番長「風間ファミリー?」(65)
雪子「うん。昨日からそう名乗る学生の団体客がうちに泊まってるの」
陽介「ファミリーねぇ。部活とかサークルとは違う感じか」
千枝「学生って、大学生? それとも高校生?」
雪子「わからない。同年代だとは思うけど」
雪子「でね? 後で名簿見てすごいびっくりしたんだけど。その中にあの『武神』の名前があったの」
陽介「えっ!? 武神って、たまに空に向かってビーム撃っちゃうあの!?」
雪子「うん」
番町「ハイカラだな」
千枝「うわー。なんか凄いお客が来たね」
陽介「事件がやっと解決したと思ったら、今度は武神かよ……稲羽市千客万来過ぎんだろ」
天城屋旅館
大和「……何もないな」
翔一「ん? 何が?」
大和「稲羽市だよ。せいぜいジュネスがあるくらいで、他には何も」
一子「ほんとにねー。キャップ、何でわざわざここを旅行場所に選んだの?」
翔一「なんだなんだー? お前らニュース見てなかったのかよ」
モロ「あー、そういえばなんかよくニュースで聞いたかも。稲羽市って」
京「稲羽市連続殺人事件、だっけ。大和付き合って」
大和「お友達で。確か三人被害にあった事件だな」
由紀江「あ、私もニュースで見ました。確かもう犯人は捕まったんですよね」
岳人「あれ? もう捕まったのか?」
クリス「ああ。気になったのは、犯人がころころと変わっていたような気がするところだな」
松風「変わったっていうか、最初の容疑者は嫌疑不十分で、二番目の容疑者は小説のタイトルだったんだぜクリ吉」
クリス「小説のタイトル?」
松風「そこは一応ネタバレ防止的な」
由紀江「ナイス判断です松風」
松風「オラできる馬だろ?」
クリス「???」
岳人「で、ワン子の疑問に戻るわけだ。何でキャップはその事件の舞台をわざわざ旅行場所に選んだんだ?」
一子「そう、それよ! どうしてなのキャップ?」
翔一「ぶっちゃけ事件はあんま関係ない。ただ事件のこと聞いて、『そういや日本であの辺はまだ行ったことなかったなぁ』って思ったわけよ」
モロ「逆に言えば、この辺以外はもう全部行ったことあるってことだよね……」
大和「世界規模で動き回る男だからなぁ」
京「ここに旅行に来た理由ってそれだけ?」
翔一「それだけありゃあ十分だろ!」
岳人「相変わらず自由な奴……」
由紀江「あの、ところでモモ先輩はどちらに?」
松風「最初からずっといないから気になって仕方ないよねー」
一子「あ、お姉さまだったら――」
バタンッ
百代「……いない」
岳人「お、噂をすれば」
モロ「あれ? なんか元気ない?」
一子「お姉さま? どうかしたの?」
百代「……現役女子高生女将が……いない」
クリス「は?」
百代「ちくしょー……昨日はなんか忙しそうであんまり声かけられなかったから今日こそはと思っていたのに……」
大和「やっぱり狙ってたか」
百代「当たり前だ。4月15日にテレビで見たときから口説こうと思っていた」
モロ「半年近く前から狙ってたの!?」
大和「まあ、女子高生なんだし。いつも旅館にいるわけじゃないんじゃない?」
岳人「だよなー。俺様たちみたいに友達グループで遊んでるかもしれないしな」
モロ「ちなみに、岳人は狙ってないの? 女子高生女将」
岳人「昨日声かけたらナチュラルに無視された……」
モロ「うわ一番寂しい」
百代「弟~。姉ちゃんは寂しいぞ~」ガシッ
大和「あー、はいはい。また夜になったらチャレンジしようね」
翔一「ぃようし! 全員揃ったところで、遊び行こうぜ!」
クリス「と言っても、どこに?」
由紀江「あまり遊ぶ場所が無いような……」
翔一「んなとこ適当でいいんだよ。なんだったら、地元の学生捕まえてそれらしいスポット教えてもらえばいいんだし」
一子「キャップはいつでもぶれないわねー」
翔一「じゃ、しゅっぱーつ!」
商店街
りせ「あ、せんぱーい!」
完二「ちぃーっす」
陽介「よう。あれ、直斗は?」
りせ「もう少ししたら来るって」
完二「クマ吉もいないっすね」
千枝「クマくんも後から来るよ。ジュネスのバイトそろそろあがる時間だから」
りせ「雪子先輩、今日は大丈夫なんだ?」
雪子「うん。事件解決からまだ少ししか経ってないせいか、お客さんの数例年より少ないし」
番長「ハイカラな武神は?」
雪子「団体さんっていっても、十人もいなかったから私がいなくても平気だよ」
完二「なんすか、ハイカラな武神って?」
陽介「いやハイカラはいいから。お前も知ってんだろ、武神って」
完二「ええ、まあ。空になんかビームみたいなの撃っても、『なんだ。momoyoか』って世界も納得するっつー」
りせ「え!? まさか、その人が先輩の旅館に!?」
雪子「う、うん。その、あんまり言わないでね? お客さんなんだし」
陽介「いや最初に言ったの天城だし。ま、確かに言いふらしていいことじゃねーか」
千枝「ところでどうする? 直斗くんとクマくんが来るまで」
完二「あ、俺小腹空いたんで惣菜大学行ってもいいっすか?」
千枝「お、いいねー。あたしもビフテキ串買いたい」
りせ「あ、わたしも!」
陽介「うし。じゃ、惣菜大学で各々なんかつまみながら二人を待つか。お前らもいいか?」
雪子「うん。いいよ」
番長「大食い勝負しよう」
陽介「何でだよ!? 胃がもたれんだろが!」
番長「ですよね」
陽介「お前のノリがたまに意味わからない……」
雪子「……ぷふっ」
陽介「(;´д`)」
惣菜大学前
千枝「んまー! 惣菜大学は軽く肉食べたいときホント重宝するよねー」
完二「調子乗って食い過ぎたら胃もたれが半端ねっすけどね」
りせ「あと、カロリー採り過ぎも注意しないと」
番長「いただきます」
千枝「ってあたしらが言ってる側から多っ!?」
陽介「おま、ビフテキ串何本買ってんだよ!? 20本はあるぞ!?」
完二「先輩パネェ……」
雪子「でも、鳴上君なら大丈夫じゃない? 確か愛家の雨の日スペシャル肉丼完食したんだよね」
番長「実に収穫の多い闘いだった」
陽介「お前のポテンシャルどんだけだよ……」
クマ「あ、いたクマ! みんなー!」
りせ「あ、クマ。直斗くんも一緒だ」
直斗「皆さん、お待たせしました」
番長「二人とも一本食べるか」
クマ「おー。センセイ太っ腹クマ!」
直斗「いただきます、けど……それ、一人で食べるんですか?」
番長「おやつ代わりに」
陽介「メシのおかずでもその量はためらうわ!」
??「お! 俺もなんかうまそうな匂い発見!」
千枝「ん?」
風間ファミリー視点
一子「くんくん……香ばしいお肉の匂いがするわ」
クリス「犬は本当に犬なんだな」
翔一「お! 俺もなんかうまそうな匂い発見!」
モロ「匂いは発見とは言わないんじゃ」
由紀江「あ、でも本当においしそうな香りがしてきました」
松風「ジュルリ――おっといけねぇ。よだれが出ちまったぜ」
岳人「お? あの店じゃねーか?」
大和「えーと、惣菜大学?」
京「そこっぽいね。学生の団体が食事してる。大和キスして」
大和「お断りします」
百代「――!」キュピーン
一子「お姉さま、どうしたの?」
百代「この気は……まさかの次期女将キターーーー!」ダッシュ
一子「ちょっ、お姉さま!?」
岳人「次期女将って、まさか天城屋旅館のか!?」
モロ「ガクト、目が血走ってるよ」
クリス「おい、モモ先輩止めないと! ここは川神じゃないんだぞ!」
由紀江「そ、そうですね! さっそくあちらの団体さんにご迷惑おかけしてるみたいですし」
大和「まったく」
京「しょーもない」
真実を追う仲間たち視点
女性「なんか女将以外にも美少女たくさんイターーーー!!」
千枝「な、なに? この人」
陽介「いきなり現れてなにを絶叫してんの!?」
雪子「あ、あの……」
ポニテ「お姉さま! 待って待って!」
筋肉「そうだぜ先輩! せめて一人くらいは俺に回してぐぼぁっ!?」
金髪「そうじゃないだろ! 殴るぞ!」
筋肉「殴ってから……言うな……」
りせ「本当になんなの?」
直斗「この辺りでは見かけない方々ですね」
女の子「あうあうあ……あ、あああああの! せ、先輩がががも、もももも申し訳ありりりません!」
ストラップ?「まゆっち落ち着けーどもりまくりだぜー」
完二「んあ!? い、今何が喋ってた?」
番長「腹話術!? しまった……まだ覚えてない!」ヨロッ
陽介「ショック受けんのそこ!? しかも覚える気あんの!?」
バンダナ「お、なにそれうまそーじゃん。一本もらっていい?」
前髪男子「キャップはフリーダム過ぎだよ! このカオス状態の中で肉ねだるの!?」
番長「どうぞ」
陽介「立ち直り早っ! そしてあげんのか!?」
女性「ねーねー。お姉さんとデートいかない?」
前髪男子「収拾つかなくなるから先輩も自重してくれないかな!?」
雪子「あ。この人確か武神」
陽介「ちょーっと待て! 天城今さらっと物凄い二文字口にしなかった!?」
番長・バンダナ「うん、うまい」
陽介・前髪男子「なに平然と食べてるんだよ!!」
男子「……混沌としてるなぁ」
ショート「やっぱりしょーもない」
ふと思い付いた結果、ノリとテンションだけで投下した。後悔も反省もしていない。
……需要あるかな(´・ω・`)?
あざっす。
他にも一つこちらに投下してるんで、そっちと交互にやっていこうと思いまする。
数分後
陽介「ひとまず落ち着いたところで、まず自己紹介といこうか」
翔一「じゃあまずは俺たちからな。俺は風間翔一。風間ファミリーのリーダーだ! 好きなことは冒険な!」
モロ「僕は師岡卓也。漫画とかゲームの話題なら大体着いていけるよ」
岳人「俺様は島津岳人だ。自慢はベンチプレス190出すこの鍛え抜かれた筋肉!」ピクピク
大和「直江大和。ファミリーの参謀役ってことになってます。よろしく」
翔一「大和のあだ名は『軍師』だからな!」
番長「陳宮とか山本勘助のような?」
大和「仲間内のあだ名でそんな凄い人たち引き合いに出されても」
雪子「それ、二人ともファンには有名だけど一般的な知名度はマイナーな類だよね」
陽介「そこをピンポイントでチョイスするところがお前らしいよ」
由紀江「えええとあの、その、ま、黛由紀江と申します! い、いいいい以後お見知りおきを!」
モロ「まゆっち、相変わらず初対面の人と話すの苦手なんだね」
千枝「あのー、ずっと気になってたんですけど」
由紀江「は、はい! 何でしょう!?」
千枝「(顔こわっ!?)えっと、黛?さんが手に持ってるそれって……」
番長「刀だな」
千枝「うえっ!? やっぱり!?」
大和(普通は刀より、竹刀や木刀を連想するのが先だよな……?)
由紀江「あああうあうあ! だ、大丈夫です町中で抜刀なんかしませんし国から正式に許可も頂いてますし!」
ストラップ?「だからまゆっちは別に銃刀法違反ってわけじゃねーんだ。そこんとこ夜露死苦な」
完二「ま、またか!? なんでテンパったままストラップで自然に腹話術が出来んだ!?」
松風「オラ松風。言っとくけどオラはこのストラップに宿った九十九神なのであって決して腹話術なんかじゃないんだかんな」
完二「あ? つ、つくも?」
クリス「次は自分だな。自分はクリスティアーネ・フリードリヒ。ドイツから來た留学生だ。好きな時代劇は大和丸夢日記! 好きな食べ物はいなり寿司だ!」
りせ「いなりかー。そういえば、この辺って和食のお惣菜あんまり見ないよね」
クリス「そうなのか? なんだ、後で買おうと思っていたのに……」
番長「あ、今朝作ったやつの余りでよければ」コト
クリス「え! いいのか!」
陽介「いやいやいやいやいや何でいなり寿司持ち歩いてんの!? しかも手作りを!?」
番長「菜々子が退院したら食べたいって言ってたから作ってみた」
クリス「こ、これは――うまい……!」
ポニテ「ホント? どれどれ――おお! 本当においしいわこれ!」
翔一「あ、俺も俺も――おー、こりゃうめえ!」
直斗「好評ですね……」
クマ「さっすがセンセイクマ!」
りせ「先輩って、本当に何でも出来ちゃうよねー」
千枝「ま、まあ、あたしだっていなり寿司くらい作れるけどね。うん」
クリス「そうなのか? それはぜひ食べてみたいな!」
千枝「え? そ、そう?」
陽介「やめなさい! 貴重な観光客の宿を病院にする気か!」
クリス「でも本当にうまいぞこれは! もし良ければ、作り方を教えてもらえないか?」
番長「お安いごようだ」
―――説明中―――
クリス「す、すごいな! なんだか、聞いただけでいなり寿司作りの極意を会得出来たような気がする!」
大和「なんて凄まじいいなり寿司の知識と伝達力だ……! 真剣に聞かなくても作り方がスラスラと頭の中に入ってきたぞ」
モロ「確かに、京極先輩並の分かりやすさだったね」
大和(まさかこんな田舎にこれほどの人物がいたなんて……これは連絡先を聞いておかなければ)
クリス「ありがとう! よし、今度さっそく作ってマルさんに食べてもらおう!」
岳人「俺様でもわかるくらい丁寧な説明だったが、この拭い切れない不安は何だ……?」
翔一「まー作るのがクリスだからなー……」
陽介「あれ。何だろう親近感が湧いてきた」
大和「まあいなり寿司談義はこの辺にしておいて。こいつは椎名京」
京「椎名京。大和の正妻。以上」
りせ「正妻……? え!? 学生結婚!?」
大和「結婚してないし恋人でもないから誤解しないでくれ」
京「……」
大和(やっぱりファミリー以外の人間とは話したがらないなぁ……)
一子「次はあたしね! 川神一子! 流派は川神流で、好きなことは修行よ! よろしくね!」
雪子「修行!? 例えばどんな?」
一子「えーっとね。タイヤを引いて隣の県まで走ったりとか、山籠もりすることもあるかなー」
雪子「隣の県に山籠もり!? すごーい! 本格的だ」
陽介「いや本格的っつーレベルなんかとっくに超越してると思うんだが……」
千枝(こ、この子の前であたしも修行してますとか言えない……)
陽介「さて、そっちはいよいよ最後の……」
百代「あー、私だな。川神百代。川神学園三年生。好きなものは戦いとかわいこちゃん。強いやつの挑戦大歓迎だ」
番長「手合わせ願おう」
全員『!?』
陽介「おま、何言って!!」
百代「ほー? 勝負方法は?」
番長「……」
百代「……」
番長「……」
百代「……」
番長「――!」カッ
百代「――」ピクッ
番長「バスト90!」
全員『!?!?』
百代「惜しいな。残念」
番長「負けた……」ガクッ
モロ「いや何の勝負だったの!?」
陽介「つかお前いきなり何言い出してんの!?」
番長「武神に勝負を挑んだよって菜々子に話したら喜んでくれるかなあと」
直斗「話題作りのために命を賭けないでくださいよ!」
百代「……」
一子「お姉さま? どうしたの?」
百代「いや。何でもないよ、ワン子」ナデナデ
百代(なかなか鋭い眼光だった……実戦経験があるな)
岳人「ところでよ。さっきも言ってたけど、菜々子?てのは誰よ? もしよければ俺様に紹介して――」
番長「……」ゴゴゴゴゴゴ
岳人「や、やっぱいいですはい!(すげえ殺気だ……)」
雪子「一応説明しておくとね。菜々子ちゃんは、鳴上君の従妹の女の子なの」
千枝「今お父さんと一緒に入院中でね。あ、ちなみに小学生だから」
岳人「なんだ。ならそうと言ってくれれば紹介してくれとか言わなかったのによ」
大和「この場に井上がいなくてよかったな」
モロ「まさに僕も同じこと思ったよ」
完二「あ? 井上?」
大和「うちの学園のロリコンさ」
川神市
準「――ふぁーっくしょん! なんだ? どこかの幼女が俺のこと噂してんのか?」
小雪「やーいハゲー。ロリコーン」ゲシゲシ
準「こらこらー。人の頭の上で無限1upごっこしちゃいけませーん」
稲羽市
翔一「とまあ、こっちはこれで以上だな」
陽介「んじゃ、次はこっちか。俺は花村陽介。あえて先に言っておくと、ジュネス店長の息子」
大和「店長の息子? 八十稲羽店の?」
陽介「そ。だから俺、ここじゃそこそこ有名人なのよね」
大和「へえ」
大和(こっちも後で聞いておくかな)
モロ「何だろう、君とはなんとなく気が合いそうな気がするんだ」
陽介「奇遇だな。俺もそう感じる」
一子「ツッコミ同士気が合うんじゃないのかしら?」
由紀江「モロさんにとって趣味以外の同志になりますね」
千枝「次あたし。里中千枝です。趣味はカンフー映画の鑑賞。好きな食べ物はプ――」
陽介「肉だよな」
千枝「う、うっさいなー!」
一子「じー」
千枝「え? な、なに? あたしの脚、なんかついてる?」
一子「そうじゃないけど。ただ、よく鍛えられてるなーって思ってね」
千枝「や、さすがに川神さんには及ばないと思うけど……」
雪子「私は天城雪子です――といっても、うちのお客さんだからもう一回会ってるんだよね」
百代「この偶然の出会いはきっと運命さ……だからデートいかない?」
雪子「え? いや、そういうのはちょっと」
百代「む? さすがにここでは川神のようにはいかんか……私の美少女ナンパが通じないとは」
モロ「そもそも川神の方が特殊なんであって天城さんの反応の方が普通だと思う」
完二「あー、俺ぁ巽完二。で、あー……あと特になし」
岳人「なんつーか、見るからに不良って感じだよな」
翔一「んー……俺なーんかお前のことどっかで見たことある気がするんだよなー」
完二「知らねーよ……なんかの番組で見たんじゃねーのか」
クリス「番組?」
陽介「あー。こいつ、暴走族特集した番組に出たことあるんだよ」
千枝「完二くんの名誉のために言っとくけど、完二くんは暴走族じゃなくて、暴走族を潰した方だからね?」
モロ「え? それ名誉守ってるの?」
由紀江「むしろより凶暴性を煽っているような……」
松風「なんでこの場に混ざってるのか不思議だー」
完二「そりゃー……色々あったんだよ」
モロ(みんなもう松風に慣れてる……)
陽介「ま、見た目も口も悪いけど、中身はいい奴だからさ。そこは保証するぜ」
翔一「別に疑っちゃいねーさ。な?」
一子「うん! 全然」
完二「あ、ありがとよ……」
りせ「あ、次あたし?」
モロ「えっと、ずっと気になってたんだけど……」
百代「もしかしなくても、“りせちー”!?」
りせ「今は芸能活動休業中だから。今はただの九慈川りせだよ」
百代「やっぱり本物のアイドルキターーーー!」
モロ「そういえば、記者会見で稲羽市に帰るって言ってたよね! うわー、まさか本物に会えるなんて!」
大和「びっくりだ。まさか直にお目にかかれるなんてな」
大和(特にファンではないが、ここで友達になっておけば……!)
りせ「あはは。今更だけど、帰っても言いふらしたりしないでね?」
モロ「も、もちろん! あ、よければ何かにサインを」
クリス「なんだ、モロはファンなのか?」
モロ「うん! だってさ、綺麗な髪の毛してるじゃん!」
りせ「え?」サッ
雪子「髪の毛……?」サッ
モロ「あー違う違う! その、雰囲気というか、オーラがかわいいなって!」シドロモドロ
直斗「まぁまぁ。次は僕の番ですかね」
由紀江「あ!」
一子「どしたのまゆっち?」
由紀江「思い出しました! 確か、結構前にテレビに出てた!」
直斗「ああ。あの番組をご覧になっていたんですね」
由紀江「はい! たまたまテレビをつけたら映っていた番組をなんとなく見ていただけですけど。確か、探偵王子とか」
直斗「僕は白鐘直斗。王子というのはともかくとして、探偵もやっています」
大和「も?」
直斗「まだ学生ですからね。警察に協力したりもしますが、第一には学校ですよ」
大和「へぇ」
大和(彼と人脈を築けば、あるいは警察にもコネが出来る……!)
クマ「ねーねー。クマの番はまだクマ?」
岳人「ん? クマ……って何だ?」
クマ「クマはクマクマ! お嬢さんたち、よろしく……」キラッ
一子「な、何かが輝いているわ!」
由紀江「漫画に出てくるキザなキャラのアレですかね?」
松風「リアルでそれをやってのけるとか、よっぽどのナルシストか逆に純粋かのどちらかだよなー」
モロ「ところで、君エロかったりする?」
クマ「エロい? 何それ?」
岳人「あー……こいつは汚れてねぇ。本当にただ純粋なだけだ」
モロ「だね。ヨンパチを思い出す声だったからつい聞いちゃったけど」
クリス「しかし、クマ、というのは変わった名前だな?」
陽介「ま、そいつのことは深く考えないでやってくれ」
クリス「? そうか」
陽介「で、残るはこいつ。俺たちのリーダーだな」
番長「鳴上悠。趣味特技は何でも。よろしく」
大和「な、何でも?」
千枝「そのままの意味。鳴上くん、本当に何でも出来るから」
雪子「お料理に勉強に運動、ボランティアに家庭教師まで」
完二「釣りの腕前も半端じゃねーっすよ」
りせ「果てはキツネと心通わせたりね」
翔一「へー! 凄いんだなーお前!」
番長「趣味の範囲で」
陽介「いやお前のはどれもこれももうプロの域に足突っ込んでるから!」
翔一「自己紹介も終わったから聞きたいんだけど、この辺で遊べる場所とか知ってるか?」
陽介「遊べる場所?」
千枝「あー、ここ田舎だかんねー。名所といったら雪子んちくらいだし」
完二「沖奈市とかどうすか」
陽介「や、ここよかマシだけど、さすがに川神と比べると」
直斗「海まで出て釣りとかはどうです?」
りせ「え? 今から?」
雪子「バイクがあればいいとは思うけど……」
直斗「ああ、そうか。川神から来ているのなら、さすがに電車ですね」
モロ「そもそも僕ら原付免許持ってないしね」
クマ「ねーねー。そっちのみんなは、そもそも何して遊びたいクマか?」
百代「うん? そういえば特に決めていなかったな」
大和「外出て何かあったらラッキー、な感じで来たしね」
岳人「どうすんだキャップ」
翔一「いよし! じゃあケイドロやろう!」
千枝「ケイドロ?」
翔一「ん? この辺じゃドロケイか?」
モロ「たぶん問題はそこじゃないと思う」
りせ「えっと、何でケイドロ?」
翔一「今ふとやりたくなったからだ!」
直斗「……え? それだけですか?」
一子「あははは……ごめんねー。キャップ、思い立ったら即実行しちゃう人なの」
大和「風の向くまま気の向くまま、なヤツなんだ」
番長「よし。やろう」
陽介「決断早っ!?」
高台
陽介「えー、悠が平らげたビフテキの串を再利用したチーム分けの結果」
番長「……」
一子「……」
雪子「……」
由紀江「……」
岳人「……」
完二「……」
クリス「……」
陽介「ご覧の面々がケイサツ組となりましたとさ」
番長「じゃあ、まずは何か意見ある人挙手で」
一子「はいはーい!」
陽介「はい、川神さんどーぞ」
一子「わかりきってることだけど、ドロボウ組で一番注意すべきはお姉さまよ」
番長「ですよね」
雪子「なんてったって、武神だもんね」
岳人「先輩捕まえようっつーんなら、世界中の軍隊を総動員でもしないと無理だぜ」
クリス「いや。それでも足りんだろうな」
完二「どんなバケモンだよ」
由紀江「そうはいっても遊びですから、そこまで本気になることもないとは思いますけど」
陽介「けど、最重要人物であることは変わらないわけだ」
由紀江「それと、大和さんにも注意が必要です」
陽介「え? あー確か、直江だっけ?」
松風「風間ファミリーの軍師だかんな。頭の回転早いんだぜ」
完二「なら、直斗にも警戒が必要ってことになるんじゃねっすか?」
雪子「そうだね。直斗くん、探偵だし」
陽介「今回はドロボウだけどな」
岳人「キャップもなかなか厄介だぞ。あいつのすばしっこさはまさしく風だしな」
雪子「すばしっこさなら千枝もなかなかだよ」
番長「どうやら、敵は強大らしい」
完二「武神が向こうにいりゃそうなるっすよね」
クリス「大和や白鐘といった頭脳派があちらにいるのも痛いな。こちらの動きを読まれる可能性がある」
一子「大和そういうの得意だもんねー」
岳人「ここからドロボウ組の拠点を楕円形に結ぶラインの範囲内が今回の戦場だからな」
クリス「その範囲内に限定されたルートからこちらの動きを読むなど、大和なら簡単だろう」
完二「話聞いてると、直江先輩って明らかにケイサツ組に必要な人じゃねーすか」
番長「そこに直斗の推理力も加わるわけか」
雪子「……あれ? もしかして、私たちケイサツなのに不利?」
陽介「今更気付くのかよ!」
一子「いいじゃない。開幕不利からの反抗……気合い入るわー!」
松風「反抗も何もオラたちが捕まえる側だけどなー」
由紀江「いけませんよ松風。一子さんがせっかく気合いを入れているのですから」
番長(本屋に腹話術の本ってあったっけ?)
完二「で、制限時間は夕方五時までっすよね」
一子「うん。それまでに全員捕まえられたらケイサツ組の勝ち」
岳人「一人でも逃したらドロボウ組の勝ちだな。正直あんまし勝てる気しないが」
一子「何言ってるのよガクト! やる以上は全力で勝ちに行かないと!」メラメラメラ
岳人「ふっ。勘違いするなよワン子。いつ俺様が勝ちを諦めたよ?」
陽介「ま、やるからには、やっぱ勝ちにいかないとな」
クリス「当然だ。相手が誰であれ、勝負とは常に全力で勝利を目指すものなんだからな!」
完二「おもしろくなってきたじゃねーか。なら、俺もちっとばかし本気出しますよ!」
雪子「私も頑張るよ!」
陽介「しっかし、やみくもに攻めたところで敗北は必至だからな。ちゃんと作戦立てないと」
クリス「いや。ヘタに作戦なんか立てても、どうせ大和に読まれて逆に策に嵌りかねないぞ」
一子「そうね。むしろ、連携は最低限でいいかもしれないわ」
雪子「え? それぞれ勝手に動くってこと?」
岳人「まあ、どっちも急造のチーム編成だしな。何かあったらその都度連絡取り合って、でいいんじゃないか?」
由紀江「一理あるかもしれません。普段策を労する人はこういう時、相手も策を用意するものだと思いがちですし」
陽介「あー、直斗もたぶんそう思ってんだろうなー」
完二「好き勝手に動けば、それがかえって向こうを混乱させる、てことすね」
一子「そういうことね。決めるとしたら、誰か捕まえた場合の見張り番かしら」
岳人「それなら俺様に任せな。バスケで魅せた華麗なディフェンスを見せてやるぜ」
番長「よし。なら完二も頼む」
雪子「あ、いいかも。威嚇効果あるし」
完二「威嚇効果って何だよ!? まあ別にいいっすけど」
陽介「けどさ、万が一先輩が捕まえたやつ解放に来たら、お前らでもきつくねーか?」
由紀江「……」
岳人「確かにそれはキツイけどよ」
完二「やるしかねーなら、やるだけっす!」
岳人「ま、そういうことだな」
クリス「決めることといったら、このくらいか?」
一子「そーね。あ、後で鳴上くんたちに渡すものあるからね」
陽介「? ま、それは後のお楽しみでいいか。じゃあ出発前に、掛け声頼むぜ相棒!」
番長「ああ――行くぞ!」
一同「おー!」
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