引篭もり吸血鬼赤土晴絵 (260)

阿知賀には赤土晴絵という某有名吸血鬼の末裔が住んでいた
晴絵は吸血鬼だが人間を襲うこともなく阿知賀の住民達と仲良く暮らしていた
しかし晴絵は吸血鬼ハンターに狙われていた
というわけで晴絵は阿知賀の住民達と楽しく暮らしながらも吸血鬼ハンター達を返り討ちにする日々を送っていて
いつしか阿知賀のレジェンド吸血鬼と呼ばれるようになっていた
そんなある日
晴絵は突然家に引篭もり二度と家から出なくなった
それから十年の月日が流れる

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第1話

憧「晴絵ー、今日こそは外に出よーよ!」

穏乃「赤土さーん!一緒に外で遊びましょー!」

・・・・・・・・

穏乃「やっぱり駄目か」

憧「引篭もって10年だもんね。一筋縄じゃいかないわ」

穏乃「そうだね。私も早く赤土さんに会いたいなー」

初瀬「ここがあの吸血鬼の家だな」

憧「初瀬、どうしてここに?」

初瀬「吸血鬼退治」

憧「え」

穏乃「えっと、誰?」

初瀬「私は岡橋初瀬、晩成高校に通う吸血鬼ハンター見習いだ」

穏乃「吸血鬼ハンター見習い?」

憧「晩成には吸血鬼ハンター養成コースがあるのよ」

穏乃「へぇー」

憧「もしかして晴絵を退治しに来たの?」

初瀬「うん、憧が諦めた夢を私が果たすよ」

穏乃「ん?」

憧「あー、前に全然家から出ない晴絵に嫌気がさして退治するしかないってあんたに言ったっけ?」

初瀬「そうだよ!だから私も晩成に行って吸血鬼ハンターになろうって思ったのに憧は阿知賀に行っちゃってさ」

憧「ごめんね、やっぱり晴絵を退治なんて出来ないよ」

初瀬「そっか……」

初瀬「でもこうやって憧が毎日呼んでるのに出てこない悪い吸血鬼は私が退治してみせるからな」

穏乃「そんなの駄目だよ!」

憧「大丈夫、どうせ中には入れないから」

憧「戸締りはバッチリだもん」

穏乃「なるほど」

初瀬「こんなドアこうだ!」ドン

ガシャン!

穏乃「あ!ドアを蹴破るなんて」

憧「ちょっと!それはやりすぎでしょ」

初瀬「待ってろよ吸血鬼め」

穏乃「どうしよう」

憧「追いかけるわよ!」

憧「晴絵は負けないと思うけど、どうなるか分からないし」

初瀬「どこだー、吸血鬼出て来ーい」

晴絵「誰?」

初瀬「うわっ!髪?すっご!」

初瀬(一応手足が見えるし人型の何かだよな?)

初瀬(ということはこいつが赤土晴絵か)

穏乃「いた!」

憧「初瀬!晴絵!」

憧「って、髪伸びすぎでしょ!」

穏乃「もしかして10年切ってないんですか!?」

晴絵「ん?憧と誰?」

憧「私の事ちゃんと覚えてるのね。安心したわ」

憧「こっちは友達の穏乃よ」

憧「ていうか引篭もってても髪ぐらいは切りなさいよ」

晴絵「あー、でも寝てるだけだしな」

憧「あのねー、女なんだからそんなこと言ってないで切りなさいよ」

憧「そんなんじゃ無駄毛だって

晴絵「無駄毛は無い、髪と睫毛くらいしか毛はないんだ」

憧「は?」

穏乃「それじゃあアソコの毛も……」

晴絵「見てみるか?」

憧「ちょっ!何見せようとしてんのよ!」

初瀬「私を無視するなー!」

穏乃「危ない!」

晴絵「よっ、最近の女子高生は刀を持ち歩いてるのか」

憧「晩成よ」

晴絵「あー、そういえば昔も晩成の生徒は刀を持ってたな」

初瀬「私の剣をかわすとはさすがは阿知賀のレジェンド吸血鬼」

憧「見習いが何言ってんのよ」

晴絵「その呼ばれ方ちょっと恥ずかしいんだけど」

初瀬「だったら今日で終わりにしてあげますよ!」ブン

晴絵「こんなの振り回したら危ないぞ」サッ

初瀬「くそっ」

晴絵「危ないからちょっと大人しくしてくれ」ペシッ

初瀬「うわー!!」

穏乃「デコピンで人が吹っ飛んだー!?」

憧「初瀬ー!!」

晴絵「あの子は憧にまかせる、じゃ、おやすみ」

憧「こら!寝るなら髪切ってからにしなさいよ!」

穏乃「そうじゃないだろ!?」

穏乃「赤土さんを外に出すんだろ!」

憧「そうだったわね、髪切るのは外に出てからにしましょ」

晴絵「絶対に外には出ないぞ」

憧「なんでそんな頑ななんだか」

穏乃「そういえば、ドア壊れたよね」

晴絵「マジで?しょうがないな、業者呼ぶか」

憧「は?」

憧「そういうのはいいわけ?」

晴絵「ちゃんと維持しないと寝てられないからな」

穏乃「そういえば家の中綺麗ですよね」

初瀬「引篭もりなのに掃除はしてるのか」

晴絵「いやこれは……」

憧「そんなことより髪切りに行くわよ」

晴絵「嫌だ」

穏乃「外で遊びましょう」

晴絵「嫌だ」

初瀬「本当に引篭もりなんだな……」

憧「しょうがないわね、今日は髪を切るだけにしておいてあげる」

穏乃「えー」

憧「だって実力行使しようにも私達じゃ勝ち目ないじゃん」

穏乃「確かに……」

初瀬「私はまだ負けてない!」

憧「デコピンで吹っ飛ばされてたのに勝てるわけないでしょーが!」

晴絵「ほら、ハサミ」

初瀬「外出る以外は抵抗しないんだな、むしろそっせんしてるし……」

晴絵「あーさっぱりした」

晴絵「やるじゃん憧、美容師にでもなればいいんじゃないか?」

初瀬「なんだこの前髪……」

憧「あ?晴絵といえばこの前髪なのよにわかは黙ってて」

初瀬「は、はいすみません……」

穏乃(憧怖っ!)

晴絵「じゃあ、またなー」

憧「明日も来るからね」

晴絵「おう、明日も出ないけどな」

初瀬「絶対にいつか倒してやる!」

憧「は?」

初瀬「ひっ」

晴絵「退治じゃないならいつでも相手になるよ」

穏乃「今日は会えてよかったです」

晴絵「私もだ、これからも憧をよろしくな」

穏乃「はい!」

憧「けっきょく今日も晴絵を外に出せなかった……」

憧「でも10年ぶりに晴絵分を補充出来て良かった」

憧「しずと初瀬も晴絵と仲良くなったみたいで良かった」

憧「待ってなさいよ晴絵、明日こそは外に出してやるんだから」

第1話カン

第2話

公子「灼、いつも手伝ってもらっちゃってごめんね」

灼「いいよ、私店番好きだから」

公子「ありがとう、あらパソコン見てるのかい?」

灼「うんごめん仕事の邪魔にならない程度にしか見ないから」

公子「そうかい、それならいいよ」

灼「ありがとう」

灼(あっ、お客さんが来た)

初瀬「あの、なんでボウリングなんですか?」

由華「なに?小走先輩に文句でもあるの?」

初瀬「そうじゃないですけど、私は強い吸血鬼ハンターになる秘訣を聞きたくて」

由華「だからボウリングすれば強くなれるってことでしょ」

やえ「すまない、これは私の趣味だ」

由華「……」

初瀬「ドンマイです」

由華「岡橋ィ!!」

初瀬「なんで!?」

由華「でもなんで阿知賀までボウリングしに来たんですか?」

やえ「この店が1番良いのよ。メンテナンスとか」

初瀬「へぇー」

やえ「それよりも岡橋、お前阿知賀のレジェンド吸血鬼に会ったんだってな」

初瀬「はい」

灼「……」ピクッ

やえ「ん?あんたも興味あるの?」

灼「まあ、ハルちゃ……」

灼「阿知賀の人間なら赤土さんに興味があるのは普通です」

初瀬(ハルちゃ?)

灼「でもお客様のお話に首を突っ込むわけにはいかないので私の事は気にしないでください」

やえ「そうか」

やえ「よーし、じゃあボウリングしながら聞かせてもらおうか」

初瀬「分かりました」

由華「あの吸血鬼は引篭もりをやめて人を襲ったりするのかな?」

初瀬「それはないと思いますよ。なんか全然引篭もりやめる気なさそうでしたもん」

由華「そう、残念。晩成の王者である小走先輩と阿知賀のレジェンド吸血鬼との戦いが見れると思ったのに」

やえ「こらあんた達!ボウリングに集中しなさい!」

由華「すみません」

やえ「それでさあ、どうだったのよ?」

初瀬「なにがですか?」

やえ「赤土晴絵よ」

初瀬「だから引篭もり

やえ「そうじゃなくって!戦ったんでしょ?」

初瀬「ええまあ……」

由華「どうしたの?」

初瀬「あっさりやられちゃいました」

初瀬「デコピンで……」

やえ「そう、まだ入学したばかりだから仕方ないわね」

由華「むしろ生きてるのが不思議なくらいですよ」

やえ「たしかにね」

やえ「さあ、話も済んだしボウリングに専念するわよ」

初瀬(あれ?秘訣は……)

やえ「楽しかったわね」

初瀬「はい」

灼「あの」

やえ「どうしたの?」

灼「赤土さんを外に出してその力を利用しようと企んでる人がいるらしいんですけど」

やえ「本当?」

初瀬「もしかして憧の事かな?」

やえ「誰?聞いてないんだけど」

由華「小走先輩を欺こうだなんていい度胸ね」

初瀬「え……」

初瀬「ちょっと待ってくださいよ!憧は赤土さんと昔なじみだから引篭もりをやめさせようとしてるだけで力を利用だなんて……」

由華「だったらなおさら力を利用しやすいですね」

初瀬「巽先輩!」

やえ「なに、会って確かめれば分かるさ」

由華「そうですね」

由華「化けの皮を剥いで岡橋が騙されてるだけだというのを証明しましょう」

初瀬(大丈夫かなこれ……)

灼「ありがとうございました」

晴絵の家の前

憧「晴絵ー!出て来なさーい!」

穏乃「一緒に山に登りましょう!!」

…………

憧「ちっ、相変わらずの無反応ね」

穏乃「手ごわいね」

憧「こないだ普通に話したりしたんだから何か反応しろっての」

憧「むかつくからドアを蹴破るわよ」

穏乃「せっかく直ったのに駄目だよ、しかもむかつくからって……」

やえ「そこまでだ!」

由華「あなた達が吸血鬼を利用しようと企んでるのね」

穏乃「え……」

憧「初瀬どういうこと!?」

初瀬「えっと……」

由華「認める気は無いみたいね」

由華「でも2度とここに来れないようにして上げるわ!」バッ

穏乃「ちょっ、危ないじゃないですか!」スッ

やえ「ほう、巽の攻撃をかわすか」

やえ「私の攻撃はかわせるかな?」ダッ

穏乃「えっ!?消えぐあぁ……」ドサッ

憧「しずー!!」

由華「流石は高校在学中にしてトップクラスの吸血鬼ハンターの1人に数えられる小走先輩」

憧「なんなのよ……いったいなんなのよ!!」

由華「次はあなたの番よ」

初瀬「大丈夫だよ憧、少しの間身柄を拘束されるだけだから」

憧「初瀬!友達なら助けてよ!」

由華「大人しくしなさい!」

憧(助けて、晴絵)

ガラガラ

晴絵「なんで私の家の前でもめてるんだ?」

憧「晴絵!助けに来てくれたのね!」

憧「ってなんで窓から見てるだけなのよ!こっちに来て助けなさいよ!」

晴絵「いやー、私引篭もりだから」

憧「馬鹿ー!」

やえ「ならわざわざ窓から見なくてもそこの監視カメラで見てればいいじゃない」

晴絵「えっ、監視カメラ?本当だいったい誰があんなものを」

やえ「あれはあんたがしかけたんじゃないの?」

晴絵「あんなものつけるためにわざわざ外に出るわけないだろ」

初瀬「引篭もりですもんね」

やえ「ふむ……」

やえ「巽、岡橋、帰るわよ」

由華「えっ」

やえ「どうやら見当違いだったらしい」

やえ「この様子では引篭もりが外に出ることも、利用されることもなさそうだからね」

由華「そう……ですか?まあ、小走先輩が言うのなら」

やえ「というわけよ、悪かったわね。あの子にも悪い事をしたわ」

憧「いい迷惑なんですけど」

初瀬「まあいいじゃないか、誤解が解けたんだから」

憧「初瀬も友情より先輩を取るなんて酷いわよね」

初瀬「ごめん……」

由華「岡橋、行くわよ」

初瀬「はい!じゃあまたな」

憧「初瀬が来たらまたトラブルになるんじゃないかしら?」

初瀬「おいおい……」

晴絵「よく分かんないけど無事で良かったよ」

憧「なんで助けてくれなかったのよ」

晴絵「だって外に出ないと助けられないだろ」

晴絵「引篭もりの私にそれは無理だ」

憧「はあ……」

憧「でもなんで外でもめてるって分かったのよ」

晴絵「吸血鬼だしそれくらい聞こえるよ」

憧「へー、じゃあいつも私が呼びかけてるの聞こえてて無視してたんだ」

晴絵「うっ……」

憧「酷いなー、いつも無視されてたんだー傷つくなー」

晴絵「悪かったよ」

憧「悪いと思うのなら上げてくれない?しずの手当てをしないと」

穏乃「私は大丈夫だよ」

憧「しず!よかった」

憧「じゃあ晴絵の家でお茶にしましょうか」

晴絵「水しかないぞ」

憧「はあ?お茶ぐらい用意しときなさいよ!」

晴絵「引篭もりだぞ私は」

穏乃「じゃあ買ってこよっか」

憧「そうね、私達が戻ってきたら開けてよね」

晴絵「はいはい」

穏乃「今日は楽しかったね」

憧「あんな目に遭ったのによくそんなこと言えるわね」

穏乃「憧は楽しくなかった?」

憧「ううん、晴絵と話が出来て楽しかった」

穏乃「引篭もりのわりに普通だよね」

憧「頑なに外に出ないこと以外はね」

憧「でもこうやって簡単に家に上げてくれるならもっと早くそうなりたかったなあ……」

穏乃「そうだね。私達来る日も来る日も家の前で呼んでばかりだったもんね」

憧「本当に、早くこうなってたら晴絵分の枯渇に苦しむ事もなかったのに……」

穏乃「本当に赤土さんの事が好きなんだね……」

憧「しずのことも好きよ、晴絵の次くらいにだけど」

穏乃「そうなんだ」

憧「そんなことより監視カメラよ!」

憧「あれを設置した奴は私達が晴絵を呼んでるのをいつも見てたのよ?」

憧「そして上手くいかないのをあざ笑ってたのよ!」

憧「しかも晴絵のストーカーでしょ?許せないわ!」

憧「絶対に犯人をつきとめてとっちめてやるんだから!」

穏乃「そうだね、もしかしたら悪い人が赤土さんを狙ってるかもしれないから犯人をつきとめて警察になんとかしてもらおう」

憧「そうと決まったら今度から犯人探しよ!」

穏乃「うん!」

第2話カン

第3話

穏乃「ここって松実館だよね?」

憧「そうよ」

憧「最初はお姉ちゃんを調べたんだけど、どうやら違うみたいだから次の容疑者を調べるのよ」

穏乃「じゃあ次の容疑者っていうのは……」

憧「そう、玄よ」

穏乃「玄さんがそんなことするかな?」

憧「玄も晴絵の事好きだから間違いないわ」

穏乃「それだけで」

憧「会いに行きたくても家の手伝いで会いにいけない」

憧「監視カメラをしかける理由なんてこれで十分でしょ?」

穏乃「うーん……」

穏乃「とりあえず本人に確認してみようよ」

憧「そうね、行きましょ」

玄「ジブリのかぐや姫は授乳シーンがあるから名作っと」カタカタターンッ

憧「玄ー、入るわよー」

玄「えっ!?」

玄「ってもう入ってるし!」

穏乃「お邪魔します」

玄「うん」

憧「このノートパソコンちょっと見せてもらうわよ」

玄「え、なんで!?」

憧「ジブリのかぐや姫は授乳シーンがあるから名作?」

穏乃「BBAのじゃねえかとかも書いてあるけどなんですかこれ?」

玄「こっ、これはインターネット掲示板だよ。暇つぶしに適当に見てたの」

穏乃「そうなんですか」

憧「それでこんな事を書いてたのね」

玄「書いてないよ!」

穏乃「でもここに自分ってありますよ?」

玄「う……」

玄「それよりも私のパソコン返してよ!」

憧「そういえば今日は家の手伝いじゃないの?」

玄「今は暇だから、もうちょっとしたら手伝いに行くよ」

憧「へー、じゃあそれまでに調べちゃわないとね」

玄「調べちゃわないとねじゃないよ!返して!」

憧「駄目よ、玄には晴絵の家に監視カメラをしかけた疑いがあるんだから」

玄「監視カメラ?何言ってるの」

憧「とぼける気?証拠ならこのパソコンに……」

玄「やめて!」

憧「しず!」

穏乃「うん、すみません玄さん少しの間大人しくしてください」

玄「穏乃ちゃん離して!」

憧「このパソコンで監視カメラを管理してるはず」

憧「うーん……見当たらないわね」

玄「だから私は知らないってば、パソコン返してよ」

憧「あっ!怪しいフォルダが」

憧「動画ファイル、もしかしてこれが……」

玄「違う!違うから見ないでー!!」

憧「やっぱりこれがそうなのね」

玄「嫌ー!!」

憧「何これ……」

玄「うぅ……」

穏乃「憧、どうだったの?」

憧「女の人が赤ちゃんにお乳をあげてる」

穏乃「玄さん……」

玄「何か文句でもあるの!?授乳こそおもちの正しいありかただよ!」

穏乃「た、たしかに」

憧「何開き直ってんのよ……」

憧「あっ、今度のはなんか大人が女の人の胸にしゃぶりついてる」

憧「しかもなんか赤ちゃん言葉だし」

玄「ギャー!それは駄目ー!」

穏乃「玄さん……」

憧「結局見つからなかったわね」

玄「だから言ったのに……」

穏乃「玄さんは赤ちゃんみたいになりたいからそういう動画を集めてたんですか?」

玄「やめて……」

憧「玄じゃないなら宥ねえかな?」

玄「お姉ちゃんはパソコン持ってないよ」

憧「そっか、じゃあ次の容疑者を探さないと」

憧「じゃ、私達はこれで」

玄「それよりも、何か私に言う事があるんじゃないかな?」ゴッ

憧「ご、ごめんなさい……」

玄「それだけ?」

憧「へ?」

玄「謝る時はやっぱり土下座だよね?」

憧「すみませんでしたー!」

玄「そうそう、その調子で床に頭をこすりつけようね」

穏乃「あの、玄さんそのへんで……」

穏乃「憧も玄さんが怖いのは分かるけど、そこまでしなくても」

玄「穏乃ちゃんも同罪なんだけど?」

穏乃「え?」

玄「ほら、土下座しようね」

穏乃「……」

玄「どうしたの?私に酷い事したんだから土下座しようよ」

穏乃「えっ、ええ……」

憧「調子に乗るなー!!」バシッ

玄「痛っ」

憧「このっ!このこのっ!調子に乗ってんじゃないわよ!」ゲシゲシ

玄「ぐえ、憧ちゃ、やめ」

穏乃「憧!落ち着いて!」

憧「ハアハア……そうね、このくらいにしておきましょう」

穏乃「ふう、玄さん大丈夫ですか?」

玄「うぅ……」

憧「さてと、容疑者探しなんだけど」

穏乃「あては無いよね」

憧「玄、何かないの?」

玄「えっ、そんなこと言われても」

憧「あっそ、動画の事言いふらされたいんだったらそれでもいいわよ」

穏乃(それは酷いよ憧……)

玄「それは酷くない!?」

憧「だったら早く何か言いなさいよ」

玄(どうしよう……)

玄「あっ!そうだ、灼ちゃんはどうかな?」

玄「灼ちゃんは昔、赤土さんに会うためにうちによく遊びに来てたし」

憧「誰よそれ」

穏乃「赤土さんは玄さんちにもよく来てたんですね」

穏乃「憧と玄さんが羨ましいなあ」

玄「お母さんと赤土さんが仲が良かったから」

玄「それでね、灼ちゃんっていうのは赤土さんのファンで鷺森レーンの子だよ」

憧「ああ!あのボウリング場の」

憧「よし行くわよ!」

玄「えっ?私もー!?」

憧「当たり前でしょ、私達は面識ないんだから」

憧「ほら、行くわよ」

玄「うん……」

第3話カン

第4話

灼「いらっしゃいませ」

玄「ちょっとお邪魔するね」

灼「玄?家の手伝いはいいの?」

玄「うん……ちょっと事情があって」

憧「あなたが鷺森灼さんね」

灼「誰?」

憧「私は新子憧、こっちは高鴨穏乃」

穏乃「よろしくお願いします」

憧(あのパソコン怪しいわね)

灼「3名様でいい?」

玄「えっと……」

憧「しず、私が注意を引くからあのパソコンを奪うのよ」ヒソヒソ

穏乃「分かった」ヒソヒソ

灼「どうしたの?もしかして冷やかし?」

憧「実は鷺森さんが晴絵のファンだって聞いたから話をしたくって」

灼「ハルちゃんの事名前で呼ぶなんて生意気だと思……」

憧「本人が良いって言ったから大丈夫ですよ」

灼「この子やっぱりムカつく」ボソッ

憧「え?」

灼「なんでもない、あなたと話す事はないから帰って」

憧「嫌です」

灼「帰ってって言ってるでしょ!」

憧「今よしず!」

穏乃「うん!」

灼「え?」

灼「あっ!私のパソコン」

憧「玄、押さえて!」

玄「ごめんね灼ちゃん、すぐ終わるから」ガシッ

灼「返してよ!返せ!」

穏乃「私、これの使い方分かんないんだけど」

憧「私に任せて、しずは玄を手伝って」

穏乃「分かった」

灼「こら!やめろ!」

憧「ふん、あんたが晴絵の家に監視カメラをしかけたのは分かってんのよ!」

灼「かかかかかか監視カメラ?なななななななんの事かな?」

玄(動揺しすぎだよ灼ちゃん、それじゃあ犯人だってバレバレだよ)

穏乃「もしかしたらまた違うんじゃ……」

憧「そんなことないわよ。このパソコンを調べればすぐ証拠が出てくるはず……たぶん」

玄「あれ?」

憧「むっ、パスワード?」

灼(ふふっ、このパスワードは私しか知らない、だから絶対に解除される事は無い)

穏乃「どうするの?」

憧「んー」

憧「あっ!分かった!ハルちゃんだ。さっき言ってたし」

憧「晴絵のことが好きだし間違いないわ」

灼「はあ!?そそそそそそんなわけないじゃん」

玄(灼ちゃん……)

憧「あっ、合ってた、やっぱりね」

灼「畜生ー!」

穏乃(案外テンション高いなこの人)

玄「どうなの憧ちゃん?ここまでしといて間違いでしたじゃすまないよ」

憧「大丈夫だって、そもそも玄が怪しいって言ったんでしょ?」

灼「玄ァー!」

玄「ご、ごめんね灼ちゃん」

穏乃「それで証拠は?」

憧「有ったわよ」

憧「ほら、これって晴絵の家でしょ?」

穏乃「本当だ」

玄「灼ちゃんどうして……」

灼「だってハルちゃんの事は気になるけど家の手伝いで見に行けないんだもん」

玄「でも監視カメラは……」

灼「仕方無いでしょ!ハルちゃんの事が気になってしょうがないんだから」

灼「昔ハルちゃんに会ってから私はずっとハルちゃんのファンなんだよ!?」

灼「ハルちゃんの事は何でも知ってなくちゃいけないの!」

憧「へー、じゃあなんでも知ってるんだー?」

玄(なんか急に憧ちゃんが対抗心を)

灼「知ってるよ、ハルちゃんのスリーサイズだって知ってるよ」

憧「そんなの自慢にならないわよ、どうせ昔のデータでしょ?」

憧「私なんて晴絵の家の間取りも内装も暗記してるんだから」

灼「このっ!ハルちゃんに家に上げてもらえたからって調子に乗るな!」

憧「晴絵が家から出ないのに家に上がっただけで調子に乗るなんて無理よ」

灼「あー、いつも苦労してるもんね」

憧「そうなんですよ、いっこうに家から出なくってまいっちゃいますよ」

灼「私は会えるだけでも十分だと思……」

憧「確かにそれで晴絵分は十分に補充できるんですけど、一緒に色々出かけたいじゃないですか」

灼「分かる!ハルちゃんと遊園地行ったり色んな所に行きた……」

憧「灼さん」スッ

灼「憧」ギュッ

玄(握手……なんか仲良くなってる)

玄「灼ちゃん」

灼「何?」

穏乃「あっ、今怪しい人影が」

憧「えっ、どこ?」

玄「憧ちゃんと仲良くなって許されたみたいになってるけど」

玄「灼ちゃんのせいで私は色々と酷い目に遭ったんだよ」ゴォ

玄「濡れ衣着せられて、秘密を暴かれて……」

灼「く、玄?」

穏乃「玄さん落ち着いて!憧も止めるの手伝って!」

憧「う、うん」

玄「2人とも離して!私があんな目に遭ったのは灼ちゃんのせいなんだよ!?」

憧「もー!過ぎた事を蒸し返して」

憧「あれはもう済んだでしょ?」

玄「済んでないよ!灼ちゃんの次は2人の番だからね」

穏乃「え」

憧「あ?私にあんなことしといてそんなこと言う?」

玄「ひっ、憧ちゃん落ち着いて」

灼「今だ!隙あり!」ドゴォ

玄「ぐはっ」バタッ

穏乃「ボウリングの玉?」

憧「容赦無いわね……」

灼「身を守るためだからしょうがないと思……」

憧「じゃあこれから私達は同士ということで」

灼「うん、でもハルちゃんは渡さな……」

憧「私も渡す気ないわよ」

灼「うん、これからも頑張ろうね」

憧「もちろんよ」

玄(あれ?目が覚めたら2人がさらに仲良くなってる……)

穏乃「あっ、玄さんが起きましたよ」

憧「良かった、生きてたのね」

灼「死んじゃったかと思った」

玄「自分でやっといてよく言うよ!!」

灼「ごめん」

穏乃「そういえばさっき監視カメラに怪しい人影が写ったんですけど」

灼「よくある、そんなに広い範囲を撮ってないから近くに通りかかった人だと思……」

穏乃「そうなんですか」

玄「じゃあ大丈夫だね」

憧「でも、もしかしたら吸血鬼ハンターかも知れないから明日から調べるわよ」

穏乃「うん、そうだね」

灼「監視カメラで見ながらフォローする」

玄「みんな頑張って」

憧「何言ってんの、玄も調べるのよ」

玄「へ?でも家の手伝いが」

憧「吸血鬼ハンターだった場合私としずじゃ危ないでしょ?」

玄「私も危ないよ!?」

憧「バラすわよ」

玄「うっ、分かったよ……」

憧「よーし、明日から怪しい人影の正体を探るわよ!」

穏乃・灼「おー!!」

玄「おー……」

第4話カン

第5話

憧「もー、なんでこんな日に限ってHRが長引くのよ」

穏乃「仕方無いよ、最近県内で行方不明者が出てるっていう話だったし」

憧「だからって長すぎ、ちょっと注意を促せば十分じゃない」

憧「それなのに長々と……」

玄「憧ちゃん達のところも長かったんだね、よかった」

憧「よくないわよ!」

玄「ごめん……」

玄(だって私だけ遅いと憧ちゃん怒るし)

憧「そういえば灼は?」

玄「HRが終わった瞬間急いで帰っていったよ」

玄(呼び捨てになってる)

憧「さすがね、私達も急ぐわよ」

穏乃「うん!」

玄(大丈夫かな)

憧「とうちゃーく、早速怪しいやつがこないか隠れて見張るわよ」

穏乃「おー」

玄「うん」

玄(でも大丈夫かな?もし怪しい人影が最近の行方不明事件と関係があったら……)ブルブル

穏乃「玄さん、大丈夫ですか?」

玄「えっ、大丈夫だよ」

穏乃「ならいいんですけど……」

穏乃「頑張りましょうね」

玄「うん」

数時間後

憧(何もないわね)

憧「しず、そっちは何かあった?」

穏乃『ううん、何もないよ』

憧「玄、そっちはどう?」

玄『何もないよ』

憧「どういうこと……」

玄『怪しい人影なんて気のせいだったんだよ』

憧「しずと灼が見たのよそんなわけないでしょ」

憧「そうだ、灼に聞いてみよ」

灼『カメラの映像を見てたけど怪しい影はなかったよ』

憧「そっか……」

憧(いったいどういうことなの?でももしかしたら……)

憧「そういえば私達が来る前の映像は見れるの?」

灼『うん、ちょっと待って』

玄「どういうことなの憧ちゃん」

憧「玄、持ち場を離れないでよ」

玄「ごめん、でもきっと気のせいだったんだよ」

灼『憧、私達がHRだった時くらいの時間に人影が出てる』

憧「やっぱりね」

玄「え」

憧「人影は私達より先に来てたのよ」

穏乃「それじゃあどうするの?」

憧「しずもこっちに来たの?」

穏乃「暇だったから」

憧「もー、しょうがないわね」

憧「それはともかく、今日はすることないし晴絵の家でお茶もらいましょ」

穏乃「うん」

玄「えっ、いいの?」

憧「大丈夫よ、引篭もりなだけで家に上げるのはなんとも思ってないから」

憧「裏口の方が近いわね」

玄(これはちょっと得したかも)

憧「晴絵ー、お茶したいから鍵あけてー」

ガチャ

宥「お邪魔しました」

穏乃「え」

玄「お姉ちゃん!?」

宥「玄ちゃん?」

穏乃「誰?玄さんのお姉さん?」

憧「そうよ、ちなみに登校中によく見るマスクとかして厚着の人よ」

穏乃「あー」

玄「で、なんでお姉ちゃんがここに?」

宥「えっとね、ちょっと前から赤土さんのお家のお掃除をしてるの」

穏乃「なるほど、だから綺麗だったんだ」

玄「なんで教えてくれなかったの?」

宥「だって玄ちゃんはお家のお手伝いで忙しかったから」

宥「私と違ってちゃんとお仕事出来ててみんなから頼りにされてて、赤土さんのこと気にしてないみたいだったし……」

玄「気にしてたよ!?もー、お姉ちゃんの意地悪!」

宥「く、玄ちゃん」オロオロ

憧「えっと……」

穏乃「もしかして監視カメラの怪しい人影の正体って……」

宥「監視カメラ?ああ!あのカメラよく分からないけど怖いからなるべく映らないようにしてるよ」

宥「だから入るのも玄関じゃなくて裏口からなの」

憧「そうなんだ」

憧「宥ねえもちょっと来て、晴絵を問いただすから」

宥「え?」

玄「やっと赤土さんちにあがれるんだね」

憧「何?私の話が長かったって言いたいの?」

玄「ち、違うよお」

穏乃「お邪魔します」

憧「こらー!晴絵ー!」

晴絵「なんだよ憧」

憧「なんで私より先に宥ねえが晴絵の家にあがってるのよ!」

晴絵「え」

憧「簡単に人の事家にあげるなら私のことももっと早くあげなさいよね」

晴絵「ごめん」

晴絵「でも宥は勝手にあがって来たから」

晴絵「窓を割って……」

憧「え……」

玄「お姉ちゃん!?」

宥「だって家の中があったかそうだったから」

晴絵「そういえばあの日は冬だったな」

宥「はい、たまたま寒い中出かけてて凍えそうな時にあたたかそうな家を見つけたのでつい」

玄「ついじゃないよ!」

玄「本当にお姉ちゃんがご迷惑をおかけしました」

晴絵「いいよ、その縁で今はこうやってたまに家を掃除してもらってるから」

玄「そうですか」

憧「宥ねえ、晴絵に変な事してないでしょうね?」

穏乃「なんでそうなるんだよ……」

宥「してないよ」

憧「なら見逃してあげるわ」

穏乃「憧……」

玄「お姉ちゃんが怪しい人影の正体ってことでいいんだよね?」

憧「そうね、たぶん間違いないわ」

穏乃「じゃあこれにていっけん落着だね」

晴絵(怪しい人影?なんなんだいったい)

憧「よーし晴絵、問題解決記念よ!お茶持って来なさいお茶」

憧「ジュースでもいいわよ」

晴絵「無いよ」

憧「もー!しょうがないわね。また買って来てあげる」

憧「しずと行ってくるからみんな待っててね」

宥「私帰りたかったんだけど……」

玄「最後まで付き合ってあげてお姉ちゃん」



晴絵の家の前に佇む怪しい影

良子「赤土……」

良子「この家があの吸血鬼の」

良子「ついに見つけましたよはやりさん」

第5話カン

気づいたら9月末だった……

第6話

憧「お邪魔しまーす」

晴絵「えっ」

晴絵「憧、なんで?」

穏乃「お邪魔します」

晴絵「穏乃まで……」

晴絵「どうやって鍵を開けたんだ?」

憧「それはねー」

宥「私が貰った鍵です」

晴絵「宥……じゃあ2人も掃除しに来たのか?」

晴絵「て、そんなわけないか」

憧「ちょっとそれどういう意味よ」

憧「ちゃんと掃除もするわよ」

晴絵「も?」

憧「今日はねー、泊まりに来たのよ」

晴絵「へ?」

穏乃「明日は学校が休みなので大丈夫です」

晴絵「そうじゃなくてそういうのは事前にだな」

宥「駄目ですか?せっかくみんなでお鍋が出来ると思ったのに」

晴絵「いや、駄目ではないけど……」

晴絵(ていうか鍋するのか、夏なのに……)

宥「良かった、やったよ玄ちゃん」

玄「やったね」

晴絵「玄!?いつの間に」

玄「話してて気づかなかったみたいですね」

玄「他にも来てますよ」

晴絵「他にも?」

灼「……」ジー

晴絵「この子は?」

玄「赤土さん……」

憧「ちょっと、会った事あるんじゃなかったの?」

灼「ハルちゃん……」

晴絵「ハルちゃん?」

灼「覚えてないの?」

晴絵「うーん……」

晴絵「あっ、もしかしてあの時の?」

灼「……」コクッ

晴絵「そうかー、大きくなったなあ」

灼「うん」

憧「当たり前でしょ、10年も経ってるんだから」

晴絵「それもそうだな」

憧「そんなことより鍋よ!」

玄(スルー!?ここはどうやって会ったか聞くところじゃないの?)

灼「ハルちゃんとお鍋、楽しみ」

玄(灼ちゃんも鍋優先ならいっか……)

宥「早く作ろ」

穏乃「お鍋はどこですか?」

晴絵「どこだったかなー」

穏乃「あった!」

憧「しずナイス!」

玄「でもこれって……」

灼「中華鍋だと思……」

憧「他のは無いの?」

宥「無いみたい」

穏乃「赤土さん、中華鍋しかないんですか?」

晴絵「ああ」

憧「は?」

憧「中華鍋しかないっておかしいでしょ!!」

晴絵「いやいや、これだけあれば十分だって」

晴絵「これ1つで鍋とフライパンの両方の機能を賄えるんだ」

灼「さすがハルちゃん」

憧「いやいやいや……」

玄「中華鍋でお鍋ってできるのかな?」

穏乃「試しにやってみましょう!」

玄「そうだね、どっちにしろこれしかないからこれでやるしかないよね」

宥「早くお鍋であったまろう」

晴絵「鍋敷き無いから適当な本でいいよな?」

憧「カセットコンロがあるからいらないわよ」

晴絵「それは持って来たんだな」

穏乃「やっぱりお鍋はみんなで囲みながらですよ」

玄「それに闇鍋ですからね」

晴絵「え?」

憧「やっぱりこういう時は闇鍋でしょ、定番、定番」

灼「私は普通のお鍋がよかった」

宥「私はあったかかったらなんでもいいよ」

玄「早速準備しよう」

穏乃「みんなでやればすぐですね」

晴絵「人数分の皿なんて有ったかなあ?」

憧「そんなこともあろうかと使い捨ての紙皿を用意しておいたわ」

憧「あと割り箸も」

晴絵「用意いいな、鍋以外は」

憧「鍋が無いのがおかしいのよ!」

玄「そういえば赤土さんってなんで引篭もりになったんですか?」

憧(ちょっ、なにいきなり爆弾落としてんのよ!?)

晴絵「……」

灼「私も知りたいと思……」

宥「私も……」

憧(灼と宥ねえまで)

穏乃「憧も知りたいよね?」

憧「しずあんたまで、まあ私も知りたいけど……」

晴絵「……」

憧(やっぱり黙っちゃたか)

晴絵「分かった、そんなに知りたいのなら教えてやる」

憧(あっ、いいんだ)

晴絵「私が外に出るとろくな事が無いからだよ」

憧「って、もっとちゃんと説明しなさいよ!」

憧「だいたい昔は出歩いてたけどそんなこと

玄「そうなんですか」

灼「ハルちゃん、つらかったね」

宥「お掃除なら私がするから外に出なくても大丈夫です」

穏乃「私も赤土さんが寂しくないように毎日遊びに来ます!」

憧「なんで納得してんのよ!?」

灼「憧はハルちゃんの辛い過去をほじくり返したいの?」

玄「そういうのって人間としてどうかと思うよ」

穏乃「見損なったよ憧」

憧「何この展開!?」

宥「みんな、はやくお鍋の準備しよ」

玄「うん、そうだね。憧ちゃんはほっておいてお鍋の用意をしないとね」

憧「何よ、なんなのよ……」イジイジ

晴絵「憧、鍋の用意が出来たぞ」

憧「ふーん、勝手にしたら」

晴絵「なんだよ、みんなにちょっと冷たくされたからいじけてるのか?」

晴絵「みんな別に憧の事嫌いになったわけじゃないから大丈夫だよ」ギュッ

憧「ちょっ、なに急に抱きしめてるわけ!?」

憧「だいたい私が怒ってるのは本当の事を教えてくれない晴絵に対してなんだけど」

晴絵「そうか、ごめんな。でも今は話したくないんだ」

晴絵「でもいつかちゃんと話すよ」

晴絵「だから今はみんなで鍋を食べよう」

憧「そして早く帰ってくれって?」

晴絵「そんな事ないって」

憧「本当に?」

晴絵「少し思ってるかな……」

憧「やっぱり、これだから引篭もりは」

憧「でも残念だったわね。私達今日は泊まってくから」

晴絵「そういえばそんなこと言ってたな」

憧「よし!鍋食べるかー」

晴絵「ふう」

憧「みんなお待たせ」

穏乃「準備をサボるなんて卑怯だぞ」

灼「いじけてハルちゃんの気をひくなんて汚いと思……」

宥「あったかくない」

玄「今回は見逃してあげるよ」

憧(みんな怖い……)

晴絵「どうしたんだ、また揉めてるのか?」

灼「そんなことないよ」

玄「電気消してきますね」

晴絵「そういえば闇鍋だったな」

晴絵「スイッチはあそこだ、戻ってくるとき気をつけろよ」

玄「はい」

玄「暗いけどみんな大丈夫?」

穏乃「大丈夫です」

憧「じゃ、入れましょうか」

晴絵「変なもの入れるなよ」

灼「自分が食べる事になる可能性があるから変なものは持って来てないと思……」

憧「もしもの時は秘策があるから大丈夫よ」

晴絵「そうか」

玄「みんな終わったかな?」

宥「混ぜるからちょっと待って」

憧「えっ、混ぜ?」

宥「はい、終わったよ」

憧(ただの具なら混ぜる必要は無いはず)

憧(いったい何を)

憧「じゃあ記念すべき1口目は晴絵に食べてもらいましょうか」

晴絵「記念って、毒見させるつもりだろ」

穏乃「そんなことないですよ」

灼「私もまずはハルちゃんが食べるべきだと思……」

玄「そうだよね、こうやってお鍋が出来るのも赤土さんのおかげだし」

宥「どうぞ」

晴絵「お前達……」

憧(やっぱりみんな不安なんだ)

晴絵「しょうがないな、まずは私が食べるよ」

晴絵「いただきます」パク

憧「どう?」

晴絵「餅だなこれ」

憧(玄ね)

穏乃(玄さんだ)

灼(玄だ)

宥(玄ちゃんだ)

玄「なんでみんな私の方を見てるの?」

ポトッ

穏乃「え?」

憧「晴絵?」

宥「お皿落としましたよ」

晴絵「うっうあぐえぇぐあぁー」バタッ

玄「赤土さん!?」

灼「なにこれ……」

穏乃「誰かが毒を盛ったんだ……」

玄「となると犯人は最初に赤土さんに食べるように促した憧ちゃん?」

宥「闇鍋にしようって言ったのも憧ちゃんだよね?」

憧「ちょっと!なんで私が犯人みたいになってるのよ!そんなわけないでしょ!」

灼「じゃあなんでハルちゃんが倒れたの?」

憧「誰かニンニク入れたんじゃない?」

憧「吸血鬼ってにんにく苦手なんでしょ?」

穏乃「入れてない」

宥「入れてないよ」

灼「私も」

憧「私も入れてないわ」

灼「やっぱり憧が」

宥「憧ちゃん……」

憧「だからなんでそうなるのよ!!」

穏乃「無実だって言うなら食べてみせてよ」

憧「え」

穏乃「どうしたの?出来ないんだったらやっぱり憧が犯人っていうことだよね」

憧「分かったわよ」

憧(しずってたまに怖いのよね……ん?)

憧「思ったんだけど晴絵が食べた玄が持って来た餅に毒が入ってたんじゃないの?」

玄「私のおもちは安全で美味しい高品質だよ!」

玄「というかなんで私がおもちを持って来たって知ってるの?」

玄「もしかして憧ちゃんが毒入りにすりかえた?」

憧「そんな事するかー!!」

灼「でもよくよく考えたら玄が餅を持って来るのは明らか」

穏乃「いつもおもちおもち言ってますもんね」

宥「やっぱり憧ちゃんが」

憧「違うわよ!!」

玄「口ではなんとでも言えるよ」

憧「分かったわ、この晴絵が食べた餅を食べて無実を証明してあげるわよ」

憧(これって晴絵と間接キスなんじゃ……って何考えてるのよ私)

憧(まあでもこれくらいの役得は……じゃないわよ!変態か!)

穏乃「憧、はやく」

玄(憧ちゃん何を考え込んで……はっ)

玄「憧ちゃん」ヒョイ

玄「このお持ちは持って来た私が責任を持って食べるよ、おもちを持って来た私も容疑を否定する必要があるからね」

玄(そして赤土さんと間接キス)グヘヘ

宥(玄ちゃんがやらしい事を考えてる時の顔してる……)

憧(玄……)

憧(もしもあの餅を食べていたら私もああなっていたかも知れない……)

憧(礼を言うわ、さすがにみんなの前であんな風になりたくないし)

穏乃「憧」

憧「ご、ごめん、今食べるから」

穏乃「玄さんは?」

玄「私は憧ちゃんの後に」

憧「よし、じゃあいくわよ」

玄「食ーべろ」

穏乃「食ーべろ」

灼「食ーべろ」

食ーべろ、食ーべろ、食ーべろ

憧「えっ?何このノリ!?みんな酔っ払ってるの!?」

憧(でもしょうがないわよね、楽しい鍋のはずが目の前で晴絵が倒れたんだもの)

憧(しかも犯人は自分達の中にいる、そりゃ正気じゃいられないわよね)

憧(待ってなさいよ真犯人、無実を証明したらあんたの正体を暴いてやる!)

憧(でも怖いからちょっとにしておこう)パクッ

憧「うっ……」

玄「憧ちゃん?」

憧「かっ、かっらあああああぁぁぁぁーーーーーー」

憧「何よこれ!辛すぎでしょ![ピーーー]気かボケぇーーーー!!」ドンドン

穏乃「憧落ち着いて」

灼「つまりハルちゃんが倒れたのは鍋が辛かったから?」

憧「吸血鬼だから人より敏感だったんでしょきっと」

憧(でも正直普通に食べたら死ねると思う)

玄「そんなに辛いのを入れるのはお姉ちゃんかな?」

宥「うん、あったかくなるように辛いの入れたよ」

憧「宥ねえぇ」

宥「ひっ、憧ちゃん!?」

玄「憧ちゃん落ち着いて!」

憧「そういえば玄、私が食べた後その餅を食べるっていったわよね?」

玄「言ったけどもう必要ないよね?」

玄(辛いのヤダよぉ)

灼「言ったならやるしかないと思……」

穏乃「辛いのはカモフラージュで実は餅に毒が入ってる可能性もありますよね?」

玄「え……」

宥「玄ちゃん、このままだと嘘吐きになっちゃうよ」

玄「お姉ちゃんまで……」

憧「いいから早く食べなさいよ!晴絵と間接キスしたいんでしょ!」

玄「私そんな変態みたいな事考えてなモゴォ!?」

宥「憧ちゃん、それは乱暴すぎるよ」

憧「だって……」

穏乃「大丈夫ですか?」

玄「……」プルプル

灼「プルプルしてる」

玄(辛い……でも口に入れたものを吐き出すなんてはしたないのは駄目)

玄(食べなきゃいけないのにお姉ちゃんの辛いのがついたおもちは口に入れてるだけで辛くって噛めば噛むほど辛いのが溢れてくるよぉ)

憧「玄しっかりしなさいよ!」

玄(憧ちゃん……そうだ、せっかく憧ちゃんを出し抜いて赤土さんと間接キスしたんだもんこんな辛味なんかに負けない!)

玄(赤土さんもこの辛さを味わったんだ、だからこの辛味は赤土さんの味)

玄(そっか赤土さんの味かぁ、美味しいなぁ、赤土さん美味しいなぁ)グヘヘ

宥(また玄ちゃんが変な顔してる)

穏乃(玄さんってたまにおかしくなるよなあ)

玄「ごちそうさまでした」

灼「嘘!?」

憧「アレを完食した!?」

宥「美味しかった?」

玄「うん、赤土さんの味がして美味しかったよ」

宥「え?」

穏乃「玄さん……」

憧「あまりの辛さにおかしくなったみたいね」

灼「辛さで人をここまで破壊するなんて何を入れたんです?」

宥「インターネットで見た凄い辛い粉だよ」

宥「辛い方がみんなあったかいと思って」

憧(それでなんで凄い辛いのを使うのか……)

晴絵「キリングパウダー?これがあの辛さの正体か」

灼「ハルちゃん!」

穏乃「生きてたんですね」

晴絵「なんとかな、まさか食べ物で気絶するとは思わなかったよ」

宥「ごめんなさい……」

晴絵「いいんだよ、宥は宥なりにいい鍋にしようと思っただけなんだから」ナデナデ

玄「赤土さん!私も頑張って辛いおもちを食べたのでナデナデしてください」

憧「まだおかしくなったままなのね」

玄「おかしくなんかなってないよ!」

穏乃「それよりもコレどうします?」

宥「私1人じゃ食べきれないよ」

晴絵「そういえば憧、秘策があるんだろ?」

憧「そうなんだけど……」

灼「もったいぶらないで」

憧「これよ」

晴絵「カレー粉?」

憧「これならたいていのものはなんとかなると思ったんだけど」

憧「これじゃ激辛カレーになるだけなのよね……」

穏乃「でもカレーならなんとかなるかも」

玄「そうだね」

灼「頑張る」

憧「えっ、マジで?みんなカレー好き過ぎでしょ」

宥「カレーが嫌いな人なんていないよ」

憧「宥ねえまで……」

晴絵「でもカレーっていったらご飯が欲しいよな」

穏乃「雑炊用に準備してありますよ」

玄「ラーメンとうどんもあります」

晴絵「闇鍋なのにアグレッシブだな」

灼「これならいける」

憧(そうかなあ……)

宥「カレー出来ました」

宥「美味しいですよ」

憧(宥ねえはあの辛さ平気なんだ)

穏乃「じゃあご飯とラーメンとうどんを入れますね」

憧「ちょっと待ったー!なんでごちゃ混ぜにするのよ!」

玄「憧ちゃん、この鍋しか調理器具がないんだよ?」

灼「忘れたの?」

憧「覚えてるわよ!それでも混ぜないで別々の方がいいでしょ?麺ものびちゃうし」

穏乃「えっ、もう入れちゃったけど」

憧「しずー!!」

晴絵「ほら、揉めてないでさっさと食べるぞ」

穏乃「そうですね」

灼「早く片付けてその後はハルちゃんとお風呂」

玄「私も赤土さんとお風呂入りたい」

晴絵「いや、うちの風呂狭いから1度に1人が限度だぞ」

憧「吸血鬼の末裔のくせに」

晴絵「なんだよそれ、どうみても風呂が広そうな家じゃないだろ」

穏乃「大きなお屋敷を建てそうですけど建てなかったんですね」

晴絵「ハンターに追われて命からがら逃げて来たらしいから仕方ないさ」

宥「そうなんですか」

憧「でも晴絵の親ってアルカードだかアーカードっていう有名な吸血鬼なんでしょ?」

穏乃「だから赤土なんですか?」

晴絵「有名吸血鬼っていってもハンターに負けることもあるさ」

晴絵「確かにそれで赤土になったらしいけど、元々はDRACULAを逆にしただけで本名じゃないんだ」

宥「じゃあ本名はドラキュラさんなんですか?」

晴絵「さあ?実は私も親の名前知らないんだよね」

玄「え」

晴絵「いや別に深刻な話じゃないから、もしかしたら聞いた事あるけど覚えてないだけかもしれないし」

憧「適当過ぎでしょ!」

晴絵「そんなことより早く食べよう」

灼「うん」

憧「みんな、覚悟はいい?」

玄「うん」

穏乃「覚悟は出来てるよ」

宥「そんなに身構えなくても平気だよ」

灼「あんなの見た後じゃ無理だと思……」

晴絵「よし、じゃあいくぞ」

「いただきまーす」

宥「うん、美味しい」

「……」

「かっらぁぁああああーーーーー!!」

10分後

宥「みんなは辛さに負けて倒れちゃった」

宥「だから私が頑張らないといけないのに……」

宥「もう食べられない……」ガクッ

結局鍋の辛さには勝てず頼みの宥も鍋の量の前に倒れ赤土邸でのお泊り会は幕を閉じたのであった

第6話カン

第7話

晴絵「ん……朝?」

晴絵「なんだこの鍋?」

晴絵「そうか、昨日カレー食べてそのまま」

灼「おはようハルちゃん」

晴絵「ああ、おはよう」

憧「あー、起きたら目の前に中華鍋が……」

穏乃「カレーもまだ残ってるね」

宥「ごめんね」

玄「お姉ちゃんは悪くないよ!むしろ私達がすぐに気絶しちゃったから」

宥「私も食べ過ぎて気絶しちゃった」

憧「恐ろしい物を作ってしまったのね……」

晴絵「食べ物を粗末にするのは気が引けるけど処分するしかないな」

穏乃「そうですね」

ピンポーン

宥「誰か来ましたね」

憧「通販?」

晴絵「何も頼んでない」

晴絵「誰だろ?」

晴絵「はーい」

ガチャ

望「晴絵逃げて!」

晴絵「望?」

良子「グッドモーニング」

はやり「この人だ、間違いない」

晴絵「え?」

はやり「外に出て!はやりと勝負だよ!」

晴絵「……」

バタン

はやり「ちょっと!なんでドア閉めるの!?こっちには人質がいるんだよ!?」

晴絵「だって私引篭もりですから」

はやり「え」

良子「オー、引篭もりは恐ろしいですね」

望「ごるぁ!!晴絵ー!!私が捕まってるんだから助けに出て来なさーい!!」ドンドン

はやり「人質なんだから大人しくして」

望「嫌よ!晴絵ー出て来なさーい!」

望「……」

望「仕方無いこうなったら大蛇を出すしかないわね」

はやり「またアレを出すの!?」

はやり「良子ちゃん、また悪魔さんを出して倒して」

望「いいわ、呼びなさいよ。今度は負けないわよ」

良子「ノーウェイ、そんなことよりこの家に火をつけましょう」

良子「そうすれば出て来ますよ」

はやり「放火なんて駄目だよ!」

晴絵「なんか物騒なこと言ってる……」

憧「なんでそんなとこに突っ立ってるの?」

憧「ていうかさっきのチャイムは何だったの?」

晴絵「ああ、なんか変な2人が望を人質に

憧「お姉ちゃんが!?早く助けないと!」

晴絵「でも私引篭もりだから」

憧「は?」イラッ

憧「じゃあ私が助けるわよ!」

望「放火なんかして後始末どうするつもりなのよ!?」

良子「私達はハンターです。吸血鬼が倒せればそれでオーケーです」

バーン

望「ふがっ」バタッ

憧「お姉ちゃんを離しなさい!」

良子「誰ですか?」

はやり「人が中にいたんだね、やっぱり放火は駄目だよ」

良子「正義のためなら犠牲も仕方ありませんよ」

憧「お姉ちゃんは!!」

良子「お姉ちゃん?もしかして」

はやり「……そこに倒れてるよ」

憧「え?」

望「」

憧「あんた達よくも!」

良子「ノー」

はやり「さっき急にドアが開いてぶつかったんだよ」

憧「え……」

憧「じゃあ私のせい?」

良子「イエス」

憧「そんな……」

憧「あっ、とりあえず手当てしなきゃ」

はやり「うん、そうした方がいいよ」

バタン

はやり「大丈夫だといいね」

良子「そうですね」

はやり「ってそうじゃないよ!吸血鬼を外に出さなきゃ」

良子「外に出さなくてもハウスの中でファイトすればいいのでは?」

はやり「中にはさっきの子がいるから外に出さなきゃ駄目だよ」

はやり「だから吸血鬼に外に出るように言いに行かなきゃ」

良子「自分で戻ったんですから無視していいのでは?」

はやり「駄目だよ!」

憧「ほら、晴絵が助けてくれないから私が助けたわよ」

晴絵「無茶するなぁ」

穏乃「この人って憧のお姉さんだよね?」

憧「そうよ」

はやり「おじゃましまーす」

晴絵「えっ」

良子「さあバトルです」

はやり「しないよ!外でするんだよ!」

はやり「さあ外に出て」

晴絵「出ませんよ」

良子「仕方ありません。やはりここで

はやり「勝負してはやりが勝ったら外に出てもらうよ」

晴絵「えー」

良子「えー」

はやり「えーじゃないよ!ってなんで良子ちゃんまで」

晴絵「帰ってください」

はやり「嫌だよ、大人しくはやりと戦って」

はやり「じゃないとずっとここに住んでやるんだから」

良子「仕事はどうするんですか?」

はやり「これも仕事でしょ?吸血鬼を倒すのに必要なんだから」

良子「そうですけど……」

晴絵「早く帰ってくれます?」

はやり「うるさい!はやりは絶対にあなたを倒さないといけないの!」

晴絵「……」

穏乃「赤土さんが何かしたんですか?」

はやり「そうだよ」

灼「ハルちゃんを恨むとかありえな……」

玄「赤土さんが酷い事するわけないですよ、人違いじゃないですか?」

憧「ずっと引篭もってたし」

はやり「そんなのは関係無いよ、はやりがこの人を恨むのは10年前の事が原因だからね」

穏乃「10年前?」

宥「引篭もるよりも前って事だよね……」

憧「まさかそれが原因で」

晴絵「はあ、勝負するから早く帰ってくれませんか?」

はやり「やっぱりこの子達の血を吸いたいから邪魔なんだね」

玄「本当ですか?」

灼「私ならいつでも血を吸っていいよハルちゃん」

良子「たぶらかされてますね」

はやり「早く駆除しなきゃ」

晴絵「たぶらかしてないし血吸いませんから……」

はやり「じゃあ勝負しようか、でも」

はやり「お腹空いちゃったから勝負の前に何か食べさせてもらうよ」

晴絵(この人他人の家で何言ってんだ……)

良子「おいしそうなカレーがありますよ」

穏乃「それ食べるんですか?」

はやり「駄目?夜から大蛇と戦っておなかペコペコなんだ」

良子「戦ったのは私なんですが」

はやり「だって蛇怖いんだもん」

宥「阿知賀に大蛇なんていたんだね」

憧「たぶんお姉ちゃんが呼び出したんだと思う、式神ってやつ?」

晴絵「望ってそんなことが出来たのか」

良子「あたたまりましたよ」

憧「いつのまに!?ていうか人んちでくつろぎ過ぎでしょ!」

灼「止めた方が良いと思……」

玄「でも赤土さんを狙ってるわけだしアレを食べて倒れてくれた方がいいような……」

はやり「いただきま~す」パクッ

良子「うーん、デリシャス」

穏乃「嘘」

宥「一晩寝かせて美味しくなったのかも」

良子「美味しいですねはやりさん」

はやり「……」

良子「あれ?」

玄「気絶してます」

憧(やっぱそうよね……)

良子「ホワイ?」

憧「ほら、早く病院に連れて行きなさいよ」

良子「食べ終わるころには起きますよ」パクパク

穏乃(仲間だよね?薄情だなあ……)

灼「ハルちゃん今のうちにトドメを」

玄「灼ちゃんそんなの駄目だよ」

宥「じゃあ今のうちにゴミ捨て場に」

玄「お姉ちゃん!?」

宥「だってこの人は赤土さんを狙ってるんだよ」

玄「そうだけど……」

良子「ご馳走様です」

灼「全部食べちゃった……」

はやり「うーん……」

良子「起きましたか」

はやり「カレーに毒を盛るなんて卑怯だよ!!」

良子「ポイズン?そんなもの入ってませんでしたよ?」

はやり「え」

晴絵「ただの激辛カレーです」

はやり「どこが!?アレは人を殺せるよ!」

良子「あんなに美味しいのに残念です」

はやり「美味しい?あれが?」

玄「きっと味覚がおかしいんですね」

宥「玄ちゃん……」

玄「あっ、お姉ちゃんは普通だよ!?」

晴絵「具合悪いですよね?帰ったらどうです?」

はやり「うるさい!この勝負でボコボコにしてやるんだから!」

玄「パソコン?」

はやり「これからインターネットに繋げるんだよ」

憧「こんな所にインターネット回線なんてあるわけ」

良子「ありました」

憧「嘘っ!?」

晴絵「起きてる時にインターネットしてるからな」

憧「引篭もりのくせに」

はやり「はいできた、配信開始」

穏乃「配信?」

良子「パソコンでここの様子を放送するんですよ」

良子「ちなみにはやりさんの配信はけっこう人気があります」

宥「はあ」

晴絵「そんなことして何をする気なんですか?」

はやり「これからお互いに歌って配信を見てる人にどっちが上手かったか決めてもらうんだよ」

憧「それデキレースじゃない!あんたの配信に来るってことはあんたの仲間なんでしょ?」

はやり「そんなことないよ、ただのファンだもん」

晴絵「なんでもいいから早く始めましょう」

憧「えっ」

灼「ハルちゃん歌上手なの?」

晴絵「面倒だからはやく終わらせたいだけだ」

はやり「それって簡単にはやりに勝てるってこと?」

はやり「大した自信だね、まあいいけど」

はやり「みんなおはよー、今日ははやりと歌で勝負したいって人がいたからみんなに審査員をしてもらおうと思って配信してます」

晴絵(歌で勝負したいなんて言ってないんだけどなあ)

はやり「じゃあ早速はやりからいっくよー」

はやり「♪~」フリフリ

憧「アカペラでよくやるわね」

穏乃「踊る意味ってあるんですか?」

良子「映像も配信してるんですよ」

晴絵「えっ、私写りたくないんだけど」

はやり「みんなありがとー」

憧「次は晴絵の番ね」

灼「ハルちゃん頑張って」

玄「赤土さんなら大丈夫です、たぶん」

宥「何を歌うんですか?」

晴絵「1つしか歌える歌ないんだよ」

穏乃「大丈夫なんですか?」

晴絵「まかせろ」

晴絵「♪~」

はやり「何この歌?」

良子「民族音楽みたいな感じですね」

はやり「見た目と違って凄く綺麗で澄んだ歌声……」

はやり「薄汚い吸血鬼にこんな歌声が出せるなんて」

灼「ハルちゃんは薄汚くなんかない!」

憧「そーだそーだ!」

玄「なんで赤土さんを恨んでるんですか?」

はやり「あいつがはやりの友達を吸血鬼にしたからだよ」

穏乃「え」

宥「嘘」

晴絵「あのー、終わったんですけど」

はやり「うん、じゃあアンケートするから待ってて」

憧「晴絵、あの人の友達を吸血鬼にしたって本当?」

晴絵「何、それじゃああの人はあの子の……」

灼「本当なんだ」

穏乃「もしかして引篭もってるのに関係してるんですか?」

はやり「嘘っ!」

晴絵「どうしたんですか?」

良子「あなたの勝ちです」

はやり「みんなありがと~バイバ~イ」

ガシャーン!

良子「はやりさん落ちついてください」

はやり「認めない!こんな吸血鬼なんかに負けるなんて!」

晴絵「あのー……」

はやり「本性を現せ!」

晴絵「そのナイフで何をする気ですか?」

はやり「こうするんだよ」スパッ

玄「自分の手を!?」

灼「ハルちゃんに負けておかしくなったんだ」

はやり「ほら、大好きな血だよ吸血鬼さん」

はやり「飲みたいでしょ?ほら、薄汚い本性を表しなよ」

晴絵「やめろ!」ドンッ

はやり「きゃっ」

はやり「なんで!?吸ったらいいでしょ!!慕ちゃんにしたみたいに!!」

晴絵「血を吸いたかったわけじゃない」

晴絵「そうするしかあの子を助けられないと思ったから」

はやり「何を言ってるの」

晴絵「あの日、私と吸血鬼ハンターの戦いに巻き込まれてあの子が瀕死の重傷を負って助けるには吸血鬼にするしかないと思った」

晴絵「でも駄目だったんだ、私と違って日光に弱いなんて思いもしなかった」

はやり「ふざけないで!あなたがあの場所にいなければ良かったんじゃない!」

晴絵「そうですね……」

晴絵「ところであの子はまだ吸血鬼ハンターの保護下にあるんですか?」

はやり「いなくなったよ。慕ちゃんを人間に戻す研究をするためにこの世界に入ったのにいなくなっちゃったんだよ」

晴絵「そうですか……」

はやり「やっぱり不愉快だから今この場所で駆除してあげるよ!」

良子「やっとその気になりましたか」

はやり「行くよグハッ!」バタッ

晴絵「すみません、部屋が散らかるので」

憧「あっさり片付けた!?」

ザシュッ

宥「え……」

晴絵「」ブシャー

憧「血?」

灼「ハルちゃん!!」

良子「首を落とすつもりでしたがとっさにかわされたせいで半分しかカット出来ませんでしたね」

玄「よくも赤土さんを!」

良子「あなた方も切られたいんですか?」

穏乃「うっ……」

良子「ふふっ、はやりさんと組んでいた甲斐がありましたよ」

良子「10年前レジェンドハンター小鍛治を追い詰めた吸血鬼、それがはやりさんの因縁の相手と知ってずっとはやりさんとトゥギャザーしていましたが」

良子「ついに報われました」

玄「どういう事?」

憧「あんたは晴絵になんの用があったっていうのよ!」

良子「吸血鬼のブラッドを飲むとその力を得られるという説があるんですよ」

良子「恐らく確認されているうちで最強の吸血鬼であるこの人のブラッドを飲んだらどうなるんでしょうね」

灼「ハルちゃんに近づくな!」

ドン

灼「あうっ…」

良子「これが吸血鬼の血……では」ペロッ

良子「……」

宥「どうなったの?」

穏乃「赤土さんは吸血鬼だからあれくらいじゃ死なないよね?」

憧「当たり前でしょ!それよりもあいつは?」

良子「オエー」ゲロゲロ

灼「え」

玄「吐いた」

良子「うっ、あの説は間違オエー」ゲロゲロ

憧「汚……」

玄「吸血鬼の血を飲んだからって強くなるなんてあるわけないもんね」

穏乃「でもなんでこんなに吐いてるんだろう……?」

灼「哀れ」

晴絵「あー、首いてぇ」

宥「赤土さん!」

玄「良かった」

灼「ハルちゃん!」

良子「オエー」

晴絵「……」

晴絵「せい!」ドスッ

良子「ぐはっ」ドサッ

晴絵「この後どうしようか?」

良子「」

はやり「」

宥「殺っちゃいましょう」

玄「お姉ちゃん!?」

憧「物騒ね」

灼「でもその方がいいと思……」

穏乃「また襲って来そうですもんね」

晴絵「吸血鬼ハンターの協会に引き取ってもらおう」

憧「大丈夫なの?」

玄「協会の人も襲ってくるんじゃ……」

晴絵「なんとかなるって」

望「ん……あれ?どこここ?」

望「ってゲロくさっ!」

晴絵「望、目が覚めたのか」

晴絵「ちょうどいい、この2人を吸血鬼ハンターの協会のとこに持ってってくれ」

はやり「」

良子「」

望「こいつらは!ていうかなんで私が」

晴絵「知り合いだろ?」

望「違うわよ、最近この辺に怪しい奴がいるみたいだから見回ってたら見つけて戦って負けて人質にされただけよ」

晴絵「そうか、頼む」

望「話聞いてたでしょ?」

晴絵「部屋の掃除がしたいんだ……」

望「そう……」

晴絵「ほら、お前達も帰れ」

憧「えー」

宥「お掃除しないと」

晴絵「1人でする」

灼「分かったよハルちゃん」

灼「みんな帰ろう」

穏乃「はい」

玄「お邪魔しました」

晴絵(あの人は保護するって言ってたけど脱走してたんだな)

晴絵(もしあの子が人を襲うなら吸血鬼にした私が責任を取らないといけないよな……)

晴絵「でもまずは部屋の掃除だな血とゲロで酷い事になってるけど」

玄「やっぱり昔の事を思い出してナイーブになってたのかな?」

宥「引篭もった原因みたいだし多分そうだよね」

穏乃「引篭もりが悪化しなければいいんだけど……」

憧「そんなことさせない!でも私達じゃ晴絵の支えにはなれないのかな」

灼「そんなことない!私は絶対にハルちゃんを立ち直らせてみせる!」

玄「私も!それでいつか色んな所に一緒に遊びに行くんだ」

穏乃「私も遊びに行きたい!」

憧「じゃあ明日からもしつこいくらい晴絵のとこに遊びに行かないとね」

宥「うん!それであったかい気持ちになってもらおうよ」

灼「そしたらハルちゃんも外にでると思……」

玄「そうだね、みんな頑張ろう!」

「おー!」

第7話カン

第8話

穏乃「赤土さんちに来るの久しぶりだね」

玄「久しぶりって言っても3日だけどね」

灼「3日も空いたら十分久しぶりだと思……」

憧「まさかみんなして家の手伝いで忙しくなるなんてね」

穏乃「まさか憧も家の手伝いだったなんてね」

憧「何よ、私だってたまには家の手伝いくらいするわよ」

玄「望さんが休んでたからだよね?」

憧「そうよ!お姉ちゃんが休んでたから手伝わされてただけですけど何か!」ゲシゲシ

玄「ちょっ、痛い!蹴らないで!」

宥「憧ちゃん、玄ちゃんをいじめないで」

憧「別にいじめてないわよ」

宥「でも蹴るのはやめてね」

憧「はーい」

灼「宥さん、そんなことよりも鍵を」

玄(そんなこと……)

宥「うん」

宥「あれ?あれれ?」

玄「どうしたの?」

宥「鍵が合わないの」

穏乃「本当ですか!?」

宥「うん……」

憧「まさか鍵を変えた?」

玄「どうしてそんなことする必要があるの?」

憧「知らないわよ」

灼「私達をハンターとの戦いに巻き込まないためだと思……」

穏乃「なるほど……」

憧「は?なによそれ」

憧「ほら!いるんでしょ?開けなさいよ晴絵!」ドンドン

穏乃「憧、落ち着いて」

玄「どうする?帰る?」

宥「うーん……」

灼「これならいけるかな」

玄「灼ちゃん、その石をどうするのかな…?」

灼「こうするの!」ポイッ

穏乃「投げた!?」

憧「窓を割る気ね」

宥「前に私がやったみたいに窓を割って入るんだね」

ガン

「……」

玄「割れなかったね」

憧「灼が力無いだけじゃないの?」

宥「力はあんまり関係無いと思う」

穏乃「これ、強化ガラスだ……」

憧「へ?」

穏乃「たぶんウチのと同じで銃弾でも割れないやつ」

憧「そこまでして私達を中に入れたくないわけ?」

灼(むしろなんで穏乃の家はそんなガラスを……)

玄「諦めるしかないね……」

灼「今度爆弾を作って来る」

玄「駄目だよ!」

憧「そうだ!火つければいいのよ」

憧「そしたらあっちから出てくるでしょ」

玄「憧ちゃん落ち着いて!」

警察「ちょっと君達」

宥「はい?」

穏乃「わ、私達は怪しいものじゃありませんよ!」

警察「この家の人から家の前で人が騒いでて困ってるって通報があったんだよ」

憧「べ、別に騒いでませんけど」

警察「窓に石をぶつけられたとか」

灼「そんなことあるわけ……」

警察「この石、不自然だよね?」

「……」

憧「っていうことがあったのよ!」

憧「だからあのクサレ吸血鬼をとっとと狩って来てくれない?」

初瀬「見習いの私が勝てるわけないだろ……」

憧「勝ちなさいよ!」

初瀬「無茶言うな」

初瀬「こないだだってハンターに勝ったんだろ?」

初瀬「見習いには絶対無理」

憧「なによ、使えないわね」

初瀬「酷っ!」

憧「せっかくまた遊べるようになったのにこんなの酷いじゃない……」

初瀬「そうだね……」

初瀬(さっきの憧も酷いけど)

憧「せめて理由とかさ……」

初瀬「気持ちは分かるけどこれで良かったと思うよ」

憧「は?」

初瀬「だってあっちは人間じゃないし関わってもろくな事ないって」

初瀬「ハンターとの戦いに巻き込まれるかもしれないし襲われて血を吸われるかもしれないだろ」

憧「私はむしろ血を吸われて吸血鬼にされたいわよ!」

初瀬「家族が聞いたら泣くぞ」

憧「お姉ちゃんは何も言わなかったわよ」

初瀬「はあ……」

初瀬「もしかしたらそんなんだからアッチから避けてるのかもな」

初瀬「赤土さんはいい人っぽいし」

憧「こんな事して全然いい人じゃないわよ!」

憧「おかげで警察と親に説教されたんだから」

初瀬「そりゃそうだろ……」

憧「なによ!あんたも説教するき?もういいわよ!」

初瀬「おい憧!待てよ」

憧(絶対にあの家の防御を突破してやるんだから)

第8話カン

第9話

赤土家前

憧「鍵がかかってるのなら開ければいいのよ」

憧「この針金でね!」

憧「やったことないけどなんとかなるでしょ」カチャカチャ

憧「なにこれ、全然開かないじゃない」カチャカチャ

「……」トントン

憧「何?肩なんて叩いて今忙しいからほっといてよ!」

「……」トントン

憧「もー!なんなのよいったい!」クルッ

警察「警察です」

憧「……」

次の日

憧「昨日は警察と親に説教されて最悪だったわ」

憧「これも全部晴絵のせいよ」

憧「絶対に文句言ってやるんだから」

憧「でも玄関の鍵を開けるのは目立つからまた警察に見つかるかもしれない」

憧「だから道からは死角になってる所の窓を狙うわ」

憧「強化ガラスっていっても金鎚で叩いてたらそのうち割れるでしょ」

憧「えいっ!この!」ガンガン

憧「クソっ、なかなか割れないわね」

憧「流石は強化ガラスってこと!?」ガンガン

「あのー」

憧「何?後にして!」ガンガン

「すみませーん」

憧「後にしてって言ってるでしょ!」クルッ

警察「警察です」

憧「……」

次の日

憧「もう頭来た!こんな家燃やしてやるんだから」

憧「火付けてすぐ逃げれば警察にも捕まらないでしょ」

警察「こんにちは」

憧「なんでいるのよ……」

警察「最近、君がこの家で悪さしてるから見張ることになったんだ」

憧「そうなんですか、ご苦労様です。それじゃ」ダッ

警察「待て!そのポリタンクの中身はなんだ!」

次の日

憧「3日連続説教地獄とか私が何したっていうのよ」

憧「これも全部家の手伝いにかまけてるみんなが悪い」

憧「仕返ししてやる……」

憧「まずはシズからよ」

高鴨さんちのお店

憧「シズー」ガラガラ

綾乃「いらっしゃい憧ちゃん」

綾乃「今日はどうしたの?」

憧「綾乃さん?シズは?家の手伝いしてるんじゃ」

綾乃「穏乃なら山に行ってるわよ」

憧「なん…ですって…」

憧「山に行って来ます」

綾乃「えっ、今から?危ないわよ」

憧「大丈夫です」

憧「山に行ってるから帰りが遅くなっても心配しないようにウチに連絡しといてください」ダッ

綾乃「ちょっと憧ちゃん!」

憧(おのれシズ家の手伝いって言ってたくせに)

憧(待ってなさいよ、絶対に文句言ってやるんだから)



憧「どこに居るのよシズー」

憧「ていうかここどこよ……」

憧「もしかして迷った…?」

憧「いやいや、そんな馬鹿な」

憧「この私が道に迷うわけ……」

憧「……」

憧「うん!迷ったわこれ……」

憧「どうしよう……」

憧「あれ?あれって……」

憧「やっぱり山小屋だラッキー」

憧「でもこの山小屋ボロいわね」

憧「まっ、いっか」

憧「ごめんくださーい」ガチャ

……

憧「誰もいない」

憧「そりゃこんだけボロいってことは人が来なくなってからけっこう経ってそうよね」

憧「はあ、どうしよう」

「ウゥ」

憧「えっ、呻き声?何かいるの?」

「ウアァ」

憧「やっぱり何かいる」

憧「あっち?」ソーッ

「ウアー!」

憧「ひー!」ドサッ

憧「ああ……何これ、人間みたいに見えるけど……」

ガチャ

憧「え……後ろからも何か来る?」

憧「いやー!」

穏乃「憧?こんな所にいたのか」

憧「シズ?」

憧「シズー!」ギュー

穏乃「憧落ち着いて!」

憧「どうなってるのよ!道に迷ったし変なのいるしシズは家の手伝いじゃないし何故かこんなボロ小屋にシズが来るし!」

穏乃「だから落ち着けって!」

穏乃「私がここにいるのは憧を探すようにお母さんから電話があったからだよ」

憧「電話?繋がるのこの山!?」

穏乃「うん、繋がるよ」

憧「……」

穏乃「えっとここはもう使われて無い山小屋で」

穏乃「あの人はこないだ山で見つけた」

憧「見つけたって……」

憧「ていうか人なの?」

穏乃「うーん……多分吸血鬼だよ」

穏乃「最初に会った時『血!』とか言って襲って来たし」

憧「襲われた!?大丈夫だったの!?」

穏乃「うん、なんか弱っててなんとかなった」

穏乃「それで今はそこに縛り付けてあるんだ」

憧「大丈夫なの?縄千切られたりしないの?」

穏乃「弱ってるから多分大丈夫だよ」

憧「ほんとにぃ?」

「明太子!明太子!」

憧「明太子?」

穏乃「1回上げたら気に入っちゃって」

憧「何それ……」

憧「ていうかこの人どうするのよ?」

穏乃「どうしよう?」

憧「初瀬に言ってハンターを派遣して貰おっか」

穏乃「こんなに弱ってるのに可哀想じゃない?」

憧「いや、吸血鬼だし」

憧「多分先生が言ってた行方不明事件の犯人はこいつよ」

穏乃「そうかなあ?」

憧「そうよ!ハンター呼ぶのが駄目なら屋根に穴開けといて太陽浴びさせちゃお」

「明太子!明太子!」

憧「五月蝿いわよこの明太子吸血鬼」

穏乃「明太子吸血鬼って……」

憧「ぴったりじゃない」

憧「名前も分かんないんだしコレでいいわよ」

「理沙!」

憧「え?」

理沙「名前!」

憧「ちゃんと会話出来るんかーい!」

穏乃「一言しか喋んないみたいだけどね……」

憧「ん?ということは……」

憧「ねえ、そんなに明太子食べたい?」

理沙「食べたい!」

憧「じゃあ私の言う事なんでも聞く?」

理沙「聞く!」

憧「よし!シズ、手だけロープで縛って江戸時代の下手人みたいに連れて行くわよ!」

穏乃「なんだよその例え……」

穏乃「ていうか行くってどこに?」

憧「決まってるでしょ、晴絵の家よ!」

赤土家

警察「今日も来たのか」

憧「理沙、あいつをやっつけて」

理沙「うん!」バシッ

警察「ぐはぁ」バタリ

穏乃「え……」

穏乃「ちょっと憧!」

憧「いいのよこれくらい、恨みがあるんだから」

穏乃「恨み?」

憧「さあ理沙、次はこのドアをぶち破るのよ!」

理沙「うん!」

ドン!

憧「……」

穏乃「駄目みたいだね」

憧「ちょっとー!吸血鬼でしょ!?ドアなんかに負けてんじゃないわよ!」

穏乃「窓と同じでドアも頑丈なのに代えられてるみたいだししょうがないよ」

理沙「明太子……」

憧「しょうがないわね、ほら」

理沙「明太子!」

憧「おっと、1個だけよ」

理沙「え」

憧「残りはこのドアを蹴破ったらよ」

理沙「明太子!」ドン

ガシャーン

憧「おお」

穏乃「明太子凄い」

理沙「明太子!」

憧「はいはい、じゃあこの家の居間で食べよーね」

理沙「明太子!」

穏乃「この人はどうするの?」

警察「」

憧「気絶してるうちに消しちゃう?」

穏乃「駄目だよ!」

憧「しょうがない、晴絵の家に運ぶわよ」

理沙「明太子♪」モグモグ

警察「」

憧「晴絵ー!早く出て来なさいよー!」

穏乃「なんだろ…この状況…」

穏乃「赤土さんに見つかったら何て言われるか……」

晴絵「家の近くに来た時から気づいてるけどな」

穏乃「えっ、赤土さん!?」

憧「やっと出てきたわね」

晴絵「出てきたわね、じゃないっての」

晴絵「なんだよこれ」

憧「なんだよこれじゃないわよ!」

憧「全部晴絵のせいよ!警察の人を倒したのもドアを壊したのも私が警察や親に説教されたのも靴下に穴が開いたのもお気にの服にうっかりお茶こぼして染みになったのもアレもコレも全部晴絵のせいじゃない!」

穏乃(色々と違うのが混ざってるような……)

晴絵「そうか、それでコレはどうするんだ?」

憧「え?」

理沙「ウゥ」

穏乃「なんか凶暴になってる」

憧「まさか明太子に何か入って」

穏乃「用意したのは憧だろ」

理沙「ウアー!」

憧「晴絵危ない!」

晴絵「ふん!」ベシッ

理沙「うぎゃ」

穏乃「瞬殺!?」

晴絵「まったく、こんなの拾って来るなよ危ないだろ」

憧「大丈夫だったじゃない」

晴絵「馬鹿!何かあってからじゃ遅いだろ!」

憧「な、なによ」

穏乃「つまり私達を近づけないようにしてたのって私達を心配してのことだったんですね」

晴絵「……」

晴絵「まあな、多分またハンターに襲われたりとか色々あるだろうから」

憧「はあ!?そんなの知らないわよ!」

晴絵「え」

憧「そんな勝手な気使いなんていらないの!」

憧「私は晴絵と一緒にいたいんだからそれで何かあってもいいの!覚悟は出来てる!」

晴絵「覚悟出来てるっていっても何かあったら」

憧「五月蝿い!晴絵は大人しく私と遊べばいいのよ!」

穏乃「私も赤土さんと遊びたい!」

晴絵「お前達」

憧「何しても無駄だからね、避けられてもずーっと纏わり付いてやるんだから」

晴絵「はあ……」

晴絵「分かったよ、でも私が逃げろって言ったらちゃんと逃げろよ」

憧「分かったわ」

穏乃「はい」

理沙「うぅ……」

理沙「明太子!」

穏乃「起きた!」

憧「また襲われる!?」

晴絵「ほら、明太子」

理沙「明太子!」パクッ

晴絵「どうやら私に明太子を取られると思って襲ってきたみたいだな」

穏乃「なるほど」

憧「どんだけ好きなのよ……」

晴絵「一見無害そうだけど吸血鬼だから何かしないとな」

穏乃「やっぱり吸血鬼だったんですね」

憧「何かって何するのよ?」

晴絵「処分?」

憧「処分って…案外えぐい…」

穏乃「えー、可哀想ですよ」

憧「完全に情が移ってるし」

晴絵「でも吸血鬼だからな、ほっとくわけにはいかないだろ」

穏乃「赤土さんも吸血鬼じゃないですか」

晴絵「私とこれとじゃだいぶ違うだろ」

穏乃「これじゃなくて理沙ていう名前があるんです!」

理沙「理沙!」

晴絵「あ、はい」

晴絵「とにかく!理沙を野放しにしてたら絶対人襲うからな処分だ」

穏乃「確かに私も最初は襲われましたけど……」

晴絵「ほらな、やっぱり処分だ」

憧(なんかやけに拘るわね、でも……)

憧「大丈夫よ」

穏乃「え」

晴絵「何が?」

憧「理沙に決まってるでしょ!」

晴絵「だからどうして大丈夫なんだ?」

憧「晴絵の家に理沙を置けばいいのよ」

晴絵「え」

穏乃「なるほど、赤土さんが付いてれば安心だ」

晴絵「なんだその子供を心配する親みたいな反応は……」

憧「よし決定!」

晴絵「許可してないぞ!」

憧「明太子は通販で買ってね」

晴絵「おい、それは憧が持って来るべきだろ!」

憧「だってお小遣いなくなっちゃうし」

晴絵「はあ……」

穏乃「理沙、今日からはこの人が面倒見てくれるからね」

穏乃「ちゃんと明太子もくれるらしいからもう人を襲っちゃ駄目だよ」

理沙「うん!」

憧「じゃよろしくね、私達はもう帰るから」

穏乃「え、もう帰るの?」

憧「警察の人が起きたら色々面倒でしょ」

警察「」

穏乃「そうだね」

穏乃・憧「お邪魔しましたー」

晴絵「おい!」

晴絵「どうするんだこれ……」

警察「」

理沙「明太子!」

第9話カン

第10話

憧「お寿司うまー」

憧「出前だけど」

穏乃「ごちそうさまです赤土さん」

宥「本当にいいんですか?」

憧「いいのよ、私達を締め出した罰なんだから」

晴絵「まあ、今回はな」

宥「じゃあ遠慮なくいただきます」

玄「でも特上寿司人数分だなんて大丈夫だったんですか?」

晴絵「ああ、親の遺産があるからな」

穏乃「そんなにあるんですか?」

晴絵「まあな」

憧「だから余裕があるのね」

晴絵「玄と灼も食べてるか?」

玄「はい、美味しいです」

灼「ハルちゃんのお金で食べるお寿司は最高」

灼「というかハルちゃんがご馳走してくれるならなんでも美味しい」

晴絵「そうか」

憧「灼、晴絵がちょっと引いてるわよ」

灼「えぇっ!?」ガーン

晴絵「だ、大丈夫だよ引いてないから」

灼「良かった……」

理沙「明太子!」

晴絵「はいはい、明太子もあるよ」

理沙「美味!」

宥「この人本当に吸血鬼なんですか?」

晴絵「そうだよ」

憧「シズがそう仕向けたのよ」

玄「穏乃ちゃん凄い!」

穏乃「いや、私はただ明太子を食べさせただけですけど……」

灼「明太子凄い」

穏乃「お邪魔しましたー」

宥「お寿司美味しかったです」

灼「またハルちゃんと一緒に何か食べた……」

玄「私達は?」

灼「もちろんみんなも一緒」

玄「ありがとう」

憧「じゃ、また明日も来るから」

晴絵「明日は寿司無いぞ」

憧「分かってるわよ」

穏乃「お寿司美味しかったですね」

玄「うん」

憧「特上だもん当たり前でしょ」

宥「憧ちゃんのおかげだね」

灼「ハルちゃんにお寿司をご馳走させるなんて凄い」

憧「ちゃんと罪を償ってもらわないといけないでしょ?」

玄「罪っていうのは大袈裟なんじゃ……」

憧「まっ、ちょっと家の鍵変えられただけで来なくなった玄にとってはその程度の事なんだろうけど」

穏乃「憧」

憧「私が1人でどれだけ苦労したと思って

「すみません」

憧「はい?」

宥「どうしたんですか?」

灼(この辺の人じゃないと思……)

憧(あれ?どこかで見たような)

「赤土晴絵さんの御宅はどこですか?」

穏乃「赤土さんに何か用なんですか?」

「ちょっと借りを返しに」

玄「借り?」

憧「あー!思い出した!」

憧「この人吸血鬼ハンターの小鍛治健夜よ!」

健夜「あ、知ってたんだ」

穏乃「小鍛治健夜って」

灼「10年前ハルちゃんを襲ったっていう」

健夜「それも知ってるんだ」

玄「どうしてここに赤土さんがいるって分かったんですか?」

健夜「この間ハンターと赤土さんが戦ったでしょ?」

健夜「その報告で分かったの」

宥「やっぱり赤土さんと戦うんですか?」

健夜「そうだよ」

憧「そんなことさせない!」

玄「駄目だよ憧ちゃん危ないよ」

健夜「あなた達は赤土さんと仲が良いんだね」

穏乃「そうですけど」

健夜「なら赤土さんに血を吸われてもいいでしょ?」

憧「もちろん」

憧「て、どういうこと?」

健夜「大人しそうだからあなたがいいかな」ガシッ

宥「なにするんですか!?」

玄「お姉ちゃん!」

憧「宥姉を離して!」

健夜「邪魔しないで」

健夜「別に1人だけいればいいんだから」

灼「……」

穏乃「それって……」

宥「みんな、私は大丈夫だから……」

玄「私も一緒に行きます!」

健夜「邪魔しないなら良いよ」

穏乃「駄目ですよ!」

玄「穏乃ちゃん」

憧「シズの言う通りよ」

灼「私達も行く」

宥「みんな」

健夜「盛り上がってるけど邪魔したら容赦しないから大人しくしててね」

晴絵「理沙、お茶淹れたけど飲む?」

理沙「……」Zzz

晴絵「寝ちゃったのか」

晴絵「今は明太子を食べてるけどそのうち血を欲しがったりするのかな」

理沙「お母さん……」ムニャムニャ

晴絵「……」

晴絵「そうだよな、こうなる前は家族と暮らしてたんだよな」

晴絵「あの子も……」

晴絵「きっと私を恨んでるだろうな」

ガチャ

晴絵「ん?」

宥「赤土さん」

健夜「今晩は」

晴絵「あなたは?宥を離してください」

健夜「忘れちゃったの?」

晴絵「10年前の人ですよね?忘れるわけがない」

健夜「ふふ、嬉しいなあ私もずっと覚えてたよ」

健夜「さ、この子の血を吸って」

晴絵「何言って……」

健夜「じゃないと真の力を発揮出来ないでしょ?」

晴絵「嫌です」

健夜「せっかく気を使って夜に来て餌も用意して上げたのに」

健夜「そんなんだと手が滑るよ?」

晴絵「目的は戦うことですよね?」

健夜「ただ戦うだけじゃ駄目、全力のあなたを倒さないといけないの」

健夜「じゃないと私の気が済まない」

晴絵「あなたも10年前に縛られてるんですね」

健夜「もちろんだよ、あなたが私を倒した唯一の存在だからね」

晴絵「だったらこのままでいいですよ」

晴絵「私は10年前も血を吸ってはいなかった」

健夜「それだと10年前より衰えてるんじゃないかな?」

晴絵「まずは試してください」

健夜「ふーん、いいよ外に出ようか」

晴絵「いえ、ここで」

健夜「は?」

晴絵「私引篭もりなんで家から出るわけにはいかないんです」

健夜「なんなのあなた……」

晴絵「みんな理沙を連れて家を出ててくれ」

憧「気づいてたんだ」

晴絵「当たり前だろ」

健夜「逃げないでね」

玄「なんでこの人寝てるんですかあ」

灼「重……」

理沙「……」Zzz

健夜「あれ?仲間がいたんだ」

晴絵「成り行きで家に置いてるだけです」

健夜「そう」

晴絵「さあ始めましょう」

健夜「家が壊れても知らないよ」

穏乃「赤土さん大丈夫かな?」

灼「ハルちゃんが負けるはずない」

憧「家の方が心配よね」

宥「こんな時でも家から出ようとしないなんて」

玄「10年続けてるから拘りになっちゃったのかな?」

憧「そんな拘り捨てて欲しいわ……」

灼「そんな残念なハルちゃんも良い」

宥「それだと一緒に遊びに行けないよ」

灼「うっ」

ドォーン

穏乃「壁が……」

玄「赤土さん大丈夫…かな…?」

晴絵(素手で壁が……本当に人間か?)

健夜「今のを避けるなら衰えてはいないのかな?」

晴絵「言ったじゃないですか」

健夜「でも遅くなったよね」ブン

晴絵「くっ」サッ

晴絵(壁や家具が簡単に切られる)

晴絵「その刀、凄い切れ味ですね」

健夜「当然でしょ?吸血鬼を殺さないといけないんだから」

健夜「はっ!」ドスッ

晴絵「しまっ!ぐは」

健夜「壁みたいにならなかったのは褒めてあげる」

健夜「だけどやっぱり血を吸いなよ」

晴絵「私はもう血を吸わないって決めたんです」

健夜「はあ、じゃあ今から外であの子達を殺して来てあげる」

晴絵「やめろ!」

健夜「引篭もりだから外に出れないんでしょ?」

健夜「大人しく見てると良いよ、そこの壁の穴からね」

理沙「駄目!」

健夜「あなたが先に死にたいの?」

理沙「待ってて!」

健夜「えっ、はい」

健夜「ってなんで!?」

理沙「これ」

晴絵「これは……血?」

理沙「みんなの!」

晴絵「あいつら…でも…」

理沙「みんなのために飲んで!お願い!」

晴絵(あいつらのために……)

健夜「へー、良い子達だね早く飲みなよ」

健夜「でも手に乗せてるだけじゃ少ないよお皿か鍋にでも出して貰って来なよ」

健夜「そこの吸血鬼のでも

晴絵「これだけあれば十分だ」ジュル

健夜「本当にそれだけで足りるの?」

晴絵「今まで1番多く飲んだから十分ですよ」

健夜「10年前は全然飲まなかったの?」

晴絵「吸血鬼にするのに血を吸うのは関係無いですよ」

健夜「え?」

晴絵「血を吸う時も噛まないといけないから嫌だっただけです」

健夜「ちょっとそれはないんじゃないかな」

晴絵「しょうがないじゃないですか、連想しちゃって駄目なんですから」

健夜「まあいいや、飲んだんだからちゃんと実力を出し切ってよね!」ダッ

晴絵(あいつらが心配だ、すぐに決める!)

グサッ

健夜「あれ?遅いよ?」

晴絵「捕まえた」ガシッ

健夜「え?首を絞め……」

健夜「く、苦し……」

ドン!」

晴絵「え?うわっ」

健夜「ハアハア、死ぬかと思った」

晴絵「足踏みで床を壊してこっちのバランスを崩すとか意味分からないんですけど」

健夜「上手くいって良かったよ」

晴絵(さてどうするか)

健夜(刺した刀を抜き忘れたから取られちゃった)

晴絵「刀返しますよ」

健夜「え」

晴絵「そうじゃないと楽勝なんで」

健夜「言ってくれるね」

健夜「でもここはお言葉に甘えようかな」

晴絵「どうぞ」ブン

健夜「やっぱり」スッ

健夜「渡すと見せかけて攻撃してくると思ったよ」

晴絵「当たるとは思ってませんよ!」ポイッ

健夜「ちょっと!刀投げたら危ないよ!」サッ

晴絵「そうですね!」ドゴッ

健夜「あっ」

ドーン

玄「あ、また壁が」

穏乃「今誰か飛んで行きましたよ」

憧「壁をぶち破って飛んでくとか痛そう」

宥「赤土さんじゃないよね?」

灼「血は足りたのかな?」

灼「やっぱりもっと出した方が……」

玄「あんまり深く切ったら血が出過ぎて危ないからしょうがないよ」

穏乃「あっ、走って戻って来た」

憧「あれは小鍛治ね」

宥「良かった、赤土さんじゃなかったんだ」

健夜「ハアハア、やってくれたね」

晴絵「むしろよく無事でしたね」

健夜「当たり前だよ!赤土さんを倒すまで諦めないよ!」

晴絵「そうですか」ポイッ

健夜(また刀を投げ…今度は弱い)

健夜(これなら刀を取ってそのまま攻撃出来る)

健夜(分かった!それが狙い、刀を取る隙を狙う気だ)

晴絵「あれ?取らないんですか?」

健夜「その手には乗らないよ」ダッ

晴絵(ちっ)

晴絵「だったら殴りあうしかないですね」

健夜「上等だよ!」

憧「理沙遅いわね」

宥「終わったら教えに来てくれるって言ったけど……」

玄「やっぱり手強い相手なんだね」

灼「ハルちゃん大丈夫かな?」

穏乃「大丈夫ですよ」

憧「普通に考えたら吸血鬼の晴絵の方が有利よね」

宥「そうだよね」

健夜「このっ!」バシッ

晴絵「どうしたんですか?」

晴絵「もう最初のころの威力が無いですよ!」バシッ

健夜「ぐうぅ」

健夜「そっちは回復するからずるいよね!」ドスッ

晴絵「刀を取らないからですよ!」ドスッ

健夜「うっ……」

晴絵「もう終わりですか?」

健夜「まだまだぁ」

ドスッ

健夜「えっ、次は私の番じゃな

晴絵「いや、そういうの決めてないですよね?」

健夜「そうだね……」バタリ

理沙「勝った!」ダッ

理沙「みんなー!」

憧「理沙!どうなったの?」

理沙「勝った!」

宥「良かったあ」

灼「さすがハルちゃん」

玄「でも家がボロボロだよ」

憧「これで引篭もりも出来ないしちょうどいいんじゃない?」

穏乃「確かにそうだね」

「やっと見つけた」

憧「え?」

第10話カン

第11話

晴絵「なんとか勝てた」

晴絵「また戦いを挑まれたら面倒だし縛っておくか」

健夜「」

晴絵「にしても顔ボコボコだなあ」

晴絵「私がやったんだけど……」

晴絵「これでよしっと」

晴絵「家がボロボロになったけど寝床が無事ならいいかな」

「こんな家に住んでるんですか?」

晴絵「え?」

「10年ぶりですね」

晴絵「君は……」

「あれ?忘れちゃいましたか?」

「あなたに吸血鬼にされた白築慕ですよ」

晴絵「覚えてるよ」

慕「それは良かった」

憧「晴絵逃げて!」

晴絵「憧、今度はお前が捕まったのか」

慕「そう、この子は人質」

慕「他の子達にはあっちで眠ってもらってるよ」

晴絵「なんのために」

慕「叔父さんに食べられて欲しいの」

晴絵「は?」

慕「吸血鬼ハンターさんの所から逃げた後叔父さんの血を吸っちゃったの」

慕「そしたらこうなっちゃって」

耕介「ウゥ」

晴絵(理沙と同じパターンか)

慕「叔父さんと一緒に吸血鬼として生きようと思ったんだけど」

慕「叔父さんは吸血鬼っていうか人間を食べちゃうから困ってるの」

晴絵「私に言われても直せないよ」

慕「そんなことないよ」

慕「最初はこれよりも酷かったの」

慕「でもいっぱい食べさせたらここまでになったの」

慕「だから赤土さんみたいな人を食べさせたらもっと良くなると思う」

晴絵「私にその人に食べられろと?」

慕「うん、叔父さんのご飯になって」

慕「じゃないとこの子達がご飯になるよ」

憧(嫌、でも晴絵が食べられるのも嫌)

慕「返事は早くしてね、叔父さんの我慢がもたないから」

晴絵「確かにこうなったのは私のせいだしちゃんと責任を取りたいと思っていた」

慕「だったらいいよね」

憧「いいわけないでしょ!」

憧「晴絵あんた引篭もりのままここで死ぬ気!?」

憧「私はそんなの認めないわよ!」

慕「うるさいなあ、静かにしないとお友達を叔父さんのご飯にしちゃうよ?」

憧「どっちにしろ晴絵の後にそうするつもりなんでしょ!」

慕「叔父さんがよくならなかったらそうかもね」

晴絵「そんなの駄目だ!」

慕「そっかあ、じゃあしょうがないね」ドスッ

憧「え…?」

晴絵「憧ー!」

憧「がはっ……」

慕「手がお腹を貫通しちゃったよどうする?」

慕「了承してくれたら止血してあげる、長くはもたないよ?」

晴絵「この!」

晴絵「分かった、食べられよう」

憧「晴絵……」

慕「ありがとう、叔父さんごは

理沙「駄目ー!」ドン

慕「うっ、まだ動けたの?叔父さんに食べさせちゃえば良かった」

晴絵「憧!」ギュ

憧「私死んじゃうの……?」

晴絵「大丈夫だ、助けるからちょっと待ってろ」

慕「叔父さん!みんな食べちゃって!」

晴絵「理沙!」

理沙「うん!」

憧(こんな時にも家から出ないつもりなんだ……)

晴絵「こんな時にも家から出ないつもりって思ったろ?」

晴絵「大丈夫だよ」

慕「赤土さんの相手は私だよ」

晴絵「ありがとう」

慕「え?」

晴絵「外に出ないでくれて!」ヒョイ

慕「え?持ち上げられ

晴絵「食らえー!」ビュン

慕「叔父さん避けてー!」

耕介「ウ?」

ドーン

穏乃「ん?なんの音?」

玄「たしか女の人に襲われて」

慕「」

宥「この人だよね?」

灼「ハルちゃんは?ハルちゃんは無事なの!?」

晴絵「憧、今助けるからな」カプ

灼「ハルちゃーん!」

穏乃「憧!?」

玄「憧ちゃんは大丈夫なんですか?」

理沙「噛んだ?」

宥「まさか憧ちゃんを吸血鬼に……」

晴絵「いや、吸血鬼にはならないはずだ」

灼「ほ、良かった」

憧「……」

晴絵「血は止まったし容態は安定してるけど病院に連れて行った方がいいな」

穏乃「お腹に穴が開いてますもんね……」

晴絵「救急車を呼んで付き添ってやってくれ」

晴絵「あと家に連絡も」

玄「赤土さんは行かないんですか?」

晴絵「引篭もりだし」

灼「流石にそれはどうかと思……」

晴絵「もう染み付いちゃったからさ」

晴絵「それに小鍛治さんとかをほっとくわけにもいかないから」

宥「……分かりました」

晴絵「ごめんな」

晴絵「理沙、あっちの2人をこっちに」

理沙「うん!」

玄「救急車呼びました」

晴絵「憧を頼む」

穏乃「はい、憧がよくなったら遊びに来ますね」

晴絵「ああ」

3日後

憧「晴絵ー!」

晴絵「憧!よくなったんだな」

憧「まあね」

憧「で、私に何をしたの?吸血鬼にしたの?」

慕「気配は人間のままだよ」

憧「なんであなたがここに!?」

慕「血を貰いに来たの」

憧「血?まさかまた

晴絵「普通に分けるだけだ」

晴絵「吸血鬼にした責任があるしな」

憧「ふーん」

慕「赤土さんに血をもらえれば人を必要も無くなると思って」

慕「赤土さんの血を飲んだら叔父さんも調子良いし正解だったよ」

慕「凄くまずいけど……」

憧「あー、吸血鬼ハンターの人も吐いてたなあ」

慕「やっぱり!?今日はこないだ貰ったのにあまりのまずさにうっかりこぼしちゃったから貰いに来たんだよ」

憧「不健康な生活してますからね」

慕「だよね」

晴絵「だって引篭もりだし」

穏乃「本当に憧は吸血鬼じゃないんですか?」

晴絵「ああ、気配は人間のものだ」

憧「でも太陽が眩しいんだけど」

晴絵「まあ少ないとはいえ私の血を入れたからな」

晴絵「その副作用だろ」

憧「ちょっと!大丈夫なの?」

晴絵「そのうち元に戻るさ」

宥「よかったね憧ちゃん」

憧「良くない、本当に戻るって保障があるわけ?」

憧「だいたい私をこんな体にしたんだし責任とりなさいよ」

憧「その人に対しては責任取ったんでしょ?」

晴絵「分かったよ」

晴絵「引篭もりをやめろか?」

晴絵「あの後から考えてたんだけど白築さんの事も済んだしこの機会に脱引篭もりしようと思ってるからちょうどいい」

玄「いいですね」

灼「ハルちゃんと遊びに行ける」

慕「その方が血も美味しくなりそうですね」

憧「駄目、引篭もってなさい」

晴絵「え?」

憧「引篭もって私の血を毎日飲む事、それで許してあげるわ」

憧(引篭もりやめたら晴絵に近づく人間が増えちゃうもんね)

灼「憧!?」

玄(憧ちゃんまさかこの機会に1人だけ赤土さん近づくつもり?)

穏乃「了承しませんよね?」

宥「憧ちゃんだけずるいよぉ」

慕「モテモテですね」

理沙「モテモテ!」

晴絵「あはは……」

憧「ちょっと返事は?」

晴絵「えっと……」

晴絵(昔の事も済んだし前に進むって決めたからな)

晴絵(これが前なのかは分からないけど……)

晴絵「分かった、それでいい」

憧「よっしゃ!」

憧「じゃあ早速飲んでよ」

晴絵「ん」カプ

憧「つっ…痛いんだけど」

晴絵「そりゃそうだろ噛まれるんだから」

憧「あーあ、気持ち良いと思ったんだけどなー」

玄「憧ちゃんの変態」

憧「変態じゃない!」

穏乃「でも血を吸われるのに気持ちいいのを期待するのは……」

憧「何よ!みんなだってそう思ってたでしょ?」

灼「私は自分の血がハルちゃんの体の一部になることに興奮するけど」

宥「それは高度過ぎるよ……」

憧・穏乃・玄・宥(でも確かにいいかも)

憧「でも晴絵に血を吸ってもらえるのは私だけだし」

穏乃「憧から毎日吸ってたら憧が貧血になって大変だから私も吸ってください!」

玄「私も」

灼「私も吸って欲し……」

宥「私のもどうぞ」

憧「ちょっとあんた達!」

憧「吸うのは私だけよね?晴絵」

晴絵「えっと」

慕「その方が血が美味しくなりそうだからそれがいいと思います」

晴絵「そうですね」

憧「晴絵!」

晴絵「だって何かあったら憧の家族に悪いだろ」

憧「むー、分かったわよ」

憧「でも家族、というか他の人には内緒ね。特にお姉ちゃんには」

晴絵「分かったよ」

灼「やった」

玄「じゃあ早速」

宥「赤土さんに血を吸ってもらえるなら寒くないです」シュル

憧「駄目ー!今日は私!」

憧「だから宥姉も脱がないで!」

宥「うん……」

穏乃「じゃあ日替わりだね」

憧「仕方無いわね」

慕「本当にモテモテですね」

晴絵「……」

1ヵ月後

健夜「赤土さん勝負!」

灼「ハルちゃん負けないで」

憧「血を吸いなさいよ、そしたら絶対負けないでしょ」

健夜「いいよ吸いなよ、全力の赤土さんに勝たないと意味がないから」

晴絵「憧」カプ

憧「ん……」

憧(なんか癖になっちゃったかも)

健夜「顔赤いけど大丈夫?」

憧「大丈夫です!」

良子「それでは準備はいいですか?」

晴絵「はい」

良子「レディー……ゴー!」

健夜「ふん!」グッ

晴絵「くっ」グッ

穏乃「なんで腕相撲なんだろ」

玄「こないだ赤土さんと殴り合いして顔が凄いことになったらしいからね」

宥「だから輪郭がちょっと変なんだ」

健夜「今私の顔が変って言った!?」

バン

健夜「あ」

健夜「待って!今のはノーカンでしょ!?」

はやり「試合中に余所見するのが悪いんだよ」

はやり「さ、赤土さん私と歌の練習しよ」

初瀬「なんで赤土さんが瑞原さんと歌を?」

憧「今度CD出すらしいんだけど、そのコーラスをお願いされたんだって」

やえ「ハンターとも仲良くなるとは流石レジェンド吸血鬼」

良子「仲良くなったつもりはありません。力を得る研究をしに来てるだけです」

玄「今日も血を舐めて吐くんですか……」

良子「ノーウェイノーウェイ、今日は大丈夫です」ペロッ

良子「オエーッ」

健夜「うわ、汚っ」

穏乃(この人本当は吐きたいだけなんじゃ……)

憧「なんで今日はこんなに人が来るのよ……」

宥「赤土さんの人徳?」

憧「それはいいんだけど……」

憧「ねえ晴絵、もっと吸ってよ」

晴絵「なんでだよ」

はやり「あんまり赤土さんに血を吸わせて吸血鬼として活発になられたら困っちゃうなー」

穏乃「なんでですか?」

はやり「だってCD出したら全国ツアーするし赤土さんが血を求めて徘徊したら困るでしょ?」

灼「全国ツアー……」

憧「駄目よ晴絵は引篭もりなんだから」

理沙「明太子!」

晴絵「うーん、憧との約束もあるし理沙も見てないといけないのでツアーは無理ですよ」

はやり「そんなあ」

憧「よく言った!ほら、御褒美に血を吸っていいわよ」

初瀬「お前が吸わせたいだけだろそれ」

玄「もうすっかり変態さんだね憧ちゃん」

憧「変態って言、あーもう変態でいいわよ!」

憧「だから吸いなさい晴絵」

晴絵「はあ、歌の練習が終わったらな」

晴絵(まったく、結局ずっと引篭もり続けることになったのはいいけどちょっと血を吸わせに来過ぎだ)

憧「何か文句ある?」

晴絵「無いよ、引篭もってるのに最近は賑やかだなって思ってさ」

憧「迷惑?」

晴絵「いや、毎日楽しいよ。血を吸わせたがるのはやめて欲しいけど」

憧「だーめ、ちゃんと責任取って貰わないと」

晴絵「分かったよ、だからちゃんと家に来いよな」

晴絵「人が来ると嬉しいし」

憧「前に比べたら随分素直よね」

晴絵「みんなのおかげだな」

憧「そこは私のおかげって言うべきじゃない?」

灼「抜け駆けは良くないと思……」

玄「そうだよ」

穏乃「私だって何年も付き合ったんだけなあ」

宥「見損なったよ憧ちゃん」

憧「悪かったわよ」

晴絵「ふふっ」

憧「もー笑わないでよー」

晴絵「いや、こんなに賑やかなら引篭もりでも退屈しないで生きていけると思ってな」

憧「当たり前でしょ、引篭もってるように言ったんだからちゃんと責任もって晴絵の人生を楽しいものにしてあげるわよ」

玄「私達がね」

憧「分かってるわよ」

灼「疑わし……」

憧「もー!」

晴絵「あはは」

晴絵(うん、これからは楽しい引篭もり生活になりそうだ)

引篭もり吸血鬼赤土晴絵
カン

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