・厨二病全開でいきます。
・グロテスクな表現の練習をしつつ書きます。
・禁書のあの二人ではないです。
*
殺人鬼「またお前か」
人喰鬼「また誰か殺しに行くんでしょ? 付いて行っていいかな?」
殺人鬼「あー、答えんのもダリィ」
人喰鬼「それって、いいってことだよね!」
殺人鬼「あん」
人喰鬼「それでも人を殺すんだねー」
人喰鬼「今日の晩御飯は何かなー」
殺人鬼「晩飯にする気かよ」
人喰鬼「だってー人間って世界で一番美味しいものを食べている生き物なんだよ!」
殺人鬼「だからと言って、食用に調整されたものじゃないだろ」
人喰鬼「そだけどさ、一度食べたら病みつきになっちゃうよー」
殺人鬼「お前はクマか」
人喰鬼「くま?」
殺人鬼「野生のクマもそうだが、人間の味を知るとまた人間を食いたくなるんだとよ」
人喰鬼「へー物知りだね、鬼ぃちゃん」
殺人鬼「そりゃ、山ん中で実際に見たからな」
死体「………………」
人喰鬼「うまうま」もぐもぐ
殺人鬼「うへぇ、よく食えるな」
人喰鬼「バラバラにしたのは鬼ぃちゃんでしょ? あたしは生きている人間を殺せるほうがどうかしてると思う」
殺人鬼「は? 別に死体が肉塊になるのは見慣れてるっつーの。それよりも骨をバキボキ折りながら食ってるお前の顎がどうかしてるってーの」
人喰鬼「そんなことないよ。人間で一番硬い部分と柔らかい部分をちゃんと把握してるだけだよ」
殺人鬼「柔らかい骨は……肋骨か?」
人喰鬼「そうだよ。いつも呼吸して動いているからね。硬い部分はどこでしょう?」
殺人鬼「……頭の、額だろ」
人喰鬼「ぶっぶー。そこは二番です」
殺人鬼「じゃあ、どこだよ」
人喰鬼「一番硬いのは、歯、だよ。毎日物を噛みつぶすからね」
殺人鬼「そういや、一回ナイフ折られたこともあったな」
人喰鬼「え?」
殺人鬼「過去の話さ」
残骸「………………」
人喰鬼「見て見てー! ソーセージ!」
殺人鬼「え? 殺したのは女だったはずだが」
人喰鬼「え? 女の人だよ。でもソーセージだよ?」
殺人鬼「え? え? 女性は何人もバラしたけど、ソーセージなんて無かったぞ?」
人喰鬼「え? え? ソーセージって作るんじゃないの?」
殺人鬼「え? え? え? ソーセージって……腸の中にひき肉を入れるあれか? ひき肉どうやって作るんだよ」
人喰鬼「え? え? え? ひき肉は口の中で作って、腸の中に入れるんだよ。男の人ってソーセージみたいな内臓あったっけ?」
殺人鬼「……内臓っていうより、外臓?」
人喰鬼「……あー、あれか。タマタマはコリコリしてて美味しいよ」
残骸「………………」
人喰鬼「ごちそうさまでした」
殺人鬼「別に俺はお前のためにやったんじゃない」
人喰鬼「ツンデレかー! 鬼ぃちゃんには感謝してるけど、今まであの人を育ててくれた人にも感謝しないとでしょ」
殺人鬼「そいつは道徳だな。俺には無いモンだ」
人喰鬼「殺人は外道だってこと?」
殺人鬼「そうかもな、ただ俺にとっては趣味でしかない。hobby(趣味)なんだよ」
人喰鬼「holic(中毒)じゃなくて?」
殺人鬼「それはお前だろ」
人喰鬼「そんな事ないよーぅ。がまんできるもん。ただ血と内臓の匂いをかぐと我慢できないんだもん!」
殺人鬼「十分中毒だろ」
残骸「………………」
話は5スレずつ投下する
人喰鬼「口は災いの元だよねー」
殺人鬼「お前が言うか?」
人喰鬼「えー? むしろあたしは証拠隠滅してるんだよ?」
殺人鬼「俺一人でも証拠隠滅ぐらいできる」
人喰鬼「大人一人、身長百八十センチの八十キロをどうやってすてるのさ」
殺人鬼「生ゴミで捨てられるように分解する。人骨は砕いて粉にする」
人喰鬼「すごい手間がかかるでしょ」
殺人鬼「伊達に道具はそろってないぜ。コイツを見てみろ」
人喰鬼「ノコギリ?」
殺人鬼「正確にはパイプ用ノコギリだ。刃の細かさと強度と取り換え……どれをとっても最適だ」ぎこぎこ
人喰鬼「手伝おうか?」
殺人鬼「おう、頼む」
死体「………………」
殺人鬼「豆鉄砲でハトを撃つよ」
人喰鬼「え?」
殺人鬼「豆鉄砲で撃たれたような顔をするなよ」
人喰鬼「動物虐待いくない」
殺人鬼「ハトって美味いよ」
人喰鬼「マジで!?」
殺人鬼「殺したては鮮度が違う」
人喰鬼「わーい! 焼き鳥だぁぁあああああ!」
殺人鬼「お前のはそっちだろ」
死体「………………」
殺人鬼「マンモス肉だな」
人喰鬼「ふえ?」
殺人鬼「肩とひじを切り落とし、二の腕を食べるお前を見てそう思った」
人喰鬼「太ももの方がマイウー」
殺人鬼「古くね?」
人喰鬼「太ってる人って脂身が美味い」
殺人鬼「ガリガリに痩せてる人はまずいのか」
人喰鬼「あたしは人間食べられれば誰だっていいのさ。痩せてる人は骨が柔いから美味しい」
殺人鬼「結局、喰うのかよ」
人喰鬼「焼き鳥くれ」
死骸「…………」
殺人鬼「俺の焼き鳥が……」
人喰鬼「はむはむ」
殺人鬼「お前の胃袋はどんだけでかいんだよ」
人喰鬼「子供一人ぶんぐらい? あの食べ残しは持って帰るよ」
殺人鬼「そうだが、食べられない部分はどうするんだ?」
人喰鬼「内蔵の中身とか、髪の毛とか? ……トイレに流す」
殺人鬼「髪の毛は酸で溶かしてから捨てろ。風呂掃除とかに使う強力な酸だぞ」
人喰鬼「おー証拠隠滅ゥー」
殺人鬼「服と荷物と財布は俺がもらってく」
人喰鬼「……前から思ってたけど、服のセンスって」
殺人鬼「文句あっかよ」
残骸「………………」
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/49926/m0u/
殺人鬼「閲覧と観覧。似ているようで違うか?」
人喰鬼「普通は閲覧じゃない?」
殺人鬼「でも、リアリティというかさ、その場に『居て』『見て』欲しいって思ったわけよ」
人喰鬼「ただのミスじゃなかったのかー」
殺人鬼「いや、ただのミスだ」
人喰鬼「普通は間違えないよね」
殺人鬼「人の間違いってのは許されないものだよ。自分の間違いは許すのが人間だ」
人喰鬼「今日は大量だね」
5≪「………………」
11≪「………………」
語り部「口は災いの元。一日一回投下。あのスレは見ていた、続きが無いから作った」
殺人鬼「……今日も人を殺すか」
殺人鬼「誰にしようかな、誰でもいいってわけでもないし」
殺人鬼「別に人喰鬼に食わせるために殺してるわけでもないし」
殺人鬼「まったく、変なのに絡まれちまったもんだぜ。人喰鬼の人喰は証明できないけど、殺人鬼の殺人は探ればすぐ露見するからな……」
殺人鬼「あれ? 俺って弱み握られてる?」
殺人鬼「……あいつバラしちゃおうかな」
殺人鬼「どーしよっかなぁーん」
人喰鬼「おーい、鬼ぃちゃーん!」
殺人鬼「あ、見つかった」
人喰鬼「ねーねーどこ行くのー?」
殺人鬼「今日はお前を殺そうと思ってたところだ」
人喰鬼「あたし!?」
殺人鬼「だって、俺がお前のお守をする理由なんて無いじゃん。バラした方が俺得」
人喰鬼「ぐぬぬ」
殺人鬼「まあ、見逃してやってもいいよ。今までの良し身ってやつでな」
人喰鬼「……料金」
殺人鬼「あん? なに料金?」
人喰鬼「……友達料金払うから、あたしと……友達でいてください」
人喰鬼「月一万円払います。わたしと……友達に……ひぐっ……なってください……」
殺人鬼「斬新な命乞いだな」
人喰鬼「命乞いじゃないです……あたし、殺人鬼と一緒にいたい。もっといろんな人を食べたい」
殺人鬼「食欲メインですか」
人喰鬼「……お願いします」
殺人鬼「えー、めんどくさくなってきた」
人喰鬼「一万五千円で」
殺人鬼「金の問題じゃありません。それに、金には困ってないし」
人喰鬼「体で払います」
殺人鬼「ほう」
殺人鬼「それこそ、死んでもらうって事になるぜ?」
人喰鬼「……人間が食べられないのは辛い。生きてても楽しくない。殺人鬼と一緒にいるのは楽しいし、美味しい」
殺人鬼「だから死ぬって? やっぱ脳みそ狂ってんな。いや、人生そのものが狂ってるか」
人喰鬼「殺人鬼のいいようにするから、なんでもする! お願い…あたしと……。あたしを捨てないでよ……」
殺人鬼「俺はこの街をいつか出ていくんだぞ。それは明日か明後日か……お前はこの街を出ていけるのか」
人喰鬼「うん」
殺人鬼「お前、まだ親元で生活してるんだよな」
人喰鬼「施設だよ。親は食べた」
殺人鬼「お前の過去を聞いてるんじゃない。これからどうしたいのか聞いているんだ」
人喰鬼「……」
殺人鬼「今日は殺しは無しにする。明日同じ時間に来るから答えを聞かせろ」
人喰鬼「え? 今日は無しなの?」
殺人鬼「俺が居なくなれば、毎日そうだろ。それに、この街で行方不明者が十人を超えた。潮時なんだよ」
人喰鬼「……うん」
殺人鬼「これからの事、よく考えて答えを出せ。じゃないと俺はお前を殺さないといけない。正しい命乞いを考えておく事だな」
人喰鬼「あたしは……」
殺人鬼「甘ったれんなッ!」
人喰鬼「……ひっ」
殺人鬼「よく、考えておけよ。じゃあな」
人喰鬼「…………」
殺人鬼「殺人鬼は孤独で無ければならない」
殺人鬼「なぜなら、犯罪者だからか?」
殺人鬼「違う、他者に人間的な感情を求めてはいけない」
殺人鬼「殺したくなってしまうから」
殺人鬼「会う人全て、アンドロイド」
殺人鬼「細胞の塊が動いていると思ってはいけない」
殺人鬼「分解してみたいと思ってはいけない」
殺人鬼「それ以前に、人は殺してはいけない」
殺人鬼「最初から俺には常識ってものが足りていなかったわけだ」
人喰鬼「あたしは、人を食べたことがある」
人喰鬼「全ては血の一滴から始まり。無意識に爪をかじり、自らの皮膚を甘噛み……唾液がとまらず、歯にかかる力が高まる」
人喰鬼「ぷつり、と血があふれればそれを飲む。舌の上で味わう血は鉄の味ではなく、脳を叩き起こすような刺激に満ちた味」
人喰鬼「最初は吸血鬼なんだって思った」
人喰鬼「伝説上の生き物なら、ロマンチックだったけど……もっと醜悪な」
人喰鬼「あたしは人喰鬼だった」
人喰鬼「おじいちゃんが亡くなって、冷たくなった人間を始めて見てわかった」
人喰鬼「これが食べたい。こんな冷たくて気持ち悪いものが食べたいのだと、私は気付いた」
人喰鬼「それから、我慢できない時が来るようになった」
殺人鬼「殺人鬼に求められる事は人を殺し続けることにある」
殺人鬼「人を殺すのは最大の罪である。それは人と人との繋がりを完全に断絶するからである」
殺人鬼「故に、殺人鬼は存在を許されない。存在するだけで有害なのだから」
殺人鬼「しかし、だ」
殺人鬼「存在を否定されようが拒絶されようが、この殺人鬼を……殺人願望を止めることはできない」
殺人鬼「殺人鬼もまた、死によって終わりが来る。本質の殺人願望は本人でも止められない」
殺人鬼「故に殺人鬼は……今まで殺してきた人間より、最も残酷で悲惨な死に方をするべきである」
殺人鬼「今までの殺し方よりも……最悪な殺され方ってのが必要である」
死体「………………」
人喰鬼「あたしは人が食べたい」
人喰鬼「でも、人を殺せなかった……」
人喰鬼「人を殺すのが恐い。人が死んでしまうのが恐い」
人喰鬼「それなのに食べたい。人間を食べたい」
人喰鬼「こんなの変だよ……どうして? どうして食べたくなるの?」
人喰鬼「血を舐めたら不味いってどうして思わないの? 火の通って無い肉を食べてお腹こわさないの?」
人喰鬼「おかしい、頭も、体も……人間じゃない」
人喰鬼「あたしは……人間じゃないよ」
人喰鬼「どうして、なんで、何が間違ったからこうなったの!?」
人喰鬼「……教えてよ、殺人鬼」
死骸「………………」
殺人鬼「時間だ、あの子に会いに行こう」
人喰鬼「もうこんな時間……あの人に会わないと」
殺人鬼「俺は、あの子をどうしたいんだ? 答えは――
人喰鬼「あたしは鬼ぃちゃんに甘えてる。何が正しいの? 答えは――
(殺)人(喰)鬼「秘密を知られてはいけない。秘密を共有してはいけない」
殺人鬼「さて、殺されに行くか」
人喰鬼「決めた。鬼ぃちゃんを食べよう」
殺人鬼「来たな」
人喰鬼「……」
殺人鬼「どうやら、答えは見つかったようだな」
人喰鬼「鬼ぃちゃん、あたし……昨日何もたべてないんだ。お腹が空いて、どうにかなっちゃいそうだよ」
殺人鬼「……ふぅん」
人喰鬼「だから、我慢できない。鬼ぃちゃんを食べたい」
殺人鬼「俺を喰うってのか。今まで殺しのやり方を見てきたからって真似できると思ってんのか?」
人喰鬼「今まで、ずっと見てたけど。鬼ぃちゃんの腕も脚もお腹も。美味しそうだよね」ニコニコ
殺人鬼「やる気マンマンウーマンなのはいいが、どうやって殺す気だ?」
人喰鬼「……」スッ
殺人鬼「包丁ねぇ……今まで俺がそんなもの使ってきたか?」
人喰鬼「そういえば、使ってない」
殺人鬼「そうだろ? どうしてだか教えてやろうか」
人喰鬼「教えてもらう前に……殺す!」
殺人鬼「おーおー包丁振り回しおって……。そんなんじゃ当たらんぞ」
人喰鬼「このっ、このっ!」
殺人鬼「はっはっはっはっは」ヒョイヒョイ
殺人鬼「包丁ってのはな、刃を滑らせるから切れるんだ。突き刺すように作られてない上に、峰が存在する」
人喰鬼「たぁッ!」
殺人鬼「つまり、こういう事なんだよ」ガシ
人喰鬼「ほ、包丁を掴んだ!?」
殺人鬼「上手取り。ナイフのように両刃でないとこうして掴まれる事がある……使う道具にはしっかり油を塗っておけ」
人喰鬼「放せ……このっ……この!」ぐいぐい
殺人鬼「上手取りは片手で上から抑え込むように掴み、先端を人中線の延長から外す。これが基本だが、合気道を応用すれば」パッ
人喰鬼「うわっ!」どしん
殺人鬼「全力で引き抜こうとした瞬間に手を放せば、尻もちを付いて隙ができる。いい勉強になるだろ」
人喰鬼「くぅぅぅううう!」
殺人鬼「どうした? その程度でお前の殺意は抑えられてしまうのか?」
人喰鬼「油ね……今度から気を付けるよ。今はこれでいいよね」
殺人鬼「は?」
人喰鬼「れろー」ドロォ……。
殺人鬼「……ローションかよ」
人喰鬼「あたしの唾液はね、量が多くて密度が高いの。これなら掴めないでしょ」
殺人鬼「マジか、人喰鬼なだけはあるな」
人喰鬼「さっきは一本だったけど、今度は二本でどうかしら!」
殺人鬼「おう、それはいい。だがな、片手剣の極意を知らないのに二刀流なんて無理だぜ」
人喰鬼「鬼ぃちゃんもナイフ抜きなよ……。あたし、本気で殺そうっておもってるんだからね!」
殺人鬼「まったく……」
人喰鬼「死んじゃえ!」
殺人鬼「じゃんけん、グー!」ゴスッ
人喰鬼「~~~~~ッッッ!」
殺人鬼「両手使うと人中線ががら空きになるんだよ。それ以前に、人中線ってわかるか? 鼻の下のミゾな。ここは人間の急所だぞ」
人喰鬼「……い、痛い」
殺人鬼「それは良かった痛みがわかるなら、よく味わっておけ」
人喰鬼「わはは、血が……美味しい」
殺人鬼「頭ぶっとんでんな」
人喰鬼「ふう、ふう……ふうッ!」
殺人鬼「おっと」
人喰鬼「ここだぁ!」
殺人鬼(包丁の投てき? いや、ちがう!)
人喰鬼「がう!」がぶッ
殺人鬼「くっ!」
人喰鬼「ぐるるるるっるるる――」
殺人鬼「おいおい……マジかよ……」
殺人鬼「だがな、脇腹に噛みついたってことは……」
殺人鬼「小柄なお前じゃ、こういう事をされちまうぞっ!」
殺人鬼は人喰鬼服を掴み、持ち上げる。
殺人鬼「せぇぇぇええええい!」
そのまま電柱の横を走り抜ける。
脇に噛みついている人喰鬼は電柱にぶつかり、踏みつぶされた犬のような声を出して殺人鬼から離れた。
殺人鬼「いって……くっそ……」
人喰鬼「ぶぶがかぁ……くがっ……ぐぐぐうううううう……」
地面に丸くなって血を吐く人喰鬼。殺人鬼の肉片がぽろりと転がる。
殺人鬼「噛みつくってのは……秘儀なんだからよぉ、隠しておけよな……」
人喰鬼「……ぐう」
殺人鬼「どうした、そんなもんか? そんなんじゃ……殺人鬼一人殺せないぜ……」
人喰鬼「げほ……殺人鬼のくせに……人喰鬼一人殺せないんですか?」
殺人鬼「余裕過ぎ、かな」
人喰鬼「私、負けません。絶対に……私が欲しいのは……」
殺人鬼「お前の願望なんざ聞いてねぇ。しっぽ巻いて逃げるなら今のうちだぜぇ~」
人喰鬼「あなたは、人喰をやめろって言いたいんですか」
殺人鬼「……」
人喰鬼「なら、殺人鬼が殺人をやめてください」
殺人鬼「お前は人喰をやめることができるのかよ」
人喰鬼「それは……できますよ」
殺人鬼「ならやめろ」
人喰鬼「殺人鬼が殺人を我慢すれば、人喰鬼は人喰をがまんできます」
人喰鬼「お互い、我慢しあうんですよ……」
殺人鬼「ははは、ろまんちっくですこと……俺は、我慢なんてしないけどな」
人喰鬼「その強さがあったから、今まで殺人鬼だったんですよね……」
殺人鬼「殺人に理由なんて必要ない。殺したいから殺すだけだ」
人喰鬼「私も、食べたいから食べます」
人喰鬼「理由なんてそれだけです。背徳も業もありません」
殺人鬼「じゃあ、俺らは出会うべきじゃなかったんだよ……食いつぶすしか能のない俺らはな」
人喰鬼「……」
殺人鬼「さて、俺もいいかげん本気出すぜ」
人喰鬼「どうぞ、ご自由に」
殺人鬼「俺の、最高の獲物は……こいつだ」
物陰に隠しておいた一振りの武器。
日本刀を殺人鬼は引き抜いた。
殺人鬼「日本刀っつーのはよぉ……ド素人が使ってもよく切れるって知ってるか?」
殺人鬼「なんてったって、人を切るために軟鉄と硬鉄の二種類を一本の刀にしている。世界一斬撃の衝撃を受け流す鉄剣だぜ?」
殺人鬼「何百年も昔の技術とは信じられないオーバーテクノロジーだ。鉄が酸素を吸収して硬くなる事を理解していたんだからな……」
殺人鬼「最高峰の刀は、刃の上に紙を落としただけで切れる。それ故に、武者は分厚い鎧を着なければならなかった」
殺人鬼「すげぇだろ?」
人喰鬼「蘊蓄なんて聞きたくない」
殺人鬼「まあ、せっかくなんだから見ろよな」
殺人鬼は、人喰鬼の落とした包丁二つを拾い上げ、空に投げた。
殺人鬼「日本刀っつーのはよぉ……ド素人が使ってもよく切れるって知ってるか?」
殺人鬼「なんてったって、人を切るために軟鉄と硬鉄の二種類を一本の刀にしている。世界一斬撃の衝撃を受け流す鉄剣だぜ?」
殺人鬼「何百年も昔の技術とは信じられないオーバーテクノロジーだ。鉄が酸素を吸収して硬くなる事を理解していたんだからな……」
殺人鬼「最高峰の刀は、刃の上に紙を落としただけで切れる。それ故に、武者は分厚い鎧を着なければならなかった」
殺人鬼「すげぇだろ?」
人喰鬼「蘊蓄なんて聞きたくない」
殺人鬼「まあ、せっかくなんだから見ろよな」
殺人鬼は、人喰鬼の落とした包丁二つを拾い上げ、空に投げた。
人喰鬼「でも殺人鬼はナイフばっかり使ってたじゃない」
殺人鬼「まあね、刀にも使用限度ってもんがあるから……ぶっ殺してぇって思った人間にしか使わない」
人喰鬼「私は死ぬ気ないよ」
殺人鬼「俺は殺す気だ、本気で来ないと死んじゃうぜぇ!」
人喰鬼「……う、うう、ううううぁぁぁぁあああああああああああああ!」
殺人鬼「特攻なんて甘い考えじゃ駄目だ」蹴り。
人喰鬼「うぐ」
殺人鬼「お前の本気、いや本質だな。それが見たい。考えろ……お前は何ができる」
殺人鬼は抜刀の構えをした。
殺人鬼「次で殺す。来いよ……殺してやるからさ」
人喰鬼「……」
殺人鬼(なんか言えよ……。このままじゃ、本当に首ハネで終わっちまうぞ……)
人喰鬼「なる、ほど……理解した」
殺人鬼「そうかい?」
人喰鬼「そっか、殺人鬼は気づいていたね」ニコ
殺人鬼「は、鼻っからな……」(何の話だ……?)
人喰鬼「普通じゃ生き残れない。何か特別じゃないと、いや、何が特別なのか。私の本質はどこにあるのか」
人喰鬼「これで終わりにしましょう」
殺人鬼「来い」
人喰鬼「いいえ、貴方が来てください」
殺人鬼「移動しながら抜刀はできないとでも思ったか? 移動の加速、抜刀の加速。二つ合せて避けられるのかよッ!」
シュン――
殺人鬼「……」
人喰鬼「……」
殺人鬼「やればできるじゃねーかよ」
人喰鬼「本気ってこういうことなんだね」
殺人鬼は首を狙って、抜刀した。
人喰鬼はそれを分かった上で少ししゃがみ、
歯で刃(ヤイバ)を受け止めた。
その一瞬で刃を折り、
斬撃の終わった、隙だらけの殺人鬼に刃を突きさした。
???「あー今日は曇りでいい天気ー」
???「久しぶりに傘なしで歩けるわ」
???「こうやって、傘が無い時に限って……雨がふるんだけどね」
???「うー。やっぱり降りそう……どこかコンビニで傘買わないと。この際安いのでもいいわ」
???「近道しよ」
???「あれ? この匂い……」
???「血の匂いだわ」
???「雨の匂いがどんどん強くなってくる。匂いの元まで行けるかしら」
???「……こっちね」
???「男と、女の子……血の匂いは男の方ね」
???「救急車とか呼んだ方がいいかしら。うーん、携帯電話なんて普及しなければ、電話ボックスがそこらにあったのに」
???「あれって……日本刀? 本物よね……サムライって今の時代にもいるものなのかしら」
???「いや、影に隠れて行動するならニンジャーよねー」
???「女の子は何をしているのかしら……泣いているよりも……する事があるんじゃないの?」
???「え……うそ……あの子、血を……飲んでる?」
???「ふーん」
???「まさか、ね」
???「どうしようかしら……これはもしかして運命なのかも」
???「雲行きが怪しい。早くあの子に教えないと」
???「雨が降るわよ、って」
人喰鬼「……鬼ぃちゃん……」
殺人鬼「」
人喰鬼「美味しいよ、すごく、美味しい……」
人喰鬼「血だけでも、こんなに美味しいの、初めて。お肉は、どうなんだろうね」
???「あなた、そろそろ引き揚げた方がいいわよ」
人喰鬼「だぁれ……あたしの、ごはんを邪魔するのは……」
???「食事中、失礼するわ。夢中になるのはわかるけど、雨が降りそうよ」
人喰鬼「雨なんてどうでもいいじゃない」
???「なに言ってるのよ」
吸血鬼「吸血鬼が雨に濡れる訳にいかないでしょ」
人喰鬼「……」
吸血鬼「……あれ?」
人喰鬼「見たな」
人喰鬼「おまえも……」
人喰鬼「食べる、食べてやる……」
吸血鬼「あなた、吸血鬼じゃないのね」
人喰鬼「吸血鬼? あはは、血をすするだけならまだよかったよね」
人喰鬼「私は、人間そのものを食べる……人喰鬼だ」
人喰鬼「お前も……喰ってやる」
吸血鬼「そう、なるほどね」
吸血鬼「あなたが名乗ったのなら、私も名乗らないとね」
吸血鬼「私は吸血鬼。人間の血を吸い、下僕とし、久遠を生きる者」
吸血鬼「人間を恥ずかしめ、喰らい、跡形も無く蹂躙する『屍喰い』(グール)は駆逐に値する」
吸血鬼「……そういう決まりなんだけどねー」
人喰鬼「なによ、逃げるなら……逃がしてもいいわよ」
吸血鬼「あのさーあんた……なんで泣いているか分かってるの?」
人喰鬼「私は、泣いてないよ」
吸血鬼「その後ろに倒れている人、好きだったのかしら?」
人喰鬼「あなたには関係の無い話」
吸血鬼「見たところ、後腐れなく殺し合いをするつもりだったんでしょうね……」
人喰鬼「……」
吸血鬼「ねえ、私と取引しない?」
人喰鬼「取引……?」
吸血鬼「手短に言うなら、出血多量によるショック死をする原因は脳に酸素が行かず、脳細胞が死ぬ事にある。それから各器官の停止、細胞の破損から腐敗になる」
人喰鬼「だから、何」
吸血鬼「まだ死んだばかりの体なら、私の吸血と輸血で……彼を生き返らせることができるわ」
人喰鬼「!」
吸血鬼「もちろん、あなたが彼を食べたくてしょうがないなら構わない。時間が過ぎれば過ぎるほど、蘇生の見込みは落ち込んでいく」
吸血鬼「迷いなんて聞きたくないわ。すぐに答えを頂戴」
人喰鬼「……うぅ、待って。あなたのメリットは」
吸血鬼「冷静な判断ね。私は、少し人間の下僕が欲しいの。あなたがそうなってくれるなら。彼を助けてあげる」
人喰鬼「わかった。私の命と引き換えに、彼を……助けて」
吸血鬼「後悔、しないでね」
人喰鬼「……私は、殺人鬼を殺した事を後悔しているの。これ以上の後悔なんて……もう、絶対したくない」
……ッ! ジョジョリオン、面白いッ!
――51
殺人鬼「……」
師匠「殺人鬼」
殺人鬼「師匠……? ああ、そうか。お久しぶりです。ようやく死ねました」
師匠「私の教えた事を覚えているか」
殺人鬼「もちろんです」
殺人鬼「人間は、一度しか殺す事ができない。しかし、人間は何度でも人を殺す事ができる」
殺人鬼「人が死ねるのは一回でも、人を殺す事は何回でも、何度でもできる」
殺人鬼「生きるということは、他者を殺す事」
殺人鬼「その為に、俺は……いや、僕はあなたの弟子になった」
師匠「そうだ」
殺人鬼「だから、僕は死ぬときに死ねました」
殺人鬼「ぼく、がんばったよ」
殺人鬼「おとーさん」
殺人鬼「……はッ!」
殺人鬼「ゆ、夢?」
殺人鬼「いや、死んだはず。ぼ……俺は、死んだはずだ!」
殺人鬼「傷はふさがってる……。跡もなにも……無い?」
吸血鬼「あら、起きたようね殺人鬼さん」
殺人鬼「ッ! 誰だテメェ」
吸血鬼「一言で言えば命の恩人二号かな」
殺人鬼「……一号は誰だ」
吸血鬼「あんたの隣で寝てる、人喰鬼ちゃんよ」
人喰鬼「すぅ…すぅ……」
殺人鬼「ち、舐められたもんだな」
吸血鬼「確かに、ペロペロしてたわね」
殺人鬼「……」
吸血鬼「あなた達が何をしていたか、全部聞いたわ」
吸血鬼「殺人、人喰、隠ぺい、強奪。今の時代珍しいわね」
殺人鬼「お前も無かった事にてやろうか」
吸血鬼「どんな道具を使って?」
殺人鬼「……ベッドのシーツ一枚で十分だ」
吸血鬼「んふ、やってみなさいよ」
*
殺人鬼「……」
吸血鬼「く……かぁっ……」
殺人鬼「悪いが死んでもらう。死体はベットの下で寝てもらうことになるがな」
吸血鬼「」がく
殺人鬼「ふん。命の恩人なんて損な役回り御苦労さま」
吸血鬼「……うふふ」
殺人鬼「ッ!?」
吸血鬼「そんな程度じゃ、死ねないわぁ……。もっと、痛烈な死を見せてよ」
殺人鬼「んなアホな。確実に落としたはず」
吸血鬼「ねえ、今度はこれを使ってみてよ」
吸血鬼はクローゼットの中から、『日本刀』を取り出した。
殺人鬼「……」
吸血鬼「もちろん、直してあるわよ」
殺人鬼「あー? 本当かよ」
吸血鬼「確認してみたら?」
殺人鬼「……」
抜刀。
殺人鬼「ああ、ダメだこれ」
吸血鬼「え? そんなはずないわ。完全に直したはずよ!」
殺人鬼「ほら見てみろ」
納刀
殺人鬼「本当に刀身が真っすぐなら」
殺人鬼は鞘を持ち、柄を床に向けた。
刀は、刀身の半分だけ露出すると止った。
殺人鬼「重力に引っ張られ、刀は最後まで抜けたはずだ」
吸血鬼「曲がってるってこと……ね」
殺人鬼「こいつは日本刀として価値はない」
殺人鬼は日本刀を投げた。
――ガシャ
吸血鬼「喜んでもらえると思ったのに」
殺人鬼「寝起きなんだ、コーヒーが飲みたいんだが」
吸血鬼「そうね、いつまでも寝室じゃ人喰鬼ちゃんが起きちゃうわね。こっちにいらっしゃい」
吸血鬼は、殺人鬼に背中を向けた。殺人鬼は、音を消して、刀を取り、背後から切りつけた。
丁寧な、音が鳴らない斬撃。悲鳴を上げないよう咽喉を切り、暴れないように腱を切り、
人間型、血のスプリンクラーを一瞬で作り上げた。
殺人鬼「ほらみろ、刃が体を通った時に違和感がある」
吸血鬼「……」
殺人鬼「うーん、変なふうに繋げたなコレ。ま、もともと折れた刀をつなげようって考えから間違ってる。人間の骨折じゃあるまいし」
吸血鬼「……」グググ
殺人鬼「ッ! 今、コイツ動かなかったか?」
吸血鬼「……」
殺人鬼「いや、おかしい。血液が、止ってやがる……あと三分は血が止らないはずなのに……さ、再生している?」
吸血鬼「……ごぽ、げほ……あーあーあー」
殺人鬼「!」
吸血鬼「あはははは、びっくりしたー。痛みってアドレナリンが出るから誤魔化す事ができるのに、それが出る前にこんなに串刺しになったの初めて」
殺人鬼「……そんな馬鹿な」
吸血鬼「バラバラにしたらもう少し回復に時間かかったかな。ねえ、もう一回やってみてよ!」
殺人鬼「なんなんだ、お前。人間は、一度しか死ぬ事は無い。殺す事を何回もできても……死ぬ事は……たった一度しかできないはず! 俺は……お前を殺した」
吸血鬼「あの程度じゃ死ななかっただけよ。私はね、吸血鬼。伝説の空想の寓話の……生き残り。殺人鬼さんは……私を殺せるかしら?」
殺人鬼「吸血鬼だぁ? 太陽か、聖水か、十字架か……そんなもんで死んで死ぬあれか?」
吸血鬼「ごめんなさい、私は本当に純粋な吸血鬼なの。血を吸って、血になって、血で血を生み出す。あなたは血液を切ることはできるかしら?」
殺人鬼「殺人鬼は斬殺だけが取り柄じゃないぜ……」
吸血鬼「余裕ね。怖くないの?」
殺人鬼「お前が吸血鬼だろうと宇宙人だろうと、俺は殺す事しかできない。お前を殺す事しかな……」
吸血鬼「その曲がった日本刀で? 怖いわぁ……でも、楽しい」
殺人鬼「……」
吸血鬼「私はね、私を殺せる人を探してたの」
殺人鬼「死にたいなら勝手に死ね。他人を巻き込むな。人を死に巻き込んでいいのは殺人鬼だけでい
吸血鬼「私も巻き込んでもらいたいわ。太陽で焼かれ死ぬ体質なら自殺してたけど」
殺人鬼「血液がなんたらって言ってたなら……四肢をバラバラにして冷凍庫に突っ込んでやるよ」
吸血鬼「残念ながら、血液でありながら気体にも個体にもならないの。凍らせる事も、蒸発させることもできない体よ?」
殺人鬼「面白い」
殺人鬼(やべぇ……、いきなりアテが外れちまった)
殺人鬼(燃やせない、凍らない。血液が本体みたいだが……)
殺人鬼「だが、吸血鬼なら吸血して命を繋ぎとめるんだろ。死ぬまでコンクリ入りのドラム缶の中にいれとけば問題ないッ!」
吸血鬼「さっきは、不意打ちだったから切られたけど」
シュッ――
殺人鬼「!」
吸血鬼「真正面から切られたら、切られた部分なんてすぐに繋がっちゃうよ?」
殺人鬼「なんだよぉぉおおおおお! くっそぉぉぉおおおおお!!」
吸血鬼「人間は、銃という道具で鉄の玉を飛ばすばかりで、剣を持つ事を忘れてしまった。貴方なら私を楽しませてくれると思ったのに……残念だわ」
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません