※志希とPのみ
※志希がしゃべってるだけ
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●01
※http://i.imgur.com/fsHmMYP.jpg
ふわぁ~……うららかな日差しと、桜のほのかな匂いに包まれる昼寝はサイコーだねぇ♪
って、ナニ? プロデューサー、そんな変なカオしちゃって。
“起こす気は無かったんだが”って、いーよいーよ。
どうせキミが来たら起きるつもりだったし、ね。
春一番が吹いて、梅の濃い匂いが後ろに退いて、花冷えが過ぎて、今や春爛漫!
キミが近くに居てくれると、仕事中だってのに、思わず無防備になっちゃうよー。
で、どしたの。キミ、いつになくソワソワしてないかな?
“そんなことまでニオイで分かるのか?”って。
いやー志希ちゃんの五感を嗅覚だけだと思っちゃイカンよー。
もーキミともそれなりの付き合いになるから、なんとなく分かるのさぁ。
え、言うことがある――総選挙の中間発表?
ははぁ、やっぱりキミもプロデューサー、あたしと遊んでるばかりじゃないからね。
お仕事の数字は気になるかぁ。で、志希ちゃんはいくつだった?
――へぇ……3位、なんか前回から一気にどーんと来ちゃってるね。
ふふーん、あたしが、その位置に来たのかー。
こりゃ、ちょっとヤバいかも、ね。
●02
ちょっと、思い出話をしようかー。
あたしがアイドルを始めた理由って、ホントにキョーミ本位だけだったんだ。
キミにスカウトされたわけでもなかったのにねぇ。
『あ、キョーミ深い実験材料を発見♪
ふふ~ん、そこのキミキミ♪ ツンツン♪
キミ、なんかイイ匂いがするね!』
いやー、キミは初対面の志希ちゃんにこんなコト言われて、
よくまともに相手してくれたよねー。
『カワイイ? そーゆーの、今まで気にしたことなかったからすっごい新鮮かも♪
キミとアイドルやったらもっと面白いことがあるかもー♪』
キミに声をかけた理由は、フィーリングとしか言い様がないね。
強烈に何かを訴えかけるわけじゃないけど、
あったかくてやさしーから、ふと足を止めてしまう。そんな感覚。
この感覚、けっこう新鮮だったよ。何せあたしったら――
『先生! 志希は興味が3分しか持続しない子です! 待ち時間ツラい!』
『よし、失踪…逃げちゃえ~♪』
こんなヤツだったからねー。
事あるごとに姿をくらまして、そのたびにキミをあちこち探させちゃったね。
あたしはそれが楽しくて、ちょっとクセになっちゃってさ♪
その時の宣材写真、見れるー? あーこれこれ。
※http://i.imgur.com/vbRr0cO.jpg
この服装の着崩し具合、今見るとあざとく見える――おへそとか――けど、
コレもキミと追っかけっこしてぐちゃぐちゃになっちゃったのをそのままにして撮ったら、
素材を選んでる時にみんながいい、って言ってくれて、それで採用したんだっけ。
あたしったらソレを免罪符にして、しばらくキミを振り回してたっけ。
退屈だー退屈だーいいながら、あたしはしょっちゅう現場抜け出しちゃった。
ホント、逃げ出したあたしをよく追いかけてくれたもんだよねー。
ソレがちょっと嬉しかったりして、今思えば懐かしいね。
●03
で、コレが別の衣装なんだなー。
※http://i.imgur.com/w8EqGBe.jpg
あの時あたしが、
『にゃーっはっは! ふっふ~!!』
なんて言ってたもんだから、キミにネコちゃんみたいな衣装を着せられちゃったよ~。
上に羽織ってるこの白衣、あたしが持ち込んだ私物だよね。
実は、この白衣、おうちでは他のとは別により分けて取っておいてあるんだ♪
白衣って実験ですぐダメになっちゃうけど、これはキミとのお仕事の記念だから、大事にしてるんだよ!
『ちょっとだけ刺激の強いあたし、投与しよー♪ ほ~らほら♪』
『キミはプロデューサー、あたしはアイドル。この化学反応、ちょっとイイかも!』
にゃーにゃー言いながら仕事するの、初めてだったけど楽しかったよ。
『にゃーっはっはー♪ キミも一緒にやる? 楽しいよ! ヘンタイごっこ!』
ま、キミはヘンタイごっこには付き合ってくれなかったねー。
その上“調子乗り過ぎだ”ってNGくれちゃってさ。ぶーぶー。
今なら付き合ってくれるかな? かな?
●04
で、お次の仕事は……コレだね。ガンスリンガージャーニー!
※http://i.imgur.com/WPBAG7i.jpg
いま見ても、まぁまぁカッコいいかな?
この衣装で、のあにゃんとバンバンバーン!
と暮れなずむ荒野をバックにカッコよくガンアクションしたよねー♪
アウト・ローの世界で、自由と秩序を天秤にかけて決闘!
ってシチュも、実は個人的に刺さったね。ちょっと考えさせられたよ。
今までのあたしは、自由気ままにしか動いてなかったから。
キミみたいに、あたしの手を引いて前を歩ける人なんか、いなかったし。
今まであたしの手を引こうとした人はソコソコいたけど、
だいたい3分しか関心が持たないあたしに辟易してどっか行っちゃったり、
あたしが置き去りにしちゃったし。
※http://i.imgur.com/cqsoGi2.jpg
って、その写真はー!
コレもあのあたりの時期だったねー。
『ふぁ…。おはよぉ~。
いやぁ~夜中にスペシャルなアレの実験してたら予想以上にはかどって、寝るのが遅くなっちゃって、
っていうか寝てないから~……え、遅刻ー? まー、細かいことは気にしない~』
あたしったら、うっかり何か集中しちゃうと寝るのも忘れちゃうからさ。
お仕事があるの忘れて、つい、ね。
『ごめんにゃさい♪』
『にゃはは…キミのことだからてきとーでも大丈夫でしょ? ねー♪』
……うーん、この反省の色の無さ。
この頃は、正直今よりアイドルのお仕事ナメてたねー。
“わざわざ言わなくても分かってた”って? あはは、参ったなぁ。
ガンスリンガージャーニーではほかの子とも絡んだから、
こんなユルユルオーラだしてたせいで、
のあにゃんからたしなめられちゃったりもしたっけ。
いやーあたしもまだまだ青かったってコトだねー。
『今日は逃げないって…たぶん…』
『お仕事、楽しみにしてたよー』
ま、このお仕事よりあとから、キミから逃げまわっている時間はだいぶ減ったよね♪
たまに、追いかけっこが懐かしくなったりしない?
●05
キミと過ごした去年の夏は、色んな意味で忘れられないモノになったね♪
※http://i.imgur.com/9IjuWZi.jpg
『んん~♪潮の香りって、あんまり嗅いだことないかも!
キミとあたしの夏のメモリーはこの香りに決定かな♪』
志希ちゃん、こー見えて東北・岩手の生まれで、
海外でもそんなに海岸を歩いたりしなかったから、
ハイビスカスなんてつけちゃった南国気分は、とっても新鮮だったなー!
『夏の海はー危険な匂いー♪』
潮の香り、足を洗うほの温かい海水、青い空と水面、眩しい太陽に輝く汗!
『研究室でためてたもの、たまには解き放ってみようかな!』
インドア派のあたしも開放感に浸っちゃったよーもー。
あとさ、キミも実は海の雰囲気にあてられたのか、あたしを見る目つきがいつもと違ってたよね?
『ちらっ。刺激ブツ、投下~♪』
『ん~? おぉ~、キミはいい反応を示すねぇ♪ いい子いい子♪』
あたしも、キミの視線を今までよりも意識しちゃったりなんかして。
『キミも、潮の香りを嗅いだら志希ちゃんの水着姿が思い浮かぶカラダになっちゃえ~♪』
ふっふーん、キミもあの時のあたしを、思い出しちゃったかな?
※http://i.imgur.com/LkbadzN.jpg
『へいへ~い♪ 夏を楽しむ準備はできてるか~い? ボンヤリしてるキミも、
志希ちゃんの歌でアッツい夏をもっともっとマインドトリップさせちゃうからね♪』
夏と海に煽られた勢いは、熱しにくく冷めやすいあたしさえも、
アドレナリンをガンガンに分泌させて、今までにないぐらい勢いに乗った仕事っぷりだったね!
いやー自分でそう言っちゃうぐらいのもんだったでしょ?
『キミも夏の味わい、感じられた?最後は塩味のこの肌!
だけど、ペロペロするのはまだお預けだよ~♪ もっとシゲキをちょうだい♪』
キミのニオイ……だけじゃなくて。
キミが新たに見せてくれる世界――すなわち、アイドルのお仕事!
それにあたしが魅せられたコト。ハッキリ自覚しちゃったのさ。
●06
パフュームトリッパーでは、はじめてキミを志希ちゃんラボにご招待したね!
※http://i.imgur.com/ZO01MoP.jpg
いやー。アイドル……っていうか、女の子の部屋としてちょっと異端だったかな?
アレでも、一応片付けたのよ。キミに見られてもいいように。キミに触れられてもいいように。
……取り扱い注意のクスリの話だよ? にゃっはっは!
『コーヒーメーカーは、その台の横ー。二人分、もちろん淹れたてでね♪』
あのコーヒーメーカー、あたしがもう何年も愛用してるお気に入りだったんだけど、
キミといっしょに飲んだコーヒーの香りと味は、いつもとひと味違ったかな?
あーあー、あたしの嗅覚にもファジーっぽいとこが出てきちゃったよー。
『夢の中で、気づいてたよー♪ この匂いは……キミだって、ねー』
このぐらいのときからねー。キミが来てくれたら、寝てても分かるようになったんだー。
だからさっきも目覚めちゃったんだ。志希ちゃんスゴイでしょー? 褒めて褒めて!
『白衣の下のはまだまだ未検証ー。二人で研究しちゃうー?』
にゃっはは! キミもそんなカオするんだ!
ドキドキが表情筋に出ちゃってるよ?
キミをそんなカオにできるなら、あたしもお仕事いけそーだね……って。
『今日見た姿は、口外しないこと♪ はい、このユビに機密保持のサイン』
ま、あの姿は反則だったかな。ほかの人には見せらんないからね♪
※http://i.imgur.com/ukXYjOO.jpg
『全マテリアル投入からのー、大実験♪
夢のポーション発明は、THEアルケミストこと志希ちゃんに託されたー!』
今まであたしがどっぷり使ってたケミストリーな世界と、
キミがあたしに見せてくれたアイドルの世界が、ここでドラマティックに交差しちゃった!
『キミもある意味アルケミストでしょ? 無からキラキラ作りだす人ー』
あたしは、そのキラキラになれてるのかな?
『錬金術には、どんな素材も金に変える「賢者の石」があるとゆー。
あたしがアイドルになれるのも、キミってゆー賢者がくれたコトバかな』
あたしという素材を黄金に変えてくれる「賢者の石」があるとすれば、
ソレはキミがくれたコトバだよ。あたし、ホントにそー思ってるから。
『どんな賢者も成し遂げられなかった偉業を…キミと叶える♪』
ちょっとあたし、今までにないぐらい真剣になっちゃってる。
●07
『フンフン……う~ん、これが春の香りかー! むっはー、なんかテンション上がってきたー!
あたしの知らない世界と匂い、楽しー♪
これもキミがあたしを連れ出してくれたおかげだね! やーるぅー♪』
※http://i.imgur.com/3deqSk2.jpg
『キミが連れて行ってくれるところは、どこもキョーミ深い! 実にオモシロイ!』
キミと出会うまでのあたしにとって、世界ってモノは、
自分の気まぐれに任せて切り開くものだった。
誰かが先導してくれる時もあるけど、そーゆー人をあたしは追い越しちゃうんだ。
『この景色、記憶に焼き付けた! これでいつでも思い出せるよー』
キミと歩く世界は、あたしにとって初めての道連れ付きの旅だから、
一つ一つの瞬間が、ココへとてもビビッドに刻まれてるんだよ。
ほーら、特別にポンポンすることを許してあげる♪ 文明開化の音がするかもよ?
そーやって、キミとあ~だこ~だ寄り道しながらアイドル道を走り回ってた。
ずっとそうやって純粋に楽しめるかな、と思ってたけど。
ああ、3位かぁ。
シンデレラガールの座が、あと少し。
目に見える。手に届きそう。
でも、同じその夢を――たった一足のガラスの靴を目指しているコたちは、
もしかしたら、あたしよりも……?
今までは、ただキミとアイドルを楽しむことに集中できてたけど、
こーゆー位置に来ちゃうと、欲が出てきちゃうんだよね。
あんな遊び半分でアイドルやってたあたしが、エライ変わり様だよ。
だけど、同時に……本気になるのをためらう気持ちもあるんだ。
ほら、だってあたし、何にしろほかの人に後れを取ったことないから、さ。
本気でやって負けちゃうのが、コワいかなって。
これから試されるのは、キミと出会ってからあたしがやってきた経験だから。
あたしのなかでキラキラしてたまらない瞬間の全てだから。
久しぶりに、逃げ出しちゃうかもしれないね。
自分の好奇心だけが可愛くて、そのために人をぶん回してばかりだった頃に、戻っちゃうかもね。
それは、イヤだなー。
きっと、負けちゃう以上に悔しい。
だから、あたしが逃げ出したくなっちゃったら、
あたしをキミの手で捕まえておいて欲しいな。
そしたら、あたしはまたアイドルを楽しめるから。
この夢の様な時間を、キミと歩き続けられるから。
(おしまい)
これから正念場の志希に、改めてあなたの一票をお願い申し上げます
ギフテッド教育では、チェスなどを通して敗北感と折り合いをつける訓練がカリキュラムにあるらしい
彼らは同世代の子供に比べて、極端に敗北経験が少ないため、わざわざそういう訓練をするのだとか
文明開花は最高だったが、台詞で「桜の樹の下で永遠の眠り~」とか西行法師みたいなこと言い出して
突然世捨て人になりそうなイメージも……趣味が失踪だし
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