権現坂「遊矢は俺の親友だ」

零児「知っている。そして彼が父親の背中を追って、エンタメデュエリストを目指していることも」

権現坂「一応お前は遊矢の父親を尊敬しているとか言っていたな」

零児「その通りだ。だがその榊遊勝が失踪して、一時は酷くイジメられていたとも聞く。
だがお前はその遊矢の支えとなり続けていたそうだな」

権現坂「…その通りだ。この漢権現坂、いついかなる時も遊矢を守ると決めた」

零児「そうか。だが私が聞きたいのはそういうことではない」

権現坂「何？」

零児「そのような境遇であれば、顔を曇らせた彼がお前に駆け寄るようなことも幾度と無くあっただろう…。
そんな遊矢を見て、君はどう感じたのか聞きたいのだ」

権現坂「どんなって…。俺は遊矢を守らなきゃならないと」

零児「なら、君が遊矢の笑顔を守ることが出来た時はどう感じた」

権現坂「何が聞きたい…！」

零児「彼に対してなにか良からぬことを感じたことはないかと聞いている」

権現坂「良からぬこと…だと？

零児「良からぬことと言えば良からぬことだ。もちろん彼に苛ついたとかそういう話ではなく、良からぬこと（性的な意味で）だ」

権現坂「貴様、遊矢と俺の友情を侮辱するのか！」

零児「私は事実を聞きたいだけだ」

権現坂「良いだろう、こうなったらデュエルで打ちのめして…」

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零児「私はある」

権現坂「なっ！？」

零児「あの遊勝塾でのデュエル、私がペンデュラム召喚をした時の彼の表情、その表情に私はなんとも言いがたい愉悦を感じた。
その瞬間私は理解した。希望を与え、それを奪い取った時の彼の表情、それが私が求めているものなのだと。
そう、これこそがファンサーｂ」

権現坂「言わせないぞ！！　なんだ、貴様はそんなカミングアウトをするために俺を呼び出したのか！？」

零児「で、実際のところはどうなんだ？」

権現坂「…」

零児「私はぶっちゃけたぞ。私は彼に関することは皆共有したいと思っている」

権現坂「お前が勝手に言ったのだろうが…」

零児「…」

権現坂「…」

権現坂「…実はある」

零児「」ﾆﾔﾘ

権現坂「正直遊矢が俺のことを呼びながら笑顔ですがってくる時、
俺は何度『けしからん、けしからんぞ遊矢！』と思ったかわからない」

零児「おお…」

権現坂「無理してない、心から笑っている時のあの笑顔は正直言って反則だ。
熱血キャラをいいことに何度も遊矢を抱きしめたが、正直言ってたまらない」

零児「フッ…。やはり我々は同士というわけだ。榊遊矢を愛でる者同士だ」

権現坂「どうやらそういうことらしいな」

零児「遊矢を愛でる…少なくともそのことでは、我々は仲間になれそうだ」

権現坂「だが…。お前と俺では決して相容れないことがある！」

零児「…何？」

権現坂「お前は言った。遊矢の笑顔が奪われた―――その表情に愉悦を感じると！」

零児「そのとおりだ。正直言ってこの前のバトルロイヤルの後に会ったあの時、
私は高ぶりすぎて自制するのに必死だったくらいだ」

権現坂「そう…やはり俺とお前は相容れない…！　俺が愛するのは遊矢の笑顔！　
その笑顔を奪おうというなら、この漢権現坂は許さない！」

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ…

セレナ「…何をしているのだ？」

権現坂「な、セレナか！？」

零児「榊遊矢の話だ」

権現坂「な！？」

零児「丁度いい、君にも聞いておこう。君はこの前のバトルロイヤルで彼と初めて会ったはずだ。君は彼に何を感じた？」

セレナ「お前がそれを言うのか。あいつをアレだけ煽っておいて」

零児「正直自分を抑えられなかった。反省はしている」

セレナ「抑えられなかった…？」

権現坂「やめろ。女子（おなご）にその話をするんじゃない！」

零児「で、実際彼のことをどう思った？」

セレナ「どう思ったって…。柚子のことを想う優しい男だと思ったが。柚子…私のせいで彼女は…」

零児「で、彼のことをどう思ったんだ。性的な意味ｄｸﾞﾎﾞｧ」ﾊﾞｷｨ

権現坂「言わせんぞ！」

零児「くっ…！　君もデュエリストならデュエルで語りたまえ！」

セレナ「せいてきな…とはどういうことだ？」

権現坂「なんでもない、なんでもないからな」ｱｾｱｾ

零児「では言い換えよう。私と彼のデュエルの時、彼に対して理屈では説明できないような…
そうだな、衝動のような感情が起こらなかったか？」

権現坂「お前も続けるな！　いい加減にしろ！」ｾﾞｴｾﾞｴ

セレナ「理屈では説明できないような衝動…うーん…」

零児「考えるんだ…それが我々ランサーズの結束につながる！」

権現坂「お前は何を言っているんだ…」

セレナ「…そうだな…」

零児「なにかあるんだな？」

権現坂「なっ」

セレナ「…なんというか…守ってあげたいというか…抱きしめたいとか…そんなよくわからない気分になった」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

権現坂「」

セレナ「この気持ちとは一体どんな効果だ？ いつ発動する？」

零児「君のような心優しい女性には、心のなかに常にリバースカードがセットされている」

セレナ「私は優しくなどない！ 強いデュエル戦士、それが私だ！」

零児「それはどうかな？　君がそういうふうに感じたということ自体が、君が優しい女性であることを証明していると思うが」

権現坂（遊矢の話という前提がなければ立派な口説き文句ではないか…）

セレナ「…お前がそう思うなら勝手にそう思っていればいい。私は認めないぞ」

零児「ならばそうさせてもらおう。その罠カードの名は《母性本能》。発動条件は弱さ、あるいは涙。
あの時遊矢は涙を見せた。それが発動トリガーになったのだろう」

セレナ「…で、その効果は？」

零児「君が感じたとおりだ。無性に抱きしたり守ってあげたくなる」

セレナ「その効果が適用出来ない場合は…それも私が感じたとおりだというのか？」

零児「そう。悶々としただろう？」

セレナ「…ああ、した。正直黒咲との話がなければ駆け寄りたいくらいだった」

権現坂「何の話をしとるんだ…」

零児「愛だ」

セレナ「愛？」

零児「遊矢に対する愛だ！」

権現坂「本当に何を言っとるんだお前は！」

零児「君こそ何を言っている。我々は遊矢を愛でたいということに対しては一致していたのではないのか？」

セレナ「ま、待て！　愛とは男と女の間で交わされるものではないのか！？」

零児「そんなことはない。愛しいと、愛していると思うなら、
同性であっても…むしろ人間同士でなくとも、愛というものは生まれるものだ。
デュエリストの中には特定のカードに深く愛を寄せる者もいると言うな」

権現坂「おい！　その発言はいろいろと誤解を招く！」

セレナ「お前が言う、《母性本能》とやらも愛なのか？」

零児「愛だ！」ドン☆

セレナ「そうか…。私は遊矢を愛していたのか…」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

権現坂「待てええええええええええ！！！」

零児「今度はなんだ？」

権現坂「なんだじゃない！　今まで俺とお前が話していた『愛』と、『恋愛感情』は別物だ！
セレナは純粋なのだから誤解するに決まっているだろう！」

零児「なんの違いがある。セレナ、君は遊矢を抱きしめたいと言ったな」

セレナ「う、うむ」

零児「男女が抱き合う行為（性的な意味で）は、通常どのような関係の男女が行う？」

セレナ「抱き合う（文字通りの意味）のは…愛し合っている男女同士…。」

権現坂（今会話に齟齬が発生した気が…）

零児「そうだ。そして君は遊矢を抱きしめたいと感じた。それで十分だ」

セレナ「そ、そうか…私は…遊矢を…///」ｶｵﾏｯｶ

権現坂（今、ひとりの純粋な少女が洗脳される瞬間に出くわしてしまった…！）ｶﾞｸﾌﾞﾙ

零児「そして権現坂！　君は度々遊矢を抱きしめていたではないか」

セレナ「何！？　お前は遊矢を抱きしめたことがあるのか！？」

権現坂「ま、待て！　確かに抱きしめたことはあるし良からぬことが頭に過ぎったこともあるが、
俺たちの関係は親友！　そう、友情だ！」

セレナ「友情は愛とは違うものなのか？」

零児「私は同性同士なら友情と呼ぶだけで、本質的にはさしたる違いはないと思っているが」

権現坂「くっ…！」

零児「そして私は榊遊矢を愛している！！」ドン☆

セレナ「同性なら友情ではないのか？」

零児「さっきも言ったはずだ！　愛に性別は関係ないと！　そして私は、遊矢を娶りたいとさえ思っている！！！」ドン☆

権セレ「「何！？　結婚とは異性同士でなければ出来ないのではないのか！？」」

零児「やろうと思えば出来ないことなどない。他ならぬ遊矢も、ペンデュラム召喚を生み出したではないか」

権現坂「いや、それとこれとは話が…！」

零児「私は本社のモニタールームで、5分に1回以上のペースで遊矢の動向を確認していた。
今すぐにでも飛んでいきたい衝動を抑えながらな。目的のためには、ランサーズ結成までに頻繁に遊矢と会うことは避けなければならなかった」

セレナ「それはストーカーというやつではないのか？」

権現坂「全くもってその通りだ」

零児「そして彼に笑顔を与え、その後その笑顔を汚す！　これが私の愛だ！」

セレナ「どういう…ことだ…？」

権現坂「笑顔を…汚す…だと…！？　そんなこと、この漢権現坂が許さん！」

零児「ふっ…。それではどちらが正しいか、セレナ、君が決めてくれ」

セレナ「わ、私が！？　そ、それは笑顔の方が良いに決まって――」

零児「それはどうかな？　想像してみたまえ、君の前に笑顔が奪われた遊矢が居る姿を――」

セレナ「…」

セレナ（目の前には傷付いた遊矢が居て、――そうだ、この傷ついた表情、この表情で私は――）ｿﾞｸﾘ

零児「君の心のカードが発動する。君には彼を抱きしめるチャンスがある――」

　　――そして、温かさを求める彼もまた、君を求めるかもしれない。

セレナ（私が遊矢を抱きしめる。そして遊矢も私を――）ｿﾞｸｿﾞｸ

権現坂「くっ…。さっきからセレナの純粋さをいいことに…！」ﾜﾅﾜﾅ

零児「どうだ？　君は遊矢と融合（意味深）できるかもしれないぞ？」

権現坂「こいつの口車に乗るな！　遊矢をわざと悲しませようなど、許されないぞ！」

セレナ「わ、私は…

　傷ついた遊矢を…抱きしめたい…」

零児（勝った！）ｶﾞｯﾂﾎﾟ

権現坂「ぐっ…。卑怯な真似を…」

零児「ふっ…。これでこちらは2人というわけだ」

権現坂「2人だと？」

零児「ランサーズの活動方針だ。ランサーズは融合次元――赤馬零王を倒すことを第一の目的としているが…。
遊矢を愛でることもまた、ランサーズの目的に含まれている！」ドン☆

権現坂「まるで意味がわからんぞ！」

零児「現状ランサーズは私と零羅を含め9人。その中で遊矢を愛でる素質があるものは、私が知る限り3人。
これで多数派がどちらかはっきりしたというわけだ」

権現坂「き、貴様…！　お前が遊矢の笑顔を奪うというなら、俺達はランサーズを抜けさせてもらうぞ！」

零児「おっと、そうは行かない。ランサーズを抜けるというなら、君たちは柊柚子を助ける手立てを失うことになる。
君が抜けたとしても、遊矢は彼女を助けることを優先するだろう」

権現坂「くそおおおおおおおおお！」

？？「おっと、それはどうかな？」

零児「何！？」

沢渡「LDS最強の男！　沢渡シンゴここに見参！」ｷﾗｯ☆

「「「沢渡さーん！」」」

権現坂「さ、沢渡！？」

零児「まさか君も…」

沢渡「悪いな、赤馬零児！　俺は権現坂につくぜ！
あいつの笑顔を呼ぶエンタメデュエル、俺もあれに魅了されて、エンタメデュエリストを目指そうと思ったんだからな！」

零児「くっ…」

沢渡「愛でるとか愛でないとかは俺にはわからねえさ！
だがあいつのライバルとして、笑顔を奪うってなら俺は許さないぜ！」ドン☆

「「「沢渡さん、マジ最高っすよ！」」」

権現坂「…さあ、これで2対2というわけだ。遊矢の笑顔は奪わせないぞ！」

零児「…フッ。今決着を付けるときではないようだな。何、いずれは他のメンバーも遊矢prprに目覚める…」

権現坂「…」

零児「いずれ、再び雌雄を決する時は訪れよう」ｻﾞｯ

沢渡「ま、待て！　赤馬零児！」

権現坂「…」

セレナ「……prpr、とはなんだ？」

権現坂「お前は知らなくていいぞ」

◆　　　　◆　　　　◆

零児「…」ｼﾞｰｯ

セレナ「…」ｼﾞｰｯ

権現坂「…」ｼﾞｰｯ

遊矢「…なんかアイツら最近おかしい気がするんだけど…」

零羅「うん。最近の兄サマはなんか変なんだ」

月影「良からぬことが起こらぬと良いのだが…」

黒咲「あんなことでアカデミアを倒せるのか？」

デニス（あの時は僕の正体がバレているのかと思ったが、彼の視線は常に遊矢に向いている…。どういうつもりなのかな？）

遊矢「そういや沢渡が居ないけどどこ行ったんだ？」

黒咲「何か珍しいスイーツはないかと取り巻きとともに出掛けて行ったぞ。全く鉄の意志も鋼の強さもない…！」

ｶﾞﾁｬ

沢渡「ネオ・ニュー・アルティメット・沢渡が戻ったぜー！」

遊矢「お、おかえり。またなんか名前が増えてるじゃないか…」

沢渡「フッ、この俺が土産を買ってきてやったんだぜ」ドン☆

「そーだぜ！」「沢渡さんマジ優しいっすよー！」「マジ最高！」

零羅「美味しそう…」

沢渡「さあ、みんなで食おうぜ！」

遊矢「…美味しい！　甘くて美味しいよこれ！」

沢渡（…良い笑顔だ…これで満足したぜ…）

TURN END