男「死にてぇなぁ」
女「なんで?」
男「いや、なんかこう、漠然と生きていたくないっていうか」
男「生きていたいと思えない、死ぬのに勝る生きる理由がない」
男「やりたいこともないし、きっとできることには限りがあるし」
男「このまま成長して朽ちていくだけなら別にいつ死んでも変わりないんじゃないかって」
女「病んでるねー」
女「まあ、死ねば?」
男「えっ」
女「えっ」
男「いや、まあ、うん」
女「死ねばいいじゃん」
女「でも死ぬんだったら人に極力迷惑かけないようにしようね」
女「あと遺産頂戴」
男「遺産つったってバイトで貯めた10万ちょいくらいしかないぞ」
男「マジ、窓際の一番後ろの席になったのはいいものの空から女の子が降ってくるわけでもないしさ」
女「アニメ見過ぎだよ」
男「そうじゃなくても可愛い子が告白してきたり、こうさ」
男「紅に染まっていく夕方の教室、賑わう運動部の声、可愛い女の子とふたりきり」
男「みたいなシチュエーションくれてもいいじゃん」
男「その後、告白されちゃったりしちゃったりなんかしてさ!!」
男「それがねーからなぁ……」
女「うん、じゃあ死ねよ」
男「えっ」
女「えっ」
男「命令形?」
女「うん」
男「まぁ、君の言いたいことは分からんでもない」
男「確かにそういういかにも青春!みたいな感じのやつは死んでほしいよな」
女「貴方のことなんですがね」
男「うんうん。それでさ、なに?」
男「運動部の奴らはさっきの教室の奴らが告白に成功してカップルに生まれてるそばでまたさ」
男「こう、陸上部とかがなんか男女で練習してて他愛ない雑談とかしちゃってんだよな」
男「アクエリアスとか飲みながら、汗拭きながら好きな人と!話してんの!」
男「なんかむかついてきた」
女「陸上部入れよ」
男「いやそれは違うんだ」
女「死になよ……」
男「えっ」
女「えっ」
男「まあ、話を斜め5度位右にそらすけどさ」
男「あれだよ、ほら運動部といえばやっぱりサッカー部とか野球部」
女「まあ代名詞って感じでもあるよね」
男「マネージャー。なんなの?あれ」
男「いやいやいやいやご奉仕作業ってなんか違うでしょ。エロくない?」
女「いやエロいかどうかはまあ別として何が違うのよ」
男「だってさ!いや、なんかこう、違うじゃん!」
男「具体的にはわからないよ!説明できないけどマネージャーと恋愛とかすげー羨ましい」
男「けどビッチそう」
女「結局嫉妬やんけ。確かにちょっと悪いイメージはあるよね」
男「やっぱりねぇ……」
男「はぁ、死にたくなっちゃうなぁ」
女「死んでもいいと思うけどな」
男「えっ」
女「えっ」
男「うーん、あとはさ」
男「あれだよ、体育祭、文化祭の打ち上げ!」
女「あー、まあうちのクラスなんか出席する人少ないから中止になったね」
男「それなんだよ!ツイ○ター見てたら何あれ!?超高校生じゃん!エンジョイしすぎじゃん!」
男「いかにもこうウェーイ!!みたいな感じすげーむかつく」
女「そりゃまあ、打ち上げだしそうなるよね」
男「鉄板焼きとか食って盛り上がった後に花火やって」
男「時間が遅くなるに連れて、門限ある女の子とか帰り始めるわけじゃん」
男「そんで俺のあの知り合いの奴、あいつがさ、20時頃かな?まぁ、好きな娘が帰るって言ったんだって」
男「それであいつなんていったと思う?」
女「うーん、気をつけてねとか、また会おうねとか?」
男「ちげーんだよ……分かってねぇ」
女「とりあえず死んでよ」
男「えっ」
女「えっ」
男「んでまぁ、とりあえずあいつがね?」
男「もう暗いし、この辺不審者多いから送っていくよ」
男「だって。は???え???いや、別に普段その娘一人で帰ってるし余裕じゃん?あの辺で不審者とか見たことないしむしろ割りと少ないし」
男「それで、女の子も『えぇ、悪いよ』とかいいつつも結局最終的にはあいつの事なんだかんだ好きだから送ってもらうじゃん?」
男「んでまあ、彼女欲しいねーとか彼氏ほしいねーとか好きな人いないの―?とか始まりだすじゃん?おいおいおいおいってなるじゃん」
男「打ち上げの帰り道、どんちゃん騒ぎの余韻は残って、鼻に残った花火の匂い、自転車を転がす音、星空、近づくあの娘の家に早まる動悸だよ」
男「そんな状況で!告白したんだって!!!そりゃ成功するよ!!!!!もともと両想いだしね!!!!」
女「ロマンチックだしこう、ザ・青春の1ページみたいな感じだね」
男「なんなの?!?!?そ!れ!で!俺そんなん聞かされてどうすりゃいいの!?」
男「ニヤつきながら話しかけてくるんじゃねーよ!!あぁああ!マジ死にてぇ」
女「まぁ、死ぬのもありだと思うよ」
女「えっ」
男「えっ」
男「もうさぁ……疲れちゃうよ」
女「生きづらい世の中だね」
男「大学に行ってもこんなんなんだろ?」
男「下手したらあいつらもっと悪質な場合もあるじゃん」
男「新歓で酔わせてお持ち帰りでご馳走様でしたっつってぽいーだよ」
女「はぁ……まぁ、数は少ないと思うけど嫌だねそういうの」
男「そんなんもし好きな娘だったら俺絶望しちゃうし死んじゃうよ???」
男「その男殺して私も死ぬよ?汚い世界だねまったく。そんなところに好んで行く奴の気がしれないよ」
女「いうて君も一般でちゃんとしたところ狙ってるじゃん」
男「まぁね。お前もそういう奴に騙されんなよ」
女「死ねよ」
男「えっ」
女「えっ」
男「心配したのにそれってなんかひどくない」
女「まあ私なりに思うところがあってね」
男「そっか、しょうがないね」
男「社会人になっても毎日同じ作業でしょ?ルーチンワークでしょ?」
男「そんなんなんのために働いてるのか分からなくなっちゃうよ」
男「バイトしてる時ですらなんで働いてるのか分からなくなるくらいなのにさ」
男「家帰っても部屋は無機質に冷たくて暗くて、静まり返っている訳だよ」
男「別に温かい家でもなんでもないの。ほかほかご飯とかいい匂いとか夢、ごはんお風呂それとも私とか夢のまた夢」
女「悲しい現実だね」
男「うわぁ、死のう。みたいな」
女「うーん、死ねば?」
男「えっ」
女「えっ」
男「あぁ、そういや忘れてたけどもう一つ大学生編」
女「編とかあるんだ。もはやストーリー仕立てかな?」
男「夏は免許持ってる奴が車出して海行ってさ」
男「いつものメンバー!みたいな感じのスクールカースト最上位の男の子と女の子♡」
男「まあ、もちろんそこに俺はいなくて、大学で行く予定の話聞いてただけね」
女「うわぁ……」
男「ひかないでよ。なんかちょっと悲しいよ」
男「それで、海についたらBBQとかしちゃってアウトドア慣れしてるイケメンとかいて、肉とかピーマンじゅうじゅう焼いちゃっていい匂い漂わせて」
男「女の子の肉もつまんじゃったりしてー!?!?」
男「ごめん興奮した、そんでさ、眩しすぎる太陽がゆらゆらと砂浜を焦がしてどこまでも続く海が波のさざめき奏でちゃって」
男「浮き輪持ってきたりビーチボールもってきちゃっていい年してはしゃいじゃってんの」
男「そんなんもう俺、あ、死ぬかってなるじゃん」
女「死ぬしかないんじゃないかなぁ……」
男「えっ」
女「えっ」
男「俺もどうしたらいいのか……」
女「死ねばいいじゃん」
女「生きてたらさ」
女「私は別に可愛くないけど、今日、っていうか本当だったらこの夕方の今頃はあんたに告白してるはずだったのにさ」
女「はいはいどうせ私は可愛い女の子でもないからふたりきりになっても何も思いませんよね!」
男「えっ?ちょ、え」
女「私はさ!運動部でもなんでもないし!マネージャでもないよ!エロいこととかも苦手だよ!!」
女「悪かったね!ご希望に添えなくて!あんたと同じ部活にしようかなとか最初は思ってたのにどこにも入らないしさ!」
女「打ち上げだ?私は参加するって言ったよね!!」
女「私だって送ってもらった帰り道に告白したりされたりしたかったよ!あんたに!」
女「新歓でお持ち帰りとかされるわけねーだろ!!つーか騙されんなよじゃねーよ!守ってくれよ!」
女「へいへい別にそこまでか弱くありませんよ!」
男「いやちょっとまっ」
女「私はあんまり派手じゃないしうるさいのも苦手だから!」
女「皆でBBQとかも多分行かないよ!!」
女「私と二人じゃダメなのかよ……」
男「女、落ち着いて?」
男「えっと、一旦深呼吸しよ」
女「だっ、て、私はどうせ、あんた、のぉっ」
女「家族とか、なれない、のくらい!知ってる、よ!」
女「あんた、自虐する、けど!モテるっ、しっ」
女「もうやだあぁっ、あぁっ」
女「こっちが!死にたいよ馬鹿!!」
男「女、落ち着いてね」
男「いや、なんかこういう状況で言うのなんだけど」
男「俺もお前の事好きだよ」
女「はっ?」
女「いやなにそれ」
男「切り替え早いタイプだよね」
女「いや、もういいし。別にちょっと泣いたらすっきりした」
男「え、俺今告白された数分後に振られてるのこれ」
女「うるさいな。好きだけどもう知らんわ」
男「あ、好きなんだよね。じゃあ付き合ってよ」
女「やだ」
男「えっ」
女「えっ」
男「死にてぇなぁ」
女「死んでもいんじゃね」
おしり
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