フリーター君「よーしバイトするかー」(22)

大学生君「就活するべ」

カーチャン「良いとこの内定とりなさいよ」

大学生君「大企業は無理だねー。中小企業狙うべ」

トーチャン「そか頑張れ。就職したら月4万仕送り頼むぞ」

大学生君「よっしゃ任せなさいや。恩返しや」

カーチャン「ええ子や」

トーチャン「普通よ普通」

一年後

大学生君「内定とれねぇ…」

カーチャン「どうすんの」

トーチャン「大卒で就職だけが道じゃない。親戚の誰々は5年プラプラしてた挙げ句国を守りたいとか言い出して今じゃ立派な自衛官やってる」

カーチャン「でもねぇ」

トーチャン「そういう人生もありよ。とりあえずバイトして本当にやりたいことを見つけるのも手だ」

大学生君「うん…」

カーチャン「まだ卒業まで時間あるよ。就活頑張り」

大学生君「うん…」

大学生君「あと三ヶ月かぁ…」

ツイッター「新着通知」

大学生君「…」スッスッ

友『大学生最後のクリスマスパーテーなう』

友2『もう二度とないからかけがえのない時間だった。楽しんだわ』

大学生君「あー、いいねぇ…」



スマホ「ブブッ」

友『大学生君、みんなで野球でもしないか?』

大学生君「野球かぁ…でもその日なぁ」

大学生君『面接あるから無理だわ』

友『そっか残念』

大学生君『ありがとよ』

友『またな』



大学生君「…決まらん」

大学生君「何が悪いんだろ…元気ないからかな」

大学生君「…」

大学生君「確かに大学生活は勉強とバイトとゲーム漬けだったけどさぁ」

大学生君「うぇーいとか言わないし、サークルも部活もやってないからかねぇ」

大学生君「ゼミとか友達とかの飲み会も数えるほどしかやってないけど」

大学生君「…バイトは就活するからって三行半突きつけたんだけどねぇ…これじゃあなぁ」


大学生君「…」



大学生君「…就活する気が起きない」

大学生君「つか最近涙が出る」

大学生君「一月二月、新卒ハロワに登録したは良いが交通費はかかるしそもそも行くのが何か億劫」

大学生君「ゲームも最近しなくなった。つかまた涙出てるよぐへへ」ポロポロ

大学生君「うわっはっはっは。しにてえ」ポロポロ

大学生君「最近寝てばっかよ。糞だな。トーチャンカーチャン申し訳ねぇ」ポロポロ

大学生君「俺は何のために大学生になったんだろな。単位早くとってこの一年講義受けてねぇし」ドクン

大学生君「涙止まったと思ったら不整脈か。笑うしかねぇな、しにてえハハハ」ドクン

大学生君「道具箱にロープあったよな…あれで首吊りするか」ドクン

大学生君「首吊りの方法ググって…何々、不定形?」ドクン

大学生君「へぇ安楽ねぇ…」ドクン

大学生君「うははははは、あの世って無いんだよな」ポロポロ

大学生君「あーやだやだしにてえ」ポロポロ

大学生君「今記憶がある、再生されるってのはこの記憶が最後もしくは始まりの可能性があって、まあつまり死ねばどのみち永遠の無か永遠の思考迷路もしくは永遠の輪廻とかで救いようが無いわけであって」

大学生君「そんなのを知ってしまって死への抵抗、いや人生諦めたのが仏陀なんだっけ、もう覚えてないけど」

大学生君「…疲れたし寝るわ」

翌朝

大学生君「…おはようざんすしにてえ」

大学生君「あー寝たら少しマシなったかなぁ」

大学生君「…しにてえ」

大学生君「…でも今やってるゲームがなぁ…これ終わったら吊るか」

大学生君「…二月一杯で終わりにするか。決行日は28日」

大学生君「…エロ本とか整理するか」

カーチャン「掃除したのね。やる気出たんね」

大学生君「はは…」

カーチャン「はいはいシャキッとシャキッと。覇気を出して覇気を」

大学生君「無い無いそんなもん」

トーチャン「覇気が無いやつは社会じゃ通用しないぞ。元気よく、ハキハキと」

カーチャン「そうよ」

大学生君「はは、わかってるわかってる」

大学生君「わかってるよ…そんなこと…」

27日

大学生君「ゲームクリアしたわ。ちょうどか」

大学生君「遺書には何て書くか。『先立つ不幸をお許し』…そんなガラじゃねえな。『ごめんなさい』…んー微妙」ポロポロ

大学生君「そういや首吊りを途中で見つかると後遺症だけ残って本当に人生詰むんだよな…明日親のいない時間帯は…」ポロポロ

大学生君「首吊りすると大便漏れるんだっけ。おむつとか無いしビニール敷くかなぁ」ポロポロ

大学生君「そもそもロープちょっと細いか。最悪首ちょんぱかな」ポロポロ

スマホ「電話である」ブルブル

大学生君「誰だ?もしもし」

『こちら○○大学就職支援センターの担当と申します。大学生君のお電話でしょうか?』

大学生君「あ、はい」

担当『あなたの希望する求人があります。メールで送るので、受けるなら一度支援センターまでお越しください』

大学生君「はい」

大学生君「んー、悪くない求人だよな。むしろ良い、か」

大学生君「…」

大学生君「死ぬのもやっぱり怖いし、最後にちょっとだけ、頑張ってみるか」


大学生君「受けてきたわ」

カーチャン「結果は?」

大学生君「筆記は通ったよ」

カーチャン「面接いつ?」

大学生君「16日だったかな」

カーチャン「19日卒業式じゃん。間に合うの?」

大学生君「さあ。やるしかないべ」

トーチャン「その意気よ。落ちたら4月の旅行で運転手してもらうからな。どうせ暇だろ」

大学生君「そうならないように努力するわ」

16日

面接官「んー履歴書見る限り今回募集の業種職種への拘りがあるみたいね」

大学生君「はい、理由はなんたらこうたら」

偉いおっちゃん「でもこの仕事体育会系しかとらないよ?君元気あんまり無いけどやっていける?」

大学生君「やっていく自信はあります」

偉いおっちゃん「ふむ」

面接官「結果は18日の18時頃までに、採用なら電話します。不採用なら何もありません」

大学生君「はい」

18日

大学生君「…18時」

カーチャン「残念」

トーチャン「ご縁が無かったんだな」

大学生君「ふー…」

カーチャン「明日卒業式だね。最後だぞ学生」

トーチャン「学生、明後日からニートか」

大学生君「ニートだね」

19日

学長「えー本日は…」

司会「閉会」

友3「今日の学部別パーティ出る?」

大学生君「最後だし行こうか。どうせ会費とか学費から出てるんだろうし」

友3「食わなきゃ損か。行こう」



大学生君「ただいま」

カーチャン「おかえり。パーティどう?」

大学生君「学部で500人いるから食べ物の奪い合い。肉はすぐ消えるし、というか地獄絵図だったわ」

カーチャン「学生終わりだね」

トーチャン「ようニート君」

ニート君「いえす、ニート君」

21日

ニート君「おはよ」

カーチャン「早くバイトしないと。年金とか奨学金とか払わないと」

トーチャン「国民健康保険もある。それに追加で家に4万頼むぞ」

ニート君「ひぇ大変ね」

トーチャン「バイトで月12万無いと厳しいな」

カーチャン「就活もしなさいや。正社員正社員」

ニート君「うへぇ」



ニート君「働きたくねー」

ニート君「とか言ってる場合じゃねぇな」

ニート君「奨学金返済免除の項目、よく見たら本人が死んだ時免除される『場合がある』みたいな感じなんだよなちくしょう」

ニート君「…」

ニート君「そういえば卒業してから吹っ切れたな」

ニート君「しにてえしにてえしか思ってなかった頃とは大違いだ」

ニート君「頭スッキリしてる。クリアマインド」

ニート君「…あれはいわゆるうつ病だったのだろうか」

ニート君「まあそんなことはどうでもいい。今はとにかく金がいる」

ニート君「気合い入れてくべ!」シャキーン

フリーター君「よーしバイトするかー」


終わり

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