男「ハナクソを操る能力を極める」(19)

男「俺はハナクソを操る能力を身につけた」

男「火やら水やら重力やら時間やらを操る能力に比べたら、ハズレもいいところだ」

男「できることといったら、ハナクソを鼻からいっぱい出したり……」ポロポロ…

男「あるいは出したハナクソを転がすことぐらい」コロコロ…

男「このハナクソが爆発でもすりゃ、武器になるんだけどなぁ」

男「――ま、いいや、愚痴ってても仕方ない」

男「ハナクソを操る能力……極めてみるか!」

男「はっ!」ビュオーン

男「鍛錬の結果、ハナクソをさらに勢いよく出したり……」ドバドバ

男「音速で飛ばすことができるようになった」ビュオーン

男「だけどまだまだ物足りない」

男「この能力はもっと可能性を秘めているはずなんだ!」

男「ぶっちゃけ、目クソもハナクソと大して変わらんよな」

男「だったら操れるかも!」

男「お、いけるいける!」ドバドバ

男「ハナクソを操るように、目クソも操れるようになったぞ!」ビュオーン

男「ハナクソと目クソができれば、耳や歯のクソだっていけるはずだよな」

男「ちょっとやってみるか……」

男「お、いけるいける!」ドバドバ

男「やっぱりクソ同士、互換性みたいなもんがあるんだな」ビュオーン

男「コツさえつかめば楽勝だな! だったら――」

男「本家本元のクソだって……操れるはず!」

男「さぁ……どうだ!?」

男「おっ、おおおおっ!」ブリブリブリッ

男「さすがに今までよりはちょっと手こずったけど……」ビュオーン

男「本家クソも、操れるようになったぞ! 俺ってスゲー!」ブリリッ

男「さて、自分のクソは自由自在になったわけだが……」

男「自分のクソが操れるってことは、他人のが操れない道理はない!」

男「よぉし、やってみるか」キッ



通行人「うわわぁぁぁぁぁっ!」ブリブリブリッ



男「大成功! うまくいった!」

男「……あれから半年」

男「他人の便意を操ったり、腸内でクソを爆裂させることもできるようになった」

男「だが……また足りない!」

男「俺の能力の真骨頂はこんなもんじゃないはずだ!」

男「たとえば、生物」

男「生物を“魂+肉体”な存在だと仮定すると――」

男「いってみりゃ、死っていうのは魂が肉体というクソをひり出す行為だってことだ」

男「つまり、俺は死体を自在に操れるってことだ!」

ゾンビA「おはようございます!」

ゾンビB「朝食を作っておきました!」

ゾンビC「着替えはあちらにご用意しました!」

男「うむ、ご苦労」

男「だいぶゾンビを使いこなせるようになってきた……。だが、まだまだ!」

男「俺たちが普段、踏みしめてる土……」

男「土ってのは、色んな物が風化したり腐食して、そういうのが堆積してできたものだ」

男「いってみりゃあ、クソだ」

男「俺ならきっと、大地だって操れるにちがいない!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

男「すごい! すごいぞ!」

男「全ての大地は俺の思うがままだ!」

男「揺らすことも、裂くことも、割ることも、形を変えることも、自由自在!」

男「こうなったら、天に浮かぶ星々も俺が操ってやる!」

男「ふははははっ!」

男「もはや指を動かすどころか念じるだけで、星が俺の思い通りに動く!」

男「俺は天地を動かす男になったのだ!」

男「ようし、ここまできたら――」

男「宇宙だぁーっ! 宇宙そのものを操るんだぁーっ!」

男「ついに全宇宙が、俺の支配下に置かれたのだぁっ!」

男「ここまできたら全部リセットして、いっそ全て作り変えちまうかぁっ!」

男「ビッグバン!!!」












こうして、男は神になった。

神「……」ホジホジ

神「お、結構いいハナクソとれたな」

神「ほいっと」ピンッ



これが、今我々がいる地球誕生の瞬間である。





                                     おわり

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