ココア「チノちゃんには私のこと、お姉ちゃんって呼んで欲しいなっ!」 (39)

ココア「お母さんだと思って欲しいだなんて言うつもりなんてないから・・・ね?」

タカヒロ「チノ。ゆっくり、ゆっくり・・・家族になっていこう」


チノ「そういうことでしたか」

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チノ「おかしいな、とは思っていたんですよ。突然住み込みのアルバイトを雇うなんて」

ココア「え、えっとねチノちゃん。タカヒロさんとはたまたま知り合う機会があって・・・

チノ「聞きたくありませんっ!そんな話!!」キッ

ココア「あっ・・・」びくっ

タカヒロ「こ、こら、チノ。怒鳴ったらいけないだろう・・・?」

チノ「やめてください。そういうの」

ココア「あ、あはは、中学生のチノちゃんにはわかって欲しいって思う方がどうかしてたよね?」

ココア「ごめんねチノちゃん?その、混乱させちゃって」

チノ「・・・。」

タカヒロ「いや。チノだってもう中学生なんだ。きちんと知るべきだって、昨日話し合ったじゃないか」

ココア「でも、タカヒロさん・・・」

チノ(なんだろう。なんなんだろう、これ)

タカヒロ「チノ。お父さんとココアちゃんは・・・本気なんだ!」

ココア「チノちゃん。私ならタカヒロさんを幸せにしてあげられると思ってるの。チノちゃんにも、どうか認めて欲しい」

チノ(なんだこの二人・・・)

タカヒロ「今のチノには受け入れがたいかもしれない。
でも、ココアちゃんがいい子なのはチノだってわかっているはずだろう?」

ココア「チノちゃん、ゆっくりでいいの。今はただ、同居人の一人だと思ってくれるだけで」


チノ「・・・お父さんは、お母さんのこと、もういらなくなったんですか?」

タカヒロ「そんなわけがないじゃないか!お母さんのことがいらないなんて・・・そういうものじゃないんだ、チノ!」

ココア「それにね、チノちゃん。私たち籍を入れるつもりはないの。
チノちゃんのお母さんはずっとチノちゃんのお母さんのままだから、えっと」

チノ「・・・よくわかりません」

ココア「そ、そうだよね?急にこんな話されたって、チノちゃん困っちゃうよね?」

タカヒロ「不安にさせてすまない。でも、父さんは・・・」

チノ「部屋に戻ります」スッ

タカヒロ「ち、チノっ!」

チノ「・・・っ!!」ダッ


タカヒロ「チノ・・・」

ココア「チノちゃん。複雑だと思うから」

タカヒロ「あ、ああ。そうだね」

ココア「今はそっとしておいてあげた方がいいと思うの」

タカヒロ「全然、全然話せなかったな」

ココア「まだ最初の、一回目の話だから仕方ないよ。チノちゃん、混乱してるみたいだったし」

タカヒロ「・・・俺たちのこと、チノは受け入れてくれるだろうか?」

ココア「チノちゃんはいい子すぎるから、受け入れはすると思う」

タカヒロ「心から歓迎してくれるかどうかは、これからの俺たち次第か」

ココア「うん。だから、しっかりしないと。私たちとチノちゃんのことだもん。大切にしないと」

タカヒロ「ああ、もちろんだ」

タカヒロ「・・・やはり君がいてくれて良かった、ココアちゃん。俺一人では、とてもチノを支えきれそうにない」

ココア「もう、何を弱気になってるの?」ぎゅっ

ココア「これからは、私があなたの心を支える。あなたも私を愛してくれる。もちろん、チノちゃんもいっしょに」

タカヒロ「そうだね。愛してるよ、ココア」ぎゅっ

ココア「タカヒロさん・・・ずっと私といっしょにいて」ぎゅっ




チノ「・・・。」

【チノ自室】


チノ「お父さんとココアさん。そういう関係だったんだ」

チノ「・・・。」


『チノちゃーん!お姉ちゃんって呼んでよー!』
『チノちゃんかわいい!』
『チノちゃんもおいでよ~』


チノ「~~~~っ!!」ダンッ!

ボフッ

チノ「・・・ハァハァ」

チノ「枕に八つ当たりするのは、やめましょう」

チノ「お父さんもココアさんも、いつもより声に元気がありませんでしたね」

〈あんな話をするんじゃ。無理もないわい〉

チノ「・・・ココアさんを怒鳴ってしまいました。私は嫌な子です」

〈仕方なかろう。冷静でいろという方が無茶な話じゃよ〉

チノ「そうですね。明日、謝りましょう」

チノ「お父さん。お母さんのことはどう考えているのでしょうか?」

〈うーむ、本人と話しあうしかないんじゃないかの?〉

チノ「話、ですか。またさっきみたいに取り乱さないようにしないと」

〈大丈夫。あの二人ならそれくらいで怒ったりなどしないわい〉

チノ「・・・ココアさん。お父さんを支えると言っていました」

〈言っておったのう〉

チノ「お父さん、お父さんは自分一人では私を支えきれない、と」

〈・・・言ってたかのう?〉

チノ「お父さん、ずっと一人で私のことを育ててくれてたんですよね・・・」

〈ワシもおったではないか!〉

チノ「そうでした。すみません」

チノ「・・・お父さんとココアさん。とても幸せそうでした」

〈そうじゃったな〉

チノ「だったら、今の二人が幸せなら、二人にとって私は邪魔なだけですよね・・・?」ぐすっ

チノ「お、お父さんっ、もうお母さんのことは、お母さんのことはいいんだ・・・っ!
私のっ、こ、ことも、ずっと、ずっと負担だったんだ・・・っ!」ぐすっ、ぐすっ

チノ「私っ、私、邪魔なだけなんだっ」

チノ「お父さんは今、ココアさんといっしょにいられて・・・っ、幸せなんだ・・・!!」ぽろぽろ

〈そんなわけがないじゃろう、チノ〉

〈チノがいらないなんて、そんなわけなかろう〉

チノ「ひっく、うぅ、すみません・・・」

チノ「ただの八つ当たりですから・・・」ぐすっ

〈もう今日はお眠り、チノや〉

チノ「・・・そうします。たぶん、考えても無理でしょうし」

〈うーむ、ワシ以外にも相談できる頼れる大人がいればいいんじゃがのう〉

チノ「難しいでしょうね。家族の中の話ですし」

チノ「・・・家族の」

〈ともあれ、考えるのはまた明日じゃ〉

チノ「はい。おやすみなさい、おじいちゃん」

〈おやすみ、チノ〉





ティッピー「・・・。」

【翌朝】


チノ「・・・。」むくり

チノ(ここは私が育った家で、私の部屋)

チノ(だけど昨日までとは違って)

チノ(ここはお父さんとココアさんの家で、まるで私が居候のように感じる)

チノ「・・・。」

チノ(などと、いつまでも落ち込んでいられるわけもなく)

チノ(朝ごはんを食べて学校に行かねばなりません)

チノ(学校から帰ったら、お店も開けて・・・)

チノ「・・・ココアさんたちと、店に立って」

チノ(ちゃんとしないと。お店では、ちゃんといつも通りココアさんと接するようにしないと)

チノ(朝ごはん、早く済ませて学校に行ってしまおう)

ガチャ

ココア「あっ」

チノ「!」

ココア「えっと、おはようチノちゃん!」ニコッ

チノ「・・・おはようございます」

チノ「・・・。」

ココア「・・・。」

チノ(何か話さないと)

チノ(そうだ。いつも通り、いつものように話しをして、昨日怒鳴ったことも謝らないと)

チノ(昨日そう決めたんだから)

チノ「あの、ココアさん。今朝は、その、早いんですね」

ココア「う、うんっ!早起きしちゃって!」

チノ「そうなんですか」

チノ(違う。もっと、きちんと話しを)

ココア「うん。だから、パンを焼いてたんだー」

チノ(普通に、いつも通りに)

ココア「今ちょうど焼けたみたいだからさ」

チノ(昨日の話が、無かったことかのように)

ココア「チノちゃん良かったら、いっしょに朝ごはん食べようよ?」


チノ「いえ、いりません。もう学校に行きますので」

ココア「えっ・・・」

チノ「!!」
チノ「すみません。急ぐので、先に失礼します」

ココア「で、でもチノちゃん!昨日の夜もごはん食べて・・・

チノ「なら、朝食は外で食べますので。行ってきます」ダッ

ガチャ

ココア「チノちゃ

バタン!

ココア「あっ・・・」

タッタッタ

チノ(なにを)

チノ(なにをやっているんだ!!私は!!)ぽろぽろ

チノ(ちゃんと話すつもりだったのに!!)

チノ(できるはずだったのにっ!!)

チノ(あんな風にするつもり・・・無かったはずなのに!!)ぐすっ

チノ(もどかしい・・・!)

チノ(なにも思い通りにいかない)

チノ(もっと、もっとまともにできると思ってたのに!!)

チノ(なに一つできてないっ!)

チノ(ココアさん、傷ついた顔してた・・・!!)ぽろぽろ

チノ(そんなつもりじゃないのに!)

チノ(私は・・・)

チノ「うぅ、うぐっ」ぽろぽろ

チノ(二人を祝福することさえできやしない・・・!!)

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