ヒトミ「好きだよ、ヒロミ」 (29)

※百合エロ注意

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私────ヒトミがヒロミと会ったのは、中学校に入学してすぐだった。
同じクラスだったヒロミとは、名前が似てるねって笑い合ったのが出会いだった。
それから……色々話して、意気投合して、一緒に好きなアイドルのライブを見に行ったりとかして。
ヒロミは大人しめの子で、私はバカ騒ぎするタイプ。
性格は正反対だけど、いつしか私たちは、無二の親友になっていた。

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はっきりと覚えてる。
中学三年生の、修学旅行の時のことを。
一日目の、夜のことだった。
その時のホテルの部屋割りは、私とヒロミ、二人のクラスメートの四人だった。
夜の消灯までの自由時間の時。
二人のクラスメートは他の部屋に遊びに行ってしまって、私とヒロミは部屋に残ってお喋りをしていた。




ヒロミ「楽しかったね、今日」

ヒトミ「うん! すっごく楽しかった!」




その時は、同じベッドに座って、お菓子とか食べて過ごしていたんだと思う。




ヒロミ「明日も明後日も、この楽しいのが続くんだ……」




ヒロミが、ぽつりと呟いた。
すごく嬉しそうな表情をしていて、私も嬉しくなったことを覚えてる。

ヒトミ「そんなに楽しみ?」

ヒロミ「うん。 だって、ヒトミがいるから……」




ヒロミが微笑んで、私を見た。
その時私は、ドキリとして、胸が熱くなった。
でも、その瞬間には気付かなかった、わからなかった。
私が────ヒロミに、恋してるだなんて。




ヒトミ「そっか。 うん、私もおんなじかな。 ヒロミがいるから、小学校の修学旅行の時よりも楽しい!」




私が笑うと、ヒロミも笑ってくれる。
本当に、心地よかった。

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ヒロミ「……ね、ヒトミはさ」

ヒトミ「うん?」

ヒロミ「キスってしたことある?」




あれこれ話していて、内容が恋バナに変わった時だった。
私たち自身の恋バナじゃなくて、クラスメートの恋バナだったけど。




ヒトミ「キス? したことないなぁ……ヒロミは?」

ヒロミ「私もないよ。 ……どんな感じなのかな、キスって」

ヒトミ「……どんな感じなんだろ? なんだか私、彼氏とかできなさそうな気がするし、経験することなさそうな気もする……」

ヒロミ「そんなことないよ。 ヒトミ、優しいし。 ……結構好かれてるって話聞くよ?」

ヒトミ「……お、おう、まじかー」

ヒロミ「ふふ、うれしい?」

ヒトミ「人による!」

ヒロミ「だよね」




笑い合う。

ヒロミ「……ね、ヒトミ」

ヒトミ「うん?」

ヒロミ「……キスってどんな感じか、気になるよね」

ヒトミ「うん、気になる」

ヒロミ「じゃあ……その、してみない?」

ヒトミ「……え?」

ヒロミ「あのっ、練習で? 試しに? みたいな……ほら、女の子同士なら、ノーカンじゃないかなって……」

ヒトミ「……」




思った。
ヒロミが焦ってあれこれと言い訳っぽいことを並べるの、珍しいなって。




ヒトミ「うーん……」

ヒロミ「……」

ヒトミ「うん、いいよ。 どんな感じか気になるし」




キスがどんなものなのか知りたかった、というのが第一だった。
キスしたあとにどうなるか、なんて考えてなくて。
ヒロミと向き合って、目を閉じて。

ヒロミ「……ん、わっ」

ヒトミ「ん……わっ」




ちょんっ、て、唇と唇が触れ合った。
お互いにびっくりして、すぐに離してしまった。




ヒロミ「……どうだった?」

ヒトミ「一瞬すぎてわかんなかった……」

ヒロミ「だ、だよね……もう一回、してみる……?」

ヒトミ「う、うん……」




もう一度目を閉じて、唇を触れ合わせた。
今度は、長かった。
その間、色んな想いが私の中を駆け巡って。
ヒロミとキスしてドキドキしてる私と、安心している私に気が付いて。
……ヒロミのことを好きになっていた私に、気が付いた。




ヒロミ「……ん、は……」

ヒトミ「はふ……」




しばらくして、唇が離れて。
私たちは顔を真っ赤にしながら見つめあって。

ヒロミ「ん、ふ……」

ヒトミ「んん……」




また、唇を触れ合わせた。




ヒロミ「ん、ちゅ……んん……」

ヒトミ「んぁ、んむ……」




二回目のキスは、大人のキスだった。
ヒロミが舌で唇を舐めてきて、それを受け入れるために私は少し口を開いて。
にゅるにゅる、舌と舌が絡み合って。
頭が真っ白になって、気が付いたらヒロミに押し倒されたままキスに夢中になってる私がいた。




ヒロミ「んはあっ……」

ヒトミ「んあっ、はあっ……」




息苦しくなって、唇が離れた。

ヒトミ「はぁ、はぁ……ひろみぃっ……」




無意識だった。
すごく甘えたような声で、ヒロミの名前を呼んでしまったのは。




ヒロミ「……っ」




ヒロミが生唾を飲み込んだ音が聞こえた、その時。




「ふぁー! 楽しかったー!」

ヒトミ&ヒロミ「 「!!!!」 」




クラスメートの一人が、部屋に帰ってきた音がした。
抱き合うようになっていた私とヒロミは素早く離れて、ぎこちない笑みで帰ってきたクラスメートを出迎えた。

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それからの修学旅行中は、ドキドキしっぱなしだった。
ヒロミは時折私に熱い視線を送ってくるし、私も無意識にヒロミを目で追ってしまう。
でも、二人きりになっても、もう一回キスをするとかはなかった。

修学旅行が終わって普通の学校生活が始まっても、お互いその日のことを話題にすることはなく、時間は過ぎていった。

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その後、中学校を卒業して、私とヒロミは同じ高校に進学した。
クラスこそ違ったけど、仲は良いままだった。
……一年生の、あの瞬間までは。

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高校一年生の、冬ごろだったかな。
ヒロミと一緒の、いつもの帰り道だった。




ヒロミ「……ね、ヒロミ」

ヒトミ「ん?」

ヒロミ「私ね……彼氏、できたんだ」




ヒロミに、急にそう切り出された。
それを聞いた私は、カレシという言葉が彼氏という漢字に結び付くまでに時間がかかった。
それが結び付いた瞬間……頭が真っ白になって、すごく胸が痛くなった。




ヒトミ「……相手は?」

ヒロミ「……秘密」




顔を赤くして、ヒロミが俯く。
胸の痛みはさらに増して、泣きそうだった。

ヒトミ「……そっか。 おめでとう、ヒロミ」

ヒロミ「……ありがと」




その時は努めて冷静に、お祝いした。
家に帰ってから、泣いた。
そして、気付いた。
私はこんなに、ヒロミのことが好きだったんだって。
あの時はテンションのせいで、あんな気持ちになっちゃったんだって思ってたから。

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その日から、私はヒロミを避けるようになった。
私が辛すぎてヒロミの顔を見られなかったというのもあるし、ヒロミと彼氏さんの邪魔をしたくなかったっていうのもある。
その時のヒロミの表情を思い出すと、本当に辛い。
すごく泣きそうな顔をしていて、私も泣きそうになった記憶がある。

……それで、しばらく避け続けて、高校一年生も終わって。
二年生になったとき……私は、一年生の頃にクラスメートだった男子に、告白された。
その男子は二年生になっても私と同じクラスだったら私に告白するつもりだったみたいで、それが叶ったから告白してきたそうで。
優しい人だし、いい人だったから、OKした。
……これでヒロミのことを諦められる、ヒロミと仲直りできるって、思って。

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告白されて、付き合いはじめて。
何ヵ月かしてから、私はヒロミに一緒に帰ろうと誘ってみた。
ヒロミは快諾してくれた。




ヒロミ「……久しぶりだね、一緒に帰るの」

ヒトミ「うん」




ヒロミは、私がヒロミを避けていたことに気付いてるはずなのに、私を責めなかった。
その優しさに辛くなりながら、ヒロミに向き直る。




ヒトミ「……ヒロミ」

ヒロミ「ん?」

ヒトミ「私……彼氏が、できたんだ」

ヒロミ「……え」




驚いたように、ヒロミが目を見開いた。

ヒロミ「……誰……?」

ヒトミ「クラスメートの男子……去年も一緒のクラスだったの」

ヒロミ「……」




つう、とヒロミの目から涙が流れた。




ヒトミ「ひ、ヒロミ!?」

ヒロミ「っ……ごめんっ、ヒトミはお祝いしてくれたのにっ……っ」




ぽろぽろと、次から次へとヒロミの目から涙が溢れていく。




ヒトミ「と、とにかく、ヒロミの家に行こう? ここから近かったよね?」




しゃくりあげながら、ヒロミがこくこくと頷いた。
私はヒロミの腕をつかんで、ヒロミの家まで走った。

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ヒロミの家について、ヒロミの部屋まで上がって、ヒロミをベッドに座らせて、私も隣に座って。
お互い何も言えなくて、ただぼーっと黙っていたら、いつのまにか昔を思い出してしまっていた。




ヒロミ「……ヒトミ」

ヒトミ「……うん?」




ヒロミの泣き声が止んでしばらくしてから、ヒロミが小さく私を呼んだ。




ヒロミ「……覚えてる? 私たちが初めて話したこと」

ヒトミ「……もちろん。 名前が似てるねって、話したよね」

ヒロミ「うん」




ヒロミも、昔を思い出してたのかな。




ヒロミ「……」

ヒトミ「……」




それきり、黙ってしまう。
ヒロミの家は両親が共働きだから、家がすごく静かだった。

ヒロミ「……ヒトミ」

ヒトミ「うん?」

ヒロミ「……彼氏と、キスした?」

ヒトミ「……うん」

ヒロミ「……そっか」




思い出す。
カレとキスしたときのこと。
ヒロミとは全然違うなって、思ったことを。




ヒロミ「……したのは、キスまで?」

ヒトミ「え……う、うん……」

ヒロミ「そっか……」

ヒトミ「ひ、ヒロミはどうなの? もう……キス以上も?」




私が聞くと、ヒロミは黙って首を振った。

ヒロミ「ヒトミ……」

ヒトミ「え……ひ、ヒロミ……?」




ヒロミが私に向き直って、私を見つめてくる。
……その目には、いつかのように熱が籠っていた。
思い出して、ドキドキしてしまう。




ヒロミ「ヒトミ……私、ヒトミのこと……」

ヒトミ「あ……ヒロミっ、んんっ……」




言いかけて、ヒロミが私にキスをしてきた。
……二年ぶりかな、ヒロミとキスをするのって。
やっぱりドキドキして、すごく安心して、胸があったかくなって……。




ヒロミ「ぷは……」

ヒトミ「ふぁ……」




唇が離れて、見つめ合う。

ヒトミ「ヒロミ……なんで……」

ヒロミ「……ごめんね、ヒトミ。 私、嘘ついてたの」

ヒトミ「え……?」

ヒロミ「私、本当は彼氏なんていないの」

ヒトミ「え……な、なんで……?」

ヒロミ「……ヒトミが、どんな反応をするか見たくて。 でも……避けられるなんて、思ってなくて……こんなことに、なっちゃうなんてっ……」

ヒロミ「嘘ついてごめんなさいっ……ほんとは……ほんとはっ、ヒトミが、好きなのっ……ヒトミしか、見れないのっ……」




ぐすぐすと泣きながら、ヒロミが告白した。
……嘘、だったんだ。
ヒロミに彼氏ができたって。
……どうして、嬉しいんだろう。
もう、ヒロミのことは諦めがついてるはずなのに。
あの頃の気持ちには、蓋をしたはずなのに。
私には……彼氏が、いるはずなのに。

ヒトミ「ヒロミ……」

ヒロミ「あ……ん……」




今度は私から、キスをしてしまう。




ヒロミ「ん、ん……ヒトミ……」

ヒトミ「ん……ヒロミっ……」




舌と舌も、触れ合わせる。
これはまだ、彼氏とはしたことない。
……でも、ヒロミとは……あの時に、した。

ヒロミ「んっ、むっ……は……んっ……」




ヒロミが私にしがみついてくる。
そんなヒロミが愛おしくて、止まらなくて。
ヒロミを、そっと押し倒した。




ヒロミ「は……はっ……ヒトミ……」

ヒトミ「ヒロミっ……」




制服姿のまま、私たちは身体を重ねた。
お互い初めてだったけど、これまでの気持ちが爆発してしまって。
ヒロミがイくたび、私もイった。
私がイくたび、ヒロミもイった。
本当に、止まらなかった。
蓋をしてた気持ちが、どんどん溢れてきて。
ヒロミへの『好き』が止まらなくて。




ヒトミ「ヒロミっ……好きっ、好きぃっ……! ああぁっ……!」

ヒロミ「ヒトミっ……! 私も好きっ、大好きぃぃっ……!」





何回も何回も、一緒にイって。
そのあと気絶したように、私たちは眠った。

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結局、今日はヒロミの家に夕飯をお世話になって、泊まっていくことになった。
今は、ヒロミがベッドを準備しているところ。




ヒロミ「……ねえ、ヒトミ」

ヒトミ「……なに?」

ヒロミ「このまま……寝る?」




それはきっと、このまま何もしないで寝るかどうかを聞いてるんだと思う。




ヒトミ「……ヒロミに任せる」




実際、身体は未だ熱いままだった。
ヒロミのお母さんたちとご飯を食べているときも、ヒロミと一緒にお風呂に入っている時も。

ヒロミ「……」




ポンポンとヒロミがベッドを叩いてから、机まで歩いて机の引き出しを開いた。




ヒロミ「……これ、知ってる?」




ヒロミが机から取り出した袋入りのそれは……漫画で見たことがある。
双頭ディルドーってやつだったと思う。
それと……箱入りの、コンドーム。




ヒロミ「これ……ヒトミに初めてをあげたくて、ずっと前に買ってたの……」




少し潤んだ瞳で、ヒロミが私を見つめる。
……使ってもいいか、とその目は言っていた。
私は黙って頷いて、ヒロミの手を引いてベッドに押し倒した。

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────初めては、すごく痛かった。
入れた瞬間は動けなかったし、しばらく抱き合って泣いてた。
でも、痛かったけど……嬉しかった。
ヒロミとひとつになれたような気がして。

痛みが引いてきたらもう、ヒロミも私も止まらなかった。
何回もイかせて、イかされて……。
外が明るくなるまで、ずっとしてた。

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ヒロミ「はぁ、はぁ、はぁ……」

ヒトミ「はぁ、はぁ……」




裸で、抱き合う。
外はもう明るくて、鳥の鳴き声が聞こえる。




ヒロミ「……ごめんね、ヒトミ……」

ヒトミ「……なにが?」

ヒロミ「ヒトミ、彼氏がいるのに、私……」

ヒトミ「……」

ヒロミ「これで、最後にするから……今日から、普通の友達に戻るから……だから、お願い。 最後に、キスして……」




涙を流しながら、ヒロミが言う。
私は目を閉じて、ヒロミにキスをした。

ヒロミ「ん……ヒトミ……」

ヒトミ「……私は、嫌だから」

ヒロミ「……?」

ヒトミ「私が好きなのは……ずっと、ヒロミだったから」

ヒロミ「え……」

ヒトミ「今の彼氏と付き合い始めたのも、ヒロミを諦めるためだったの。 でも……もう、諦めない」

ヒロミ「あっ……」




ヒロミを抱き締める。




ヒトミ「彼氏には申し訳ないけど……言えばきっと、わかってくれる人だから。 だから……別れるよ」

ヒロミ「……! じゃあ……」

ヒトミ「……付き合おう、私たち」

ヒロミ「……ヒトミっ……!」




ぎゅう、とヒロミが抱き締めてくる。




ヒトミ「……待たせてごめんね。 好きだよ、ヒロミ」

ヒロミ「ううん、いい……ヒトミ、大好き……!」




お互いに涙を流しながら、キスをした。

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その後、彼氏とは別れた。
彼氏も私に好きな人が別にいることは告白する前から気が付いていたみたいで、わかってくれた。
申し訳なかったけど、きっと彼には私よりもいい人が見つかると思う。





ヒロミ「……そっか、申し訳ないことしちゃったな」




そのことを帰り道でヒロミに話したら、ヒロミも辛そうに顔を伏せた。




ヒトミ「うん……」




指を絡めて、手を握り合う。
ヒロミの手はすごく熱くて、ドキドキする。




ヒトミ「ヒロミ、手、すごく熱い……」

ヒロミ「ヒトミだって、熱いよ……」




熱っぽい瞳で、視線を交わす。




ヒロミ「……ヒトミ。 このあと、うち来る?」

ヒトミ「……うん、行く」




より強く、手を握り合って。
早足ぎみに、私たちはヒロミの家に向かった。

終わりです、ありがとうございました。

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