卯月「ネオ童実野シティでライブ、ですか?」 武内P「はい」 (87)

武内P「ネオ童実野シティで、ニュージェネレーションズによるライブが行われることが決まりました」

凛「ネオ童実野シティって、ライディングデュエルの本場だよね」

未央「私一度行ってみたかったんだ! モーメントっていう機械がなんかすごいらしいよ」

卯月「わあ、楽しみですね」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438272921

注意事項

アニメモバマス×遊戯王5D's
世界の命運をかけるようなデュエルは行われません
というよりあんまりデュエルしません

未央「プロデューサー、観光する時間とかある?」

武内P「現地には前日の昼ごろに入る予定です。そして帰るのはライブの翌日になります」

卯月「ということは、ライブの前後の日に自由時間ができるんですか?」

武内P「あまり長くはありませんが、そういうことになります」

未央「やった!」

卯月「どこに行くかとか、事前に決めておかないとですね」

凛「はしゃぐのはいいけど、肝心のライブのほう、忘れてない?」

未央「そ、そんなことないってば~」

卯月「頑張って歌って、ネオ童実野シティの皆さんにも満足してもらいたいですね」

武内P「ええ。皆さん、よろしくお願いします」

ネオ童実野シティ内 マーサハウス


遊星「アイドルのライブ?」

マーサ「知り合いにチケットを1枚もらったんだけどね。あたしみたいなおばさんが行っても、だろう?」

マーサ「だから、代わりにあんたが行っておいでよ」

遊星「しかし、俺もアイドルに興味は」

マーサ「あんたぐらいの年頃の男は、ちょっとぐらいアイドルに興味持った方がいいんだよ」

マーサ「女の子に少し関心があるくらいのほうが、あのアキって子もやりやすいだろうしね」

遊星「アキがどうかしたのか」

マーサ「あんたは気にしないでいいよ。とにかく、ほら。これがチケットだから」

遊星「……わかった。受け取っておく」

マーサ「遊星は素直だから好きだよ」

マーサ「クロウがいれば、あの子に渡して解決だったんだけどね」

遊星「あいつも今は、この街を出てプロリーグで戦っている」

マーサ「あんたはどうだい? 確か今は休職中だったろう」

遊星「ああ。モーメント『フォーチュン』の開発も一段落ついたから、ひとまず俺の役目は終わった」

遊星「今は、この街で何をすべきか探しているところだ」

マーサ「見つかるといいね。自分のやりたいこと」

マーサ「悩みがあったら、いつでもここに来なよ。話を聞いてやるくらいのことはできるからね」

遊星「ありがとう、マーサ」

Dホイールで帰宅中


遊星「アイドルか……」

遊星「ニュージェネレーションズ。新世代という意味か」

遊星「(受け取った以上、行かないというわけにもいかないな)」

遊星「……少し、調べておくか」

時は流れてライブ前日


凛「ここがネオ童実野シティ……」

卯月「大きな街ですねー……」

未央「見て見て! あれがネオダイダロスブリッジだよ。平等と平和の象徴だって雑誌に書いてたやつ」

武内P「分断されていた二つの地区をつなげ、格差をなくすことにつながった橋だそうです」

凛「へえ」

未央「ってプロデューサー! 私のセリフとらないでよ~」

武内P「あ……すみません」

卯月「プロデューサーさん、ネオ童実野シティについて詳しいんですね」

武内P「詳しいと言うほどではありません。ライブを行うにあたって、最低限必要な知識を頭に入れているだけです」

未央「さすがプロデューサー。真面目だね」

凛「未央じゃなくてプロデューサーに観光スポット聞いたほうがいいかもね」

未央「あっ、しぶりんひどーい!」

凛「冗談だよ、冗談」

未央「というわけで、早速自由時間がやってきたわけですが」

卯月「ここに来る前に立てた予定だと、最初は旧サテライト地区のほうをまわろうってことになってましたよね」

凛「ライブの次の日のほうが自由時間が長いから、シティの散策はそっちでやろうって話だっけ」

未央「じゃあ出発しよっか。時間は限られてるわけだし」

卯月「なんだかわくわくしちゃいますね」

凛「そうだね」

旧サテライト地区


未央「へえー、なんだか珍しいものがたくさん売ってるね」

凛「ジャンク屋ってやつだね」

卯月「あ、でもぬいぐるみとかキーホルダーとかもあるみたい」

未央「おお、ほんとだ……って」

凛「なぜぴにゃこら太ばかり置いてるんだろう……」

未央「こうして街を歩いてるとさ、有名人とばったり会ったりとかしないかな」

卯月「有名人?」

凛「たとえば?」

未央「そりゃーやっぱり、デュエルキングのあの人でしょ!」

卯月「デュエルキング……ええと、確か名前は」

凛「不動遊星、だったよね」

未央「そうそう! この街の救世主とも呼ばれてるんだよね」

卯月「だいぶ前にニュースになってましたよね。ネオ童実野シティが大変なことになったって」

凛「それを救ったのがその人なんだっけ」

未央「らしいよ。私も詳しい話は知らないんだけどさ」

卯月「でも、そんな有名人がこのあたりをうろうろしていたりするんでしょうか」

未央「ところがしまむー、不動遊星は割と簡単に会えるチャンピオンとして有名なんだよ」

未央「普通にその辺に出没するし、髪型も特徴的だからすぐに見分けられるって。ほら、雑誌にも載ってる」

凛「観光雑誌にそんな情報まであるんだ……」

卯月「あはは……なんだか動物の見つけ方みたいな書かれ方だね」

凛「それにしても、ちょっと暑いね」

卯月「今日は気温が高いそうですからねー」

未央「ふっふっふ。こんなこともあろうかと、この手のひらサイズのミニ扇風機を持ってきておいたのだっ!」

卯月「用意がいいですねっ。さすが未央ちゃん!」

未央「早速スイッチオン! ……あ~涼しい~」

卯月「ですね~」

凛「ちょっと、私だけ風があたってないんだけど」


タタタッ

??「うわっ」

未央「えっ……わあっ!?」


ゴツン!


未央「あいてて……」ズテン

??「いてて……」

卯月「未央ちゃん!」

凛「ちょっと、大丈夫?」

未央「だ、大丈夫大丈夫」

??「ご、ごめん! ちゃんと前向いて走ってなかったからぶつかっちゃった」

??「怪我とかない?」

未央「(小さな女の子だ)」

未央「うん、私は平気。あなたも大丈夫?」

??「オレも平気だよ」

卯月「ああっ!」

凛「卯月、どうしたの?」

卯月「未央ちゃんの扇風機が……」

未央「扇風機? あ、そういえばいつの間にか手元から消えて……」

卯月「ぶつかった拍子に飛んでいっちゃったみたいで……拾ってきたけど、動かなくなっちゃってるみたい」

未央「あちゃー。確かにスイッチ入れても動かないね」

??「オレのせいで壊れちゃったのか? ごめん!」

未央「いやいや、これくらいのものなら壊れても大丈夫だよ。また買いかえればいい話だし」

??「でも、それじゃオレの気が……あ、そうだっ」

??「ちょっとついてきてくれないか?」

3人「?」

??「まだ名前言ってなかったよね? オレはラリーっていうんだ。よろしく」

ラリー「おーい、遊星!」

遊星「ラリー。どうかしたのか」

ラリー「実はさ、ちょっと修理を頼みたい物があるんだ」

遊星「修理?」

ラリー「ほら。えっと、未央だったよね」

未央「う、うん。これ、なんですけど」

遊星「扇風機か」

ラリー「オレがこの子にぶつかって壊しちゃったんだ。遊星、直せる?」

遊星「………」

遊星「このくらいなら、今ある道具で簡単に直せる」

ラリー「本当!? やってくれるの?」

遊星「ああ。時間もかからないだろう」

ラリー「さっすが遊星! 頼りになるよ」

未央「ゆうせい……?」

凛「しかも、あの髪型……」

卯月「あ、あのっ」

遊星「ん?」

卯月「もしかして……不動遊星さんですか?」

遊星「ああ、そうだが」

3人「………」

遊星「?」

卯月「す……」

卯月「すごいです!」

未央「ほ、本物の不動遊星だ!」

凛「まさか本当に会えるなんて……」

遊星「………」

ラリー「やったね遊星。モテモテじゃん」

遊星「この手の反応には、いつになっても慣れないな……」

眠いのでひとまずここで中断します

未央「あ、あの! よかったらサインを……」

遊星「サインは……苦手だな。だが、拙い字でもかまわないのなら」

未央「ありがとうございますっ」

遊星「ところで、君達はニュージェネレーションズのメンバーじゃないか?」

凛「私達のこと、知ってるんですか?」

遊星「ああ、明日この街でライブを行うんだろう。俺もチケットを持っている」

卯月「ええっ! ひょ、ひょっとして私達のファン、だったりとか」

遊星「ああ……いや、知り合いからチケットをもらっただけで、俺自身は君達のことを少ししか知らないんだ」

卯月「そうなんですか……」シュン

ラリー「ダメだよ遊星。そこは嘘でもファンですって言ってあげないと」

遊星「そういうものなのか。すまない」

未央「いえいえ、そこで謝られても……」

~遊星修理中~


未央「へえ。じゃあラリーは小さい頃から遊星さんと友達なんだ」

ラリー「うん。サテライトがごみ溜め場だった時代から、ずっと仲間なんだ」

ラリー「一緒に風呂に入ったこともたくさんあったなあ」

凛「え……それってさすがにまずいんじゃないの?」

卯月「いくらお友達同士だからって、異性で一緒にお風呂に入るのは……」

ラリー「異性? 何言ってるんだ、オレも遊星も男だよ」

未央「え」

凛「えっ」

卯月「ええっ!? ラリーちゃん、男の子だったんですか!」

ラリー「たまに間違えるやつがいるんだよ。だいたい、自分のことオレって言ってるんだから男に決まってるじゃん」

未央「最近はオレっ娘っていうのも結構多いから、てっきりそっちなのかと」

卯月「ラリーちゃんじゃなくてラリーくんだったんですね」

ラリー「もう間違えちゃダメだからな」

遊星の年齢についてですが

アニメ開始当初で遊星18歳、アキ16歳
最終盤でアキが進路に悩んでいるので、おそらくこの時点でアキ18歳、遊星20歳
このSSは5D'sのEDの少し後(みんなが成長している未来のほうではないです)を想定しているので、遊星は20か21くらいです
なのでラリーも多分12歳くらいです

遊星「よし。これで直ったはずだ」

凛「ほんとだ、動いてる」

卯月「よかったですね、未央ちゃん」

未央「ありがとうございます、遊星さん!」

遊星「たいしたことじゃない」

未央「………」

遊星「どうした?」

未央「あ、いやその。なんだか優しい人だなって」

ラリー「遊星はちょっと顔怖いけど、中身はすっごくいいやつだから」

ラリー「普段からもっと笑顔なら、人もたくさん寄って来るのにな」

遊星「もともとこういう顔なのだから、仕方ない」

遊星「それに、この顔でも誰も寄ってこないわけじゃないからな」

ラリー「それはそうだけどさ。オレとか」

卯月「笑顔なら得意です!」

ラリー「お、本当だ。きれいな笑顔」

凛「卯月の笑顔は、見ているほうも元気になるから」

遊星「さすがはアイドルだな」

未央「あーあ。デッキ持ってきてたら、遊星さんにデュエル申しこみたかったなあ」

遊星「君もデュエリストなのか」

未央「といっても、全然よわっちいですけどね。あんまり強いカードも持ってないし」

遊星「勝率がよくなくても、楽しむ心さえあれば立派なデュエリストだ」

遊星「どんなカードにも、その力を活かせる道がある。だから、カードを信じて戦えばいい」

ラリー「遊星なんて、最初は拾ったカードだけで相手をバッタバッタと倒していったんだ」

凛「拾ったカードだけで?」

卯月「すごいです……」

未央「さすがデュエルキング。アドバイスありがとうございましたっ」

遊星「ああ」

卯月「でも、バイクに乗ったままデュエルなんて難しそうですね」

遊星「オートパイロット機能もあるから、慣れればそう困難でもない」

未央「迫力満点ですよね。私、テレビでチーム5D'sの試合見てました」

凛「チームワークの良さそうなメンバーだったよね」

遊星「ああ、最高のチームだった」

遊星「今はみんなここから離れて、それぞれの道を進んでいる」

未央「確か、プロに行った人もいたような」

遊星「ジャックとクロウだな」

凛「ばらばらの進路を選んだんですね」

遊星「いつまでも、同じチームのままではいられないからな」

卯月「あ……」

未央「しまむー、どうかした?」

卯月「う、ううん。なんでもないよ」

その日の夜


武内P「不動遊星さんとお会いしたのですか」

凛「偶然に偶然が重なって、だけど」

卯月「すごくいい人でした!」

未央「寡黙そうなところとか、ちょっとだけプロデューサーに似てたかも」

武内P「そうですか……」

未央「プロデューサーも会いたかった?」

武内P「……ええ。興味は、あります」

未央「じゃあさ、ライブが終わったら、今度はプロデューサーも一緒に遊星さんのところに行こうよ」

武内P「しかし、迷惑ではないでしょうか」

凛「今、暇なんだってさ。だから大丈夫じゃないかな」

武内P「……なるほど」

卯月「プロデューサーさん、うれしそうですね」ボソッ

未央「遊星さんと会ってどんな反応するか楽しみだね」ボソッ

翌朝


卯月「少し、散歩に行ってきます」

凛「いいけど、ちゃんと時間までには帰ってこないとダメだよ」

卯月「うん」

遊星『いつまでも、同じチームのままではいられないからな』

卯月「……遊星さんのチーム。一番になったのに解散しちゃったんだ」

卯月「ニュージェネレーションズやシンデレラプロジェクトも、いつかはそうなっちゃうのかな……」

卯月「………」

卯月「(ライブの前にこんなこと考えてちゃダメだよね)」

卯月「そろそろ時間だし、戻らないと」ガタッ

卯月「(あ、携帯落としちゃった――)」

猫「にゃー」パクッ

シュバッ!


卯月「………」

卯月「ね、猫さんがくわえていっちゃいました……」

卯月「ま、待って~!!」

卯月「はあ、はあ」

卯月「み、見失っちゃいました……」

卯月「どうしよう……時間もないし、とりあえずみんなのところまで戻らないと」

卯月「えーっと……」

卯月「(猫さんを追いかけてるうちに道がわからなくなりそうだったけど、確かこっちの道を行けばホテルに戻れるはず)」

卯月「来た道を戻るだけだから、きっと大丈夫――」


アナウンス「デュエルが開始されます。デュエルが開始されます。ルート上の一般車両はただちに退避してください」


卯月「………」

卯月「あ、あの……道の形が変わっちゃったんですけど」

卯月「これじゃあ、どうやって帰ればいいのかわからない……」

卯月「ど、どうしよう」オロオロ

武内P「島村さんが戻ってこない?」

凛「うん。ちょっと前に散歩に行くって出ていったきりで」

未央「電話にも出ないし、何かあったのかな……心配だよ」

武内P「………」

武内P「時間がありません。渋谷さんと本田さんは、先に会場に向かってください」

武内P「私は島村さんを探してきます」

凛「それしかないか……」

未央「……あ、そうだ」

未央「迷惑かもしれないけど、いちかばちかこの街に詳しい人に……」

遊星「(さて、そろそろ出かける準備を始めるか)」

Prrrrr

遊星「電話か。相手は……彼女か」

遊星「はい」

未央「遊星さん! 昨日番号教えてもらったばかりで申し訳ないんですけど、頼みたいことがあるんです!」

遊星「……何かあったようだな」



遊星「そうか、彼女が……わかった。俺のほうでも探しに行こう」

遊星「ホテルの場所は……そうか。あまり俺の家から離れていないな」

未央「すみません。いきなりこんなこと頼んじゃって」

遊星「この街の地理に明るい俺を頼るのは当然だ。君達はライブの準備をしっかりとしておけ」

未央「う、うん!」

ピッ


遊星「……行くか」

しばらく捜索した後


遊星「卯月!」

卯月「ゆ、遊星さん! あの、私道に迷っちゃって、その」

遊星「事情は聞いている。見つけられてよかった」

遊星「何か事件に巻き込まれたわけではないんだな」

卯月「はい、そういうわけじゃないです。ただ、携帯を猫さんにとられちゃって、あとライディングデュエルが始まって、道が……」

遊星「そうか。初めてこの街に来た人間なら、戸惑っても仕方ない」

卯月「ライブ、間に合うでしょうか?」

遊星「Dホイールを走らせればなんとか間に合うはずだ。後ろに乗ってくれ」

卯月「あ、ありがとうございますっ」

??「よう、遊星じゃねえか」

遊星「牛尾」

牛尾「何やってるんだ? こんなところで……って、お前、えらくかわいらしいお嬢ちゃん連れてるじゃねえか」

卯月「あ、えっと……」

遊星「セキュリティに勤めている牛尾だ。つまり警察だな」

卯月「警察官の方ですか。はじめまして、島村卯月です」

牛尾「おう、礼儀正しい子だな。遊星、お前も案外隅に置けないな」

遊星「やめてくれ。そんなんじゃない」

牛尾「なるほど。じゃあ今からアイドルのお嬢ちゃんを会場まで送り届けるのか」

遊星「ああ」

牛尾「しかし、時間と場所を聞く限りはちょっと難しいかもしれねえな」

遊星「なに?」

牛尾「こっから会場までの道で、さっき交通事故が起きちまってよ。だから最短経路はとれねえ」

牛尾「そうなると迂回するしかなくなるが、この時間帯は道も結構混んでるからな」

遊星「どうしても時間がかかる、か」

卯月「そんな……あの、間に合わないんですか?」

遊星「………」

遊星「いや、心配するな」

卯月「え?」

遊星「俺が必ず君を会場まで連れて行く」

遊星「だから、観客の前で笑う練習をしていればいい」

遊星「悲しい顔をする必要は、ない」

卯月「遊星さん……」

牛尾「何か考えがあるようだな」

遊星「その通りだ」


遊星「牛尾。俺とデュエルしてくれないか」

牛尾「はあ?」

遊星「彼女を送り届けるために、必要なんだ」

牛尾「必要ってお前……ああ、そういうことか」

牛尾「そういう目的で利用するってのは、本来微妙なところなんだが……」

遊星「頼む」

牛尾「……いいぜ。お嬢ちゃんに免じて、今回は特別に付き合ってやる」

牛尾「久しぶりに、お前とライディングデュエルしたいってのもあるしな」

遊星「ありがとう。恩に着る」

卯月「え、えーと……つまり、どういうことなんでしょう」

遊星「君はさっき、デュエル開始に伴って道が変形するのを見ただろう」

遊星「あれは、ライディングデュエルを行うためのルートを確保するためのものなんだ」

卯月「はい。それはなんとなくわかります」

牛尾「それを今から俺達も利用するってことだ。こっから会場まで行くのに一番都合のいいルートを選択して、そこを走る」

遊星「ライディングデュエルなら通常よりもスピードが出せる。だからきっと間に合うはずだ」

卯月「じゃあ、今からお二人でデュエルするってことですか?」

遊星「そうだ。君を後ろに乗せてな」

卯月「わ、私、ライディングデュエルを経験するの初めてです!」

牛尾「そうかい。ならせっかくだ、楽しんでくれよ」

遊星「その前に、未央達に連絡を入れておこう」

遊星「スピードワールド2、セット」

システム音声「デュエルモード、オン」

牛尾「お前と思い切り走るってのは、いつ以来だろうな」

遊星「さあ、どうだったろうな」

卯月「………」ドキドキ

遊星・牛尾「ライディングデュエル・アクセラレーション!」


ブウウウゥン!!

卯月「きゃっ! は、速いですっ」

遊星「怖がる必要はない。心を開いて、風を感じるんだ」

卯月「風を、感じる……」

※デュエルはダイジェストでお送りします


牛尾「ゲート・ブロッカーにジュッテ・ナイトをチューニング!」

牛尾「シンクロ召喚! ゴヨウ・ガーディアンを攻撃表示だ!」

牛尾「こいつの一撃は効くぜ?」

遊星「序盤からゴヨウ・ガーディアンか。本気だな」

牛尾「会場近くまで行った時に、デュエルが終わってないと本末転倒だろ? だから速攻でいかせてもらうぜ」

牛尾「ゴヨウ・ガーディアンでジャンク・ウォーリアーに攻撃だ!」

遊星「トラップ発動、くず鉄のかかし! ゴヨウ・ガーディアンの攻撃を無効にする!」

牛尾「チッ。相変わらずいいトラップ仕掛けてやがるぜ」

卯月「遊星さん。私、なんだか風を感じられるようになってきました!」

遊星「そうか。だが、本番はこれからだ」

遊星「俺のターン!」

遊星「レベル5、ジャンク・ウォーリアーに、レベル3、ジャンク・シンクロンをチューニング!」

遊星「集いし願いが、新たに輝く星となる。光差す道となれ!」

遊星「シンクロ召喚! 飛翔せよ、スターダスト・ドラゴン!」

牛尾「きやがったな、スターダスト・ドラゴン」

卯月「これが、遊星さんのエースモンスター……」

卯月「すごく、きれいです」

遊星「きれい、か」

牛尾「そろそろ会場に着くな……」

遊星「このターンで決めさせてもらう」

遊星「アンサイクラーにターボ・シンクロンをチューニング!」

遊星「集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ!」

遊星「シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロン!」

遊星「フォーミュラ・シンクロンの効果発動! デッキからカードを1枚ドローする」

遊星「……卯月。しっかりつかまっているんだ」

卯月「はい?」

牛尾「おい、まさか」

遊星「クリアマインド!」ギュイイン

卯月「ひぅ! す、スピードが!」

遊星「レベル8、スターダスト・ドラゴンに、レベル2、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!」

遊星「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く。光差す道となれ!」

遊星「アクセルシンクロオォォ!!」ギュウウウン

卯月「ひうううっ!!」

遊星「生来せよ、シューティング・スター・ドラゴン!!」

牛尾「アクセルシンクロ……間近で見るのは初めてだな」

牛尾「しかし、後ろにお嬢ちゃん乗せたままやることじゃねえだろ……一瞬消えてたぞ」

遊星「シューティング・スター・ドラゴンの攻撃! スターダスト・ミラージュ!」

牛尾「うおおおっ!」LP2800→0

卯月「間に合いましたー!」

遊星「なんとかなったな」

牛尾「さあ、急げよ。ここからが本番なんだからな」

卯月「はい、頑張ります!」

卯月「さっきアクセルシンクロを経験したので、もう怖いものなしです!」

牛尾「超スピードの恐怖を糧にしやがるとは、なかなか肝の据わった子だ」

卯月「では、いってきます!」

遊星「ああ。俺も観客席から見守らせてもらう」

卯月「はいっ」

タタタッ


牛尾「さて。それじゃチケットのない俺は戻るとするか」

遊星「本当に助かった。礼を言わせてくれ」

牛尾「街を救った救世主サマの頼みごとだ。このくらいはどうってことねえ」

牛尾「デュエル、楽しかったぜ」

遊星「……俺もだ」

~ライブ会場~


卯月「ネオ童実野シティのみなさーん!」

凛「今日はたくさんの人達が私達のために来てくれて、本当にうれしいです」

未央「精一杯歌います! 聞いてください!」

3人「できたてEvo!Revo!Generation!」


ワアアァァ!!


遊星「(観衆が彼女らの歌に、ダンスに声援を送る)」

遊星「(確かに、人気アイドルが観客を埋めるような、大きな会場ではない)」

遊星「(だがそれでも、これだけの数の人間を、たった3人の少女が魅了し、笑顔にすることができる)」

遊星「……いいチームだ」

観客「オオオォイ! オオオォイ!」

観客「フッフー!!」

遊星「………」

遊星「お、オオオィ……」

遊星「……かけ声を合わせるのは難しいな」

ライブ終了後


武内P「本当に、ありがとうございました」

遊星「……頭を上げてください。大したことはしていません」

卯月「そんなことないです」

未央「遊星さんがいなかったら、きっとしまむーライブに間に合わなかったよ」

遊星「しかし」

凛「そうやって謙遜してると、うちのプロデューサーがいつまでも頭を下げたままだと思います」

武内P「………」←美しい礼の姿勢

遊星「……どう、いたしまして」

未央「でも、私もライディングデュエルを体感したかったなー」

凛「まあ、素直に羨ましいよね」

卯月「えへへ……すみません。私だけ」

遊星「また機会があれば、2人を乗せることもできるだろう」

未央「え、いいんですか?」

遊星「いいライブを見せてもらった礼だ。アイドルを間近で見たのは初めてだが……魅力が十分に伝わってきた」

未央「本当!? やったよ、デュエルキングに認めてもらえた!」

凛「デュエルキングは今関係ないんじゃない?」

卯月「でも、うれしいのには変わりないです。ね、プロデューサーさん」

武内P「ええ」

凛「……ま、そうだね」

翌日


凛「大きいビル……」

卯月「ここに市長さんがいるんですよね」

未央「確かピエロみたいなメイクしてたよね。雑誌に載ってた」

ラリー「なんであんな変な格好してるんだろうね」

遊星「見た目はともかく、イェーガーの手腕は確かだ」

遊星「この街の復興と発展は、奴の指揮なしではもっと遅れていただろう」

未央「ふーん。やっぱり市長になるような人はすごいんだね」

ラリー「ここにモーメントがあるんだ」

凛「この街のエネルギーの動力源なんだよね」

未央「Dホイールもこれで動いてるんでしょ? すごいなあ」

ラリー「そのすごいモーメントなんだけど、新型の開発の中心にいたのは遊星なんだよ」

卯月「そうなんですか? すごいです!」

未央「頭もいいんだ……ひょっとして、なんでもできる感じの人?」

遊星「そこまでのものでもないさ」

遊星「WRGPでの優勝も、モーメントの開発も、どれもこれも俺ひとりの力では決してなし得なかった。仲間達との絆があったから、すべてうまくいったんだ」

凛「絆……」

遊星「みんなとの絆が、俺に力をくれる」

未央「……なんかいいな、そういうの」

未央「私達も、絆の力でトップアイドル目指そうよ!」

凛「ふふ、そうだね」

卯月「ですね」

未央「でも、プロデューサーも来ればよかったのにね」

凛「やらなくちゃいけないことがあるって言ってたからしょうがないんじゃない? 遊星さんには昨日会えたわけだし」

ラリー「そのプロデューサーって、どんな人なんだ?」

未央「パッと見はちょっと怖い男の人だけど、中身は真面目で優しい人なんだ」

凛「口下手だけどね」

ラリー「へえ、なんかそれだけ聞くと遊星みたいだ」

卯月「遊星さん」

遊星「なんだ」

卯月「少し、聞いてみたいことがあるんです」

遊星「聞こう」

卯月「遊星さんは……チーム5D'sの皆さんが離れ離れになってしまって、寂しいですか?」

遊星「寂しい?」

卯月「遊星さんは、絆を大事にする人なんだなって思います」

卯月「大切な人達が、別々の道を進んで行って……それは、どうなんだろうって。どんな風に考えているのか、聞いてみたくて」

遊星「………」

遊星「もちろん、寂しさを感じる時だってある」

遊星「俺ひとりしかいないガレージに立っていると、色々と思うこともある」

遊星「だが、離れたところで、仲間達との絆は変わらずそこにある」

遊星「少なくとも俺は、そう信じ、それが正しくあるように努めている」

卯月「絆は、変わらない……」

遊星「今だって、目を閉じればみんなの姿がはっきりと見える」

遊星「みんな、それぞれの舞台で頑張っている。それを思えば、遠く離れていることなんて些細な問題なのかもしれない」

卯月「………」

卯月「ふふっ、そうですね」

卯月「(いつか、凛ちゃんや未央ちゃん達と別々の道を歩くとしても……)」

卯月「きっと、大丈夫ですよね」

遊星「……ああ」

観光も終わって


卯月「遊星さん、本当にありがとうございました」

凛「ラリーも、いろいろ教えてくれて助かったよ」

未央「また遊びに来てもいいかな?」

ラリー「もちろん! ね、遊星」

遊星「ああ」

武内P「いろいろと、お世話になりました」

遊星「いや、気にしないでください。そこまで丁寧にしてもらう必要はありません」

遊星「またここに来るときは、歓迎します」

武内P「ありがとうございます」

未央「むー」

凛「どうしたの、未央」

未央「ふたりとも態度が硬い!」

武内P「態度が」

遊星「硬い?」

未央「どっちも真顔でかしこまってるし……ほら、もっと笑顔笑顔!」

卯月「笑顔ですっ」

凛「笑顔だってさ」

ラリー「ほらほら」

遊星「………」

武内P「………」



遊星・武内P「に、ニコォ……」ヒクヒク


凛「……ぷっ」

未央「ぎこちなさすぎだよー」

ラリー「遊星、なんだよその顔。アハハ」

卯月「もっと自然に、スマイルです!」


遊星「意識して笑うのは……苦手だな」

武内P「同じくです」

後日


李衣菜「ええっ! 本当に不動遊星に会ったの!?」

みく「いーなーいーなー。みくも行きたかったにゃあ」

未央「本当だよ。その証拠に、ほら」


莉嘉「それでそれで? Dホイールに乗ってどんな感じだったの?」

卯月「最初は怖かったんですけど、だんだん風が気持ちよくなってきて……」

卯月「なんといってもアクセルシンクロ……まるで身体がスピードの世界に溶けていくような感覚で。ああ、今思い出してもすごいです」ウットリ

未央「しまむーがスピード狂に目覚めつつあるでしょ?」

みく「本当だにゃ」

李衣菜「表情とろけてるね」

凛「アクセルシンクロ、恐るべし……」

マーサ「それで遊星。やりたいことは見つかったのかい」

遊星「そうだな」

遊星「あの時のように、新たな絆に出会える機会が生まれるのなら……」

遊星「気ままに街の修理屋をやるのも、いいのかもしれない」

マーサ「……そうかい」

マーサ「それもそれで、あんたらしいよ」

遊星「ところでマーサ。ライブでの声かけは案外難しいものなんだな」

マーサ「おや。そんなこと言うなんて、アイドルに興味が出てきたのかい?」

遊星「ああ。あるチームのファンになってな」

遊星「今度、鬼柳と一緒に街の外で開催されるライブに行くことになった。あいつもアイドルに興味があるらしい」

マーサ「そうかい。満足できるといいね」

遊星「そうだな。鬼柳と一緒なら、きっと満足できるさ」


おしまい

お付き合いいただきありがとうございました
両作品のほのぼのしたクロスが書きたかったので書きました
この世界観だと原田さんあたりはDホイール持ってそうですね

次を書くとしたら、鬼柳さんがアイドルで満足するしかねえ、なSSになると思います

すっかり描写するのを忘れていましたが、猫にとられた卯月の携帯は落し物として届けられ、無事本人のもとへ戻ってきています

武内P「おい、名刺交換しろよ」
武内P「俺と名刺交換しろおおおおおおおおおお!」
武内P「ミルクでももらおうか」
武内P「ダンスは…苦手だな」
武内P「俺の名刺は手作りでね」(ニッコリ)

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