはいらないよ! 試合に戻って!」

やよい「さあ試合は同点で延長10回表、961ジュピターズの先頭バッター天ヶ瀬が打席に入ります」

真「僕アウトになってるじゃないか!」

やよい「まあそんな格好で走ってたらねえ……」

真「結局フリフリスカートのまま!?」

やよい「というわけで、この前草野球大会でレフトを守ってた私が、レーザービーム送球で逆転のランナーを阻止したってお話なんですけど」

真「代走完全に当て馬だった! やめさせてもらうよ」ペシッ

やよい・真「「どうも、ありがとうございましたー!」」ガルーン

 

小鳥「『フラット2』のお二人でした!」

P「これユニット名の由来って……」

小鳥「まあ、そういうことでしょうね……おっと、二人が帰ってきましたね!」

P「お疲れ様でーす! どうでしたか今日のステージは?」

やよい「はい! いつもとちょっと違って楽しかったです!」

小鳥「野球は投げて打ってはよく話されるけれど、走塁のお話は新鮮でしたね」

やよい「これを機会に走る選手もいっぱい注目されたらいいなって思います!」

P「野球……そういう企画もアリか」

小鳥「もうすでに野球企画あったような」

真「響が豪速球投手のやつですね」

P「ではさっそく審査員のみなさん点数をお願いします!」



点数50~100点の間で安価下1~4

 

善澤 60
黒井 75
日高 70
高木 96

P「合計は301点です!」

小鳥「現在の順位は……!」

1:フラット2
2:
3:

小鳥「なんと1位です!!」

P「分かっとるわ!!」

小鳥「では善澤記者にお話を伺ってみましょう」

善澤「ちょーっとネタと無関係に野球の説明や状況の説明をする部分が多すぎて、今一つ乗り切れなかったかなぁ」

P「要点を簡潔に書く記者らしい感想ですね。逆に96点高得点の高木社長! いかがでしたか」

高木「ハッハッハ! うちのアイドル達はやっぱり可愛いねえ」

黒井「そういう大会ではないぞ高木!」

小鳥「お二人はどうですか今の感想は?」

やよい「うぅ~、ネタの中でトップバッターを凡退させてしまったのは失敗でした~……」

P「そういえばサラッと打ち取られてましたね」

真「まあ、やるだけやったので後は結果を待ちますよ!」

小鳥「でも今のところは1位! これが基準点になるわけだからね」

P「『フラット2』のお二人ありがとうございました! では、続いてのコンビはこちらです!」

 




――― 158cm ―――

 イタズラ仕掛人双海亜美と、笑いの神が舞い降りたドジッ娘天海春香とのコンビ!
 急成長を遂げるハイスタンダード、その実力やいかに!

<<エントリーナンバー02 『アミアマミ』!!>>



 

レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





亜美「どうもー! 『アミアマミ』の双海亜美だよーん!」

亜美「みんなも『アミアマミの双海亜美』って早口で三回言ってみてね!」

亜美「んっふっふ~、今日は面白おかしくマンザイしていくわけだけれど~」

亜美「さーて気になる亜美の相方は……ハッ!」

 




ゴゴゴゴゴゴゴゴ………

   ,。、_,。、
 .く/!j´⌒ヾゝ

  ん'ィハハハj'〉
  .ゝノ゚ ヮ゚ノノ



亜美「あ、あの悠然とした佇まい、圧倒的な個性、おびただしいほどのアイドルのオーラ……」

亜美「そして何より頭に光る二つのリボン……!」

亜美「あれはまさか『はるるん』! 超有名アイドルの天海はるるんじゃないですか!?」

春香「そうです。私が超有名アイドルの天海はるるんです(重低音ボイス)」

亜美「ホンモノの天海はるるんだー! 亜美、はるるんのチョ→ファンなんだよ!」

亜美「こんなところで出会えるなんてカンゲキだよ! 今日のことはイッショー忘れないよ!」



   ,。、_,。、
 .く/!j´⌒ヾゝ

  ん'ィハハハj'〉
  .ゝノ`゚ー゚ノノ

亜美「ああっあれは『どやるん』! 褒められるとすぐに調子に乗っちゃう系アイドル『どやるん』だ!」

 

亜美「亜美と一緒に写真撮ってもらっていい!?」

春香「勿論だとも。なぜなら、この私天海はるるんはファンを大事にするアイドルなのだから」

亜美「しまった! こんなチャンスなのに亜美使い捨てカメラしか持ってないYO!」

春香「大丈夫。私ほどの超有名アイドルともなれば、インスタントでも写真映りはこの通り!」キラリ

亜美「ああっあれは『うつるん』です!

    圧倒的手軽さと使い捨てとは思えないほどの鮮明さを誇るも、
    最近は携帯電話のカメラ機能の普及で苦境に立たされている国民的インスタントカメラ系アイドルの『うつるん』です!」

春香「でもせっかくの休みにまでファンサービスとか正直ないわー……」

亜美「ああっ『うつるん』が『憂うつるん』に進化した!
    いつもの笑顔の裏側に隠された闇は深い系アイドルの『憂うつるん』だ!」

亜美「まあいいや、二人で並んではいチーズ!」

春香「えへっ!」ニパッ

パシャッ

亜美「おおっ一瞬で写真映りの完璧なアイドル『うつるん』が戻ってきた! さすがは超有名アイドルだ!」

春香「というわけで、次の写ルンですのCMには是非ともこの私、天海はるるんを!」

亜美「あれは『コマーシャるん』! ここぞとばかりに自分を宣伝する系アイドル『コマーシャるん』だ!」

 

亜美「もっとはるるんのお話聞いてもいい!?」

春香「無論だとも。なぜなら、この私天海はるるんはファンの期待に応えるアイドルなのだから」

亜美「やった! えっと、それじゃあ……」

ポツ……ポツ……

ザァァー

亜美「うあうあ~! せっかく天海はるるんとお話できる唯一ぬにのチャンスなのに、雨が降ってきたよ~!」

春香「心配無用だ。こんな時はこの天海はるるんにまかせるのだ」

亜美「なんとかできるの? 傘持ってるとか?」

春香「そんな小道具など必要ない。私ほどの超有名アイドルともなれば……」





       / ニ=-
      /  /´

      i  l
      l  ヽ_ _
     イ   `  `ヽ、

   /          ヽ、

  /              ヽ
  /ヽ   / ̄ `ヽ      i
 lの `ー ´        i     l
 l_        の   l     !
  i /、ワヽ      ノ    ノ  <天候さえも操れるのだ!
  ヽ    ヽ _ _/    /
    ヽ _    _ _ /

    /  ゝ `ヽ ヽ、
    i  i    ) __>
    `ー` _ _ノ-´


亜美「ああっあれは『ポワるん』!
    伝家の宝刀ウェザーボールをウツボットに奪われた系アイドルの『ポワるん』だ!」

春香「大いなる空よ! この超有名アイドルの力をもって日輪の輝きを取り戻したまえ!」ペカー

亜美「うわ! 本当に空が晴れていく! すごい!」

 





        >‐‐ 、
      ==´    ヽ ___
     r´  l     /´  `ヽ
   ___l   ゝ __ 人     i

  /  ゝ彡´ ̄  `ヽ、  _ ノ‐ 、
  l  /人  / ̄ヽ  ヽ´    i
 , `‐llの `ー      l   ヽ   ノ
 l  ll/ ̄ヽ の  /   / ̄ く
 ヽ _ヽ ワ ヽ _/    /    l
    ヽヽ、      /ゝ __ ノ

     >ミミ‐‐‐‐‐´ /
    l´     ̄ ̄ ̄`ヽ、

    ヽl   l´     /
      `ーヽ_ _ ノ´

亜美「ああっ日差しが強くなって『晴れポワるん』にフォルムチェンジした!」

亜美「どっちかというと天候に操られてるYO!」

春香「さっきまでは水タイプだったのだ」

亜美「雨だったもんね!」

春香「5ターン後には元に戻るから安心したまえ」

 

亜美「でも5ターンも待たないといけないの? 先が長いっしょー……」

春香「そう文句を言うものではない。待つ姿にこそ真の美しさは宿るもの」

春香「そう、例えば……」



      ___ 
    _ ┐  / 
    / 'rlのヮの.,,,、 <この私のように!
    |  |゙ `jエ |〈゙',)
    ゙l,,,i´ /,/,ノ"r
   ,r㍉,ノ''こ!、,,┴.

   |  ‘''く′ ,/ │
  .r'ヘ,、  `'イ゙>'"
  .厂|,`'-,,  .|'ヽ


亜美「ああっあれは『待ちガイるん』!
    シンプルながら強力な戦術でスト2全盛時代のザンギエフ使いに多大なトラウマを残した系アイドルの『待ちガイるん』だ!」



        _____
.       __`ヽ   ,トr,'  ,.へ
.      ,イ,ィ'⌒"゙f''ト、!ヽ, ィ゙ ./       \ソニックブーン!/

       バ, k,ゝ└ト、└ ''゙ ,ス   ≡≡三三 のヮの
      j、 ` ーク'ー-‐ぅ7',´ ,ノ
     .f`'`ー-R,,__   `'<,グ
      |    、  `' .、
        ',  .  ',__    ゙Y
       ',    | ',   .|
    ,r''゙~    〉 . い  |
  ,rァ弋   _,ァ-‐'゙  `'i"~i!
  ぃ_f_⌒"´.        ,ト、入_
  `'.ー┘.        └┴‐‐`'

亜美「何やってるのはるるん!?」

 

亜美「おお、いつの間にか天気もいい感じになってる!」

春香「超有名アイドル天海はるるんは、決してファンの待ち時間を退屈させないのだ」

亜美「でもさすがの天海はるるんの力でも、雨上がりのあのジメジメ~っとした感じまではどうにもならないんだね~……」ジンワリ

春香「それはどうかな?」

亜美「どうかなと言われても、実際どうにもなってないじゃ……」ジメジメー

亜美「……いや、違う! このイヤな湿気は雨のせいなんかじゃない……!?」

春香「気がついたか。このジメジメの正体は」





   ○   ○
    )  (
   /  ̄ ̄ \
  │ の  の│
○へ〉O( ̄)O/―○ <そう、私だ
  /    ワ  \
  \____ /

   ノ    |
  ○    ○

亜美「ああっあれは『カビルンるん』!
    作中ではやられ役だけれど、実在したら凶悪な生物兵器になることは想像に難くない系アイドルの『カビルンるん』だ!」

春香「私をパン工場で繁殖させれば奴らは壊滅だ」

亜美「それはやっちゃいけないお約束っしょ!」

 

春香「新しい顔の供給元を断ってしまえば所詮ただのアンパンなど恐るるに足りん」

亜美「子供向け番組なのに発想がえげつない!」

春香「何も知らないピュアな子供に辛く苦しい現実を教えるのも超有名アイドルの宿命なのだ」

亜美「そんな悲しい現実じゃなくて、アイドルならもっと夢をみせてYO!」

春香「夢とな」

亜美「たとえばミキミキみたいにキラキラーってファンを魅了したりとかさ!」

春香「フゥン」

亜美「おお、鼻で笑いよったぞこいつ」

春香「確かに星井美希が素晴らしいアイドルであることは紛れもなく事実……」

春香「だが! この天海はるるんの実力は星井美希の倍……いや、さらに倍の四倍は下らない!」

亜美「ああっあれは『さかるん』! 自己評価がだいぶ甘くて話を誇張しまくる系アイドルの『さかるん』だ!」

 

春香「まだだ! 四人分の星井美希のさらに二倍!」

春香「つまり星4二体でオーバーレイネットワークを構築!」

亜美「なんだと!?」

春香「エクシーズ召喚、現れよ!」




       | ∧ / ヽ              / \  /l ∧
       |  ∧ヽ/ハ  ‐=≡三三二ミ 、 ./⌒\// l  .∧
       | /ヽ /   ハ     丶‐‐=ミ〃/    / ∧  ∧
       | ヽ/ /     ハ  ∧_lヽミ彡彡/     l  /  〉   ∧
    /´l_,,| ヽ ∧     ハ ト、o__,/l ハ  /l  .l_,, -‐‐--、lヽ∧
   ./ /  `ヽ ∧ |\__ .∨lの の///`(´ .l  >       ヽl
 l`‐ /〃⌒l  'ヽ  〈/ ゙、〉゙ ヽヮ〃二\◎>‐> ´    _, -‐-、 }
 ヽ { ∨_ノl,、  ヽ ハ◎イ⌒l‐‐/ /ヽニ〉  /     /´     /
  ヽハ _ヽ_ノ\ヽ /ヽl ヽイ __,, イ´  l\l/l    /        /
  ヽ \\ / `l_l  〉l`l三三ニイ   ノ  /    /      /
   マ \`´\/ l / ハ lニニニl__/  {   /      ,/ ハ
    `<____ ‐--┴'   l` ̄ ̄´=/    \l\{_ -‐‐ ´ ハ ハ
       |´´  | _|>l┴─ヽ__,ィ‐∨‐-ゝ      ∨しヽ ハ ハ
        .|    l>-‐| __ l .l  ヽ__/、      ∨ ハ  ハ ハ
        |  /.\\     /\ニ>⌒゙、       ∨ ヽノ\丿
        |/l \\\-‐‐´ヽ/ 〉   ヽ      ∨  ハ  ハ
        / /   \\/    \/ 〉   ヽ      ∨ ハ  ハ
      〃ハ‐- _,>'´ ̄     ヽ/ 〈    ヽ       ∨ ハ
     〈  ノ-‐`ヽ          \ \/┴、      ∨   ┌─────┐
     .\   ハ  }           \/   〉、       ∨ヽ │ ATK 1800 │
       \  ハ {             \-‐´  `ヽ      ヽ └─────┘
        \ ハノ\            ∨     \


亜美「ああっあれは『ダイガスタ・エメラるん』!

    1ターンに一度エクシーズ素材を1つ取り除くことで墓地から効果なしモンスター1体特殊召喚するか、
    または墓地のモンスター3枚をデッキに戻した後デッキからカードを1枚ドローする効果を持つ、
    通常モンスターを強力にサポートする優秀なエクシーズモンスター系アイドル『ダイガスタ・エメラるん』だ!」

春香「私にかかればあのブルーアイズすら特殊召喚できるのだ」

亜美「スゴイぞーカッコいいぞー!!」

 

春香「……む、もうこんな時間だ。私はそろそろ往かなくては」

亜美「それじゃ最後に一つだけ聞きたいんだけどさ!」

春香「何かね?」

亜美「自他ともに認める超有名アイドルの天海はるるんだけど、はるるんにとってアイドルってなんなの?」

春香「いい質問だ……掛け値なしに」

春香「この私天海はるるんにとってのアイドルとはすなわち、人々の感情を解き放つ職業だ」

春香「人は誰もが表でにこやかに笑う『うつるん』と、その裏で澱み溜まっていく『憂うつるん』のような二面性を持っている」

春香「そんな人々の心に時には『晴れポワるん』のように暖かな光を降り注ぎ」

春香「またある時は『カビルンるん』のようにしめやかにしみじみ染み入る感動を与えるのだ」

亜美「ごめんちょっと何言ってるか分かんない」

 

春香「そのために、私自身はいつでも『どやるん』のように自信をみなぎらせ」

春香「それを『ポワるん』のように全身で、『さかるん』のように全霊で表出している」

春香「だからこそ、私は『待ちガイるん』のように休みの間でも虎視眈々とチャンスを狙うのだ」

亜美「すごい! まるで意味は分かんないけどなんだかうまくまとまったような気がするYO!」

春香「そう、言うなればまるで……」

亜美「まるで?」

春香「まるで……ええ~っと、その、ほら……ね?」

亜美「…………」

春香「…………」

亜美「…………」





   ,。、_,。、
 .く/!j´⌒ヾゝ

  ん'ィハハハj'〉
  .ゝノ;゚ 3゚ノノ~♪

亜美「ああっあれは『格好つけてなんかいい事言おうと思ったけど結局何も思い浮かばなかったるん』!

    とっさのアドリブが大の苦手系アイドルの、
    『格好つけてなんかいい事言おうと思ったけど結局何も思い浮かばなかったるん』だ!」

春香「私は、天海はるるんだから」キリッ

亜美「何でもかんでもそれ言っときゃいいって思ったら大間違いっしょ!」

 

春香「ええい! 綺麗にまとめるとかもう考えるものか!」

亜美「ここまでやってオチをブン投げるのはマズいって!」

春香「最終的にアイドルに必要なのはそう、勢いだ!」

亜美「ミもフタもないよはるるん!」

春香「おわー! おわー!」ジタバタ

亜美「ついにはるるんが壊れたー!?」

春香「おわー! おわー!」ビッタンビッタン

亜美「落ち着いてよはるるん! なんか人間じゃ考えられない動きしてるYO!?」

春香「おわー! おわー!」ゴロゴロ

亜美「……ハッ! そうか、あれは『おわるん』! この漫才ももう『おわるん』だ!」

亜美「どうも、ありがとー!」

春香「Bye, thank you(重低音ボイス)」

 

小鳥「『アミアマミ』のお二人でした!」

小鳥「遊戯王はシンクロ召喚のあたりで知識が止まってるからついていけなかったわ……」

P「フレイム・ウィングマンとか今どうなってるんですかね? ……お、アミアマミの二人が来ましたね!」

亜美「いやーあのステージはキンチョーするねやっぱり……」

小鳥「春香ちゃんはどうだった?」

春香「不安でしたけど、やり切りました!」

P「今回は春香が『天海はるるん』って役を演じてたわけか」

春香「ああいうアイドルになれるようにこれからも頑張ります!」

亜美「はるるん本当にあんなのになりたいの!?」

P「そんな無理して個性出そうとしなくてもいいんだぞ……?」

小鳥「今回は亜美ちゃんがツッコミなのね」

P「これは確かに意外でしたね」

春香「そうですね。いつもと違うことをやるんだから、立場もガラッと変えちゃおうと!」

亜美「んっふっふ~。いつもは亜美がボケボケのボケ倒しだから、ちょっとイガイな一面を見せれたんじゃないかな?」

春香「私も意外な一面を(重低音ボイス)」

亜美「天海はるるんはもういいYO!」

P「それでは審査員のみなさん点数をお願いします!」



点数50~100点の間で安価下1~4

 

善澤 50
黒井 54
日高 76
高木 86

P「合計得点は、266点です!!」

小鳥「では、順位の方は……」

1:301 フラット2
2:266 アミアマミ
3:

小鳥「現在第2位です!」

P「なるほど、では審査員の話を聞いてみましょう! 黒井社長!」

黒井「怒濤の早着替えショーだったが……これは漫才と言えるのか?」

P「まあそこでしょうね……」

小鳥「舞さんはいかがでしたか?」

舞「嫌いじゃなかったけれど、いくつか知らないネタが入ってたのがちょっとね」

春香「あはは……、とりあえず目についたゲームやアニメを詰め込んじゃいましたからね……」

亜美「やっぱり妖怪○ォッチネタも入れるべきだったかなぁ……」

春香「余計混乱するからやめて!」

小鳥「最後に二人に今の気持ちを聞いてみましょう」

亜美「最初におわるんを思いついてその流れでネタを作っちゃったけれど」

春香「やっぱり変に飾らないで、ありのままの私たちを見せるのが一番ってことですね」

P「おお、うまくまとめた。『格好つけてなんかいい事言おうと思ったけど結局何も思い浮かばなかったるん』とは思えない……」

春香「あ、アドリブもちゃんと練習しますって!」

P「『アミアマミ』の二人でした!」

小鳥「どんどん行きましょう! つづいては、このコンビです!」

 





――― ツートップ ―――

 竜宮小町の水瀬伊織と、ジュピターの天ヶ瀬冬馬が手を組んだ!
 ライバルユニットを率いるリーダー同士によるコンビは、どんな化学反応を起こすのか!

<<エントリーナンバー03 『天ヶ瀬水瀬』!>>



 



レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





伊織「はい皆さんこんにちは!」

冬馬「961・765混成ユニット『天ヶ瀬水瀬』、よろしくな!」

伊織「私はお馴染み竜宮小町のカワイイ担当、水瀬伊織でぇす♪」キャピ

冬馬「じゃあ俺はジュピターのもっとカワイイ担当、天ヶ瀬冬馬でぇす♪」キャピ

伊織「おい待てコラ」

冬馬「どうした」

伊織「どうしたもこうしたもないわよ。何で私に被せてくるのよ」

冬馬「寝言言ってんじゃねえよアイドルは競争社会だろうが」

伊織「競争のふっかけ方がおかしいって言ってんのよ!」

冬馬「俺がカワイくねえって言いたいのか!」

伊織「当たり前よ! もっと長所を活かして戦いなさい! 他にイケメン担当とかあったでしょ!」

冬馬「イケメン担当は北斗がいるだろ」

伊織「じゃあカワイイ担当は翔太にでも任せときなさい!」

 

冬馬「まあこうしてプロダクションの垣根を超えて漫才をやることになったわけだが」

伊織「滅多にない経験よね」

冬馬「しばらく組んでると、水瀬伊織のいいところってのが徐々に見えてくるわけだ」

伊織「お、いいじゃない言ってちょうだいよ」

冬馬「こいつな、ツッコミが上手い」

伊織「確かにそれはちょっと自信あるわね」

冬馬「とにかくツッコミが上手い」

伊織「そ、そんなに強調して褒めなくても……」テレ

冬馬「こんなにツッコミ上手いのに何でこいつアイドルやってんの?」

伊織「別にいいじゃないの!」

冬馬「もうアイドルやめてツッコミ一本で行ったほうがいいんじゃないかと」

伊織「ちっともよくないわよ!」

 

冬馬「第一なんだっけか? お前が入ってるあのユニット、えっと……」

伊織「パートナーのユニット名くらい覚えておきなさいよ。最初に言ったじゃないの」

冬馬「ほらあの『りゅうつうのまち』とかってやつ」

伊織「『竜宮小町』よ! りゅ・う・ぐ・う・こ・ま・ち!」

冬馬「そうそうそれだそれ」

伊織「何よ流通の街って!?」

冬馬「♪キミがくれたから七彩ボタン 全てインドに送ったよ♪」

伊織「勝手に輸出してんじゃないわよ!」

冬馬「♪銅やサーモンも チリと分かちあえる♪」

伊織「輸入もしないの!」

冬馬「銅じゃなくてブドウのほうが良かったか?」

伊織「輸入品目はどうでもいいわ! なんでそんなにチリの特産品に詳しいのよあんたは!」

 

冬馬「そう、名前だ。その『竜宮小町』って名前が気に入らねえ」

伊織「何よ文句あるの? 水瀬・双海・三浦とメンバー全員の苗字に『海』に関わる文字が入ってるのよ」

冬馬「へぇ」

伊織「そんなキレイで可愛い三人ユニット、だから竜宮小町。オシャレでしょ?」

冬馬「いいやダサいな名付け親の感性を疑うぜごめん嘘言い過ぎた秋月律子めっちゃ可愛いわ」

伊織「謝るの早いわねあんた……」

冬馬「だから今日はお前のユニットにもっと相応しい名前を考えてきてやった」

伊織「聞くだけ聞いてあげるわ」

冬馬「『ドラゴン・パレス・スモール・タウン』」

伊織「英訳しただけじゃないの!」

冬馬「格好いいじゃねえか」

伊織「小町をスモールタウンって訳すやつ生まれて初めて見たわ!」

 

冬馬「英語はダメってことか」

伊織「そういうわけじゃないけど、もうちょっとスマートに行きましょうよ」

冬馬「なら分かりやすく苗字に海に関わる文字がつく女三人ユニットってことで」

伊織「うん」

冬馬「『海女さん』」

伊織「少しは捻りなさいよ!」

冬馬「世の中ストレート過ぎるくらいが心に響くんだよ!」

伊織「ストレートは他の部分で出すわよ! 女は変化球も巧みに使って色気を出すの!」

冬馬「剛腕から繰り出される強力なストレートとキレの良い変化球を武器に、これまで何度もこちらのチームを……」

伊織「最初のやよいと真のネタじゃないの!」

 

冬馬「たしかに色気は必要だ」

伊織「でしょ?」

冬馬「ならとびきりセクシーなの考えたぜ」

伊織「ほうほう」

冬馬「『まいっちんぐ小町』」

伊織「いや~んまいっちんぐ☆ ……って何やらせるのよ!」

冬馬「このグループ名なら三浦あずさ一人の方が……」

伊織「私に色気がないって言いたいの!?」

冬馬「もしくは三浦、四条、そして秋月律子の三人で」

伊織「あんたさっきからちょいちょい律子推すわね!」

冬馬「大体お前そのナリでまいっちんぐとかマチコ先生を甘く見てんじゃねえよ!」

伊織「何にキレてんのよ!?」

冬馬「俺がカワイイ担当を自称するくらい無理があるぞ!!」

伊織「自覚あるならやめなさいよ! いい加減ふざけたことばっかり言ってると出るとこ出るわよコラ!」

冬馬「出るとこ出してから言え!」

伊織「やかましいわ! これから成長する予定なの!」

 

冬馬「これから成長する? ハッ」

伊織「何よ文句あるの?」

冬馬「最近やたらと夜更かししてる奴がよく言うぜ」

伊織「うっ! し、仕方ないじゃない……。寝る前に今度のライブでやるSMOKY THRILLのダンスの練習してるのよ」

冬馬「フン、そんな風に寝食忘れねーとまともに売り出せもしないんならやめちまえよ」

伊織「なんですって!! 今のは聞き捨てならないわよ!!」

冬馬「第一そのスモゥ……なんだって?」

伊織「SMOKY THRILLよ! ほら、竜宮小町のデビュー曲の」

冬馬「その流通の街のスモークサーモンだかなんだか知らねえが」

伊織「またチリの貿易品に戻っちゃったじゃないの!」

 

冬馬「聞いたこともねえなそんな曲」

伊織「聞いたことくらいはあるでしょ」

冬馬「いいや知らねえそんな弱小ユニットのマイナー曲ごめん言い過ぎた秋月律子のアイドル復帰はいつですか?」

伊織「あそこに突っ立ってるうちのプロデューサーにでも聞きなさいな」

          冬馬「すみませーんりっちゃんの次のステージっていつ頃になりますかねー?」
                                                                  エッ オレ!?>(P)
伊織「本当に聞きに行くな!!!」

冬馬「お前が聞けっつったんじゃねえか」

伊織「ああもう、あんたとしゃべってると貴重な時間がもったいないわ!」

冬馬「んだとぉ!? 俺との楽しい漫才が無駄だって言いてえのか!!」

伊織「トップアイドルになるためには一分一秒だって惜しいのよ!」

冬馬「俺から言わせりゃそんな根詰めて練習してる方が時間の無駄だ、時間の無駄!」

伊織「私が何を頑張ろうがあんたには関係ないでしょ! 口出さないでちょうだい!!」

冬馬「そんなに無理するお前を知らぬが仏ほっとけねえよ!!」

伊織「やっぱり知ってるじゃないのよSMOKY THRILL!!」

 

冬馬「いいか。お前は平気だと思って夜更かしの猫惑わしてるんだろうが、寝不足は甘く見たらば真っ逆さまFly awayだ」

冬馬「それで本番調子が出せなかったら、折角のお前の痺れるくびれも秘めたる身体も宝の持ち腐れされど汗ばむ砂丘じゃねえか」

冬馬「そういう部分がお前はYo 灯台もと暗し」

伊織・冬馬「「♪Do you know!?♪」」

伊織「どんだけ知ってんのよあんた! 2番の歌詞出てくるとは思わなかったわ!」

冬馬「この噂のFunky girlが!」

伊織「なんかもうありがとうね!!」

 

伊織「……ねえ、さっきからあんたが散々私や竜宮小町に口出してるのって」

伊織「もしかして、無理してる私をたしなめようとしてくれてるの?」

冬馬「……これでも、俺はお前のことはライバルだと思ってるんだ」

冬馬「ラストステージはお前が相手じゃなきゃ張り合いねえからな」

伊織「あんたなりに心配してくれてたのね……」

冬馬「何より、お前が潰れたらただでさえ貴重なツッコミ役がさらに減っちまう」

伊織「今すぐ私の感激を返しなさい」

冬馬「俺のボケにツッコんでくれそうなのもうお前くらいしかいねーんだよ!! 頼むよマジで!!」

伊織「ええい泣きつくなうっとうしい!」

冬馬「だから早急に秋月律子の現役復帰をだな」

伊織「ツッコミ確保のために今までずっと律子推してたの!?」

冬馬「違う! 俺はただグリーンのサイリウムの前で輝く笑顔で歌って踊るりっちゃんをまた見たいだけだ!!!」

伊織「あとで伝えといてあげるから! あんたは一回律子から離れなさい!」

 

冬馬「ついでに今ぶっ倒れたら将来まいっちんぐだってできなくなるんだぞ」

伊織「やる予定がないわ!」

冬馬「出るとこ出さないつもりか」

伊織「成長はするわよ!」

冬馬「でも今のお前の体型はそれはそれで立派な長所だ!」

伊織「じゃかあしいわ!」

冬馬「活かして戦え!!」

伊織「力説すんな!! 一応気にしてんのよこっちは!」

冬馬「とにかく、アイドルは続けるんだな?」

伊織「当たり前でしょ。あんたが最後の敵として立ちはだかったって、アイドルの道だけは譲る気はないわ」

冬馬「なら、せいぜい規則正しい生活には気を付けるんだな」

伊織「言われなくても分かってるわよ」

冬馬「万全なお前たちを乗り越えてこそ、トップアイドルって称号に価値があるんだからよ」ニッ

伊織「その言葉、そっくりそのままお返しするわ」ニッ

冬馬「だが、もしお前がアイドルに挫折したらその時はツッコミ一筋に専念するんだな」

伊織「そんな時は来ないと思うけれど、まあ考えといてあげるわ」

冬馬「そうしたら、代わりに俺が竜宮小町に入る」

伊織「何ほざいてんのあんた!?」

 

冬馬「俺だって苗字に『瀬』って入ってるんだよ!」

伊織「小町要素はどこ行ったのよ!」

冬馬「天ヶ瀬・双海・三浦と全員の苗字に『海』に関わる文字が入ってるキレイで可愛い三人ユニット」

伊織「やめろ気色悪い!」

冬馬「まずはインドへ進出して」

伊織「流通の街はもういいわ!」

冬馬「♪はじめまして ボクにレアアースくれてありがとう♪」

伊織「だから貿易すんなっての!!」

冬馬「ユニット名も『ドラゴン・パレス・スモール・タウン』に改名する!」

伊織「ふざけんじゃないわよ!」

冬馬「じゃあ『まいっちんぐ小町』で」

伊織「どっちもやめて!」

冬馬「まいっちんぐ小町のもっとカワイイ担当、天ヶ瀬冬馬でぇす♪」キャピ

伊織「いい加減にしなさい!」ペシ

伊織「どうも、ありがとうございましたー」

冬馬「どうも、あまとうでございましたー」

伊織「終わりくらい真面目にやりなさい!」

伊織・冬馬「「あらためて、ありがとうございましたー!」」

 

小鳥「『天ヶ瀬水瀬』のお二人でした!」

P「いやーまさかネタの途中で私に話振られるとは……それでは感想を聞いてみましょう! どうでしたか、今日の手応えは?」

伊織「手応えは、ありまぁす☆ 200回くらい練習しました☆」

冬馬「それじゃ本当は手応えないみたいに聞こえるからやめろ」

小鳥「お、今日はじめての冬馬くんのツッコミですね!」

P「この二人でどんなネタが来るかと思いましたが、まさか最初から最後まで冬馬がボケに徹するとは」

伊織「私はある意味いつも通りで良かったから、すごくやりやすかったわ」

冬馬「俺はキャラじゃねえことやりまくった感があるぜ……」

P「本音は?」

冬馬「ボケ倒すって気分がいいな!」

小鳥「普段の鬱憤を晴らしましたねーまいっちんぐ小町のカワイイ担当」

冬馬「マジやめてくださいお願いします」

伊織「しばらくはこのネタで弄れそうね」

P「それではさっそく審査員のみなさんの点数を見てみましょう、どうぞ!!」



点数50~100点の間で安価下1~4

 

善澤 50
黒井 50
日高 50
高木 50

P「というわけで合計は200点です!」

小鳥「では、順位の方は!」

1:301 フラット2
2:266 アミアマミ
3:200 天ヶ瀬水瀬

小鳥「これは……出てしまいましたね」

P「審査員のみなさんに伺ってみましょう」

善澤「彼はボケというタイプじゃないかな」

黒井「冬馬がツッコミではないとはどういうことだ!」

舞「うん、彼にボケは求められてないわ」

高木「水瀬君のボケが見たかったねぇ」

冬馬「……自信なくすぞオイ」

P「まあほら……なんつーか、ドンマイ」

伊織「だからネタ決める時伊織ちゃんがボケた方がいいんじゃないかって言ったじゃない」

冬馬「多分結果は一緒だ」

伊織「し、社長の点数くらいは変わったわよきっと!」

小鳥「それでは『天ヶ瀬水瀬』のお二人でした!」

 

この番組は

・モバマスはよく知らないけれど綾瀬穂乃香って子が可愛いのにマスコットの方が先に声付くのはおかしい
・グリマスもよく知らないけれどジュリアって子のプラリネ目当てでLIVE THE@TER HARMONY 04買ったら千早の曲にドハマりした
・Mマスもよく知らないけれど東雲さん開眼イベントはまだですか?

の提供でお送りしています

 

この番組は

・relations7話のヒゲ眼鏡ミキミキかわいい
・relations8話のドレスりっちゃんの全身像をください
・relations11話のスレてない時代のプルプル麗華ちゃん抱きしめたい

の提供でお送りします



小鳥「さあまだまだ続きますM@S-1グランプリ! 続いてのコンビはこちらです!」





――― 双丘 ―――

 自称完璧な我那覇響とみんなのお姉さん三浦あずさによるコンビ!
 意外と接点の少ない二人、その絡みを見逃すな!

<<エントリーナンバー04 『エイティーシックス』>!>



 



レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





響「はいさーい! 自分たち、『エイティーシックス』だぞ!」

あずさ「お願いします」ペコリ

あずさ「突然だけれど、響ちゃんは運命って信じる?」

響「おっ、それなら自分、運命としか言えないような出来事を経験したことがあるぞ!」

あずさ「あら、素敵ね~。どんなことが起こったの?」

響「うう……山で遭難してもう三日、食料は尽きて体力も限界だ……」

あずさ「そんなことが起こったの……?」

 

響「ああ、自分はもうここで死んでしまうんだ……」

あずさ「ちょっと、大丈夫なのそれは……?」

響「はっ! どこかから水の流れる音がする……!」

響「湧き水だ! 自分、助かったんだ!」

響「ごくっごくっ……ぷはっ」

響「うんめぇ~~~~~~~~~~!!」

あずさ「ええ~……」

響「もううんめぇとしか言えない」

あずさ「そんな貴音ちゃんがらぁめんって言うみたいに言われても……」

響「あ、これ半年前の響チャレンジで起こったことなんだけどな」

あずさ「過酷すぎじゃない!?」

 

あずさ「私たちが幼稚園で子どもと遊んでる間、響ちゃんはそんな生死の境を彷徨うようなことをやってたのね……」

響「こういうのじゃなかった?」

あずさ「私が思ってた運命とはだいぶ違うかしら」

響「じゃあどういうのなんだ?」

あずさ「運命の出会いとか、そういうのよ」

響「それなら自分はやっぱりこうして765プロに入って、みんなと出会えたことだな」

あずさ「あらあら、そう言ってもらえると嬉しいわ~」ニコニコ

響「自分さ、アイドルになりたいって一心で、故郷の沖縄を飛び出して東京に来たんだ」

あずさ「そんないきなりの上京で、どこかアテはあったの?」

響「なかったけれど、いつまでも島にいてもチャンスは掴めないって思ったら我慢できなくて」

あずさ「昔からすごい行動力だったのね」

響「ところが島を出た翌日に黒井社長がうちの故郷に視察に来た」

あずさ「本当に運命的なタイミング……」

 

響「まあ当然ながら家族は大反対したよ」

あずさ「娘がアイドルになるなんて言い出したらやっぱり心配よね」

響「『響! あなたが思っているほど世の中は甘くない!』」

あずさ「うちの親にもそういう風に反対されたわ~」

響「『本州まで泳いで何日かかると思っているの!』」

あずさ「泳いでいこうとしてたの!?」

響「旅費がなかったからな」

あずさ「切実な問題ね……」

響「反対されたんだけど、自分も本気でアイドルになりたかったから頑張って熱意を伝えたんだ」

あずさ「親の説得はアイドルならみんな通る関門よね~」

響「『屋久島と奄美大島の間さえどうにかなればあとは大丈夫!』って」

あずさ「だからどうして泳ごうとするの!?」

 

響「自分、体力には自信あるぞ」

あずさ「それは知ってるけれど……」

響「説得の末アイドルになるって夢には納得してくれて」

あずさ「あら、よかったわ~」

響「でも泳いでいくことには最後まで頑なだった」

あずさ「そこだけは私が響ちゃんの親でも断固反対するわ……」

響「実はあんまーも『いつかは島を出ていくんじゃないかと思ってた』って、自分のためにいろいろ用意しててくれたんだ」

あずさ「親心ね~。東京までの旅費かしら?」

響「ううん、手漕ぎボート」

あずさ「それでもシビアよ!」

 

響「あ、ちゃんと居住スペースはあったぞ!」

あずさ「そういう問題じゃないと思うの……」

響「航海は大変だった」

あずさ「そりゃそうでしょうね……」

響「3日目くらいにはハム蔵がお肉の塊にしか見えなくなったり」

あずさ「飢えてるじゃないの……」

響「もううんめぇとしか」

あずさ「食べちゃダメよ!?」

響「鹿児島に着いたと思ったら高知県だったり」

あずさ「逆にそれはラッキーなんじゃないかしら」

響「うまいこと黒潮に乗ったっぽいな」

あずさ「そんな冷静に分析されても……」

 

響「で、高知からなんやかんやで東京まで来て」

あずさ「その何やかんやの部分も気になるわね……」

響「上京さえすればどこか採用してくれるさ~なんて気楽に考えてたんだけど」

響「現実は全然そうはいかなくて、所属オーディションは連戦連敗だった」

あずさ「響ちゃんにもそんな時代があったのね~」

響「そんなある日、いつものように落選してとぼとぼ帰ってた時に、道行く人に『そんなに暗い顔をしてどうしましたか?』って声をかけられたんだ」

あずさ「知らない人から見ても分かるくらい落ち込んでたのね」

響「うん、『765プロの社長並ですよ』って言われた」

あずさ「ほとんど黒塗りじゃないの……」

響「普通はこういうの怪しいって思うけど、その時は心細さに勝てなくてさ。その人に自分の不安を聞いてもらったんだ」

響「そしたらその人は、『今は悪い方に心が囚われてるだけ。まずはあなた自身が幸せにならなきゃ』って優しく言ってくれた」

あずさ「素敵な方に出会えたのね~」

響「『だからこの幸運を呼ぶ壺を買えば全部うまくいく』って」

あずさ「ごめんなさい撤回するわ」

 

響「とりあえず玄関に飾ってみたはいいけれどやっぱり全然うまくいかなくて」

あずさ「買っちゃったの!?」

響「その時自分思ったんだ。『あ、これ騙された!』って」

あずさ「買う前に気付きましょうよ……」

響「自分のなけなしの600円が……」

あずさ「あ、意外と安かった」

響「値切った」

あずさ「値切れるものなのね……」

響「いや~、都会って怖いところなんだな」

あずさ「島暮らしだとそういう詐欺への警戒心は薄くなっちゃうものなのかしらね」

響「それからというもの、自分何にも信じられなくなっちゃってさ」

あずさ「響ちゃん……」

響「不安を紛らわすように毎晩部屋に男を連れ込んだ」

あずさ「カメラ止めて! これオンエアしちゃだめなやつ!」

 

響「これでも今はアイドルやってるくらいだからな。誘えばいくらでも男はついてきたよ」フッ

あずさ「ちょっと、そのアイドルがそういうこと言うのは……」

響「分かってるよ! あいつらは自分が都合のいい女だったから寄ってきてただけ……」

響「それでも止められなかった! どんな形でも、こんな自分でも、ただ誰かに必要とされているってことが嬉しかった……!」

あずさ「響ちゃん……」

響「……そうしていつしか、部屋には余計なものばかりが増えていった」

あずさ「…………」

響「誰も食べない鳥のエサ」

あずさ「ちょっと」

響「使われることのない砂トイレ」

あずさ「響ちゃん?」

 

響「なに?」

あずさ「野良の動物を拾ってたのかしら?」

響「夜はケダモノのように求められたさ」

あずさ「ケダモノそのものじゃないの……」

響「あいつらがいる間だけは、自分がこの大都会の中で独りぼっちだってことを忘れられたんだ」

あずさ「一人暮らしだとペットの存在に癒されるのよね~」

響「そんなあいつらも、今はみーんな違う女のところさ」フッ

あずさ「里親まで探してあげたのね」

響「あ、でもブタ太やネコ吉なんかは今もうちにいるな」

あずさ「ブタ太ちゃんって元々野良だったの!?」

響「うん、ワニ子もこっちで拾った」

あずさ「嘘ぉ!?」

響「さすがにワニなんて公共の交通機関に乗せられないからな」

あずさ「都内で拾う方が難易度高いと思うんだけれど……」

響「ちなみに今は鳥のエサはオウ助が全部食べたし、砂トイレもネコ吉が使ってるし、幸運の壺はへび香の寝床になってる」

あずさ「余すとこなく有効活用してるのね……」

 

響「で、これのどこがオンエアしちゃいけない話なんだ?」

あずさ「え? そ、それはその、私の早とちりというか……」

響「何を想像したのかな~? ん~?」

あずさ「うぅ……そ、そんなことより響ちゃん!」

響「何?」

あずさ「今の話聞くと、響ちゃんが生きてることは運命的なくらいだけれど」

響「うん」

あずさ「肝心の765プロとの出会いは?」

響「ああ、だから壺売ってた人が言ってた765プロって所に行って、3日くらい漂流しても平気なタフさと動物いっぱい飼ってることをアピールしたら採用してもらえたんだ」

あずさ「余すとこなく有効活用してる!」

響「な、運命的だろ?」

あずさ「やめさせてもらうわ」ペチ

響・あずさ「「どうも、ありがとうございました」」ペコリ

 

P「『エイティーシックス』のお二人でした!」

小鳥「知られざる過去……って感じでしたね」

P「うちの社長の顔が暗くなかったら、響はここにいなかった可能性もあるわけですからね」

響「いや、さすがにフィクションだって……」

P「お、帰ってきました! それでは感想を聞いてみましょう!」

あずさ「お恥ずかしい所をお見せしちゃいましたね~……」

P「いえ、新鮮な感じでよかったと思いますよ」

響(小鳥、言われた通り『困るあずさ』『慌てるあずさ』『恥ずかしがるあずさ』の要素はバッチリ仕込んだぞ)ボソッ

小鳥(完璧だわ響ちゃん)グッ

P「何話してるんだ?」

小鳥「あ、い、いえ何でもないですよ! それでは審査員のみなさんの点数を見てみましょう、どうぞ!」



点数50~100点の間で安価下1~4

 

善澤 50
黒井 50
日高 70
高木 50

P「というわけで合計は220点です!」

小鳥「では、順位の方は!」

1:301 フラット2
2:266 アミアマミ
3:220 エイティーシックス

小鳥「現在天ヶ瀬水瀬を抜いて第3位です!」

P「審査員のみなさんに伺ってみましょう、社長いかがですか?」

高木「私の顔ってそんなに暗いかね……」ガッカリ

P「いや、アレはあくまでネタですからね!?」

小鳥「では、70点を付けた舞さん!」

舞「反対する親くらい実力で認めさせないとダメよ」

響「あ、いや、それもネタで、実際は『アイドル活動? よっしゃやってみなさい』って具合だった」

舞「あら、そうなの?」

小鳥「それはそれでものすごくなんくるない親御さんね……」

あずさ「羨ましいわ~」

 

P「さてここで残念ながら4位の天ヶ瀬水瀬は脱落となります……!」

小鳥「残念でした……。最後にコメントをお願いします」

冬馬「じゃあ一言だけ言わせてもらうぜ」

小鳥「なんでしょう」

冬馬「俺もネタの中ではああ言ってたが、本当はこいつ俺がドン引きするレベルで体調管理徹底してっからな!!」

伊織「言わなくていいのよそういうのは恥ずかしいから!! もういいわ」ペチ

伊織・冬馬「「どうも、ありがとうございました」」

P「最後まで芸人でしたね……」

小鳥「プロですね……では、『エイティーシックス』のお二人は暫定ボックスへどうぞ!」

 

P「さあまだまだ参ります! 続いてのコンビはこちらです!」





――― カナヅチ ―――

 番組二組目となる竜宮・木星タッグ!
 律子が御手洗翔太をプロデュースするのか、はたまた翔太が秋月律子をひっかきまわすのか!

<<エントリーナンバー05 『アンカーズ』!>>



 



レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





翔太「御手洗翔太!」

律子「秋月律子!」

律子・翔太「「二人揃ってアンカーズ! イェイッ!」」

律子「というわけでですね、二人で元気いっぱい夢いっぱい! 頑張っていこうと思いますが」

翔太「いやーこうしてたくさんのお客さんの前に立たせていただいて」

律子「ええ」

翔太「僕らアイドルにでもなった気分ですね!」

律子「れっきとしたアイドルよ! あんたも私も!」

翔太「あれ、お姉さんって竜宮小町の後ろをつけ回してニヤニヤしてる職業の方じゃないんです?」

律子「言い方! まあそう言いますのも私、アイドルと兼任して竜宮小町のプロデューサーをやらせて頂いてまして」

翔太「へえ、アイドルとプロデューサーの二足のわらじで」

律子「プロダクションの事務も兼ねておりますので、三足になりますね」

翔太「まだお若いのに大変ですね!」

律子「あんたのほうが若いでしょうが」

 

翔太「でも僕としては若いよりも早く大人になりたいですよ」

律子「何でよ、いいじゃないの若いって。うちの正事務員が聞いたら泣きますよ?」

翔太「いやほら、僕ってまだ子供ですから、みんなに男として見られてないんじゃないかなーって思うんです」

律子「どうして?」

翔太「僕らこうしてアイドルやってますと、ファンレターをいただくわけですよ」

律子「有り難いことですね本当に」

翔太「それで北斗君宛には『北斗様かっこいい!』『彼女にしてください!』『一生ついていきます!』なんて黄色い声援が送られてくるんですが」

律子「すてきなファンの方じゃないですか」

翔太「僕宛のは『かわいい』『愛でたい』『弟にほしい』『ペットにしたい』『食べたい』とか」

律子「だいぶ物騒なの混じってるわね」

翔太「もう全っ然男として見られてないんですよ!!」

律子「いくつか人間として見られてないのあったけど大丈夫?」

翔太「冬馬君なんかはもう一番男として見られてて」

律子「まあ彼は俺様系で男らしいですからね」

翔太「ファンレターも力強い毛筆で『燃えよ熱血! みなぎれ闘魂! 男一代天ヶ瀬冬馬』みたいな」

律子「どんな層から支持受けてんのあいつ!?」

 

翔太「だから今日は765プロが誇る敏腕プロデューサーの律子さんに、格好よく見られる方法をご教授いただきたいなと」

律子「そんな風に言われると断れないわね」

翔太「お願いしますよ」

律子「やっぱりベタにお芝居で格好いい役を演じきるっていうのが一番じゃないかしら」

翔太「なるほど」

律子「演じた役に引っ張られてできるイメージってのもありますからね」

翔太「それなら僕前々からやってみたいシーンがあるんですよ!」

律子「言ってごらんなさいな」

翔太「エイリアン映画とか敵に囲まれて絶体絶命な時に、『ここは俺に任せて先に行け!』って味方を逃がすシーン!」

律子「世にいう死亡フラグってやつね」

翔太「嫌な言い方をしないでくださいよ……」

 

翔太「こう、

    『ここは俺がやる、みんなは早く逃げろ!(イケメンボイス)』
   
    クルッ
   
    『駄目だよ! 君も一緒に逃げよう!(カワイイボイス)』
   
    クルッ
   
    『ここにいたら全員やられる! お前たちだけでも未来に希望を繋ぐんだ!(イケメンボイス)』

    みたいな味方とのやり取りっていいじゃないですか」

律子「なるほどね」

翔太「じゃあ僕はその味方を逃がす役やりますので」

律子「私はエイリアン役ね」

翔太「えっ」

律子「キェシャー! 今日のエサはどぉいつだ~い?」ニュルニュル

翔太「動き気持ち悪っ!!」

律子「身を挺してみんなを逃がして一人で食われに来る勇敢なエサはどいつだ~い?」ニュルニュル

翔太「しかもこっちの思惑全部バレてる!」

律子「逃がすまで待っておいてやろう」ニュルニュル

翔太「無駄に空気読むねこのエイリアン!!」

 

翔太「あの、律子さんそうじゃなくて、逃がされる味方やってもらえませんかね」

律子「あらそっち?」ニュルニュル

翔太「いったん動き止めて」

律子「はい」ピタッ

翔太「味方との掛け合いが格好いいって話してたでしょ?」

律子「そこはさっき翔太一人でうまい事できてたから、そのまま続けるのかなって」

翔太「さみしすぎるよその絵面! 舞台真ん中でくるくる一人芝居してる人見てどう思います!?」

律子「まあ、翔太さんってなんて男らしくてステキな人なのかしら!」キラキラ

翔太「絶対そうはならないでしょ!!」

律子「エイリアンは我ながらいい動きできたと思ったんだけど……」ニュルニュル

翔太「あとでいっぱいやっていいですからとりあえず味方でお願いします――――――」



律子「くっ……敵の数が多すぎるわ!」バンバン

翔太「このままじゃいずれ全滅だ……!」バンバン

律子「でも、どうすれば……」バンバン

翔太「仕方ない……。ここは僕に任せて、みんなは先に逃げるんだ!」

律子「なるほど、分かったわ! ここは翔太に任せて総員退避!!」

翔太「ちょっとは引き留めてよ!」

律子「物語はサクッと進んだ方がいいじゃないの」

翔太「一番いいところハブいちゃだめだよ! 引き留めるシーン! もう一回!」

 

律子「どうすれば……」バンバン

翔太「仕方ない。ここは僕に任せてみんなは先に逃げるんだ!」

律子「だめよ! それじゃあなたが死んでしまうわ!」

翔太「そこまで言うならやめとこうかな……」

律子「まだそこまで言ってないわよね?」

翔太「いや僕って意外と押しに弱くてですね」

律子「だからってあんたが説得されたら全滅じゃないの! 鋼の意志で押し切りなさいな! もう一回!」



翔太「ここは僕に任せてみんなは先に逃げるんだ!」

律子「だめよ! それじゃあなたが死んでしまうわ!」

翔太「このままじゃ全員死んでしまう! 君たちだけでも生き延びて、未来に希望を繋ぐんだ!」

律子「でもあなたが死んじゃったら私が貸した3000円が返ってこないじゃない!」

翔太「セコすぎでしょこんな状況なのに!! 命張って律子さんを守るんですからチャラにしてくださいよ!」

律子「翔太の命って3000円でいいの!?」

翔太「良くないけれど!! もう一回最初から!」

 

翔太「ここは僕に任せてみんなは先に逃げるんだ!」

律子「だめよ! それじゃあなたが死んでしまうわ!」

翔太「このままじゃ全員死ぬ! 君たちは生き延びて、未来に希望を繋ぐんだ!」

律子「だけど……」

翔太「いや、ここは俺が残る」スッ

律子「えっ」

翔太「いや私が」スッ

翔太「ワシが」スッ

翔太「我が」スッ

律子「…………」

翔太「…………」

律子「じ、じゃあ私が」スッ

翔太「どうぞどうぞ」

律子「やってる場合か!!」

<ガシャーン!

翔太「うわぁ敵が入ってきてしまった!!」

律子「そりゃそうなるわよこんな無駄なことしてたら!!」

翔太「一回でいいからさりげなく『俺』って一人称を使ってみたかったんです!」

律子「心底どうでもいいわ! ちゃんとやるわよ!」

 

翔太「ここは僕に任せて先に逃げるんだ!」

律子「それじゃあなたが死んでしまうわ!」

翔太「このままじゃ全員死ぬ! 君たちだけでも生き延びて――――――」

律子「――――――いえ……生き延びるべきなのはあなたよ、翔太」

翔太「えっ」

律子「たしかに、あなたがここに残れば今は生き延びれるかもしれない……」

律子「だけど、あいつらに対抗できる人類の最後の希望は、翔太。あなただけなのよ」

翔太「え、あの、これ台本と違う……」

律子「そんな顔しないで。これでも訓練時代はあなたと互角だったんだもの。すぐ片付けて、私も後を追うわ」

翔太「律子さん……」

律子「地球の未来は、任せたわよ」

翔太「…………」ダッ

律子「……ふぅ、みんな逃げたわね。女一兵卒が未来の英雄を守って散るなんて、上出来すぎる最期じゃないの」

律子「ただ、結局あいつに思いを伝えられなかったのは、心残りかな……」

<ガシャーン

律子「……あら、これはお揃いで。こんな素敵な殿方に囲まれるなんて、私もまだ捨てたものじゃないわね」

律子「さあ、パーティの始まりよ……! 夜明けまで踊り明かしましょうかァ!!」ダッ

翔太「その役をやりたいんだよ僕は!!!!!」

 

翔太「僕がやりたい事全部やっちゃったよ律子さん!!」

律子「なら翔太は鋼の意志で押し切らないとダメじゃないの」

翔太「あんな全力で説得されたらもう挽回は無理だよ! 今は律子さん逃げる、僕残る。オーケー?」

律子「オーケー」

翔太「最後までやりますよ」

律子「最後までね」

翔太「もう最後までいかなかったらジュピターと竜宮小町解散ですからね」

律子「望むところよ――――――」



律子「くっ……敵の数が多すぎるわ!」バンバン

翔太「このままじゃ全滅してしまう……!」バンバン

律子「でも、どうすれば……」

翔太「仕方ない、ここはみんなに任せて僕は先に逃げるんだ!」

律子「最悪の人間になっちゃってるじゃないの! 逆よ逆!! やり直し!」

翔太「ここは僕に任せてみんなは先に逃げるんだ!」

律子「よっしゃ任せたわ総員退避!」

翔太「それさっき見た! やり直し!」

律子「だめよ! それじゃあなたが死んでしまうわ!」

翔太「そこまで言うなら……」

律子「それも見た! やり直し!」

翔太「このままじゃ全員死んでしまう!」

律子「でもあなたが死んだら私が貸した5000円が」

翔太「さりげなく額を増やさないで!! やり直し!」

 

翔太「君たちだけでも生き延びて、未来に希望を繋ぐんだ!」

律子「でも……」

翔太「安心して。ちょっと敵をひきつけたら、僕もすぐに後を追う」

律子「帰ってくるのよね……?」

翔太「……もしも僕が帰らなかったら、残された家庭のことはよろしく頼む」

律子「そんな仮定の話はしたくない……あ、家庭と仮定で洒落になっちゃったうふふ……くくっ……」

翔太「意外と笑いの沸点低いね律子さん! やり直し!」

律子「そんなもしもの話はしたくない……」

翔太「君にしか頼めないんだ」

律子「……わかったわ」

翔太「あと僕の部屋の押し入れにある暗黒ノートは絶対に中身を見ずに焼却してくれ」

律子「黒歴史の処分を押し付けるな! やり直し!」

 

翔太「君にしか頼めないんだ」

律子「……わかったわ。でも、約束してちょうだい。絶対に帰ってくるって」

翔太「ああ。君も約束してくれ。……地球の未来は、頼んだ」

律子「……ええ」ダッ

翔太「……よし、やっとここまでこれた……。あとはラストを格好よく決めるだけだ!」

<ガシャーン!

翔太「来たか……。あいにくだけど、ここにはもう僕一人だよ」

翔太「さあ、最後の戦いだ! 一緒に地獄に落ちようか、化物どもめ!!」ダッ

律子「やっとみんなを逃がす話は終わったのか~い?」ニュルニュル

翔太「空気読むエイリアンだった! もういいよ」ペチ

律子「水には沈むが!」

翔太「心はウキウキ、アンカーズ! どうも、ありがとうございました!」

 

小鳥「『アンカーズ』のお二人でした!」

P「ダブルボケで来ましたね」

小鳥「あんな弾けた律子さん見るの久々ですよ。まさかあんなにあっさり竜宮とジュピターの解散をかけるとは……」

P「実際聞いててヒヤッとしましたからね……あ、二人が帰ってきました! お疲れ様です!」

翔太「エイリアンの群れから生還しました!」

律子「それネタの中の話でしょうが」

小鳥「どうでしたか今日の感想は!」

翔太「そうですね。律子さんとのコンビが決まってから、冬馬君からひっきりなしに『ギルティ』ってメール来ましてね……」

小鳥「律子さん推しはネタじゃなかったんですね……」

翔太「あともう一つ冬馬君から『ネタの中で絶対りっちゃんにアイドル宣言させろ』って指令が」

律子「掴みの部分そういう理由だったの!?」

P「言質は取った。あとは企画を組むだけだ」

律子「ちょっと!」

 

P「それでは審査員のみなさん、点数をどうぞ!!」



点数50~100点の間で安価下1~4



この番組は

・点数についていくつかレスをいただいていますが、
・点数自体あまり本編に関係しないことや、ぶっちゃけ低評価の方が審査員コメントが書きやすいこと(特に黒井社長)、
・かと言ってコンマだとフォローのしようのない低点数(1桁とか)が出る可能性がある等の理由でこのままでいきます

の提供でお送りします

 



この番組は

・とっても甘くて気持ちがいいフワフワのマシュマロ
・真っ白にとろけるトロトロのミルククリーム

の提供でお送りします

 

善澤 50
黒井 50
日高 50
高木 50

P「というわけで合計は200点です!」

小鳥「では、順位の方は!」

1:301 フラット2
2:266 アミアマミ
3:220 エイティーシックス

小鳥「残念ながら3位に残れず……!」

P「審査員のみなさんにお話を伺ってみましょう。黒井社長!」

黒井「翔太にツッコミを任せるなど!」

小鳥「やっぱり自分のプロデュースプランから逸れるとああなっちゃうみたいですね」

P「善澤記者はいかがでしたか」

善澤「せっかく高木から秋月君が再デビューすると聞いていろいろと準備をしていたのになぁ……残念」

小鳥「こちらは書くネタが先に暴露されてしまったことを嘆いてますね」

律子「でもこの点数なら私の再デビューなんてお流れですよね?」

P「ハハッまさか」

小鳥「結果を見ていかがだったでしょうか」

翔太「うーん、冬馬君を抜かせなかったのは心残りですね」

P「あらためまして『アンカーズ』でした!」

律子「私はまだ認めてませんからね! 聞いてるんですかプロデューサー殿! ちょっと……――――――」

 

P「さあ残り3組となりました! 続いてのコンビはこちらです!」





――― 姫と姉 ―――

 笑いの企画では何かとおなじみ、双海真美と四条貴音のコンビ!
 王道からシュールまでなんでもござれのパワフル娘は、銀色の女王をどう乗りこなすのか!

<<エントリーナンバー06 『臣市』!>>



 



レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





真美「どうもー! 真美とお姫ちん、二人合わせて『臣市(しんし)』だよ!」

貴音「今しばらくの間、お付き合いの程を宜しくお願い申し上げます」ペコリ

真美「やっぱり人生を楽しむためにはビッグな夢を持ってないといけないと思うんだ」

貴音「夢とは人の活力の源ですからね」

真美「お姫ちんは何か夢ってある?」

貴音「そうですね、わたくしは夢というよりも目標ですが」

真美「うんうん」

貴音「今より更なる研鑚を積み、トップアイドルへと登り詰め、より多くのファンにより多くの幸を届けることでしょうか」

真美「おー、さっすがお姫ちんカッコE!」

貴音「ありがとうございます。真美はどのような夢を持っているのですか?」

真美「空からお金とか降ってこないかなって」

貴音「それは真びっぐな夢ですね」

 

真美「もう雨みたいにじゃんじゃん降ってくるのが夢だね」

貴音「びっぐすぎて夢以外の何物にもなりえないかと」

真美「もし空からお金が降ってきたらさ、お姫ちんはどうすると思う?」

貴音「どう、とは?」

真美「こんなことやりたいなーとか、こんなことするだろうなーとか」

貴音「はて、わたくしも人並みに18年生きてまいりましたが、そのような状況に見舞われたことがないので何とも……」

真美「そこは想像でいいから」

貴音「真美ならばどうしますか?」

真美「真美はまずびっくりすると思う」

貴音「びっくり」

真美「だって真美もそんな状況経験したことがないもん」

貴音「きっと誰もがそうだと思います」

真美「びっくりって言っても、うわぁ! って感じじゃなくて、あっけにとられる方ね」

貴音「ふむ」

真美「お姫ちん風に言うなら、なんとって感じ」

貴音「なんと」

 

真美「でも、もし降ってきたら降ってきたでちょっと心配なことがあって……」

貴音「真美」

真美「ん?」

貴音「故事成語に『杞憂』というものがあります」

真美「何それ?」

貴音「昔、中国の杞という国の民が、もしも天が崩れて落ちてきたらどうしようかと恐れおののいたという話で」

真美「うん」

貴音「転じて『無駄な心配』『とりこし苦労』という意味の言葉になったのです」

真美「変なの。空が落っこちてくるわけないじゃん」

貴音「分かっていただけましたか」

真美「それで、話戻すけどお金が降ってきたら心配なのがね」

貴音「思いとは、かくも伝わりがたく……」

 

真美「お金降ってくるじゃん?」

貴音「はい」

真美「傘で防げるのかな」

貴音「お札ならばあるいは……」

真美「うん、真美もお札ならいけると思う」

貴音「風に舞いますからね」

真美「ただ、これがもし札束だったら話が変わってくるよ」

貴音「話が変わってきますね」

真美「100枚集まると意外と重いからね」

貴音「100枚の札束を手に持ったことはあるのですか?」

真美「持ったことはない」

貴音「ないのですか」

真美「さらに言うなら万が一硬貨だったら」

貴音「危険ですね」

 

真美「雨みたいに降ってくるんだもん」

貴音「とても危険です」

真美「ビニール傘くらいなら貫通するんじゃないかな」

貴音「外を歩くこともままなりませんね」

真美「で、お札でさえ100枚あったら重いんだから、硬貨なんて100枚集まろうものなら」

貴音「集まろうものなら?」

真美「1アップ」

貴音「1あっぷ」

 

真美「もしくはスターが出てくる」

貴音「すたー」

真美「コイン100枚集めたら大体1アップするかスターが出るかのどっちかだからね」

貴音「その、すたー……というのはどういうものなのでしょう?」

真美「うーん、全体的に金色でキラキラしてて、顔がついた星みたいなやつ」

貴音「星で、顔がついて、金色のきらきら……」

真美「うん」

貴音「美希ですか」

真美「ミキミキ」

貴音「100枚集めると美希が出てくる」

真美「出てくるとしたら?」

貴音「それならばわたくしは少々の危険を冒してでも集めます」

真美「でもミキミキは出てこないかな」

貴音「そうですか……」シュン

 

真美「だって仮に100枚集めてミキミキが出てくるとしてさ」

貴音「はい」

真美「真美とお姫ちんが同時に100枚集めたらどうするの?」

貴音「それは……」

真美「ミキミキを半分こ?」

貴音「右半身と左半身で」

真美「でもミキミキって右脳人間っぽいところあるから」

貴音「左の方を取ってしまうと少し損ですね……」

真美「ソンだね」

貴音「では上半身と下半身で」

真美「そしたら下半身の方のミキミキはおにぎり食べらんないよ?」

貴音「なんと」

真美「まあとにかくミキミキは出てこない」

貴音「出てこない……」

 

貴音「美希は出てこないのに空からお金が降ってくる」

真美「降ってくる」

貴音「面妖な……」

真美「あとお金降ってきたら、もう一つやっておきたいことがあるよね」

貴音「それは?」

真美「通貨単位の確認」

貴音「なるほど」

真美「降ってくるってことは、お空の上でもケーザイ活動が行われてるわけじゃん?」

貴音「ふむ」

真美「で、お空の上と言えば天国じゃん?」

貴音「もしくはらぴゅたですね」

真美「もし天国でドルが使われてたら、死ぬときに円で持ってても意味ないじゃん?」

貴音「賄賂にするつもりですか」

真美「ほら、ジゴクの沙汰も為末大って言うし」

貴音「金次第です。日本屈指の陸上選手でもさすがにそこまでの影響力は持っていません」

 

貴音「そもそも『地獄の沙汰も金次第』とは、本来お金で裁判が有利になるという意味ではないのですよ」

真美「そーなの?」

貴音「現世の銭は死出の旅へは持って行けぬもの。死してなお富を蓄え澱ませることなく、社会に還元しなさい」

貴音「そうした善行を積むことで徳が高まり、天への道が開かれるという意味なのです+」

真美「へー、お姫ちんハクシキだね!」

貴音「ありがとうございます」

真美「でも、その言葉を作った人はよっぽどお金持ちから搾取したかったんだろうね」

貴音「言ってはなりません」

真美「じゃあゼンコーを積まなきゃだね!」

貴音「そうですね。さて、きりも良い所ですし与太話はこれにて……」

真美「まずは降ってきたお金を持ち主に返そっか」

貴音「よもやこのような形で話を戻されるとは……」

 

真美「とりあえずケーサツに届ければいいかな」

貴音「処分に困るのではないでしょうか」

真美「でも日本のケーサツってチョー優秀らしいよ?」

貴音「限度があります」

真美「なら、郵送で送る?」

貴音「相手の住所を知っているのですか?」

真美「じゃあ……どーしよ」

貴音「八方ふさがりですね」

真美「マズいよお姫ちん! このままじゃゼンコーを積めなくて真美はジゴクにゴートゥーヘルだYO!」

貴音「落ち着きなさい!」

真美「何か方法あるの?」

貴音「トップアイドルになるのです」

真美「まさかのトップアイドル」

 

真美「なるほど、トップアイドルになって空を飛べばいいんだね!」

貴音「真美、トップアイドルだからと言って空は飛べませんよ」

真美「まあ真美はまだBランクだからちょっと無理だけどさ……」

貴音「らんくが上がれば飛べるというものでもありません!」

真美「あそこにおわせられる日高舞さんでも無理なの?」

貴音「それは……どうでしょう」

真美「可能性は」

貴音「ないとは言えませんね……」

真美「で、トップアイドルになってどうするのさ」

貴音「わたくしたちがトップアイドルとなり、天までその名声を轟かせるのです」

真美「天まで」

貴音「そののちに『このお金はどなたのでしょう』と呼びかければ、いずれ落とし主の耳にも届くやもしれません」

真美「そんな夢みたいな話があるわけないじゃん」

貴音「そもそも夢の話でしょうに。いい加減になさい」ペチ

貴音「では、これにて失礼いたします」ペコリ

 

―――――

P「『臣市』のお二人でした!」

小鳥「淡々と進みましたね」

P「ちょっとコイン100枚集めてこなきゃ……っと、二人が来ましたね!」

真美「おっ疲れーい!」

貴音「お疲れ様です」ペコリ

小鳥「どうでしたか? 今日の舞台は」

真美「やー、キンチョーでドキがムッネンコだったYO!」

貴音「最善を尽くしたと自負しております」

P「これ臣市ってどういう意味なの?」

真美「お姫ちんはお姫ちんで、真美がお姉ちゃんだから、そっから女へんを抜いたらこーなっちゃたってことで」

小鳥「なるほど」

P「それでは審査員のみなさん点数をお願いします、どうぞ!」



点数50~100点の間で安価下1~4

 

善澤 50
黒井 50
日高 50
高木 50

P「というわけで合計は200点です!」

小鳥「では、順位の方は!」

1:301 フラット2
2:266 アミアマミ
3:220 エイティーシックス

小鳥「220点の壁は厚いですね……」

P「では審査員のみなさんにお話を伺ってみましょう。先ほどから何か言いたそうにしている舞さん!」

舞「さすがの私でも自力で空は飛べないわよ」

貴音「なんと……!」

舞「うん、そんな露骨にがっかりされると思わなかったわ」

小鳥「では高木社長、いかがでしたか?」

高木「飛べないのか……」

舞「なんでそっちも残念そうにしてるのよ!」

P「というわけで臣市もここで敗退ということになります……!」

貴音「悔いはありますがいたし方ありません。実力が足りなかったということ……」

小鳥「真美ちゃんは?」

真美「飛べないのか……」

舞「だから!」

P「では臣市のお二人でした! ありがとうございました!」

小鳥「M@S-1グランプリ2015! いったんCMを挟んで、残すところはあと2組です!」





この番組は

・モンデンキント
・トゥリアビータ
・十六夜寮

の提供でお送りしています

 

引き続き、この番組は

・げろっぱ
・こんばんやよやよ~
・(ウサギの気持ちになるですよ)

の提供でお送りします

 

P「さあM@S-1グランプリも残すところあとわずか。7組目のコンビの登場です!」




――― 天使 ―――

 アイドル界一の男性恐怖症である萩原雪歩と組むのは、アイドル界一のフェミニスト伊集院北斗!
 対照的な二人が織りなすステージをご覧あれ!

<<エントリーナンバー07 『ダイヤモンドダスト』>!>



 



レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





北斗「チャオ☆ 961プロと765プロのドリームユニット『ダイヤモンドダスト』、ヨロシク!」

雪歩「わ、わたくし萩原雪歩と、こちらの伊集院北斗でやっていこうと思いますぅ!」

北斗「今日も見に来てくれた会場のエンジェルちゃんたちに素敵な時間をプレゼントするよ!」

\キャーホクトサマー!/\ホクホクステキー!/\ヨッ!イジュウイン!/

北斗「はは、ありがとうエンジェルちゃんたち!」

 

雪歩「さっそくですけど私ですね、北斗さんのすごいなあって思うところがあるんですよ」

北斗「お、嬉しいね。聞いてもいいかい?」

雪歩「北斗さんって女の人にもどんどん話しかけていくじゃないですか。私もああいう風になりたいって思うんですよ」

北斗「雪歩ちゃんは異性が苦手なんだっけ」

雪歩「そうですね……。今でもどうしても物怖じしちゃって」

北斗「このなんとも言えない距離感もそのせいかい?」


雪歩      マイク 北斗


<そうなんですぅ

北斗「とりあえずマイクが声を拾える位置まで近づいてみようか」

 

雪歩「この辺で大丈夫ですか?」

北斗「それでもまだ少し壁を感じるね」


   雪歩   マイク 北斗


雪歩「うう……ごめんなさい」

北斗「大丈夫。少しずつ慣れていけばいいのさ」

雪歩「それで、どうやったら北斗さんみたいになれるんだろうって思って……」

北斗「つまり俺が女性に接するように、雪歩ちゃんも男性に上手に接することができるようになりたいわけだね?」チャオ

雪歩「いえ、上手に女性を口説けるように」

北斗「そっちかい!?」

雪歩「長所を伸ばす方向でいこうかと」

北斗「長所ってほど女性経験あるのかい?」

雪歩「ロボットに乗ってた頃に少々」

北斗「OK、その話はやめよう」

雪歩「本命に見向きもされませんでしたけれど」

北斗「むしろ雪歩ちゃん自身率先してインベルとの仲を取り持とうとしてなかったかい?」

 

雪歩「でも水着回でカニをつっついて微笑んでる真ちゃんは」

北斗「天使だったね」

雪歩「天使ですね~。天使といえば冒頭の一言ですよ」

北斗「『今日も見に来てくれた会場のエンジェルちゃんたちに素敵な時間をプレゼントするよ!』ってやつかい?」

雪歩「ああいう格好いいセリフがスラスラって出てきたら素敵だと思うんです」

北斗「雪歩ちゃんも俺に惚れ直してくれたかな?」チャオ



    ススス…
 雪歩))    マイク 北斗



北斗「うん、君の気持はよくわかった」

<私もちょっとやってみていいですか?

北斗「戻ってきてからにしようね」

 

北斗「じゃあもう一回入りの部分からやってみよう――――――」



レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





北斗「チャオ☆ 961プロと765プロのドリームユニット『ダイヤモンドダスト』、ヨロシク!」

雪歩「わたくし萩原雪歩とこちら伊集院北斗でやっていこうと思いますぅ!」

北斗「今日も見に来てくれた会場のエンジェルちゃんたちに素敵な時間をプレゼントするよ!」

雪歩「よぉし、私も今日は会場のデビルくんたちに微妙な時間をプレゼント!」

北斗「待とうか」

雪歩「どうでしたか?」

北斗「今どこからツッコむべきか考えてるところだよ」

雪歩「北斗さんを真似てみたんですが」

北斗「デビル君ってのは何だい?」

雪歩「ターゲット層はズラしたほうがいいかなあと」

北斗「仮に相手がデビルでも微妙な時間をプレゼントするのはマズいって。俺達アイドルだよ?」

 

雪歩「でもやっぱりああいう歯の浮くようなセリフは勇気が出なくて……」

北斗「そうだね、こういうのはどうだろう」

雪歩「ぽぇ?」

北斗「雪歩ちゃんは今から勇敢な勇者。俺が人間界征服を企む悪い魔王を演じるから、君はそれを倒しに来るんだ」

雪歩「勇気のある人になりきることで、その役から勇気を貰っちゃおうってことですね」

北斗「その通り」

雪歩「ついでに流れの中で格好いいセリフを言っちゃおうと」

北斗「グレイト」

雪歩「まさかのアンカーズとコンセプトが丸被り」

北斗「言わなくていいんだよそういうのは……」

雪歩「最後は北斗さんが空気を読む魔王になって……」

北斗「内容は被らないようにしよう! お芝居は得意だったよね?」

雪歩「は、はい! これなら私にも何とかなりそうですぅ……!――――――」

 

北斗「――――――はっはっは! よく来たな勇者よ」

雪歩「魔王め、私が来たからにはお前の悪逆無道もここまでですぅ!」

北斗「飛んで火にいる夏の虫とはこのことだ。お前を倒して人間界を征服してやろう!」

雪歩「こっちだって今日こそお前の後ろからこっそり近づいて耳元で『わっ!』て言って『ひゃっ!?』ってさせてやりますぅ!」

北斗「発想がかわいいね雪歩ちゃん!」

雪歩「ダメでしたか?」

北斗「相手は世界征服を狙う悪い魔王だよ?」

雪歩「もっと勇ましい感じで?」

北斗「そうそう」

雪歩「分かりました。もう一度お願いしますぅ!」

北斗「はっはっは! よく来たな勇者よ」

雪歩「魔王め! 今日こそおんどれのドタマぁかち割って脳味噌スプーンでグッチャグチャにかき混ぜたるけぇ首洗って待っとれぃや!!」

北斗「今度は怖すぎる!」

 

雪歩「目には目を、非道には非道をと……」

北斗「アドバイスを柔軟に取り入れるのはいいことなんだけれどなぁ」

雪歩「あ! いきなり頭じゃなくて、手足から潰した方がよかったですかね?」

北斗「いたぶる気満々じゃないか! 『お前を倒して世界の平和を取り戻す!』だけでいいんだよ」

雪歩「なるほど……ここでお前をやっつけて、世界の平和を取り戻してやりますぅ!」

北斗「そうそう、難しく考えなくていいのさ」

雪歩「でも魔王と戦うってどうすればいいんでしょう……」

北斗「『伝説の武器でお前を倒す!』みたいなのでいいんじゃないかな」

雪歩「ならばこの先祖代々伝わる伝説のユンボで」

北斗「重機は持ち出さないで!」

雪歩「一撃必殺ですよ?」

北斗「だからマズいんだよ」

雪歩「ああ! いたぶれないから……」

北斗「そうじゃないよ! せめて手に持てるくらいの武器にしよう」

雪歩「ならばこの先祖代々伝わる伝説のチャカで」

北斗「手に持てるけどそれはもっと駄目だ!」

 

雪歩「なら……この伝説のドスで?」

北斗「OK、雪歩ちゃん一回極道からは距離を置こう」

雪歩「えっと、ならばこの勇者にだけ使える伝説のスコップで!」

北斗「それなら雪歩ちゃんらしくていいね。そのスコップでどうしようというのかな?」

雪歩「えっと、まずこの辺に穴を掘って……」ザクザク

雪歩「上から盛り土で穴を隠して……」ポンポン

雪歩「さあ、堂々と正面からかかってこいですぅ!」

北斗「引っかかるわけがないだろう!」

雪歩「さすがは魔王、私の完璧なトラップが見破られるなんて……!」

北斗「相手の立場に立って考えるって大事なことだよ雪歩ちゃん」

雪歩「ハッ! そうですよね、自分から攻めていかなきゃ待ち伏せを警戒されますよね……」

北斗「うーん反省する姿勢だけは評価したい」

雪歩「褒められた」フンス

北斗「それにせっかくの伝説の武器なんだからもっとちゃんとした使い方しようよ」

雪歩「スコップは穴を掘る道具ですよ?」

北斗「どうしようぐうの音も出ない正論だ」

 

雪歩「さすがにこれで直接叩いたらすっごく痛そうですし……」

北斗「さっきはドタマかち割るとかユンボで一撃必殺とか言ってなかったかい?」

雪歩「いえ、持ってる私の手の方が」

北斗「雪歩ちゃんって割と世界が自分を中心に回っているね」

雪歩「隙ありー!!」ブンッ

北斗「おっと!」ヒラリ
                                                            ガシャーン!>
雪歩「くっ、避けられた……!」

北斗「意外と油断も隙もないね……。それにしてもさすがは勇者の一撃。この魔王城の壁をいとも簡単に破壊するとは」

雪歩「いえ、単にお宅の壁が脆かっただけですよ」

北斗「えっ」

雪歩「うわっ……これ表面は大理石っぽく塗装してあるけどベニヤ板のハリボテじゃないですか」

北斗「そんな安普請なのかい!?」

 

雪歩「鉄筋の代わりに竹ひごで補強してあるし……」

北斗「手抜きもいいところじゃないか!」

雪歩「これじゃいざ勇者が攻め込んできたときとか大変じゃないですか?」

北斗「今まさにそのシチュエーションなんだよなぁ」

雪歩「そんなあなたに勇者の一撃にも耐える頑丈リフォーム! お申し込みは萩原組まで!」

北斗「実家の宣伝!?」

雪歩「あ、これ名刺です」スッ

北斗「おっと、これはご丁寧にどうも……」

雪歩「隙ありー!!」ドカッ

北斗「本当に油断も隙も無い!」

雪歩「これでとどめです、魔王!」

北斗「まあいいか……さあとどめの一撃と同時に格好いいセリフを!」

雪歩「今日は会場のデビルくんに微妙な時間をプレゼントーーーーー!!!」

北斗「デビルくんって俺のことだったのかい!?」

 

雪歩「うぅ……やっぱり何もうまくいかないですぅ……」

北斗「そう落ち込まないで、雪歩ちゃん」

雪歩「せっかく北斗さんに手伝ってもらったのに、結局私はいつまでも勇気の出せないダメダメでひんそーでちんちくりんな……」

北斗「そうかな? セリフはともかく、勇気は十分に出せていたと思うよ」

雪歩「えっ……?」

北斗「見てごらん。漫才が始まった時にはあんなに離れていた俺たちの距離が」



          マイク 雪歩 北斗



雪歩「あ……」

 

北斗「どうだい。雪歩ちゃんが一歩踏み出せば、苦手なものなんてこんなに簡単に克服できるんだよ」

雪歩「あ、ありがとうございます!」

北斗「これで、俺と雪歩ちゃんとの間にある心の壁も取り去れたんじゃないかな?」チャオ

雪歩「はい! だからこれからは」



歩        マイク 北斗



<リフォームしてもっと頑丈な壁をつくることにしますぅ

北斗「もう見切れちゃってる! やめさせてもらうよ」

雪歩・北斗「「どうも、ありがとうございました! チャオ☆」」

 

小鳥「『ダイヤモンドダスト』のお二人でした!」

P「雪歩は自然な感じで漫才出来てましたね」

北斗「やぁ、お疲れ様☆」チャオ

P「お、ダイヤモンドダストが帰ってきましたね! それではさっそく今日の感想を……」

雪歩「あばばばばばばばばばばばばば」ガクガク

P「めっちゃ震えてる!?」

北斗「ネタ中ずっと我慢してた反動がやってきたみたいで……」

P「ど、どうした雪歩! そんなに北斗にトラウマになるようななにがしをされたのかッッ!?」

雪歩「い、いえ! 北斗さんは怖いことしてないというか逆にとても気を使っていただいたんですけど……」

小鳥「だけど?」

雪歩「ほら、いぬ美ちゃんがいい子だってわかっててもやっぱり犬は怖いとかそういう感じなんですぅ……」

P「いぬ美と同じ扱いなのか……」

小鳥「声が似てますからね」

P「では審査員のみなさん点数をお願いします!」



相も変わらず点数50~100点の間で安価下1~4

 

善澤 100
黒井 80
日高 82
高木 73

P「なんと合計は335点です!」

小鳥「ということは、順位は……!」

1:335 ダイヤモンドダスト
2:301 フラット2
3:266 アミアマミ

小鳥「フラット2を抜いてトップになりました!!」

P「これは審査員のみなさんに伺ってみましょう! 舞さんいかがですか!」

舞「ねえゼノグラシアって私や愛の出番ないの?」

P「美希すらいない時代ですからね……」

小鳥「社長、どうでしょう?」

高木「いやぁ、良かったんだけれど……萩原君のイメージは大丈夫なのかね?」

小鳥「ま、まあネタの中の話ですから……」

P「そしてなんと100点! 善澤記者いかがでしたか!」

善澤「私は逆に萩原君の成長を感じたねぇ。苦手意識が残っているとはいえ、物怖じしなくなってる。伊集院君のフォローも素晴らしい」

小鳥「べた褒めですね!」

 

P「ということでここで残念ながら4位となってしまいました、エイティーシックス……!」

響「うぎゃー! 悔しいぞ!」

あずさ「やっぱりこのユニット名じゃ88には勝てないのかしら……」

小鳥「何のことかわかりませんが……お二人ともよく頑張りましたよ!」

響「うぅ、やっぱり幸運の壺の効果なんてなかったんだ……」

あずさ「あ、そこはネタじゃなかったのね……」

P「ではお疲れ様でした! ダイヤモンドダストのお二人は暫定ボックスでお待ちください!」

雪歩「あ、す、すみません。ちょっと椅子離してもらってもいいでしょうか……」ビクビク

北斗「構わないよ。これは口説き落とすにはまだまだ先は遠そうだ」チャオ

小鳥「さあついにここまでやってまいりました! ラストを飾ってくれるのは、このコンビです!!」

 






――― コントラスト ―――

 トリを務めるのは、生っすか!?の司会でもおなじみ如月千早と星井美希!
 765プロ屈指の才能を誇る二人は、お笑いというステージでどんな関係を見せるのか!

<<エントリーナンバー08 『relations』!!>>



 



レディゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴー





美希「はいどうもー『relations』よろしくなのー!」

千早「さて、今回は私と美希の二人で漫才をするわけだけれど」

美希「ミキと千早さんはとっても仲良し! 今日はみんなにそれを教えてあげるの!」

千早「そうね、この機会にぜひとも私達のあふぅの呼吸を見せつけてやりましょう」

美希「それじゃミキがあくびしたら終わっちゃうよ」

千早「あら、間違えたかしら?」

美希「そういうときは『あうんの呼吸』っていうんだよ」

千早「ふふ、美希は賢いわね」ナデナデ

美希「えへー」

千早「それでは気を取り直して、私達のんあーの呼吸を」

美希「千早さん!」

 

千早「どうしたのよ一体?」

美希「どうしたのじゃないの。同じ過ちは二度繰り返しちゃダメだって思うな」

千早「同じじゃないわ。一度目は美希の持ちネタ、二回目は私のよ」

美希「千早さんの持ちネタってわけでもないよね?」

千早「だって、『……くっ』の呼吸なんて息が詰まりそうじゃない」

美希「ネタにしなくていいって言ってるの! もう、千早さんがそんなだといつまでも本題に入れないよ?」

千早「ごめんなさい、美希とのおしゃべりがとても楽しくて……」

美希「そんなことを言われたらもう許すしかないの」

千早「気を取り直して、私達がいかに以心伝心しているかをみなさんに見せつけてあげましょう」

美希「はいなの!」

千早「さて、こうして二人で漫才をさせてもらうわけだけれど」



prrrr prrrr

美希「あ、お姉ちゃんから電話だ」ピッ

 

千早「実を言うと二人組、つまりデュオやデュエットって」
                                              モシモシー ウン イマホンバンチュウダヨ>
千早「今のアイドル界隈ではあまり主流じゃないのよね」
                                              エッ オネエチャン コクハクサレタノ?>
千早「ソロやトリオ、オールスターもいいけれど」
                                              フーン アイテハドンナヒト?>
千早「二人だからこその歌の良さというのもあるものなのよ」
                                              コウハイノ…ドウセイ? オンナノヒトニ コクハクサレタノ!?>
千早「最近は『ロック・ザ・ビート』や『レッドショルダー』など」
                                              ソンナコトマデサレタノ…? ソレハ タイヘンナノ…>
千早「デュオユニットも増えてきたのはとてもいいことね」
                                              ガンバッテネ コッチモキヲツケルノ…ジャアネー>
ピッ

美希「ふぅ、衝撃的な内容の電話をもらってしまったの……」

千早「もちろん、美希とも二人で歌う機会があればと……って美希、話聞いてた?」

美希「え? あ、う、うん全然大丈夫チョベリグのバッチグーなの!」

千早「なんだか言い回しが古い気もするけれど……まあいいわ」

美希(まずい……全然聞いてなかったの。話題を変えないと!)

美希「そ、そういえばね! さっきお姉ちゃんからの電話……じゃなかった! この前お姉ちゃんから聞いた話なんだけど」



prrrr prrrr

千早「あら、春香からの電話だわ」ピッ

 

美希「なんとね! お姉ちゃんが告白されたらしいの!」

<モシモシハルカ? エエ イマホンバンチュウヨ

美希「それ自体はよくあることなんだけどね、まあミキのお姉ちゃんだし」

<ソウソウ デュオ デュエットニ ツイテノネタヨ

美希「でもそのお相手というのがなんと後輩の女の子らしいの!」

<ナツカシイワネ ムカシハ ハルカトモ…

美希「しかも、なんかその場の流れで女の子同士なのにちょっぴりイイ雰囲気になっちゃったんだって……」

<アマミ ハルルンニ マケナイヨウニ ガンバルワ フフッ ソレジャネ

ピッ

千早「もう、春香ったらこんなタイミングで電話してくるなんて」

美希「びっくりだよね。ちょっとミキにはよくわからないのー……って千早さん、話聞いてた?」

千早「へ? え、ええ大丈夫よちゃんと聞いてたわモチのロンよ!」

美希「なんか古くない? ……まあいいけど」



千早(美希が何の話をしてたのか全く聞いていなかったわ……。きっと私のデュオユニットの話を引き継いでくれたのよね?)ボソッ

美希(よし、これで話題は同性同士の恋愛ってよくわかんないって方向に持っていけたはずなの……)ボソッ

 





美希「ミキ的にはそういうの理解できないんだけど、千早さんはどう思う?」

千早「あら、私はとても素敵なことだと思うわ」

美希「!?!?!?!?」



 

美希「千早さんそういうのに興味あるの!?」

千早「そうね。でも、興味をもったのは割と最近のことなのよ」

美希「も、元からそういうシュミだったわけじゃないんだね……」

千早「ええ、昔は一人でできればそれで満足だったから」

美希「ヒトリでするってのもなんか生々しいの……」

千早「幼稚園ぐらいの頃は家の庭や近所の公園が私のステージだったわ」

美希「幼稚園ですでにそういうことに手を出してたの!?」

千早「ええ」

美希「しかもいきなり野外!?」

千早「だから、そういう二人っきりの関係っていうのは実はこうして芸能界に入ってからなのよ」

美希「そうなんだ……それまではずっと一人で?」

千早「基本的にはそうだけれど、学校では部活に入って同級生や先輩後輩たちと励んでいたこともあったわね」

美希「部活!?」

 

千早「そんなに珍しいことでもないでしょう?」

美希「いろいろすっ飛ばしていきなり複数人はさすがにレベルが高過ぎるんじゃないかな……」

千早「複数人って言っても小規模なものだったから、20人そこらよ?」

美希「十分すぎるって思うな!」

千早「学校側もあまり力を入れてるわけではなかったし」

美希「むしろ学校が認めてる方がおかしいの!」

千早「大会だって県予選に残ればいい方だったもの」

美希「県はなんてものを主催してるの!?」

千早「結局私には合わなくて、高校でやめてしまったのだけどね」

美希「やめて正解なの!」

 

千早「それから私は765プロに入って……」

美希「え、ちょっと待って千早さん」

千早「なにかしら?」

美希「芸能界に入ってからってことは、初めては事務所の誰かと……ってこと?」

千早「ええ、初めては萩原さんだったわね」

美希「雪歩!?」

千早「あれ、美希は知らなかったかしら?」

美希「初耳なの……」

千早「そういえば当時はプロダクション内でも、他のメンバーの活動って互いにあまり知らされなかったわね」

美希「そんなの知らされてもリアクションに困るよ!?」

千早「プロデューサーも伝えてくれればいいのに……」

美希「事務所公認!?」

千早「公認もなにも、企画立案したのがプロデューサーよ」

美希「見損なったのそこの人ぉ!!」

 

千早「萩原さんは『他の誰かと一緒に』ってこと自体初めてだったみたいで」

美希「そりゃそうだって思うな……」

千早「だから最初はなかなかうまくいかなかった」

美希「当たり前なの」

千早「だけど彼女は決して逃げることだけはしなかったわ」

美希「抵抗を諦めただけなんじゃないかな」

千早「逃げていたのは私の方ね。独り善がりに自分のやり方ばかりを押し付けて、萩原さんのことを見ようともしていなかった」

美希「思った以上にサイテーなの」

千早「それでも何度も繰り返し重ね合わせるうちに」

美希「何度も重ねあわせたんだ……」

千早「萩原さんのひたむきさに私も惹きこまれて、徐々に心を通わせていって……」

美希「うわぁ……」

千早「互いが一つに溶けあって体中を包み込むような、二人だからこその心地よさにいつしか私は虜になっていたの」

美希「開けちゃいけない扉を開いちゃったんだね……」

千早「最後は萩原さんもノリノリで声を張り上げていたわ」インフェルノー!

美希「雪歩もしっかり汚染されてるの……」

千早「それからは私の活動も波に乗って、たまに春香と組んだりもしたわ」

美希「それだけやっといてあっさり雪歩を捨てて他の女に乗り換えたの!?」

 

千早「捨てただなんて人聞きの悪い。今でもたまに組んでるわよ」

美希「余計タチが悪いの!」

千早「あとは真とも組んだし、我那覇さんとの経験もあるわね」

美希「もうドロドロなの!」

千早「そうそう! 他にも『お料理さしすせそ』にゲスト出演した時に、高槻さんと一緒に披露したこともあるわ」

美希「お茶の間になんてもの流してるの!?」

千早「う……た、たしかにあの時はうまくできなかったけれど……」

美希「うまくできればいいってものでもないよね!?」

千早「お陰で終始高槻さんに引っ張られっぱなしだったわ」

美希「しかもやよい攻め!?」

千早「私も精進あるのみね」

美希「そんな精進しなくていいって思うな!」

 

千早「ところで、美希はまだ『二人で』っていう経験はないの?」

美希「あるわけがないの!」

千早「意外ね……とっくに済ませていると思っていたわ」

美希「ミキそんな目で見られてたの!?」

千早「たしかにここ数年はソロか三人一組が主流だから、二人組ってあまり見ないけれど……」

美希「え、いつの間に3Pがスタンダードになってるの?」

千早「もう、とぼけちゃって。『フェアリー』だってそうでしょう」

美希「フェアリーはそんないかがわしいユニットじゃないよ!?」

千早「765プロ以外だと今日共演してる『ジュピター』だってそうだし」

美希「ジュピター!? あの三人もそんな関係だったの!?」

千早「何言ってるのよ、見るからにそうじゃない」

美希「どうしようこれからジュピターをどんな目で見ればいいかわからない」

千早「あとは『新幹少女』に『ディアリースター』、『魔王エンジェル』とか『ニュージェネレーション』でしょ? それに……」

美希「芸能界って闇が深いの……怖いの……」

 

千早「フェアリー以外だと美希は一人上手って印象が強いわね」

美希「それはそれでヤなイメージなの!」

千早「そう? 私はソロの姿が映えるのはアイドルとして素晴らしいことだと思うわ」

美希「そういうものなのかな……」

千早「結構単独での場数は踏んでるでしょう?」

美希「そ、それは、ここ一年はずっと週に1~2回くらい……」

千早「そんなに!?」

美希「や、やっぱりこれって多いのかな……?」

千早「多いも何もやり過ぎよ! 一体どんな無茶なスケジュールを組んでいるの!?」

美希「スケジュール組んでやってるわけじゃないよ!?」

千早「あら、私はずっと事務所で調整してもらっているし、他のみんなもそうだと思っていたのだけれど……」

美希「え、これミキが間違ってるの?」

千早「竜宮小町だって律子が三人のスケジュールを細かく管理しているわよ」

美希「律子ぉ!!」

 

千早「亜美が最近はご無沙汰だからもっと三人一緒の活動を増やしてほしいって愚痴っていたわ」

美希「あー、律子はそういうの厳しそうなの……」

千早「それにしたっていくらなんでも美希のペースはやり過ぎだわ」

美希「そ、そんなでもないと思うんだけど……」

千早「馬鹿なことを言わないで! しっかり休まないと、いつか倒れて一生できなくなるかもしれないわよ!」

美希「そんなに深刻な問題なの!?」

千早「私は美希のカラダを心配して言っているのよ!」

美希「言い方がイヤラシイの!」

千早「本当に心配なのよ?」

美希「あ、で、でも! 最近はずっと忙しかったから、全然できてないの!」

千早「たしかに最近の美希はトークやバラエティに引っ張りだこだから、そっちのお仕事はあまり来てないみたいね」

美希「そんなお仕事来ても困るよ!?」

 

千早「美希はまだ未経験、か。ふむ……」

美希「すっごく嫌な予感がするの……」

千早「ねえ、美希の初めての相手、私となんてどうかしら?」

美希「冗談じゃないの!!」

千早「実は、前々から美希とはいずれやってみたいと思っていたのよ」

美希「ずっとそんな目で見られてたの!?」

千早「大丈夫よ。美希は不安かもしれないけれど、私は慣れてるから安心して任せてちょうだい」

美希「ちっとも安心できないの!」

千早「きっと相性もそれほど悪くないと思うわ」

美希「相性以前に考えるべきことがあるって思うな!」

千早「そ、そうよね……。一人で勝手に舞い上がってしまっていたわ」

美希「分かってくれたみたいでよかったの……」

千早「まずはちゃんと正式な企画としてプロダクションを通さなきゃ」

美希「通るわけがないよね!?」

 

千早「そう? 案外社長も面白がって採用してくれるんじゃないかしら」

美希「うちの事務所は一体どうなってるの!?」

千早「もし駄目ならその時は二人でこっそり練習して、ストリートでゲリラ公演っていうのも面白そうね」

美希「そんなことしたら間違いなく警察沙汰だよ!」

千早「う、た、確かに……それを敢行するには私達も有名になりすぎちゃったわね」

美希「無名だったらやってもいいとかそういう問題じゃないの!」

千早「そんなに私とするのは嫌?」

美希「嫌っていうか、その……そういうのは」

千早「そういうのは?」

美希「本当に……す、好きな人同士じゃないとやっちゃいけないって思うな!」

千早「あら、そんなこと」

美希「そんなことじゃないの! シンコクな話で」

千早「私は美希のこと好きよ」

美希「え――――――」

 

千早「最初は全然真面目じゃない美希にイライラしたり、そのくせなんでも涼しくこなすから嫉妬したりもしたけれど」

千早「いつしか自分で目標を見つけて、ひたむきに、一生懸命になって」

千早「挫折して、投げ出しそうになって、それでも立ち上がって、そして前よりもっとずっとキラキラと輝きを増していって……」

千早「そんな美希の歌を、美希の姿を、美希のすべてを、私は好きになったわ」

美希「千早、さん……」

千早「美希は、私のこと嫌い?」

美希「…………」

千早「…………」

美希「そんな風に聞くのは、ヒキョウだって思うな……」カァァ

千早「もちろん、美希が困るなら今すぐに返事がほしいとは言わない」

千早「でも、少しだけ考えてもらえたら嬉しいわ」

美希「……千早さん」

千早「?」

美希「ほっぺこっちに向けて」

千早「こう?」グイッ





チュッ

 

千早「っっ!!」

美希「その……ごめんね? ちょっと今心の中がグチャグチャで、すぐに返事は出せないけど……」

美希「でも、気持ちの整理ができたら……そしたらちゃんとお返事するの!」

千早「…………」

美希「だから、今日はこのくらいで勘弁してほしいの……」

千早「い……」プルプル

美希「……い?」

千早「いきなりなんてハレンチなことをするのよっ!!///」カァッ

美希「ええー……」

千早・美希「「どうも、お粗末さまでした(なの)」」ペコリ

 

小鳥「『relations』の二人でした!

P「……最後の最後で想像を絶するネタが来ましたね」

小鳥「キマシたね……。まさかこの二人がこんな方向性で来るとは……」

美希「みきタチハ 素人ダカラ 捨テ身ノ 覚悟デ ネタヲ 作ラナイト イケナイト 思ッタノ」カタカタ

千早「トテモ ヨイネタガ 出来タト 思イマス」カタカタ

P「ど、どうしたんだ二人とも!?」

小鳥「なんだか顔に生気がありませんが……」

千早「ハヤク 採点ヲ オ願イシマス」カタカタ

P「そ、それでは審査員のみなさん、点数をお願いします!」

千早(どうか、神様……!)

美希(50点×4でお願いなの……!)



点数50~100点の間で安価下1~4

 

善澤 100
黒井 90
日高 83
高木 50

P「なんと合計は323点です!」

小鳥「つまり、順位は……!」

1:335 ダイヤモンドダスト
2:323 relations
3:301 フラット2

小鳥「フラット2を抜いてなんと第二位です!!」

千早・美希「」

P「これはさっそく感想を聞いてみましょう!」

黒井「下品さとジュピターへの侮辱で多少減点させてもらったが、なかなか面白い噛み合いじゃないか」

P「ユニット企画を通す下りで腹抱えて笑ってましたからねクロちゃん」

黒井「クロちゃん言うな!」

舞「以前見たときはつまらないアイドルだなんて思っちゃったけれど、イキイキしたパフォーマンスができるようになってるじゃない!」

小鳥「お、お眼鏡にかなっちゃった感じですかね?」

舞「ええ、今のあの子たちなら一度ライブでやり合ってみたいくらいね」

小鳥「ひえぇ……」

善澤「やっぱり成長が見て取れる。日高君も言っているけれど、前は二人ともあんな見事な表情はできなかったからね」

P「ありがとうございます!」

千早・美希「」

小鳥「おっと、この二人も嬉しさのあまり固まってしまってますね!」

 

美希(ち、千早さん、どういうことなの!? 一本やれば終わりなんじゃないの!?)

千早(そんな、なぜ……!? 私の分析では下ネタは評価が低くなるはず……!)

美希(ミキたちのネタ、ネタが作れなかったから、前に本当にやらかしたスレ違い純度100%の生き恥なんだよ!?)

千早(そう……だから一本だけ全力でやりつつ、低評価をもらって脱落する手はずだったのに……!)

P「………………や、……き、……早」

美希(あんなのもう一本やらなきゃいけないの!? こんな時に途中の辛口審査員は一体どこに行っちゃったの!?)

高木(すまない……君たちの事情を知っていたから私は低評価を付けたが、一人では力不足だったよ……)

P「千早! 美希!」

千早「!!」

美希「は、はいなの!」

P「今の感想を一言でどうぞ!」

千早「え、あ、えーっと……! 逃げ出したいです!」

美希「穴掘って埋まってるの!!」

P「どうしたの二人とも!?」

小鳥「ど、動転してるんですかね? ではひき続きこのまま決勝戦――――――」

 

P「いえ、決勝戦やる時間はないのでこのまま表彰式に移ります」

小鳥「えっ」

 

P「実はどの組もネタが長すぎて時間が押しちゃいまして、もう生っすかの放送時間が終わっちゃうんです……」

小鳥「なんと」

千早「ってことは……」

美希「2本目はやらなくていいの……」

P「うん、すまんな……」

千早・美希「「よ、よかったぁ~……」」

雪歩「よかったぁ~……」

北斗「雪歩ちゃんも二本目やりたくなかったのか……」

雪歩「ステージの上で男の人と二人きりだと生命力がどんどん削られて……」

北斗「そんなに無理させてたのかい!?」

 

P「というわけで、現在の順位そのままに」

1:335 ダイヤモンドダスト
2:333 relations
3:301 フラット2

P「という結果になりました。おめでとうございます!!」

雪歩「な、なんだかよくわからないうちに優勝しちゃいましたね……」

北斗「雪歩ちゃんが勇気を出した結果だよ」チャオ

千早「二位ニ ナレテ ウレシイナ」カタカタ

美希「バンザーイ ナノ」カタカタ

やよい「うっうー! もっと野球の良さを伝えられるように頑張りますー!」

真「三位かぁ。決勝があれば自慢のネタでひっくり返してやろうと思ってたのに……」

P「そんな真に朗報です」

真「なにさ?」

P「>>9で豪華賞品が用意してあるって言ってたじゃない?」

やよい「言ってましたね」

P「というわけで、3位までのコンビには豪華商品として、今度行われるお笑い番組への出演枠をプレゼント!!」

美希「じゃあ結局漫才やらないといけないの!」

雪歩「もうやめさせてもらいますぅ!」ペチ

P「どうも、ありがとうございました」

 

M@S-1グランプリ 終



この番組は

・なんというか
・いろいろと
・すみませんでした

の提供でお送りしました

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