遊矢「ある日の放課後」 (24)


・遊矢×柚子

・短い

・デュエルなんてない

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遊矢「…………」

柚子「ようやく起きたわね、この寝坊助」

遊矢「……柚子?」

柚子「ほら、しゃきっとして。口元の涎の後も拭きなさい」

遊矢「えっと、ここ教室?」

柚子「そうよ。遊矢ったら午後の授業から今までずっと寝てたんだから」

遊矢「他のクラスの連中は?」

柚子「とっくに帰ったわ。もうすぐ完全下校時間よ」

遊矢「本当だ、もうすっかり夕方だ……もしかして俺を待っていてくれたのか?」

柚子「もしかしなくてもね。遊矢1人置いておく訳にもいかないでしょ?」

遊矢「だったら起こしてくれても良かったのに」

柚子「だって凄く気持ち良さそうに寝てたんだもん。何だか起こすのが可哀想に思えてね」

遊矢「でも待ってる間暇だっただろ?」

柚子「そうでもないわ。意外と飽きなかったし」

遊矢「飽きなかったって?」

柚子「遊矢の寝顔。結構可愛くて良い目の保養になったわよ」

遊矢「……冗談でも可愛いって言われるのは男としてあんまし嬉しくない」

柚子「そうやってすぐむくれる所も可愛いわよ」

遊矢「何か柚子、ちょっと意地が悪くないか?」

柚子「起きるまで待ってあげたんだからこれくらい言わせなさいよ」

遊矢「勝手に待ってた癖に……あー何か身体が痛い」

柚子「長い間机の上で寝てるからよ。さあ、いい加減帰るからさっさと荷物纏めて」

遊矢「はい、はい」


…………

柚子「最近調子どう?」

遊矢「調子って何の調子だよ?」

柚子「調子は調子よ。学校の事とか、デュエルの事とか」

遊矢「そんなの、柚子は何時も俺の近くに居るんだし聞かなくても分かるだろ」

柚子「まあそうなんだけどね。でも聞かないと分からない事ってあるでしょ?」

遊矢「別に何の問題も無いさ……最近は父さんの事であーだこーだ言う奴も減ったし」

柚子「そう……あ、でも公式戦の成績だけは早く上げときなさいよね。下手したら遊矢、今年のジュニア・ユース選手権出られないわよ」

遊矢「嫌な事思い出させるなぁ。でも大会まではまだ日もあるんだし大丈夫だよ」

柚子「何か不安ね。遊矢って夏休みの宿題もギリギリになってから焦るタイプだし……」

遊矢「そんな事を心配するとか柚子は俺の母さんか」

柚子「ちょっと、幼馴染を母さん呼ばわりは酷いんじゃない?」

遊矢「……プロになるのは俺の夢なんだ。柚子に言われなくても先の事はちゃんと考えてるさ」

柚子「ふぅん……まあ遊矢はやれば出来る子だもんね」

遊矢「その言い方も何処となく母さんっぽい」

柚子「だから母さん呼ばわりはやめて。次言ったらハリセンで引っぱたくわよ」

遊矢「……何か小腹空いたな。何処か寄る?」

柚子「駄目よ、もう遅いんだし。それにこんな時間に何か食べたら夕ご飯食べられなくなるわよ。我慢しなさい」

遊矢「やっぱり母さ……いや、何でもないです。だからその振り上げたハリセン下ろして。お願いします」

柚子「もう……あ、桜の木」

遊矢「学校のはもう大分散ったけど、ここのは結構残ってるな」

柚子「そういえば今年はお花見行って無かったわね。次の休みまでに散って無かったらここでお花見も良いかも」

遊矢「そうだな、塾のみんなで柚子が作った弁当を囲んで……ああ、想像したらさらに腹が減って来た」

柚子「遊矢は完全に花より団子ね……というかお弁当作るのは私で確定なんだ」


…………

柚子「ここでお別れね。あ、くれぐれも買い食いなんかしちゃ駄目よ」

遊矢「わざわざ念押さなくても良いから。そもそもここまで来たら家まで帰った方が早いし」

柚子「分かってるなら良いけど……じゃあ遊矢、また明日ね」

遊矢「…………」

柚子「遊矢?」

遊矢「……やっぱり送って行く」

柚子「へ?」

遊矢「だから柚子の家の前まで送って行くよ。もう大分遅い時間だろ?」

柚子「別にいいわよ。ここから私の家まで5分と掛からない距離だし」

遊矢「いや、確かにそうなんだけどさ……帰るのがこんなに遅くなったのは俺が原因だし……」

柚子「もしかして気にしてたの? さっきは勝手に待ってた癖にとか言ってたのに?」

遊矢「……悪いかよ」

柚子「ふ~ん」

遊矢「そのニヤニヤした顔やめろ。ほら、送るからさっさと行くぞ」

柚子「ちょ、急に引っ張らないでよ! 分かったわよ、送られて行ってあげるわよ」


…………

遊矢「そういえばさっきの花見の話だけどさ、行くならちゃんと具体的な話決めといた方が良いかな?」

柚子「う~ん、どうしようかな? あくまで次の休みまでに桜が散ってなければの話だし……」

遊矢「まあもし散っちゃったら来年の楽しみにしておけば良いか」

柚子「…………」

遊矢「どうかした?」

柚子「いや、何となく……何となく思ったんだけどね」

遊矢「ああ」

柚子「私達って後どれくらいこんな風に一緒に並んで歩けるのかな?」

遊矢「は?」

柚子「先の事って分からないじゃない。さっき遊矢は来年の楽しみとか言ったけど……来年も必ず一緒に居られるとかはまだ分からないよね」

遊矢「お前……何急にそんな不吉な話を始める訳?」

柚子「だ、だから何となくよ。特に深い意味は無いわ」

遊矢「本当に?」

柚子「本当よ」

遊矢「……そうだな。まあ確かに先の事なんて誰にも分からないよな」

柚子「うん」

遊矢「だけど……大丈夫じゃないかな。うん、きっと大丈夫だ」

柚子「どうして?」

遊矢「だって正直、柚子と離れるとか俺には想像出来ないしさ」

遊矢「柚子とは来年も、それから先も一緒に居ると思うんだ」

遊矢「確かに先の事は分からないけど、何となくで保証も無いけど」

遊矢「俺の隣にはこれからも柚子が居る……俺はそう思うし、そうだったら良いとも思うよ」

遊矢&柚子「…………」

遊矢「……俺、今わりと恥ずかしい事言ったかな?」

柚子「……わりとってレベルじゃないと思う」

遊矢「…………」

柚子「だけど……そうだね、私も思う」

遊矢「…………」

柚子「私も遊矢と離れる事とか想像出来ないし……そう思うよ」

遊矢「……そっか」

柚子「……うん」

――柚子は俺にとって大切な存在だ

――だから俺はこれからも柚子の傍にいる

――俺達はお互いにそれを望んでいるから

――大切な柚子の傍に、俺は居るんだ

…………………

……………

…………

………

数ヶ月後……

遊矢(…………)

遊矢(傍に居るって、決めたのに)

遊矢(柚子……)



遊矢「絶対……取り戻してやる」

<END>

以上です。細かい点はスルーしてくれると幸いです。では。

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