勇者「最後まで顔は見れなかった」(53)


勇者「やっとここまで…」

魔法使い「一年近くあちらこちらを旅しながらコツコツ魔物を倒してきた甲斐があった」

武闘家「装備に問題はない」

僧侶「魔力も十分です!」

魔法使い「道中の回復ポイントが大きかったな」

武闘家「魔王め…人間には何もできないと舐めているのが運の尽きだ!」

勇者「皆!いくぞ!この扉の向こうに魔王がいる!最終決戦だ!」

「「「おお!」」」

勇者「いざっ!!魔王ーーー!!」ググ


勇者「んん?」グッグッ

「………」

勇者「…最終決戦だ!いくぞ!」

「「「お、おう!!」」」

勇者「ふっ」ググッ

魔法使い「……重いの?扉」

僧侶「重厚ですもんね」

勇者「いや、ちょっと…まって…」

武闘家「はは、退いてろ。開けるのは俺がやろう」

勇者「…悪い、頼む」

僧侶「確かにこういうのは武闘家さんが向いてますね」

魔法使い「パワータイプだからな」

武闘家「そうだなっ…っと」ググ

武闘家「あ?」グッ

「………?」

武闘家「…これ、開かないな…」

勇者「だよね!?」

僧侶「そんなに重いんですか?」

勇者「重いとかそういうレベルじゃない」

魔法使い「仕方ないな、皆で押そう!」

僧侶「そうですね!」

「「「せーっっのっ!」」ググッ

「「「………」」」

魔法使い「なにこれ?」

僧侶「手応えが全くないですね」

勇者「なんか壁押してる感覚だよね?」

武闘家「…壁なんじゃないか?」

勇者「ノブはついてるんだけどな」

魔法使い「飾りなんじゃないの?」

僧侶「壁にドアノブの飾りってトリックアートですね」

武闘家「あー…え、本当に飾りなのか?」

勇者「まさか、向こうから魔物の気配ビンビン感じるもん。地図的にも広間っぽいし」


魔法使い「んー?何で開かないんだろう?」

僧侶「あっ!!」

僧侶「鍵っ!!最後の鍵ですよ!

魔法使い「おおっ!それだ!」

武闘家「なんだ、考えてみたら単純だったな」

勇者「最近は宝箱位しか使わなかったから忘れてた」

魔法使い「ダンジョンはフリーばっかだったもんな」

僧侶「モンスターはあまり鍵をかける習慣ないんでしょうね」

勇者「ないよ」

武闘家「そうか、やはりそんな習性はないか」

勇者「鍵穴が…ないよ?」

「!?」

魔法使い「本当だ…」

武闘家「鍵がかかってるわけじゃないのか…?」

僧侶「じゃあなんで開かないんです?」

勇者「わかんない」

武闘家「なんかさっきの打倒魔王決意がどんどん擦りへってくぞ」

僧侶「扉が開かないんですもんね」

魔法使い「まいったな」

武闘家「仕方ない、破るか」

勇者「この扉を!?」

魔法使い「流石に厳しくないか?木製なら兎も角」

武闘家「いや、俺の装備ならいけると思う」

勇者「確かに!」

僧侶「この魔王城で拾ったツメの装備ですか?

魔法使い「そんなに強そうでもないけどな」

勇者「これ、辞典によるとオリハルコンなんだ」

僧侶「世界で一番硬く丈夫なツメじゃないですか!」

武闘家「ちょっと退いてろ」

勇者「頼むね!」

武闘家「ハアアアアアァァア!!」

僧侶「気合まで溜めてますね!」

魔法使い「扉相手にモタモタはしてられないもんな」

武闘家「ハアッ!!」ガキ-ンッキィィン!ギャリギャリ!キィ-!

「………」

勇者「無傷」

僧侶「嫌な金属音しただけでしたね」

魔法使い「いや、無傷ではない!白っぽい筋は残ってる!」

武闘家「なんなのもう」

勇者「ツメも壊れてはないけど扉もほぼノーダメージじゃあ意味ないな」

魔法使い「それ、本物のオリハルコンなのか?」

武闘家「…パチモンか」

勇者「魔王城で拾ったもののクオリティってこんなもんなんだな」

魔法使い「ガッカリですね…」

扉<「言わせておけば好き放題言いおって!本物のオリハルコンだ!バーカ!バーカ!」

勇者「!!」

武闘家「…やはり向こうに誰かいるな」

魔法使い「バーカて…」

僧侶「オリハルコン本物なんですか」

勇者「オリハルコンのツメでちょっと傷がつくくらいの扉なんか存在しないと思うけど…」

僧侶「じゃあこの扉は何製なんでしょうね?」

武闘家「鉄や青銅じゃなさそうだな」

扉<「オリハルコン」

勇者「え」

扉<「オリハルコン製」

魔法使い「…なるほど、じゃあオリハルコンのツメじゃ互角か」

扉<「あとメタルキングのコーティングと余の魔力を練りこんである」

僧侶「メタルキングのコーティングですか?」

魔法使い「まだメタル系ははぐれメタルしか会ったことないがキングか…」

武闘家「あー…硬そうだな」

勇者「あの…扉の向こうの方につかぬ事をお伺いしますが」

扉<「ん?」

勇者「どなた様ですか?」

扉<「余か?余は魔王だ!首を長くして待っておったぞ!勇者たちよ!」

勇者「やはり!」

魔法使い「魔王…貴様が…!」

武闘家「ここであったが百年目!」

僧侶「その長い首を洗って待っててください!」

扉<「フハハ!扉も開けられないような輩がでかい口を叩くな!」

勇者「くっ…その通り過ぎてぐうの音も出ない」

扉<「余の顔を見れたら首を洗ってやってもいいぞ?見れたならな?」

僧侶「憎たらしいですね」

魔法使い「しかしこの現状ではな」

武闘家「魔王はすぐそこだ、なんとか開けないと」

勇者「どうしたものか」

武闘家「押す、のではないのかもしれないな」

魔法使い「引くのか!」

僧侶「やってみましょう!」

勇者「魔王!覚悟!」グイイ

「………」

武闘家「ダメ、か…」

扉<「プークスクス!覚悟!だってー!引くんだってー!ちょーウケるんですけどー!」

魔法使い「腹立つ!腹立つ!腹立つ!」

僧侶「絶対開けましょう!絶対です!」

武闘家「開けたら出会い頭に正拳突きを一発決めてやる!」

勇者「…この扉ちゃんと調べてみようか」

武闘家「手間だが仕方ないな」

魔法使い「装飾は見事」

僧侶「ちょっと悪趣味ですがこのガーゴイルのレリーフ凄い技術です」

勇者「ノブが一つ」

武闘家「こちらは鍵穴すらなくシンプルだ」

勇者「何よりこの重厚感」

魔法使い「重そうだな」

武闘家「…重い?オリハルコンが?」

勇者「重くないの?」

武闘家「むしろ他の金属より軽く感じるが」

魔法使い「ん?」

僧侶「何かわかりましたか?」

魔法使い「この扉、アストロンの魔法の匂いがする」

勇者「!魔力の干渉を受けるのか!」

僧侶「それなら効力のありそうな呪文がいくつかありますね!」

魔法使い「まずは扉に特化したのからぶつけてみるか」

勇者「よし、いくぞ魔王……!…お前の、最後だ!」

勇者・魔法使い「アバカム!!」

「………」

扉<「ハイ、残念でしたー!溜めて台詞まで言ったのにメタルキングのコーティングしてあるって言ったことすら忘れちゃう残念鳥頭勇者さんたち~はずかちいでちゅね~!」

僧侶「あーそうでした…」

武闘家「いやいや、それならなんでアストロンは効果があるんだ?」

魔法使い「…予測でしかないがオリハルコンに魔力を混ぜながら形成したのではないか?」

勇者「その上をコーティングしたからコーティングが魔力を受け付けないんだと思う…」

休憩。エロバナー邪魔すぎる。間違って押して書き込めないぞ。

扉<「ない頭で考え考えたその推測は合っているぞ!余が直々に魔高炉から魔転炉まで魔力を注ぎ込んだのだ!」

僧侶「時々魔王口調なのが神経を逆なでします!」

魔法使い「そんなんにコーティングされたらアバカムとかじゃどうにもならないな」

勇者「魔力じゃ対抗できなさそうだね」

武闘家「くそっ他に手はないのか!?」

魔法使い「アバカムを強化できる幻の手法ならあるけど…」

僧侶「試しましょう!」

魔法使い「今そんなのは持ってない。一度またあちこち行って村人からヒントを得ながら探さないとダメだ」

勇者「ここまできてそれは嫌だな」

僧侶「今すぐに魔王をミンチにしたいですもんね…」

武闘家「ミンチ?」

僧侶「ミンチです!モーニングスターの実力を見せますよ!」

勇者「ミンチは置いておくとしてもお手上げ状態だね。魔王の声は聞こえるのに」

僧侶「っ!勇者様!それです!」

魔法使い「どれ?」

僧侶「魔王に開けさせるんですよ!」

武闘家「無理だろ」

僧侶「会話はできるんです!任せてください!」

勇者「考えがあるみたいだし任せるよ」

僧侶「ふっふっふっ!魔王!私がパーティにいたのが運の尽きだったなぁ!」

魔法使い「ノリッノリだな」

勇者「こんな生き生きした僧侶は中ボスの頭踏んづけてる時以来」

武闘家「いったいどんな手を思いついたんだろうな」

チャララチャララチャララチャララ
コンココココンッコン
僧侶「魔王っ!雪だr」

「「「!?」」」

勇者「大人の事情によりだいぶカットします」

僧侶「ドアを開けて~♪」

武闘家「今日はいいお天気です」

僧侶「どうして出てこないの~♪」

魔法使い「更に早送りでお届けします」

僧侶「大きな雪だる勇者「アーアーアー」

扉<「あっちへ行って!僧侶!」

僧侶「わかっ…た~よ~」

「………」

僧侶「…ダメでした」

魔法使い「いろんな意味で相手が悪すぎる」

勇者「魔王ものノるな!」

扉<「…今のは中々いい策であったぞ。危うく朝日を浴びるためにドアを開けそうになった」

魔法使い「いいわけあるか!ギリギリだ!」

武闘家「俺たちが凄く頑張ったんだぞ!」

勇者「色々と相手が悪すぎる」

僧侶「しがらみを捨ててこそ人間は大きく強くなれるんですよ!」

勇者「そうなる前に消されちゃったら意味ないよ」

武闘家「まああそこも本来はそこまでは厳しくはないんだけどな」

魔法使い「つけ上がりや油断は命すら危険にさらすものだ!」

勇者「さっきから名言的なものが飛び出してるなあ」

扉<「強大な力に立ち向かうその勇気は褒めてしんぜよう。褒美になぜこのような扉にしたかだけ教えてやろうではないか」

僧侶「雨降って地固まるですね!」

武闘家「いいのかそれで」

扉<「これはな、対勇者の扉だ」

勇者「やっぱり」

扉<「常々感じていたことだが勇者はパーティーを組みやってくる。あまりにも卑怯!余はひとりぼっちだよ?」

僧侶「痛いところ突いてきますね」

扉<「なのでもういっそ入れてやらないことにしたのだ!」

武闘家「しかしなあ、勇者ひとりじゃ絶対に勝てないだろう?」

魔法使い「道中何度も死にかけてるしな」

僧侶「器用貧乏なんですよ」

武闘家「基本的にカリスマ性だけでやってきたようなものだ」

魔法使い「ボスみたいな機転が必要なタイプの戦闘はあまり向いてないんだよね」

僧侶「作業的な戦闘だけです。一掃するのはお得意です」

勇者「突如批難するのやめてよ」

魔法使い「批難なんかしてないぞ?」

僧侶「事実を述べたまでですね」

扉<「…なんか頑張れ」

勇者「そういう優しさいらないから」

魔法使い「そんなこんなしてる間に時間だけが空しく過ぎていく」

武闘家「押しても引いてもダメ、魔力も武器も無効化されてしまうとはな」

僧侶「あと歌もです!」

武闘家「オリハルコンやアバカムがダメなら他の武器や呪文もダメだろう」

勇者(無視した)

魔法使い(無視したな)

扉<(華麗なるスルーだったな)

魔法使い「なあ…魔王、開けてくれないか?いつまでも引きこもりは辛いだろう?話なら聞くから」

勇者「!あのプライドの高い魔法使いが魔王に頼み事を」

武闘家「開かなくてプライドが傷つくの嫌だから口上は無しか。魔法使いらしいな」

僧侶「口上あったほうが盛り上がりますよ?」

勇者「しかし開かないと口上を馬鹿にされるからな」

僧侶「あ、それは勇者様だけですから」

勇者「」

扉<「む…確かに引きこもりは辛いな…」

魔法使い「だろう?いつまでも篭ってはいられないんだし…」

扉<「しかしだな…」

勇者「なんかタカシとカーチャンぽい感じになってきてる」

武闘家「タカシ?タケシだろ?」

僧侶「たけしもありますよ!ブーン系の中でも好きな話です」

勇者「それは新ジャンルになるんじゃないの?ドクオだとブーン系になる」

武闘家「ブーン系にまとめられてるからブーン系なんじゃないか?いや、もしかしたらSSの括りか?」

魔法使い「お前らぁ!!うるさいぞ!人が折角説得してるのに後ろからごちゃごちゃと!」

勇者「ごめんなさい」

扉<「余はブーン系ならやっぱりアルファかなーあな本も捨てがたいけど」

魔法使い「 ったく!…魔王、本当にそろそろ開けて欲しい。折角ここまで来たんだ、頼むよ」

扉<「でも開けたら真っ先に正拳突きが飛んでくるんであろう?」

武闘家「うん」

扉<「さらにモーニングスターでミンチにされるんであろう?」

僧侶「はい!」

扉<「お主ならそれでも開けるのか?」

魔法使い「まさか」

勇者「開けるのはよっぽどの馬鹿だな」

扉<「余は馬鹿ではないから開けないぞ!」

勇者「あー…そっかー…」

魔法使い「そうだよなあ…」

僧侶「なかなかの馬鹿気味だと思っていましたが意外と賢いですね…」

武闘家「また振り出しか」

僧侶「こうなったら火を放ちましょう!」

魔法使い「いや、コーティングに弾かれる」

僧侶「いえ、扉にではなく魔王城にです。特に広間の下を重点的に燃やして煙と熱で追い出すんですよ」

勇者「完全に放火だよ、それ」

武闘家「しかし効果はありそうだな」

魔法使い「煉瓦造りのようだがメラゾーマ連発ならなんとかなるかもしれない」

勇者「その案は却下したい」

魔法使い「なぜ」

勇者「ここ、俺の新居の予定なんだ。王様も話はつけてある」

武闘家「いつの間に」

僧侶「こんなところに一人で暮らすんですか?」

扉<「こんなところとはなんだ!しかも勝手に余の城の譲渡を決めるな!」

勇者「…死亡フラグになりそうだから後回しにしてたけど、今がそのタイミングかもなあ…」

「「「??」」」

勇者「…魔法使い」

魔法使い「なんだよ?」

勇者「君と共に一生をここで過ごしたい。結婚してくれ!」

扉<「エンダァァァアイヤァアアァァアアアアア!!」

魔法使い「えっ?えっ?」

武闘家「おお…生プロポーズだ!」

僧侶「跪くって本当にあるんですね!!いつから付き合ってたんですか!?」

勇者「付き合ってはないよ」

魔法使い「えっあっ、だよな!?」

勇者「だけど、旅をしている間ずっと君を見てきた、結婚を前提に前向きに検討して欲しい」

扉<「ラアユゥーーーーゥウウ!!」

僧侶「勇者様の癖にキリッとしてますね」

武闘家「どこかぼんやりしたやつだと思っていたが決めるときは決めるんだな」

魔法使い「ま、ま、ま、まっ、待ってくれ!」

勇者「ダメだろうか?」

魔法使い「えっダメ、とかじゃなくて…あの、急すぎて」

扉<「ヒューヒュー!」

武闘家「ヒューヒューは古いだろう」

僧侶「古いですね」

勇者「返事はいつでも構わない。今はまだ魔王と対峙すらしてないし」

扉<「開けないからね」

勇者「 ただ、城を燃やすのはやめて欲しい」

魔法使い「わ、わかった!ちがっ!えと、結婚がわかったんじゃなくて!も、燃やさない!」

勇者「ここは振られた時に盛大に燃やす。泣きながら破壊する」

武闘家「その時は手伝うぞ」

僧侶「私も手伝いますね。ただこの城は残ると私は思いますけどね?」

魔法使い「~~~っ!」

武闘家(僧侶の新しい玩具にされるな)

勇者「そんなわけで命拾いしたな、魔王!」

扉<「緊急脱出用の秘密の通路くらいあるからあまり意味ないがな」

武闘家「…ほう?」

一旦停止。ブラウザかー入れておこうかな。Wi-Fiはさっき弾かれたんだけどブラウザ経由ならいけるかな

扉<「言っておくが出口の先は余にもわからん。迷いの森の中なのでな。逆からは侵入できぬぞ」

勇者「迷いの森じゃ探してるうちに食料尽きるだろうなあ」

僧侶「そういえばあの森で食べた魔法使いの作ったシチューは絶品でしたね!良いお嫁さんになれそうです!」

魔法使い「ゃめてぇ…」

武闘家「消え入りそうになってるぞ」

僧侶「真っ赤なお顔が可愛いですね!良いお嫁さんになれそうです!」

魔法使い「」

武闘家(可哀想に)

扉<「リア充してんなー」

勇者「だから仲違いもせずここまでこれたんだよ」

武闘家「そうだな」

扉<「さて、万策尽きたのではないか?」

勇者「いや、もうちょっと考えるよ」

武闘家「魔王は倒せませんでした、と王に報告は出来ないしな」

魔法使い「だな、だね?…ですわ?」

僧侶「急がず徐々に女の子らしい言葉にしていけばいいですよ」

魔法使い「…だな」

僧侶「考えると言ってもそろそろ本当に困りましたね」

武闘家「このままでは飯の時間になってしまうな。まさかこんなところで飯にはなるまいと食事は持ってきてないぞ」

扉<「うすしお味うまい」ポリパリ

魔法使い「魔王はポテトチップス食べてるぞ」

僧侶「お腹すきました…いいお嫁さんなれそうなひとのシチュー食べたいですね」

魔法使い「もうそれはほんといいから!」

勇者「ねえ、魔法使い」

魔法使い「な、なんだ!なんだよっ!?シチューか!?」

勇者「さっき言ってた幻の手法ってどんなの?」

魔法使い「あ、ああ…あれか」

僧侶「動揺かわいいですね」

武闘家「えらいギクシャクした動きになってるな」

魔法使い「昔の勇者が見出したとされる破邪の秘法だ」

勇者様「破邪の秘法…?」

扉<「破邪の秘法だと!」

武闘家「知っているのか」

扉<「…こちらにも伝わっておる。かつての勇者たちはその秘法によりアバカムなどの魔法を最大限に高めたという」

僧侶「魔法を?そんなこと出来るんですか!」

扉<「しかし、もう一つの秘法と共に今では使うものもおらず最早幻となっているはずだ」

魔法使い「私もあまり詳しくは知らない。一説には王家の宝として眠っているとか洞窟の奥深くに封印されているなどと聞く」

僧侶「王家の宝ならいいですが洞窟となるとまた時間がかかりそうですね」

武闘家「しかし、この扉が開く可能性は高そうだな」

扉<「うむ、流石に破邪の秘法まで出てこられるとまずいやもしれん。そこまでは対応しきれていない」

勇者「…俺たちは既に沢山の回り道をしてここまでやってきた」

魔法使い「まあな」

勇者「塔に入るために鏡を探したり」

魔法使い「あそこのモンスター強かったな」

勇者「水門を開けるために熱さましの草を探したり」

武闘家「水門のおっさん元気だろうか。また熱出してなきゃいいけど」

勇者「酷いのになるとなぜか武闘家が踊り子としてステージに…」

僧侶「あれは地獄でした。一部マニアは歓喜してましたが」

魔法使い「思い出させないでくれ…」

武闘家「お前たちがステージに上がりたくないって言ったから俺が出たんだろ!」

勇者「俺はこんな勇者だけどやはり正々堂々と扉を開けて魔王と対峙したい」

魔法使い「ん…」

僧侶「まあ、気持ちはわかります」

武闘家「伝説の最後だしな」

勇者「一緒にまた回り道をしてくれないか…?」

僧侶「…今すぐミンチはお預けですか、残念ですが仕方がないですね」

武闘家「ま、正拳突きに磨きをかける時間ができたと思えば」

魔法使い「このパーティーのリーダーはお前だ、好きにしろよ」

勇者「…ありがとう。というわけで魔王!!」

扉<「あいよー」パリパリ

武闘家「感動的なシーンのはずが魔王はポテトを貪っている」

勇者「ここは俺たちは一旦退く!」

扉<「ふはは!とうとう余に恐れをなし諦めたか勇者たちよ!」

魔法使い「本当に腹立つなあの魔王!」

僧侶「扉が開かないってことだけでなんでああ大口叩けるんでしょうね」

武闘家「本気で正拳突きを仕上げておかさなくてはな」

僧侶「私もモーニングスターを磨いておきます。むしろ鍛冶屋さんに頼んでちょっと重みを足してもらいます」

魔法使い「私は破邪の秘法を必ず習得してやる!」

僧侶「アバカムですら効果が上がるなら回復呪文も上がるかもしれません。私も習得しますよ!」

武闘家「それはいいな。まだまだ俺たちには伸びしろがある!」

勇者「諦めたりなどしない!必ず破邪の秘法を手にしてまた戻ってくる!お前を倒しに!」

扉<「ほう…?」

勇者「今度こそ首を洗って待ってろ!」

扉<「その前に口と手を洗う。ポテトまみれ」

魔法使い「箸で食えよ」

武闘家「いっそ男らしく袋を傾けて食え」

僧侶「私武闘家さんのその食べ方嫌いです」

扉<「衛生的にないわー」

勇者「確かに」

武闘家「俺がいくら打たれ強いからって酷い」

勇者「じゃ、皆行こうか」

武闘家「まずは飯だ!」

魔法使い「食堂に行くぞ!」

勇者「シチュー…」

僧侶「ほらっシチューですって!」

魔法使い「うるさいうるさいうるさいっ!」

扉<「では気をつけてな」




そして半年がたった

勇者「やっとここまで…」

魔法使い「ついにまたやってきたな」

武闘家「破邪の洞窟…辛い洞窟だった」

僧侶「二人の仲はひたすらじれったいだけでしたし!装備は万全です!」

魔法使い「…道中の回復ポイントは大きかったな」

武闘家「魔王め…人間には何もできないと舐めているのが運の尽きだ!」

勇者「皆!いくぞ!この扉の向こうに魔王がいる!最終決戦だ!」

「「「おお!」」」

勇者「いざっ!!魔王ーーー!!」ググ

ギィィイバタ---ン!

勇者「あれ?開いた」

魔法使い「まだ破邪の秘法つかってないぞ」

僧侶「お約束的な流れで押しただけですよね」

武闘家「とりあえず正拳…突…き!?」

「「「………」」」

魔法使い「魔王は?」

勇者「いないね」

僧侶「玉座が空っぽ…」

武闘家「ん?羊皮紙が置いてあるぞ」

勇者「なんかの罠かな?」

魔法使い「魔法の匂いはしないけど…」

勇者「…読むぞ」

勇者「…《勇者たちへ》
多分勝てないので魔界の実家に帰ります。
城は結婚祝いにあげます。
鍵はポストの中にあります。
秘密の通路は玉座の下。
お幸せに。
追伸、探さないでください。
《魔王》」


「………」

魔法使い「………結局、私たちーーー」

ーーーー
ーー
こうして勇者一行の働きにより世界の平和は守られた。人間たちはこれからも幸せに暮らしていくであろう。
おわり

読んでくれた方ありがとうございました!

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