飛行甲板と恋心【艦これ】 (23)
気付けば視線の先に、彼がいる
その事にボクが気付いたのは、つい最近の事
いや、本当はずっと前からそうだったのだ
気付かないフリをするのが、自分の中で限界になってきたのだろう
浴場の天井を見つめながら、ボクは小さく息を吐いた
入渠の時間はまだまだあるし、今日はほぼ貸切状態
ゆっくり気持ちを整理してから、執務室へ向かう事にしよう
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「ただいま戻りました、っと」
「まだお仕事?ボクにお手伝い出来る事はないかな」
「そっか、残念」
「へ?部屋に戻らないのかって……」
「その、なんだか眠たくなくって」
「うぅん、不眠症とかそんなんじゃないんだ。うん、そんなんじゃなくて……」
『……いや、そんなんなの、かな?』
「だ、大丈夫だって!提督はお仕事続けて」
「……じー」
初めて会った時は、少し怖い人だと思った
帽子の端から見える切れ長の目が、なんだか常に睨んでるように見えたからだ
後にその事を本人も気にしていている事や、実は見た目の割に結構繊細な人だったりする事とか、色々知ることになってわけだが
そんな風に知っていくうちに、こんな感情が芽生えてしまったのだろう
提督と秘書艦、近すぎて逆に遠い距離感がボクに色々邪推をさせる
気持ちを素直に聞ければ、きっとそれが一番近道なのだろうけれど
そんなこと、ボクにはとてもできない
「それじゃ……おやすみなさい、提督」
「……ふぅ」
(明らかに変だよね……仕事もないのに執務室で提督を眺めてるだけ、なんて)
(提督はどう思ってるんだろう?)
(何か思って貰えてると思うのは、希望的観測なのかな?)
(んー、むむむ……)
翌日の演習は散々で、何度も小さな衝突を繰り返しては皆に迷惑をかけてしまった
それだけならいいのだが、「提督にこき使われて疲れているのではないかしら?」なんて風評まで出回ってしまいかけたのはいただけないので、演習後の浴場で皆と話して誤解は解いておいた
本当は皆を誰よりも心配しているのは提督なのだが、立場や強面の外見からイマイチそれが伝わっていないのだ
提督のあんな面やそんな面を知っているのはボクだけなのだから、ボクがもっと気を付けなければ
風呂上りのコーヒー牛乳をごくりと飲み干して、ボクは顔をぱんぱんと叩いた
短いけどこの辺で
そんな長くならんと思います
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