劇的な勝利を収めたMI作戦から数日経った。
私達の鎮守府も徐々に落ち着き始め、司令官や秘書艦の長門さんは、また忙しそうに走り回っている。
かく言う私も更なる練度向上の為に、神通さん指揮の下で、夕立ちゃんと一緒に訓練に明け暮れている。
もう二度と、誰かを失いたくなんてないから。
「私が皆を守るんだから!」
そんな折、ふと夢を見た。
何もない真っ白な空間にその少女は存在していた。
『もし、全てを最初からやり直せるなら、貴女はやり直しますか?』
最初は意味が分からなかった。
『もし、全てを最初からやり直せるなら、貴女はやり直しますか?』
二度目で理解した。
『もし、全てを最初からやり直せるなら、貴女はやり直しますか?』
まるで機械。
猫を抱える少女は繰り返す。
「私は……」
無償のリセットボタン。
思い浮かぶのは如月ちゃんの事。彼女が沈んだと聞いたのは、全てが終わった後だった。
私がもっと強ければ。
彼女が沈む事はなかったかもしれない。
睦月ちゃんが悲しむ事はなかったかもしれない。
そんな想いに思考が支配される。
『もし、全てを最初からやり直せるなら、貴女はやり直しますか?』
「私は」
これはきっと、私の後悔の産物。
神様がくれたチャンス。
ならば、貰おう。
『もし、全てを最初からやり直せるなら、貴女はやり直しますか?』
「やり直します! 次こそ、私が皆を守るんだからっ!」
答えた瞬間、無表情に繰り返すだけの少女が笑った。
それはそれはーー醜悪に。
『通信エラーが発生しました。ブラウザを停止して、再起動を行います』
聞きなれない言葉と共に私の意識は消えていった。
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・はじめに
手遅れだと思いますがアニメのネタバレあります
キャラ崩壊しているかもです
ストーリー上、出せない艦娘の方が多くなるかもしれません
週一で更新。出来れば
練度のみ強くてニューゲーム
以上の点をご理解頂ければと思います
第一話を始める前に
↓1 吹雪が憧れる先輩(戦艦・正規空母のみ)
↓2、3 吹雪と同室の駆逐艦。↓2の子が睦月ポジになります
↓4、5、6 残りの三水戦メンバー (軽巡・駆逐のみ)
被ったり艦娘じゃない名前が出たら、一つ下にずらします
憧れる先輩→赤城
最終話がMI作戦に決まりました
同室→電と秋月
三水戦→夕張、島風、春雨
軽巡一人居て良かったと心底
↓1 提督の秘書艦(長門ポジの艦。誰でも可)
↓2 通信士(大淀ポジの艦。誰でも可)
↓3~5 提督の性別(男か女か)
最初の安価はおそらくこれだけ
司令官→男
秘書艦→朝潮
通信士→明石
そんな感じに決定しました。ご協力どうもでした
色々と考えてきます。一話はチュートリアル混ざりです。今日中に頑張って投下しますので、のんびりお待ちください
・初めまして!司令官!
雲一つない青空を駆け抜ける艦載機。
燦々と降り注ぐ日光。
まるで、私の新しい門出を祝ってくれている様な好天。
「よしっ!」
鎮守府を一望出来る高台で、それを見下ろしながら私は気合いを入れ直す。
不安はある。
慣れない土地、知っている艦娘はおらず、司令官との顔合わせも今日が初めて。
「怖い人じゃなければ良いなあ……」
入れ直した矢先から気合いが抜ける。
当たり前だが、知らない土地での一人は心細い。
道に迷わない様に事前に行き方はリサーチしている。しかし、いざ足を進めるとなると、まるで鎖にでも繋がれたかの様に重く感じた。
それでも、行かない訳にはいかない。
私の独断で迷惑をかけるなんて事はあってはならないのだから。
「ふぅ……」
何度も引き返したくなる気持ちと戦った末、なんとか勝利した私は、提督室と書かれた重厚な扉の前で息を整える。
そして、気持ちを落ち着けた後に扉を軽く叩いた。
「入れ」
「失礼します」
座る提督に出迎えられる。
緊張から呼吸が浅くなる。今にも震えそうになる足をしっかりと地面に着けて、背筋を伸ばす。
「初めまして、司令官! 本日付でこちらの鎮守府に配属された吹雪と申します!」
一息で言い切り敬礼。
少しだけ肩の荷が下りた気がした。
「こちらこそ宜しく。君には第三水雷戦隊に所属してもらう」
「はいっ。了解しました!」
「詳しい事は……そうだな。私よりも同じ三水戦の子とする方が良いだろう。ここに来るように既に呼んであるから、合流して案内して貰えば良い」
「それでは……?」
「もう下がって良いぞ。任務等は追って通達する」
「はっ! 失礼しました!」
怖いという印象は受けなかった。
真面目で頼りになりそうな提督に見える。提督室から退室しながら、私はそう思った。
「ふぅ……」
「貴女が吹雪さんなのですか?」
「っ……!」
緊張の糸が緩み、小さく息を吐いた時だった。
不意を打たれた為に肩が揺れる。その拍子に背負っていたリュックから溢れかけていたペンギンが地面に落ちてしまった。
「あ」
地面を転がったペンギンは、私の名前を呼んだ少女の足にぶつかって、動きを止める。
そのペンギンを拾い上げながら、彼女は微笑みを浮かべるのであった。
「可愛らしいお人形さんなのです♪」
・
・
・
「広いね。この鎮守府は」
電と言った同じ三水戦所属の少女と共に寮部屋へ向かう。
敬語は使わなくて良いと言われたので、既に私の言葉遣いはくだけていた。
「大抵の事は、この中で完結しちゃうのです」
「へえ……凄いんだねえ」
「自慢の鎮守府なのですよっ」
まるで自分が誉められたかの様に胸を張る電ちゃん。
「着いたのですっ」
二人で雑談を交わしていると、どうやら自分の部屋に着いたらしい。
聞いた話に寄ると、三人一部屋での共同生活。
「こ、怖い人じゃないよね?」
「秋月ちゃんは優しいですよ?」
「それは電ちゃんに対して優しいだけであってもしかしたら私には……」
「秋月ちゃーん! 吹雪ちゃんを連れて来たのです!」
華麗にスルーされた。
「お待ちしておりました、吹雪さん。秋月型防空駆逐艦の一番艦、秋月です。今日から何卒、宜しくお願いしますね」
扉を開いた矢先、黒髪の少女に深々と一礼される。
「えっ? あっ、はい。特型駆逐艦の一番艦、吹雪です……って、え? 駆逐艦?」
それに面食らいつつも、なんとか自己紹介を返していると違和感に気づいた。
疑問符浮かべる私に慣れているのか苦笑する秋月さん。
「あー、やっぱりそうなっちゃいます?」
「当たり前なのです。私も最初は信じられなかったのですから」
「えーと……本当に駆逐艦なんですか?」
「はい。正真正銘の駆逐艦……という事です。分類上では」
電ちゃんに比べて……というか私よりも背丈等が大きい。
軽巡と言われた方がまだしっくり来る程度には大人びて見えた。
「ですので、あまり畏まらないでくださいね? どうか同じ駆逐艦として気軽に接してください」
「が、頑張ります……」
秋月さんにくだけた口調で接するには時間が掛かりそうだった。
「挨拶に来るのおっそーい!」
「し、島風ちゃん! そう言うのは思っても口に出したらダメだって!」
「ふぇっ!?」
いつまでも部屋の入り口に居たら、背中に衝撃を受けた。
「吹雪さん!」
軽くバランスを崩した私は、正面に居た秋月さんに受け止められる。
何が起こったのか理解出来ず、体勢を立て直して後ろを振り返ると、更に三人の少女が立っていた。
「私は島風! 貴女、特型駆逐艦で一番艦って事は速いの?」
「え、ええ?」
「足は速いの? どうなのー?」
「えーっと、ふ、普通だと……思います……」
「そっか」
それきり島風と言った少女は黙りこむ。一体なんなんだろうと首を傾げていると、その隣の桃色の髪をした少女が口を開いた。
「私は白露型五番艦の春雨です。島風ちゃんが迷惑をかけてごめんなさい」
「えぇーっ。私、迷惑なんかかけてないよー」
「い、いえ! すぐに挨拶に行かなかった私も悪いので!」
「いえ! こちらこそ待ってれば良いと何度も言い聞かせたにも拘わらず……本当にすみません!」
「はいはい。埒があかないから、自己紹介が済んだら部屋に戻る」
お互いに謝り続けていると緑の髪をした少女が割り込んだ。
「それもそうですね……。行くよ、島風ちゃ……って居ない!?」
「春雨ちゃんおっそーい!」
「ちょ、戻るなら戻るって言ってよぉっ!」
入ってくるのも騒がしければ、出ていくのも騒がしい二人。
それを唖然と眺めていると、小さな笑い声が聞こえた。
「ふふっ。面白いでしょ、あの二人」
「え、あ、いや」
「私は夕張。この三水戦、唯一の軽巡で旗艦なの。これから暫く宜しくね、吹雪ちゃん」
「こ、こちらこそ宜しくお願いしますっ!」
「じゃ、私も部屋に戻るから、後はごゆっくり~」
手をヒラヒラと振って、夕張さんも部屋から出ていく。
残されたのは私達三人。
「吹雪ちゃん、大丈夫なのですか?」
「……なんというか」
「なんというか?」
「濃い三人だったね……」
「あ、あはは……」
果たして上手くやっていけるのだろうか。
ほんの少し自信を失った。
同艦隊ボーナス
三水戦全員の好感度増加
好感度表
電 ★
秋月 ★
夕張 ★
島風 ★
春雨 ★
吹雪「まだ午前……。これからどうしようか」
1.電と秋月と過ごす
2.夕張、島風、春雨に声を掛けてみる
↓1 選択
「あの」
「なに? かけっこ? 負けないよ?」
ノックした扉が開いた先で既に走る体勢になりつつある島風ちゃん。
慌てた様に奥から春雨ちゃんが出てきた。
「し、島風ちゃん! 吹雪さんが困ってるから!」
「あはは……」
「それで? さっきぶりだけど、何か聞きたい事でもあるのかしら?」
これだけ騒げば気も引くか。何か難しそうな本を読んでいた夕張さんが、本を閉じつつ聞いてきた。
「ええと……」
言われて考える。
些細な事は同室の二人に聞けば良い。せっかくなので、この三人にしか聞けない様な事を聞いてみたい。
私は何があるだろうかと少し思案する。
「休みの日は退屈だよねー」
「そう? 私は自分の好きな事が自由に出来るから好きよ」
「私も休みの日は落ち着きます」
「島風ちゃんの相手をすると落ち着くと」
「おっ?」
「ち、ちちち違いますよぉっ!」
考えていると始まる漫才。共通点が全く見えない割に相性は良さそうだ。
1.休みの日はどう過ごしているんですか?
2.出撃はどのくらいしましたか?
3.特に用件はないです
↓1 選択
1.休みの日はどう過ごしているんですか?
→夕張好感度増加
「聞きたい事……という程、大それた物じゃないんですけど」
思い付いた事はとても小さな事。
それでも、三人を知る切っ掛けになればと。
「遠慮せずになんでも聞いて良いわよ?」
夕張さんから許可も出た。
ならば、勇気を出してみよう。
「休みの日はどう過ごしているんですか?」
何故か、春雨ちゃんと島風ちゃんの時間が止まった気がした。
「あっ、それ聞いちゃう? 聞いちゃうか~」
「はい。先ほど、好きな事が出来ると仰ってたので」
「気になる? 気になる感じ?」
夕張さんの目が子供の様にキラキラと輝いている。
軽巡のお姉さんでもこう言う一面があるのかと意外に思っていると、視界の端にこそこそと動く物が映った。
だが、それを気にしている余裕はない。
「とても気になります!」
「そっかー。それなら仕方ないなあ。私と一緒に工廠に行こうか!」
「えっ?」
がしっと腕を掴まれた。
「新しく配属されたのが吹雪ちゃんで良かった。私の趣味、理解してくれる人が少なくてねえ。ささ、我が楽園に参ろうではないか」
抵抗する間もなく引っ張られる。
私は遅れ馳せながら漸く気付くのだ。何か踏んではいけないスイッチを踏んだのだと。
助けを求める為に、残る二人に顔を向ける。
「え……」
しかし、そこはもぬけの殻。
二人は忽然と姿を消していた。
「ふんふんふ~ん♪」
この後、上機嫌な夕張さんに暫く拘束された。
そして、どこで使うのか分からない知識が増えた。
選ばれなかった選択肢
2.出撃について→春雨に輸送任務の大切さを何故か力説される
3.用はない→じゃあ、かけっこしよう
好感度表
電 ★
秋月 ★
夕張 ★ ★
島風 ★
春雨 ★
アニメ一話分終わらなかったけど、今回はここまでです。次回は電と秋月と共に赤城と出会う所から行けるところまで
アニメAパート→自由行動→Bパート→自由行動→Cパート→自由行動。って感じで続きます
残りの自由行動は間宮後と初出撃からの帰投後
夕立ポジに秋月居て、ラストがMIとか負ける気しませんね
お疲れ様でした
練度引き継いでるのに記憶ないとか意味不明すぎるなと続き考えながら思いました。なんとかします
Q.赤城以外ならラストどうなったの?
A.その子の沈んだ戦いがラストになります。長門来たら詰んでた
キャラ安価は二話以降も取りはするので、そこで出したい子を挙げてくださればと。なお、話の都合上、海外艦は全員出せないです。潜水艦も怪しいなあ……
1レスだけ更新。安価投げて終わりです。がっつり更新出来ない日はこんな感じになるかもですね
「わぁ、本格的だね!」
「ここは駆逐艦の教室で、上の階には軽巡の方の教室があるのですよ!」
お昼ご飯を適当に摘まんだ後、電ちゃんと秋月さんの計らいで、鎮守府内の施設を案内して貰うことになった。
「私、こういうの憧れてたんだあ」
「前の鎮守府にはなかったんですか?」
「あったけど、ここまで設備は揃ってなかったよ」
それこそ、前の鎮守府の学校は寺子屋程度のもので。教鞭を振るう重巡以上の子も数える程度しか居なかったため、授業を行う事すら稀だった。
「今日は日曜だから、明日皆を紹介しますね」
「うん。有り難う」
秋月さんの言葉を背中に、私は興味津々で教室を見て回る。
「わっ、席に名前の書いた札がある」
「吹雪ちゃんの席は、秋月ちゃんの後ろなのですよっ」
「既に私の名前が入った札が机に!」
「黒板が見えにくいとかあれば、すぐに言ってくださいね」
そんな私を微笑ましげに見る二人。
教室を一通り見て回り、満足した私は気になった点を聞いてみる事に。
「ここの鎮守府の駆逐艦はこれだけ?」
「後、三クラスあるのですよ」
「演習はクラス毎に分かれて紅白戦ですから」
「演習かあ……」
身体を動かすのは好きだが、少なくとも得意ではない。
前の鎮守府でも、頑張っては見たのだが上手くはいかなかった。
「二人は実戦をどのくらい経験してきたの?」
「今の艦隊になってからは二回ですかね?」
「一回は何もしないうちに夕張さん達がやっつけちゃったのです」
「そうなんだ……」
夕張さんはともかく、島風ちゃんと春雨ちゃんはそんなに練度が高いのか。
私は感嘆する。
「吹雪ちゃんは?」
感心してると電ちゃんが聞き返してきた。
私はその言葉に一瞬だけ詰まる。
そして、
1.正直に言う
2.誤魔化す
あ、安価指定忘れてました。特に指定がない時は直下でお願いします
また数レス更新した後に安価だけ投げるので宜しくお願いします
1.正直に言う
→電好感度増加
「実は……」
誤魔化した所で、いつか露見する話。
ならば、今言ってしまう方が良い。それこそ、タイミングを逃した場合、私の性格上だと必ず言い出せないのだから。
「実戦経験が」
「ない……ですか」
私の言葉に二人は神妙な面持ちに。
「特型一番艦として、実験ばかりされていたのですか?」
「そ、そんな怖い事されてないよぉっ!」
何故そんな発想になったのかと、電ちゃんを小一時間問い詰めたい。
「他の鎮守府の話なのでなんとも言えませんが、駆逐艦をあまり重用しない傾向だったのかもしれませんね」
「うーん……どうなんだろう。あの頃は自分の事で精一杯だったからなあ……」
周囲をもっと見る事が出来ていれば、確かに色々と情報はあったのかもしれない。
今更言っても後の祭りではあるのだが。
「誰だって最初はそうなのです」
「そうですね。気にする事はありません」
「……そうかな? もし、出撃があるなら迷惑を掛けるかもしれないけど、宜しくね?」
最初期から少しくらい成長はしていると信じたい。
未だ出撃は未経験でも、訓練だけは絶やしていないのだから。
「こちらこそ宜しくなのです!」
「ええ。頑張りましょう」
私の言葉に二人は笑顔で頷いた。
・
・
・
案内の途中で聞き慣れない駆動音とにわか雨みたいな激しく何かを打ち付ける音を聞いた。
「この建物は?」
それが聞こえた建物を指差しながら聞く。
「弓道場ですね。空母の方々は兵装が特殊なので、弓を使う人の大半はここで訓練してるんですよ」
「今は丁度、一航戦の方々が訓練中なのですよ」
電ちゃんの言葉を聞いて、私に電流が走った。
「えっ!? 一航戦って、あの!?」
それは、たった二人で一つの海域に居る深海棲艦を滅ぼしたと言われる伝説の名前。
小さな鎮守府に居た私ですら知っている超がつくほどの有名人。
その一航戦がこの鎮守府に配属されていたとは、なんと嬉しい誤算なんだろうか。
「見に行ってみますか?」
「良いのっ!?」
「はわわっ!」
食いぎみにいきすぎたか。電ちゃんが軽く悲鳴ーーなのだろうかーーをあげた。
しかし、今の私は電ちゃんを心配する暇もなく。
「さ、サインもらわなきゃ! あぁぁぁっ、色紙なんて持ってきてないよう! どうしよう!」
「ふ、吹雪さんが輝いている……」
秋月さんが引いている気がする。
「こっちなのです」
「うん!」
そして、電ちゃんに案内されるまま私は弓道場へと足を踏み入れる。
何故か、裏口から。
「えっと……」
口にすべきか逡巡していると、私の胸中を察した秋月さんが申し訳なさそうに目を伏せた。
「大変申し上げにくいのですが、弓道場は空母の方々しか入れないのです。なので、見学というより覗き見になりますね」
「じゃあ、サインは……」
私の言葉に秋月さんは無言で首を振った。
「そんなあ……」
「そんなに落ち込まなくても、直接会う機会はあると思うのです」
「そうですよ。サインならその時に頼めば、貰えると思いますよ?」
二人から慰められる。
なんだか凄く気を遣われているみたいで、とても申し訳なくなった。
「そっか。そうだよね! うん。有り難う、二人とも」
「いえいえ」
「あ、見えたのですっ!」
電ちゃんの言葉に視線をそちらに向ける。
そこには弓を引き絞り、的に向けて狙いをつける艦娘が一人。
「あれが第一航空戦隊、通称一航戦の誇り、正規空母赤城先輩です」
秋月さんの説明は右から左に。私はその姿に目を奪われる。
綺麗な姿勢。落ち着いた呼吸。弓道を知らない私でも分かる洗練された立ち振る舞い。
「ふっ……!」
視線の先で赤城先輩が矢を放つ。一瞬にして、それが艦載機へと姿を変え、的に向けて機銃を乱射する。
三つあった的は三機の艦載機によって、綺麗に分断された。
「凄い……」
「さすがね、赤城さん」
私の気持ちを代弁してくれたのは、床に正座して赤城先輩の演習を眺めていたもう一人の艦娘。
「同じく第一航空戦隊の加賀先輩なのですっ」
その加賀先輩は赤城さんと交代する為に立ち上がり、そこで初めて私達の存在に気づく。
「あ、これは不味いのです」
裏口から無断で侵入したのだ。見付かるのは確かに宜しくない。
私達はその場から逃げ出そうとし、
「あぅっ!」
思いっきり木の枝に顔をぶつけた。
「吹雪さん!」
「だ、大丈夫なのですか!?」
思わずうずくまってしまうと心配した二人が寄ってくる。
そうこうしている内に一航戦の二人もかなり接近していた。
「無断で入ってくるのは感心しないわ」
「す、すみません! 私がどうしてもお二方を一目見たいって我が儘を言ったんです!」
「……貴女が吹雪さん?」
痛みを堪えて立ち上がり、加賀先輩に向けて頭を下げる。
そんな私に柔らかな声が投げ掛けられる。
「は、はい。そうです!」
思わず頭を上げると、声と同じ様に柔和な笑み浮かべる赤城先輩が居て。
「話は提督から聞いています。いつか、一緒の艦隊で戦いましょうね?」
それはそれは、とても嬉しい言葉だった。
好感度表
電 ★★
秋月 ★
夕張 ★★
島風 ★
春雨 ★
吹雪「午後。これからどうしようか」
1.電と秋月と一緒に居る
2.夕張、島風、春雨に会いに行く
↓1 選択
案内の締めは甘味処の間宮というお店だった。
私が気付いた時には、目の前に特別餡蜜というデカ盛りにされた甘味があった。
「うわっ! いつの間に!?」
「あ、漸く気付いたのです」
「赤城先輩はカッコいいですし、吹雪さんの気持ちも分かります」
呆れ気味に苦笑浮かべる二人の器は既に半分程消えており。私は遅れ馳せながら、餡蜜を口にする。
「っ!」
瞬間、身体に走る電流。
「どうかしたのですか?」
「何これ美味しい! 美味しいよ、電ちゃん!」
「うふふ。有り難う」
何故か返答は正面に居る電ちゃんからではなく、隣から。
見上げると割烹着姿の女の人が。
「私は間宮。これから宜しくね、吹雪ちゃん」
「え、じゃあ、これを……?」
「私が作ったの。お口にあった様で何よりだわ」
「はい! とても美味しいです!」
あまりの美味しさに自然と笑みが零れる。
こんな甘味を毎日食べられるなんて、この鎮守府に配属されて良かったなあと私は益々思うのである。
「吹雪ちゃんは和菓子と洋菓子どちらが好きなのです?」
そして、そんな平穏は簡単に壊れた。
「勿論、和菓子ですよね?」
「吹雪ちゃんはきっと洋菓子派なのですっ」
何故か不穏な空気を発する二人。
「え、えっと……」
「さあ、吹雪ちゃん」
「答えてください」
答えるまで解放してくれなさそうな雰囲気。
仕方なく私は口を開いた。
1.洋菓子
2.和菓子
3.両方
↓1 選択
1.洋菓子
→電好感度増加
「どちらかと言えば、洋菓子……かな?」
「やったのです♪」
「……そうですか」
私の答えに両極端な反応が返ってくる。
私は慌てて秋月さんにフォローを入れる。
「和菓子も好きだよ!」
「では、和菓子派になる可能性も?」
「吹雪ちゃんは洋菓子を裏切らないのです」
「……あはは」
洋菓子を裏切るってなんなんだろうと思いつつ、苦笑で誤魔化す事にした。
そんな折、鳴り響く警報音。
「……これは?」
「緊急の召集なのです」
「何かあったみたいですね」
席を立ち上がる二人に続いて、私も席を立つ。
「間宮さん、御馳走様でした!」
「はーい! 気を付けて行ってらっしゃい」
お腹も膨れて気合いも十分。
傍には頼りになる友人。
私は晴れやかな気分で足を踏み出した。
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