魔王娘「召喚……ですッ!」 (38)



城にある突き出た露台。

そこに黒のローブを羽織、手には複雑に枝が絡み付いた木の棒を持ち静かに佇む一人の少女がいた。

露台には幾何学模様が描かれ、その周りには得たいの知れない骨や禍々しい形をした草の根、不気味な色をした液体等が奉られる様に置かれている。

少女は露台の床面に描かれている幾何学模様に向かい持っていた木の棒を掲げ呪文のような言葉を呟いた。


魔王娘「焔よ……焔……汝を纏い駆ける者を……我は捧げる、五の理を翼で覆い漆黒の流動を……」


すると、幾何学模様が仄かに輝きだし、フードを纏った少女の顔を照らし出す。


魔王娘「……出でよ!サラマンダー!召喚……ですッ!」


その言葉に幾何学模様がより一層輝きだし、辺りを光で包み……轟音を挙げ爆発した。


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ズドゥンンンン………

魔王娘「げほっげほっ……」

ブワヮヮヮヮ………

…………「………んあ、あれ?」

魔王娘「や、やりました!召還にせいこ…………う?」

…………「………なんだ、ここ?」

魔王娘「あの………失礼ですなんですけど………」

…………「うわっ!?あんた誰?!」

魔王娘「こっちのセリフですよもう。お前は誰ですか?と言うかサラマンダーさんですか?」

…………「さらまんだー?」

魔王娘「聞き返すってことはサラマンダーさんじゃないみたいですね………」

…………「状況が全然分からないんだけど………」

魔王娘「おかしいですね………素材は量も品数も間違っていないし、召喚円も間違いないはずなんですけど………」

…………「えっと………何の話?」

魔王娘「うーん………まぁいいです。取り敢えず行きましょう」

…………「………行くって何処へ?」

魔王娘「どこって親父のところですよ」

…………「………親父って?」

魔王娘「私の親父の所です。一応聞きますけど、お前人間ですよね?」

…………「そうですけど………ん?そういう言い方するってことはあなたは………」

魔王娘「もちろん人間じゃないです」

…………「ええ………ち、ちなみにここはどこなんでしょう?」

魔王娘「ここは魔界ですよ」

…………「………」

魔王娘「……?」

…………「……馬飼の牧場?」

魔王娘「牧場を付けるな馬鹿人間です。ま、か、い!魔の世界の事ですよ」

…………「………」

魔王娘「理解しましたです?」

…………「………」

魔王娘「はあ……失礼しますです」バシッ

…………「あ、頭を持って何を

魔王娘「せいぁああッ!」バキッ!

…………「グギャッ!くくく首がぁあ!」

魔王娘「ほら、あそこに見える物を御覧になってです」

…………「………」

魔王娘「これでわかりましたか唐変木」

…………「………」

魔王娘「わかったなら返事をしなさいです!」

…………「……あ、あそこにあるデカイ門みたいのは?」

魔王娘「あれは魔界名物『魔界の門』ですよ。魔界全土からの観光客で賑わう魔界屈指の観光スポットなんですよ!」

…………「へぇ……」

魔王娘「あそこのケルベロスカステラが美味しいんです」

…………「へぇ……」

魔王娘「こう三層になっていて別々に食べても美味しいんですけど一緒に食べると何とも言えず……」

…………「へぇ……」

魔王娘「………」

…………「へぇ……」

魔王娘「馬鹿人間です!」

…………「へぇ……」

魔王娘「………」

…………「へぇ………」

魔王娘「……どらぁッ!」ズドンッ!

…………「ベブシッ!……ゲホッ……」

魔王娘「お前人の話はちゃんと聞けですッ!」

…………「な、殴る事無いだろ!」

魔王娘「それで!ここが魔界である事はわかりましたかです?」

…………「何となく……何で俺はここにいるの?」

魔王娘「そこはこっちが聞きたいです。サラマンダーさんを呼び寄せたのにこんなのがです……」

…………「こんなので悪かったな……」

魔王娘「何か間違っているものがあったかですか……召喚円も間違って無いし材料も呪文も……」ブツブツ……

…………「あの……」

魔王娘「何です」

…………「……帰してくれる?」

魔王娘「それは出来ないです」

…………「何で?」

魔王娘「間違って喚んだ物をどうやって還すんです?それぐらいわかれです」

…………「………」

魔王娘「……おいです?」

…………「それは……俺、元の世界に帰れないって事?」

魔王娘「そうですよ」

…………「……同じようにやっても駄目?」

魔王娘「駄目に決まってるです。人間用の召喚円じゃ無いですからです」

…………「なら……その人間用の召喚円で……」

魔王娘「そんな物私は知らないです」

…………「………」ヘタ……

魔王娘「ほら、立てボンクラです。親父の所へ行くですよ!」

…………「……寝る」

魔王娘「は?」

…………「これはきっと夢だ……悪い夢だ、うんそうだそうに違いない」

魔王娘「……おい?です」

…………「なんだぁそれならそうと言ってくれよ。目が覚めたらまた元の場所に……夢?」

魔王娘「………」

…………「………」

魔王娘「何です……こっちをジッと見て」

…………「……キミ可愛いね」

魔王娘「ななななぁッ!」

…………「夢ならばだッ!この子にあんな事やこんな事をしても問題ナンシより緊急連絡っもんだ!」

魔王娘「………」

…………「グヘヘェ……」

魔王娘「………」

…………「お嬢ちゃん悪く思わんでくれよ……悪いのは全部夢なんだからなぁ!」

魔王娘「……剣いるですか?」

…………「……剣?」

……へぇい!お嬢、何ですかい?

魔王娘「ちょっと私の影から出てきてくれるですか」

ズズズズ………

剣「お嬢、またくだらない事であっしを呼ばれても困るんですがね……あ?」

…………「………」

剣「お嬢……こちらの御方は?」

魔王娘「私に手を出そうとする不届き者です。動ける程度に成敗しなさいです」

剣「……畏まりまやした」ズイッ……

…………「………」

剣「御前さん……どうやって忍び込んだのかも知れねえし、あまつさえお嬢に手を出そうとするなんざ大したものだな……」

…………「……ゆ」

剣「ゆ?」

…………「ゆゆゆ夢なんだからなこれはッ!」

剣「……あん?」

…………「お、お前なんか怖く無いぞ!例えそれが筋肉粒々顔傷系の強面大男でもな!」

剣「………」

…………「来いよ!ほら来いよ!蒸気抜いてやんよ!」

剣「お嬢……こいつは何を言ってるんでさ……」

魔王娘「戯れ言だからです!」

…………「くらえ………必殺!であぁぁぁッ!」

ペチンッ!

剣「………」

…………「くっ!やるな!」

剣「………」グッ

バキンッ!

…………「」ドタ……

魔王娘「ふぅ……よくやったです」

剣「お嬢……あっしには何がなんだか……」

魔王娘「後で説明するから!そいつを親父の所へ持って行くですよ!」



所変わり、ここは少女が召喚を行った城の中枢部にあたる場所。

周りは石壁で覆われ、天面には灯り取りであろうか小さな窓が数ヶ所開けられていた。石壁には点々と火の灯りでも、外の灯りでも無い不思議な光が灯されていて、床は板張り。奥まった所は床が一段高くなり紋章が描かれた布が掲げられていた。

紋章の前には、大柄な男が1人、胡座をかき不機嫌そうに座っている。
金の髪を後ろへ撫で付け顔には無数の切り傷。その眼光は鋭く、見る者を畏怖させる風貌をしている。

そしてその男の前に先程の少女が恐怖に縮こまるように正座をし俯いていた。


魔王「………」

魔王娘「お、親父……あのあのあのですね……」

魔王「おい……」

魔王娘「ひぃぃ……ななななんです……?」

魔王「その汚ねえ格好とそれはなんだ?」

魔王娘「こ、これはそのあのえっとうんと……」

魔王「……これは人間か?」

魔王娘「はい……です」

魔王「なんで人間なんざここにいる?」

魔王娘「それは……うぅ……」

魔王「………」

魔王娘「サラマンダーさんを召喚で呼び寄せようとしたら……」

魔王「サラマンダー?」

魔王娘「はいです……」

魔王「そんなもん何に使う?……そうか、お前」

魔王娘「………」

魔王「大方、現界と魔界を隔ててた獄炎の壁が消えたのを治そうと思ったんだろ?」

魔王娘「……はいです」

魔王「ど阿呆!サラマンダーごときで獄炎の壁が治せる訳ねえだろうがッ!」

魔王娘「……うぅ」

魔王「まあ……しかしなんだ、それは魔界の為を思ってやった事だろうからこれ以上は言わねえが……これはなんだ?」

…………「」

魔王娘「わかんないです……」

魔王「ああん?わからない?何故だ?」

魔王娘「サラマンダーさんを召喚した筈なんですけど……召喚したらこれが出てきちゃってです……」

魔王「なんだそりゃ……」

魔王娘「なんだそりゃと言われてもです……」

魔王「まぁいい……魔王娘」

魔王娘「はいです……」

魔王「お前、獄炎の壁を治そうとしたって事はクソ人間共が魔界に攻めて来られないようにしたいんだよな?」

魔王娘「ええ!モチロンその通りです!クソ人間共が魔界の地に足を踏み入れるなんて言語道断なんです!」

魔王「なるほど。ならそれは魔界を救いたい……って事にもなるよな?」

魔王娘「え?はい……まぁ一応です」

魔王「そうかい……ククッ」にやり

魔王娘「………」

魔王「おい!剣に盾いるかッ!?」

剣「へぇい!」

盾「はぁい?」

魔王「……命令だ」

剣、盾「………」



同城の一室。

魔王娘と呼ばれた少女が自分のベットの上で頭を抱えて唸っていた。

その傍らに、剣と呼ばれた大柄な男と盾と呼ばれた女がベットの側に立っていた。


魔王娘「ああああああ……」

剣、盾「………」

魔王娘「なんて……なんて事ですか……」

剣「お嬢……」

魔王娘「獄炎の壁を完璧に治して尚且つ勇者と言われる人間を始末してこいだなんて……」

剣「………」

魔王娘「獄炎の壁は何とかなるかもですが……勇者を倒すなんて絶対無理です!」

剣「………」

魔王娘「獄炎の壁を消し去ってしまうような人間に私が敵うわけ無いじゃないですか!」

剣「………」

魔王娘「ああああああ……出来なければ魔界追放だなんて……」

剣「ま、頑張りましょうや」

盾「そうですよお嬢!勇者とか言うバカ人間なんてパパーってやっつけて!」

魔王娘「………」

剣「あっし達が付いてるんでさ。何とかなりますよ」

魔王娘「そうかなです……」

盾「そうそう!大丈夫ですって!なんてたって『魔王の剣』と『魔王の盾』がいるんですから」

魔王娘「うん……」

剣「それはそうと……これどうするんです?」

…………「」

盾「なにこれ?」

剣「お嬢が間違って魔界へ喚んだらしい人間だな」

盾「へぇ!これが人間なんだぁ……あたし初めて見るかも!」ツンツン

剣「俺らと外見はあんま変わらんから珍しくもあるめえよ」

盾「ええ?そお?でも……可愛いなぁ」

魔王娘「は?……可愛いです?」

盾「はいな!」

剣「お前……美的センスってもんが壊滅的に無いな……」

魔王娘「まったくです……」

盾「お嬢と剣失礼だよ!……ねぇお嬢?」

魔王娘「何ですか……」

盾「これください!ね?いいでしょ?」

魔王娘「考えとくです……」

盾「やりぃ!」

剣「……お嬢、これからどうします?」

魔王娘「んん……それなんだけどです……」

剣「………」

魔王娘「獄炎の壁を治さないとクソ人間共とか勇者とか攻めて来ると思うんですよね……」

剣「なら先に極炎の壁の修復ですかい?」

魔王娘「……うん」



………んん?あ?

ああ、やっぱり夢だったのか。
そんな馬鹿な話があるかって思ってたんだよな………。

はぁ顔洗って………なんだ?周りがボヤけて見えるぞ………。
寝惚けてんのかな………はい?

ああはい、師匠おはようございます。
何かまだ頭がハッキリしてないって言うか師匠以外よく見えないんですよね。

え?新しい魔術が完成した?おめでとうございます。
通信魔術………ですか?ほう………え?繋がってる?誰に?俺の母親って………。
いや、嫌ですよ!別に話す事なんか………。

あ………母さん?うん………何とか頑張ってるうん。
ちゃんと食べてるって。大丈夫だから。
今?今は………俺はマカにいるんだよ。
ああ!ごめんごめん!魔界の事ね!業界の略語、思わず使っちゃったよぉハハハ!


………魔界?




同城の先程とは違う、盾と呼ばれた女の一室。

気を失いウンウンと唸っている人間の男がベットに寝かされ、その傍らには盾と呼ばれた女がいた。
人間の歳の頃で言えば二十歳くらいだろうか、腰まである水色の髪を左右に縛り上げ少しつり上がった目尻は愛玩動物を愛でるかのように今は下げている。


盾「そう言えば……人間ってどう飼えば良いのかな?お嬢にちょっと聞いてくれば良かった」


腕を組み考える。
自分のペット達は特に環境など考えずとも肉をあげて遊んであげればよかった。たまに悪さをしたら躾をすれば大人しくなったし、それでも駄目ならころせばよかった。


盾「うーん……ま、いいか。適当でいいよね」


悩むのを止め、また人間の男に視線を戻した時、人間の男が目覚めようとしていた。



…………「………」

盾「んふふ」

…………「……ん」

盾「お?」

…………「あ……?」

盾「起きた?」

…………「……誰ですか?」

盾「あたし盾って言うの!あなたは?」

魔術士「魔術士……です……」

盾「そうなんだ!」

魔術士「あの……ここは何処ですか?」

盾「え?あたしの部屋だけど?」

魔術士「それは……魔界にある?」

盾「そうだね!」

魔術士「俺はまだ夢を見ているのか……」

盾「夢?」ニコニコ

魔術士「……ええ、夢です」

盾「えいや!」ズドッ!

魔術士「ゲェグッ!」

盾「痛い?」

魔術士「ゲハッ……な、何を……」

盾「夢なら痛くないよね?」

魔術士「………」

盾「もう一発いっとく?」

魔術士「……結構です」

盾「そっか」

魔術士「………」

盾「ねぇ!」

魔術士「はい……?」

盾「お手」

魔術士「はい?」

盾「おー手!」

魔術士「………」

盾「………」

魔術士「しませんよ……犬じゃあるまいし……」

盾「………」ニコニコ

魔術士「……?」

盾「アチョウッ!」バキッ!

魔術士「グッベボラッ!」

盾「………」

魔術士「ま、またいきなり何ですか!」

盾「……お手」

魔術士「………」

盾「お!手!」

魔術士「………」ポンッ……

盾「おお!偉いねぇ良くできましたぁッ!」ムギュゥゥ

魔術士「モガッ!ングゥゥ!!」

盾「偉い!偉い!」ナデナデッ!

魔術士 (胸ぇぇぇッ!胸ぇぇぇえッ!あと頭擦りすぎて凄え熱い!)

盾「じゃあ次は……」

魔術士「」グッタリ……

盾「……あれぇ?」

魔術士「ぐうぅ……」

盾「人間って誉めて撫でられても嬉しくないの?」

魔術士「………」

盾「……眼球突いた方が嬉しい?」

魔術士「誉めて撫でる方でお願いします……」

盾「なんだ嬉しいんじゃん!」

魔術士「あの……」

盾「なぁに?」

魔術士「俺はこれからどうなるんてしょうか……」

盾「あたしのペットになるんだけど」

魔術士「………」

盾「お嬢にくださいって言ったら魔術士くれたんだよ。むふふ」

魔術士「……帰らせては?」

盾「貰えない。だってもうあたしの物だもん」

魔術士「………」

盾「ふふふぅ……」

魔術士「な、何ですか?」

盾「人間って可愛いなぁって」

魔術士「………」

盾「お手!」

魔術士「………」……ポン

盾「お!今度はちゃんと出来たね!」ムギュ

魔術士「………」

盾「偉いなぁ!偉い偉い!」

魔術士 (ペット……悪くないかもしれない……いや……でも……)

盾「そうだ、これからちょっと出掛けるから留守番ちゃんとしてるんだよ?」

魔術士「留守番ですか?」

盾「うん。他にも飼ってる子がいるから仲良くしてね」

魔術士「……何と仲良くするんですか?」

盾「ちょっと食い意地のはってるココロッタとか飼い主以外の目を突くのが好きなピポグリフとか」

魔術士「………」

盾「あとね!」

魔術士「待ってください!」

盾「なに?」

魔術士「よ、よかったら俺もその用事に連れてって貰えませんか……?」

盾「ええ?邪魔くさいし」

魔術士「迷惑かけませんから!雑用とか!おはようからおやすみまで何でもやりますからッ!」

盾「………」

魔術士 (ココロッタってあれだよな……歯が一繋ぎになってる獰猛なデッカイ犬だっけ……)

盾「困ったなぁ……」

魔術士 (犬とオッパイじゃ天秤にかけるまでもないだろ!何が悲しくて獰猛な犬といなきゃいけないんだよ!)

盾「あたしはいいんだけどね……お嬢が何て言うか」

魔術士「……あのちょっと可愛い女の子ですか?」

盾「そう。お嬢がいいよって言ったら連れてってあげる」



魔王娘「ええと……です」

盾「この子がどうしても付いて行きたいって」

魔術士「お願いシャシャシャスッ!」

魔王娘「盾……私達はこれからどこ行くかこのアンポンタンに言ったですか?」

盾「………」

魔術士「何か言ってくださいよ……どこ行くんですか……?」

盾「……冥界へ行くの」

魔術士「めいかい………?」

魔王娘「わかったです?馬鹿人間」

魔術士「………」

魔王娘「はぁ……わからないですか。天界、冥界、魔界、幻界、現界のうちの一つで

魔術士「いや……それは知ってるんですけど……幻?現?ってなんでしょう?」

魔王娘「人の話を遮るなです……人間はそんな事も知らないですか……」

魔術士「………」

魔王娘「まったくどうしようも無いですね。えっとですね!」

魔術士「はい……」


大昔、五人の神がいて、それぞれの世界を造り上げたらしい。

天界、冥界、魔界、幻界、現界の五つの世界で成り立つこの世界は、五角形の様な形し、それぞれは数珠の様に繋がり成り立っているらしい。

それで、 天界には天使と言われる者達が主に住み、唯一世界を創った神が存在してその下で暮らしているらしい。

次に冥界は悪魔と言われる者達が主に住み、力あるものが世界を支配するって風潮が強く争いが絶えない世界らしい。
ついでに女の子は、この冥界の事を話す時は渋い表情で語っていた。何か嫌な事でもあったんだろうか?

三つ目、魔界は魔人と言われる者達が主に暮らす世界らしい。
この世界の頂点に立ち世界を治める者は魔王と呼ばれ君臨してるらしい。

幻界は精霊や幻獣等、様々な種族が暮らす世界らしい。

最後に現界………人間の住む世界って事らしい。


魔王娘「ですからね!らしいんですよ!」

魔術士「………」


らしいらしいって………今では世界の事なんてお伽噺の中の話で、それぞれの世界は結界を貼ったり壁を作ったりしてお互いに干渉をしない様にしているそうだ。

それは何故か?と言うと、たまに現れるアホのせいで各世界が荒れるのを防ぐ為だとの話だが………。


魔王娘「アホがですね!」

魔術士「……質問いいっすか?」

魔王娘「何です!丁度のってきたとこなのにです!」

魔術士「そのアホって具体的には……?」

盾「ちょっと強いからって調子に乗って世界を滅ぼそうとしたりする奴の事だよ」

魔術士「………」

盾「この前は冥界のアホが

魔王娘「それは言わなくていいです!」

盾「ええ?」

魔王娘「………」

魔術士「……何があったんですか?」コソコソ

盾「お嬢がねその冥界のアホに求婚されたんだよ」コソコソ

魔術士「………」

盾「ついでに魔王様に楯突いたんだけどもね」

魔術士「……そのアホはどうなったんですか?」

盾「魔王様のワンパンでシュンコロだよ」

魔術士「………」

盾「こう拳でシュッシュッって」

魔術士「へぇ……」


この人の説明はいまいちわからん。
なんだワンパンシュンコロって………。


盾「かっこよかったなぁ魔王様ぁ」

魔術士「そうですか……」

魔王娘「……私はあの光景を見せられて夜な夜なうなされてるですよ」

魔術士「うなされてる……?」

魔王娘「………」

ズズズズッ……

剣「お嬢!」

魔王娘「……何です?」

剣「先方に話を通しておきやした」

魔王娘「ご苦労です。で、御仁は何処にいるとです?」

剣「へい、どうやら五条の方へと足を運んでらっしゃるようで……」

魔王娘「うわ……五条ってです……何でそんな辺鄙な所にいるですか……」

剣「あっしにはよくわかりやせんが……」

魔術士 (大男がヌワッと女の子の影から出てくるの止めて欲しいな……)

魔王娘「チィ……もうぅぅぅ!ますますめんどくさくなるです!」

剣「仕方ありやせんて……」

盾「そうですよお嬢……」

魔王娘「はぁ……親父に色々許可取りに行くですか……」





同城の長く続く石造りで板張りの廊下。
両脇には一定の間隔で明かりが灯され窓の無い廊下を照らし続けている。


魔王娘、剣、盾「………」

魔術士「ど、どこに行くんですかねぇ……?」

盾「魔王様のところだよ」

魔術士「………」

盾「どうしたの?」

魔術士「い、いやぁ……この卑しくも下劣な人間風情がままま魔王様にお会いしてもよろしいんでしょうか……」

盾「大丈夫っしょ。バカな事しないのと魔王様の機嫌が悪くないなら」

魔術士「……バカな事は死んでもしませんが、仮にお機嫌が悪うござんしたら?」

盾「そこのアホみたくなるんじゃない?」

魔術士「そこ……?」

盾「ほらそこの壁だよ」

魔術士「………」

盾「わかった?」

魔術士「この影……ですか?」

盾「そう」

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