街
内田「あれー? 道に迷っちゃった」
内田「おっかしいなぁ、この辺りに吉野が言ってたアクセサリーショップがあるはずなんだけど」
内田「ま、いっか。とりあえず、こっちの路地を……」
内田「おぉー。なんだかおかしな店がいっぱい並んでるー」
内田「ん? ソープランド……?」
内田(ソープランドってなんだろう。ランドは遊園地って意味だろうけど、ソープって……どういう意味だっけ……?)
内田「うーん……?」
内田「気になる」
内田「帰ったらお父さんにでもきいてみよーっと」
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翌日 小学校
吉野「結局、お店が見つからなかったの?」
内田「うんっ。もしかして潰れちゃった?」
吉野「あのお店は今月開店したんだから、まだ潰れないと思うよ」
内田「でもなかったんだってー」
吉野「今度、一緒に行こうか」
内田「うん!」
千秋「おはよう」
吉野「おはよう、チアキ」
内田「おはよー」
千秋「内田、昨日は例の店に行ったんだろ。どうだったんだ?」
内田「聞いてよー。そのお店、どこにもなかったんだー」
千秋「なんでだ」
内田「わかんない」
千秋「どうせ、道に迷ったんだろ。バカ野郎」
内田「ひどい……そのとおりだけど……」
千秋「お前の将来が心配でたまらない」
吉野「あはは」
内田「あ、そうそう、聞きたいことがあったんだ」
千秋「なんだ? つまらないことなら答えないぞ」
内田「チアキ、この前ソープランドっていう場所を見つけたんだけど」
千秋「あ?」
内田「まぁ、この前って言っても、アクセサリーショップを探してるときなんだけどね」
千秋「それがどうした」
内田「どんなお店か知ってる?」
千秋「ソープランド……」
吉野「ランドってついているぐらいだから、なんとなく楽しそうな場所って感じがするよね」
内田「するするー」
千秋「直訳すると石鹸の国ってことになるが」
内田「おぉ! なにそれ!! なんかとっても楽しそう!! ねえねえ、放課後にみんなで行かない?」
千秋「いや、しかし、どういった店なのかも分からないんじゃな」
吉野「内田、お父さんには聞いてみた?」
内田「聞いたよー。そのときビール飲んでたんだけど、なんか吹きだしてた」
千秋「むせたのか」
内田「多分。でね、そのあとお母さんが飛んできて、早く寝なさいっていわれちゃったから、寝たの」
千秋「つまり、情報は聞けなかったと」
内田「うん」
千秋「使えない奴だ」
内田「なんでそこまでいうのー!!」
千秋「石鹸の国という名を持っているということは、石鹸屋なのか?」
吉野「石鹸を使う場所かも」
千秋「石鹸を使うとなれば、お風呂とかになるが」
吉野「もしかして、レジャープールとかなのかも」
千秋「確かに大浴場なんかでもランドとつく場所はあるな」
内田「じゃあ、おっきなお風呂があったりするのかなぁ?」
千秋「その店の大きさはどの程度のものだった?」
内田「えっとね。こーれくらいの場所を使ってたかな」
千秋「こーれくらいか。そこそこの大きさだが、レジャープールほど大きくはなさそうだ」
吉野「他にお客さんとかは見なかった?」
内田「すぐにそこは離れちゃったから。でも、お客さんがいるような感じはしなかったかなぁ」
千秋「繁盛していないのなら、あまり入りたくないな。どんな劣悪なサービスが待っているか分からない」
内田「まぁ、お店の中は見れなかったし、もしかしたらお客さんはたくさんいたかも」
千秋「大浴場というなら内部を見てみないことにはなんとも言えないが……」
吉野「どうする?」
千秋「そうだな……。とにかく情報が欲しい。知らない店に入って、失敗はしたくないからな」
内田「お風呂屋さんだと思っていったら、ただの石鹸のお店だったら恥ずかしいもんね」
吉野「そのお店に電話とかしてみればいいんじゃないかな?」
千秋「流石は吉野。その案を採用する。内田、電話番号は?」
内田「しらないよ?」
千秋「使えないバカ野郎だ」
内田「つかえないっていわないでよー!!!」
吉野「バカはいいんだ」
千秋「そのソープランドはフランチャイズってわけでもなさそうだしな。やはり電話で問い合わせるのが手っ取り早いか」
内田「フランチャイニーズってなぁに?」
吉野「けど、電話番号はどうやって調べる?」
千秋「それは今日の放課後にでも内田に道案内をさせればいい」
内田「ねえねえ、フランチャイニーズってなぁに?」
千秋「そういうわけだ、内田。道案内を頼むぞ」
内田「それはいいんだけど」
千秋「そろそろ授業が始まるな」
吉野「またあとでね」
内田「ねー!! フランチャイニーズってなぁに!?」
マコト「どうした内田。中国人が気になるのか?」
内田「中国人って意味なの? なーんだ、そうなんだー」
マコト「相変わらずおかしなやつだな、内田は」
放課後 街
内田「確か、こっちだよ」
吉野「教えた道と全くの逆方向を言ってたんだねぇ」
千秋「まぁ、内田はバカだしな」
内田「でね、えっと、たぶん、こっち……」
吉野「それから?」
内田「で、ここを曲がれば!!!」
千秋「駐車場か」
内田「あれー? おっかしいなぁ。昨日はここにあったんだけど」
千秋「……」
吉野「お店にいって電話番号を調べることもできないねぇ」
千秋「ここまで使えないバカ野郎は、マコトを除けばいないな」
内田「マコトくんと同列に扱われた!?」
吉野「今日は帰ろっか。チアキの家に遊びにいってもいい?」
千秋「いいぞー」
南家
千秋「だが、気にはなるな、ソープランド」
内田「だよね!! やっぱり行ってみたいよね!?」
吉野「場所もどういうお店かも分からないままじゃいけないよね」
内田「ねーねー、カーナーちゃーん」
夏奈「なんだぁー? 今、漫画が最高に盛り上がっているページに差し掛かっているんだ。余程のことでないと私はお前たちの楽し気な会話に参加しない」
内田「カナちゃんはソープランドって知ってる?」
夏奈「ソープランド? ほほう、どうやら余程のことみたいだな」
千秋「私たちの会話に参加したかっただけだろ」
内田「カナちゃん、知ってるの!?」
夏奈「いや、知らん。ただ、ランドは遊園地的な意味が含まれているから、遊ぶ場所であることは想像できる」
千秋「含まれてないが」
内田「さっすがカナちゃん! やっぱりカナちゃんもそう思うよね!!」
夏奈「で、その遊園地にはいついくの?」
吉野「あ、もう行く気なんだね」
千秋「どういう場所なのかも、どこにあるのかもまだ分かっていない状態だ。いつ行くかなんて決められない」
夏奈「そうか。私としては1000円でお釣りがくるような場所なら最高だね」
千秋「いや、それだと普通の遊園地にすら入れないだろう」
夏奈「だったら藤岡にでも奢らせるか」
千秋「お前、本当に最低のバカ野郎だな」
内田「チアキがいうには石鹸の国ってことらしいけど」
夏奈「石鹸の国か。銭湯みたいなもんか」
千秋「私はそんな感じだと思っている」
夏奈「だが、たかが銭湯屋がそんなこじゃれた店名にするか?」
千秋「しても不思議ではない」
吉野「けど、銭湯だってことがその名前からじゃ分からない気もするけど」
千秋「では、銭湯とは別の店ということもあるのか」
吉野「あるんじゃないかな」
夏奈「まぁまぁ、私たちにない知識なら、年上に聞くのが一番だろう」
千秋「うむ。ハルカ姉さまなら、きっとご存知のはずだ」
春香「ただいまー」
夏奈「おかえりー」
千秋「おかえりなさいませ、ハルカ姉さま」
アツコ「お邪魔します」
マキ「はーい。カナちゃん、チアキちゃーん」
夏奈「マキちゃん、アツコちゃん、いらっしゃい」
内田「わー」パチパチ
吉野「お邪魔してます」
夏奈「ささ、こちらに座ってください、お姉さまたち」
アツコ「あ、ありがとう」
マキ「なになにー? 年上を敬う大事さに気が付いたわけ?」
夏奈「まぁ、今から教えてもらわなくてはいけないことがあるからね。粗相はできない」
春香「勉強のこと?」
千秋「いえ。私たちが無知であるが故にハルカ姉さまのお知恵をお借りしたいと思いまして」
春香「もー、そんなに畏まらないで。どんなことにも私が答えてあげるから」
内田「ハルカちゃん、かっこいいー」
春香「遠慮せずに質問してね」
夏奈「お茶でもどうぞ」
春香「ありがとう、カナ。いただきます」
吉野「はい。ソープランドってどんな場所なんですか?」
春香「ぶふっ!!!」
内田「お父さんと同じことになっちゃった!!」
千秋「ハ、ハルカ姉さま!! 大丈夫ですか!?」
春香「ごほっ!! えほっ!!」
アツコ「ハ、ハルカ、しっかりして」
春香「予想外の質問に思わずびっくりしちゃっただけだから……」
夏奈「どうしたんだ、ハルカ。何を動揺している」
春香「ちょっと、カナ、きなさい」
夏奈「なにさ」
春香「チアキたちにおかしなことを吹き込んだのね?」
夏奈「いや、私はチアキからこの名称を聞いたんだ。吹き込まれたのはむしろ私のほうだ」
春香「嘘つかないで」
夏奈「嘘じゃないよぉ」
千秋「カナの言っていることは本当です。ハルカ姉さま」
春香「え……」
千秋「内田がソープランドという場所を見つけてきたことが発端です。カナは何も関係ありません」
春香「そ、そうなの……」
夏奈「なんで実の妹を信じることができないんだろうね」
春香「ごめんなさい」
夏奈「で、ソープランドってなんだ?」
春香「……」
夏奈「ハルカ、どうした。何か知っているなら、教えておくれよ。楽しい場所なら行くから」
春香「ば、バカなこといわないでー!!!」
夏奈「な、なにがだよぉ」
マキ「無理だよ、カナちゃん。そこはね、未成年じゃ入ることすらできないって噂があるからね」
夏奈「なんだと。R18な遊園地とはどういう場所なんだ」
千秋「未成年がダメということは20歳未満はダメなんだろ」
マキ「そういうことだね。私たちではソープランドの全てを知ることはできない」
内田「なーんだ。ざんねん」
吉野「でも、少しぐらいなら知ることはできるってことですよね」
マキ「流石、吉野ちゃん。実は――」
春香「……」
マキ「いえ、なんでもありません」
内田「えー!? 何か知ってるならおしえてよぉ!!」
マキ「ここは物知り博士のアツコからお願いします!!」
アツコ「ごめん。ソープランドってなに?」
マキ「え……」
アツコ「楽しい場所なの?」
マキ「いやいや、アツコさん。そういう冗談は通じないって」
アツコ「ホントに知らないんだけど……」
マキ「それはおかしい!! いまどきの高校生ならソープランドがどういった場所かぐらいは耳にしているはずなのに!!」
アツコ「そんなこと言われても……」
春香「待ちなさい、マキ。アツコなんだから、ありえないことじゃないでしょ」
マキ「で、でも、これじゃあ、私たちが穢れた女子高生みたいで嫌じゃない?」
春香「け、けがれたって」
夏奈「なぁ、ハルカ。どうして高校二年のハルカとマキちゃんが、20歳からでないと入ることすらできないソープランドのことを知っている?」
春香「え……!?」
マキ「まぁ、あれよ。高校生にもなると色々と情報が入ってくるもんだからね。ソープランド程度のことは一般教養レベルだし」
アツコ(そ、そうなんだ!)
内田「なら!! 教えてください!! 高校生になったときに恥ずかしくないように!!」
吉野「私も知りたいです」
千秋「ハルカ姉さま、ぜひ」
春香「で、でも……あの……」
夏奈「おしえてよー、ハルカー」
アツコ「お願いします」
春香「どうするのよ、マキ!!」
マキ「私だけの所為ですか!?」
春香「そうじゃないけど、そうでしょ!」
マキ「理不尽だー!!」
内田「やっぱり、石鹸の遊園地なの?」
夏奈「銭湯っぽいのか?」
アツコ(ソープだから石鹸のことっぽいけど、それならすぐに教えてくれるはず。どうしてハルカとマキは教えることを躊躇っているんだろう)
アツコ(もしかして、ソープランドとは教えにくい場所なのかもしれない。広めると人が多くなってゆっくり遊べなくなるのかもしれない)
千秋「石鹸の国なのですか、ハルカ姉さま」
春香「そ、そうそう。カナの言う通り、お風呂屋さんみたいなものらしいわ」
マキ「本当ですか!?」
春香「なんでマキが驚くのよ!!」
マキ「そこまで詳しいなんて、まさかハルカはアルバイトの経験が――」
春香「失礼でしょ」ゴンッ
マキ「いたっ」
内田「なんだ、お風呂屋さんなんだ」
千秋「では何故、未成年は入店できないんだ」
吉野「気になるよね」
アツコ「こ、混浴だから、とか」
夏奈「ただのお風呂屋さんがこじゃれた名前をつけるんじゃない。なんとかの湯とかで十分だろ」
千秋「お前の価値観を押し付けられてもお風呂屋さんは苦笑いするだけだ」
春香「さ、この話はおしまいね。解散っ」
吉野「お風呂屋さんみたいなところっていうことは厳密にはお風呂屋さんとは違うんじゃないんですか?」
春香「ま、まぁ……」
吉野「その違いを教えてもらえるとうれしいです」
春香「違いと言われても説明できません!」
内田「えー!? ソープランドのことしりたい、しりたいー!!」
春香「ダメです!」
夏奈「いいのか、ハルカぁ。そんな頑なに口を閉ざして」
春香「ど、どういう意味よ」
夏奈「私を含め穢れを知らない天使たちは、今ソープランドなる場所に興味津々なわけだ。なのにそれを誰も教えてくれない。するとどういった行動に出ると思う?」
春香「まさか……」
夏奈「大人には内緒でソープランドへ行ってしまうかもしれないぞ」
春香「そ、そんなこと許しません!!」
夏奈「ハルカが許さなくても、子どもは好奇心に負ける。大人が教えてくれないことは自分で調べるぐらいの行動力だってある」
春香「うっ……」
夏奈「無邪気な私や内田は教えてくれないなら、自分の目で確かめるかもしれない」
千秋「私は無邪気じゃないのか」
吉野「私も?」
夏奈「どーする、ハルカ。ここでどのような場所かを説明したうえで行くなと忠告するのか。それとも口を閉ざして、子どもの好奇心を野放しにするのか」
春香「それは、けど、でも……」
夏奈「私や内田が危険な目にあってもいいっていうのか!!」
千秋「危険であることがわかっているなら、行かないが」
夏奈「教えるか、教えないか。ハルカに残された選択肢は二つしかない」
春香「教えればチアキたちが汚れてしまう……だからといって教えずにしておくとチアキが店の中に……あぁー!!!」
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