伝説の結衣さんのスレがあまりにふがいなかったのでリベンジ。
また地の分(のようなもの)メインで行きますよ。
「……もうこんな人生どうでもいいや。いっそ安価に任せてみるわ」
比企谷家は末代まで恥さらしを生んだ家として責められるかもしれないが、俺をこんなにしたのはあんたらだ。
感謝している部分もあるが、やはり恨みはある。
―――
1:はっちまん
安価で何でもしますよ。
安価>10
―――
何故かヒッキーの知り合い名指しでもオッケー!
安価下1
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439465443
俺は自暴自棄だった。
奉仕部が楽しい空間になればなるほど、強い光を浴びれば浴びるほど、影は濃くなる。
前向きとは言えないまでも、努力を続けている二人を見ていたら、時々死にたくなった。
だから、俺は流行りの掲示板に人生を任せることにした。
人を殺せと言われたら殺そう。
女を犯せと言われたら犯そう。
それくらいの決意があった。……のに。
―――
10:天才JD
はるのんと結婚
―――
目を疑った。
結婚なんて指示が出る事も驚きだったが、それ以上にあだ名とはいえ名ざしだったからだ。
「はるのん? なんではるのん限定なんだ?」
俺は困った。
だって、俺にはるのんなんて知り合いは……。
―――
13:はっちまん
はるのんっていうのは人の名前でおk?
14:可愛い後輩
何言ってんですか?
はるのんってのはあだ名で呼びたい後輩の隠語ですよ。
つまり、後輩と結婚しましょうってことですよ。
15:クーデレ
>14は惜しい。
あだ名で呼びたい位の仲はあってる。
つまり、あだ名で呼んだ事のある同級生。
かわなんとかさんとか良いんじゃないかな?
18:天才JD
はるのんなんて1人しかいないでしょ?
―――
頭を抱えた。
安価の指示には絶対的に従うつもりだった。
自殺しろと言われたら自殺するつもりだった。
だけど、はるのんと結婚というフレーズはあまりにもはっきりしていなかった。
はるのんが誰なのか。
また、結婚するのは俺となのか、はるのんと誰かが結婚すれば良いのか、曖昧すぎた。
だからもう一度、俺は安価をとることにした。
―――
25:はっちまん
はるのんと結婚をもう少し具体的に指示お願いします。
安価>30
―――
安価下1
―――
29:可愛い後輩
はるのんさんと系統が似てる生徒会長の後輩と付き合いましょう
30:天才JD
所属している部活の部長のお姉さんと結婚しよう
31:ふたつくくり
元生徒会長と一緒にデートするのが良いと思うよ
―――
掲示板ってこんなに前向きな安価ばかりだっただろうか。
だが、問題はそこじゃない。
問題は俺が安価に従うかどうかだ。
これまで、世界が俺を支配していた。
俺が何をしようと許さず、否定し、殺した。
だから今度は俺の番だ。
俺が世界を支配し、肯定し、殺してやる。
―――
35:ぼっちまん
>30に従ってみようと思う
―――
これが後に、日本中に知れ渡る大事件に発展しようとは、今の俺には想像もついていなかったのだった……。
その日の夕方、俺はスマホの画面とにらめっこを続けた。
画面には一文、
「結婚してください」
雪ノ下陽乃へのプロポーズをメールの本文に打ち込んでいた。
後はこれを送るだけだ。
それで安価を実行したことになる。
だけど……。
(本当にこれで良いのか?)
胸のもやもやが、一向に送信ボタンを押す作業を許してはくれなかった。
だから、相談する事にした。
なぜ名前を変えた
>>13間違えましたw
―――
41:はっちまん
該当する人物にプロポーズのメールを送ってみようと思いました。
けど、何か違うような気がして、送信ボタンを押す事ができません。
どうしたらいいでしょうか?
―――
慣れ合いを嫌う掲示板にこんな事を書いていいか迷った。
だが、厳しい言葉でも、今の俺には必要だ。
しばらく待っていると、
―――
43:名無しの千葉
それが結婚する事に対しての君の全力か?
―――
誰でもない掲示板の住人の一文。
俺はその一行に、運命を決められたような気がした。
―――
45:はっちまん
>43 の言うとおり、俺は安価に対して適当に行動しようとした。
それは俺のしたい事じゃない。
だから、メールはやめようと思う。
46:名無しの千葉
そりゃいきなりメール来ても困るだろ
47:名無しの千葉
はっちまんが純粋で可愛い(意味深)
49:名無しの千葉
まずは>1のスペックと、結婚(したい)と思ってる人のスペックを書いて
51:名無しの千葉
お前ら優しすぎw
―――
この時の俺は、まるで電車男の主人公になったようで、スラスラとレスをした。
―――
55:はっちまん
はっちまん
男子高校生
目が死んでる
ぼっち
基本的に嫌われる
はるのん
女子大生
美人で明るく完璧な人
面倒見も良い
基本的に好かれる
57:名無しの千葉
完璧かよ……
58:名無しの千葉
はるのんに対するはっちまんのスペックww
61:名無しの千葉
あきらめろん
―――
自分で書いていてなんだが、スペックを書いてみて、その差は絶望的だった。
例えるならシャア相手にカイが挑む……いや、一般兵が挑むようなものだ。無茶がすぎる。
だが、俺は今更引く訳にはいかない。
何も、愛し合って結婚する必要はないのだ。
何があっても彼女と結婚すれば、それでいいのだ。
―――
71:はっちまん
例えば、妹を監禁して脅すというのはどうだろうか?
73:名無しの千葉
犯罪者www
75:名無しの千葉
通報したw
76:名無しの千葉
感動の話になるかと思ったらwww
―――
俺は幸せな人生を目指している訳じゃない。
このクソみたいな世界で、
何一つ傷を残せなかった世界で、
少しでも抗いたいだけなんだ。
そんな俺が気を引いたレスがこれだった。
安価下1
―――
78:名無しの千葉
共通の知り合いにデートのセッティングを頼もう
―――
俺の闇を知ってもなお、前向きな指示を出してくる者がいる。
本来なら無視する所だが、一度くらいは実行しても良いかと思った。
だから、その指示通り電話帳を開いた。
「もしもし、葉山か?」
『ヒキタニ君? いきなりだね』
電話越しでもイケメンだと分かってしまう透き通った声。
このスマホで人と話すのは、一体何度目の事だろうか。
「頼みたい事があるんだが」
『君が僕に?』
「……嫌なら良いよ」
『いや、ごめん。少し驚いてさ』
「意外か?」
『君はどう思うんだい?』
「死んでもする気はなかった」
『死んでも良いからしたいことなんだね』
この男は本当に察しが良いから困る。
だが、俺も今更引く訳にはいかない。
意を決して、言葉を紡ぐ。
「陽乃さんと、デートがしたいのだが」
しばらくの間、静寂が続いた。
「おい、聞いてるのか?」
『あ、ああ、ごめん。聞いてるよ』
まぁ、自分でも驚くべきことだと思う。
「で、どうなんだ? 断るのか?」
『……いや、努力はしてみる』
何故この男は俺みたいな奴の頼みでさえ努力しようと思うのか。
そういう所が嫌いだったが、今は頼みの綱だ。
「……頼む」
『一つだけ、良いかな?』
「………?」
少し間が空いた後、葉山は落ちついた声で、
『君は陽乃さんの事を、好きなのかい?』
と尋ねてきた。
俺は間髪いれず答える。
「普通だ」
『そうか』
葉山はそれ以上何も言わず、通話を切った。
あの時、俺は嘘でも「好きだ」と答えるべきだったのだろうか。
その答えは未だに出ていない……。
一旦はなれます。
安価次第で、純愛にもエロにも犯罪にもなります。
よろしくです。
―――
101:はっちまん
知り合いに頼んだらお願いしてくれるらしい
102:名無しの千葉
知り合い有能
103:名無しの千葉
知り合いに抱いてもらえ
104:名無しの千葉
まだ確約できた訳じゃないんだから落ちつけ
108:はっちまん
もし、知り合いが断られたらどうしよう?
―――
アドバイスをお願いします
安価下1
―――
109:名無しの千葉
雪ノ下県議に直談判
110:名無しの千葉
雪ノ下って誰だよ?
112:名無しの千葉
個人情報漏えい通報した
113:名無しの千葉
死ね
―――
やはりこの掲示板には俺の知り合いがいるのだろうか。
しかし、掲示板にスレ建てたのは完全に俺の気分……。
何か大きな力が働いているような。
1、違うスレを立てて、情報を探る
2、葉山に結果を聞く。
2の場合、安価下二桁が50以上でお誘い成功、49以下で失敗です。
どちらにしますか? 安価下1
スレの不穏な動きは気になったが、目的は安価を達成する事だ。
先に葉山隼人に聞くべきだろう。
俺は急いで電話をかける。
『もしもし? 早いね』
「ああ、どうだった?」
『良いって言ってたよ。良かったね』
「……ああ、ありがとう」
『驚いたな。君がそんなこと言うなんて』
「……そうだな」
『じゃあ、もし何か困ったことがあったら言ってよ。連絡先は知ってるだろう?』
「ああ、知ってる」
電話を切ると、何だか空虚な達成感が心を支配した。
こんなにあっさりと話が進んで良いものだろうか。
「……いや、考えすぎだな」
もっと昔みたいにライトな考えを持とう。
どうせこれも葉山の策略で、クラスメイト全員で俺を騙してんだろうな……死にたくなってきた。
―――
141:はっちまん
はるのんとデートできそう
142:名無しの千葉
うぉおおおお!きたーーーーっ!
145:名無しの千葉
嫉妬で涙出てきた
146:名無しの千葉
もちろん実況するんだよな?
147:名無しの千葉
むしろ安価で行動だろ。
151:はっちまん
じゃあ、当日はるのんと会ったら何をするか
安価>155
―――
安価下1
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません