提督「無人島、二人きり」 (33)

提督「俺が無人島に漂着して……どれくらいだ?」



提督「エメラルドグリーンの海……青い空……」

提督「嵐で見るも無残な船の残骸……」

提督「まったく食い付きがない即席の釣竿……」

提督「俺を笑うかのような海鳥の鳴き声……」

提督「そして……」



レ級「ぎひっ」



提督「俺の側から離れない、戦艦レ級……」

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提督「嵐でぶっ飛ばされて、起きた時は絶望したね……」


提督「目が覚めたら無人島、通信手段はない……」

提督「何とか気を取り直して船の残骸から食料を回収して、拠点を確保したら……」

提督「ボロボロのコイツがいるんだもんなぁ……」


レ級「ひひっ」


提督「あ、魚? くれるの? ありがと」

提督(なんか謎の黒い液体がついてるけど……)


レ級「♪」

提督「釣れねぇなぁ……」

レ級「~♪」

提督「うーん……」チラッ

レ級「ひひっ」

提督(今でこそ、コイツを横に呑気に釣りできるけど……最初はホントびびったんだよなぁ)

レ級「ギッ?」

提督「本当に、信じらんねぇわ……」

レ級「ギヒ!!」


提督「こいつと、ケッコンカッコカリしちまうなんてなぁ……」

提督(嵐で遭難した俺と、何かの戦いで負傷したらしく大破状態のレ級)

提督(何の因果かは知らないが、お互い偶然でこの島に流れ着いたワケで……)


レ級「ぎぎ、ひっ」 ぽいっ

提督「あ、2匹目? どうも」


提督(……とにかく)

提督(初めてコイツと目が合った瞬間、俺は半狂乱になってそこらの物を投げ付けた)

提督(貝殻やらゴミやら――確保した、食料やら)

提督(それは俺の唯一の抵抗だったんだが、例え大破状態でもレ級はレ級。この程度でダメージなんぞ受けるわけがない)

提督(そして投げ付けられる食料に、どうやらコイツはある勘違いをしたらしい)

提督(コイツにとっての、俺は)



レ級「ひひっ」ぺろぺろ

提督「ちょ、おま、やめろ。俺の顔舐めるな、猫かお前」



提督(餌をくれる、新しい飼い主だ)

提督「たく、顔が涎で……ってコレ本当に涎か? なんかネバネバするんだけど」

レ級「♪」

提督「その笑顔やめて。怖いから」

レ級「~♪」

提督「……はぁ」


提督「まさか、投げ付けた物の中に結婚指輪が混ざってるとか考慮しとらんよ……」


レ級「ぎゃひ」

提督「なんでケッコンが成立したのかはわからんけど」

レ級「ひ、ひひひ」

提督「指輪がコイツの指にハマった瞬間に、コイツの損傷が全快しちまったから……やっちまったんだろうなぁ」

レ級「いーぃー……い!」

提督「おだまり」

レ級「ひひ」


提督「ちょっくらトイレ」

レ級「う」

提督「ついてくるなよ」

レ級「うー?」

提督「いやマジで」

提督「あ゛ー……今日も日が沈むぅー……」

レ級「ひっひっぎ!」

提督「いつになったら助けが来んのかなぁ、マジで」

レ級「……」

提督「……ん?」


提督「まぁいいか、とりあえず火ィ起こすから」

レ級「ぎゃひ!」

提督「結局今日も……助けはこなかったなぁー……」

レ級「ひっひひひっ」

提督「朝起きてー適当に歩いてー飯の準備してー」

レ級「……ひ」

提督「コイツと一緒に寝っ転がってまた明日ー」

レ級「ひ!」


提督「はぁー……」

レ級「ぎぎ」

提督「……」


提督「おやすみ」

レ級「ぎ!」

提督「Zzz……」

レ級「……」


提督「Zzz……」

レ級「……ひ」


提督「Zzz……」

レ級「……ひひ」


レ級「ひひひ」


レ級「たすけなんてないよ、しれーかん」

レ級「ひひ、ひひひ……」

レ級「かんむ、す……ぎゃひ」


レ級「じゃ、ま、だ、もん」


レ級「ひひっ」


レ級「わらい。とまらない」


レ級「じゃま。いない」


レ級「ひひっ」



レ級「わたしだけで、いーじゃない」

提督「あー……また朝か。これで何日目だ」

レ級「ぎぃっ」くいくい

提督「ん? そっちになんかあるのか?」

レ級「ひひっ」



提督「おー……船の、残骸……新しいな。近くで何かあったのか……?」

レ級「ひっ、ききき!」

提督「生存者は……この様子だと……」

レ級「ぎ」すっ

提督「……この、食料。お前、まさか」


レ級「ひひっ」

レ級「しれーかん、あなたはだいじょーぶ」


レ級「だって、わたしが、そばに、いるんだから」


レ級「ひひっ」


レ級「もーっと、わたしに」

レ級「たよって、いいのよ」



レ級「ぎひっ」



おしまい

レ級ちゃんの笑顔が好きです。次は離島棲鬼で何か書きます

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