俺は幻覚を見ている (12)

―俺は土間 タイヘイ。
東大を卒業し、今は会社で働いている、普通…の男だ。
そんな俺には、ある秘密がある。
それは…、
「うまるーん」
ボッと効果音が付くように、家の玄関に来ると二頭身にする妹、土間 埋(うまる)がいる。
こいつは、外では名門高校に通っていて、テストで満点取りまくり、スポーツもクラス一、
困っている人は放っておけない性格で、スタイルも顔も誰もが見惚れる程という完璧な美妹だが、
家に帰ると…。
「おにーちゃーん、肉とコロコロ(漫画)買ってきてー。」
そう、干物…、干物妹(ひもうと)になるのだ。
「ゲームなんかやってないで、自分で買ってこいよ。俺だって仕事のことで忙しいんだよ…。」
「むう、お兄ちゃんのケチいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!」
近所迷惑になる程、うまるは大きな声を出し、ひたすら暴れまくる。
アパートでこれをやるもんだから、いつ苦情が来てもおかしくない状態だ。
俺は、こいつが暴れて俺が追い出されるぐらいなら、買ってやった方がマシだと思ったので、
一応買いに行くことにした。
「わかった、わかったって!!買ってやるから大人しくしてろよ?」
「最初っからそう言えばいいのにぃ。」
相変わらずウザい奴…と思っているのは笑顔で揉み消し、
「行って来ます。」
と言ってスーパーへ向かった。

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本当、あいつはあざといと思う。
あいつが自分勝手だから叱っているだけなのに、皆俺を汚物を見るような目で見てくる。
これを見計らって自分勝手なことをしている。
俺が仕方なしにそれを受け入れないと、皆はあいつサイテーだとか言う。
つーか、言われた事は数え切れない程ある。

可愛いからって許される世界なんか、大嫌いだ。

でも、今日は一人で気軽に買い物ができる。
俺は今、今までで3番目ぐらいにいい笑みを浮かべていると思う。
「えーと、ステーキとジャンバーグ用の肉、コロコロっと…。」
漫画は値引きされることは滅多に無いが、肉ならよく値引きされる。
俺はそれを知っているので、半額になるまで漫画を買い物カゴの中に入れて、ひたすら待つ。

――15分後、やっと半額になったので、肉を誰かに取られまいと、
すかさず買い物カゴの中に入れる。
そして、俺は会計を済ませ、自宅へと向かった。

「ただいま。」
「うおぅっ、おかえりー☆」
うまるは、肉が欲しいあまり、俺の前に立ってよだれを垂らしていた。
「お肉、お肉!早くお肉作って!!!」
「ハイハイ、それよりお前のよだれ、床に垂れてんぞ。」
「え、う、う、うぎゃああああああああああ!!何コレ、汚いよぉ!」
お前がやったんだろ、自分で後始末しとけ。
また俺がやることになるのはもうこりごりだ。
俺は、助け船を求めるうまるの声を無視してジャンバーグを作り始めた。
「ぎゃははははははっ!!!」
…俺はいきなりの奇声に驚き、体がビクッとし、恐る恐るうまるの顔を見る。
「…お兄ちゃん、どうしたの?」
なんだよ、可愛いじゃないか…。
美妹に戻っているのか?
「い、いや、何でもない…。」
この美貌だけは、こいつの良い所だ。

「それにしてもお前、いつも発狂してるよな…。」
「発狂してないもん!!」
うまるは頬を膨らませると共に、足も伸ばしている。
これが二頭身になったこいつの怒ったポーズだ。
「じゃあ黙ってゲームしてろ。」
「はーい…。」
よし、これで追い出されない(かも)しれないぞ。
俺は止めていた左手を動かし、料理を再開した。

>>1の二頭身にするは、二頭身になってしまうでした。
すみません…

どこかからお肉、お肉と声がしている気もするが、
気にしたら負けだ。
とりあえず肉を焼き、トッピングをして…完成。
とりあえず、うまるに見せに行った。
「もうジャンバーグできたぞ。」
うまるは嬉し過ぎるのか、ぴょんぴょん短足で飛び跳ねている。
(外でいる姿で飛び跳ねているよりは体重も減っているので、音があまりしない?らしい…。)

「じゃ、いっただきまーす!」
「いただきます。」
…いつも買っているハンバーグよりも美味いので、俺は味わって食べている。
が。
うまるは手を蜘蛛の巣みたいにすばやく動かして食べる。
(例えがおかしいのは気にするな。)
しかも、口が異様に開いている。
(多分15cmぐらい。)
…本当にこいつは人間か?
「おにーちゃん!これうんまー!!」
うまるは1分もかからずにご飯やサラダまで、全て平らげてしまった。
これはさすがに早すぎるので、一応注意しておいた。
「お前、もっとゆっくり食べろよ?喉に詰まるぞ。」
「あは、大丈夫だよー……ゔっ…。」
本当に詰まったのかよ…!
「おっ、おい、大丈夫か!?」
うまるの大きな声は、だんだんかすれてゆく。
「あ…あう………。」
その時、俺の身体は、何故か調味料がある所に向かって行き、
気が付けば、粉のようなものを取り出していた。
「なんだよ…これ…。」
全く見に覚えのないものを、俺は手にとっていた。
俺の心は反抗しようと、手から離そうとするが、
俺の身体はそう簡単には離れなかった。
そして、俺はその粉を開け、そのまま飲み込んでしまった…。

第二章

目が覚めると、俺は、どこかで見たことがあるような、懐かしい家の中にいた。
「ここは何処なんだ…?」
と小声で呟きながも、ぼんやりと、誰かもわからない少年の写真をずっと見ていた。
よく見ると、これは高校生ぐらいの俺に似ている。
―思い出した。ここは俺が高1のときに住んでいた家で、
俺は今、10年ぐらい前の時の世界にいるんだ。

それにしても、随分視界がぼやけてるな。
…眼鏡かけてないからか?
俺は、眼鏡をかけてみる。
「…ダメだ、余計見えなくなる。」
何で、どうしてこうなったのだろう。
あの…粉のようなもののせいか?

もしや、あの粉は…×××なのか…?
いや、考えても苦しくなるだけだ、やめよう。
俺はまた、布団の中へうずくまった。
やっぱりここは一番落ち着く。
愚痴っても親にバレないし、○○な本を読んでても気付かれない。
まさに究極のエデン!

そう現実から逃げていると、布団の中にはうまるの姿があった。
「うー…、うー…っ。」
うまるは息切れしてるのかと思うほど、苦しそうに見えた。
「う、うまる…?」
俺が声をかけても、何とも返事をしない。
…やはり、俺は幻覚を見ているのだろうか?
俺は、とりあえず目を瞑り、現実の世界へ戻ろうとした。
―――その時。
うまるのような声が、どこかからか聞こえてきた。
「…貴方は、完璧だけど、ちょっと抜けてる妹が欲しいって私に願ったよね?」
後ろを振り向いてみても、誰もいない。
「だから、私の分身が貴方の妹としてここに来たの。」
な、何を言って…。
うまるは、本当にさっきまでいたのに……。
まさか、俺が覚せい剤を飲んだからうまるという妹がいると幻覚を見てしまったとでも言うのか…?

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