【しんけん!!】左文字さよ「妹が子犬を拾ってきた」 (20)

さよ「捨ててきなさい」

左文字こゆき「そりゃあないよさよ姉ちゃん! かわいそうだと思わんの!?」

子犬「クゥン……」

さよ「はぁ……そうね、たしかに今のは私も言い方が悪かったわ」

こゆき「お姉ちゃん……!」

さよ「元居た場所に戻してきなさい」

こゆき「一緒だよ!!」


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左文字みよし「まあまあ姉さん、いいじゃない子犬くらい」

さよ「何言ってるのよみよし。憑喪討伐に町内復興の手伝いもあるし、このお屋敷の掃除や片付けだってまだまだだっていうのに、刀匠さんに余計な迷惑をかけるわけには……」

みよし「あら、その事なら心配いらないわよ」

さよ「えっ?」

みよし「刀匠さんにお屋敷で子犬を飼ってもいいか聞いてみたら、番犬になってくれそうだし別にかまわないって、さっきお許しをいただいたわ♪」

さよ「いつの間に……」

みよし「こゆきちゃんが姉さんから逃げ回ってる間に」

さよ「……なるほど。つまりあれは時間稼ぎだったわけね?」ジト

こゆき「てへへ……」

みよし「と、いうわけで、ここ(お屋敷)で一番えらい人からの許可はあるわけなのだけど」

こゆき「ねえ、いいでしょお姉ちゃん!」

さよ「……仕方ないわね……」

さよ「でも、自分で拾ってきた以上はちゃんと自分で面倒を見る事。ご飯の用意やしつけその他諸々、ちゃんと世話ができてなかったら捨ててくるから。いいわね?」

こゆき「ありがとうさよ姉ちゃん! 大丈夫、うちがちゃんと面倒見るけん! 良かったなータロ助ー!」ナデナデ

子犬「ワンワン!」

さよ「もう名前付けてるし……」

みよし「うふふ、お屋敷がにぎやかになりそうね」

こゆき「そーれ、取ってこーい!」ポーイ

子犬「ワンワン!」ダッ

こゆき「あははっ、えらいえらい! お前もたくさんご飯食べて、うちみたいにおっきくなりー!」

子犬「ワン!」尻尾フリフリ


上部たいま「ふふ、すっかりこゆきさんに懐いてるみたいですね」

さよ「みよしにもね。でも、私が近付くと露骨に警戒するのよあの犬……!」

たいま「あらあら。もしかしたら、最初に叱られたことをまだ覚えてるのかもしれませんね」

さよ「……まあ、言いつけ通り、世話は全部こゆきがやってるみたいだから、別にいいんだけどね」

たいま「……もしかして、妹さんが子犬に取られてしまったようでさびしいんですか?」

さよ「なっ……べっ別に、そんな事あるわけないでしょ!」

たいま「ふふふ……」ニコニコ

さよ「その目はやめて。やめなさい」

さよ「……ところで、あそこは何をやってるの?」


< ソーレトッテコーイ ワンワン! アハハー

一文字なずみ「しゅぅぅぅ……! フーッ!」ピリピリ


たいま「……威嚇、でしょうか?」

さよ「物陰から?」

たいま「子犬やこゆきさんには全然気付かれていませんね」

さよ「むしろ気付かれたらまずいんじゃないの? この前見かけた時は、子犬に追い回されてたわよ」

たいま「ああ、完全に懐かれてる風でしたね……」

さよ「なずみの方は本気で逃げてるみたいだったけどね」

たいま「……動物との相性って、ありますわよね」

さよ「……そのうち刀抜くんじゃないかと思うと心配だわ」

たいま「さ、さすがにそれは刀匠さんが止めるのではないかと……」

さよ「だといいけど」

さよ「こゆき」

こゆき「は、はい……」

さよ「あの子犬を飼う時、私がなんて言ったか覚えてるわよね」

こゆき「せ、世話とかは全部うちが自分でするように、でしょ? お、覚えとーよ!」

さよ「で、私に何のお願いがあるって?」

こゆき「……し、しばらくの間、タロの面倒を代わりに見ててほし、いや、ください! この通り! お願いやけん!」ドゲザァ

さよ「はぁ……そのうちこうなると思ってたのよ……」

みよし「とはいっても姉さん、流石にこれは仕方がないでしょう? 刀匠さんと一緒に、疎開村まで遠征する事になっちゃったんだから」

さよ「太刀の子がまだほとんど居ないから、こゆきが引っ張りだこになるのは確かに仕方ない事だけど……だったら短刀や脇差ばかりちまちま打ってないで、もっと思い切って鍛刀すればいいのに……」ブツブツ

みよし「魂鋼の質も量もまだまだ全然足りないし、仕方ないわよ」

こゆき「お願いお姉ちゃん! パパッと憑喪片付けて二、三日で帰ってくるけん、その間だけ! お願い!」ウルウル

さよ「くっ……仕方ないわね。一緒に連れていったりなんかしたらそれこそ刀匠さんに迷惑をかけちゃうだけだし。……今回だけ、特別だからね!」

こゆき「ありがとう! さよ姉ちゃん!」ガバァ

さよ「ああもうっ、くっつくなうっとうしい!」グイ

みよし「そうやって、何だかんだ言って結局妹に甘い所、私は好きよ」

さよ「五月蠅いわよ」

みよし「うふふ」

さよ「……はぁ。行っちゃったわね……無事に戻ってこないと許さないわよ……」

さよ「……さて、問題はこっちよね……」

子犬「クゥン?」


さよ「ほら、散歩に行くわよ――ってこら! どこ行こうとしてるのよ! こっち! よその家のごはんの匂いに釣られてるんじゃないっ……!」

さよ「うっ、臭い……! でもこゆきがちゃんとやってた散歩中のウ○コの処理くらい、姉の私が出来なくて……ううっ」

さよ「犬に食べさせちゃいけないものって何があるの……? ええとなになに、ネギ類は駄目、チョコレートも駄目で……ああもうっ、すぐ用意してあげるからそこ座ってなさいってば!」

さよ「ひぃぃぃっ、わっ、私の布団が抜け毛だらけに……! あんたの寝床はこっちにあるでしょうが!」

さよ「……日記に、足跡が……このクソ犬ぅ! 殺すッ……!」


< ウラミハラサデ...!! キャインキャイン ワー! キャー! ドタバタ...

こゆき「無事にただいまーっと! お姉ちゃん! タロは元気――」

子犬「ワンワン!」ダダッ

こゆき「タロー! あははっ、出迎えてくれたんやね! ただいまー!」ナデナデ

さよ「……こゆき、おかえり……」

こゆき「さよ姉ちゃんもただいま! タロの面倒見ててくれて、ありがとね!!」

さよ「ふふっ、いいのよ、このくらい……」

みよし「……姉さん、何だかちょっと、やつれてない……? 大丈夫?」

さよ「ふふっ……大丈夫よ、何なら留守中の成果を見せてあげましょうか?」

さよ「――タロ助、お座り」

子犬「」ビシッ

さよ「伏せ」

子犬「」バッ

さよ「お手」

子犬「」サッ

さよ「おかわり」

子犬「」スッ

さよ「取ってきなさい」ポイ

子犬「」ダダダッ ...ダダダダッ ポトッ

子犬「ワン!」ハッハッハッハッ

さよ「……どんなもんよ」フッ

こゆき「うわぁー! お姉ちゃんすごーい!! タロもすごい! えらかねー!」ナデナデ

みよし(……一体、ここまで躾けるのにどれほどの犠牲を払ったのかしら……)ホロリ

< ヨーシイクヨータロー! ワンワン!

さよ「ふぅ……こゆきも無事に帰ってきた事だし、これでもうあの生意気な子犬の世話をしなくて済むわね。やっと肩の荷が下りたわ」

さよ「さて、今日は任務の当番からも外れてるし、一日ゆっくりと……」

さよ「…………」

さよ「…………」ソワソワ

さよ「…………」ウーン

さよ「……こゆきがちゃんと子犬の世話をしてるか、様子でも見に行こうかしら。そうね、せっかく厳しく躾けたのに、甘やかしてたらいけないし」ソソクサ

たいま(あらあら)

みよし(うふふ)

さよ「……何よ」

たいま「いえ?」アラアラ

みよし「いいえ?」ウフフ

さよ「何なのよ!」

さよ「また近いうちに、周辺の調査と憑喪討伐の為に、疎開村に遠征する必要があるらしいわね……」

さよ「今度は前回より念入りに準備していくそうだから、もうしばらくは屋敷での鍛錬や町内でのお仕事が続く感じかしら」

さよ「まあ刀匠さんが扱える熱量の限界もあるし、私はまた留守番になりそうだけど……あら?」

こゆき「…………」トボトボ

さよ「こゆき? あなた……」

こゆき「あっ……さよ姉ちゃん……」ウルッ

さよ「あなた――あの子犬はどうしたのよ?」

みよし「そう……親犬が見つかったのね……」

さよ「他の兄弟犬達もね。散歩中にばったり出くわして、そのまま一緒にどこかへ行っちゃったらしいわ。まったく、これまで誰が世話してやったと思ってるのかしら」

みよし「主にこゆきちゃんよ」

さよ「私もよ」

こゆき「うう、タロ……」ショボーン

さよ「それで、帰って来てからずっとこんな調子ってわけ」

みよし「いくらか復興も進んできたとはいえ、そんなに何頭も一緒に飼えるほどの余裕はまだないものね……どうしたものかしら」

さよ「まったくもう……そんなに寂しいなら、親犬なんか無視して無理やり連れて帰ってくればよかったじゃない」

こゆき「そっ、そげな事できんよ! タロがせっかく家族と再会できたんよ!? それを……それをうちのわがままで引き離したりなんかできんよ……」

さよ「だったら、これから家族と一緒に暮らせるようになったタロ助の幸せを、あなたも喜んであげればいいでしょう」

こゆき「でも……でもうちが面倒見なくて大丈夫かな? ほら、憑喪に襲われたりとか……」

さよ「この一帯の憑喪は、他でもないあなたが中心になって一掃したんじゃない。心配いらないわよ」

こゆき「でも、でもさ……ほら……」

さよ「こゆき」ポフ

さよ「馬鹿じゃなければ、危険な場所へわざわざ行ったりしないわよ。タロ助の家族が、憑喪が居ない安全な場所に留まり続けるなら……この辺りで、またそのうちひょっこり会うことだってきっとあるでしょ」

さよ「だから……寂しいのはわかるけど、いつまでもそんなメソメソしてるんじゃないの」

こゆき「……グスッ……うう、さよ姉ちゃぁぁぁん!」ギュゥ

さよ「まったくもう……背ばっかり伸びても中身がまだまだ子供なんだから……」ポフポフ

みよし(……これだから、私もこゆきもお姉ちゃんには頭が上がらないのよね……ほんと、頼りになる自慢の姉だわ)

みよし(こゆきに抱き付かれて足が浮いちゃってなければ、もっと良かったんだけど)フフ

さよ(お黙り)

さよ「さて、こゆきもすっかり元気になったし、そろそろ次の疎開村遠征に向けて本格的に準備を進めておかないといけないわね……」

さよ「留守番なら留守番で、その間の試し物作りの予定なんかを刀匠さんと話し合って決めておかないといけないし」

さよ「まあ、今日の所は屋敷の仕事当番をさっさと片づけて……って、あら? あれは……」

みよし「…………」キョロキョロ コソコソ

さよ「……何をコソコソしてるの、みよし」

みよし「!」ギクゥ

みよし「あ、あらさよ姉さん、お疲れ様。私は別に何も――」

< ピィピィ

さよ「……随分と個性的な鳴き声の腹の虫ね」

みよし「…………」ダラダラ

さよ「…………みよし」

みよし「ち、違うのよ? これはその……巣から落ちちゃったらしくって……放っておいたら野良猫とかに食べられちゃうし、だからその、ええと……」

さよ「みよし」

みよし「せっ、世話は全部、私がするから! ね? こゆきちゃんが子犬を拾って来た時みたいに、刀匠さんにもちゃんとお許しをもらってくるし! だ・か・ら……ねっ?」ニコッ

さよ「…………」

みよし「…………(汗」←貴重な回復要員としてよく布陣に組み込まれる

さよ「……捨ててきなさい」

みよし「姉さぁん! ね! お願いだから!」

さよ「捨ててきなさい! 私はもう、絶対、絶対に! あんた達の代わりに動物の面倒見たりなんかしないんだからね!?」


――その数日後、刀匠のお屋敷には、遠征でみよし不在の隙を狙って襲来したなずみから雛鳥を守るべく、激しい死闘を繰り広げるさよの姿があったという……。


なずみにゃんに一本釣りされて事前登録までしてしんけん!!を始めたと思っていたら、他の子らより真剣少女同士での絡みが想像しやすい左文字姉妹での妄想が爆発していた。な、何を言ってるかわかんねーと思うが(略

公式鬱イベもメチャ美味しかったけどクッソ仲良しな左文字姉妹のキャッキャウフフも見たいです。もっとしんけんSS増えろー

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