名も無き山の中
登山道どころか獣道すら続いていない隔絶された小さな空間
木々に囲まれた場所のまんなかにひっそりと祠が建っていた
小さい石造りの祠はしばらく手入れされた様子が無く、向こう何十年も放っておかれたいたかのようだ
ただ一つ、石に彫られただけの観音開きの戸に新品に見える札が張ってある
「これか」
祠に近づいてみる
ザァアと風が足の合間を駆け抜けていった
木々がざわめく
風が止んで尚
木の葉がさざめき、枝が揺れ動く
風も無いのに意思を持っているかのように枝が、幹が、木が
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その異様な景色が全体に広がっている。天をも伸びた枝が覆い、太陽光を遮りだした
「さっきは、もう少し、明るかっただろ…」
自分の意識を強く保つために出した言葉は震えており、むしろ自身を不安に落とし込んだ
それがトリガーだったか、せきどめられていた恐怖があふれ出し本能が悲鳴を上げた
「助けてくれぇ!」
祠に背を向けて走り出した。この広場から、この山から、離れるんだ
ガタガタガタガタ
バン!
扉が開いた音がした
あの祠に開く戸など無かったのに
ハラリ、とお札が剥がれ落ちた
男「休日ってのはどうしてこんなに暇かねえ」
布団に潜って天井を見つめる
猫又「主よ、暇ならあそんでくりゃれ」
そんな優雅な寝たまま日和に邪魔者一匹
男「顔にケツ乗っけんな」
猫又「にひひ、これが人の女子だと妄想しておれば良い」
男「他の奴と遊んでいろよー」
二股に分かれた尻尾が叩いてくる
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