――――とある日の楽屋にて。
北沢志保「……それで、話というのは」
ミリP「ああ、実はな……」
志保(……この人は静香、最上静香のプロデューサー)
志保(今日は私に話があるらしいけれど……)
志保(もしかして、静香と仲良くして欲しい、とか?)
志保(まさか、ね……)
ミリP「……聞いてる?」
志保「あっ、すみません」
ミリP「だからな、静香にプロポーズする時は、何て言えばいいと思う?」
志保「は?」
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ミリP「いやだからね、静香にプロポーズする時は」
志保「話になりません」
ミリP「いやややややや、ちゃんと話聞いてから判断してよ」
志保「どんな理屈が通ればそんな話になるんですか」
ミリP「では順を追って説明しよう」
志保(帰りたい……)
ミリP「静香は今十四歳だろ?」
志保「はい」
ミリP「後二年もすれば結婚出来るようになる」
志保「はい」
ミリP「その頃には俺と静香も相当親密になっている訳よ」
志保「はい?」
ミリP「親愛度カンスト、つうかあの仲よ」
志保「は?」
ミリP「そこでいざプロポーズする時にその台詞がだらしなかったら、静香もショックを受けてしまうだろ?」
志保「は?」
ミリP「だから、今こうやって考えようってことになる訳さ……どうした、憐れみの目でこちらを見ているが」
志保「その通りの意味ですよ……」
ミリP「えー?」
志保「えーじゃないでしょうが!」
ミリP「志保がキレた!現代の若者的だ!」
志保「話になりません……第一、なんで私なんですか」
ミリP「だって志保、静香と一番の仲良しじゃん」
ミリP「うわぁアイドルがしちゃいけない顔になってる」
ミリP「志保を選んだ理由はもう一つある」
志保「はぁ」
ミリP「志保、君は演技力を身につけたいだろう?」
志保「それは……その通りです」
ミリP「演技力と言っても色々ある。演じ方、声の出し方、台本の暗記力、理解力……そして、アドリブ力」
ミリP「ドラマの撮影、舞台、なんでもいい。演者は時に、アドリブを求められる」
ミリP「役が乗り移った演者のアドリブは、時に脚本を凌駕する。これはあの有名な監督、ジョーイ・ロータスの言葉だ」
志保(うそくさい……)
ミリP「アドリブ力を鍛える為に必要なのは、日頃の鍛錬だ。何を鍛えるか、そう、突拍子もないシチュエーションに対しての対応をシミュレートすること」
ミリP「……ここまで言えば、後はいいな?」
志保「何がです?」
ミリP「あーん志保ちゃんのいけずー!」
志保「誰がいけずですか」
志保「訳が分かりません。失礼します」
ミリP「ちょっ、待っ」
箱崎星梨花「おはようございまーす」
志保「この声は」
星梨花「あっ志保さん」
志保「星梨花…」
星梨花「今お話中ですか?」
志保「ええと、これは……」
ミリP「やぁやぁ星梨花ちゃん!実は相談したいことが」
志保「プロデューサー!?」
星梨花「はい?何で」
志保「星梨花、今からプロデューサーと打ち合わせなの。外に漏れるといけない話だから、ちょっと外で待っててくれる?」
星梨花「え、プロデューサーさんが、私に」
志保「ささ、行って行って。プロデューサー、その件は後でいいですよね」
ミリP(アイドルがしちゃいけない顔で睨んできてる……)
ミリP「あ、ああ!そうだな!」
志保「静香たちにも同じように言ってもらえる?直ぐに終わるから」
星梨花「わ、わかりました……」
志保「……謀りましたね」
ミリP「な、なんのことかなぁー」
志保「まさか星梨花を人質に取るなんて……」
ミリP「俺は只、志保が駄目って言うから星梨花に相談をと」
志保「最低ですね」
ミリP「なんとでもいうがいい!しかし打ち合わせはちゃんとしないとなぁ!」
志保「くっ、直ぐに終わらせますよ……」
ミリP「シチュエーションはどんなんだろうな」
志保「そこまで私が考えないといけませんか…」
ミリP「あー待て待て、こっちで考える」
志保「最初からそうして下さい」
ミリP「やっぱ、十六の誕生日は祝いたいよね」
志保「そうですね」
ミリP「蛋白質もビックリの淡白な返事だ」
ミリP「やめてその視線!痛い!刺さる!」
志保「ならふざけたこと言わないで下さい」
ミリP「俺は真剣なんだけどなぁ……」
志保「それで真剣なら重症ですよ……」
ミリP「まぁ恋は病と言いますし?」
ミリP「盛大ってよりは、二人っきりの誕生日パーティかなー」
志保「はあ」
ミリP「やっぱプロポーズの前にうどんの作り方はマスターした方がいいのかな」
志保「そうですね。直ぐに勉強しに行った方がいいと思います」
ミリP「あー、でもなー、俺は静香のプロデューサーだからなー」
志保「チッ」
ミリP「取り敢えず饂飩って漢字で書ければいいか」
志保「嫌味な程ポジティブですね」
ミリP「ケーキにシャンパン、あ、お酒はまだ早いな」
志保「プレゼント、渡せばいいと思いますよ」
ミリP「そうだな!ナイス志保」
志保(これ絶対私じゃなくてもよかった気が……)
志保(でも星梨花にこんな事は任せられない……)
志保(プロデューサーの妄想に付き合わされるなんて……酷い……酷すぎるわ!)
ミリP「静香、何がいいかなー、何喜ぶかなー」
志保「……そもそも」
ミリP「ん?」
志保「プロデューサーは、静香の何処が好きなんですか?」
ミリP「あー…………」
志保「どうかしましたか」
ミリP「うーん、それ答えたら今日一日終わりそうでなー」
志保「ではお願いします。私は仕事がありますので」
ミリP「まぁまぁ待て待て!今簡潔にする、手短にもする」
志保「はぁ……」
ミリP「うーーーーーーん…………」
志保(……最上静香、か)
志保(嫌い……ではないけれど、どう距離を取ればいいのか分からない)
志保(可奈や星梨花のように仲良くは……なれそうにない)
志保(でも、静香の真剣さには負けたくないって、思う)
志保(……こんなこと、静香にも、プロデューサーにも、言えないけど)
ミリP「……俺は、な」
志保「はい」
ミリP「静香を幸せにしたい」
ミリP「俺は知っての通り、身勝手な奴だ」
ミリP「やりたいことは絶対やるし、決めたことは絶対に曲げない」
志保「それは事務所に居れば嫌というほど分かります」
ミリP「俺、始めて静香を見た時、思ったんだ」
ミリP「この子は苛烈に生き過ぎてる」
ミリP「あの頃は、夢を叶える為”だけ”に生きてるように、俺には見えた」
ミリP「だから俺の仕事は、この子の炎を消さないように、且つ燃え尽きないようにすることだって思った」
ミリP「こう見えて、静香の扱いは結構デリケートなんだぜ?」
志保「その配慮が私に対してもあれば……」
ミリP「えー!?なんだってぇー!?」
志保「なんでもありません」
ミリP「俺への不信感なんかで、頼られないこと最初は多かった」
ミリP「それでも仕事を探したり、企画を立てたり、方方を走り回ったりした。周りの子とは最初から仲良かったから、気にしてほしいとお願いしたこともあった」
ミリP「……その甲斐あったのかな。少しずつだが、俺のことを認めてくれるようになった」
ミリP「その辺で、思っちゃったかな―」
ミリP「この子が夢を叶える姿を、一番近くで見ていたい」
ミリP「そのそばで、幸せになりたい」
ミリP「一緒に幸せになりたい、って」
ミリP「……ホントは良くないんだけどなー。でも、思っちゃったんだから仕方ない」
ミリP「静香の夢と同じ。叶えたいって、本気で思ってしまった」
ミリP「だからこうして、真剣に考えてる」
ミリP「……まだ、夢のような話だけどな…」
志保「ふぅん……」
志保「まぁ、思うだけなら、誰でも出来ますからね」
ミリP「言うねぇ」
志保「私、応援はしませんから」
ミリP「どーぞどーぞ。こちとら端から修羅の道を往く覚悟よ」
志保「じゃあ私を巻き込まないで下さい」
ミリP「みんなで渡れば怖くない的な」
志保「ひどい」
ミリP「話を本題に戻そう。はい今戻った!」
ミリP「プロポーズですよ、プロポーズ!」
志保「さっきのままで会話してもらえると嬉しいんですが」
ミリP「声出したいね今は!」
志保「はぁ」
ミリP「なんだろうなー……こう、気が効いていて、且つ、感動するような……」
志保「シチュエーションを決めるんじゃ……」
ミリP「ええいシチュエーションに左右されるような言葉でどうするよ!」
志保「えぇ……」
――――同刻、楽屋外。
最上静香「ふぅ、やっと着いた」
静香(遅れるかと思ったけれど、これならちょっとは楽屋で休憩して、本番出来そうね)
星梨花「……あっ静香さん!」
静香「星梨花、どうしたの楽屋の外で」
星梨花「それが……」
静香「プロデューサーと志保が打ち合わせ?」
星梨花「はい……」
星梨花「早く終わるって言ってたんですけど……」
静香「一体何を……」
「―――――言うなー!」
静香「な、何?プロデューサー?」
志保「声、大きすぎますよ」
ミリP「うっかり興奮してしまった」
志保「そろそろ終わらせないと、星梨花が変に思いますよ」
ミリP「なら早くウィットの効いた決め台詞を考えないとな……あ」
志保「決まりましたか?」
ミリP「引き出物に紅白まんじゅうならぬ、紅白そばうどんっていうのはどうだろうか」
志保「期待した私が馬鹿でした」
静香「何してるのよ全く……」
星梨花「打ち合わせって何のことでしょう?」
静香「……怪しいわね。第一あのプロデューサーだから、何をしでかすか分からないわ」
静香(もしかして、志保に「静香と仲良くして欲しい」とか頼んでるんじゃ……)
静香(確かに傍から見れば不仲に見えるかもしれないけど……)
静香(大事な仲間、だって……嗚呼こんなこと、志保にも、プロデューサーにも言えない……)
ミリP「じゃあそばじゃなくて紅白うどんにすれば静香も満足かなぁ」
志保「そのまま道筋逸れて脱線してください」
志保(そば…………あれ、確か、さっき……)
「そのそばで、幸せになりたい」
志保(そば……側……蕎麦…………あっ)
志保(…………くさい台詞だけど……案外、静香には受けるのかも)
志保「……プロデューサーさん」
ミリP「うん?」
静香「やっぱり入るわ」
星梨花「ええっ、でも秘密の話だって言ってましたよ?」
静香「ちゃんとノックしてから入るわよ。それなら迷惑をかけない」
星梨花「でも……」
静香「大丈夫、何かあっても星梨花は悪くないわ」
「――――あははははははは!」
静香「……あんなに笑ってるなら、入っても大丈夫だと思うわ」
ミリP「こりゃぁいい!最高に気が効いてる!」
志保「そこまで笑えますか……?」
ミリP「あーよかった!やっぱ志保に頼んで正解だった!ありがとう!」
志保「あんなのでいいのならよかったです……」
ミリP「よっしゃ一丁予行練習だ!あーうんうん」
静香「失礼しま…」
ミリP「静香はうどんが好きだけど、俺は静香の”そば”に居たい!」
静香「……………………はい?」
志保「あ…………」
ミリP「うーんいいなこれ!俺は好きだぞ!」
静香「……………………」
星梨花「静香さん、どうしたんですか?」
志保「……プロデューサーさん」
ミリP「んー?」
志保「私、失礼します……」
ミリP「いやいや、お礼するぞー。何かお菓子でも買ってくるから待って」
志保「星梨花!行くわよ!」
星梨花「はい?どこにぃぃぃぃぃぃ~~~~」
ミリP「あらあら何処に行くんだっ………………………あ」
静香「プロデューサー……」
ミリP「あーーーーーーーーうん」
ミリP「もしかして、聞いてた?」
ミリP「……まぁ、その顔見れば、分かるわな」
――――後日談
静香「……あの時は何があったのかと思いましたよ」
ミリP「すまんすまん、ホントーにすまん」
静香「ハァ……あの日の本番をやり直したい……」
ミリP「いやよかったよ?動揺とか全然分かんなかったし、ちょっと頬が赤くて、可愛かったし」
静香「い……言わないで下さい!」
ミリP「はっはっは、一生言いふらしてやる」
静香「む…………なら私は、あの台詞を言いふらしますからね!」
ミリP「あっ、いやっ、あれはそのっ、出来れば」
静香「ふふ、あんなギャグを言っておいて、タダで済まされると思ったんですか?」
ミリP「あれはね、若気の至りというかね、北沢志保完全監修だから俺は言っただけというかね、あのそのね、」
静香「ごまかしてもダメですよ……」
静香「これからも、そばで、言ってあげますからね」
おわり
この後滅茶苦茶うどん打った(挨拶)
先日知り合いPと愉快にうどんを食べに行った帰り、「もがみんのプロポーズって……」と、あの台詞を放ったのが話の骨子です。というか、あの台詞を言わせるために北沢君には大変な役を任せてしまってとても申し訳なく思っています。ツッコミは横山くんに任せよう、な。
最上静香と北沢志保が地方のお仕事で仲良くうどんを作る日を願って!
乙でした
>>1
北沢志保(14) Vi
http://i.imgur.com/Aa85Bfk.jpg
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>>6
箱崎星梨花(14) Vo
http://i.imgur.com/5paQbBr.jpg
http://i.imgur.com/yq6IMrk.jpg
>>18
最上静香(14) Vo
http://i.imgur.com/XcP2c9j.jpg
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