武内P「……ウサミンロボ?」 (81)

 
【モバマスSS】です。



 天才アイドル池袋晶葉によって開発されたウサミンバックダンサー、ウサちゃんロボ。
 
 そしてさらにウサミン科学によって強化改造されたロボを、人々はウサミンロボと呼んだ!


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「おはようございます」

 いつものように出勤した武内Pは、いつものように受付に挨拶するとエレベータに乗り込んだ。

「……」

 きゅらきゅら、ごとん

 武内Pの後ろから、なにかがエレベータに乗ってくる。

 キャタピラに乗った円錐台の身体と四角い頭、全体的にピンク色の……人形? ロボット?

 四角い頭の下側に「VIDEO」と書かれている。てっぺんにはアンテナのような耳のような物が。

 いや、よく見るとこれは、昔売られていた「テレビデオ」では?


 そして、テレビデオのモニター部分には顔があるではないか。

 さらに、背中には小さなリュックを背負っている。

「……」

 ロボはじっと自分を見ている。

「……」

 見られている。

 ロボは首を傾げた。


「……こ、こんにちは」

 思わず声をかける武内P。

 うさ

 ロボットがお辞儀する。

「!?」

 動き出すエレベータ。

 ロボは、エレベータ内に貼られたポスターを観察している。時折、首を傾げながら。

 うーさー


 武内Pは考える。

 何かの、イベントで使うロボットだろうか?

 確か、池袋晶葉というアイドルがロボットに詳しいはずだが……

 箱が目的階で止まると、内心ほっとしながら武内Pはエレベータを降りた。

 きゅらきゅら

 ロボットは付いてくる。

「!!」


 やや早足になる武内P。

 きゅらきゅらきゅら

 武内Pはさっさとオフィスのドアを開けると、即座に入り込んでそのまま後ろ手にドアを閉める。

「あら、おはようございます。どうしたんですか、そんなに慌てて」

 オフィスには千川ちひろの姿があった。

「あ、いや、……あ、おはようございます、千川さん」

「ふふっ、珍しいですね、プロデューサーさんがそんなに慌てるなんて」

「そうですか? お恥ずかしいところをお目にかけました」


 こんこん

 控えめなノックの音。

「あら? こんな時間に誰かしら?」

 ドアに近づくちひろを止める武内P。

「ちょっと待ってください」

「どうしたんですか?」

「実は、怪しいものがいるようで」

「怪しい……もの? 人でなくて?」


「ピンク色の……ロボットです」

「」

「あの……」

「あ、はい。信じます。信じますよ、プロデューサー」

「いや、本当に……」

「はい、大丈夫ですよ、信じますから、ええ、大丈夫ですとも」

 こんこん

「モニターです、机の横のモニターを見てください」


 オフィスのドアの前には万が一のためのカメラが取り付けられていて、モニターに映されているのだ。

「ええ、はい、落ち着いてください。プロデューサー。モニターですね? はい、モニターを見ますからね」

 モニターに目をやったちひろの動きが止まる。

「何が映っていますか、千川さん」

「ピンク色のロボットが」

「……そういうことです」

「本当に本当だったんですね」

「嘘だと思っていたんですか?」


「いえ、幻覚の類いかと」

「幻覚ではありません」

「……でもこれ、見覚えありますよ」

「え? ではやはり、イベント用の?」

「……確か……ウサちゃんロボ? 池袋晶葉ちゃんの作ったロボですよ」

「はあ……やっぱりそうでしたか」

 人騒がせな話だ、武内Pは思った。

 しかしそれにしても、勝手にエレベータに乗って自分に付いてきて、さらにドアをノックまでするとは。
 最近のロボットというのは進んでいる。


「知りませんよ」

 一分後、晶葉はちひろからの電話にそう答えていた。

「ウサちゃんロボは今、未完成で私の机の横にあるし、勝手に動いたりしませんよ」

 うさ、うさ

 漏れ聞こえる晶葉の声に反応しているのか、とりあえず部屋に入れたロボがくるくる回り始めた。

「第一、勝手にエレベータに乗ったり、ドアをノックしたり、そんなの私には作れませんよ」

 電話を終え、ちひろはロボを見下ろした。横で聞いていた武内Pも、同じようにロボを見下ろしている。


「一体……このロボは何なんでしょう?」

「さあ?」

 うさ?

 ロボは、純な瞳をまっすぐ投げて二人を見上げていた。

 武内Pは小さな声でううむと唸ると、自分の首筋の後ろを揉むようにつかんで、言った。

「……実は一つ、さっきから気になっていることがあるのですが」

「なんですか?」


「このロボットが、こちらの言葉を理解しているような気がするんです」

「ロボットが、ですか?」

「荒唐無稽なことを言っていることは自覚していますが」

「言われてみれば、さっきの電話の時も晶葉ちゃんの声に反応していたような……」

「試してみましょう」

 武内Pはロボの前に膝をつくようにして視線を合わせる。

「言葉がわかるのなら、右腕を挙げてください」


 うさ

 ロボの右腕が挙がる。

「下ろしてください」

 うさ

「……もう一度尋ねます、言葉がわかるのなら、〝左腕〟を挙げてください」

 うさ

 左腕が上がると、ちひろが妙なうめきを漏らす。驚いているのだ。


「……わかっているようですね」

「凄い、ロボットですね」

「念のため聞きますが、346にロボット開発部門などはありませんでしたよね」

 武内Pの問いに、ちひろはクビを横に振る。

「ありません。少なくとも私は聞いたことありません」

「人間の言葉を理解して動くことの出来るロボット……」

「悪い子には、見えませんけどね。可愛らしいですし」

「それに関しては同意ですが」


 武内Pの机の上のインターコムが鳴った。

「はい、こちら……ああ、池袋さん。はい、わかりました。上がってきていただけますか?」

「晶葉ちゃん、来たんですか?」

「はい。安部さんも一緒だそうです」

 うさ! うさ!

 ロボの身体がくるくる回り始めた。両手を挙げて、胴体ごとくるくる回っているのだ。

「これは……喜んでいるんでしょうか?」


「嬉しそうに見えますね」

 うさっ! うさっ!

 武内Pはロボの前にしゃがみ込んで再び視線を合わせる。

「君は、池袋晶葉さんを知っているのですか」

 うさっ!

「安部菜々さんを知っているのですか?」

 うさっ!


「池袋さんに会うのが嬉しいのですか?」

 うさっ!

「安部さんに会うのが嬉しいのですか?」

 うさっ!

「二人とも嬉しいのですか?」

 うさっうさっ!!


「貴方は、池袋晶葉が作ったロボットなのですか?」

 ……うさ?

「安部菜々が作ったロボットなのですか?」

 ……うさ?

 確実に口調が変わっている。

「プロデューサーさん? これってどういうことなんでしょうね」

「……わかりませんが、はっきりとした否定でもないようですね」


 今度はちひろがロボに視線を合わせる。

「ロボちゃんは私を知ってますか?」

 うさっ!

「プロデューサーさんは?」

 うさ?

 なぜか、これが完全な否定だと言うことがわかってしまう。 

 知らないのについてきたのですか貴方は、と言いそうになる武内P。と、そのとき。


「失礼します、池袋です。ウサミンを一緒に連れてきたんですけど」

「失礼しまーす、安部です。晶葉ちゃんに呼ばれたんですけれど、一体……」

 うさ! うさっ!

 きゅらきゅらきゅら、とキャタピラを響かせ、ロボが二人へと向かった。

 晶葉は驚き、菜々はニッコリと笑う。

「ウサちゃんロボ?」

「ロボ? 晶葉ちゃん、作ってくれたんですね!」


「い、いや、待ってくれ、ウサミン。私はまだ完成させていないぞ」

「でも、このデザインは」

「確かに、ウサミンにもらったデザインイメージそのままだが」

 うさーっ!

 握手を求めるように伸ばされたロボの手を菜々は優しくつかむ。

「ロボちゃん、賢いんですね」

「自走して、握手するロボットだって?」

 うさっ!


 晶葉にも手を振るロボ。

「ちひろさん、プロデューサー、これって?」

「……とりあえず、落ち着いて話しましょう、池袋さん、安部さん」

 武内Pは来客用に置かれた椅子を示し、四人はひとまず移動する。

「まずは……一番最初からお話をしたほうがいいでしょうね」

 武内Pが口を開くと、ことり、と四つのお茶が置かれる。お茶請けのダンゴも付いている。

「あ、どうも……」

 そこで四人の視線が一つ所に集中した。

 うさ?


 おぼんを持ったロボである。

「え、今……お茶を煎れたのは」

「もしかして、ロボ?」

「晶葉ちゃん、凄かったんですね」

「いや待て、私はこんな……いや、私どころか、こんなロボットの話なんて聞いたことがないぞ」

 武内Pはあることに気づく。

「……ロボくん、もう一人来るかも知れないのですが、追加で一人分用意できますか?」

 うさっ!


 きゅらきゅらきゅら

 ロボは急須にポットのお湯を入れる。テーブル上なので身長は届かないのだが、腕が伸びていた。

「プロデューサー? 何故、新しいお茶を?」

「このダンゴです。ダンゴなんて、この部屋にはありません」

 その言葉に驚いた三人は、武内Pの視線を追い、ロボに注目する。

「あ」

 ロボの胸元が開き、その中からダンゴが転がり出る。


「ロボの中にダンゴ倉庫が?」

「……まさか……」

 晶葉が手元のダンゴをまじまじと見つめる。

「どうしました? 池袋さん」

「これは……我が家の、池袋家特製お月見ダンゴだ」

「え?」

「ウサミンから相談されて作ろうとしていたマスコットロボは、ウサちゃんロボ」


「そうでしたね」

「しかし、私は、お月見ウサちゃんロボを考えていたんだ」

「お月見!?」

「そうだ。私にだって、お月見ダンゴを運ぶだけのロボットなら作れる」

「それじゃあ、このロボちゃんはやっぱり……」

「私が運ばせようとしたお月見ダンゴを、このロボは持っている……いや、恐らく内部で作っている」

「作ってる?!」

「このダンゴ、どう見ても作りたてじゃないか」


 むしゃり、と武内Pはダンゴを食べる。

「……確かに、これは作りたてです」

「体内でダンゴを作り、人語を解し、自律判断でお茶を入れ、自走する……」

 頭を抱える晶葉。

「そんなロボット、聞いたことない。というか、現在の人類の科学力で作れるのか?」

「菜々にはよくわかりませんけれど、凄いんですか?」

「凄い。人類の科学を超えているかも知れない」

 ハッとなり、菜々を見つめる晶葉。


「まさか、本当にウサミン星人だったのか? 地球の科学力を超えたロボットが作れるのか?」

「ウサミンシークレットです」

 菜々のプロ意識は堅い。

「ところで、このロボはどこから」

「ええ、今、それを話そうとしていたところです」

 武内Pは語る。
 
 とは言っても、話す内容は殆ど無い。事務所ビルに入るところから後ろに付いてきた、としか。


「ロボちゃん」

 全てを聞き終えた菜々がロボに向き直る。

 うさ?

「どうして、プロデューサーについてきたの?」

 うさ?

 ロボは辺りを見回し、壁に貼られたポスターを見つけると動き始めた。

 きゅらきゅらきゅら

 ラブライカのポスターだ。


 うさ!

「……まさか」

 武内Pの呟きに反応するちひろ。

「何か心当たりが?」

「受付前で、別棟のトレーニング室へ向かうラブライカのお二人と、少し立ち話をしていました」

「それじゃあ、ロボちゃんはそれを見て、プロデューサーさんを関係者だと思ったのかしら?」

 うさ! うさ!

  
「ロボちゃんは、ラブライカを知っているんですね」

 うさ?

 首を傾げるちひろ。今、ロボは確かにラブライカのポスターを示していたのに。

「もしかすると……」

 晶葉がちひろの言を継いだ。

「アナスタシアと新田美波は知ってるのか?」

 うさっ!


 知っているようなロボの反応にうなずく晶葉。

「思った通りかも知れないな」

「どういうことです、晶葉ちゃん?」

 菜々の問いに、晶葉は一同を見回してからうなずく。

「パラレルワールド、って聞いたことがあるか?」

 首を傾げるちひろ。

 菜々と武内Pはかすかにうなずいた。


「アニメで出てきたのを見たことがありますよ」

「以前、とある映画作品にウチの事務所が関わったことがありまして、その類いの設定を耳にしました」

「ごめんなさい。よく知らなくて」

 ちひろの疑問に晶葉は端的に答える。

「手短に言うと、この世界と似てはいるが全くの同一ではない別の世界のことだ」

 新田美波とアナスタシアは存在しているが、ラブライカは結成されていない。
 池袋晶葉と安部菜々は存在しているが、常識では考えられないとてつもない科学力を持っている。
 千川ちひろは存在しているが、武内Pはいない。

 
「さらに、外には漏れていないウサちゃんロボのデザイン。漏れるどころか私が考えただけのダンゴ機能」

 なにより、と晶葉は言う。

「こんなロボット、現在の地球上で作れるとは思えない」

 しかし、明らかにロボは人間の言葉を解している。ここの晶葉たちの言葉を。

「つまり、この子は、別の世界のウサちゃんロボ……」

「恐らく」


 ………………………………




 
 
 


 ウサミンロボは実のところ、困っていました。

 恒例の宣伝行脚を終えて、空から事務所に戻るときにアプローチを誤って地上に激突してしまったのです。

 そのうえ、気が付くと知らないところにいたのです。

 なんとか事務所までたどり着くと、そこには知らない建物がありました。

「346プロダクション」なんて、ウサミンロボは知りません。

 だけど、アナスタシアと新田美波を見つけました。

 二人はトレーニングに行くと言っていたので、邪魔にならないようにウサミンロボは事務所に入ることにしました。


 知らない、目つきの悪い男の人について行きます。

 怖い顔なので少し心配でしたが、いざとなれば必殺技「ウサミンの赤い雨」が炸裂します。

 なんと、男の人はプロデューサーでした。だけど、モバPじゃありません。

 それでも、ちひろさんはちゃんといたので、ウサミンロボは安心しました。

 ところが、ちひろさんはウサミンロボのことを忘れてしまったようです。これは大変です。

 すると今度は、博士と菜々ママが現れました。

 ウサミンロボは大喜びします。


 嬉しくて、お茶と銘菓ウサミン団子を振る舞いました。

 だけど、何かおかしいのです。何かが違います。

 菜々ママは菜々ママです。だけど、何かが違うような気がします。

 そのとき、ウサミンロボは思い出しました。

 仲間のウサミンロボが、偶然平行宇宙に捕らわれた星輝子を助けに行ったことです。
 助けたロボは、今では「重戦機(ヘビーメタル)ウサミンロボ」として輝子の付き人になっています。

 もしかすると……ここも平行宇宙(パラレルワールド)?


 でも、ここにいるのは紛れもない菜々ママです。大好きな菜々ママです。博士です。

 博士じゃないけど、博士です。

 菜々ママじゃないけれど、菜々ママです。

 大好きな菜々ママなのです。


 ………………………………

 
 
 
 
 


「それじゃあ……」

 菜々は言う。

「この子は迷子なんですね」

「え?」

「だって、本当のお家に帰れないわけですから」

「ん……確かに、ウサミンの言うとおりだが……他に言うことはないのか」

「菜々には、この子はいい子に見えますから」

「悪い子には見えないな」


 んー、と頭を捻る晶葉。

 武内Pはロボに向く。

「ロボくん。貴方は、別世界から来たのかも知れません」

 うさ

「今のダンゴ以外に、何か証明できる物はありませんか? 向こうの世界の物とか」

 うさ……

 ウサミンロボはリュックの中から一枚のCDを取り出す。

 それは、今日、ロボが新橋駅前で宣伝していたCDだ。


「あ……」

 菜々の表情が明るくなる。

「菜々のCDですか?」

 そしてすぐに気づく。見たことのないレーベル、見たことのないデザイン、聞いたことのない曲名。

「……あ、向こうの世界の、物なんですよね、それって」

 それでも一瞬、確認するよう武内Pに目を向けるが、武内Pはただ首を振る。

「……すみません、安部さん。CDの話はまだ……」


「だ、大丈夫です、まだまだ、菜々はがんばれますから!」

「ロボ、そのCDは戻してくれ、何か別の……」

 晶葉の言葉にロボは別のCDを取り出した。

「う……」

 絶句する晶葉。ロボが出したのは、この世界ではまだ企画すらされていないはずの晶葉のCDだった。

「わ、私も、向こうではデビューしているのか……」

 やや間を空け、それでも晶葉は言う。そのCDをリュックに戻せと。

 気まずい沈黙が辺りに立ちこめる。


 うさ?

 ロボは冷めてしまったお茶を煎れ直していた。

 やがて……

「すいません。自分たちの力不足です」

 武内Pが絞り出すように言った。

「向こうのお二人は、すでに何枚もCDを出しているというのに、こちらのお二人は本格デビューすら……」
「自分たちの、力不足です」


 晶葉と菜々は、武内Pの直接の担当ではない。それでも、だ。
 二人がデビューしているという事実に間違いは無い。
 しかも、CDにはそれぞれ複数枚目であると銘打たれていたのだ。売れていなければ、それはあり得ないだろう。

 二人はどちらの世界にもいる。違いは、武内Pの存在のみ。
 ならば、理由はそれではないのか。

 うさ?

「あはは、プロデューサーは悪くありませんよ。きっと、向こうの私はこの私より実力があるんですよ」

「あ、ああ。私もだ。ロボット作りだって、私のほうが明らかに劣っているじゃないか」


 うさ? うさ?

 うさ! うさ! うさっ!!

 きゅらきゅらきゅら

 ロボが菜々と晶葉に駆け寄る。そしてその手を取り、二の腕を優しく撫で始めた。

 うさ、うさ、うさ

 まるで、そんなことはない、元気を出して、と言っているかのように。 

「ありがとうね、ロボちゃん。でも、菜々は、貴方の本当の安部菜々とは違うみたいだから……」

「ロボ、私は、お前の知っている池袋晶葉じゃないんだ」


 うさ……うさ……

 二人の言葉に、武内Pはますます頭をうなだれる。

「お二人とも、そんな言い方は……すいません、自分たちの力が……」

 うさ……うさ……

 ロボは武内P、晶葉、菜々の三人の真ん中で困ったようにぐるぐると回っている。


「三人とも、止めてください!!」

 ちひろが、ロボを庇うように立ち上がっていた。

「安部さん! 晶葉ちゃん! 貴方たちはそんなに自分に自信が無いんですか!」
「ロボちゃんの世界のお二人に出来たことなら、自分にも出来ると思わないんですか!」
「科学力は私にはよくわかりません。だけど、アイドルとしての力なら、お二人は充分に持っています!」
「だからこそ、346プロは貴方たちをスカウトし、レッスンしているんです!」

 そして、そのまま武内Pへと。


「プロデューサーもです! ロボちゃんの世界に貴方がいないからなんだって言うんですか!」
「だったら、向こうの世界以上にしてやる。それくらい、言ってください!」
「この世界のプロデューサーは貴方なんです、みんな、貴方を信じているんです!」
「安部さんも晶葉ちゃんも、ラブライカも、ニュージェネレーションも、凸レーションも、アスタリスクも!」
「キャンディアイランドも! 蘭子ちゃんも!」

 ちひろの言葉は止まらない。

 
 
 
 
 
 

「私だって!」

 
 
 
 
 
  



「……千川……さん?」

「あ、いえ、あの、私だって、プロデューサーを信じてるんですよ」

「……ありがとうございます」

 武内Pは首筋の後ろに手をやり、軽くもみほぐすように動かすと、一つ息をついた。

「……自分が弱気でした。お二人にも失礼でしたね」

 うさっ、うさっ、うさっ

 ロボが再び、菜々と晶葉の手を優しく撫でる。

「……ありがとう、ロボちゃん。そうだね、菜々だってきっと……」

「他の世界の私に出来たことが、この私にできないはずがない!」


 〝ロボ! 聞こえるか?〟

 うさ!?

 ロボの胸元から声がする。

 〝緊急次元通信システムを作動させた、聞こえているならビーコンを送ってくれ〟

 うさ!!

 聞こえてくる声は池袋晶葉そっくりで、四人は互いの顔を見合わせる。

「池袋さんそっくりの声ですね」

「……まさか」


 〝……そちらからの声はしばらく前から聞こえていたぞ。平行世界の私、池袋晶葉〟

「……やっぱり!?」 

 〝え、晶葉ちゃんいるんですか?〟

 〝どうも、平行世界の事務所にいるみたいだな〟

「今の、菜々の声ですよね!?」

 〝二人ともいるなら話は早い、ウサミンロボを回収したいんだ、協力してくれ〟

「それは構いませんが、どうすればいいのですか?」


 〝今の声は?〟

「こちらのプロデューサーです」

 〝……ちひろさんもいるのか。それにしてもそちらのプロデューサーは渋い声だな〟

 話し始める二人の晶葉。

 ロボが元々いた世界の晶葉の話によると、ウサミン科学製の転送装置がテスト中に事故。
 その事故の余波で、ちょうど帰還中だったウサミンロボが平行宇宙に飛ばされたのだという。

「無茶苦茶な話だな。そっちの世界はどんな科学力なんだ」

 〝……地球科学はそれほど変わらないと思う。ウサミン科学はそちらの世界にはないのか〟


 あるわけない、と苦虫をかみつぶしたような顔で言う晶葉に替わって菜々が聞く。

「そっちの菜々は、本当に宇宙人なんですか?」

 〝ウサミン星人26の秘密です〟

 〝そちらのウサミンは違うのか?〟

「……う、ウサミンシークレットです」

 両世界とも、菜々のプロ意識は強いようだ。

 〝わかった。そちらの技術力ではちょっと無理があるようだ。なんとか、こちらからの誘導だけで戻してみせる〟

「可能なのか」


 〝やるだけやってみる。おーい、オペレーター〟

「そっちの事務所にはオペレーターまでいるのか」

 〝いや、臨時で手伝ってもらっているだけだ〟
 〝オペレーター、ウサミン転送装置スタンバイだ〟

 〝虚空より異形を招きし鋼の装機! 目覚めよ、その魂!〟

「……オペレーターが誰かすぐわかってしまったんだが」

「菜々もわかりました」

「私も」

「……さすがと言うべきでしょうか。彼女の個性は平行宇宙でも変わらない、と」


 〝上手くいきそうだな〟

「……なあ、一つ聞いておきたいことがある」

 〝アイドルになれたのは科学力とは関係ないぞ〟

「……そうか、聞こえていたんだったな」

 〝ウサちゃんロボ……後のウサミンロボを作ったのはアイドルになってからだ〟

「バカなことを聞いてしまったな」

 〝そうだな。私ともあろうものが。天才池袋晶葉の科白じゃないぞ〟

「まったくだ、ああ、全くその通りだ」


 〝晶葉ちゃん、ちょっと替わってください〟
 〝菜々も頑張りましたよ! そっちの菜々も頑張ってください!〟
 〝行きますよーーーっ!! せーのっ!〟

「ミミミン!」

 〝ミミミン!〟

「ウーサミン!」

 〝ハイッ!〟

「ミミミン!」

 〝ミミミン!〟

「ウーサミン!」

 〝ハイッ!〟

「頑張りますよっ!」


 〝それでこそ、ウサミン星人です! 地球侵略の次は平行宇宙も侵略しちゃいましょう!〟

「ふふふっ、来るなら来いです、ウサミン星人大激突ですよ!」

 〝む……そろそろ、準備が出来たようだ。転送装置を作動する。ロボから少し離れてくれ。引き摺られてしまうぞ〟

 ロボの身体がかすかに震え出す。

 うさ?

 不思議そうに自分の身体を見下ろすロボ。その姿を囲むように、晶葉、菜々、ちひろがしゃがむ。

「ロボ、いつか、必ずお前を作ってみせるぞ」

「ロボちゃん、向こうの菜々にもよろしくね。絶対トップアイドルになってみせるから」

「ロボちゃん、元気でね」

 ロボを見下ろす武内P。


「……二人のために全力を尽くします」

 うさ!
 
「貴方は、向こうでアイドルのために頑張っているんですね」

 うさうさ

「……ええ、自分も頑張ります。貴方に、そして、向こうのプロデューサーに負けないように」

 うさっ!

 〝よし、転送シークエンス開始! 五秒前〟

 武内Pは、突然思いついたように懐に手を入れ、一枚の紙片を取り出し、ロボへと駆け寄る。


「プロデューサー?」

「近づいたら危ないですよ」

 差し出された名刺を受け取るロボ。

 うさ! うさ!

「ええ。……せめて名刺だけでも」

 うさーっ!!

 ロボが手を挙げ、力の限り左右に振る。

 晶葉も、菜々も、ちひろも、そして武内Pも手を振り返していた。

 ロボの姿が、見えなくなるまで。



 ………………………………


 うさうさ

 うさ

 今日もウサミンロボは、一仕事終えてウサミンロボ秘密基地に帰ります。

 秘密基地には、ウサミンロボたちの宝物部屋があります。

 向井拓海にもらった箒、大原みちるにもらったバケット、星輝子にもらった鋲付きベスト。

 ヒョウ君たちにもらったお手紙、姫川友紀にもらったプラスチックバット、パドリング大会銀メダル。

 そこにはたくさんの宝物があるのです。

 最新の宝物は、何の変哲も無い一枚の名刺。

 そこには、この世界にはいないはずの、とあるプロデューサーの名前が書かれているのです。
 

以上、お粗末さまでした



アニメを三話程見たときに、このラストシーンだけ思いついてたんだけど、
中身が思いつかなかった。

二期までに中身を思いついて良かった。



二期に晶葉が出ると嬉しい。
ウサミンが活躍するともっと嬉しい。

ロボが出てきたら絶叫する程嬉しい。



因みに自分は、きらりPです。

ども、一応こんだけあります

いくつか、番外というか例外的な物も混ざってますが


菜々「ウサミンロボ」
菜々「ウサミンロボ十七号」(閲覧注意)
ショッピングウサミンロボ(閲覧注意)
モバP「空飛ぶウサミンロボ」
仁奈「ダンス・ウィズ・ウサミンロボ」
愛海「ウサミンロボと海を行く」
菜々「ウサ!」
みく「お掃除ウサミンロボにゃ」
モバP「超攻速ウサミンロボ」
みちる「ウサミンロボとバケットとスズメ」
モバP「爆発ウサミンロボ」
モバP「ウサミンロボの子守歌」
モバP「ウサミンロボは可愛いなぁ」 まゆ「!?」
友紀「ウサミンロボと野球」
拓海「機甲創世記ウサミンロボ」
輝子「重戦機ウサミンロボ」
まゆ「OVERMANウサミンロボ」
幸子「カムヒア、ウサミンロボ!」
モバP「装甲騎兵ウサミンロボ」
【モバマス】「ウサミンロボ郵便局」
【モバマス】「星空のウサミンロボ」
晶葉「出来たぞ、放屁無音化装置だ」
【モバマスSS】「ロボ、アイドルによろしく」
武内P「……ウサミンロボ?」


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