狩人「目指すは伝説級ハンター!!」(251)



2スレ目です。どうぞよろしくお願いします。



おっしゃ! 行けた!

前スレ
狩人「目指すは伝説級ハンター!」 - SSまとめ速報
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※それぞれの装備


狩人(HR 4)

武器:大剣(フルミナントソード)
防具:オウビートS装備一式


少女(HR 4)

武器:ライトボウガン(メラルーラグドール)
防具:ガンナー用パピメルS装備一式



―――――――――――


狩人「な……何だ……あれ……」

少女「大きいっ……!」


     俺と少女は攻撃が飛んできた方向をみて驚愕する。

     そこには、普段通りそびえ立つ雪山と

     その裾野辺りで蠢く白い物体……いや

     あの攻撃を放ったであろう巨大モンスターを肉眼で捉えたからだ。


狩人「ラオシャンロンか!?」

少女「いいえ。 多分違う……!」

少女「外殻の色が亜種のものとも合わないし、ラオシャンロンはブレスを吐かないわ!」



     ワー!  ワー!  キャー!

     モンスターダ! ニゲロー!!


狩人「くっ……!」

少女(これじゃもう収集がつかなくなる……!)

少女「狩人! 今すぐ家に戻って」

少女「大タル爆弾と閃光玉を調合分も含めて持ってきて!」

狩人「!」

狩人「た、戦うのか!?」

少女「せめて……この村をあいつの目標から逸らさないと!」

少女「住人が逃げる時間を少しでも稼ぐわ!」

狩人「わ、分かった!」








     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!








狩人の家


     ミシミシミシ…

狩人「くっ……!」

板前アイルー「だ、旦那!」

板前アイルー「この騒ぎはいったい……!?」

狩人「板前アイルー……簡単に言うと」

狩人「ラオシャンロン並みの巨大モンスターが襲ってきたんだ」

板前アイルー「」

狩人「お前も今すぐ逃げろ」

狩人「その時間は……俺が稼ぐ!」

板前アイルー「だ、旦那!?」

狩人「いいか? とにかく逃げるんだ!」

     ダッ!

板前アイルー「…………」



―――――――――――


ふもと村 集会所


     ワー! ワー!

受付嬢「落ち着いて! みなさん、落ち着いてください!」

受付嬢「現在、ギルド観測所に問合わせています!」

色黒ハンター「んなこた聞いてねぇよ!」

色黒ハンター「あんなヤバそうな奴と誰がやり合うか!」

色黒ハンター「そこをどけ! 俺は逃げるぜ!」

村長「ま、待ってください!」

村長「せめて、村民が逃げるまでの……」

     ギャー! ギャー!

狩人「…………」

少女「…………」


狩人「……誰か、手伝ってくれるハンターは居ないか、と思ったが」

少女「現実は……こんなものよ」

少女「どちらかといえば、あんな未知の化物に向かって行く方がおかしいの」

狩人「言えてる……」 クスッ…

少女「……狩人」

狩人「ん?」

少女「つい、いつもの調子で誘ってしまったけど」

少女「引き返すのなら、今のうちよ」

狩人「…………」

狩人「冗談じゃない。 君一人だけでなんて、行かせられるか」

少女「狩人……」

少女「…………」

少女「ありがとう」



―――――――――――


ふもと村 雪山猟区手前付近の森


狩人「仕掛けるのは、この辺りでいいか!?」

少女「適当でいい!」

少女「仕掛けられるだけ仕掛けて!」

狩人「分かった!」

     スッ… ドドンッ  スッ… ドドンッ

少女「!」

少女「狩人、もういいわ……! 少し離れるわよ」

少女「あの白いの、すぐそこにいる……!」

狩人「くっ……」



     ズシン… ズシン… ズシン…


少女「狩人……作戦を説明するわ」

狩人「ああ」

少女「もう少ししたら、あいつの足元にある大タル爆弾を炸裂させる」

少女「それでこちらに注意を向けるわ」

少女「で、その後、閃光玉を投げて、それが効いたら」

少女「猟区へ走って」

狩人「効いたら?」

狩人「効かなかったら どうするんだ?」

少女「その場合は、ここ……森の中を戦いの場にする」


少女「ここは木々が隠れ蓑になってくれるから」

少女「時間を稼ぐ、という意味では割と使えるわ」

少女「それに村に行かれるより多少はマシ」

狩人「……猟区へ行って、その後は?」

少女「まだその前があるわ」

少女「閃光玉が効いた場合、猟区へ走ってもらうけど」

少女「二度目の閃光玉が炸裂したら、走るのを止めて、閃光玉を用意して」

狩人「え……?」

少女「あいつのブレスは、たぶん食らったら即死よ」

少女「それを防ぐために、かわりばんこで囮役と目くらましをやるの」

狩人「! ……なるほど」


狩人「俺が囮の時は少女が目くらましをして」

狩人「その後は少女が囮になり、俺が……という繰り返しだな?」

少女「ええ」

少女「……けど、あいつが他にどんな攻撃をするのか分からない」

少女「それに一度でもミスったら、命に関わるわ」

少女「それでも……やってくれる?」

狩人「ああ、やってやるさ」

狩人「それで、猟区へ着いたら……」

少女「しっ……! 時間切れよ」

少女「大タル爆弾を炸裂させるわ」

     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

     ドガアアアアアアンッ!!



     ガアアアアアアアアッ!?


少女「…………」

狩人「…………」


     グルルル…


少女「…………」

少女(お願いだから……効いて!)つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


少女・狩人(効いた!)


少女「狩人、走って!」

狩人「おう!」 ダッ!

少女「…………」つ(閃光玉)


     グルルル…!


少女「えいっ!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


少女「よしっ!」 ダッ!


狩人「!」

狩人(二度目の閃光玉!) ピタッ

狩人「…………」つ(閃光玉)

狩人「! 少女!」

     タッ タッ タッ

少女「狩人! 猟区へ着いたら洞窟へ!」

     タッ タッ タッ…

狩人「……よし」

     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!

狩人「!?」

狩人(突進!? あんな大きさなのに早い!)


狩人「くっ……!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


狩人「あ、あぶなかった……!」 ダッ!

     タッ タッ タッ

少女「…………」つ(閃光玉)

狩人「あいつの突進、思ったより早い! 気をつけろ!」

     タッ タッ タッ…

少女「…………」 コクッ




     俺と少女は

     森の木々を物ともせずに なぎ倒し迫ってくる あの白い化物を

     代わりばんこで猟区へ誘導しながら

     すれ違うわずかな時間に気がついた事、気になった事を伝え

     できる限りの情報を蓄積・共有していった。





―――――――――――


ふもと村 集会所


     ワー! ワー!

     ギャー! ギャー!

受付嬢「とにかく、落ち着いて!」


     ……ドドーンッ


一同「!?」

色黒ハンター「今の……何の音だ?」

ハンター(女)「大タル爆弾の……炸裂音じゃない?」

流れハンター「さっきのブレス攻撃で、どっかのが誘爆したのか?」


     タッ タッ タッ

ギルド連絡員「あの化物が進行方向を変えたぞ!」

     ザワッ…!

ギルド連絡員「あいつの足元で何か爆発したと思ったら」

ギルド連絡員「突然、雪山猟区に向かいだしたんだ!」

     ……!?

ハンター(女)「どういう事?」

ハンター(女)「誰かがあの化物を誘導してるって事なの?」

流れハンター「だとしても誰だ?」

流れハンター「正式な依頼もなく、金にもならないってのに……」

     タッ タッ タッ

ネーコ「狩人さんと少女さんですっ……はあ、はあ」


村長「!」

村長「な……それは本当かね!?」

ネーコ「今……はあ、はあ……その二人が雇っているキッチンアイルーが」

ネーコ「さっき、私のところへ来まして……」

ネーコ「この村の住人が逃げる為の時間を稼いでくると、言っていたと……はあ、はあ」

村長「ばかな……二人とも上位に上がったばかりだというのに……!」

     ザワ… ザワ…

村長「…………」

村長「……よし」

村長「受付嬢さん。 ふもと村がギルドにあずけている復興資金はいくらでした?」

受付嬢「え? ……少々お待ちください」

受付嬢「だいたい700万z(ゼニー)になりますね」


村長「そうですか……」

受付嬢「村長さん?」

村長「…………」

村長「では、ふもと村を代表する者として正式にギルドへ依頼します」

村長「あの白い巨大モンスター討伐を……!」

受付嬢「し、しかし……」



村長「報酬はギルドにあずけている復興資金、全額を差し出します」



     ザワッ…!

受付嬢「な……しょ、正気なんですか!?」


村長「いたって正気ですよ」

村長「これで村の住人に罷免される事になっても……悔いはありません」

受付嬢「…………」

村長「ハンターの皆さん!」

村長「どうか、あの白いモンスターの討伐をしてください!」

村長「報酬は約700万z(ゼニー)」

村長「10人で分配しても一人70万z(ゼニー)になります!」

村長「どうか……どうか! お願いします!」



―――――――――――


ふもと村 広場付近


女「職人さん、しっかり……!」

職人「う……うう……」

女「お医者さん、もっと手当てを急いで!」

医師「…………」

医師「……残念ですが」

医師「手の施しようが……」

女「な……そ、そんな……!」

村人「先生ー! こっちを見てやってくれ!」

医師「今行きます」


     スタ スタ スタ…

女「ま、まって! お医者さんっ!」

職人「…………」

職人「……女、ちゃん……よ」

女「! ……職人さん」

職人「俺ァ……もうダメ……なんだな……?」

女「……っ」

職人「……まいったな……まさか……こんな…………最後に……なるなんて……」

女「ごめ、んなさい……」

職人「いいんだ……女……ちゃんの……せいじゃ……ねぇ……」

職人「…………」


職人「……いつか、な……G級……の……」

職人「武器や……防具……鍛える……って………」

職人「……夢…………だったん……だけど……な……」

女「…………」

職人「……あと…………」

職人「女……ちゃんや……少女……ちゃんの……ふふふ……」

職人「花嫁姿…………」

職人「……見た……か…………」

女「…………」

職人「」

女「……職人さん」

女「…………」


     エーン… エーン…

女「!」

女「坊や? どうしたの?」

女「お母さんは?」

男の子「わかんない……」

女「そう」

女「じゃあ……しばらくお姉さんと一緒に居よう?」

女「お母さんも、きっと坊やを探してる」

女「ここで待ってれば……きっと……」

男の子「……どうしてお姉ちゃん、泣いてるの?」

女「……何でもない。 何でも……ないから……」

     ギュッ…






     もう……

     これ以上……





     悲しい事は……起こらないで……!








―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)付近


     タッ タッ タッ

狩人「はあっはあっはあっ!」

少女「これで最後!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


狩人「くそ……! 俺はもう使い切った!」

少女「ここからは横にずれる下り坂で、あのモンスターの視界から一瞬外れるわ!」

少女「全速力で洞窟に向かうわよ!」

狩人「わ、わかった!」







     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!







狩人「うおおおおおおおおおおおおっ!?」

少女「きゃああああああああああああああっ!?」


狩人(あ、あぶねぇ!!)

狩人(BC(ベースキャンプ)のあったところが吹き飛んだぞ!?)

少女(くっ……)

少女(やっぱりこの距離で、この威力……!)

少女(洞窟に到着する前に狙われてしまう……間に合わない!)

少女(…………)

少女(賭けになるけど……)

少女(あの方法をやるしかないのかも……!)

     タッ タッ タッ…



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前エリア


     タッ タッ タッ

狩人「はあっはあっはあっ」

少女「はあっはあっはあっ」


     ガアアアアアアアアッ


少女「!」

少女(……いけない!)

少女(やっぱりブレス攻撃を仕掛けてくるつもりだわ!)




     少女は、その場で先を行く狩人が向かう方向とは

     別方向へと向きを変え、走る。

     目的は二つあった。

     一つは標的を分散させる事で、モンスターを躊躇させる事。

     もう一つは、洞窟を壊させない事。



     だが、それには狩人を狙わせない様にする必要があった。






     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


狩人「!?」


     ライトボウガンの発射音を聞いて

     思わず足を止め、その方向へ目を向ける狩人。


狩人「少女!?」

少女「来ないで! 狩人!」


     グルルル…




     白い巨大モンスターが、ブレスの攻撃態勢に入る。

     標的はもちろん攻撃した少女だった。


少女「……今!」 ダッ!


     

     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!




狩人「しょ、少女ッ!」

少女「く……のおおおおっ!!」


     間一髪。

     ブレス発射のタイミング、距離、巻き上げられる岩石の有無。

     それら全てを、絶妙に読みきった少女は、かろうじて避け切る事に成功した。



少女(よし、これで次のブレス攻撃まで、ある程度の時間がいる)

少女(後は洞窟に逃げ込んで、救助を待つ)

少女(私たちに出来る事は、ここまで)

少女(これ以上は、G級ハンターでもハンターの軍勢でも何でもいい)

少女(それらが、あの白いモンスターを倒してくれれば、私達の勝ち……)

少女(っ!?)


     だが、誤算もあった。

     ブレス攻撃で巻き上げられた岩石や土砂が

     少女の位置から、洞窟までの間に障害物として散乱していたのだ。



少女(……っ)

少女(これじゃ、まっすぐ走れない)

少女(洞窟に行くまでにブレス攻撃が来てしまう……!)

少女(…………)


     少女は決断を下す。

     そのまま、雪山猟区の奥へ

     障害物のない方向へと走り出した。


狩人「しょ、少女!?」

少女「狩人! あなたはそのまま洞窟へ行って!」

狩人「だ、だけど!」

     タッ タッ タッ…




     少女は狩人の戸惑いに答えなかった。

     だが、彼女の行動に迷いは無い。

     狩人には思いつけない、何か、考えがあるのだろう。



狩人(……でも)

狩人(あの先はやや開けた場所があるだけ……)

狩人(逃げ道の洞窟の入口もあるけど)

狩人(崖を登らないと行けないし、それをあのモンスターが待ってくれる訳はない)

狩人(事実上の袋小路になる……)

狩人(どうするつもりなんだ、少女!)




     グルルル…



狩人「っ!」

狩人(……今は考えている時間がない)

狩人(少女を信じるんだ!)

狩人「くそっ!」

     ダッ!

―――――――――――


雪山 中腹付近エリア


     タッ タッ タッ…

少女「はあっはあっはあっ」


少女(……さあ、ここからが最後の賭けよ)

     カチャカチャ… カキンッ

少女(落ち着いて……落ち着くのよ、少女ッ!)


     ズシン… ズシン… ズシン…

     グルルル…


少女(できれば麻痺弾も持ってきたかった……)

少女(ちょうど無くなっていた時で、調合をする材料も切らしていたから)

少女(余ってた睡眠弾を調合分含め、持てるだけ持ってきたけど……)


     ガアアアアアアアアッ!


少女「くっ……」




     一般的にもよく知られる超巨大龍ラオシャンロンは

     数年に一度、周期的に決まった場所を通ろうとする厄介なモンスターだ。

     だが、こちら側も知恵を絞り、急ごしらえでも砦を作り

     周期回遊を経験するにつれ、ついに撃退に成功していった。


     襲来するラオシャンロンには個体差があるので

     回遊してくる度に違う個体であるのは確認済み。

     わかりやすく言うと何頭も、何十頭もラオシャンロンは存在し

     なぜか、同じ場所を回遊するのだ。






     そして、様々な攻撃をしていく過程で

     ラオシャンロンは状態異常を起こす薬品そのものが

     まったく効果のない事も証明されている。


     少女は、この事をモンスターの書を読み、熟知していたが

     今回、ふもと村を襲ったモンスターは全く知らない未知のものなので

     念のため持ってきていたのである。






     しかし、賭けになるのは間違いない。

     これが効かなければ

     逃げ場のない少女は生存する事ができない。

     だから、『必ず効く』と信じ込んで

     そうならない事を考えない様にしていた。

     そうしなければ……恐怖で体が動かなくなりそうだったから……




少女(……大丈夫)

少女(状態異常弾は古龍クラスにだって効果がある)

少女(図体が大きいから、多少打ち込む弾丸が多くなるだろうけど)

少女(必ず効いてくれる!)

少女(あいつはラオシャンロンじゃない!)


     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


少女「くっ……!!」

少女(ただの突進なのに……避けるのも一苦労だわ)

少女(でも、ここはそれほど広くない)

少女(あのブレス攻撃は ほとんどしないはず!)

少女(こちらの攻撃チャンスは……)



     ズズウゥ……


     ガアアアアアアアアッ!


少女(そう……そうやって) スッ…

少女「立ち上がった時よ!!」

     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

少女「もう一撃……」つ(リロード)

少女(……ううん、深追いは禁物!)

少女「ここまでね」 スッ…(ボウガン収納)

少女(悔しいけど、あの突進は武器を収納した状態じゃないと避けられない)

少女(周りに気をつけて逃げ道を確認しながら移動しないと……!)


崖上 洞窟出入り口付近


狩人「はあっはあっ……」

狩人「少女は……!?」


     ガアアアアアアアアッ!


狩人「ちっ……!」

狩人(こんなところまで咆哮が!)

狩人(少女の様子を見に行きたいが、この洞窟を出たら)

狩人(あのモンスターに見つかってしまいそうだ……)

狩人(どうする……?)

狩人(もし見つかってここを あのブレス攻撃されたら)

狩人(少女の逃げ道が無くなってしまう!)


狩人「…………」

狩人(……こうなったら)

狩人(結構な回り道になるけど、このさらに上の崖に行けば)

狩人(あいつに見つからずに様子が見えるかも知れない)

狩人(くそっ!)

狩人(この洞窟を出て崖を登れば直ぐなのに!)

     ダッ!

狩人(少女、無事でいてくれ!)

     タッ タッ タッ…



―――――――――――


少女「はあっはあっ……」

     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

少女(これで、9発……!)つ(リロード)


     ガアアアアアアアアッ!!


少女「くっ……ううっ!」

少女(こんなところまでバインドボイスの影響が……!)

少女(高級耳栓があれば、このタイミングで撃てるのに!)

少女(…………)

少女(無い物ねだりをしてもしょうがない)

少女(このリロードで、持ってきた睡眠弾が切れる)

少女(これで効かなければ調合しないと……!)

少女(いいえ、余裕のある内にしておかないと!)




     こんな時だが

     ババコンガに追われ、逃げながら曲芸師のように

     調合していたハンターを少女は思い出していた。


     あの時はエリアを変えてからやれば……

     などと思ったけど

     今は、それができるあのハンターが心底羨ましかった。





     ズズウゥ……


     ガアアアアアアアアッ!


少女(よし……今の内に)つ(調合の材料)

     カチャカチャ… パキュ

少女(……ひとつ……二つ……)

少女(三つ……よっ……失敗した)

少女(っ!)

少女(ここまでね)


     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


少女「また突進……!」

少女「くっ……!」 回避!


雪山 中腹付近エリア 崖上付近


狩人「はあっはあっ……」

狩人「しょ、少女は……!?」

狩人「…………」

狩人(よし、ここからなら高くて あいつにも気づかれない)

狩人(少女も……何とか見えるな)

狩人(崖下の方に行かれたら、死角になって見えないけど……)

狩人(…………)

狩人(戦っている……?)

狩人(少女が……あんな化物相手にたった一人で……?)

狩人(…………)


狩人(何か勝算があるのだろうか?)

狩人(……いや)

狩人(あのブレス攻撃を受けたら即死だと言ってた)

狩人(そんな奴相手に討伐なんてリスクが大きすぎる)

狩人(それに猟区に着いたら洞窟に向かえとも言ってた)

狩人(どう考えても戦うつもりでは無かったはず……)

狩人(…………)

狩人(少女は……少女なら、どうする?)

狩人(…………)

狩人(!)

狩人(そうだ……あの時のティガレックス!)

狩人(あれみたいに状態異常にして、逃げるつもりなんじゃないだろうか?)


狩人(…………)

狩人(……だとしたら)

狩人(俺に出来ることは……なんだ?)

狩人(…………)

狩人(俺の武器は状態異常をもたらすものじゃないし)

狩人(かと言って、あの化物相手に囮になるのは自殺行為だ……)

狩人(それに下手に手を出して、あんな広さの場所じゃ)

狩人(返って少女の邪魔になるかもしれない……)

狩人(…………)

狩人(……くそっ)

狩人(このまま……見てる事しかできないのかよっ!)


     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

少女(これで……持ってきた12発は終わり!)


     グルルル…


少女(…………)

少女(大丈夫)

少女(必ず、効く)

少女(残りをぶち込めば、必ず!)つ(リロード)


     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


少女「!」

少女(しまった!!)



     つい、いつもの癖で、リロードをしてしまった少女。

     今のタイミングは、武器を収納しなくてはならなかった。


少女(だめ……!)

少女(もうしまう時間はない!)

少女「くっ……!」 ダッ!




     ド   ガ   ア   ッ  !!




少女「がっ……!…?…」




     少女の体が宙を舞う。

     あの白い巨大モンスター……ウカムルバスからすれば

     おそらく『かすった』程度の当たり具合であろう。



     ……でも



     少女に致命傷を与えるのには……














     十分すぎる衝撃だった。












     ……―――――ンッ

     ドサッ!!


少女「げびゃっ……!!」

少女「……っ」 ピク… ピク…


     ――あれ?

     私……  どうしたんだろう……

     …………

     なに…… してたっけ……?

     …………

     何か……  だいじな…… こと……

     してた…… はず…… なのに……?


少女「…………」


狩人「――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


     ……ダダダダダ! バッ!


狩人「しょうじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


     グル?

     ドガアッ!


狩人「はあっはあっはあっ……」

狩人「よくも……」

狩人「よくもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


少女「…………」



     狩人……?

     狩人の声が……聞こえる……

     狩人…… 狩人?


     !!


少女「……っ!」

少女(…………)

少女(……狩人)

少女(だめ……そいつと……戦っちゃ……)

少女(…………)

少女(あなたは……こんなところで……死んでいいハンターじゃ……ない……)




     ねえ……狩人。

     私ね、あなたとなら出来るかなって、叶えられるかなって

     夢があったんだ。



     モンスターに滅ぼされた私の村を復興したいって夢……



     いつか話して……できたら、あなたと家族になって

     私が居た村を二人で復興させて……

     その村で、いつまでも仲良く暮らしたいって、思ってたの。






     ……けど

     どうやら、もう無理みたい。

     いつもいつも……あなたには助けられたね。

     いつもいつも……無茶なお願いをしちゃったね。






     狩人。

     きっとあなたは、強くなれる。

     あなたの憧れている、ラオシャンロンを倒したハンターよりも

     今居るG級ハンターよりも

     誰よりも強くなれる才能を秘めているわ。




     だから……お願い。















     生きて











狩人「はあっはあっはあっ……」 ヨロッ…

狩人「ち……畜生……」


     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


狩人(ここまで……か……)

狩人(…………)


     …ドウッ! ……ドウッ!

     ドウッ!


狩人「!」

狩人「少女!?」



     グアアアア……ズズンッ

     グルルル…zzz グルルル…zzz


狩人「!!」

狩人「寝てる……」

狩人「やっぱり少女は状態異常を狙っていたのか……!」

     タッ タッ タッ

狩人「少女、大丈夫か?」

狩人「今手を……」

少女「」

狩人「…………」

狩人「少女?」

少女「」


狩人「…………」

狩人「……おい、少――」

流れハンター「大丈夫か!?」

狩人「っ!?」 ビクッ!

狩人「え……あなたは?」

流れハンター「今は説明している時間がない」

流れハンター「そっちの……怪我して動けないのなら」

流れハンター「早いとこ連れて洞窟に行け」

流れハンター「後は俺たちが引き受ける」

狩人「……わ、分かりました」

狩人「あ、今あいつは――」


流れハンター「分かっている。 睡眠弾で寝ただけだろう?」

流れハンター「いいから早くいけ! 起きちまうぞ!」

狩人「あ、ああ……」

狩人「少女、しばらく俺の背中で我慢してくれよ」


―――――――――――


洞窟内


     ザッ ザッ ザッ

狩人「…………」

少女「」

狩人「…………」

少女「」


狩人「……なあ、少女」

少女「」

狩人「俺たち……やったよな」

少女「」

狩人「たった二人で……ふもと村、救ったんだよな」

少女「」

狩人「…………」

狩人「もう、油断してもいいよな」

狩人「帰ったらさ、何が食べたい?」

少女「」


狩人「俺は……板前アイルーの新メニュー」

狩人「なんでもガノトトスの肉を使ってるらしくって」

狩人「ファンゴとかの肉と違って、さっぱりしてて旨いんだ」

狩人「きっと……少女も気に入ると思う」

少女「」

狩人「そうだ、女も誘おう」

狩人「みんなでさ、ワイワイガヤガヤ言って」

狩人「板前アイルーの新メニューを評価してくれ」

狩人「なんならコックアイルーを呼んできてもいいぞ?」

少女「」

     ザッ ザッ ザッ…

狩人「…………」

狩人「……何か」

狩人「言ってくれよ……少女」


少女「」

狩人「…………」

狩人「……どうして、そんなに静かにしてるんだよ?」

少女「」

狩人「俺に気を使っているのか?」

狩人「気にするなよ、そんな事……」

少女「」

     ザッ… ザッ… ザッ…

狩人「もっとさ……やったぜー!って」

狩人「派手に……喜んでも……ぐっ……いいと、思う……」

少女「」

狩人「だから、さ……何か言ってくれよ……」

狩人「寝息とか……いびきとかでも……いいからさ……」


少女「」

狩人「…………」

     ザッ…  ザッ…

狩人「…………」

狩人「少女……」

狩人「…………」

少女「」

狩人「……っ」

狩人「えぐっ……くっ……ぎっ……うぐっ……」

狩人「ばか……ぎっ……やろうっ……はっ……うぐっ……」

少女「」


狩人「俺たち……うあっ……やったんだぞ……ひぎっ……」

狩人「あんな……ひぐっ……化物……相手で……うあっ……」

少女「」

狩人「逃げてばっか、だったけど……うぐっ……はっ……」

狩人「猟区にっ……誘い込んで……ぎっ……うくっ……」

少女「」

狩人「他の……うぐっ……ハンターも……きて……ぐっ……」

狩人「……勝った、んだぞ……?……ひぎっ……」

少女「」


狩人「なのに……ひぐっ……なのにっ……」

狩人「お前が……少女が……うぐっ……死んでしまったら……」

狩人「全然喜べないじゃないかっ!!」

少女「」

     ザッ…  ザッ…

     ドサッ…

狩人「……うっ……うっ……うあっ……あああっ…………!」

狩人「あああああああああああああああああああっ……!」

狩人「ひっぎっ……ああああああああああああああああっ……!」

狩人「なん、でだ、よっ……! ああああああああああああああああああっ……!」

狩人「うあっ……どうし、て、だ……よっ……少女っ……少女おおおおっ……!」

狩人「あああああああああああああああああああああああっ……!」




     俺たち……これからだったじゃないか。

     防具も新調して、武器も強くしていって

     上位モンスター相手に戦っていく……






     少女となら

     どんなモンスターが相手だって負ける気がしない。

     君と二人なら、何も怖くない。

     俺は君の出来ない事をやって

     少女は、俺の頭じゃ思い付けない方法を考えて

     そうやってずっと支えあって行けるって……思っていたのに。






     さよならも言えずにこんな形でお別れなんて……

     酷いじゃないか……

     あんまりじゃないか……!






     俺は……洞窟の中で足を止め、うずくまり

     その場でずっと泣いていた。



     あの白い巨大モンスターを死闘の末倒し

     心配して捜索してくれた、数人のハンターに発見されるまで

     ずうっと……泣いていた……





―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


狩人「…………」

女「狩人……」

女「…………」

女「隣に座っても……いい?」

狩人「…………」

女「…………」

     ストン…

女「…………」


女「…………」

女「何を言っても……慰めにならないと思うけど」

女「村のみんなは、あなたと少女ちゃんに感謝してる」

女「助けてくれてありがとうって……」

狩人「…………」

女「もちろん私も感謝してる」

女「あなた達の迅速な行動が無かったら」

女「もっと犠牲者は増えていた……」

狩人「…………」

女「…………」

女「じゃ……私、行くね? 狩人もそろそろ休まないと体に……」



     ザワッ……!


女「……ん?」

女「どうしたのかしら……何か騒がしいけど」

     タッ タッ タッ

ギルド連絡員「だれか! 担架を持ってきてくれ!」

ギルド連絡員「調査隊の先遣隊の生き残りが帰ってきた!」

ギルド連絡員「ロートルと名乗っている!」

女「!」

狩人「!」

女「ロートルさん!?」


ロートル「……俺の……事は……後でいい」

ロートル「ウカムルバス……とんでもない化物が……来る」

ロートル「早く……逃げろ……」

ロートル「今すぐにッ……!!」

ギルド連絡員「わかった、わかったから休んでいろ!」

ギルド連絡員「担架はまだか!」

ロートル「早く……逃げ……ろ……」

ロートル「」 ガクッ…

狩人「…………」

狩人「……ロートルさん」

女「…………」

女(なんて……皮肉なの……)




     ロートルさんの帰還がもっと早ければ……!

     そんな事を少し考えたけど

     彼のボロボロの姿を見て、そんな事は言えなくなった。

     ロートルさんがどれだけの苦労をして帰ってきたのか

     その姿を見れば、一目瞭然だったからだ。



     担架で運ばれていくロートルさん……

     その姿を眺めながら、また涙が溢れてきた。






     今回のモンスター襲来での犠牲者は

     護衛のハンターを含めた調査隊の先遣隊2部隊

     54人。



     ふもと村住人の死傷者は約50人。内、死者は23人。

     倒壊・半倒壊家屋が12軒。



     そして、あの白い巨大モンスター……

     ウカムルバスの討伐に総勢28人のハンターが向い、命を落とした者は

     11人となっていた……



という所で、今日はここまでです。
お付き合いありがとうございました。
次回、最終回になります。



―――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

―――――――――

―――





     ガヤ ガヤ





ふもと村 集会所


戦士「…………」

戦士(……ここはふもと村の集会所)

戦士(集会所とは、食堂も兼ねているが)

戦士(少々手ごわいモンスター等を他のハンターと共同で受注する事ができる場所だ)

戦士(…………)

戦士(ここには『村付き』と呼ばれるハンターや)

戦士(流れのハンター、依頼主の旅商人や村人の憩(いこ)いの場でもあったりする)

戦士(運営はハンターズギルドが行っている)

戦士(…………)

戦士(ギルドに紹介され、ふもと村の村付きハンターとして)

戦士(昨日、ここに着いた)


戦士(今の俺は駆け出しのペーペー)

戦士(もちろんHRは最下級の 1 ……)

戦士(いずれはここを利用する様になるだろうけど)

戦士(他のハンターがどんなものなのか、見ておきたくてここに来た)

戦士(あれが、あの姿が、未来の自分なんだと……!)


?「あ……もしかしたら、あんた」

?「昨日来たっていう、新人の村付きハンター?」

戦士「!!」 ビクッ!

戦士「は、はい! そうで……」

戦士「いや、そうだが? 何か用か?」

?「ははっ。 威勢がいいみたいだね」


?「あたしは娘っていう名前なの」

娘「あんたと同じく、一週間くらい前にここの村付きハンターとして来た」

戦士「ほう。 そうなのか」

娘「で? あんたの名前は?」

戦士「俺か? 俺の名前は戦士」

戦士「まあ、よろしく」

娘「うん、よろしくね!」

娘「ここで会ったのも何かの縁だし、一緒にクエ行かない?」

戦士「え?」

娘「別に無理に、とは言わないけど」

娘「お互いの実力を知っておきたいしさ」

娘「どうかな?」


戦士「…………」

戦士(ど、どうしよう……)

戦士(正直、やるつもりは無かったんだけど……)

戦士(…………)

戦士(でもまあ、俺の実力を見せ付けるってのは)

戦士(いいかもしれないな)


戦士「よ、よし。 いいぜ。 付き合ってやる」

娘「あはは、安心しなよ」

娘「ただの採取クエだから」

娘「モンスターが出ても せいぜいファンゴかギアノスくらい」

娘「それよりも雪山猟区のマップとか、覚える事たくさんあるよ~?」

戦士「……先輩風吹かせるつもりかよ」


娘「うひひ。 そういう事」

娘「なんて言うかさ、ちょっと肩身が狭いって言うか」

娘「HR1のハンターは、あたしだけだったから……」

娘「戦士が来てくれて嬉しくなっちゃって」

戦士「…………」

娘「まあ、細かい事は置いといて」

娘「採取クエ、さっさと行こう?」

戦士「あ、ああ……」

    パァ~フォ~



―――――――――――


戦士「…………」

娘「あはは……ごめん」

戦士「おいおい……」

戦士「ガウシカにケンカ売って3乙とか無いだろ……」

娘「れ、練習は、してるんだけどね……」

戦士(……かかわらない方がいい様な気がするなぁ)

娘「ちょ! 今『関わりたくない』とか、思ったでしょ!?」

戦士「ないよ」

娘「いーや! 絶対思った!」

戦士「……じゃ、また今度」


娘「待って!」

娘「もう他にあたしと組んでくれるハンターが居ないのよ!」

娘「見捨てないで!!」

戦士「そう言う言い方は誤解されるから止めてね!?」

娘「戦士ー!!」

     ゴッ… ギシシ ゴッ…

????「またお前か……娘」

娘「ロートルさん!」

戦士「…………」

戦士(……この人の左足、義足だな)

戦士(武器も背負っていないし、防具も身につけてないけど)

戦士(なんか……ハンターっぽい雰囲気がある)


娘「あ、戦士。 紹介するね?」

娘「この人はロートルっていう名前で、元ハンターの人」

娘「この集会所でコックをやっているの」

娘「で、ロートルさん。 こっちが昨日来たばかりの新人ハンターの戦士」

ロートル「ほう? 君がそうか」

ロートル「よろしく。 ロートルだ」

戦士「……どうも。 戦士だ」

戦士「その足の義足……モンスターに?」

ロートル「……まあそんな所だ」

ロートル「おめおめと生き恥を晒している様に見えるかもしれんが」

ロートル「君や娘の様な新人ハンターへの助言も行っている」


戦士(助言……ねぇ)

ロートル「で? 娘」

ロートル「また3乙したのか?」

娘「……今日は調子が」

ロートル「俺の知る限りじゃ、良かった日なんてないぞ」

娘「い、いじめないでください!」///

ロートル「まあ……それだけ醜態晒して」

ロートル「他のハンターと組もうとするガッツは買うが」

ロートル「もう少し腕を上げてからにした方がいい」

娘「うう……」

戦士「…………」



―――――――――――


数週間後の午前中

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

戦士「……ふう」

戦士(ダイミョウザザミ……そろそろ防具の素材が集まるな)

戦士(できれば近くの砂漠で狩りたいが……ん?)


娘「…………」 ポツーン…


戦士(…………)


戦士(あれから随分経つのに初期装備のマフモフ装備のまま……)

戦士(苦労してるみたいだな)

戦士(ま……俺の知った事じゃないが)

戦士(……お?)


??「君が娘ってハンター?」

娘「え? あ、はい。 そうですけど……」

??「ロートルさんから話を聞いてきた」

??「一度、君とクエに付き合うよ」

娘「!!」

娘「あ……ありがとうございます! ありがとうございますっ!」 ペコペコ

??「いいって、そんなに気にしなくても」


戦士「…………」

戦士(ふうん……あの義足のロートルって人の知り合いか)

戦士(見た目、かなり強そうな上位ハンターっぽいけど)

戦士(あんなヘタレハンターのお守りとは……暇なハンターが居るもんだ)

戦士(おっと、俺は俺のクエに専念しないと)

戦士(あんな奴に関わってたら命がいくつあっても足りやしない)


戦士「受付嬢さん。 ダイミョウザザミのクエ、あるかい?」

受付嬢「はい。少々お待ちください」

受付嬢「……今は密林のクエストしかありませんね」

戦士「そうか……ま、しかたない」

戦士「それを受注するぜ」

受付嬢「分かりました」



―――――――――――


一週間後の午後

ふもと村 集会所


戦士「ふう……」

モヒカン「お疲れ」

ドレッド頭「お疲れ様」

戦士「ああ、助かったぜ」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

戦士「…………」

戦士(これでザザミの防具が作れるな)

戦士(……ん?)


戦士(あれは……娘?)

戦士(しかも弓を背負ってる)

戦士(武器を変えたのか?)


娘「…で……すね…」

??「ああ……だ……」


戦士(ここからじゃ聞こえないけど)

戦士(この前の上位ハンターと何か話しているな)

戦士(……やれやれ)

戦士(こんな低ランククエで上位ハンターに手伝ってもらって)

戦士(恥ずかしくないのかな……)



―――――――――――


さらに数日後の夕方

ふもと村 集会所


戦士「…………」

戦士「……くっ」

戦士(まさか……3乙してしまうなんて)

戦士(…………)

戦士(まあやってしまったものは しょうがない)

戦士(次は必ずフルフルを狩ってやる!)


??「よう。 3乙したんだってな?」

戦士「え?」

戦士「! ……あんたは」

??「そういや名乗ってなかったっけ」

??「俺の名前は狩人。 君と同じく、このふもと村の村付きハンターだ」

狩人「よろしく」

戦士「あ、ああ……よろしく」

戦士「俺は……」

狩人「知ってる。 戦士、だったな」

狩人「娘から君の事は聞いてるよ」

戦士「…………」

戦士「それで? 俺に何か用か?」

狩人「大した事じゃないんだけど……」


狩人「同じ村付きハンター同士だし」

狩人「良かったら、一緒に飯でも食わないか?」

狩人「もうすぐ娘も来る」

戦士「…………」

戦士「遠慮しとくよ。 じゃ……」

     テク テク テク…

狩人「あ……」

狩人「…………」

ロートル「どうやら振られたみたいだな、狩人」

狩人「ロートルさん」

狩人「なかなかロートルさんみたいに上手く誘えません……」


ロートル「そりゃ年季が違うからな」

狩人「ははは……」

娘「お待たせしました! 狩人さん!」

娘「あ……ロートルさんも居るんですか」

ロートル「なんだ? 俺は居ちゃいけないのか?」

娘「だって……時々セクハラしてくるし」

ロートル「交流を円滑に進めるテクニックと言って欲しいな」

狩人「変わらないですね、ロートルさん」 クスッ

ロートル「ははは!」

娘(空気読んでよ……おっちゃん)



―――――――――――


数週間後の午前中

ふもと村 集会所


戦士「な……なに!?」

戦士「もう俺とは組めないだと!?」

モヒカン「ああ」

モヒカン「毎回準備不足で足引っ張るしな」

ドレッド頭「ハチミツくらい、ソロで集めて確保しろよ」

ドレッド頭「クレクレうるせーっての」

戦士「その分、前面に立って仕事してるだろうが!」


モヒカン「それも最近じゃ物足りなくなってる」

モヒカン「もうお前と付き合うメリットはねぇよ」

ドレッド頭「他の奴、探してくれ」

ドレッド頭「じゃあな」

     テク テク テク…

戦士「ちっ……!」

戦士「せっかく上位ランクアップクエに挑戦できるってのに……!」

戦士「…………」

戦士(まあいい)

戦士(あんな奴らなんて居なくても、ドドブランゴくらい俺一人で何とかなるさ)

戦士(見てろよ……)



※戦士の装備


戦士(HR 3)

武器:太刀
防具:ザザミ装備一式




―――――――――――


雪山 山頂手前付近


     ゴアアアアアアアアッ!

戦士「ぎゃあっ!!」

戦士(く、くそ……!)

戦士(ブランゴのチマチマした攻撃が邪魔すぎる!)

戦士「このおおおおっ!!」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!(気刃斬り)

戦士「!!」

戦士(畜生! 外した!)

     ゴアアアアアアアアッ!

     ドガアッ!!

戦士「うがああああああっ!!」



―――――――――――


戦士「」

戦士「……ん?」

戦士「…………」

戦士「ここは……?」

隊長アイルー「気がついたかニャ」

隊長アイルー「ここはBC(ベースキャンプ)ニャ」

戦士「BC(ベースキャンプ)……1乙してしまったのか」

隊長アイルー「いや」

隊長アイルー「今回、お前はドクターストップがかかったニャ」


戦士「え……」

隊長アイルー「右足が折れて、クエ続行は不可能と判断されたニャ」

戦士「!」

戦士「…………」

戦士「……なんてこった」

戦士「はあ……ツいてない」

隊長アイルー「馬鹿か、お前」

戦士「!」

隊長アイルー「あんな無謀な攻撃をして、足一本折れただけで済んだのニャ」

隊長アイルー「下手したらハンター業引退になるところだったのニャ」

隊長アイルー「これほどの幸運はないと思えニャ」

戦士「……うるせーよ」

戦士「戦いもしないネコタクアイルーのくせに偉そうに喋るな!」


隊長アイルー「はっ」

隊長アイルー「そうやって馬鹿にした俺たちに救助されて」

隊長アイルー「ざまあないニャ」

戦士「言わせておけば……!」

戦士「痛たたたっ!!」

隊長アイルー「任務終了」

隊長アイルー「要救助者は意識を回復」

隊長アイルー「ふもと村に帰還するニャ」

     ニャー



―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


     ザワ ザワ

     ドクターストップダッテヨ

     マタ 死二タガリノアイツカ

戦士「…………」

戦士(……くっ)

戦士(俺のせいじゃねぇ……)

戦士(ちょっと運が無かっただけだ)

戦士(それだけだ……)

戦士(…………)



―――――――――――


数日後の午後

広場付近


戦士「…………」

戦士(……よし)

戦士(もう問題なく動けるな)

戦士(明日、またドドブランゴを討伐に行こう)

戦士(……ん?)


娘「ありがとう!」

娘「おかげで上位ハンターになれたよ!」


戦士「」


モヒカン「いや、こっちこそ助かったぜ」

モヒカン「あんたのサポートはありがたかった」

ドレッド頭「全くだ」

ドレッド頭「これからもよろしく頼むよ」

娘「もちろん!」

     アハハ…

戦士「…………」



―――――――――――


村長「やあ戦士」

戦士「ああ」

戦士「何か討伐クエある?」

村長「はは、ここのところ君が狩りまくってくれたからね」

村長「ギアノスかファンゴの群れくらいしか残ってないよ」

戦士「それでいい」

戦士「ファンゴのクエをやる」

村長「……ドドブランゴは まだ出てないのかな?」

戦士「ああ、出てない」

村長「そうか。 じゃ……よろしくね」



―――――――――――


その日の夕方

広場付近


娘「あ……戦士!」

戦士「!」

     スタ スタ ス…

娘「待ってよ、戦士!」

戦士「……何の用だ?」

娘「あたし、これから集会所でご飯食べるんだけど」

娘「良かったら一緒にどう?」

戦士「……いらな」


狩人「おいおい」

狩人「女の子からのお誘いを断るなんて、もったいないな」

戦士「! あんたは……」

狩人「一人で食事しても旨くないだろ?」

狩人「飯ってのは、みんなでワイワイ言いながら食うから旨いんだ」

狩人「おまけに可愛い女の子付き。 損はないと思うぜ?」

娘(可愛いって……狩人さん)///

狩人(……こんな感じだったかな? ロートルさんのやり方)

戦士「…………」

戦士「……悪いが」

娘「ちょ……戦士!」


狩人「はあ……集会所が怖いのか?」

戦士「っ!?」

狩人「図星か」

戦士「うるせーな!」

狩人「余計なお世話だってのは、こっちも分かってるよ」

狩人「けどまぁ……俺にも経験のある事なんでな」

狩人「放っておけなかった」

戦士「…………」

狩人「どうする?」

戦士「…………」



―――――――――――


ふもと村 集会所


ロートル「よう。 来たか」

狩人「ロートルさん」

狩人「あなたのやり方、真似してみましたけど」

狩人「自分には向いてないって良く分かりました……」

ロートル「ははは! そうか!」

狩人「笑い事じゃないですよ」///

ロートル「まあいいさ。 結果的に戦士をここに連れてこれたんだ」

ロートル「クエ達成すりゃ方法は何だっていい」


戦士「…………」

ロートル「よし、狩人に免じて」

ロートル「今日の飯代は俺がおごってやろう」

ロートル「遠慮なく食え!」

娘「やったぁ!」

狩人「それじゃ注文します」

狩人「俺はモス煮込みとタンジアビール」

娘「あたしはファンゴのジューシィ焼き!」

娘「それとフラヒヤ麦飯のリゾット!」

狩人「戦士は?」

戦士「…………」

戦士「くの字エビの鍋煮込みとフラヒヤ麦飯を」


ロートル「OK。 じゃ、ちょっと待っててくれ」

     ゴッ… ギシシ ゴッ…

娘「…………」

娘「あのさ、戦士」

戦士「ん?」

娘「ドドブランゴ……勝手に倒して、ごめん」

戦士「!」

娘「できれば一緒にって思ったんだけど……」

娘「あの二人からどうしても行きたいって、誘われて……」

戦士「…………」

戦士「……別に気にする事じゃない」


娘「戦士……」

戦士「それにしても娘、順調だな」

戦士「最初ここで会った時、ガウシカ相手に3乙したのが嘘みたいだ」

娘「それは狩人さんに いろいろアドバイスをしてもらったから」

娘「武器の簡単な改造してからでも別に恥ずかしい事じゃないとか」

娘「片手剣でダメなら双剣とか、他の武器でやってみるのもいいとか」

娘「俺たちハンターの目的は、かっこよくモンスターを倒す事じゃない」

娘「いかに自分の身を守りつつ、安全に倒せるか、だって」

娘「教えてくれたんだよ」

戦士「…………」

戦士「……そんなのいい訳だろ」

娘「ふふふ……最初は、あたしもそう思ったけどね」

娘「でも」




娘「意地張ってモンスターを倒せないでいて……それでいいの?」

娘「っていう疑問が沸いてきたの」



戦士「…………」

娘「だからあたしは、もう格好を気にする事を止めた」

娘「あたし達は……モンスターを狩るハンター」

娘「それ以上でもそれ以下でもない」

娘「モンスターを狩れないハンターなんて……それはもうハンターじゃないって」

戦士「……皮肉か?」

娘「!!」

娘「ち、違うの! 今のは……」


     オマチドウサマー

狩人「おっ来たか」

狩人「旨そうだ」

     イタダキマス

     ガツガツ ムシャムシャ…

戦士「…………」

狩人「……なあ、戦士」

戦士「……なんだよ」

狩人「お前はどうしてハンターになったんだ?」

狩人「娘は昔、ハンターに助けられて、憧れたのが理由だそうだ」

娘「あはは……子供っぽくてすみません」///

狩人「恥ずかしい事じゃないさ」 クスッ


戦士「…………」

戦士「……別に話すほどの事じゃない」

戦士「目的はあるが、それには金が要る」

戦士「強いて言えば、それが理由だ」

狩人「そうか」 クスッ

狩人「なら、尚の事、集会所のクエをやった方がいいな」

狩人「村長のところじゃ、あんまり金にならないだろ?」

戦士「ど、どこのクエをやろうが俺の自由だろ!?」

娘「じゃ、じゃあ、明日、クックを狩りに行くんだけど……」

娘「良かったら、一緒にどう?」

戦士「同情なんていらねーよ!」


狩人「……なるほど」

狩人「戦士はクックすら狩る自信がない、という事か」

戦士「ふざけるな! あんなザコ!」

戦士「俺一人でだって狩れる!」

狩人「だったら……何も問題ないよな?」

戦士「ぐっ……!」

狩人「んじゃ、決まりだ」

狩人「明日、集会所で待ってるぞ」

戦士「……あんたも行くのかよ」

狩人「ああ」

狩人「戦士の戦い方も見てみたいからな」

戦士「……ふん」



※それぞれの装備


戦士(HR 3)

武器:太刀
防具:ザザミ装備一式


娘(HR 4)

武器:弓
防具:ガンナー用ランポスS装備一式


狩人(HR G級)

武器:太刀
防具:レックスX装備一式




―――――――――――


翌日の午前中

森丘 BC(ベースキャンプ)


狩人「さて、行くか」

戦士「…………」

戦士「あんたのその防具……」

戦士「ティガレックスの物か?」

狩人「ああ。 そうだが?」

戦士(……あの『轟竜』を何匹も狩らないと作れないのに)

戦士(この人……見た目とは裏腹にすごいハンターなのか?)

娘「さっ! 張り切って行こう!」



―――――――――――


     キョエエエエエー!!

戦士「くっ……!」

戦士「おおおおおっ!」

     ズバッ! ズバッ! ズババッ!(気刃斬り)

戦士(っ! また外した!)

     クワワワー!!

     ドカッ! ドカッ! ドカッ!

戦士「うわああああっ!!」

娘「戦士!」


戦士「くっ……ううっ……」

狩人「……よし。 戦士、下がって回復薬を飲むんだ」

狩人「しばらく俺が相手をしておく」

戦士「っ!?」

戦士「余計な事を……!?」


     戦士は、そこで目の当たりにする。

     そこにいるハンターの見事な立ち回りを。


     振るっている武器は自分の持っている得物と同じ太刀……

     なのに

     切る、いなす、避ける。 完璧だ。

     それにクックの攻撃が全く当たらない。



戦士「…………」

狩人「そろそろ代われそうか? 戦士?」

戦士「!」

戦士「ま、待ってくれ!」つ(回復薬G)

狩人「ほいほい。 いつでもいいからな」

―――――――――――

娘「狩人さん! ありがとうございます!」

狩人「いや、俺はほとんど何もしてないよ」

戦士「…………」

戦士(……確かにクックへのダメージ、という事なら、その通りだ)

戦士(だけど……)

戦士(この人が居なかったら、俺は2乙はしている)

戦士(…………)


戦士「あの、狩人さん」

狩人「ん?」

戦士「あなたは……何者なんですか?」

狩人「……急に綺麗な言葉遣いになったな」

戦士「……これまでは失礼しました」

戦士「この言葉遣いのせいで、今まで舐められていたので……」

狩人「…………」

戦士「それで、あなたは何者なんですか?」

狩人「何者もなにも……ただのハンターだ」

狩人「戦士と同じ、モンスターを狩る、な」


戦士「ごまかしは結構です」

戦士「あの動きは上位ハンターでも なかなか出来るものじゃありませんよ」

戦士「もしかしたら、有名なハンターじゃないんですか?」

狩人「…………」

狩人「……昔は」

狩人「3乙ハンターだの ヘタレハンターだの、不名誉な二つ名で呼ばれていた」

娘「ええっ!?」

戦士「……そんな嘘をつかなくてもいいですよ」

狩人「嘘なんかじゃないさ」

狩人「村長に聞いてみるといい」

狩人「俺が昔、ギアノス5匹狩るのに何度も3乙していた事を知っている」


娘「し、信じられませんね……」

狩人「ははは。 あのなぁ……俺だって最初から強かったわけじゃないよ」

狩人「バカみたいに意地張って……」

狩人「くだらないこだわりで無駄足踏んだりして……」

狩人「そういう失敗を繰り返して、少しずつ強くなって行ったんだ」

娘「…………」

戦士「…………」

狩人「今の娘や戦士からしたら」

狩人「そりゃ今の俺は、化け物みたいに強く見えるかも知れない」

狩人「けど……」

狩人「俺からしたら羨ましいくらい、いいスタートを切っているよ」

娘「…………」

戦士「…………」


狩人「さ、そろそろ帰ろう」

狩人「戦士の実力もよく分かったしな」

戦士「っ!」///

狩人「娘はだいぶ弓の腕を上げたな?」

狩人「ちょっと驚いた」

娘「えへへ……」///

     ハハハ…



―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 墓地


狩人「…………」

     ゴッ… ギシシ ゴッ…

狩人「!」

狩人「ロートルさん……」

ロートル「よう」

     ファサ…(献花)

ロートル「…………」

狩人「…………」


ロートル「……あれからもう8年、か……」

狩人「早いですね……」

ロートル「ああ……もう8年だ」

ロートル「今でも思うよ……俺がもっと早く帰れていたら、とな」

狩人「全身にあれだけ酷い凍傷を負いながらの帰還じゃないですか」

狩人「それが原因で左足を切り落とす事になりましたし……」

狩人「ウカムルバスが凄すぎたんですよ」

ロートル「そうは言うがな……」

狩人「…………」

狩人「……俺たちは」

狩人「頑張りました」


ロートル「…………」

狩人「精一杯頑張って、この結果だったんですよ」

狩人「そう……思うしか……ないじゃないですか」

ロートル「…………」

ロートル「……かもしれん」

ロートル「済んでしまった事に対して、あの時こうしておけば、なんて……」

ロートル「自惚れかもしれない」

狩人「…………」

ロートル「ところであいつらはどうだ?」

狩人「二人共いいものを持ってますよ」


狩人「娘の方は、たぶん以前の俺と同じように字が読めていないと思いますが」

狩人「それは もう少し収入が安定してきた時に問い正します」

狩人「瞬発力や女の子と思えないほどの力を持っているので」

狩人「それを上手く引き出せば、強くなれると思います」

ロートル「ふむ……」

狩人「戦士の方は昨日見た限りですけど」

狩人「まずプライドを捨てられるかどうかだと思いますね」

狩人「それを乗り越えて、冷静に判断出来る様になれば」

狩人「その洞察力を活かして、戦いに上手く使える様になるでしょう」

ロートル「そうか……」

ロートル「今回のハンターは、上手く生き延びてくれるといいんだが」


狩人「ここ数年は……自分を生かせないまま散っていくハンターが多かったですね」

ロートル「自業自得……と言ってしまえば、それまでなんだが」

ロートル「俺たち、育てる側にも問題が多かったのかもしれん」

ロートル「人間を育てるのは、本当に難しい」 クスッ

狩人「反論できませんね」 クスッ

ロートル「ははは……」

ロートル「……ふもと村の復興もだいぶ進んだな」

狩人「そうですね……」

狩人「ギルドにあずけていた復興資金を」

狩人「ウカムルバス討伐の賞金に使ってしまっていて驚きましたけど」

狩人「近隣の村々に、資金の借入れを行うとは思いませんでした」

ロートル「村長は本当にタヌキだと思ったよ」 クスッ


ロートル「利息を払うのは大変だったが」

ロートル「それも返済計画通り、今年で終わった」

狩人「宿屋の復旧は早かったですね」

ロートル「ここは中継地点としていい場所だからな」

ロートル「宿泊地の確保で収入を増やす必要があった」

狩人「そういった金銭的な計画をよく思いつけますね……」

ロートル「だから言ったろう? 村長はタヌキだって」

     ハハハ…

狩人「…………」

ロートル「…………」


狩人「ロートルさん」

ロートル「ん?」

狩人「少女……ハンターになった理由で何か目的があるって言ってたんですけど」

狩人「知っていますか?」

ロートル「……残念ながら、知らないな」

狩人「そうですか……」

ロートル「…………」

ロートル「けどな」

狩人「え?」

ロートル「俺は……理由はどうあれ」

ロートル「ソロやベテラン、それにあの場にいた多くの人間に生かされたと思ってる」

狩人「…………」


ロートル「これが答えになっているか分からんが」

ロートル「俺はこれからもハンターと関わり、できるだけ彼らの命を散らさないよう」

ロートル「やれる限り、続けていく」

ロートル「自分の意思で、そう決めた」

狩人「…………」

ロートル「お前は……自分の目的を達成したな」

ロートル「共同ではあるが、ラオシャンロンを倒して……」

ロートル「おまけにその功績でG級ハンターにまでなった」

狩人「…………」

ロートル「少女のやりたかった事を探すってのもいいだろうが」

ロートル「俺としては、このまま後進の育成を手伝って……」

ロートル「……いや、それを決めるのはお前自身だな」


狩人「……決めるのは、俺自身……か」

狩人「…………」

狩人「昔……」

ロートル「ん?」

狩人「自分の生き方を自由に決められる様になりたいって思ってましたけど」

狩人「いざその立場になってみると……」

狩人「けっこう苦しいものですね」

ロートル「ふふっ。 そうとも」

ロートル「自由というのは、言葉で言うほど自由じゃないんだよ」

     ハハハ…

ロートル「……ああ、そうだ」

狩人「はい?」


ロートル「さっき村長から言われたんだが……」

ロートル「延び延びになっていた少女の……いや」

ロートル「村付きハンターの家を建築する事が決まったそうだ」

狩人「!」

狩人「そうですか……ウカムルバスのブレスで倒壊してたの」

狩人「ようやく直すんですね」

ロートル「直す、というより新築するって言う方が正しいと思うがな」

ロートル「これで新しいハンターが来れば」

ロートル「表面上ようやく ふもと村も元通り……というところだ」

狩人「…………」



―――――――――――


数週間後の夕方

ふもと村 集会所


娘「ふう……」

娘「砂漠のクエって、ジャリジャリになるからやだなぁ……」

戦士「その代わり近いんだし、我慢しろよ」

狩人「お疲れ様、娘、戦士」

娘「あ、狩人さん!」

戦士「お疲れ様です、狩人さん」

狩人「どうやら順調みたいだな」

戦士「……後は、ドドブランゴが来てくれればいいんですけど」

狩人「まあ焦りは禁物だ」

狩人「今は、自分の腕を磨くことに専念すればいい」


戦士「分かりました」

娘「それで、何か用ですか?」

狩人「大した事じゃないんだが……」

狩人「今日の夕飯、俺の家で食わないか?」

娘「!!」///

戦士「え……」

戦士「でも、お邪魔じゃ……」

娘「行きます! 絶対行きます!」

狩人「そうか。 言っとくけどロートルさんとか」

狩人「その他大勢も来る」

狩人「遠慮しないでくれ」


娘「は、はいっ!」///

戦士(……何で娘はこんなに積極的なんだ?)

戦士「そういう事なら、お邪魔します」

狩人「よし」

狩人「じゃ、用意ができたら広場まで来てくいれ」

狩人「待っているから」


―――――――――――


広場付近


娘「あ、戦士! 遅いぞー!」

戦士「……そうか?」

狩人「じゃ、行こうか」



―――――――――――


狩人の家


娘(ここが狩人さんのお家……)///ドキドキ

戦士「……同じ村付きハンターの家としては、大きいですね?」

狩人「ふふ……まあちょっと特権があってな」

狩人「ただいまー」

     ガチャ…

女「おかえり、狩人」

娘「」

戦士「あ、どうも……」


狩人「そういや、二人には話して無かったっけ」

狩人「彼女は俺の嫁さんの女、だよ」

娘(……嫁……さ……)ガーン…

戦士「そうなんですか」

戦士「初めまして。 ちょっと前にここへ来た村付きハンターの戦士です」

娘「……同じく、娘です……」

女「はーい、よろしくね。 戦士、娘ちゃん」

女「狩人の妻の女です」

狩人「さ、入ってくれ」


ロートル「お、帰ったか! 狩人!」

ロートル「悪いが先にやってるぞ」

狩人「どうぞ」 クスッ

村長「おお、この料理は旨いね!」

村長「初めて食べたよ」

狩人「おーい、板前アイルー、コックアイルー」

     タッ タッ タッ

板前アイルー「何ニャ? 旦那?」

コックアイルー「何か不味かったですかニャ?」

狩人「いや、今日はお前たちもここで一緒にどうかと思って」

板前アイルー「だ、旦那! いいんですかニャ!?」

コックアイルー「ご主人様っ……!!」

狩人「おーいいぞ。 どんどん食え!」


女「うふふ」

戦士(……こういう賑やかな席って苦手だ)

娘(……失恋したぁ)

     コン コン ガチャ…

ネーコ「こんばんは」

狩人「お、来たか、ネーコ」

ネーコ「狩人さん。 お久しぶりです」 クスッ

戦士「っ!?」///ドキッ

戦士(……か……可愛い……)///ドキドキ

娘「……戦士?」


戦士(か、狩人さん!)///

戦士(あれは、どなたなんですか!?)///

戦士(ぜひ紹介してください!)///

狩人「紹介も何も……彼女はキッチンアイルーやオトモアイルーを斡旋してくれる」

狩人「通称ネコ婆さんをやっている、ネーコだよ」

狩人「で、ネーコ。 こっちが新しく入ったハンターの戦士と娘だ」

ネーコ「よろしくお願いしますね、戦士さん、娘さん」 ニコッ

戦士「は、はいっ」///

娘「……よろしく」


ロートル「ではでは」

ロートル「みんな揃ったところで、乾杯と行きますか!」

村長「乾杯って……何に乾杯するんだね?」

ロートル「なんでもいいじゃないか」

ロートル「さしあたって、ふもと村の借金完済とかを祝うのは?」

村長「確かにめでたいけど……祝うって気には……」

女「……あのう」

ロートル「ん?」

女「それなら、私事なんですけど……」

女「私がお母さんになるってのは、祝ってもらえるかしら?」///


一同「!!」


狩人「ほ、本当か!? 女!!」

女「うん!」///


ロートル「はっはっはっ!!」

ロートル「これはめでたい!」

村長「おめでとう、女ちゃん!」

ネーコ「おめでとうございます」 ニコッ

板前アイルー「お内儀、おめでとうだニャ!」

コックアイルー「おめでとうございますニャ!」

戦士「おめでとうございます!」

娘「おめでとうございます」

狩人「ありがとう女!」

女「えへへ」///

ロートル「では、女ちゃんが新しい命を授かった事を祝して……」










     カンパーイ!!










※ここで『英雄の証』をBGMにすると、いいかもです。



―――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

―――――――――

―――





     数日後





雪山



     ゴアアアアアアアッ!


狩人「ドドブランゴ、そっちへ行ったぞ! 戦士!」

戦士「はいっ!」

     ズバッ!ズバッ!ズババッ!

     グアアッ…

娘「眠らせます!」つ(睡眠ビン)

狩人「いいタイミングだ!」




     あれからも俺は二人に付き添っている。

     ちょっと過保護かもしれないが

     正直、危なっかしくて仕方ない。



     ……昔のロートルさんも

     俺をこんな気持ちで見ていたのだろうか?

     見ていたんだろうな。




戦士「よし! 足を引きずり出した!」

戦士「もう少しだ!」

娘「良かったね♪」

娘「ね、帰ったら、何か暖かいもの食べに行かない?」

狩人「……!」

戦士「ああ、いいぜ」

戦士「久しぶりにファンゴのジューシィ焼き、食いたいな」

娘「いいね!」

娘「あたしは……」

狩人「おい」

戦士「え?」

娘「何ですか? 狩人さん?」










狩人「狩りの最中に飯の話をするな」










戦士「…………」

娘「……そ」

娘「そんなに怖い顔しなくても いいじゃないですか……」

狩人「いいか」

狩人「俺たちはモンスター相手に命のやり取りをしている」

狩人「狩りが終わらない内に飯の話なぞ、油断している証拠だ」

戦士「!」

娘「!」

狩人「肝に銘じておけ」

狩人「狩りの最中に飯の話をするな」

戦士「……すみません」

娘「……ごめんなさい」




     俺は、様々なハンターの生き様、死に様を見てきた。

     いや……ハンターだけでなく

     目立たない、縁の下の力持ちである

     様々な者の生き死にも見てきた。






     歳をとり、老いさばらえながらも

     最後までハンターで有り続けたハンター


     油断をし、モンスターを舐めてかかって死んだハンター

     それを目の当たりにし、恐怖から引退したハンター






     何かしら理由はあったのかもしれないが

     新人ハンターを何人も騙していたハンター


     俺と同じく、集会所が怖くて一人で強くなり

     やがて異名を取るようにまでなったハンター






     主人の敵(かたき)を、という動機からネコタクアイルーとなり

     自分の命と引き換えに俺を救ってくれたアイルー


     武器や防具を鍛え、俺を励ましてくれた加工屋さん等

     ハンターの生活を支えてくれている様々な人達




戦士「さあ……追い詰めたぞ」


     グルルル…

     ガアアアアアアアア!


戦士「そんな攻撃!」 回避!

戦士「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

     ズバッ!ズバッ!ズババッ!(気刃斬り)

     グアアアッ… ズズンッ

娘「よしっ!」

狩人「ああ。 終わったな」

狩人「…………」




     G級を目指し、血を吐くような努力をし

     それでも届くことなく……

     無念の引退をしたハンター






     ……そして












     何か、目的があり

     俺と切磋琢磨し、頑張ってきたが

     志半ばで、力尽きたハンター……














     でも












     彼女は

     俺の中で生きている。

     少女の考え方、生き方、戦いの組み立て方……

     残してくれたものは、計り知れない。



     俺は今でも『少女ならどうするだろうか?』

     と、考える時がある。




戦士「これでようやく上位ハンターか……」

戦士「長かった……」

娘「おめでとう、戦士!」

戦士「ありがとう、娘」

狩人「…………」

戦士「……?」

戦士「どうかしました? 狩人さん?」

狩人「……ん。 何でもない」

狩人「さあ、剥ぎ取りを済ませて帰るぞ」

戦士「はい!」

娘「はい!」




     きっと……

     ロートルさんも同じなのだろう。

     自分が生かされた意味。

     自分のために死んでいった人たちにどう答えるか。

     それを必死に考えて、今の結論に達したのだと思う。






     彼は、ハンターズギルドに意見書を提出し

     それだけでなく、ハンターというハンターに

     G級ランクアップ対象モンスターの問題解決を訴えた。



     その成果が、実を結び

     ギルドはG級ランクアップクエ受注の緩和を決め

     来年より施行される事となった。






     簡単に言うと、

     これまでG級ハンターのみにされていた古龍討伐を

     G級ランクアップ直前ハンターに回す事になったのだ。



     ……ロートルさんから言わせると

     まだまだ厳しい内容、との事だが

     歓迎はしているみたいだった。






     俺と女は5年前……

     ウカムルバス襲撃の3年後に結婚していた。



     襲撃で少女を亡くしたショックから なかなか立ち直れず

     女は、彼女なりのやり方で俺を励まし続けてくれた。

     そんな彼女に惚れて告白したけど

     実は3回断られている。






     いつも『弟としか思えない』と言われていたんだけど

     最後『やっと男になったね』と、俺としては

     何を言ってるのか さっぱりわからないOKをもらって結婚した。



     ……まあ、そんな訳で新しい家族も増える事になり

     背中を叩かれる毎日を送っている。






     俺は……この後

     どんな道を歩むのかは、まだわからない。

     家族のために頑張るのもいい。

     未知のモンスターとの対決もやってみたい気持ちもある。

     ロートルさんと同じように後進の育成をするのも悪くないと思う。

     少女が何をしたかったのか、知りたいが……

     それはいくら探しても見つからないだろうな。






     彼女の家族は……彼女の村をモンスターが襲った時に亡くなっていた。

     その後、親戚のおばさんに引き取られているが

     その人も既に他界している。


     …………


     少女なら、何をするだろう?

     モンスターへの復讐?

     村の復興?

     それとも……?

     きっと、俺の頭じゃ思いつきもしない事をやるつもりだったんだろうな……





―――――――――――








     数ヵ月後










ふもと村 村長宅


     ゴッ… ギシシ ゴッ…

村長「ロートルさん」

村長「お待ちしていました」

ロートル「村長。 聞かせたい話とは?」

村長「それなんですが」

村長「以前からロートルさんが言っていた」

村長「雪山の見張り小屋の建設費」

村長「ギルド側も負担する事を了承しましたよ」

ロートル「!」

ロートル「そうか……ついに首を縦に振ったか」


ロートル「提案当初は50年でたった2頭しか確認されていないモンスターだから」

ロートル「金を出すのを随分と渋っていたな……」

ロートル「だが」

村長「ええ……これで一歩前進ですね」

村長「施設の維持費とか、まだまだ問題も多いですけど」

ロートル「なに……そんなもの」

ロートル「あの戦いで命を落とした犠牲者の事を考えれば」

ロートル「屁でもないさ」

村長「そうですね……」

村長「特に何の損得勘定もなく、村の事を考えて」

村長「真っ先にあの化物を猟区へ誘導してくれた二人は」

村長「まさに英雄と呼ぶにふさわしい」


ロートル「英雄……か」

ロートル「きっと本人たちは、やめてくれって言う気がする」 クスッ

村長「ふふふ、そうですね」

村長「では、これからギルド側といろいろ交渉してきます」

ロートル「ああ、頼むぞ、村長」

村長「任せてください」

村長「では……」

     スタ スタ スタ…

ロートル(…………)

ロートル(……ソロ、ベテラン)

ロートル(ようやく……動き出したぞ)

ロートル(ウカムルバス撃退に向けて……!)


ふもと村 墓地


狩人「…………」

戦士「狩人さん」

狩人「ん?」

戦士「こんなところに居たんですか。 探しました」

狩人「悪い」

戦士「まあ、いいですけど。 新人の村付きハンターが来ましたよ」

狩人「そうか」

戦士「…………」

戦士「……少女?」

戦士(女性の名前だ……)


狩人「……いい名前だろう?」

戦士「!」

戦士「す、すみません! つい……!」

戦士「そ、そうですね。 いい名前だと思います」

狩人「…………」

戦士「……ハンター仲間だったんですか?」

狩人「…………」

狩人「いや」

戦士「え?」

狩人「彼女は……俺にとって」










狩人「伝説級ハンターさ」










     おしまい


という事で、これで終わりです。
以前からモンハン世界を使ったお話を書いてみたい、とは思っていたんですけど
当初は>>1の失敗を元にしたギャグ路線で進めるつもりが
なぜかこんなお話に……

しかもロートルをVガンのリーンホースみたく特攻して死なそうかなと思ってたのに
どうしてか代わりに少女が……ままならぬ物よのう。

とはいえ、ゲームでは勧善懲悪物よろしく
段々と強いモンスターが出てくるのですが
実際は、こんなふうに突発的に予期せぬ形で出現するのがリアルかなぁ
と思ってこんな形になりました。

このSSはP2Gをベースに考えてあるので、ウカムさん相当なボスキャラに。
睡眠弾15発くらいで寝るとか、PSP引っ張り出していろいろ確認しましたねぇ……
少女のガンナーパピメルS装備(無強化)でウカムに轢かれたら秘薬飲んでても即死でした。

最後に
未登場のモンスターを期待されてた方、まことにすみません……
狩人に共感してくれた方、少女の死を悼んでくれた方、乙や保守をしてくれた方
そして遅い投下を待ち、最後まで読んで、お付き合いしてくれて
本当にありがとうございました!

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