「僕は友達が少ない」【ラノベ部SS】 (13)


美咲「友達っているじゃない?」

龍之介「ああ、いるな」

潤「いるよー、3人くらい」

綾「世間にはいるみたいですわね」

龍之介「お前らなぁ……」

潤「大丈夫、龍くんに対しては友達と思ってるだけじゃなくって恋人とも思ってるから、安心して?」

龍之介「そうか死ね」

潤「オメーが死ねよファッキン」

綾「それで、急にどうしたんですの?唐突にそんなことを」

美咲「いやね、このラノベ読んでたら友達ってなんなんだーって思っちゃって」

龍之介「……ああ、『僕は友達が少ない』か。主人公達が友達作りのために部活を立ち上げる話だったな」

潤「ぼくも読んだよ。でも周りからみてもあいつら既に友達じゃん」

美咲「うーん、そうなんだけど、この登場人物の子たちって『友達』って言葉を特別視してて、むしろ使うのを避けてるっていうか」

龍之介「それを認めたら部の目的を達成したことになるからだろ」

美咲「あ、なるほど。龍ちゃん頭いいー」

龍之介「バカにすんな」

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潤「でもどこから友達かというのは、よく議論にされるテーマではあるけど面白い疑問だよね」

龍之介「まあな。友達だと宣言したら友達、というわけでもないし、その逆もまた然りだろ」

潤「そもそも友達って定義があやふやじゃない?一緒に遊んでたら友達?」

美咲「そりゃ友達でしょうよ」

潤「えー?でもクラスの奴に誘われて遊びに行っても、ぼくはアイツらのこと友達だって思ったことないよ?」

龍之介「いや、それはお前が特殊なんじゃないか……?」

美咲「きっとそのクラスの子からは友達だと思われてるわよ」

潤「一方的に思われても困るだけなんだけどなぁ。ほら、ぼくは龍くんに友情ついでに愛情注ぐので精一杯だから」

龍之介「そうか死ね」

潤「オメーが死ねよファッキン」


美咲「でも相手が一人でも友『達』っていうのは面白くない?一人でも複数を表す字を使うなんて」

龍之介「そうだな、相手が一人なら『友達』じゃなくて『友』の方が正しい表記な気がする」

潤「『友達』を複数形にすると『友達達』になって醜い……間違えた、見にくいよね」

龍之介「お前、友達って言葉が嫌いなのか?」

潤「友達って言葉が嫌いなんじゃないよ。すごく親しい相手からどうでもいい奴まで、まとめて『友達』っていうのが嫌なんだ」

美咲「だったら特に仲の良い友達は『親友』って言えば良いんじゃない?」

潤「じゃあ一緒に遊びに行ったけど心底どうでもいい奴に対しては?」

美咲「え?えーっと、『知人』?」

龍之介「『知人』だともう『友達』という枠からは外れている感じがするな」


美咲「うーん、難しいわね……。例えば、龍ちゃんと潤くんは友達ってことになるの?」

龍之介「え。いや、そう言われると友達というよりは……『悪友』って方がしっくりくるな」

潤「ぼくは――」

龍之介「そうか死ね」

潤「まだ何も言ってねーだろお前が死ねファッキン」

美咲「それなら、龍ちゃんと吉村くんは?」

龍之介「あいつは……友達というよりは部活の先輩、後輩だろ」

潤「うわ、冷たい。龍くん冷たいよ」

龍之介「別に冷たくねぇ。先輩後輩の間柄だって友達くらい仲が良いってこともあるだろうし、むしろ友達以上だっていうのもいるだろ」


美咲「でも親しい友人を『親友』っていうのに対して、親しい先輩や後輩との間柄を表現する言葉ってないわよね」

潤「うん、確かに。そう言われると仲の良い上司や部下との間柄を示す言葉もないよね」

龍之介「そもそも先輩後輩、上司部下って言葉は上下関係を表すものだしな」

龍之介「逆に言えば、友達って言葉が普通以上にレパートリーに溢れてるってことなんじゃないか?『親友』『悪友』『盟友』『朋友』……思い付くだけでも色々ある」

潤「そのレパートリーの1つの『親友』って言葉もだいぶあやふやだよ。1ヶ月前に知り合ったばかりでも特に親しくしてたら親友?」

龍之介「それは……少し違和感があるな……」

美咲「長い時間を共に過ごしてることも条件の1つなのかも」

潤「だったら、龍くんと美咲ちゃんは親友ってことになる?」

美咲「え?んーと……私と龍ちゃんの間柄は『親友』って言葉だと何だか違うような……」

龍之介「……『家族』って感じだろ」

美咲「あー、それそれ」

龍之介「……」

美咲「ん?どうしたの龍ちゃん?」

潤「自分で言っておいて照れちゃう龍くん、ぼくは好きだよ」

龍之介「別にそんなんじゃねーよ……」

美咲「なんか顔赤くなってない?」

龍之介「なってねぇ。……俺は本読むのに戻るぞ」

潤「あーあ、龍くんが拗ねちゃった」

龍之介「拗ねてねぇ」

美咲「あはは、ちょっと弄りすぎちゃった?」

龍之介「だから拗ねてねぇって。……それより、どうかしたのか桜野?さっきから黙って」

美咲「そういえば全く会話に入ってこないけど、何かあった?」

綾「――ません」

龍之介「は……?」


綾「その作品は決して許せませんわ!!」

龍之介「うわっ、な、なんだよ突然!?」

美咲「ちょ、ちょっと綾?いったいどうしたの?」

綾「『僕は友達が少ない』は許せないと言っているのです!!」

龍之介「はぁ……?」

綾「その作品に楠幸村という人物がいるでしょう」

龍之介「ああ、いるな。……まさか」

綾「はい、幸村くんは幸村さんだったということが、わたくしどうしても許せないのです!!」

綾「『小鷹×幸村は王道的なカップリングであるものの、その完成された形に震えるぞハート燃え尽きるほどヒート!!……逆に幸村×小鷹というのも、普段弱気な幸村くんが、その場では強気に立ち回るというのがまた……ユニバァァス!!』と思っていたというのに!!」

美咲「あー……つまり、綾は男子キャラと思ったのが実は女の子で、それに怒ってるってことで、アンダスタン?」

綾「ええ。作者の筆一つで性別を入れ換えられる……難儀ですわ……」

龍之介「いや、あれは伏線もあったし予測も出来ただろ……」

潤「せめて『バカテス』のように第三の性別幸村なら良かったね?」

綾「いえ。性別が男でない時点で萎えるだけですわ」

美咲「相変わらずぶっ飛んでるわね綾は……」

潤「でもさ、話の展開次第でキャラ設定の根本が変わるのはよくある話じゃない?」

龍之介「ああ。それに、幸村ってキャラは作者にとっては始めから女キャラとして書かれていたのかもしれない。それは作者のみぞ知る、だ」

美咲「物語を書いてるのも、その世界を造ってるのも、作者さんだからね」

龍之介「問題なのは、そういった展開も含め、読んでる俺たちがその世界を楽しめるかどうかってことだな」

潤「そうそう。その作品もキャラも展開も、ぼくたち読者が否定してあまつさえ潰そうと思っちゃダメだよね。作者が書きたいものを書ける方が、ぼくは素晴らしいと思うよ」

綾「はぁ、そうですわね……。でも大丈夫ですわ、まだ天馬×小鷹が残っていますし」

美咲「まさかそういう風に読まれてるとは作者さんも思わなかっただろうけどね……」


龍之介「というか話が脱線しすぎだな。友達ってどこからが友達かって話じゃなかったか?」

潤「まあ結局その人次第ってことだよ。自分が友達だと思えば友達、そうでなければ違うってだけでしょ?」

美咲「友達という言葉自体は辞書にも書いてあって定義付けされてるのに、同じ状況でも人によって友達と捉えるか違うと捉えるか……面白いわよね」

綾「でも言葉ってそういうものではありません?相手に伝わらなければ困る為に定義付けされているのであって……その言葉をどういう場面で使うかは個人の問題というものでしょう」

龍之介「言葉は相手に気持ちを伝えるツールだからな。人の気持ちが大前提である以上、人によってその場で使う言葉が違うのも当たり前のことだ」

綾「そういえば、この間読んだ小説は作者が友達の『達』を嫌ったのか『友だち』と書かれていましたわ」

美咲「あ、分かる!子供の『供』を嫌って『子ども』って書く人もいるもの」

潤「同じ日本語を使ってても、人によって嫌いな表示や表現というのもあるんだろうね」

龍之介「おい、また話が脱線しかかってるぞ……」

美咲「あたし達が友達かどうかって話でしょ?」

龍之介「いや違うだろ!友達という言葉について話してたんじゃないのか!?」

綾「しかしどうなのでしょう。先ほど竹田くんが堂島くんとの仲を愛し合う仲とおっしゃったように……」

龍之介「そしてそんなことは一言も言ってねぇ!!」

綾「失礼、わたくしの妄想をつい口にしてしまいましたわ」


美咲「でも……あたしはラノベ部のみんなは、友達って言葉だけじゃ言い表せられないって思うな」

美咲「なんていうんだろう、一緒に部活してる部員ってだけじゃなくて、先輩後輩同級生ってだけでもなくて……」

美咲「うーん、表現するのが難しいなぁ……」

潤「……うん、言葉ってのは意外と不便だよね」

綾「便利である故に、一部表現することが難しいものを知ってしまうと不便と感じてしまう、難しいものです」

龍之介「……それだからこそ良いんだろうな。100%伝わって含みがないなんて、そんなのは面白味がない」

龍之介「ドキドキするような告白のシーンも、言い争って互いに譲らない緊迫なシーンも、言葉というツールが不器用だからこそ面白いんだと、俺は思う」

美咲「……うん、そういうことよね!よーし!ならあたしたちは友達という言葉では言い表せない仲であるってことで!」

潤「それってイコールぼく達は友達ではないということになるんじゃない?」

美咲「あれ?そう言われるとそれは違うような。でもそういうことに……なるのかな?」

龍之介「いや待て、そんな結論でいいのか…!?」

ガラッ

文香「こんにちは」

暦「……遅くなりました」

美咲「わぁー!文香ちゃんと暦ちゃん!」

綾「今日はもう遅いですし、お休みかと思っていましたわ」

龍之介「何か用事でもあったのか?」

文香「はい。先生のお手伝いを藤倉さんとしていました」

暦「……随分と盛り上がっているようだった」

美咲「あれ、もしかして聞かれてた?実は友達という言葉に熱く議論を重ねてて」

龍之介「いや、そんな議論というほどのことはしていないだろ」


美咲「そうだ!この際だから聞くけど、文香ちゃんは友達ってどういう人のことを言うと思う?」

文香「? 難しい話はよく分からないですけど、藤倉さんとは友達ですよ」

綾「それは、友達という枠に収まってしまうということでしょうか?」

文香「? 友達は友達です。一緒に過ごしたり、一緒にごはんを食べたり、一緒に本を読んだり……そういったことの出来る、かけがえのない人です」

暦「わ、私にとっても……文香は、大切な友達……」

文香「そうですか、ありがとうございます藤倉さん」

『……』

文香「……どうかしましたか?」

美咲「あたし達、何か大切なことを忘れてた気がする……」

龍之介「ああ……結局、俺たちが一番言葉というツールに振り回されてたみたいだな……」

潤「無垢ってそれだけで武器だよね……」

綾「言葉上の意味にこだわるだけでは友達というものは理解できないということなのでしょうね……」

文香「……せんぱい方、どうしたのでしょう。皆さん暗い顔で」

暦「さあ……?」

美咲「ああ大丈夫よ文香ちゃん、自己嫌悪っすから」

文香「はい……?」

こうして、言葉の難しさと天然の凄さを改めて実感する、2年生ズなのであった。

END

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