未央「子育てしぶりん」 (22)


未央「しぶりんって、いつも怖い顔してるよね」

卯月「たしかに、ちょっと怖いです……」

未央「はっ、もしかしてしぶりん、プロデューサーを狙うスナイパーだったりして!」

卯月「私知ってます! ゴ○ゴって言うんですよね!」

凛「待って、卯月から私ってそんなふうに見えてたの」

卯月「……」

凛「何か言ってよ」

未央「……しぶりん。世の中には知らないほうがいいこともあるんだよ」


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卯月「……ごめんなさい」

凛「えっ待って何これ」

未央「しぶりんって、そんなに怖いと子どもからも怖がられそうだよね」

凛「そんなことは……ないけど」

卯月「凛ちゃん、嘘はダメですよ!」

凛「ちょっとさっきから卯月ひどくない?」

未央「柔らかい顔してみてよ!」

凛「柔らかい顔って……こう?」


未央「あっ、子どもから好かれそう!」

卯月「お花屋さんって感じですね!」

凛「卯月なんかバカにしてない?」

凛「なんか怖いって言われすぎて悲しくなってきた」


みく「おはようございまー……!?」

みく「なにごとにゃ……」

未央「あ、みくにゃんおはよー」

卯月「おはようございます」

みく「お、おはよう……って違うにゃ! 何か変なのがいるにゃ!」

未央「みくにゃん。彼女は今、そう、彼女自身の壁を破ろうとしているんだよ……。今は……見守ろう……」

みく「鏡に向かってずっとニコニコしてる凛チャンなんて怖すぎるにゃ……」


みく「そういえば、Pチャンが3人を呼んでたにゃ」

未央「ほんと?」

みく「美城常務がどうとか言ってたから、たぶん大事なことなんじゃないかな」



美城常務「よく来てくれたな。君たちに折り入って相談があってな」

未央「そうだん?」

常務「ああ。口外は禁止だ」

凛「そんなに大事なことなん……ですか」

常務「そうだ」

卯月「一体、何なんでしょう……」

常務「……実は、君たちに、子どもを預かってほしい」


未央「子どもお?」

凛「子どもって……。まさか、美城常務の……ですか?」

常務「いいや、知人に頼まれたんだが、私はこのとおり多忙でね」

凛「それで、暇な私たちにってことですか?」

常務「ああ、気を悪くしたなら謝ろう。そういうつもりではなかったんだが…」

未央「それで、私たちは何をすればいいんですか?」

常務「1日だけ、子どもを預かってほしい。ただそれだけだ。他には何も」

未央「わざわざ頼むってことは小さい子なんですか?」

常務「たしか……1歳くらいだったはずだが」

卯月「まだ赤ちゃんですね!」

常務「そうだな……。それで、どうかね。やってくれるか」


未央「ふたりとも、やろう!」

卯月「やりましょう!」

凛「まあ、いいけど……」

常務「やってくれるか。頼んだぞ、し、しぶやん…」

凛「(なんか違う……)え……はい……」

未央「あ、ダメダメ。しぶりんもなんかアダ名で呼ばなきゃ」

凛「えっ、そいうことなの」

常務「……」

凛「あっえっと……。み、ビジョム……」

常務「ビジョム……?」

未央「あはは! ビジョムって! しぶりんのセンスなんか変ー!」

凛「あ、す、すみません」


常務「ああ、よろしく頼む」

凛「(なんか嬉しそう)はい」

常務「君たち3人に任せる。なにか必要なものがあれば君たちのプロデューサーに言ってくれ。話は通してある」

卯月「凛ちゃん、未央ちゃん、がんばりましょう! み、び、ジュゲムさん……? 私たち、がんばります!」

常務「島村、ここは学校じゃない。私は君の上司だ。慎みなさい」

卯月「えっ……ごめんなさい」



アーニャ「アー、それで……それがそのレベノク……赤ちゃん……ですか?」

未央「そうそう! かわいいよねー!」

アーニャ「ダー……とても、かわいいです、ね」

卯月「アーニャちゃんも一緒にお世話しますか?」

アーニャ「……それは残念ですけれど、できない、ですね。このあと、お仕事があります……」

未央「そっかー、じゃあ、私たちだけでやんなきゃ」

アーニャ「ジラユ・ヴィダチェ……がんばって、ください」



凛「なんか口外禁止って言われてたのに早速話しちゃったけど大丈夫かな」

未央「まあなんとかなるよ! だいじょーっぶ!」

凛「不安だな……」

卯月「あっ、赤ちゃんが泣いてます! おむつですかね」

凛「卯月、分かるの?」

卯月「前に親戚の子をうちで預かったことがあるんです」

未央「じゃあ慣れてるんだ」

卯月「はい! その時の赤ちゃんもかわいかったなあ」

凛「これかな、おむつ。これ、どうすればいいんだろう」

卯月「私やりますね」


未央「しまむーすごーい! 手際いいねえ!」

卯月「慣れればすぐできますよー。はい、できました!」

凛「できたほうがいいのかな、こういうのって」

卯月「そうですね! 凛ちゃんもやってみましょう!」

未央「おっ、いいねえ。子育てしぶりん!」

凛「子育てって……」

未央「子育てじゃなくて、ヘルパーアイドル?」

卯月「お花屋さんは引退ですね!」

凛「卯月ほんとやめて」


未央「あ、また泣きだした」

卯月「凛ちゃんの顔が怖いからでしょうか……」

凛「えっまだそれ言うの……。けっこうキツいからねそれ」

未央「ほらしぶりん! 柔らかい顔!」

凛「ええ……」

卯月「泣き止みました!」

凛「ええー……」

未央「あっしぶりん顔戻しちゃダメだよ! キープ!」

凛「うう……。これ疲れる……」

卯月「あはは、凛ちゃん変な顔ー」

凛「泣きそう」


卯月「あっ、服掴んじゃダメですよお! お腹が空いたんですかね」

未央「しまむーはおっぱい出ないの?」

卯月「でないですよお、未央ちゃん!」

凛「未央それセクハラだよ。……お願いだから他の子には言わないでよ」

卯月「あっ凛ちゃん顔崩さないでください! 泣いちゃいますから」

凛「私は泣いてるからね。それにも気づいてね」

未央「しぶりんもあやさないとダメかあ」


美波「おはようございます」

未央「みなみん、おはよー!」

美波「おはよう、というか、どうしたの? その赤ちゃん」

卯月「ジュゲムさんに頼まれて預かってるんですよ! かわいいです!」

美波「ジュゲムさん……? かわいいね」

未央「そうだ! みなみん、おっぱい出してよ!」

美波「ええっ!? どういうことなの……」

卯月「この子、お腹が空いてるみたいなんです」

美波「それならふつうにミルクをあげればいいんじゃ……」

未央「いいや、こういうのは天然モノに限りますよ、お嬢さんや」


凛「セクハラやめなよ……」

未央「しぶりんは小さいから出なさそうだよね」

凛「ちょっと」

未央「みなみんに僻んじゃダメだよ。しぶりんには違ういいところがあるよ」

凛「べつに僻んでないよ……。というか私をどういうふうに見てるの……」

美波「あっ、寝ちゃった」

未央「ああ、もう、しぶりんがわーわー言うから」

凛「もう私の心はボロボロだよ」



常務「ご苦労だったな。君たちのおかげで今日は仕事がたいへん捗った」

未央「いえいえー赤ちゃん、かわいかったです!」

常務「そうか。それで突然なんだが、今日の君たちの奮闘をプロデューサーがそばで撮っていただろう」

卯月「そういえば……」

常務「じつは雑誌の企画で、子育てに勤しむアイドルたちのスナップを使うことになったんだ」

卯月「ええー! 凛ちゃんの変な顔がみんなに見られちゃうってことですかあ!」

未央「それは困りますな……ニュージェネのイメージが……」

凛「いま心で泣いてるよ、私」


常務「それを使うかはあとで精査するが……。渋谷んには次の仕事は優先していいものを回そう」

凛「ああ、ありがとうございます」

未央「しぶりんずるい! 美城常務、私もがんばりました!」

常務「考えておこう」

卯月「ええっ、未央ちゃんもですか! び、じょ、ピジョットさん!」

常務「島村、君はこの後残りなさい」

卯月「そ、そんなあ!」


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