凛「プロデューサー。それじゃ、また明日ね」
P「ああ。気をつけて帰るんだぞ」
卯月「お疲れ様でした!」
未央「バイバイ、プロデューサー!」
P「おう。2人も気をつけてな」
バタン
P「さてと、俺もぼちぼち帰る準備するか」
楓「あ、プロデューサー。もう帰るんですか?」
P「ええ。やることはやったんで」
楓「なら、一緒に帰りましょう」
P「そうですね」
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帰り道
P「………」
楓「………」
P「ふう。今日も疲れたな」
楓「ふふっ。兄さんはいつも疲れていますね」
P「大人数のスケジュールを管理するのって大変なんだぞ? しかも全員女性だし」
楓「でも、仕事に充実感は感じているんですよね?」
P「そりゃあな。アイドルのプロデューサーは、一応天職だと思ってる」
P「それでも、身体や精神がこたえるのとは別問題だしな」
楓「愚痴なら聞いてあげますよ。お酒と一緒に」
P「そんなこと言って、理由つけて飲みたいだけじゃないのか?」
楓「あ、ばれちゃいました?」
P「おい」
P「まあ、今日は飲みに行ってもいいかな。もうすぐ給料日だし」
楓「現金をもらって元気に……ふふっ」
P「さ、今日はどこの店に行く?」
楓「反応がないと寂しいです……」
女性にしては高身長。すらりとした大人っぽいスタイルから繰り出される寒いギャグ。
彼女――高垣楓は、何を隠そう俺の妹である。年はひとつしか違わないが、間違いなく実妹である。
半年前。アイドルのプロデューサーとして働いていた俺は、モデル業で悩んでいた楓に対して、半ば冗談でアイドルへの転身を勧めてみた。
そうしたら思いのほか食いついてきて、今にいたるというわけだ。
兄妹関係を隠しているわけではないが、一応職場ではアイドルとプロデューサーという関係を前提に接している。
ちなみに、現在は兄妹2人で仲良く同居中。
とある日の朝
P「……ぐう」
楓「おはようございまーす……(小声)」ガチャ
P「……すぴー」
楓「起きてますかー……?」
P「……すう」
楓「……ふふっ」スッ
楓「(静かに枕元まで移動して……)」
楓「ふう~~っ」
P「ぬわおっ!? な、なんだ!?」
楓「おはようございます、兄さん♪」
P「楓か……お前、何したんだ」
楓「兄さんの耳に息を吹きかけました」
P「理由は」
楓「喜んでもらえるかと思って」
P「びっくりするだけだわ!」
楓「そうですか? 気持ち良かったりとかは?」
P「そんなもん……!」
P「……ちょっとゾクッときた」
楓「素直な兄さんは好きです」
楓「もう一度してあげましょうか」
P「結構です。ほら、さっさと出てけ。着替えるから」
楓「残念」ショボーン
朝食中
P「楓」
楓「なんでしょう」
P「お前はもっと兄に対して敬意を持つべきだ」
楓「敬意? いったいどのような経緯でそんなことを」
P「頻繁に行われる今朝のようなイタズラを経験してそう感じた」
楓「乙女のかわいいイタズラですよ?」
P「25にもなって自分を乙女と言うのはどうなんだろうな」
楓「では、少しだけ敬意をもって接してみましょう」
P「おう」
楓「……コホン」
楓「さすがはお兄様です」
P「はい?」
楓「この目玉焼き。一切形が崩れていませんし、塩コショウの塩梅も絶妙」
楓「まさに目玉焼きづくりの天才です」
楓「なかなかできることじゃないよ(裏声)」
P「よくわからんが馬鹿にしてないか?」
楓「いいえ。事実おいしいじゃないですか、兄さんの作る目玉焼き」
楓「あと、だし巻き卵もおいしいですよね。おつまみに最適です」
P「食べ物のことばっかりだな……」
P「他にないのか? 顔がかっこいいとかさ」
楓「……え?」
P「真顔でその反応はちょっと悲しくなる」
とある休日
楓「2人で並んで買い物だなんて、まるでデートみたいですね」
P「そう思うか?」
楓「兄さんは不満ですか? 私がデートの相手だと」
P「そういうわけじゃないが……今日の買い物リストを朗読してみてくれ」
楓「ええと……マイナスドライバー、洗濯ばさみ、スポンジ、トイレットペーパー、あとは夕食の材料ですね」
P「恋人と一緒に買いに行くにしては所帯じみていると思わないか」
楓「なるほど……そうですね。これは夫婦で買いに行くものですね」
P「妹よ。そんなに俺とデートしていることにしたいのか」
楓「あら。私は兄さんとなら結婚してもいいと思っていますよ?」
P「嘘だろ」
楓「はい。でも、今日は甘えたい気分なので」ギュッ
P「お、おい。さすがにアイドルが街中で腕をからめるのは」
楓「大丈夫ですよ。最低限の変装(帽子と眼鏡)はしていますし、たとえバレても兄妹同士のスキンシップです」
P「まったく……」
楓「悪い気分ではないでしょう?」ニコニコ
P「……まあ、見た目だけなら美人が相手だからな」
楓「む。なんだか引っかかる言い方ですね」
P「中身が激寒ダジャレお姉さんじゃなければなあ」
楓「そんなこと言う人には……えいっ。こちょこちょ~」
P「うおっ!? ば、ばかやめっ、はははっ!」
P「この、お返しだ!」
楓「きゃっ、ふふっ、ちょ、ちょっと兄さん、それやりすぎ、ふふふっ」
凛「………」←たまたま近場にいた
凛「休日の街中で何やってんの、あのふたり……」
とある日の夜
美優「どうも、お邪魔します」
P「どうぞどうぞ。狭い部屋ですけど」
楓「今日は3人で宅飲みですね」
楓「ここでならいくらでも酔い潰れて大丈夫なので、遠慮なく飲みましょう」
美優「いえいえ、さすがに潰れるまでは飲まないようにします」
楓「迷惑とか、気にしなくてもいいんですよ?」
美優「……Pさんに、はしたないところを見せたくないので……」ボソリ
P「さて、早速酒を用意っと……あれ、美優さんどうかしましたか?」
美優「い、いえっ……! なんでもないですから……!」
楓「………」
楓「兄さん、兄さん」チョンチョン
P「ん?」
楓「今日のお酒、強いのを選んでください」ゴニョゴニョ
P「いいけど、どうして」
楓「ひょっとすると、美優さんの本音が聞けるかもしれないので」
しばらく経って
楓「うーん……あぅ~」グッタリ
P「あんなこと言ってたくせに、自分が先に潰れるのか……」
美優「結構ハイペースで飲んでられましたから……」
美優「でも、珍しいですね……普段なら、楓さんが一番アルコールに強いのに」
P「ああ、店で飲む時はそうですね。でもこいつ、うちで飲む時は大抵先に潰れるんです」
美優「そうなんですか? へえ……こちらで飲むのは初めてなので、知りませんでした」
楓「……すう」
P「おっと、ついに眠り出した」
P「とりあえず、毛布でもかけておこう」
美優「………」チビチビ
P「どうしました? そんなに遠慮せず、もっと飲んでいいですよ」
美優「いえ、その……楓さんが寝てしまったので、ふたりきりだなって、思いまして……」
P「そういえば、美優さんとふたりで飲むっていうのは初めてですかね」
美優「はい……」
美優「あの、Pさん」
P「なんですか」
美優「わ、私達……同い年ですよね」
P「ええ、そうですけど。それがなにか」
美優「えっと……まあ、それはあまり関係ないんですけれども」
P「関係ないんですか」
美優「その……私、Pさんのことが、その――」
ガシッ
P「ん?」
楓「………」ジー
P「なんだ楓、起きたのか。寝るんなら自分の部屋に」
楓「おんぶ」
P・美優「えっ」
楓「兄さん。おんぶして連れてって」トロン
P「あー、またいつものが出たな」
美優「いつもの?」
P「こいつ、家で酔い潰れると子供みたいに甘えてくるんですよ。普段の数倍レベルで」
楓「ねー、いいでしょう? いっつもしてくれてるんだから……ね?」ギュー
P「わ、いきなり抱きつくなっ。まったく、なんでお前はうちで飲むといつもそうなるんだ?」
楓「だって、私と兄さんの家だもの……落ち着きすぎて、つい酔いに負けちゃうの」ダキッ
楓「ほら、はやくぅ」
P「今日は我慢しろ。美優さん来てるんだから」
楓「……みゆさん?」
楓「………あ」
P「お前、酔って美優さんの存在忘れてたな?」
楓「……ええと、その」
楓「お、お見苦しいところをお見せしまして」
美優「うふふ、いいんですよ。楓さんのかわいらしい一面も見られましたから」
楓「さ、さすがに恥ずかしいです……」
P「楓のうろたえる姿は珍しいな」
飲み会も終わって
美優「すみません。泊まらせていただくことになってしまって……」
P「問題ないですよ。ちょうど空き部屋もありましたし」
P「それじゃ、おやすみなさい」
美優「はい。おやすみなさい」
P「さて、美優さんの案内もすんだし」
P「おーい楓。お前も部屋行って早く寝ろよー」
楓「……はあ。今日は失敗しちゃいました」
P「美優さんは他人に言いふらすような人じゃないし、安心していいと思うぞ」
楓「それはそうですけど」
楓「………」
P「どうした。ぼーっとして」
楓「兄さん……兄さんは、いつかいい人を見つけて結婚しますよね」
P「……なんだ? 急に」
楓「酔っ払いの話に脈絡はないものです」
P「自分で言うのか……」
P「まあ、いつかは結婚したいと思ってる。でも、それは楓も同じだろう」
P「アイドルを引退して、どこかの男と結婚する。そんな日が多分やってくる」
楓「そうですね……でも」
楓「その日が来るまでは、こうして兄さんと一緒にいたいです」
P「……ああ。俺もそう思う」
楓「ふふっ」
楓「それじゃあ、おやすみなさい」
P「おやすみ」
おしまい
楓さんは成人してるけど25歳児だし、ちょっとくらい妹にしてもバレへんか
短いですがお付き合いいただきありがとうございました
次はおそらく未成年のアイドルを妹として描くと思います
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