「目をつぶっている間だけ、女の子になる能力」 (5)

世の中にはいくつか不思議な事がある。
人がまとめてオカルトとか呼んでるそれらは、残念ながら現在の言葉では説明のできないものらしい。
きっと幽霊が成分解析される時代になってようやく、僕の身体に何が起こっているのかも説明がつくのだろう。

目をつぶっている間だけ、僕は女の子になる。

頭の痛くなる話だ。
自分がもし女の子だったら、なんて下らない妄想をしたことのある童貞諸君。
羨むなかれ。実際はこの上なく迷惑な話なんだ、これが。

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目を瞑って10秒くらい経つと、身体に変化が訪れる。
両棟が膨らんできて、足や腕はほっそりして、身体の中心から大切なものが消えていく。
触ってみると身体はむくんでいるというか、柔らかくなっているんだ。
もちろんおっぱいもある。揉める。
これで今日から僕も女の子!となればまだ救いようがあるのだろうが、実際は目を瞑っている間にしか効果がない。
この縛りがこの上なく厄介なのだ。

まず授業中に居眠りなんかしようものなら一巻の終わりだし、朝もきちんと起きなければ、両親や妹がボクの布団にくるまった女の子を見つけてしまう。
眠っている間は女の子になってるからその辺よろしくね、なんて、17年間僕を男として育ててくれた父母に言えるはずもなく。
おかげで僕は今も先も、規則正しい生活を余儀なくされている。
夜更かしなんて怖すぎて出来ないからね。

話のついでに一つ付け加えておこう。
童貞諸君の妄想を、かくいう僕も試してみた事があった。
それすなわち『女の子の状態でのオナニー』なり。
おっぱいを揉むなんてちゃちな行為とはレベルが違う。
最初はすごく抵抗があったんだけど、その日は夏休みの後半で、宿題もだいたいやったし遊ぶ予定もないし、とにかくすることがなかったのとやたら蒸し暑かったのとで、何か変なテンションになっちゃったんだろうね。
やっちまいました。へへ。

結論から言うと気持ち悪くて吐きそうになった。
目を瞑っていたからまだ良かったが、『股間をいじくりながら喘いでいる自分』というものにありえないほどの嫌悪感を覚えた。
感じたかなんて覚えてない。思い出したくもないし。
他でもない自分自身にえずきながら、目を開けた僕は裸の自分自身と向き合う羽目になった。
丁度目の前に姿見があってね。
「僕何やってんだろう」「お父さんお母さんごめんなさい」とかそんな思いが頭をぐるぐるした。
あれほど惨めな夏休みはもうないと思う。

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