「焼き殺したんだぞ!!自分の家族を!!」
「あ……、なん……で……?」
目の前で燃えているのは、すっかり変わり果てた我が家だった。
壁も屋根も何もかもが歪み、変色し、パチパチと音を立てながら溶けていく。
突然、これ以上ないほどの悪夢を押し付けられ、僕は止まった。
心臓が抜け落ちた気がした。
「何とか言えよオイ!!」
胸ぐらを掴んでいたのは隣家の大学院生だった。
実家住まいだった僕は、よく彼の家にお邪魔して酒を酌み交わしていた。
恐らく僕は虚ろな目をしているのだろう、激情の彼を横目に、僕はどこか幽体離脱のように冷静に僕を見ていた。
僕が家を燃やしたらしい。
僕が家族を殺したらしい。
他人事みたいに唱えてみて、やはり実感は湧かない。
それでもたった一つはっきりしているのは、僕は確かに『火炎』の能力を持っていた。
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「あっ、おい待てコラお前!!」
院生の手を振りほどいて、僕は一目散に走りだした。
方向なんか気にせず、ただ燃え盛る家から離れたくて走った。
追いかけてくる気配は、段々と遠ざかってゆく。
胸が苦しくなる、つばが辛い。
「……っは、ッは、は、あ、ぜっ、はっ」
近所の公園の、粗末な公衆便所。
辿り着いたのがどこだって構わなかったが、息も絶え絶えに、個室に入って鍵をかけた。
「……何だよアレ、何なんだよ分かんねえよ何なんだよもぉおおおおちくしょぉおおおお、ぼ、僕がぁああああ?」
頭を抱える。
記憶が曖昧だ。
何故家を燃やしたのかよりも、何故家を燃やすまでの記憶がないのかが気になった。
どうしよう、僕は捕まるのか。
当然だ、家族を焼き殺した放火魔なんだから。
でも本当に僕は燃やしていない。
燃やしていないんだ殺していないんだ本当なんだ!
「何で……」
その時、ポケットから何かがはみ出しているのが見えた。
【招 待 状】
*能力者の皆さま、後戻りできない状態になりましたね。
運営側に『千里眼』の能力者がいます。
皆様が能力者である事は当然の事実として知られていることをお忘れなく。
「はぁっ……?!」
再び、止まる心臓。
何だこれ……何だこれ?!
入っていたのは紙切れだった。
文章には続きがあった。
*能力者の皆さま、どうかそのままお聞きください。
今現在皆さまのいらっしゃる地点が『拠点』となります。
24時間以内に能力者を一人殺して『拠点』に戻ってきてください。
理解はできるが思考が追いつかない。
一人殺す?能力者を?
能 力 者 が 僕 の 他 に も 居 た っ て 言 う の か ? !
「に、二十四時間以内に……一人、ここ、殺して、……戻ってくる……」
*殺せなかった方は死にます。
運営側に『条件付き死亡設定』の能力者がいます。
殺せた方は次に進む権利を得られます。
次に次に進めば、運営側と戦うことが出来ます。
我々は強い能力者を求めています。
お分かりいただけたようですので、五秒後にこの紙は破棄されます。
では。
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