一色「ええっ?先輩にストーカーですか?」 (53)

「いや、反応としては予想通りだが彼氏にむかってそりゃなくね?八幡泣いちゃうよ?」

私の驚きに続くように狭い部屋に私の彼氏、比企谷先輩の落ち込んだ声が沈む
実際そんなに落ち込んではいないだろうけど、そんな風に寂しそうにしている先輩可愛い
これじゃどっちのほうがあざといかわかりませんねー

そういえばちょうど先月くらいかな?私が先輩に告白したの
このままの先輩との関係じゃあ満足出来ない!先輩に思いを伝えたいってそう決めた日に柄にもなくありのままの自分を見せたいと思った

先輩はどんな私でも受け入れてくれたから

だから余計にその先が"本物"が欲しくなってついには先輩に好きだと伝えた
その後の先輩、ふふっ思い出したらまた笑えてきた

メチャクチャキョドりながら
「ば、罰ゲームか?罰ゲームだよな!どこだ!どっきり大成功のボードをもった戸部の奴は!!」
なんてさけびだすもん、笑ってもしょうがないよね

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その後挙動不審に辺りを見渡す信じて貰えるように私のファーストキスをあげた
我ながら卑怯だと思うけど先輩だからそこまでしなければどうにもならない

そんな私の大切な日から数週間後のことだった
先輩の家族が一週間ちょいくらい旅行にいくらしい
家族旅行なのに先輩はハブられるなんて、なんとも先輩らしいと言うか…

ここはポイント稼ぎのためにも妹さんが帰って来るまでは私がご飯を作って上げます、って先輩に言ったら
「…なにいってんだ、お前?」
って返すんだもん、料理くらいできますー!そんなに可哀想なものを見るような目をしないでください!!

かくかくしかじかで私は比企谷宅にいる


私がついた頃にはすでに夕飯はすんでいたらしい、そんなに私の腕が信用なりませんか!?
そこで文句の一言でも言ってやろうかとしたときに先輩は声を震わせ
「…自意識過剰だと思うかも知れねぇが、ストーカーにあってるみたいだ」
そう呟き今に至る

「で?ストーカー(笑)にはどんなことをされているんですか?」

「具体的には後つけられたり、部屋荒らされたり…」
その内容だけですごくドン引きなんですが…
だけど先輩の態度は何時もの高二病な感じじゃなく不安を圧し殺しているようで、冗談とか言ってる感じじゃないのは見て取れる

「さ、さすがに気にしすぎなんじゃないですかー?」

「だから言っただろ?自意識過剰だと思うかも知れねぇって」

「別に自意識過剰だとは…」
なんとなくだけど、先輩から焦りを感じた恐怖…と言うよりは不安にちかいそんな感じ

「とにかく自意識過剰かどうかはおいといて、お前も気を付けろよ」

「え?私もですか?」

「その、なんだ仮にも彼女なんだ…心配くらいするだろ…」
仮にも…仮にもっていったぁ…先輩のバーカ、本当デリカシーないですねー!
でも私を心配してくれていたんだぁ、しょうがないから今の失言忘れてあげますよ

「…っ!?い、いや仮にもっつうのは別にそういう意味じゃねーぞ?!そのなんだガールズフレンド的な」

「なんですか?それ」
ふふっ顔を真っ赤にしながら懸命に弁解している姿がとても愛らしくて、とても愛しくて
だって私のために心配してくれていたんだから嬉しくないはずがない



先輩は素直じゃないからなー
「もうねるぞ、俺みたいなハイスペックぼっちは睡眠時間も効率的にすんだよ」

「えー、もっと先輩の声ききたーい」

「わりいがもう眠い、お前も早く寝ろよじゃあな」

先輩はそう最後に残しふてくされたように布団に潜り込んだ
…もう少しくらい相手してくれても良かったのに

名残惜しいけど私は部活で朝早いから朝ごはんだけ作っておかなきゃね
本当は先輩と食べたかったんだけど

先輩、お休みなさい


先輩ご飯食べてくれたかなー?
どうせ先輩の事だから「小町のには劣るが悪かねぇな」とか言うんだろうなー

本当に素直じゃない
まぁ、最初からサラダからトマト抜いといたからその事で文句言われる事はないけど
と言うかトマト嫌いとか子供か!

そんな先輩の事ばかり考えながらサッカー部の部室でタオルを畳んでいたら後ろから肩を叩かれた

「おはよういろは、今日も朝早くから大変だな」

「おはようございます葉山先輩!いえこれが私の仕事ですから」

そう労いの言葉をかけてきたのは葉山先輩だった
私の言葉に爽やかに「それは頼もしい」と笑う

うん!相変わらずのイケメン、でも先輩と付き合ってからは先輩のほうがイケメンに見えてくるんだよねー
惚れた弱みっていうのかな、まあもともと先輩は顔立ちは整ってはいたんだけど

「そういえばそろそろあれから1ヶ月くらいたつけど」

「あれから?」

「…ヒキタニ君に告白してからだよ」
あー、やっぱりその事ですか
そういえば葉山先輩何かにつけて先輩の事気にしてましたからねー
本気でこの人ホモなんじゃない?はやはち?なんて海老名先輩が喜びそうなくらい


「そういえばそうですね、やっぱり気になります?」

「そういう訳じゃないが、最近学校でお前たちが話してるところ見ないから」

「…先輩前よりはましになったんですが今でも恥ずかしがって学校では素っ気ないんですもん!」
私に変な噂が立たないようにと言う気遣いもあるんだろうけど、私はもっと甘えたい
ぶっちゃけ周りなんてどうでもいいし見せつけても良いと思ってるのに…
先輩なりの優しさだから受け入れていこうと思ってる、あっ今のいろは的にポイントたかーい!

「ヒキタニ君は彼女思いだからな、変な噂が立つのをさけてるんじゃないか?」

「ええ、先輩は優しいですからねー」

葉山先輩は私の言葉に「優しい…か」と溜め息混じりに呟く
先輩の優しさは時に自虐的なものだから
…酷く危なっかしいものだから
だからこそ受け入れていいものではない、だからこそわらっていいものではないと知っているから…


「比企谷はあんな性格だけど」

「大切なものはどんなことになろうとも助けようとする」

「彼にとって何が大切なのか、お前にはわかるだろ?」



「だからこそ…」

「…いや、これ以上は俺が言うことではない」
そうですね…
言わなくったってわかりますよ
先輩はいつだってひねくれてて、ネジ曲がってて性根が腐ってて…だけど優しくて

いつだって大切にされているって自覚位してますよ
私にとっても一番大切だから

「時間とらせたね、すまない」

「…いえ、こちらこそありがとうございました!」

そう笑顔で返すと「いや、かまわないよ」と言葉を残し部室から去った
なんだかんだでいろんな人から祝福されてますね、エリートぼっちとは何処に行ってしまったのだろう




「ああ?アイツが?嘘だろ…」
案の定メチャクチャ疑ってきましたよ…
そんな気はしたんですけどねー

「本当なんですって、て言うか先輩知らないだけで結構葉山先輩は先輩の事気にしてますよ?」
葉山先輩も素直じゃないですからねー
やっぱりあれですか?そーいう関係なんですか?先輩の彼女は私なんですが

「まぁ人間何に目覚めてもおかしくはないからな…お前のせいでMに目覚めそうな俺が言うんだ間違いない」

「Mって…それはドン引きです無理です」
と言うかMに目覚めるまで先輩を苛めてた自覚はなかったんですが

「…そんなことよりだ、あいつとどうだった?」

「…?なにがですか?」

「…好きだったんだろあいつも?」

…ああ、嫉妬ですか

可愛いー!!
あの先輩がですよ?!あの先輩が嫉妬!!
今絶対私顔真っ赤だ、先輩それ反則!!

「どうしたんですか?嫉妬ですか?らしくないなー」

「…いや俺はお前だけが好きだから、それだけは間違いない」

照れ隠しなのか凄く真面目そうにそう告白する先輩
やけに素直だからつい聞き入ってしまう



「ただ…なんつうか俺がお前らの関係を悪くしてんのなら、とおもっただけだ」

はぁ…
先輩のことだから下らないこと考えてるんじゃないかって思ってはいたけどここまでとは…
確かに私は葉山先輩が好きでした、だけどそれはそんな恋する私が好きで本物じゃない
そう教えてくれたのは他でもない先輩じゃないですか

だから伝えたい、私の気持ちを
受け入れて欲しい

「私が好きなのも先輩だけです、その気持ちは紛れもない"本物"です」

そんな気恥ずかしくなるような私のセリフに先輩はふっ、と鼻で笑うと
「当然だ」
と呟いた

「…そういえば最近やけに視線を感じるんだが」

「視線?例のストーカーですか?」
例のストーカー被害まだ続いていたんですね…
先輩の思い過ごしだとおもっていたんだけどこれは本気で何とかしないと不味いかな
と言うか先輩にストーカー…


いやいや、思い当たる節が多すぎる

「確かにアイツキモくなーい?とかチラチラ陰口叩かれながら見られる事には慣れているがな、気味わりぃもんは気味わりぃんだよ」

「慣れちゃまずいでしょ」

「あ、いやそれは友達のB君の話だ」

いやいや、先輩に友達なんていないでしょ
と言うか話の流れ的にどう考えても本人の話じゃないですか…なんか本気で不敏に感じてきたんですけど



「先輩の過去の黒歴史はどうでもいいんですけど」

「うお、スマフォの充電3パーじゃねぇか!」
うわ、スルーした…
と言うか必死すぎてドン引きなんですけど…

「と言う訳だから寝るわ、お休み」

「どういうわけですか!」

「…とそれとあれだ」

「あれ?」


「…飯旨かった」

そうとだけ伝えるとまたふてくされたように布団に潜り込んだ
本当に素直じゃない

と言うより凄い不意討ちですよ…
私は恥ずかし過ぎて何も返事出来ないまま先輩の部屋から離れた




先輩の言っている事からするとどうやら常にストーカーは先輩を監視している可能性があるらしい
私は先輩から少し離れた電柱のうらでスタンバイ、後方から先輩の周りを見渡す
とりあえず登下校中の先輩を監視しその犯人を炙り出すと言う作戦に行き着いた
ちょっと待ってどっちがストーカーかわかんないよ…

登校中の先輩は相変わらずのぼっちスタイル
誰も話しかけないし下手したら存在にも気づいてないのかもしれない
これは少しも参考にならないと言うか完全に周りからしたら私がストーカーじゃん

下校中も同じなら多分先輩の思い過ごしだろうと肩をすくめながら教室へ向かった


しかし下校時に監視中、そんな甘い考えが溶けていくのを感じた

先輩の後方、少し離れた場所に見覚えのある人影
見間違える事のない整った顔立ちに何より飲み込まれそうなくらい綺麗な黒髪

「あれは…雪ノ下先輩?」


間違いないあれは雪ノ下先輩だ

…だとすればすべてつじつまが合う
一連のストーカー事件が雪ノ下先輩の犯行だとすれば

葉山先輩を初めいろんな人が祝福してくれた反面涙を飲んだ人だっていたはずだ
特にその後に先輩に告白した雪ノ下先輩は…

「俺には他に好きな奴いるんだわ、だからお前とは付き合えない」
その言葉が頭の中に何度もリプレイする
この言葉をかけられた彼女はどんな気持ちだったんだろう
どんなに辛かったんだろう…

私ならおかしくなる
それくらい、狂おしいくらいに先輩が好きだから
だからこそ彼女の行動に対してどう対応したらいいかわからないよ…

先輩を奪ったのは紛れもない私なんだから…

「…っ?!」
一瞬雪ノ下先輩と目があった気がし、体を素早く電柱の裏に隠す
この距離だ、そんな一瞬で私と判断するのは難しいだろうけど

その後慎重に電柱から顔をだし彼女のいた場所を見たがそこに雪ノ下先輩の姿はなくなっていた

「…どうしようかな」

頭の中に浮かぶのはあの時の奉仕部の姿
先輩の守りたかったもの、そして欲した本物
私が踏みいった代償は思ったより重かったみたいで、今さらながら謎の罪悪感を感じた





「そうか、じゃあやっぱりあいつが」

「最初からわかってたんですか?」

「…つうか目星はついてた、だいたいだけど」
真剣に、現実に向き合うようにと先輩の真面目な声が伝わる
悲痛さが混じってかなり痛々しい表情で…

「いずれ決着はつけなきゃいけないとは思ってはいた、お前がきにすることじゃねぇだろ」

「それはそうですけど…」

「俺が選んだのはお前だ、だからお前は何も悪くねぇよ」

顔を赤らめながら先輩は言った
恥ずかしいならハナから言わなきゃいいのに

本当、先輩はあざといなー

「ふふっそんな照れながら言われても一瞬トキメキかけましたけどやっぱり無理です、もう一度言ってください」

「ぐっ!俺だって恥ずかしいんだぞ?!」

「わかってて言ってるんですよー」

一瞬「…ぐっ!」と苦虫を噛んだ表情になると、何時ものぶっきらぼうな顔とは正反対な優しく笑い
「やっぱお前には敵わねーわ」
と呟いた



それはお互い様ですよせーんぱい?

「んで?明日お前くんの?休日だけど」

「…?当然です、まだ小町ちゃん帰ってこないだろうし」

「…例の映画、券買っといたから」

例の映画?
なんの事でしょうか、まさか最近上映してる泣けると話題のあれですかね?
しかしまたサプライズとは先輩らしい
先輩の部屋に遊びに行ったりしたことはあったけど付き合ってからデートとかしたことなかったしスッゴく楽しみ!

「…昼からの奴、一緒に見に行くか」

「ええ、楽しみにしてます!」

「…それと、朝飯用意してくれんのは助かるけどトマト入れんのやめろ嫌がらせか」

「…え?トマト」

「そうゆう事だからお休み」

そう残すと何時ものように布団に潜り込んだ
私いつもトマトは抜いてた筈だけど…

謎の不安が頭によぎった




朝7時、先輩の家ノ前に私はいる
入っているはずのないトマト、へやを荒らされたと言う先輩の言葉
その2つが意味するのはこの時間、この家に誰かが入っていると言うこと

その不安はドアノブを回した瞬間に確信へと変わった

「…閉めたはずの鍵が空いている」

怖い、怖い、怖い
そこにあるのは確かな恐怖
なにがあるのかわからない、何がいるのかもわからない
玄関に綺麗に並べられた女性物の靴

そして消したはずの台所から漏れる光
確実に誰かいる
流れる水の音が伝わる

静かに、ただ静かに
息を潜め扉を占める
そこにいる誰かに見つからぬよう、ただただ静かに

誰かなんて言っているけど誰かなんてすでにわかっている
そうだ
そこにいるのは
そこで私の作った朝食を流しに捨てているのは


昨日物陰から先輩を見ていた雪ノ下先輩に違いなかった


緊張のあまり受話器に腕ををぶつけ、受話器が音をたてて床に落ちた
「…!」

驚いたように彼女は振り替えると私の顔を見て何かを悟ったかのように肩をすくめた

「来るとおもってたわ一色さん、それにしてもはやいのね」

「…来るとおもってたとは盗聴でもしてたんですか?」
はいそうですと言われても今さら驚かな
不法侵入にストーキング
どう考えても盗聴ぐらいされていてもおかしくはない

「いきなりだけどもうあの男に付きまとうのはやめなさい」

「つきまとう?つきまとっているのは雪ノ下先輩じゃないですか!」

何を言ってるんだこの女は
先輩につきまとい迷惑をかけ、不安にさせたのは自分だ
なのに私が先輩につきまとってる?
意味がわからない

「そう、だけど私は比企谷君の彼女として接しているだけなのだけれど」

「なっ!?」

「だからこそ彼氏の不安を取り除きたいと思うのは間違いなのかしら?」


この女は狂っている
多分何を言ったって無駄だ
背筋に走る恐怖、これ以上は言ってはならないと抑止する

この言葉だけは言ってはならないと

なんで…?

どうして言ってはいけないの?

本当の事じゃん

ダッテアナタハモウ

「すでに思いを伝えて先輩にフラれたじゃないですか!」

「…」


言ってしまった
場に広がる静寂
雪ノ下先輩は一瞬考え混むと小さく唇を動かす

ソ レ ハ ア ナ タ デ シ ョと

その瞬間疑問におもった
どうしてあの言葉に戸惑ったのか
どうしてあの言葉が鮮明に頭の中にリプレイされるのか


そしてどうして私は告白の結果を思い出そうととしないのか


ちがう
ちがう ちがう ちがう
ちがう ちがう ちがう ちがう ちがう
ちがう ちがう ちがう ちがう ちがう ちがう ちがう


ただの思いすごしだ、先輩は多分いつも通りぶっきらぼうで乱暴でだけど優しい…
オレニハホカニ

ちがうそんなこと!そんなこといったんじゃ…
スキナヤツイルンダワ

聞きたくない!ちがうよ、先輩はそんなこと
オマエトハツキアエナイ






「…なんでここに一色がいるんだ」

「…先輩?」

振り替えれば大好きな先輩
そうだ先輩がいる、何も間違ってないよ
それだけで十分だよ

私の本物はここにあるから
いつだって受け入れてくれるから

「ねぇ先輩、私…先輩の彼女ですよね?」

「…っ」


「…」

「…俺の彼女は雪ノ下だ、あのときも言ったがお前とは付き合えない」


「…はい、わかりました」





「…なら」


「…もういいです」





ピピピピっと目覚ましのアラームが響く
先輩ったら起きたなら目覚まし止めてくださいよー
パタパタとスリッパをならしながら部屋に駆け込む

なんかこうしてると新婚さんみたいですねー先輩

先輩あれから口数は減ってしまったけどずっと私のそばにいてくれる私の恋人
私だけの本物

と言うかお風呂位はいってくださいよーハエ集ってますよ?
なんなら一緒に入りますか?

愛してますよせーんぱい♪

終わり

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