咲「山!」 京太郎「山?」 (60)




短いです。





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咲「ねぇねぇ京ちゃん」

京太郎「ん? どした?」

咲「京ちゃん、山登りってしたことある?」

京太郎「山? ……そりゃまぁ、山くらいなら何度か登ったことあるけど……低い山だけどね」

咲「どうだった? しんどかった?」

京太郎「…ん~……どうだったかなぁ。当時は筋肉痛になったりもしたけど……しんどかったイメージはないなぁ」

咲「なるほどね…………じゃあさ? じゃあさ?」

京太郎「ん?」










咲「私にも登山、出来るかな?」

京太郎「……咲が…登山……?」







京太郎「咲が登山って……言っちゃ悪いけど、和が降霊術するくらいイメージできない」

咲「そのレベルかぁ……。ほら、インターハイで会った高鴨さんっていたでしょ? 和ちゃんの友達の」

京太郎「あぁ、いたなぁ。俺は直接は会ってないけど」

咲「その高鴨さんがね。登山が趣味で、子どものころからおじいさんと一緒に色んな山に登ってたんだって」

京太郎「へぇ~。まぁ、子どもが元気なのはいいことだ」



咲「それでね。長野の山にも何回か来たことがあるって言ってたの」

京太郎「山多いからね、長野。日本アルプスあるし」

咲「私も、小さいころに一度だけ山に登った記憶があるんだけどね? 山登りのことはあんまり覚えてないの」

京太郎「なるほどね」

咲「だから、山に登ってみたいなぁ~…って」







京太郎「つっても、山なんてピンキリだぞ? 上は富士山、下は日和山まで色々あるし」

咲日和「山?」

京太郎「括弧の位置がずれてる」

咲「日和山?」

京太郎「直った」






京太郎「しょうもない話は置いといて。咲はどんな山に登りたいんだ?」

咲「森林限界の上!」

京太郎「……………」

咲「森林限界の上!」

京太郎「二回言わなくても聞こえてるよ……」

咲「京ちゃんが返事しないからでしょ?」

京太郎「えっ~と…ちなみに、森林限界って何か知ってる?」

咲「山の高いところでしょ? 普通の花が咲かなくなるような…木が変わるんだっけ? 日本アルプスだと標高2,500メートルよりも上って聞いたけど…」

京太郎「知ってて言ってるのか……」






咲「無理かなぁ?」

京太郎「無理とは言わないけど……まぁ、無茶ではあるよなぁ」

咲「…登り切るまでに何日くらいかかる?」

京太郎「…いや、まぁ咲でも頑張れば一日で登れるとは思うけど……山までの移動とかも考えると、一日で行って帰ってくるってのは難しいかも」

咲「…どうしよう……私、テントなんて作れないかも……」

京太郎「まぁそれは山小屋に泊まるなり、前日に山の近くのホテルに泊まるなりすればいいとは思うけど……」

咲「………山登るの…私にはやっぱり無理なのかなぁ…」

京太郎「………………」








京太郎「それ、俺も一緒に行っちゃダメか?」










咲「えっ? …京ちゃんも?」

京太郎「……何? 嫌なの? それとももう他に行く人決まってる?」

咲「いや…嫌じゃないけど……京ちゃんも山登りたいの?」

京太郎「…まぁ、そうゆうことでいいや。他に誰か誘うなら別にいいけどさ」

咲「ううん。京ちゃんが一緒に来てくれるなら、京ちゃんがいいな! ………それじゃあ、お願いします」

京太郎「あいよ」

咲「一人じゃ心細かったし…京ちゃんなら力もあるし安心だよ!」

京太郎「そっか…そりゃよかった……」







咲「♪~。それじゃあいつ山に登ろ……」

京太郎「ちょっと待て。その前に一つだけ確認したいことがあるんだけど…」

咲「?」

京太郎「…まさか、いきなり…その、森林限界の上? に挑戦しようとか考えてないよな?」

咲「……………」

京太郎「……………」









咲「…そ、……そんなわけないじゃ~ん。ほ、ほら。アレでしょ? 段階を踏むてきなアレでしょ? 分かってるよ?」

京太郎「その目は分かってなかった目だ。俺には分かる」

咲「えっと……どうすればいいの?」




京太郎「まずは『山を登る感覚』と『登山の服装』そのものに慣れないと。600メートルとかの山でも、いきなり登ると辛いんだぞ?」

咲「ふむふむ……私が昔登った山はどれくらいの高さだったんだろ…」

京太郎「服装だって、買ったばかりのやつでいきなり2,000メートル以上は無謀だ。足に合わなかったりしたらすっげぇ痛いんだから」

咲「さ、さすが山登り経験者…」

京太郎「そんな本格的な経験でもないけどな」




京太郎「…てか、そもそも登山の準備はできてるのか? 靴は?」

咲「…スニーカー…」

京太郎「…服は?」

咲「……パーカー……」

京太郎「……リュックは?」

咲「………スーパーの…レジ袋……」

京太郎「前二つは100歩譲ってもいいとして、さすがに最後のはダメだって気付け」









京太郎「…山登りには適した装備があるんだから、それを買わないと」

咲「…でも、何買えばいいか分からないよ?」

京太郎「店員さんに聞くしかないな。あとは、例の高鴨さんにもアドバイスをもらおう」

咲「…なるほど」









穏乃「おっ!? 和じゃん!! インハイぶりっ! 電話なんて珍しいね、何の用?」




穏乃「…ほうほう、宮永さんから質問ね。どーんと任せてよっ!」




穏乃「……え? 山に登る服装? ジャージだけど? え? 下は履いてない」




穏乃「リュック? お弁当とかなら手で持ってってるよ?」




穏乃「くつ? 靴はそりゃ登山によって使い分けてるよ。いっつも履いてるのはランニング用のスニーカー、○○って会社のやつ。女性用も充実してるけど、私はメンズ用の方が足に合うんだよね。山に登るときも基本的にはそれかな。あ、でも整備されてない道がコースに入ってる時はやっぱりトレッキングシューズだね。××ってブランドのをよく買ってるんだけど、去年のモデルはちょっと微妙だったよ。まぁ靴の好みは人それぞれだしね。宮永さんは登山初心者でしょ? 初心者なら、靴の高さは少し高めの方が捻挫はしにくいと思う。足首が固定されるからね。ただ、普段使う靴とは全然感覚が違うから歩く練習をしとかないとだめ。ちょうど△◇ってところが今年の春に出した靴は、登山入門をコンセプトにしてるらしいから試してみるといいかも。その会社のはデザインもいろいろあるけど、あんまし明るい色だと土の汚れが目立つから、そういうの気にする人はずんぐりした色の靴の方がいいんじゃないかな。低い山とかだと山頂までアクファルトだったりもするけど。そういう道を行く予定ならスニーカーでもいいかもね。え? 2,000メートル以上? そりゃもう本格的な登山靴のほうがいいよ。山道だと石ころなんかもゴロゴロ落ちてるから、底が厚いやつじゃないと食い込んで痛いし、というかそうならないための登山靴なんだけどね。あ、靴を買いに行く前につま先の指の形と踵の形だけ一応知っておいた方がいいかもって宮永さんに教えてあげて。人差し指と親指、どっちが長いか。親指が長いなら靴の先は丸い方が履きやすいと思う。逆に人差し指の方が長いなら靴も尖ってる方がいいかな。靴の先が丸いタイプはあんまりないんだけど、さっきも言った××って会社はそっちのタイブが充実してるよ。あと踵の形が……」















和「ということだそうです」

咲「……何その靴のみに対する以上なこだわりは……」

京太郎「いや、靴の前にズボン履けよ」







咲「というわけで、登山グッズを買いに来たわけだけど……高いね」

京太郎「高いなぁ。……靴に五桁出す人って伝説だと思ってた」

咲「京ちゃんが今履いてる靴は何円くらい?」

京太郎「1,880円。咲のは」

咲「1,290円」

京太郎「…………」

咲「…………」






京太郎「ふむふむ……服は重ね着が基本…特に高い山の上の方だと、風がもろに当たるから夏でも寒い……なるほどな」

咲「逆に森林限界の上だと、日差しを遮る木もないから帽子も…なるほどね」

京太郎「傘は差しにくいからレインウェアもあるといい……へぇ~」

咲「……たくさんお金が飛びそうな気配がする」












京太郎「……こんだけ金使ったんだ。もう後戻りはできないぞ」

咲「……モチベーションを高めるって意味では、お金を使ったのは正解だって……前向きに考えるようにしよう」







京太郎「さて。登山グッズも買ったことだし、んじゃさっそく登山の練習を始めよう」

咲「おーうっ!!」










京太郎「というわけで、やってきました。木がいっぱいある公園」

咲「登山の練習をするって言ってたけど……山ですらない公園で何するのさ」

京太郎「舗装されてない道を歩く練習。山登りの練習の練習だな」

咲「…さすがにこれはする意味無いんじゃない? 平坦な道だよ?」

京太郎「そういうことは歩いてから言うんだな」










咲「……ぜぇ……ぜぇ……休憩、もっかい休憩……」

京太郎「ほら見ろ」









咲「こ…この調子だと、ぜぇ…山はい…つ頃登れそう……?」

京太郎「う~ん…10月くらいになるんじゃねえか? さすがにそれ以降になると寒いしなぁ」

咲「ひぇ~…」

京太郎「もう一回くらい平地で練習して、まずは300メートルくらいの山に挑戦。そっから毎週山の高さを上げていって、なんとか10月頭には900メートル以上の山に登れるようにはなりたいね」

咲「…なるほど……しばらくは毎週、筋肉痛になりそうだよ…変な筋肉付いたりしないよね?」

京太郎「女の子は筋肉太くなりにくいし大丈夫」

咲「へぇ~…そういうものなんだ」

京太郎「高鴨さんだって足細かったろ?」

咲「……なんか、やらしい言い方……」

京太郎「」
















咲「♪~♪♪~。明日はいよいよ平地じゃない、普通の山に挑戦する日っ! わくわくするなぁ…」

咲「サンドイッチの材料は…京ちゃんはカツサンドとか好きそうだよねっ! あとはレタスとハムと…あ、パン買うの忘れるところだった」

咲「……ふふっ。楽しみだなぁ~。あ、レジャーシートってどこに置いてたっけ?」







京太郎「…咲のことだから、きっと飯用の飲み物だけ持ってきて、登山中の飲み物は忘れてくるんだろな。スポーツドリンクと水を少し多めに買っておこう」

京太郎「…あと、咲が怪我した時のための絆創膏にテーピングに…冷やすための氷もなんとかして持ってかねえとなぁ…」

京太郎「…………麻雀じゃいいとこなしだし、こういうところでいいとこ見せないと…」







咲「というわけで、いざ山へ!!」







京太郎「今日はこの山に登ろう。名前は知らない」

咲「…うわぁ…高いねぇ……これで何メートルくらい?」

京太郎「300メートルくらい」

咲「………これで?」

京太郎「これで」

咲「…結構高いよ?」

京太郎「森林限界さんはこの8倍だぞ」

咲「……ひぇ~…。京ちゃん隊長、早くも心が折れそうです」

京太郎「大丈夫大丈夫。これくらいの山ならなんだかんだですぐ登れるよ」

咲「本当に?」

京太郎「荒地を歩く練習をした自分を信じろ」







京太郎「案内板見っけ」

咲「何か書いてある?」

京太郎「大まかな道と、山の中にある目印になるもの……これはありがたいね。咲は特に迷子になりやすいんだから、絶対俺から離れんなよ?」

咲「置いて行っちゃやだよ?」

京太郎「置いてかないよ。だから、歩くのがキツくなってきたら我慢せずに言うんだぞ?」

咲「はーい」







咲「はぁ……はぁ……ま、まだ~?」

京太郎「もう少しだ。ほら。そこの道を登り切ったらもう山頂」

咲「ホント!?」

京太郎「あぁ。だからあと少し…頑張れ」

咲「……うぅう~……動けぇ~、私の足ぃ~……」






咲「……………着いたぁ……」

京太郎「おめでとう。ほら、まずは息を整えて」

咲「ひぃ、ひぃ、ふぅ~…ひぃ、ひぃ、ふぅ~…」

京太郎「ほら、こっちの方からいろいろ見えるぞ。ちょっと来てみ」

咲「………おぉ~……高いねぇ…」

京太郎「なんだかんだで超高層ビルくらいの高さだからなぁ。300メートルって」



咲「……よし、じゃあここでお昼ご飯食べよう!!」

京太郎「よしきたっ!」

咲「今日はサンドイッチを作ってきました。それでは召し上がりましょう……あ、シート敷くからそっち持って」

京太郎「……このレジャーシート…ちっちゃくない?」

咲「…気にしない気にしない」









咲「もぐもぐ……我ながらいい出来だね」

京太郎(……咲が近い)

咲「……なんだか気持ちいいなぁ……登山って楽しいねっ!」

京太郎「ん…そうだな。300メートルでこれなんだから、2,500メートルはもっと気持ちいいと思うぞっ!」

咲「だねっ!! 楽しみだなぁ~」






京太郎「昨日は楽しかったな、咲」






咲「筋肉が……筋肉の筋肉痛が痛い……京ちゃんは?」

京太郎「ん? 俺はなんともないな」

咲「えぇ……筋肉痛にならないコツとかないの?」

京太郎「こればかりは慣れるしかない」

咲「そんなぁ…」













咲「ねぇねぇ、見てみて京ちゃん!!」

京太郎「ん? どした?」

咲「これ見て! 風越山だって!! しかも結構高いよ!」

京太郎「標高1,500メートル…ほんとだ。この前登った山の5倍だもんな」

咲「池田さんのいるところだよっ! ……清澄山とか、龍門渕山とか、鶴賀山とかはないのかな?」

京太郎「どうだろ…聞いたことないけど…」





久「清澄山ならあるわよ? 標高は400メートルもなかったと思うけど」

咲「!? ホントですか!? 次はそこ登ろうよ、京ちゃん!!」

京太郎「どの辺にあるんですか? 清澄山は」














久「千葉県」








九月末





咲「ふぅ……ようやく筋肉痛にもならなくなってきたよ…」

京太郎「よかったよかった。この調子でいけば、10月末ぐらいに2,500メートル級に挑戦できそうだな」

咲「大丈夫かなぁ……遭難とかしないかなぁ…」

京太郎「それに関してはツアーに申し込んどいたから大丈夫だろ。俺なんか比べものにならない、プロの人たちがついてる」

咲「い、いつの間に……」

京太郎「都合よく長野の2,500メートル以上の山に登ろうツアーがあって、それが都合よく来月末で、都合よく高校生以上対象だったからな」

咲「おぉ、それは都合のいい」




京太郎「登山日は10月27日。その前の日に家をでて、近くのホテルに泊まってって感じだ」

咲「なるほど……あれ? 27日って平日だよ?」

京太郎「おいおい、その日は都合よく創立記念日だっただろ?」

咲「あ、そうだったね。都合よく創立記念日なんだった」









咲(………27日かぁ……さすがに覚えてないよね? 一度しか言った記憶ないし……)

京太郎「……………」







10/27






京太郎「…ふぅ……いよいよ森林限界に挑戦だな」

咲「………だね」

京太郎「とはいっても、途中まではバスだからな。実際に2,500メートル登るわけじゃないのは楽でいいね」

咲「……だね」

京太郎「……ちょっと緊張してる?」

咲「かなり。……そういう京ちゃんも、心なしか緊張してない?」

京太郎「……してる」

咲「ふふっ、珍しいね」

京太郎「……かな?」







咲「ふぅ……ふぅ……やっぱキツい…………でも、天気は良くてよかったね」

京太郎「だな。風は冷たいけど、体もだいぶ温まってきたし」

咲「ふぅ……おじいちゃんおばあちゃんもいるし……ふぅ……そんなに早いペースじゃなくて……ふぅ……助かったよ……」

京太郎「……咲はその呼吸法を身に付けてから、あんまバテなくなったよな」

咲「呼吸のリズムは一定に保つのが……ふぅ……コツだって高鴨……ふぅ……さんが教えてくれたんだ……ふぅ……」

京太郎「足幅は小さく、若干外股で、呼吸は一定。今まで練習してきたものがいかんなく発揮されてるな」









咲「ふぅ~……ここで一旦休憩だって…」

京太郎「大体、50分くらい歩いたら休憩が入るみたいだね。記念撮影なんかもそのタイミングでだそうだ」

咲「…今、どのくらいの高さなんだろうね?」

京太郎「さぁ……今までの経験だと、大体50分で300メートルくらい登ってたと思うけど……ちょっと分からん」

咲「……登り切れるか、不安になってきた」

京太郎「最悪、途中でリタイアして帰りに混ぜてもらおう。山頂までは無理でも、森林限界さえ超えればいいわけだしな」

咲「…そだね。山頂は無理でも、せめて森林限界は超えて見せるよっ!」







咲「…っはぁ……はぁ……」

京太郎「…大丈夫? 無理なら休ませてもらった方が……」

咲「ま…まだ……もうちょっとだけ…頑張る……」

京太郎「……そっか。でも、帰りもあるんだからあんま無茶はすんなよ?」

咲「…うん。……頑張るよ~……」






咲「…ぜぇ……ぜぇ……っは……ぜぇ…」

京太郎「……だいぶ緑が減ってきたな…花も見覚えないようなやつばっかだ」

咲「そ……そうだね……」

京太郎「……多分、もうすぐ森林限界だ。……もう無茶すんなとも言わないから……あと少し、頑張ろう」

咲「……うん!」













「ワハハー、森林限界に着いたぞー」

「か……片腹大激痛……」










京太郎「……森林限界、今超えたってさ」

咲「……も、目標達成……」

京太郎「……20分休憩したらまた登るらしいけど……どうする?」

咲「…帰りのことも考えて、ギブアップで」

京太郎「……そっか」

咲「…京ちゃんだけでも、登ってきたら? まだ余裕あるんでしょ?」

京太郎「……いや、いいや。俺もここで帰りを待つことにするよ」

咲「……いいの?」

京太郎「いいの」







咲「……ふぅ……でも、森林限界まではこれたね」

京太郎「よく頑張ったな。偉いぞ」

咲「あ、ちょっと…頭撫でないでよ…汗で髪ぺっちゃりしてるんだから……」

京太郎「あ、悪い悪い…」












咲「………昔、山に登ったことがあるって言ったじゃん?」

京太郎「ん…夏頃に言ってたな、そんなこと」

咲「山登りのこと自体は覚えてなかったんだけどさ………山であったことは覚えてるんだ」

京太郎「?」





『森林限界を超えた高い山の上』



『そこに花が咲くこともある』









『お前もその花のように――強く――』







咲「嶺上開花を知ったのもその時。登山で唯一覚えてるのは、その記憶だけ……まぁ、実際はほとんど車で行ったんだと思うけどね」

京太郎「………」

咲「それを思い出して……それで、森林限界の上に行ってみたいなって……」

京太郎「………」

咲「……こんなキツイとは思わなかったけど……そりゃ花も咲かなくなるよね……」








京太郎「……そんな咲に、渡したいものがあります」

咲「え? 何? 水ならさっき飲ん……」









京太郎「誕生日おめでとう、咲」












咲「……これ…アイビー……だっけ?」

京太郎「そ。10月27日の誕生花。他にもいろいろあるらしいんだけどね…咲にはこの花かなって…」

咲「……私に?」

京太郎「咲に」





咲「覚えててくれたんだ…」

京太郎「サプライズってやつだ……いつ気付かれるかとヒヤヒヤしたけどな」









咲「…………ふふっ……あははっ!」

京太郎「ど、どした? いきなり笑いだして」

咲「ん? ううん……お姉ちゃんが言ったこと…本当だったなって」












「森林限界の上に……花が、咲いちゃった!」












そういって笑う彼女の表情は…まるで花のように。









綺麗で。




可愛くて。




可憐だった。






終わりです。

色々と端折りましたが、何が言いたいかと言うと。



咲誕いぇい~。



一応アイビーの一般的な花言葉は

「永遠の愛」「友情」「不滅」「結婚」「誠実」

だからそれが転じて「死んでも離れない」になったんだろうな

幼なじみ属性って仲良くなる過程が説明不要だからな
無言の説得力というか

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