魔王「くっ、ここまでか…」(26)

魔王「魔力が尽きたわ…ワシの負けじゃ」

オークA「ぐへへ…」

オークB「ようやく魔力が尽きたか」

オークC「魔法を連発させるため、何匹かの同胞が犠牲になったが…ようやくか」

オークA「お楽しみタイムの始まりだ…!」

ふん…ケダモノどもめ。

ワシが勇者に負け、落ちぶれたとたんにこれじゃ。

まぁ、弱肉強食の世界じゃからのぅ…仕方あるまいて。

しかし、悲しいのぅ。

こんな下級魔族に輪姦されるとは…

オークA「ぐへへ…」

オークB「…で」

オークC「うん?」

オークB「ここからどうすればいいんだ?」

オークC「む…」

オークA「実は俺達、童貞だから…この先を知らんのだよなぁ」

魔王「…」

ハァ

魔王「やれやれ…犯さぬオークに何の価値があるというのか…こんなんだから、最近の女騎士はやたらと強いのか」

そう、ワシは勇者に負けたというより

勇者の仲間である女騎士に負けたようなものである。

こいつらオークが犯して戒めぬから調子づきおる。

女騎士は犯して弱らせるのが世の常である。

オークA「そ、そんな事いわれても」

オークB「今時の女騎士は強いんですぜ?」

オークC「んだんだ」

オークA「Amazonとか通販でやたら強力な装備をそろえているし…」

なんじゃと。

ワシが負けたのはAmazonのせいか…

ネットの普及でKonozamaじゃよ!

魔王「もうよい。で、もう犯すつもりはないのじゃな?」

オークA「うむ…実をいうと俺達そんなに性に飢えてないですし」

オークC「彼女いるし」

オークB「俺も」

オークA「俺も。二人いる」

魔王「くっ、リア充どもめ!」

オークA「なんていうか、ノリ?」

オークC「んだんだ」

魔王「貴様ら…落ちぶれたとはいえ魔王であるワシをノリで襲うのか…」

オークB「フヒヒwwwサーセンwww」

オークB「それに、同胞も大した怪我じゃないですし」

魔王「まじか…割と本気の魔法じゃったが…」

オークA「申し訳ないっすけど、相当弱くなってますね」

オークC「魔法の威力も魔力の貯蔵量も、かなり少ないんじゃないっすか?」

魔王「うむ…今や全盛期の一割もないのぅ…」

オークC「大変っすね」

魔王「うむ。貴様らのような輩がいるからのぅ!!」

オークA「うっ」

オークB「すいませんってばぁ」

魔王「まぁよいわ…」

オークA「それで、これからどうするんですかい?」

魔王「さて、どうするかのぅ…」

なぜそこにこだわるのか

魔王「今のワシでは貴様らオークとでさえ対等に戦えぬ…それほどまで落ちぶれておる」

オークA「魔王様…」

魔王「ワシはそもそも人間界に悪さをした覚えがないんじゃがのぅ…魔族、魔王というだけで忌み嫌うのが人間か…」

オークB「俺達も人間とは割とうまくやってるもんなぁ」

オークC「んだんだ」

オークA「女騎士も無理矢理襲ったりしないもんな」

オークB「合意を得て襲ってるし」

魔王「真面目か!」

魔王「まぁよいわ…ワシはこれから魔力を取り戻す旅にでる」

オークA「へぇ」

魔王「魔力を取り戻し…平和に暮らす」

オークB「え…勇者にリベンジとかしないんですかい?」

魔王「無理じゃよ…いや、無理じゃよ…」

オークC「二回言うくらい無理なんすか…」

魔王「もうね、のどかな地で畑仕事しながら、牛とか鶏飼いながら暮らしたい」

オークC「そうですかい…」

魔王「いずれ実力のある魔物が次の魔王を名乗る…魔界は、まぁなんとかなるじゃろう」

オークA「平和主義な魔王だといいですねぇ…俺達、今の魔界が好きなんですよ」

オークC「んだんだ」

オークB「人間とはうまくやってるしな」

オークC「俺、彼女とは別に女騎士のセフレ三人いるし」

オークA「うらやま」

魔王「うらやま」

魔王「まぁなんだ、大丈夫じゃろう。知らんけど。ではワシは行くぞい」

テクテク

オークA「お達者で…」

魔王「うむ、おまえらもな…」

魔王「…いや、よく考えたらおまえらリア充じゃろ。むかつくんじゃ!爆発しろ、リア充爆発しろ!バーカバーカ、禿、チンカス!百回死ね!バーカバーカ!」

ダッダッタ…

オークA「うわぁ…悪口言うだけ言って走ってったよ…」

魔王は走った。

息を吐く度に胸は痛み

いつの間にか頬には涙が伝い

自分でも気づかぬうちに叫んでいた。

リア充爆発しろ、と。

魔王「ワシも…ワシもいつの日にか…」

その先の言葉は出てこない。

いつの日なんて日は

いつまでも、来ない。

おそらく自分は

野菜や家畜に囲まれ

穏やかに余生を過ごすだろう。

消えかけの命の火が

ちりちりと弱くくすぶり

そっと終わりを迎える。

それが自分の結末。

魔王は、それを自覚していた。

嫌だ、なんて我が儘は通らない。

老いた者は皆、そうであることが当たり前だと

それが自然の摂理だと

分かっていると言い聞かせ

だが、しかし、と

無意味な反論をし

やはり、ふりだしに戻る。

魔王「…若さが欲しい」

それは最後に零れ出た

絞りかすのような言葉であった。

魔王「魔力などいらん…若さが…溢れ出る若さが欲しい…」

魔王「かつての肉体の張りが!かつての純真さが!かつての無謀さが!」

魔王「欲しい…もう一度、青春を謳歌したい…何故だ…何故叶わぬ?長きに渡り魔界を治めてきたワシじゃ…たったそれくらいの願いが…何故叶わぬ?」

魔王「何故じゃ…」

ヒュッ

ザクゥッ

魔王「ぐぅっ…!?がはっ!」

槍が、魔王の心の臓を貫いた。

衰えた魔力では、治癒さえままならないだろう。

はっきりしている事、それは

魔王は、もうすぐ死ぬという事。

槍を投げたのは誰か?

人間か?魔物か?

あぁ、どうでもいい。

どうだっていい。

だって魔王は、死ぬのだ。

死ぬべくして、死ぬのだ。

魔王「あ…あぁ…魔力が…若さが…ワシは…あ…ぁぁ、ぁ…」

ぶつり、と

まるでテレビの電源を落とすかのように

ぶつり、と。

それっきり

それっきりである。

魔王と呼ばれた生き物のすべては

それっきりである。

それでも世界は変わらない。

相変わらず地球は回るし

太陽は昇り、そして沈む。

季節は巡り

命は尽き、命は生まれる。

オークは女騎士を犯し

女騎士は自ら腰を振るだろう。

まるで魔王なんてものが

いても、いなくても

どうだってよかったかのように…

【完】

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