「雪ノ下さんと比企谷君、仲良いんだね」
いや…何の話だよ。
目の前の席に陣取った海老名さんが真剣な口調で続ける。
「いやいや、はや×はちを推す私としてはそちらの道に行かれては困るのよ。
まっすぐ突っ込んでほしいのよ」
何を突っ込めというのか、この女狐は。
だいたい、本道はそちらの道だ。
「いや、別に仲良くないだろ。奉仕部として一緒に活動しているだけだ」
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勢いよくかぶりをふって、彼女は答える。
「違う、違うの!比企谷君のイメージが壊れちゃうの!
孤独でへたれた比企谷君を葉山君が優しく慰めて、徐々に心を開いて
いつの間に体も開いちゃうっていう純愛モノが書けなくなっちゃううううううう」
純愛じゃないだろ、それ。
明らかに体目当てじゃねーか。
目の前でふんすふんすし始めた海老名さんを視界からそっと外し
俺はさっきの発言を回想することにした。
『雪ノ下さんと比企谷君、仲良いんだね』
これに似たようなことを誰かから言われた気がする、誰にだったか。
由比ヶ浜は…違う、コミュニケーション能力の塊である彼女が言うわけがない。
平塚先生は…生徒の関係に嫉妬するほど追いつめられてはいな…いこともないか。
戸塚はそんなこと言わない。
他に雪ノ下と俺を知っていて、言いそうな人物は一人いる。
雪ノ下陽乃だ。
だが、あのとき言われたことはこんな軽い意味ではなかったと記憶している。
鉄のようにひんやりとして、ずっしりと重い言葉だった。
背負いきれずに、落としてしまいそうになるほど。
彼女は無機質な表情で、こちらをじっと見つめていた。
「なんか、嫌なこと私言ったかな」
顔に出ていたらしい。
「いや、なんでもねーよ。思い出しただけだ」
だが彼女はぺこりと頭を下げた。
「ごめん、仲がいいとか、私が言うことじゃないね」
「いいんだよ、そんなことは。取りあえず、はや×とべ、だか、はや×玉縄だかを進めてこい」
彼女はこっくりと頷いた。
「そうだね、私もたま×はちはありだと思う…じゃ、またねぇえええええええ」
彼女はそう言って教室から全速力で走り去った
そうだねって何にも同意できていないのだが、それはいいのか。
…いや、我ながら愚問だった
それはいいのだ
どうでもいいのだ。
俺も同じくらいどうでもいいと思っている
薄暗い教室で独りになった俺は、まわりを真っ赤に燃やしてしまう夕陽を、疎ましく思った。
今日はおわりになります、短くなると思います
>>4が一部抜けてました
全文
他に雪ノ下と俺を知っていて、言いそうな人物は一人いる。
雪ノ下陽乃だ。
だが、あのとき言われたことはこんな軽い意味ではなかったと記憶している。
鉄のようにひんやりとして、ずっしりと重い言葉だった。
背負いきれずに、落としてしまいそうになるほど。
ふと、海老名さんの声が途切れていることに気づくと
彼女は無機質な表情で、こちらをじっと見つめていた。
「なんか、嫌なこと私言ったかな」
顔に出ていたらしい。
「いや、なんでもねーよ。思い出しただけだ」
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