オールマイト「爆豪少年にOFAを譲渡しよう」(32)

勝己「は?」

オールマイト「ヘドロに捕まっても屈しなかったそのタフネス! 見事だ!」

勝己「あんたの個性がもらえるってことか?」

オールマイト「その通り! この力はそもそも歴代のヒーローたちが~」

勝己「いいからさっさとよこせ」

オールマイト「せっかちだな!」HAHAHA

オールマイト「未熟な身体でこの個性を受け継ぐと体が爆散してしまうが君ならば大丈夫だろう!」

オールマイト「個性の譲渡にはDNAの摂取が必要だ!」プチッ

勝己「髪の毛食うのかよ。気持ち悪ぃな」パクッ

ドクンドクン

勝己「はは……すっげ……」ゾクゾク

オールマイト「力を使いこなすにはまだ時間がかかるだろうが――」

オールマイト「これで君も強力なスマッシュが放てるようになるぞ!」

勝己「そうか……」

勝己「だったらあんたはもういらねーなぁ?」ニタァ

オールマイト「えっ」

勝己「死ねえ!!!!!!」ドゴォ

オールマイト「ぐっ!!」

オールマイト(これほどとは……!!)

勝己「指一本でこの威力かよ、バケモンだな!」

オールマイト「爆豪少年、落ち着くんだ!」

勝己「うるせえ!! あんたを殺して俺がナンバー1だ!!」

勝己「最強は二人もいらねーんだよ!!」ドゴォ

オールマイト「SHIT……!!」ゴフッ

オールマイト(まずい……このままでは双方体が持つまい)

オールマイト(止むをえまい……!!)SMASH!!

勝己「うぐっ!!」ドサァ

オールマイト「すまない! 早く治療しよう」スッ

勝己「いらねえよ!」パシッ

オールマイト(こいつは骨が折れそうだぞ……)

勝己「ぜってえぶっ殺してやる」メラメラ

勝己「ゴミ拾いだぁ?」

オールマイト「まさしく! 筋力アップに環境の美化、一石二鳥というわけだな!」

勝己「筋トレなら自分でやってる」クルッ

オールマイト「逃げるのか?」

勝己「何だと?」

オールマイト「困難に立ち向かってこそ、最高のヒーローだとは思わないか!?」

勝己「ちっ……分かったよ! やってやるよ!」

勝己「その代わり、終わったら俺と勝負しろ。ぶち負かしてやる」

オールマイト「それは楽しみだ!」HAHAHA

勝己「ほらよ! これで満足か!」スッキリ

オールマイト「凄いな……ノルマをはるかに超えているじゃないか」

勝己「けっ、当然だろんなもん」

勝己「それより、約束忘れてねーだろうな?」

オールマイト「勿論だ! 私はいつでも君の挑戦を待っている!」

勝己「なめやがって……ぶっ殺す!!」

勝己「オラァ!!」ブンッ

オールマイト「威勢はいいが、隙だらけだぞ!」ヒョイッ

勝己「まだだ!!」ダッ

オールマイト「元気なのは良いことだ!」HAHAHA

勝己(くそっ……こっちは殺す気でやってんのによ……!!)

勝己「ハァ……ハァ……」

オールマイト「強い力を持っていても当てなければ意味がないぞ!」

オールマイト「腕もボロボロのようだし、そろそろ休んだ方がいいんじゃないか?」

勝己「うっせえ……!!」

オールマイト(その前に私が限界か……)シュルシュル

勝己「あ?」

勝己「なんだよ、その姿……」

オールマイト「少し前に深手を負ってしまってな」

オールマイト「今の私はやせ我慢で騙し騙しヒーローをやっているというわけさ」

勝己「……」

オールマイト「どうした? 今なら簡単に倒せるぞ」

勝己「やめとく。俺がぶっ殺してえのはそんな姿のあんたじゃねえ」

オールマイト「そうか……」

勝己「どけえええ!!! 邪魔する奴は殺す!!!」SMASH

受験者「やべえよアイツ! 妨害も辞さねー勢いだぞ!?」


審査員「とんでもない受験生が現れたな! センスの塊だ」

審査員「しかしあのままでは体が持たんぞ」


勝己(コントロールのコツは大体つかんできた。指が10本もありゃ十分だな)


審査員「捨て身にならない程度にセーブはしているようだ」

審査員「全力を出すとどんなことになるやら。末恐ろしいな」

審査員「人を助ける気が全くないのが気になるが……」

相澤(あの個性は……)

勝己「よぉデク。記念受験は楽しかったか?」

デク「かっちゃん……!」

デク「……最近、あんまり爆破とかしてこないね」

勝己(そういやこいつまだ知らねえんだったな)

勝己「ついてこいよ。いいもん見せてやる」

デク「こんな人気のないとこで何を――」

勝己「クソナードが!!!」ドゴォ

デク「ひっ!?」ビクッ

勝己「これが俺の新しい個性だ。覚えとけ」

勝己「今のはほんの1%ってとこだが――」

デク「な……なんで……」

勝己「あん?」

デク「い、今のは……オールマイトの……!!」

勝己「そうだよ! 俺がオールマイトから受け継いだ力だ!」

デク「そ、そんな……」

勝己「時代遅れのヒーローには消えてもらって、名実ともに俺がNO.1ヒーローになる日も近いな!」ハハハ

デク「オールマイトが、かっちゃんを……」

オールマイト「爆豪少年、雄英合格おめでとう!」

勝己「知ってるよ」

オールマイト「しかしレスキューポイントが0というのはヒーローとしていかがなものか」

勝己「は? レスキュー?」

オールマイト「ああ、ヒーローを目指すからにはやはり人を救いたいと思う気持ちが一番――」

勝己「興味ねえよ」

オールマイト「えっ」

勝己「俺はあんたを超えて! 高額納税者ランクに名を刻むことが夢なんだよ!」

勝己「人助けなんざ知ったことか。ヒーローってのも所詮は人気商売だろ」

オールマイト「しかし――」

勝己「もういいだろ。俺はさっさと強くなりたいんだ」

オールマイト(……私の選択は間違っていたのか……?)

勝己「……」ガラッ

上鳴「うおっ! 来た来た」

切島「おまえ入試で凄かったんだってな!」

勝己「モブ共が話しかけんじゃねえ」

上鳴「おーコワッ」

勝己(ここも所詮は踏み台にすぎねえんだ)ドカッ

飯田「机に足をかけるな! 製作者の方々に申し訳ないと思わないのか!?」ビシッ

勝己「思わねーよ! てめぇどこ中だ!? 端役が!!」

お茶子(なんか怖い人多いなぁ……馴染めるかな?)

相澤「爆豪、個性使って投げてみろ」

勝己「死ねえっ!!!!!!」ブンッ

一同(……死ね?)

ドゴォオオン

瀬呂「測定不能だってよ! すげぇ!」

勝己「ははっ、モブ共はそうやって驚いてりゃいいんだよ」

相澤「……」

相澤「オールマイトさん、本気で彼を後継者にするつもりですか?」

オールマイト「うーん……間違えちゃったかな?」テヘ

相澤「ハァ……確かに格闘センスは高い。伸びしろもあるが――」

相澤「性格に相当問題がありそうですよあれは」

オールマイト「君に言われるとは傑作だ!」HAHAHA

相澤「笑い事じゃないですよ」

オールマイト「しかし相澤くん、私は彼のまっすぐな目を見るのが好きなのだ」

オールマイト「なにがなんでも上に登りつめてやるという強い意志が宿っている」

相澤「……」

オールマイト「これでもう少し人を思いやる心があれば――」

勝己「そこにいたのか! 殺おおおす!!!」ブンッ

オールマイト「このように、隙あらば私の寝首を掻きに来るのだ! 困った弟子だよ!」HAHAHA

相澤「よそでやれ、よそで」ジッ

勝己「ちっ!」

勝己(くっそ……ムカつく……)

勝己(俺が一番強いんだ!)

勝己(あんなモブ共も、オールマイトも目じゃねえくらいに強く――)

ガシッ

勝己「んぐっ!?」ジタバタ

勝己「……ん」パチ

勝己(ここは……? 頭がくらくらする……)ズキズキ

敵「気が付いた?」

勝己「てめえ……!! 何が目的だ、この――」

勝己(くそ、体が動かねえ……!!)

敵「たくさん薬を打ったから、しばらくはまともに動けないだろうね」

勝己「ふざけ……んな……」

ゾロゾロ……

敵モブ「なあ、ホントにオールマイトは一人で来んのかよ」

敵「うん。必ず来る」

敵モブ「見え見えの罠と知っても行かなきゃならないのがヒーローの辛いところだな」ククク

勝己(クソが……俺は人質ってことかよ)

勝己「けっ……どうだろうな」

敵モブ「あぁ?」

勝己「てめーらみてえなクソモブに構ってられる程ヒマじゃねえってことだよ」

敵モブ「生意気だぞクソガキが!」ゲシッ

勝己「う゛っ……」ゲホゲホ

勝己(俺は……こんなとこで死ぬのか? 冗談じゃねえ――)



オールマイト「私が来た」

ザワッ

敵モブ「マジで一人で来やがった! やっちまえ――」

オールマイト「SMASH!!」ドゴォ

敵モブ「」

オールマイト「何か言ったか?」ゴゴゴ

敵モブ「ひ、怯むんじゃねえ! 数はこっちが有利だ!」

勝己「オール……マイト」

勝己「何、やってんだよ……」

勝己(さっきまで俺に付き合わされて……活動限界時間はとっくに超えてるはずだ)

勝己「俺は……何回もあんたを殺そうとした!!」

勝己「それを、こんな見え見えの罠に飛び込みやがって……!!」

勝己「バカじゃねえの……!!?」

勝己「あんたの助けなんかいらねえんだよ!! 俺一人でも全員殺せる!!」

勝己「なのに、こんなボロボロになってまで、あんたは……」

勝己「俺を見下してんだろ!? 恩を売りてえのか!?」

勝己「人助けなんか、てめえが損するだけじゃねえか……」

勝己「なんで、だよ……」

敵「……」

オールマイト「……爆豪少年」

オールマイト「何故君を助けるのか……考えてもみなかったな」

勝己「え……」

オールマイト「なぜなら! 考える前に体が動くのが、ヒーローというものだからだ!」

勝己「……!!」

敵「オールマイト……」

敵モブ「無駄話してんじゃねえぞ!」ブンッ

オールマイト(しまった! もう体を維持できない……!!)

勝己「……あ」

勝己「ぐっ……」ミシミシ

敵「!」

勝己「動け……動け動け動け動け」

勝己(体がぶっ壊れてもいい……)ベキベキッ

勝己「オールマイトオオオオオ!!!!!」

オールマイト「なんて無茶を――」

勝己「俺が殺すまで死ぬんじゃねえええ!!!!!」ダッ

勝己「クソ煮込みSMASH!!!!」ドゴォ

敵モブ「」

勝己「くたばれクソモブが……」フラフラ

オールマイト「爆豪少年! しっかり――」ガシッ

敵「大丈夫だよ。彼はこんなことで死んだりしない」

オールマイト「……」

オールマイト「残るは君だけだが……」

敵「やっぱりすごいなぁ」スッ

デク「オールマイトは僕の憧れだよ」

オールマイト「緑谷少年……」

オールマイト「どうしてこんなことを?」

デク「どうしてかな……」

デク「嫉妬だったのかもしれない。かっちゃんにはよく苛められていたし……」

デク「でも……何よりも」

デク「僕はあの時、言ってほしかった」

デク「君はヒーローになれるって」

オールマイト「……」

デク「言ってほしかったんだ……」

オールマイト「緑谷少年」

オールマイト「もし、私が君を選んでいれば……」

デク「いや、いいんだ」

デク「もう全部終わったことだから」

デク「でも、あの時」

デク「僕は確かにかっちゃんを助けたいと思ったんだ」

デク「だけど足がすくんで動けなかった」

デク「僕は、卑怯者だ……」

オールマイト「……」

オールマイト「その気持ちがあれば、いつだってやり直せるさ」

デク「オールマイト……」

デク「ありがとう」グスッ

勝己「おい、いい加減下ろせよ……」

オールマイト「しかしその体ではまともに動けんだろう」フラフラ

勝己「あんたもじゃねえか」

勝己「……なあ」

オールマイト「どうした?」

勝己「まだ死ぬなよ」

勝己「あんたに教えてもらいたいこと、いっぱい出来ちまったからな」

オールマイト「爆豪少年……」

勝己「まあ、いつか俺が殺すけどな」

オールマイト「そうか、楽しみにしていよう!」HAHAHA



おしまい

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