武器は大変に強く、危険なモノばかりだった。
人というのはとにかく、大きな力を手にすれば使ってみたくなるものだ。
何度も何度も戦争が起きた。
武器そのものを巡っての戦いもあった。
人々は終わりなき戦いに辟易し、全ての元凶であるその武器を『決して武器だと分からぬモノ』に封じ込めた。
それは時計や、ネックレスや、コップといった日常何気なく使われるモノたちだった。
そうして、寝床を与えられた武器は静かに眠りについた。
人々は武器を、畏敬の念を込め『日常機神』と呼んだ。
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「この村にある食料、武具を全て献上せよ!!我々は帝国の聖軍である!!」
貧しくも幸せな日常を切り取ったのは、不躾な男の声だった。
家族と朝食を食べていた少年は、何事かと窓を覗こうとした頭を父親に押さえられた。
「馬鹿、死にたいのかっ」
「痛って! ……父ちゃん、アイツら何なんだよ?」
「帝国……って言ってるがな、要は戦争に勝った国の軍隊だ。大方遠征の帰りに物資が尽きかけたんだろう、こんな村襲ったところで何も出やしないってのによ」
「じゃあ堂々とありませんって言えばいいじゃねえか」
「出やしねえってのは食料や武具だ。 こういう貧しい村が襲われたらまず……」
『人』が連れていかれる。
屈強な男や、慰み者にもなる美形の女、永国労働力として扱える子ども。
「あっ 母ちゃん美人だから連れていかれっちまうぞ」
「そうならねえように隠れてるんだよ。 最悪家の食糧全部渡してでも帰ってもらわないとな」
隠れてろ、というと父親は少年と母親を引き戸に押し込め、自らは外へ出ていった。
「おうおうお前、この家の主人か!」
「左様でございます。勇ましき帝国軍の皆々様、この村の者は全て皇帝陛下に忠誠を誓いました故、何卒剣をお納めいただきますよう」
「それは我々が決める事。お主如き凡夫の願いなぞ、聞き入れると思うてか」
「はは、厚かましいことを申しました。お許しを」
父親は深々と頭を下げた。
「まあ良い、我々はこの村にある全ての食料と武具を要求する。速やかに差し出せ」
「ははっ すぐに」
「ま、我々は寛大であるからして、美形の女のニ、三人居ればそれで許してやらんこともないぞ?」
辺りに下卑た笑い声が満ちた。
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