「妖精職人の朝は早い。」 (20)


多くの妖精に共通する特徴として

・猫を好む

・無性生殖であり、扁形動物のように分裂して増殖する

・人間とは異なる言語体系をもっている

・背中に2対の透明な翅がある

・100匹程度の群れを作る

等が挙げられる。

どの種類の妖精であっても、共通の言語を使用しているようだ。

食性は明らかになっていない。



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ヤマト妖精


日本列島に広く生息する妖精。体長10~15cm、体重100~120g。翅の長さは7cm程度。

男性の人間をそのまま小さくしたような外見。

稀に、両手を前に突き出して奇妙な鳴き声を発している姿が見られる。これは、人間のラッパーの真似をしているらしい。


ヨーロッパ妖精


ヨーロッパに生息する妖精。ヤマト妖精より一回り小さい。

人間に対する警戒心が強く、すぐ逃げる。

稀に、猫の背中に跨っている姿を見ることができる。


アメリカ妖精


南アメリカの熱帯雨林に生息する妖精。妖精の中で最も獰猛で、顎の力も強い。

最近、関東でも見つかった。木材の輸送船から日本に侵入したとみられる。

ヤマト妖精を駆逐して生息範囲を広げており、一般人が噛みつかれる被害も出ているため、問題視されている。


アフリカ妖精


アフリカ大陸に生息する妖精。妖精の中で最も大きい。

人間に対する警戒心が薄いが、現地特有の寄生虫の卵が体に付着している場合があるので、決して触ってはいけない。


ホッキョク妖精


なんか白い。


エイ妖精


太平洋全域に生息。他の妖精とは異なる特徴が多い。

翅は茶色で厚く、透き通っておらず、ヒレのようになっている。

上側の翅は横に、下側の翅は足元にまで発達し、エイに擬態する効果があるようだ。

下側の翅の先はエイの毒針のように見えるが、柔らかいので刺すことはできない。毒もない。

個体数が少なく、群れを為さない。海中を時速60kmで泳ぎ回る。

えら呼吸はできないようで、数分おきに海面へ顔を出して呼吸する。

素揚げにして軽く塩を振ったり、煮付けにしたりすると美味しい。

かわいい。


妖精職人の朝は早い。

現在、日本全国どこでも取り寄せることができ、鑑賞・労働・食用・愛玩など、様々なニーズに対応する妖精。

それらは全て、ここ広島、たった1人の職人によって集められ、出荷されているのだ。

「まあ、好きで始めた仕事ですから」

自動車を運転しながら、職人は笑顔でそう言った。

「昔から妖精を手懐けるのは得意だったんですよ」

1日の始まりの仕事は、まず妖精が集まりそうな場所を探して車を走らせることだ。


「ここ、良さそうですね」

職人は、とあるアパートの正面に車を停めた。子猫が数匹、アパートの駐輪場でじゃれ合っている。

「妖精は猫、特に子猫がいる場所に集まってくるんですよ」

早くも職人の豊富な知識を垣間見ることができた。

車から降りた職人はトランクを開けて空の段ボール箱を取り出し、両手で抱えて駐輪場へ入って行く。

「普通、妖精を集める時は何に入れます?」

ーー頑丈な籠じゃないですか?

「そうですよね。でも、僕は段ボールに入れるんです」

妖精は顎の力が強く、通常、段ボール程度の入れ物では噛み破って逃げてしまう。

しかし、職人は、妖精が逃げ出す心配は無いと言う。

「無理矢理閉じ込めるから逃げ出すんですよ。ま、見てて下さい(笑)」

職人は目を瞑り、口笛を吹き始めた。

…なんと、妖精が四方八方から飛んで来て、自ら段ボール箱に入っていくではないか!

十分に妖精が集まったところで、職人は口笛をやめて段ボール箱の蓋を閉めた。


職場に戻った職人は小声で妖精に囁きかけながら、妖精を12匹ずつまとめて小さな紙箱へ詰めていく。

ーーなぜ、妖精がこんなにおとなしいのですか?

「おとなしくしてくれるよう、頼んでいるからです。お客様の命令に逆らわないようにも言い含めています。妖精の言語が理解できるんですよ、僕は」

職人の表情は誇らしげだ。

その時、職場の電話が鳴り響いた。

職人は電話を取り、メモを書きながら対応する。どうやら注文のようだ。

職人は電話を終え、住所を書いたメモを妖精に見せながら何事かを話し始めた。

「dssuckvonpjfgshayriuhdbjcjcgtfskgfkggsjlyhlblnjtzrcystg」

職人の発する言葉の意味は我々には全く理解できなかったが、妖精には伝わったようだ。

1匹の妖精が頷き、紙箱を1つ抱えて窓から飛んで行った。

「妖精に住所を伝えるだけで良いので、注文を受けた当日に宅配できます。発送費ももちろん無料です。」

妖精は1ダース180円。お買い得だ。これほどリーズナブルでありながら、職人の年収は1000万円を超えるという。


ーーなぜ、妖精職人になろうと思ったのですか?

「朝も言いましたけど、元々妖精を手懐けるのが得意で、好きだったんですよ。」

ーーあなたがなぜ妖精を自由に操れるのか、考えたことがありますか?

「多分…僕の顔が妖精に似ているからだと思います。親近感があるんでしょうね、僕に対しては。

サングラスをかけたり、マスクを着けたりしたら、妖精を操れなくなるんですよ」

そう語る職人の顔は、確かに妖精にそっくりだった。


おわり


駄文、失礼致しました。転載自由です。

補足
妖精はどれも似たような顔をしています。服は着ておらず全裸ですが、生殖器と乳首はないのでご心配なく。

元ネタはなんだい?

>>13
職人とリポーターのやりとりはN⚫︎Kプロフェッショナルです。
妖精の元ネタは特にないです。

なんでIDがバラバラなの?

>>15
iPhoneからBB2Cで書き込んでいるんですが、理由はよく分かりません
なぜか勝手に変わります

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