男「祝、オナ禁1年突破!!」(13)
1週間に平均8回オナ○ーしていた以前の俺はこの事実をどう思うだろうか。
去年の元日に1年の抱負としてオナ禁を掲げた時の俺はこの事をどう思うだろうか。
まあ……
そんなことはどうでもいい。
問題はこの溜まった精子をどうするかである。
オナ禁は容姿を変えるという情報の真偽を確かめるために撮った1年前の俺の写真と比べると、今の俺の顔は遥かに好感が持てる顔だ。
吹き出物は消え、額と頬の脂肪も減った。
視力もcからbに上がった為、眼鏡でなく裸眼。
栄光のフツメンになった俺の奇跡の精子は、どうせならちゃんとした事に使いたい。
そもそも、オナニーへの欲求は半年前から無くなってきているのだ。
よし………ここは賭けに出るか。
部屋を出て階段を降りる。
1年前は俺の事を見下していた姉と弟も、オナ禁の成果か、それとも邪念を無くすためにポスターを片付けた為か、今ではちゃんと家族として扱ってくれている。
俺は意を決して二人に頼んだ。
「服を買うのを手伝ってくれないか?」
二人からの返事は、okだった。
俺と弟は姉の運転する車に乗り、近場の服屋に向かったのだ。
フムフム、二人によると、俺のイメージカラーは青と黒。
俺を試着室の前に置いたまま、二人は服屋の中を走り回ってくれた。
tシャツを2枚、パーカーを1枚、ズボンを2着。
予算内に納めてそれを買うと、弟がチョーカーを持ってきた。
残念ながらそれは俺には合わなかったらしいが、代わりに姉が安物だが高そうに見える時計を買ってくれた。
次の日、俺は昨日買った服装で外に出た。
以前はゴミ出しの時に見かけたjcをネタにオナニーに励んだものだが、お昼ちょっと前の時間帯の今では、jcはおろかbbaすら見ない。
仕方が無いさ田舎だもの。
俺は駅に向かった。
目指すは3駅先の若者密集地だ。
電車に揺られながら俺は昨日パソコンサイトで見た先人の知恵を反芻していた。
焦らず、勢いよく、引き際を大事に。
最初の一言は「可愛い服ですね」や「素敵なコーディネートですね」
街に住む女は内面よりも外見を注目してほしい、とのことだ。
駅を出る時、俺は一人の女子に興味を持った。
黒髪で、小柄な女だ。
それだけならそれほど興味を持たないが、横を通った彼女から俺は一つの匂いを感じた。
香水では…無いと思う。
身近な香りでありながら、普段あまり感じない匂い。
その女からは、美容院の匂いがした。
俺は彼女の後を追った。
もともと、どこかに行こうとしたのではない。
適当な場所で適当な女と適当に金を使って、精子を使おうと考えていたのだ。
黒髪小柄女が行く場所についていっても、問題は無いはずだ。
駅を出て歩道を歩く黒髪小柄女をある程度ストークすると、俺は小さな覚悟を決めた。
―プロローグ―
終
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