遠野貴樹の結婚式 (22)



コンコン


「!」









それは、ドアをノックする音から始まった。














「………」


コンコン


「入れ」


ガチャッ…






























ビスケット・オリバ「やっと見つけたぜ。ミスターオーガ」


範馬勇次郎「………」





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439659482

オリバ「毎度毎度、キミはすぐに何処かに行く」ドカッ

オリバ「コッチはそんなキミを探し当てるのに疲れ果てて……ホラッ、こんな風にソファーに座ったまま立ち上がれない」

オリバ「もうヘトヘトだよ」




勇次郎「下らん」




オリバ「………」


勇次郎「粗雑な会話などをしに、遥々ニューヨークに足を運ぶ阿保がいるかよ」

勇次郎「下手な処世は謹め」





オリバ「………」


オリバ「ヤレヤレ、いっつもコレだ」

オリバ「まぁ良い。ならさっさと本題に入らせてもらうが、キミ……いや『我々』宛にこんな物が届いてね」スッ



パサッ



勇次郎「………」

オリバ「まぁ見ての通りだ」

オリバ「ただコイツをキミに届けようにも、キミには決まった住所も活動拠点も無いから色々手間取ってね。しょうがないから私が直々にキミの今いる現在地を特定し、こうしてメッセンジャー紛いのコトをしに来たってワケだ」


勇次郎「招待状とは……なかなか無ェなァ、こういう手合いは」


オリバ「まあね。しかもコイツは只の招待状ではない」


















結 婚 式 へ の 招 待 状 だ ッ ッ ッ












勇次郎「………」



オリバ「………」



勇次郎「招待状じゃねェんじゃねえのか?」

オリバ「私もそう思って確認したが間違いは無かった」

勇次郎「俺宛じゃねェんじゃねえのか?」

オリバ「キミと私とその他大勢宛だ」



勇次郎「差出人は?」

オリバ「トクガワ老というコトになっている」

勇次郎「………」



勇次郎「あいも変わらず、ロクな事しねェにも程があるぜ。あのジジイだけは」

オリバ「色々と経緯をトクガワ老に問いただしてはみたが、どうやら我々の参加は新郎新婦側……つまり『彼ら』には一切のシークレットらしい」

オリバ「新郎のあのボーイは、トクガワ老にお世話になった御返しとして招待状を送ったのだろうが、まさかその招待状がトクガワ老から我々に回っているとは夢にも思うまい」

オリバ「正直、気の毒という他無い」フフッ

勇次郎「おい」

オリバ「ン?」




勇次郎「その他大勢とは?」






















花山薫「…………」





柴千春「…………ッッッ」











木崎「あの……どうしましょうか、コレ…」



千春「イヤ…どうしましょうっつーか……ッッ」

花山「招待状、だな」

千春「えッ……まぁ、ハイ、そうっスね……それも結婚式の……」



花山「………」



千春「……やっぱ、出ちゃあダメっスよねッッ?」

木崎「そりゃ駄目に決まってんでしょッ!?ウチらみたいな極道がカタギの宴席に…」

花山「出れば…」

木崎「!?」


花山「タダじゃあ済まねェぜ」


木崎「そっ、そんな事は分かってますッッ!だからこんなモンは…」

花山「そうじゃねぇ」

木崎「えっ?」



花山「俺らが出りゃあ、式はタダじゃ済まねえ」


花山「だが騒ぎさえ起こさないってんなら、ハナシは別だろう」



木崎・千春「………」






木崎・千春「出るつもりっスかッッ!?」

花山「いや、出ねえ」









渋川剛気「いや~~…久々に会ってみれば……なんつーかなァ…はは…」


愚地独歩「フフ…言いたい事は分かります」





渋川「招待状ってかいッ?」

独歩「ええ。それも殆んど見ず知らずと言える、全くの他人が催す結婚式へのです」

独歩「朝イチに来てみれば、道場の投函口にコレが」ヒラヒラ

渋川「はァ~~~…」

独歩「しかもコレ、差出人と主催者が全くの別人なんですよ、ホラ」

渋川「どれ、見せてみい」ズイッ

渋川「………」





渋川「………いいのかい…こんな事しちゃって」

独歩「…いえ、正直気が引けます」





独歩「が」


渋川「ん?」

独歩「これも正直な感想ですが、魅かれます」

渋川「は?」

独歩「この結婚式の主催者側の新郎……驚く事に、あの範馬勇次郎襲撃事件の渦中に居たそうです」


渋川「エッ!?」


独歩「気になるでしょう……あのいかにもな無防備さ、無力さで、どの様にしてあの場に辿り着き、どの様にして生還したのかが」

渋川「…よりにも寄ってあの坊主かいな…」

独歩「そうです。よりにも寄ってです」


渋川「………」



独歩「まあ、悩みどころ……と、言った所でしょう」












鎬紅葉「………」






助手「? 何ですかソレ?」


紅葉「結婚式への招待状だよ。15日後にやるらしい」

助手「あ~、そういうのって断り難いですよねー」

紅葉「別にまだ断るとは決めてないけど?」

助手「えっ……でも、そんな余裕あります?手術の予定だって入ってるじゃないですか」


紅葉「まぁ…緊急に手術が必要な患者さんじゃないし…」


助手「チョッ!それはマズイですよッ?」

紅葉「大丈夫だって。ちょっと当日のオペを六時間ばかし遅らせるだけのハナシさ」フフ…

助手「いや、ですから!それで患者さんに何かあったらどうするんですか!?」

紅葉「何かなんて起きないよ」

助手「なっ…?」




紅葉「カルテも『患者も』イジッたし」




助手「…………」




紅葉「そういう事だから、ネ?」

助手「ハ…ハイ……」





思いもよらない事。


それは、本当に予想だにしない時に訪れる。


コッチの事情なんて、まるで考えちゃいない。












範馬刃牙「おっ」








起き抜けに走る、負傷の痛みのように。

不意に訪れる天変地異のように。



刃牙(ウッソだろ!?………なんでこんな、いきなり…!!?)



親父の気配のように。





ガラッ


刃牙(開けたッッ 何を!? 玄関扉…
いつの間にこんな近くに!? はっやッッ
何処にいる!? もう来てるッ!! 俺の背後!)

刃牙「えっ」





刃牙(俺の真後ろッッッ!!!??) ザ ウ ッ !






刃牙「!!!!!!!!!」












勇次郎「…………」







刃牙「………」






刃牙「お……親父……?」


勇次郎「クスッ♪」

刃牙「!!?」


勇次郎「ちょいとばかし見ねぇ間に、また腑抜けたな」

刃牙「……ッッ」

勇次郎「とことん、学ばぬ餓鬼よ」

刃牙「…ヘッ、それを言いにわざわざここまで…」


勇次郎「んなわけねえだろ」


刃牙「………」


刃牙「じゃあ…一体なんの…」

パサッ

刃牙「用事……って、なにコレ?」

勇次郎「結婚式に招かれた」

刃牙「………」


刃牙「………えっ…誰が…?」



刃牙「お……俺かい?」


勇次郎「いいや」


刃牙「………」




刃牙「………えっ、ちょっ」


勇次郎「俺がだ」


刃牙「~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!??」


そりゃあもう、驚いたのなんのって。

だってあり得ないじゃん。

『あの』範馬勇次郎が、地上最強の生物が、巨凶が、ONIが…
人の絆どころか、人の命を無数に屠った『あの』親父が…

よりにも寄って結婚式に誘われるなんてさ……ねえ?



刃牙「誰が………誰が、親父を……?」



しかもさァ…



勇次郎「差出人は徳川光成となってはいるが」

勇次郎「主催はあの青二才ときてる」

刃牙「……?…」

勇次郎「貴様が知らぬハズが無いだろう」

刃牙「えっ…?」

勇次郎「遠野貴樹……ジジイからは聞いたぜ、貴様と彼奴の邂逅は」

刃牙「邂逅……って…俺、その人と会っ…」


刃牙「あ」



刃牙「ア~~~~~~~~~~ッッッ!!」




主催があの、いかにもな普通っていうか、アノ人だもの。
そのアノ人が、親父を呼んだっつーんだもの。

そりゃあもう、まずは疑ったさ。
あり得ねえもんそんな話。
でもなァ…



勇次郎「………」



親父がそんな嘘を吐く為に、こんな所に来てくれるなんて、それこそあり得ないんだ…

だから多分…いや確実に…
親父の言葉に嘘は無いんだ…



勇次郎「刃牙」


刃牙「!!!」ビクッ


まぁ、何よりビックリした言葉は…





勇次郎「てめえも来い」




コレなんだけどね。



刃牙「………な…」


刃牙「な…ん…で…?」

勇次郎「分からんのかい」

刃牙「…ハイ……」

勇次郎「てめぇが経験不足だからだ」

刃牙「経験って、なんの?」

刃牙「もしかして……結婚式の…とか?」

勇次郎「アホウ」


勇次郎「冠婚葬祭…行事式典…伝統…儀式…」

勇次郎「これらの格式に怖気付き、遅れを取る貴様の心根」

勇次郎「そいつが忌々しいと言っている」

刃牙「!!ッッッ」

勇次郎「教えられてないから…分からないから、と、てめえは宣い開き直っていたが」

勇次郎「だったら叩き込んでやろう」


刃牙「す…スミマセン……」


刃牙「あっ」

勇次郎「………」

刃牙「コレ……主催と差出人、違うって事は…遠野さんが誘ってるわけじゃ、ないんだね…ハハ…」


勇次郎「………」ハァ~~



勇次郎「なっちゃいない……」


刃牙「ごめん…」

刃牙「でも…俺、気が動転してたっつーのもあるけど…」

刃牙「いきなりだったし…教えられてないし…」

勇次郎「テメェ……」

刃牙「いや、ゴメン…なさい…」









愚地克己「いや……あのさ、状況は飲み込めたけどよ親父」


独歩「ん」


克己「なんで俺を誘うんだよ、それで」

独歩「興味はあんのかな…と思ってね」

克己「いや、その遠野って奴には興味はあるけど、だからって結婚式にまでは行かないって、フツー」

独歩「ふーん…」

克己「ふーんって…」



ガラッ



末堂厚「オレは気になります」

加藤清澄「右に同じく」ニィッ


克己「は?」

独歩「ま、そういう事だから」

克己「そういう事って…どういうコトだよ」

克己「あいつらと親父が見に行きてえのは分かったけどよ、それでなんで俺も行く事になるんだい?」

独歩「ならんさ」

克己「…?…」


独歩「でもよぉ……創立者と有段組最上位2名が行くって言ってんだぜ?」


独歩「なぁ?」

末堂「………」

加藤「………」




克己「………」



克己「親父」

独歩「お、その気になっ…」

克己「苦手なんだろ?こういうの」

独歩「あたりめえよ。赤の他人の結婚式なんて肩身が狭くてしょうがねえ」

克己「決めた。俺ァ行かない」

独歩「ちぇっ」





店員「うーん、お客様のサイズですと…」


刃牙「えー……いや…」




昨日、親父に言われた事…
つっても、ショックがデカ過ぎてほとんど覚えちゃいないけど。
あの言葉に従ってこんな所に来たはいいけど。

何が良いものなのか、全然分からねェ…

そもそもスーツなんてほとんど着た事無いし、サイズを選ぶ基準だって、動きやすさが全てだった。
だからいっつも、ジーンズとか、ジャージとか、短パンとかそんなんばっかりで…

そんな俺に…




店員「お客様の体型ですと、やはりコチラのサイズの方がよろしいと思うのですが」

刃牙「………」


黒スーツ…しかも、やたらと布地が良さそうな…



刃牙「………やっぱり…」

店員「はい?」

刃牙「着てるっつーか………着られてる?」

店員「………ッッッ」





似合わねェ……









店員さんも大変だよなァ…
スーツが着れないヤツにも似合うスーツを選ぶなんて…


刃牙「あの、この布どーすんですか?」

店員「あ、ポケットチーフですね」


しかも、着こなしを手取り足取り教えるなんて、なんというか…



店員「ポケットチーフの畳み方ですが、まずはここを…」

刃牙「………」



もの凄く申し訳ないッ
































ガチャッ



店員「有難うございました」


刃牙「アッ…ハイ」


バタン…




刃牙「フゥ~……」




このザマじゃあ、確かに…


親父もキレるよなァ…


このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年08月22日 (土) 01:24:30   ID: UPz9C_Ia

あの面子が結婚式…嫌な予感しかしない!!だが‼それもまた良し!!! 期待して待つ❗

2 :  SS好きの774さん   2016年09月13日 (火) 23:38:18   ID: fGJaOO0B

続きあったのかッッッッッ!
同じく期待して待ちたいと思います。

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom