【白猫プロジェクト】シュラ「鬼の理」 (49)

白猫プロジェクトのSSです

3500万DL記念イベント、一部キャラのネタバレがあるのでご注意を


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432310222

―鬼の棲む島、キサラギの家

シュラ「酒呑の君の件、聞きましたか」パチン

キサラギ「勿論じゃ。人間もなかなかやるもんじゃのう」パチン

シュラ「何呑気なことを言っているんですか。長老達の緊急招集なんて、何百年ぶりのことか」パチン

キサラギ「アオイの島の長老も大変じゃのう。まだ幼子だというのに」パチン

シュラ「先代が存命で助かりました。彼ならば上手くまとめてくれるでしょう。

…それに、大変なのは彼らだけではないでしょう」パチン

キサラギ「何のことじゃ?」パチン

シュラ「とぼけないで下さい。あなたが進めていた例の和平協定、白紙になりそうだとか」パチン

キサラギ「人の心は移ろいやすいからのう。

脅威に怯えながら暮らすより、脅威そのものを無くした方がいいと考えるのは道理じゃ」パチン

シュラ「それは人の道理です。我らには我らの理がある」パチン

キサラギ「互いの理を押し通そうとすれば、戦争になるじゃろうな」パチン

シュラ「…あなたはそれでいいのですか」パチン

キサラギ「仕方ないじゃろう。時代の流れ、人の心までは操れぬ。

数十年、数百年かかるかは分からぬが、いつかは分かりあえる日も来るじゃろうて」パチン

シュラ「…詰みですか」

キサラギ「そうじゃな。わらわの勝ちじゃ。

…それにしても今日のお主、やけに手が粗っぽかったぞ」

シュラ「指す相手を間違えました。…今日はこれで失礼します」

キサラギ「何じゃもう帰るのか。つまらんのう」

シュラ「武人は暇ではないのです。

これから更に忙しくなるので、しばらくはここに来ないでしょうね」

キサラギ「遊び相手がいなくなると寂しいのう。…シュラ、達者でな」

シュラ「そちらこそ」

シュラ(それにしても、酒呑の君を討つとは…クジョウの島の生き残り、全く余計なことをしてくれましたね)

―飛行島

シュラ(…やはり気晴らしをするならここですね)

キャトラ「あら、シュラじゃない。どうかしたの?」

シュラ「ええ、バロン殿と一局手合わせ願おうかと」

キャトラ「ハハーン、さてはアンタ仕事をサボって来たのね?」

アイリス「キャトラ、失礼なことを言っちゃダメよ。…すいません、シュラさん」

シュラ「いえ、構いません。サボりなのは事実ですから」

キャトラ「サボってるんかい!」

シュラ「最近どうにも仕事が増えましてね…適当な所で息抜きでもしないとやってられません。

…あなた方、酒呑の君という鬼を知っていますか?」

赤髪「!!」

キャトラ「ああ、それなら―モガッ」

アイリス「い、いえ初耳です」

シュラ「…?まあ、その鬼が人間に討たれてしまいまして。

その後の処理に色々と手間取っているんですよ」

キャトラ「プハッ―でも、そいつ悪い鬼だったんじゃないの?

それならアタシ達にとってはいいことだと思うけど」

シュラ「何を言いますか。確かに奴は暴君でありましたが、多くの鬼を率いる君主でもありました。

それが討ち取られるということが、どういうことか分かりますか?」

アイリス「い、一体どうなるんですか?」

シュラ「まず彼の配下達、指導者を失った彼らはより無秩序に人間達へ略奪を行うでしょう」

赤髪「!!」

シュラ「そして人間、それまで友好的に接していた鬼達に、人間か攻撃を仕掛けるといった事例が既にいくつか報告されています」

キャトラ「な、何でそんなことになるのよ!」

シュラ「人間が鬼に勝ったということで、もしかしたら自分達でも勝てるのではないかと錯覚してしまったのでしょうね。

人間達は、表向きは友好的でも内心では怯えていたんでしょう」

アイリス「そんな…」

シュラ「騒ぎの鎮圧、鬼達の警護、酒呑の君の配下と領地の分配、人間達との対話、あるいは抗争

…やることが多すぎて、いい加減にうんざりさせられます」

赤髪「汗」

キャトラ(な、何だか知らない内に大事になっていたみたいね)

アイリス(この事、シズクさんとイサミさんには…)

シュラ「全く、鬼の頭領を討つなんて馬鹿なことをしでかした輩を見つけたら、この手で切り捨ててやりたい気分ですよ」

アイリス(絶対に教えちゃダメだ…!!)




イサミ「皆さま、お揃いでどうしたのです?」

キャトラ(最悪のタイミングで来たー!!)

イサミ「…!! 貴様、蒼の鬼神!!」

シュラ「…ほう、クジョウの島の生き残りですか。まさかこんな所に隠れていたとは」

キャトラ「アンタ達、知り合いなの?」

シュラ「ええ、彼らの一族には長い間世話になっていますから」

イサミ「戦場で何度か手合わせしましたが、恐ろしい強さでした。

…皆さまは、かような者とも親交があったのですね」

アイリス「イサミさん、シュラさんは悪い方じゃ…」

イサミ「あなた方にとってはそうだとしても、我らの先祖の多くが奴に討ち取られました。

彼らの無念を晴らさねば…」

シズク「イサミ、どこに行ったかと思えばこんな所に…」

イサミ「!! シズク、下がっていろ!」

シズク「…!! 貴様は…!」

シュラ「おや、宗家の方もここにいたのですか。

軽い気晴らしのつもりで来てみたら、とんだ収穫ですね」

―シズクが剣を抜き、イサミが矢を構える!

キャトラ「ちょ、ちょっとストーップ!アンタ達、まさかここで戦うつもりじゃないでしょうね!?」

シズク「奴に討たれた先祖の恨み、晴らさねば…!」

イサミ「我ら、ご先祖様に顔向けできぬ!」

シュラ「お止めなさい。今あなた達と戦うつもりはありません」

シズク「なっ…!」

シュラ「この飛行島は、どの国の干渉も受けない中立地帯。

そんな場所で私怨からの戦いを仕掛けようなどと、正気ですか?」

イサミ「ぐっ…!」

シュラ「…そのように先祖の無念とやらに縛られて、あなた方は酒呑の君を討ったのですか。

何も守るべきものの無いあなた方が」

イサミ「何だと…!!」

シュラ「彼を討つことで何が起きるのか分からなかったのですか?

鬼達はより無秩序に略奪を行い、人間達は哀れな希望を持って鬼達に侵略する…

このまま事態が大きくなれば、戦争は避けられないでしょう」

シズク「そんな…」

シュラ「一族最後の生き残り、何も守るべきものの無いあなた方の行動で、家族をや愛する人のいる鬼や人間が大勢死んでいくというのは、何とも皮肉ですね」

キャトラ「やめてよ!シュラ、アンタの言ってることは正しいのかもしれないけど、二人だってこれまでさんざん苦しい思いをしてきたのよ!」

イサミ「我々のせいで…戦争に…」

シズク「そんな、だって私達は…」

シュラ「…簡単に戦争を回避する手段を教えて差し上げましょうか?」

アイリス「そんなことができるんですか!?」

シュラ「あなた方二人の首を差し出せば良いのです」

赤髪「!!」

シュラ「頭領の敵を討てたというなら、彼の配下だった者達の暴動は一時的に治まるでしょう。

好戦派の長老の意気を削ぐこともできます。

その間に上手く手を回せば、戦争を回避できる確率はかなり下がるはずです」

キャトラ「でも、そんなのって…」

シュラ「自決する勇気が無いのなら、私が介錯致しましょう。

痛みをできるだけ少なくすることもできますが」

アイリス「待って下さい!まだそうと決まった訳では…」

シュラ「では他にどんな方法があると?

仮にこの島から逃げ出したとしても、私は彼らを追い続けます。

そして私を倒したとしても、刺客が死ぬまで送り続けられることでしょう。

どちらにしても、地獄への一本道です」

赤髪「汗」

シュラ「しかし、その様子ではこの場で話を進めるという訳にもいかないようですね。

…ではこうしましょう。あなた方にチャンスを差し上げます」

イサミ「チャンスだと?」

シュラ「明日の辰の刻、そこの空き地で待っています。

潔く死を選ぶのも、先祖の無念とやらを晴らすために私と戦うのも自由です。

…もっとも、私も負けるつもりはありませんし、結局たどる道は同じでしょう。

自分の死に様をどのようにするか、しっかり考えることですね。

…それからあなた」

赤髪「!!」

シュラ「立会人をお願いします」

キャトラ「何でよ!コイツは関係ないでしょ!」

シュラ「そんなことはありません。彼はこの島の主ですから。

どのような結末になるかは分かりませんが、公正に結果を見届ける者は必要でしょう」

赤髪「…」

シュラ「では、頼みましたよ」

赤髪「…」コクン

シュラ「おまけに一つ付け加えておきますが、仮に私を討てたとして、あなた達に人の世で暮らせる場所があると思わない方がいい」

キャトラ「どういうことよ、それ!」

シュラ「酒呑の君は酒の席で今まで手にかけた人間の話をするのが常でして、その中でもあなた方の話は特にお気に入りのようでした。

鬼達の中であなた方のことを知らないものはいないでしょう。

そして、彼らの配下だった者達が腹いせに人間達にこう吹聴しているはずです『我々の頭首を討ち取った人間には、鬼の血が流れている』と」

アイリス「そんな…」

シュラ「では私はこれで。バロン殿の所へ行ってきます」

キャトラ「ちょっと、待ちなさい!…って、もう行っちゃった」

アイリス「私達、どうしたらいいのかな…」

キャトラ「ちょっとイサミ、さっきから黙っていないで何か言ったらどうなのよ!」

イサミ「…皆さま、申し訳ないのですが、しばらくシズクと二人だけにさせてもらえませんか」

―イサミの腕に抱きかかえられたシズクは、今までに見たことのない程泣き崩れていた…

―夜

イサミ「少しは落ち着いたか?」

シズク「…ええ。済まない、また迷惑をかけてしまった」

イサミ「酔った時のお前と比べれば、あれ位大したことは無い。

…これからどうするつもりだ?」

シズク「…我々のしてきたことは、間違っていたのだろうか?」

イサミ「そんなことはない!人々を苦しめる悪しき鬼達から彼らを守ることが我らの使命ではないか!」

シズク「しかし、その鬼を討つことで新たな戦いを生まれるならば、結局はより多くの人々を苦しめることになるのではないか…?

ましてや戦争だなんて…」

イサミ「…」

シズク「もし、私の首で事態を収められるというのなら、私は…」

イサミ「滅多な事を言うな!!」

シズク「イサミ…」

イサミ「幼き頃から修行を続け、一族を皆失いながらも、やっとの思いで敵を討ち果たしたのだぞ!

それなのにお前は死ねと言われて、あっさり首を差し出すのか!?

使命から解放されたのだ!新しい人生が始まろうという所ではないか!

そのように命を粗末にするものではない!」

シズク「ではどうしろというのだ!?

私が生き続けた所で鬼達からは命を狙われ、人々からは疎まれ、どこにも行くあてなど無いではないか!!」

イサミ「私がいる」

シズク「…!!」

イサミ「世界中の人も鬼も我らの敵になろうとも、私はお前の味方であり続ける。絶対にだ」

シズク「…苦難の道になるぞ?」

イサミ「構うものか。生き恥もいくらでも晒してやるさ。

そうしていれば、その内幸運も転がり込んでくるかもしれないだろう?」

シズク「…済まない、イサミ」

イサミ「謝る必要などない。…生きるのだ、共に」

シズク「こうして共に酒を飲むのは何度目になるだろうな?」

イサミ「さあ、忘れてしまったな」

シズク「…蒼の鬼神から逃げ切れるだろうか?」

イサミ「逃げ切ってみせるさ。そうしなければ、我らに明日はない」

シズク「我らの明日に」

イサミ「我らの明日に」

―二人が酒を一気に飲み干す

シズク「!!イサミ、これはどういうことだ!!なぜ私の瓢箪に水が―ヒック」

イサミ「…済まない、シズク」

シズク「ま、まちなさいイサミ、こんなことゆるらないわよ…」

イサミ「…少しの間、眠っていてくれ」

―イサミはシズクを気絶させた

イサミ「お前は、何があっても生きろ」

―翌日、辰の刻、空き地

シュラ「…来ましたか」

赤髪「!!」

イサミ「…遅くなって済まない」

シュラ「宗家の方がまだ来ていないようですが?」

イサミ「シズクは…ここには来ない」

シュラ「…どういうつもりです?」

イサミ「無理を承知で頼む!どうか私の首一つで手を打ってもらえないだろうか!

シズクは、あいつだけは何とか許してもらえないだろうか!」

シュラ「何を言い出すかと思えば…無理に決まっているじゃないですか」

イサミ「お前は私達に何も守るものが無いと言ったな。

だが、私にはある。それは、シズクの未来だ!

あいつはこれまで散々辛い目に会ってきた!ようやく使命から解放されたんだ!

残された人生、あいつには人並みの幸せを手に入れて欲しい!どうか、頼む…!!」

シュラ「…あなた、何も分かっていないようですね」

イサミ「何…?」

シュラ「鬼の長老達があなたの首一つで満足するわけが無いでしょう。

人の世ならそれもまかり通るのかもしれませんが、今あなたが相手にしているのは鬼だということを忘れましたか?

あなたの始末が終われば次は彼女の番です」

イサミ「貴様…!」

―突然、イサミの身体から黒い気体が湧きでてくる!

赤髪「!!」

イサミ「何だ、これは!?」

―黒い気体は集まって鬼の形になった!

???「ふう…ようやくあしき心が集まったか」

シュラ「お久しゅうございます、酒呑の君」

酒呑の君「ほう、誰かと思えばそこにいるのは蒼の鬼神か」

イサミ「酒呑の君…!?馬鹿な、我らが倒したはずでは!?」

酒呑の君「愚かな人間どもよ。儂が霧にも風にもなれることを忘れおったか」

イサミ「まさか…仕留めきれていなかったとは」

酒呑の君「もっとも、避けるのが遅れてしまったせいで肉体は滅んでしまったがな。

幽体となってお前達の後をつけ、復活の機を見計らっていたのだ。

だが、この島の人間は呑気な者ばかりのようでな」

赤髪「汗」

酒?の君「人間のあしき心を食らえばすぐにでも力を取り戻せるはずであったが、予想外に時間がかかった。

今しがたお前から湧き出たあしき心―憎悪を餌に、ようやく力の一部が戻って来たのだ」

イサミ「ならば、今度こそ討ち取るまでの事!」

―イサミが弓を放つが、矢は酒呑の君の身体を通り抜けてしまった!

酒呑の君「無駄なことを。今の儂は幽体、人間には傷を付けることすらできぬわ」

イサミ「だが、それは貴様とて同じこと!我らに傷を付けることは出来まい!」

酒?の君「果たしてそれはどうかな?」

イサミ「何!?」

酒?の君「肉体が滅んだのなら、新たな肉体を手に入れれば良いだけの話」

イサミ「まさか…蒼の鬼神の身体を乗っ取るつもりか!?」

酒?の君「馬鹿め、もっと良い器があるではないか。お主の他にもう一人、儂の血を色濃く受け継いでおる者が」

イサミ「…!!貴様、まさか…」

酒?の君「女の身体では不便も多いだろうが、騙し撃ちもしやすかろう。飽きれば別の身体に乗り換えれば良いしな」

イサミ「そんなことは絶対にさせん!」

酒?の君「やかましいのう。お主は邪魔だ、下がっておれ」

イサミ「―!!て、てめえ、いったい、なに、しやがっ…ぐがー」

酒?の君「お主にかけた呪を解いてやったのだよ。

長年の悲願が叶ってさぞ嬉しかろう。そこで酔い潰れているがよい」

シュラ「酒?の君」

酒?の君「何じゃ、蒼の鬼神」

シュラ「お尋ねしたいことがございます。

あの女の身体を乗っ取った後は、如何なさるおつもりで?」

酒呑の君「ふむ、儂はこの飛行島がたいそう気に入った」

赤髪「!!」

酒?の君「この島を使えば、世界を征服することもたやすいじゃろう」

シュラ「…それは、過剰に人の世を侵すべからずという一族の掟に反するのでは?」

酒?の君「知った事か。歯向かうものは全て切り捨てればよい。どうだ、お主も儂に忠誠を誓えば分け前をやらんでもないぞ?」

シュラ「…ご厚意、痛み入ります」

酒?の君「では手始めに、そこで酔い潰れている男を殺せ。我が島にこのような酔っ払いはいらん」

シュラ「御意」

―シュラが、薙刀をイサミに向ける!

イサミ「ぐがー…zzz」

赤髪「!!」

シュラ「…あなたは、手を出さないで下さい。歯向かえばどうなるか、わかっているでしょう?」

赤髪「…」

―シュラが薙刀を振り下ろす!

―ガキン!と大きな音が響いた!

シズク「イサミに、手を出すな!」

イサミ「うーん…シズク?」

シュラ「ほう、どうやら呪が解けたのは、その男だけでは無かったようですね」


シズク「無事か、イサミ?」

イサミ「…ば、ばっかやろう!なんできやがった!

おれがいったいどんあおもいで…」

シズク「うるさい!馬鹿はお前だ!

あれだけのことを言っておきながら私一人を生かそうなどと、絶対に許さないからな!」

イサミ「シズク…」

シズク「共に生きようと、言ってくれたではないか。

もっと私のことを頼ってくれたっていいじゃないか…!」

イサミ「…わるかったな、シズク」

酒?の君「誰が来たのかと思えば、儂の器になる女ではないか。

蒼の鬼神よ、何をしている早く奴を…」

シュラ「酒?の君、確認しておきたいのですが、先ほどのあなたの言葉、あれは真意でございますか?」

酒?の君「何を今更。この島と儂の兵力、お主の武力があれば世界を制するなど簡単なことじゃろう」

シュラ「なるほど…


あなたの鬼族への反逆の意思、確かに聞き届けました」

酒?の君「!? 貴様、何を言い出すかと思えば…」

シュラ「鬼族にとって裏切りは最も重い罪。力に溺れ、一族の和を乱さんとする者には死をもって罰する。

…元長老ともあろう方がそんなことも忘れたのですか」

酒?の君「貴様…計ったな…!!」

シュラ「正直に言うと、昔からあなたのことが嫌いだったんですよ。

無駄な殺戮はするし、女子供にも平気で手を出す。

更に言うと、酒宴でのあなたの下品な話にはいい加減うんざりです」

酒?の君「言わせておけばいい気になりおって…!」

シュラ「後のことは長老達が上手くやってくれるでしょうからご心配なく。

…あなたはここで、消えて下さい」

酒?の君「おのれ、若造め!…覚えておれ!!」

―酒?の君の身体が空中に溶けて消えていく!

シズク「いけない、このままでは逃げられてしまう!」

シュラ「…確かにあなたの術は素晴らしい。霧や風になってしまえば人間には手も足も出せませんからね。しかし、相手が鬼でも同じ手が通用するでしょうか…?」

―シュラが大きく飛び上がり空中に薙刀を振り下ろすと、真っ二つに切り裂かれた酒?の君の姿が現れた!

酒?の君「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア」

―断末魔を残して、酒?の君は消滅した…

キャトラ「なんかでっかい悲鳴が聞こえてきたけど、一体どうなったの!?」

アイリス「良かった…皆さん無事なんですね」

―赤髪は、アイリスとキャトラに何が起きたのか説明した

キャトラ「…で、シュラは結局何がしたかったのよ?」

シュラ「その前に確認しておきたいのですが、今回の件で酒?の君に攻撃した者、傷を負わせた者はこの場に誰もいませんね?」

イサミ「あの、おれさっきゆみでうっちゃったけど」

シュラ「酔っ払いの戯言は聞くに値しません」

イサミ「なんだとう!?」

シズク「イサミ、落ち付いて」

シュラ「酒?の君の肉体を滅ぼしたのは偶然そこに居合わせた野生のウッホ、最終的にとどめを刺したのは私。

…つまり、あなた方は今回の件に全く関係していないことになる」

キャトラ「何でそうなるのよ!」

アイリス「待って、キャトラ。…シュラさん、続けて下さい」

シュラ「酒?の君はバカンスなどと嘘をついて同族から距離を置き、自らの死を偽装した上で飛行島に潜伏した。

目的は飛行島の占領と世界征服。これは、鬼族への反逆行為です。

それを偶然発見した私が、事が起きる前に酒?の君を処断することで未然に防いだ

…ということにして報告します」

赤髪「汗」

シュラ「要するに鬼族の内輪もめの話であって、あなた方人間とは何の関係も無い事件だった、ということです」

キャトラ「昨日と言ってることが全然違うじゃない!」

シュラ「そのように処理した方が、あなた方にも都合が良いと思いますが?」

シズク「すると、私達は…」

シュラ「あなた方はたまたま居合わせた観光客、ということにでもしておきます。

今回の件で鬼族から復讐される心配はありません。

あなた方が酒?の君を討ったなどという『誤報』も、すぐに忘れられることでしょう」

キャトラ「なんか、かなり無理があるような気がするんだけど…」

アイリス「でも、これでシズクさん達が狙われる心配はなくなったんだよね?」

シュラ「『誤報』のせいで各地で多少のいざこざが起きましたが、それもすぐに解消されるでしょう。

大規模な戦闘になる事態は避けられました」

シズク「しかし、もう人の世に我々の居場所など…」

シュラ「酒?の君の配下が広めた流言のことですか?反逆者の子分が広めたデマなど、信じる方がどうかしているでしょう。彼らの言葉に信憑性はありません」

アイリス「それじゃあ…」

キャトラ「シズク達が心配するようなことは全部解決したのね!」

シズク「…蒼の鬼神よ、聞きたいことがある」

シュラ「何でしょう」

シズク「なぜ、我らを助けるような真似をした?

我らは人間、しかも鬼退治を生業とする一族。

生かしておいたとしても、お前達にとって何の利もないはず」

シュラ「理解できなくても結構。

あなた方人間には人間の理、我ら鬼には鬼の理がある、それだけのことです。

…まあ、あえて言うならば気まぐれ、といったところでしょうか」

シズク「…」

シュラ「いずれ戦場で再び相見えることもあるかもしれませんが、その時は容赦致しません。

…では私はこれで」

シズク「…待て!」

シュラ「…まだ何か」

シズク「ありがとう…!」

シュラ「…礼には及びません」

―そう言い残すと、シュラはそのまま去っていった

イサミ「…よかったな、シズク」

シズク「うん…うん…!!」

キャトラ「アイツも素直じゃないわね」

アイリス「でも、本当に良かった…!」

赤髪「♪」

シュラ(なぜ助けた、…か)

―あいつには人並みの幸せを手に入れて欲しい!どうか、頼む…!!

―イサミに、手を出すな!

シュラ「…どうして、あの少年の瞳と重なったんでしょうね…」

キサラギ「何が重なったんじゃ?」

シュラ「…随分とお暇なようですね。こんな所に何の用です」

キサラギ「お主には言われたくないわ。武人は忙しいのでは無かったのか?

…気晴らしをするにはここが一番じゃからな、ちょっと息抜きじゃ」

シュラ「よい御身分なことで」

キサラギ「じゃが、そのおかげで良いものを見れた」

シュラ「…まさか」

キサラギ「お主のヒーローっぷり、なかなか楽しませてもらったぞ。

まさかお主があんなことをする奴だとは思わなかったわ」

シュラ「…覗きとは、趣味が悪いですね。

しかしそれなら都合が良い。後の処理はお任せします。

酒?の君が討ち取られたことを信じていない長老もいることでしょうから」

キサラギ「全く、面倒事を押し付けおって」

シュラ「やはり私には武働きの方が性に合っている。権謀術数の類はあなたにお任せします」

キサラギ「…それにしても、今回のお主の行動はわらわにも良くわからんのじゃ。

お主、一体何を考えておる?」

シュラ「…苛々させられたんですよ」

キサラギ「?」

シュラ「普段は気持ち悪い位に飄々としている癖に、少し都合が悪くなった程度で全然傷ついていませんよ的な空気を出して無理しているのが見え見えな、馬鹿な鬼に」

キサラギ「…ぷっ、あっはははははははははは!何じゃそれ、お主真顔でそんなことを考えておったのか」

シュラ「…いけませんか」

キサラギ「いや、お主も随分丸くなったなと思っただけじゃ。

この島にだいぶ染まってきたのではないか?」

シュラ「まさか、人間どもと馴れ合うつもりはありません」

キサラギ「そういうことにしておくかの。

…和平協定は白紙になったが、被害は最小限で済むじゃろうし、好戦派の酒?の君が消えたとなれば交渉もしやすくなるじゃろう。

感謝するぞ、シュラ」

シュラ「…では、私はこれで」

キサラギ「つれない奴じゃのう。…そういえばお主、お土産は持って帰らなくても良いのか?いつもあんなに熱心に集めておるのに」

シュラ「いえ、ヘレナ嬢に焼きたてのパイを頂きました。お土産としてはまだまだですが、悪くない一品です」

キサラギ「なんと!わらわにも分けるのじゃ!」

シュラ「嫌です」

スコシクライヨイデハナイカ!
ダカライヤデスッテ

終わりです。

せっかく鬼退治の一族が登場したので鬼と絡ませてみたいと思った結果、なぜかシュラが主役になってしまいました。

ベースの話が重いので、ラストはできるだけ明るくしようと思い、こうなりました。

…かなりご都合主義ですね。

文字が?になっていいる箇所は、呑←全てこれだと思います。

見辛くて申し訳ありません。

それでは、失礼します。

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