七つの家で聖杯戦争/zero (194)
これは『【安価・コンマ】七つの家で聖杯戦争【募集系】』と題している安価系聖杯戦争スレッドの過去編です。
安価はありません。AAは控えめに使用します。
第一シリーズ1スレ目:【安価・コンマ】七つの家で聖杯戦争【募集系】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414576892/)
第二シリーズ2スレ目:【安価・コンマ】七つの家で聖杯戦争【募集系】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414576892/)
上記のものを見てから読まれることをお勧めします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427878063
★注意事項
このスレにおいてもも、元となったスレにおいても、
舞台となるのはtype-moonシリーズにおける聖杯戦争の設定を借りたオリジナルの聖杯戦争です。
原作キャラが出ることはなく、また原作と矛盾する点も(極力減らしては居ますが)一部残っています。
その点、ご理解お願いします。
かつてその七つの家は、全く別の方法によって根源への道を歩んでいた。
町の最北端に別荘を構える一家、アレキサンドライトは『淫売』によって
_ - ── ミ> イ / / / | |
γ ´ ≧ =- イ  ̄ ̄ ミ / | } }
/ γ´ \ | リ ′′
人 / Vミノ/ :/ /
{::::〈 ′ } \ / /
八ソ _ .′ __ 从 ∨/
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ハ: : :  ̄ ̄ ===´ \ :::ィ_`──く |
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ィ: : : : : : : : : :ノ ` ´ (_===イ: : : : : :|: /: : : : ハ
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!: : : : : : : : :ィ " { |: : : : : : : : : : ヽ: : : :|
ヽ: : : : / l |: : : : : : : : : : : ヽ: : ::|
- ィ ヽ V: : : : : : : : : : : :ヘ: : :|
北東に本拠を置く闇組織、ジュレヴォの魔術師は『暴力』によって
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,、-'" ヽ .!
/ ヽ .l
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i / / (_) / !
i / / ) l ヽ
iヽ ,、-'" ヽ _/ /\_< ヾ ヽ
Y'⌒゙'-、 / __  ̄ \;//ll ノ __ ) ヽ
/,,、-'-、, i´  ̄ ゙'、ヽ ∧_!l /゙'-、ノ ∨7,、、, ヽ
( (  ̄ヽY | d i !. へ-┴、、、、゙' - //^\
ヾヽ '7 l ヽ< ノ.ノ (< ( ヽ ヽ ヽヽヽヽ
( L_/.∧ヽ ゙'='"'" f ヾ ンノ__ノ__ノ__ノ_ノ_ノ_ノ
゙'-、,__" リ レ _/ ̄ i /7゙┬-、,゙'--'"(_\
⌒> ! ヽヽ ,ヘ_Y^Yフ / // l l 、゙'--'" /\
ト、-、ヘ,イ 、ブ彡'" / | ヽ ヽ |_,、-'"(_/ \
L,!__|,、!,、-'"ノ // | l゙、__,、-'"ゝ//ヽ/
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) ハ、 / | |゙'-、,__,、--'"/
f、_,、-'-、,_/ | l / -'" /
| | ゝ ,、-'"
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東の丘に研究所がある科学魔術師、月島は『法則』によって
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〃 マ:,
// マム
,:::{ }::ム
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マム x≦:::::::::::::≧x /::::::::;
マ:::\ \>─‐</ /::::::::/
x< ̄:::::::::::::>o。 __ __.。o<:::::::::::::: ̄>x
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/::::/ |::`Y マx.斗. ト.x〃Y´::| マ:ム
{:::f′ .八::::ム x::^ー‐一^::x ノ::::ノ }:::!
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海沿いの南端にある屋敷に住む水城は『権威』によって
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南西の遺跡を守る死霊術士の一族、グラントは『温故』によって
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li:i:i:il ..:._,-‐-'´ ̄=_/ ̄ヽ、三三-'´
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li:i:i:il _,-‐'´三三三三三三-‐'´ ̄ "´
.li:i:i:il _,-‐'´三三三三三-‐'´ ̄
li:i:i:il _,-‐'´三三三三-‐'´ ̄
.li:i:i:il _,-‐'´三三三三-‐'´
li:i:l/三三三三-‐'´
.li:/三_,-‐'´ ̄
そして、山あいに住む混血の寄り合い、火宮一門はそもそも根源を求めておらず
//}::::::::} __ /(_ニニニニニニニニ/⌒乂___,イ }/ /ニニニニニ=\/::}乂二フ 二八 \
/ ̄V´ 乂 ̄{ ̄ ̄{ {/  ̄ ∨ニニニニニ/ ̄{_{_{_}_}/  ̄.:′ニニニニニニニ\::}\__ イ ∠
( ̄ {{ ̄ ̄ }/ ̄ ̄ / }ニニニニV ミ/厂 /ニニニニニニニニニニニ⌒\} ____/ニ
{{ - ′ <二フ <二) :}ニニニニ{{ {/ 〆ニニニニニニニニニイ ̄ ̄¨¨ヾ\ /|ニニ
⌒V {{ ミ{ 彡 {_____八二ニ八 {彡 //ニニニニニニニニ/ \\/:::/|ニニ
/ ,八 ミ{ 彡 厂 / \ニ∧ \ { / /ニニニニニニニ∠_ ハ_∧/::!ニニ
∧ ミ{ 彡 / ヘ,_{ \ニ} \ { _/ //_ニニニニニ∠¨¨¨¨⌒ }ニ|::::乂_
{⌒ .∧ミ{ 彡 /( ̄ ̄ \ }ニ} ノ\  ̄ / /ニニニニ,/ }ニ|:::::::::::
∨乂ノ ∧ { /( ̄ ̄⌒ \ }/__ 丶 |ニニニ/ / } }ニ|:::::::::::
. ∨ \ / ( ̄ ̄ ___ 二 ̄/ニニ/  ̄⌒> |ニニ/ / / \\ヽ :}ニ|:::::::::::
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\{ { """" {ニニ={ \ / / / /ニl/::::::::::::::
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最後に残された一つ―――――御影家は、始めから根源を手にしていた。
r 、 , ‐ァ
'. '.,゙ヽ , -,' ,'
、⌒ヽ '. ', ', ,' ,' ; , ¨フ
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' ヽ '., ', ', ,' , , ,{' /
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. ' .`ヽ、 ヽ、.', ,' ,/ / '
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' . `ヽ , ''´ /´` /
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ヽ ! l ,/
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l | | !
! | | l
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それが、第二次から数えて200年前の話。
それから190年後、七つの家は聖杯を作成する儀式を執り行った。
いや―――――正確には『六つ』と言った方が正しいかもしれない。
, ´ ̄`ヽ
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,.ィ : : /:/:': : :!{/ ̄}' ̄|: : /トl、: :|:|: :.`\┃| ̄ 第一次七家聖杯戦争  ̄|┃
//: : :/': : : |: : :| == ムイ }'マ: |:|: ∧ ┃| |┃
//': :/: |: : : :l\:.| u 、 ==/l:/,:!,: : | ┃|_ side―月島束子 _|┃
/: ' /: :,: : : ,: : : |、_ __ ,: /:.lリ \} ┗┓|_ _|┏┛
/ ´ ,: : /: : : : ,: :.:.| :、 乂:.:.:.ソ 八:_:」 ` ┗━ ━┛
/ ' ,.-‐-、_/___|: :.∧ 、 イ: :.|
/ / 〈l |::| l|: :{/∧ /` ー ´: /: : :|
/,. イ 〈l |::| ,: |/ / //:/|: : : :{-、: :|
,:/ Ⅵ |::| |:j! {_ ' ∨ !: : :/l〉 ∨ ,.-――---ァ
/:{ ヽ|::,...イ: ノ | ` r| ,: :{ l〉 `ヽ, rく _二≧ア
,: : | 、 }' {:.:ノ | , Ⅵ/' } / ー=rー '
{/!\_} / 「:.ノ | l ∨∨:、 _/ 〈 / 「/
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,: : ' ` 7ー ':.| , 从| || ||ム ̄,:' /
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: / // \//\ {l {l /: : : : :.:|: : |: : |
〔五月十八日(火曜日)〕
――――聖杯戦争、-3日目
〈午後三時〉
聖杯の設置が完了した。
瀬分町の霊地としての格は、かつて聖杯戦争が執り行われたとされる冬木の町などに比べると些か不足があるが、
この地にはそれを補えるだけの優秀で優等な人員が居る。
町の中央にある小高い丘には、数年前に閉鎖された町立の古い公共ホールがある。
それを秘密裏に買い取って、大聖杯の置き場所に変えてやった。
都合のいいことにその場所は霊脈の要の真上に位置し、魔力に乏しいこの一帯においても尚聖杯を降臨させるに十分すぎる格がある。
やはり関わる家が多いのは良い。得意分野が分散し、あらゆる状況に対応できる。
先人(ふゆき)の知識も活用すれば、冬木の聖杯とは比べものにならないほど効率的に、
そして過ちを犯すこともなく――――安全に聖杯戦争を実行できる。
反英霊にも対応した。反英雄にも対応した。東洋の英霊にも対応した。
月島、火宮、水城、ジュレヴォ、グラント、アレキサンドライト―――――そして、陽向。
役者は既に揃っている。後は蓋を開けるだけだ。
〔五月十九日(水曜日)〕
――――聖杯戦争、-2日目
〈午後五時〉
公共事業が終わったところで、あとは自分たちの仕事をしよう。
私たち月島も、目指すところは根源の到達。とはいえ10年ごとに、しかも『協定により殺し合いを排除して』やっている以上
死にものぐるいになる必要などどこにもないし、根源を願う義務もない、らしい。
その時々に聖杯に選ばれたマスター役が、自分のために戦えばいいだけ。
栄えある第一回目のマスターを務めるとしても、私もやはり変わらない。
根源に興味のない……専門用語では魔術使いと言うのだろうか? そんな私にとって、
聖杯は万能の願望機としての価値しかない。根源なんて目指して何の意味があると言うのだろうか。
もっとも、万能の願望機に興味が無い、と断じる巷の魔術師たちのことも理解できない。
何でも叶うんだから、折角だし何か願っておけばいいのに。
そんなわけで、私の願いは新しい家だ。
現在私は他人のぼろ屋を間借りして(内科の)診療所をやっているが、どうにも人が寄りついて来ない。
やはり僅かでも不潔な空間では医療を受けたくないというのが人情のようだ。
だからきっと、新しくぴかぴかの診療所を手に入れたならば、きっと患者さんが一杯くるようになって。全てが上向きに変わるはず。
小さな願いかもしれないけど、これが私の戦う理由。あとは、まあ、家の面子のためってのもあるよね。
(勿論、本家に頼めば家の一つや二つ用意してくれるに違いない。だけど自分の力で手にしなければ、
それを使い続ける限り心のどこかに痼りが残る)
現状を確認しよう。
触媒は調達できなかった。うっかりしていて忘れていたというのが一つ、あとは純粋に資金が足りなかった。
召喚は今夜やる予定で、下ごしらえはもう終わっている。
他にやらなきゃいけないことは、何かあったかな。
強いて言うなら他家の情報を仕入れることくらいだろうけど、間諜スキルは持ってない。
十全を尽くしたとは言えないけれど、できることはおおかたやった。
なら、あとは夜まで休んでいようか。
〔五月二十日(木曜日)〕
――――聖杯戦争、-1日目
〈午前七時〉
うっかりしていて、朝まで寝過ごしてしまった。
足りていないとは言え、患者さんがいないわけじゃない。10時の開院までの3時間弱にサーヴァントの召喚、
そして最低限のコミュニケーションを済ませようとするのは不安が残る。
今日は一時間早めに閉めるとして、なにはともあれ午前中の診療を終わらせよう。
今日は何人やってくるかな。
夏場だし、二人が精々だろうな。
〔五月二十日(木曜日)〕
――――聖杯戦争、-1日目
〈午前七時〉
うっかりしていて、朝まで寝過ごしてしまった。
足りていないとは言え、患者さんがいないわけじゃない。10時の開院までの3時間弱にサーヴァントの召喚、
そして最低限のコミュニケーションを済ませようとするのは不安が残る。
今日は一時間早めに閉めるとして、なにはともあれ午前中の診療を終わらせよう。
今日は何人やってくるかな。
夏場だし、二人が精々だろうな。
〈午後四時〉
……やっと午前の診療が終わった。
何が起こっている?
原因不明の高熱を訴える者、汚れた部屋に並ぶ青ざめた顔。
やってきた全員がまったく同じ症状を訴え、しかも原因が分からない。
一つ分かることと言えば、それらが全て、一つの『魔力を帯びた』ウィルスを媒介としていたということだ。
今日やって来た六十二人の患者のうち、九割は見たことのない顔だった。
どうやらかかりつけの医者が満員だったり、医者自身が倒れていたりでまともに機能しておらず、
仕方なくここに来たという人もちらほらいた。
喜んで良いだろうか……良い訳がない。
漫画の世界のような突然の感染爆発。
荒唐無稽な出来事の答えを、私はもしかしたら知っているのかも知れない。
いつもにない勤労で疲労に苛まれながら、私は診療所の階下へと降りていく。
捜索にも道具が必要だ。ましてや相手が疫病ならば、相応の武器が必要だ。
〈午後五時〉
素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
みたせ みたせ みたせ みたせ みたせ
閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。
Anfang(セット)。
告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ。
詠唱を行えば、面白いように光が沸き立って、
足下から吹く渦巻く風が私を煽って転ばせる。
「よっと……と」
手元の洋風箪笥に掴まって体勢を整える。
視界と姿勢が同時に定まって、目の前に映るのは、小柄な人影。
「は、始めまして」
それは言う。英霊に似つかわしくない大人しい声で。
寄りかかるように。頼りなく。
消えてしまいそうな、そんな声で。
「アサシンです。いっしょに頑張りましょう、マスター」
その少女はぐっと、肩を引き締めて私を見た。
,ィ-- 、
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ
{二二二二二二二二二ノ
_. . . :|///|=-- 、|//| ̄ ̄\_\
,. <: : : : : マ/>': : : : :> 、 \ \
,.:': : : : : : : : : ://: : : : : : : : :ヽ:ヽ. `ー'
/ : : : : : : : : : : //: : : : : : : : :.:|: : : : :.
': : : : : : : : : : : // : : ,: : : /: : : |:{: 、: : : .
/: : : : : : : : : : : :{/: : :/: : :/: , : /}: 、: \: : .
.': : : : ': : : : : : : :/: : :/: : :/: /: /:r-!:.:|: :|`: ::. 貴女……貴女は何者?
|: : : : {: : : : :/イ: : : ' , ´:/: イ/ィォ、{イ:ー': :、 : |
|: : : : :∨: : :{/|:;: : :|イ: : :イ: |{l tj {: : :|: | 、:|
|: : : : : :∨: :|: |: : :∧|: : :.:.|: :| ヽ:.|: | リ
|: : : : |: :.∨: : |: :/、l∧: : :.|: :| _ ,.イ: |: |
;: : : :.:|: : : :、: :j:/: : }ー\__〉」 `/: |: :|_」
,: : : : :,: : : : : :、/: : :ム ー,、___,': /`¨
/: : : :/: : : : |: : :\: : : }--.、 {:\: : :, '
,: : : :./: : : : : |: :/⌒\: :≧=-、|-、:):イ
/: : : /: : : : : /イ乂匸乂\ー-:ム、 ヽ: }、
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/: : : リi: :∨: :.:/: : /: : : : : : : : : : : : : : : :丶
/ : : ;小i: /: : :/ : 'イ : : : : / : : : : : : : : : : : : ヽ
/: : : / j : /: : :/':/ |: :.:/ :│ : : : : : /: : : : : : : :
/: : : ∧ 彡|: : / |厂`l: :/ : /|: : : : : :/|: : : : : : : : !
/ : : : ハ レ'´ |: ;ッ==ミ.∨|:.:/│ : : : / :|:!: : : : :.:|: :|
,' : : : 〈^ l〃:::::.....ノ } |/ !: : : :/ !|: :│: : |: :|
′ : : |r' 〈:::::::/ ´ |: : :/ ⌒メ|: :│: : |: :| 私ですか? 私は……『死神の子供』です
: : : : : ト| ` |: ン==ミ/' | : ;': : : : /
i: : : : :| i |/::::....ノ} j: /: : :/:│
|: : : :.:|∧ :、 〈:::::/ノ .イ/|: : ∧: | これからよろしくお願いしますね、マスター
| : : : :l′ ,、 ` /j/|ノ: :/小/
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_/ :|: : : .:ト、 \ ー'´ / |: : : : :|
/く \ |: : : .:| \ > 、__... ´ |: : : : :|
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∠.-‐ ニ二二ニヽ \'; : :|-イニ二/ヽ、_ │:.: : :.|
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/_/ | \マ-ヘ| j } | |: : : :.|
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≪クラス≫:アサシン
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【真名】:? 【消費】:小 【属性】:中立・善 反英雄
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【筋】:E(10) 【耐】:E(10) 【敏】:E(10) 【魔】:C(30) 【幸運】:E(10) 【宝】:D
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_ rァ= ☆ 「:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
/n〉 ィ ___〃 丿O:.O:.O:.:ベヘ
∠ヽ____| L /レ∠/ノ __// _,ゝヤrxxz ))‐|_|
》-《 /ノ ///∠∠ミメ/ / 〆´|≫Гヽ---──┤
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/ \l |‐ \rtテY厂 ̄〆 ´ | /.:.:.:.:.:.|
/ /ミNrtテ 、 斤< | 〈.:.:.:.:.:.:.:|
/ / ヽゝ、__゚_ノ|〈:.:.:.:\ | \:.:.:.:|
/ / 爪ヌ,ィ介ヶ|:.:.:ゝ、.:.:\ ト、 l /:.:.:.:.|
. / / ,〆ヌン T ハ〈ミ|:.:.:.:.:.:\:.:.:.\_ /:.:.ヽ | /.:.:.:.:.:.|
/ レ〆´/ /V:.:.AVо:.:.:.:.:.:.ヾ\:.:.\_/.:.:.:.:.:.:.', | \:.:.:.:.|
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. .' ヽ ,ィ≡ヺ,´く´_|  ̄´ |:.:.:.:レ´ ムо:.:.:.:.:.`:く:\:.:.:ヽ/оイ /:.:.:.|
. l ノ f:.f //l:.:.:.| 丶_________ノ` ‐′ / ノ:./\:.:.:.:.:.:.\`く /ヽ 〈:.:.:.:.:|
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\ \ [ミヌ×__ /\/ ` ───l / / |:.:.:.:./// /:.:/:.:.:/
\ ,イ\≠/\/|` ー──-ノ <≠≡彡 イ:.:./// |:.:.:/:.:/
丶、 /√ヽ≠ョ.__∠n__ゝ---- ' ´ `メミ/´ レ'// /:/´
`×ヘミ/ ):l |:| , イ=イ ∠// /.:/
〈 √ヽ7─-く:.:.|__八___ -‐ ' ´ |区]l / |:/
ヾシ Υ Υ Lニ| / /
☆  ̄ / ' ´
【クラススキル】
◆気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
【to be continued――――】
_____
::´:::::::::::::::::::::::\
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
/::::::::::::ハ:::|::l:::::l::|'\::::::::::::::::',
l::::::::::::::|-弋|::|:::::|::| ̄`刈::::|::i::|
|:::::::::::l::|_‐リi从リrzz、 |\!ソ::|
|:::::i:::::|::|芹心 込シ |:::::l::::::| ※続きます
|从|:::从!`¨´ i |:::::l::::::|
|::::::::::|l |:::::l::::::|
|::::::::::|込. ` ‐ ´ _イ|:::::l::::::|
|::::::::::|::::|::i>ェ- ´トュ_|:::::l::::::| というわけで、エイプリルフールネタをやると言ったのが嘘というネタでした
|::::::::::|::::|/ { / |:::::|>ュ._
!イ ̄|::::|l ヽ / |:::::l歹} ハ
/ イ|::::|ヽ `/ /:|:::::|卩 } 合間合間の時間が空いたときに進めていきます
{ |i:|从≧ニ=─----┤リ|气 |
/ ,佳三三三三三三三三ニュ ',
| {三三三三三三三三三三}\ ',
l 込三三三三三三三三抄ハ |
---
/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:.
′i:{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i}:i:. ただ、こういうこと言うのはアレなんですが
|i:i/从i:/\i:ノi:ii
И┃ ┃ |^|i:i:| ポーンの時は、「難しい問題作ったぞオラァ! 解いてみろや!」的なノリだったのが
|il |:i|):i|
|i:〉.[///].。s!:i|i:i:| 今回は「こんなの解けるわけないよね(達観)」なので、
|i:{_:[///]:_} |:i|ヘ:!
/八 )___( ノ|:リ/ ヽ ぶっちゃけアサシンの真名考察は不毛だと思います
{ / / .o゚∧ ∨// }
ノ,/ / | {{/ ∧ ∨ } 検索にひっかからない(真名入れてもヒットがない)わけじゃないですが……うん……
【>>23は誤爆です。誤爆したついでに投下再開】
まともでないことは、一目で理解できた。
低すぎるステータス。暗殺者のクラス。そして、反英霊。
そして――――
「『死神の子供』?」
彼女の口から飛び出した言葉を、私は譫言のように反芻する。
「ええ、そうですよ!」
彼女――――アサシンはそう言うと、私の目の前で飛び跳ねた。
あどけない仕草からは、見た目相応の子供の印象以外に感じるものはなにもない。
「これから一緒に頑張って……願いを一緒に叶えましょうね、マスター」
アサシンが伸ばす手を、私は受け取って握り返す。彼女の手はひんやりと凍えていた。
「……」
「? どうかしましたか、マスター?」
「あっ、う、ううん。なんでもない」
「ひょっとして、何か悩んでいることでもありました?」
「え? あー……それは……」
言いよどんだこととは関係ないのだけれど、無いと言ったら嘘になる。
昨日まで気配さえ感じられなかった疫病が、僅か一日で広まっているだなんて。
天意ではあり得ない。人為でも為し得ない。それ以外だとすれば、一つしかあり得ない。
過去の聖杯戦争の中には、病の具現化としてのライダーも存在したという。
アサシンを急いて召喚したのも、病の真相を探るため。正しくは『安全に』探るため。
他家のサーヴァントと遭遇しても、妨害されることなく目的を果たすため。
……しかし、よりにもよって暗殺者、とは。
文句を言っても仕方ないけれど、セイバーやランサーが良かったなあ。
,..-=ニニニニニニニニニニニ)
////// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
-―‐ //////
/: : : : : : :/≧=-: :`ヽ
/: : : : : : : :/'´: : : : : : : : :\
′: : : : : : : : : : : __/__|: : : : :.\_
. i: : : : : : : : : : : : : /‐-_|: :|: : : :「 ̄
|: : : : : :/.:イ : : : ャ芯「/.:/ : : : |
|: : : : :/:(_|: : :|:{ // >: :.イ
|: : : : |/.: :|: : :|: 〉 _ , : : :|:|
|: : : : }:、 :八: ル _ /: :/|:レ
/: : : : :ヽ:`^メXxメx ̄ }イメXx
/: : :. : : : : : : : :`マメXxメx、 `^メXx
. /: : :. : : : : : : : : : :∧ / `^|: :\ l: :\
/: : :. : : : : : : : : : : : :∧ \「`\ |:/⌒
. /: : :/: : : : : : : : : : : : : :∧ 〉
少し悩んだけれど、アサシンに全て話してしまうことにした。
私の当座の目的が調査である以上、いずれは話すことになる。ならば早い方が良い。
「私ね、この町で医者をやっているんだけど……」
「へーっ、医者!?」
突き抜けるような甲高い声で、アサシンは大げさに口を丸くした。
「それってやっぱり、傷ついている人とか助けますか!?」
「え? あー、うん。まあ、それが理想だけど……」
「うらやましい!」
私の手を握りしめるアサシン。そういえばさっき手を取ってから解くのを忘れていた。
彼女は全力で握ってくる。いかに筋力Eとはいえ、サーヴァントの腕力は馬鹿にならない。
指の骨がめきめきと音を立てて、このままでは折れてしまいそうだ。
_ ,.ヘ _ ,.ヘ
>` < >` <
\ く/ヽ> く/ヽ>
\ _r┐__ _r┐__
丶. _ _'‐┐┌‐' 、 '‐┐┌‐'
、  ̄ rlニ コ- 、丶、__ lニ コ
、 丶ー|__|__ \ ー丿 |__|
`丶、 ロロ/7\  ̄ ヽ ロロ/7
ヽr_、_ // lヽ \.r‐- 、_ ,.ヘ //
|-|_ト、 |八 / //>` <._, -― 、
'ーL|‐|-、 、 ∨ \ / //く/ヽ>l \
└ヘ‐'\ \ \ \ ヽ ーヽ ;' //_r┐__|
 ̄`ヽ._\_ヽ__', | _| l | '‐┐┌‐'
`ー' ̄ ∟ l_| lニ コ/
`¬|__|〈
ロロ/7
// 丶 __
「私も! 私も、人を助ける仕事に就きたかったんです! それが理想でした!
ですけど、一身上の都合によりそれは叶わなくて……ああ、うらやましいですマスター!
いえ、うらやましいっていうとなんだか違いますね!
凄いですマスター! そんな仕事に就けるなんて、貴女はきっと凄い人なんだ!」
アサシンは更にテンションを上げて、冷たい手に僅かな熱が籠もるほどに握りしめ、私の手をぶんぶんと振り回す。
目をきらきらと輝かせるその姿は、まるで田舎の少女が上京してアイドルのライブに出向いた時のようだった。
「あ、あー……うん。ありがとう」
「貴女についていれば、私の願いも叶う気がします!
さあ、どうぞ! ご用命を! 私に!」
_j|_
,ィ三ミ、 Xテ≡ミハ  ̄|! ̄
〃 ノ:ヽ r ノヽヾ |
V 代:::::ハ 代:::::j:! 》 __j|__
込z少 弋z:少  ̄|「 ̄
|!
__j!__
 ̄|! ̄
「アサシン」
「はい?」
「あなた、自分のこと『死神』って言ってなかったっけ?」
「正しくは『死神の子供』です。はい、そうですよ」
「死神なのに、人を助ける仕事……?」
「『死神の子供』です」
アサシンの語調が僅かに強くなった。こだわりがあるのだろうか。
……現状、真名が全く見えてこないから如何ともしがたいけど。
「あっ、うん。ごめんね」
「いえいえ、ですがそこは大事ですからね。私は死神様ではありません。あの人と一緒にしないでください」
これらもアサシンの真名のヒントに繋がるんだろうけど……今のところさっぱり繋がってこない。
ステータスから見て、有名な英霊、否、反英霊ではなさそうだけど。
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,ィ二二二二, _,.ィ/_/_〉{/ニ\__/ ,ノニ\ : : : |
/ニニニニ/ ー-<二|| {___/|ニ|ニ/-、`¨ニニニニ 、:|
/ニニニニ/ / | ` ー――― '/ | \ニニニニニ\
「まあいいや。うん、じゃあその『死神の子供』なのに、あなたは人を助けたいと願うんだね」
「『死神の子供』だからこそですよ!
生前は、誰も助けられなかったから……今生こそは誰かを助けられる人になりたいんです!
そのために私は、聖杯戦争に参加したんですから!」
……。
どうしよう。この子の瞳が眩しすぎる。
煌めく翡翠色の瞳が私の俗っぽい願いを打ち砕き、全身を串刺しにする。
賤しい心を引っぺがして裸にされている気分だ。
ごめんなさい、私なんて所詮物欲まみれの女です。
ああ、だからそんな聖者を見るような目で私を見ないで。
「そういえば、マスターは何を願って聖杯戦争を?」
「っ!」
「マスターほどの人間にもなれば、きっと、さぞかし素晴らしい願いを胸に聖杯戦争へと赴いていらっしゃるのでしょう!
私に教えてください! あなたの生き様から学べること、一杯、沢山、あるはずですから!」
あ、煽っているわけでは……ないんだよね?
本心から言っているんだよね!?
尚更質が悪いよ――――!
:::::::::::// / ノ::::::::::: / /: : : : : : : :\ \_____/ / _ /
_// / /ィ}:::: / /: ': : : : : : : : : : \_____,.イ,ィ//<
/ / // /: : /: :.|: : : :|: : :.\: \: : : : :ヽ: : 、: \////\ /
/ // /:.': : :||: : :|: : : :{: :、: 、:.\: \: : : : ∨:.\: \///∧/
/ /: : : |: : :||: : :|:.、{: 、\\\: ヽ: :ヽ: : : :∨: :、ヽ: l、/// 〉
/ /:!: : : : :!: : :!l: : :|\: : \\}_\ : |:|: | : : |: : : ヽリ ∨/
/ /: : :|: : : : :|: : :|{: :._!ノ \: : \ }'从|: | : : |、: : : :、 }
_,.イ \/:.:.|: : :.|: : : : :|_:|/:.| \_〉 ,ィ羊ミ、イ: : : | \: :} |
/イ/ {: :| : |: : :.{: : : : :{、: :{ ー' ´ とつ|: : :./ ,: \ ノ
||/{ |:∧: |: : : ∨: : ∧,.ィ羊≠=ミ、 ` |: :イ::, / ,....<
||/ム }' 、:,: : : :|∨: : ∧(つ __ /イ: : ' ̄´ \
ー- 、 Ⅵ: :.:|: \: : : \ / } /:|: : :|
\ \__ |: : |: : : \___> { ノ イ: :.:.|: : :| \
,\ /: :イ: : : : : : : : :|: :≧=----- < | : : |: : :| \
「マスター? どうして涙目なんですか?」
自分の心に聞け! ……聞いても、分からないんだろうなぁ。
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【一旦ここまで。20:30頃にもう一度】
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`ヽ ゝ::::::::::::┃| ̄ 第一次七家聖杯戦争  ̄|┃
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:::::',:::::::\:::::┃|_ side――マイケル・グラント _|┃
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〔五月十八日(火曜日)〕
――――聖杯戦争、-3日目
月島の老爺、火宮の虎、水城の御曹司、ジュレヴォの頭領、そしてアレキサンドライトの長男坊と共に、聖杯の設置を確認した。
滞りなく行われ、あとは平和的で紳士的な聖杯戦争が行われる、いやはや誠に結構なことだ。
ああ――――それが本当に平和的で紳士的になるのならね。
そうならないと確信できているからこそ、笑えてくる。この聖杯戦争、一筋縄では終わらない。
あの場で気づいていたのは私と月島源蔵ぐらいのものだっただろう。
先ほど完成した大聖杯の置き場。そこに、実に興味深い混濁が見られた。
あの場にいた六人の仕業でないことは明瞭だ。誰かが何らかの形で聖杯に細工をしたのだろう。
だが、私はそれを他に語ったりはしない。
表沙汰になれば、水城や火宮あたりから確実にストップが掛かる。
聖杯戦争は中止されることになるだろう。
私としては、そういった展開はまったく面白くない―――――
真っ当な聖杯が生み出す恩恵よりも、歪んだ聖杯が噴出する未知の方に興味がある。
宝箱の蓋を開けるよりも、土をほじくり返す方が面白い。
さあ、鬼が出るか蛇が出るか。どちらが出ても興味深いね。
〔五月十九日(水曜日)〕
――――聖杯戦争、-2日目
規定では、召喚は二日後の金曜日に一斉に行うことになっていた。
(月、火、水、木、金、土、日……のうち、各家の名を冠しない金曜日が適任だろうという発想からだ。なんとも貧相でばかばかしい)
しかし、そんなルールを全員が守るとは思えない。中には破るものも居るだろう。
私もその一人だ。
サーヴァントの召喚、初めての経験だがなかなかに好奇心をくすぐられる。
触媒は使わない。結末が見えてしまうから。
他家には適当にうちの骨董品を送りつけたが、ほぼ全ての陣営が使わずに挑むことになるだろう。その未来は見えている。
ともあれ、私のような知識欲、及び好奇心の塊のような人間が呼び出すサーヴァントだ。
さぞかし興味深いものが呼び出されることになるだろう。
この戦いは、勝つための戦いではない。
満たされるための戦いだ。
私の利己的な戦いだ。
―――――。
―――――――――。
これは。
目の前に現れたサーヴァントを把握して、私は自分が笑んでいることに気がついた。
無意識のうちに微笑みが零れてくる。
そうか。英霊は随分と一筋縄ではいかないものらしい。
この私に。よりにもよって、こんなサーヴァントを寄越してくるだなんて―――――。
その『女性』は、私の前で蠱惑的に微笑んだ。
彼女の瞳の奥からは、別の数万の視線を感じるようだった。
気のせいかもしれない。それは分からない。
だが一つ言えることがある。
このサーヴァントは、『普通』じゃない。
|ハ.:人 _ _, _彡イ: イ/i : : : :}i ,ノ i{
i| ',|: :i>=‐--ュ‐ァ≦、: レ' }': }.: : : :.}i マO 〉
ト{: :|:/: : Y「/o∨ ム !: ∧j{: :,、 : イ´ハ.〈
/从.:|': : : :Уヽイ /{: i:/: :リ/ { : :マУイ うふふ……
〃: :/^: : : :.iゝ リ ./ j{ :′.:/ ,、ゝ.イ /、__/}
/: : :/: : : : : :.| }∨ / >、: : { / :>'’ ト--ィ .j
. ,.イ :/: : : : :,、_z!_Li /.イ/^>}. {: :j{ リ: :/ ./
. /.:/: ; --一' ゝ‐(ムィ<´ ̄ハ._ノ }、j{. ∧/ ∧
私とサーヴァントとのファーストコンタクトは、サーヴァント(あちら)の方から開かれた。
人を蕩かすような猫なで声で、その女は、私に問いかける。
/: : : /: : /: : : / : : :i{.: : : : : :.∧: :∧: :ヽ: :ヽ,
/: : : ,': : /: : : :,'.: : : :i{.: : : : : : :.∧: :∧.: : ',: :',
i{ : : :i{ : :i{.: : : :{: : : : ハ.: : : : : : : : :}: : : ',: :.',:ハ
. i{: : : i{: : :{ : : : :{: : : : } }i : : : : : : : :}: : : :}: : : :',: :}
}_:_: : |:i : :',i{ _」ハ:{-V ゝ{ : : :/}/-}ハ:/ } : :}: }:ハ:}
ト、 ``|:| : { V<i笊う≧zx ∨:/ xz≦芹ミ} :/}:/ム}i 可愛い可愛い狼さん♥
i{ : \ }:}i: :}i :',ヘ「 込::歹 ソ 込::タ 灯イ /}/
,: : : : `}∧: }i,:, {: /: : :}:i 貴女が私の――――マスターかしら?
i{: : ; : .:.:} ∧: :.ト:.、 /: }i: :从}
/ : :/ .:.:.:.}i : :ゝ:.', ` 、___ _, 人./:}/
. / : :/ .:.:.:.:.:}i.: : :.ヽゝ、 /} :イ:}:i
/: : /}: .:.:.:.:.:∧.: : : {ノ} >。. .。<.:.:}iイ: }:}: ,
: : / ,' .:.:.:.:.:.:.:∧.: : iト、>x、_`>イ{.:.:}i.:.:.:}i: ://: :.,
/ / .:.:.:.:.:.:.:._{_;>', :}i、 } } /x、}i_/.://.:.:.i|: : ,
.イ .:.:.:.:.:.:/´ } ∨}i:,>。. } }.イ }:/ヘ.:.:.:.i|: : :',
「ん……ああ、そういうことになるな」
気のない調子で私が頷くと、彼女は朗らかに微笑んだ。
「ふふっ、じゃ、これから宜しくね?」
「勿論。だがキャスター、君もなかなか……変わり者だな」
「あら、分かっちゃった?」
「なんとなく、だがな。目は利くんだ」
「いやん、もう、エッチ」
「やかましい」
このサーヴァントの真名は見えた。
だが問題は、これを使ってどう聖杯戦争を乗り切るか、だ。
私が思うに――――このサーヴァントでは―――――99%、勝てない。
【to be continued――――】
┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━┓
≪クラス≫:キャスター
┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━┫
【真名】:? 【消費】:小 【属性】:中立・中庸 英霊
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【筋】:E+X(10+X) 【耐】:E+X(10+X) 【敏】:E+X(10+X) 【魔】:E+X(10+X) 【幸運】:E+X(10+X) 【宝】:EX
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫
/: : : : : : : : : : : :\ , / :. _,
/: :/:/ : : : : : :\ : : :ヽ、_r'/ .:'__x'´.:'´
: /: : /: : : : : :| : : :'; : :',: :}r、くz=イ⌒ .:'
: : : :ハ : : : i!:.ハ i!:.} } : :i|'´/;:.. ..:'¨´
: :.ハ}¨ヽ: :,イ:{¨|ハ: i:j: : :i|イ: : :{ `¨¨´
ヽ{芹圦ヾ、リ芹迦ア/: : |¨フ : :、
: : } :j /イ.: : :|'´i!: '; : :、
\:ヽ、 , , j: : :./: :.{ハ マ、 : :、
: : :ト} :> 、 . イ/.: :./ : : :|iハ ヘ.\:`: 、
ヽ: ', }}ん込:::く:::{ :/〃 ヽ、 ヽ: :、 _,>x、:`: .、‐<ヽ=x、 __
ト、/乂ノ,イ. ^'|/::〃 〃`‐-ヽ、 ̄¨>、>、:`: く `¨二二二二ニ>彡=x≦_
/::/ヽ .リ }}::{{γト 、 {{ ` ‐- 、_>ニ≧、:`: く¨___ x=/  ̄, イニニヽ、 ̄≧s。._
./::/\ j:../ x-‐}}:::{{. } : : : : `: :ト、  ̄ ̄ ̄ く ‐イ く⌒ヽン′  ̄≧
::::{{_,z孑{¨}く r=''i::::}i∨ : : : : : : :.', `弋 :、 ____ 斗---―――‐孑¨¨⌒ヽ.ヽ、
. }::/ / .| トイ}::}:::::::/ : : : : : : : : : : : :', \: : : :ヾ′ ヽ`*:. ',: :ヽ\`*:. `ヽ\*:.
. {ヽ 〃 | マ}::}::::/ : : : : : : : : : : : : : :.', / 入: : : :\ ヽ、`*}: : : ', ヽ、`*:. \`:.
【クラススキル】
◆陣地作成:×
正統な魔術師でないため、このスキルを有しない。
◆道具作成:×
正統な魔術師でないため、このスキルを有しない。
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
...―f< ̄.. 、 /
/:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:ヽ:.:.:∨ / あっ。
/:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ∨ /
:i:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.∨ / 本当だ、こいつキャスターじゃない。
:|:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.∨
八:. |:.r∨:.:.:. ‘,:.:.: |:.:.:.:.| バーサーカーだった。
:|:.トr∨:.:.:.:.‘,:.:.|:.:.:.:.ト、___
Ⅷトr∨:.:.:.:.‘,:.:.:.:.:.:.:.:∨/∧ なんかおかしいと思ったら
.ィ}:.:.| }∨:.:.:.:.:}!:.:.:.:.:.:.:.:. ∨/∧
/しヘ∠ }:.∨:.:.:.:}!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨/∧
__ { /⌒ヽ}:.:.∨:.:.}!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: {///i/^ヽへ、 ,r< ̄\「 ̄ヽ ちょっと待ってください。訂正を打ちます
∠__\_7 .′ :}:.:.:.∨:}!:.:.:.:.:.:.:.:}!:.:.:{///「\´ ̄ ̄ト<_]__}___}_
( \ ' .′ }:.:.:.:.:: }!:.:.:.:.:.:.:. }!:.:.:{//| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄} |
/  ̄ ̄ ̄ 「フ} .∧:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: }!:.: {// |二=-< ̄ ̄「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「
:{___ //^{ ./:i∧:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}!:.:.{// |:i:i:i:i\ \ ̄ ̄\ |
| { {! ト、 /:i:i:i:∧:.:.:.:.:.{:.:.:.:.:.:.:.}!:. {// |:i:i:i:i:i:∧ ∨ ∨ |
| .八 } ∧]]]]]]]∨、:.:.{:. ト、:.:. }!:.:}// |:i:i:i:i:i:i:iハ ', ∨ |
| \ イ : \: : : :i: :\{V: :\从リ// |:i:i:i:i:i:i:i:i:} } } |
| トr ⌒)、: : : : : |: : : : : : : :i: ハ: ∨/|:i:i:i:i:i:i:i:i:} } /__,ノ
| |:i|: : / ∧ : : : : |: : : : : : : :|/: }: :}/|:i:i:i:i:i:i:/ ./ ./
【これは別にキャスターのままでも全く変わらないスペックで出せますが
そうなると元々のキャスター枠が出られなくなるので訂正です】
【クラススキルがどう転んでもフレーバーなのでうっかりしていました】
【>>35の台詞は脳内補完お願いします】
┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━┓
≪クラス≫:バーサーカー
┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━┫
【真名】:? 【消費】:小 【属性】:中立・中庸 英霊
┣━━━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┫
【筋】:E+X(10+X) 【耐】:E+X(10+X) 【敏】:E+X(10+X) 【魔】:E+X(10+X) 【幸運】:E+X(10+X) 【宝】:EX
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫
/: : : : : : : : : : : :\ , / :. _,
/: :/:/ : : : : : :\ : : :ヽ、_r'/ .:'__x'´.:'´
: /: : /: : : : : :| : : :'; : :',: :}r、くz=イ⌒ .:'
: : : :ハ : : : i!:.ハ i!:.} } : :i|'´/;:.. ..:'¨´
: :.ハ}¨ヽ: :,イ:{¨|ハ: i:j: : :i|イ: : :{ `¨¨´
ヽ{芹圦ヾ、リ芹迦ア/: : |¨フ : :、
: : } :j /イ.: : :|'´i!: '; : :、
\:ヽ、 , , j: : :./: :.{ハ マ、 : :、
: : :ト} :> 、 . イ/.: :./ : : :|iハ ヘ.\:`: 、
ヽ: ', }}ん込:::く:::{ :/〃 ヽ、 ヽ: :、 _,>x、:`: .、‐<ヽ=x、 __
ト、/乂ノ,イ. ^'|/::〃 〃`‐-ヽ、 ̄¨>、>、:`: く `¨二二二二ニ>彡=x≦_
/::/ヽ .リ }}::{{γト 、 {{ ` ‐- 、_>ニ≧、:`: く¨___ x=/  ̄, イニニヽ、 ̄≧s。._
./::/\ j:../ x-‐}}:::{{. } : : : : `: :ト、  ̄ ̄ ̄ く ‐イ く⌒ヽン′  ̄≧
::::{{_,z孑{¨}く r=''i::::}i∨ : : : : : : :.', `弋 :、 ____ 斗---―――‐孑¨¨⌒ヽ.ヽ、
. }::/ / .| トイ}::}:::::::/ : : : : : : : : : : : :', \: : : :ヾ′ ヽ`*:. ',: :ヽ\`*:. `ヽ\*:.
. {ヽ 〃 | マ}::}::::/ : : : : : : : : : : : : : :.', / 入: : : :\ ヽ、`*}: : : ', ヽ、`*:. \`:.
【クラススキル】
◆狂化:E
現時点では機能していない。
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
,..-‐:::‐.-__ zeroの構成は大分前に作ってあったが、マトリクスを組み立てたのは最近
/::::::::::::ノ-‐─ =、ニ:ー:::-...__ ↓
/:::::::::::::::::ゝノ ) ヽ.:::::::_:::::::::::::::ノ-―‐ ヽ このバーサーカー、真名がキャスターっぽいのでうっかりキャスターと間違えて、キャスターとしてマトリクスを組み立てる
,':::::::::::::::::::: :> ´) Y- /::::ヽ―ヽ __ i. - 、 ↓
|:::::::::::::::::::::_ゞ 、_) |, /::::,:::,| l _ _ |丶 ノ 造形に違和感を覚えつつもマトリクス完成
|:::::ヽ:::_:::::ヽ l ) /|:::::::::: | ア .l |‐ ´ ↓
ヽ::::::::::_:::::::ヽ ノ::ィ ‐―‐′-、_l. __ |ーr ‐今、言われてみれば他にキャスターがいたことに気づく
. ゝ:::::::::::::l:::::ー-‐<:_::_::_::_フ / ヽ | | ↓〉
丶::::: ̄:::ー:::‐:::‐::::::ヽ、 l ノ__ /-- ‐訂正
丶:::::::::::::::::::::::::::::::::`:ー:::-‐':‐:::': ̄ ヽ/
 ̄ ̄ ̄ ¬ー ―――¬ ̄
こんな間違いをしてしまうだなんて……初っ端で良かった。以後気を付けます
つまりzeroはオール>>1作?
>>46
はい。流石に、こんなのに募集を出すのもいかがなものかと思いまして。
(マスターは一部除き募集ですが)
---
/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:.
′i:{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i}:i:. 絶対にずらせないサーヴァントは今出てる2騎を含めて4騎
|i:i/从i:/\i:ノi:ii
И┃ ┃ |^|i:i:|
|il |:i|):i| 逆に言えば、残り3騎の枠には今からでも募集を入れられないことはない
|i:〉.[///].。s!:i|i:i:|
|i:{_:[///]:_} |:i|ヘ:!
/八 )___( ノ|:リ/ ヽ しかし、前にその話したとき、zeroに自分の鯖出して欲しくないと言った人が居た気がするんですよね
{ / / .o゚∧ ∨// }
ノ,/ / | {{/ ∧ ∨ } だからだ。個別に希望メールを送って頂ければ、検討してもいいですよ
割り込む余地が有ればそりゃ応募したい人多そうだけどどう投稿するの?作者が自分の作った鯖で検討してって送ればいいのかな、それともデータ込み?
___
, ´: : : : : : : :`ヽ、
/: : : : : : : : : : : : : ::\ >>52 前者です。差し替えるにしても、クラスが同じで似たような機能を持ってる必要がありますので
/ : : : / : : : : : : : : : :l : : :ヽ、
/: : : : l: : : : : ノ'、: : : :l::ヽ : : :', わざわざ募集するほどのものではない(変えなくても回らないわけではないので)
,::: :: : :! : : :メ \N/ ヽ: : ノ
l::「ヽi :ヽ/ TT 「 ̄Ⅱ 目|
| ヽィi: :| U 'ーヘ| 」 ノ
|: : : ::| :| , , , , :l:ノ そんなわけで、一声掛けてくだされば残りの枠と交換できないか検討はします
:l: : : :| :l_ 。~~ .イ ))
i: : : | :|.、=‐-t--r-ァ:イ/ ボリボリ 元の枠が少ないことと前述の理由から、なかなか全員の希望は満たせないと思いますが……
"i: : :l :l:, '`iヽヽ//、::iЕ)
',: :ヽi/ ,'个-`_8:/|~|
',: :./ ,'::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: 、ヽ
___
, ´: : : : : : : :`ヽ、
/: : : : : : : : : : : : : ::\
/ : : : / : : : : : : : : : :l : : :ヽ、
/: : : : l: : : : : ノ'、: : : :l::ヽ : : :', 流石に聖杯大戦オンラインの時に作った粗製濫造が今の>>1のスタンダードだと思われては困る(焦り)
,::: :: : :! : : :メ \N/ ヽ: : ノ
l::「ヽi :ヽ/ TT 「 ̄Ⅱ 目| 一年経っているのだ、どんな馬鹿でも成長する
| ヽィi: :|u U 'ーヘ| 」 ノ
|: : : ::| :| , , , , :l:ノ
:l: : : :| :l_ 。~~ .イ ))
i: : : | :|.、=‐-t--r-ァ:イ/ ボリボリ ……でもね……改めて考えたら、入れ替えられる枠=基本的にやられ役 なんですよね……
"i: : :l :l:, '`iヽヽ//、::iЕ)
',: :ヽi/ ,'个-`_8:/|~| 許可いただいた方のを確認しましたが、なんかどのキャラもいまいち既存に当てはめにくいという
',: :./ ,'::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: 、ヽ
(データの巧拙の話じゃないですよ) ちょっともうしばらく、募集を入れるかは検討で。
/三≧ ┐:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:′ ごめん。募集キャラ使えないかやってみたけど、
./ :l|:.:i_∠!:.:.:.:.∧:.:.:.:,:.:.:.:.:.|
/ i|:.:|/ ,「.:.:./ ト:./|:.:.:.:.:八 やっぱり自作からのみにします。
,{ .l|:|ー‐j;/ 、j;/__|:.:.:./
,{ ,j{Ⅵ、u , "/;/ 人のデータ使うとどうしても気を遣うので そして最悪エタっても(ry
ちょっと一部鯖についてあたれる文献を片っ端からあたる作業やってるんで、こっちの更新はしばしゆっくり目になります
まあ、次話はもうできてはいるんですが
しばし待たれよ
─────────────── ─ -‐‐
────────────────────── ─ -‐‐
────────────────────────────── ─ ─ -‐ ‐ ‐
< ̄ ̄ > 、
` < > 、
,.. ----、<_ >、
/ ,.ィ//∧ |////|
/ /、////∧>===≠- 、
/> ´ \//: : : : : : : : : : :> 、
// ,-//: : : : : : : : : : : : : : : : :.ヽ
〈´/ ,: : {/: : : : : : : : : : : : : : : : : : :.ム
´ /: :': :': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.
/: : |: :|: : :、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :. ごめん。期待させちゃってるとこ、本当~に申し訳ないんだけどさ
': : : |: :|: : : ∨: : 、: : : : : : : : : : : : : : : : .
| |: : |: :|!:、: : :',: : :.∨: : : : : : : : : : : : : : : :.
|_|: : |: :|{: ∨:∧: : :.∨: : : : : : : : : : : : : : : :. そういうの、ないんだよ
\{: :|:>∨:∧、: : ∨: : : : : : : : : : : : : : : :.
|/ ',: :∧\: ∨: : : : : : : : : : : : : : : : .
/ ∨: :|, : \}: : : : : : : : : : : : : : : : : : . そんないかにも医者らしい崇高な願いがあるのなら、こんなところで油売ってないし
_/ ∨:|∨: : :\: : : : : : : : : : : : 、: : : : \
_,.. -//| Ⅵ l: : : : : : : : : : : : : : : : : : :\: : : : \
, ´ |/ | リ ,: : : : : : : : : |: : : : : :,: : : : : :、 : : : : \
{. |/ | |: : : : : : : : : |: : : : : : :,: : : : : :\: : : : :.\
. 乂___ ,|/∧ |: : : : : : : : : |: : : : : : : :、 : : : : : \: : : : :.\
三三三三三三三ニ\/≧、_,..イ、_ |: : : : : : : : : |: : : : : : : : : ,: : : : : : :.:\: : : : :.\
三三三三三三三三三三三 {. || |: : : : : : : : : |: : : : : : : : : : 、: : : : : : : :.\: : : : :.\
人 マ、 |: : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : \: : : : : : : :.\: : : : :.\
\ \ /: : : : : : : : : ,: : : : : : : : : : : : : : 、: : : : : : : : :\: : : : :.\
┌───────────────────────────────┐
│ 煮詰まって追い詰められて、私は結局真実を告白することにした。 .│
└───────────────────────────────┘
-――- _
'"´: : : : : :\: : : : \
/ : : : : : }: : : : : : \=ミ、 ヽ
/: : : : {: : : :|ヽト、:X: : : ∨7ヽ:ヘ
. /: : : |: ∧: : :| ,ィ仁Y\: :j/:| : : Y
| j : : ト、_∧: :Ⅳハ:::ノ ∨` | : : :| ……?
|∧: :.|i仁Y∨ /{: : : |
ハ: 代::ノ ::、 u rヘ : : |
ト:_ゝ 「|: : :| それはつまりどういうことですか?
| :人 -─ | |: :.:|
| : : lヽ、 / .⊥|: : |
| : : | ` ー‐匕二¨ ̄ |: : |
| : : | 「∧ ,ィ j: : |>'⌒ヽ
| : : | /j/ ∧. /ヽ/: :// '、
| : : |厂{7/⌒ヽヘ/、//: :// \
ヽ: :{|./7/\\V、/ /:// )
,ィ-- 、
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ
{二二二二二二二二二ノ
_. . . :|///|=-- 、|//| ̄ ̄\_\
,. <: : : : : マ/>': : : : :> 、 \ \
,.:': : : : : : : : : ://: : : : : : : : :ヽ:ヽ. `ー'
/ : : : : : : : : : : //: : : : : : : : :.:|: : : : :.
': : : : : : : : : : : // : : ,: : : /: : : |:{: 、: : : . 医者という道を選んだのは、私じゃない
/: : : : : : : : : : : :{/: : :/: : :/: , : /}: 、: \: : .
.': : : : ': : : : : : : :/: : :/: : :/: /: /:r-!:.:|: :|`: ::.
|: : : : {: : : : :/イ: : : ' , ´:/: イ/ィォ、{イ:ー': :、 : | 月島家の、一番偉い人が決めたこと
|: : : : :∨: : :{/|:;: : :|イ: : :イ: |{l tj {: : :|: | 、:|
|: : : : : :∨: :|: |: : :∧|: : :.:.|: :| ヽ:.|: | リ
|: : : : |: :.∨: : |: :/、l∧: : :.|: :| _ ,.イ: |: | 私はそれに従っただけで、自分の意志で選んだんじゃない
;: : : :.:|: : : :、: :j:/: : }ー\__〉」 `/: |: :|_」
,: : : : :,: : : : : :、/: : :ム ー,、___,': /`¨
/: : : :/: : : : |: : :\: : : }--.、 {:\: : :, '
,: : : :./: : : : : |: :/⌒\: :≧=-、|-、:):イ
/: : : /: : : : : /イ乂匸乂\ー-:ム、 ヽ: }、
,:': : : /: : : : : ,: {/ ̄ ̄\乂\_∨:ハ_}ゝ: ヽ
, : : : :/: : : : : :/:/ \ ー乂:_}\\:}
./: : : :/: : : : : :/:/ \ {从 `ヾ、
-――- _
'"´: : : : : :\: : : : \
/ : : : : : }: : : : : : \=ミ、 ヽ
/: : : : {: : : :|ヽト、:X: : : ∨7ヽ:ヘ
. /: : : |: ∧: : :| ,ィ仁Y\: :j/:| : : Y
| j : : ト、_∧: :Ⅳハ:::ノ ∨` | : : :| ……?
|∧: :.|i仁Y∨ /{: : : |
ハ: 代::ノ ::、 u rヘ : : |
ト:_ゝ 「|: : :|
| :人 -─ | |: :.:|
| : : lヽ、 / .⊥|: : |
| : : | ` ー‐匕二¨ ̄ |: : |
| : : | 「∧ ,ィ j: : |>'⌒ヽ
| : : | /j/ ∧. /ヽ/: :// '、
| : : |厂{7/⌒ヽヘ/、//: :// \
ヽ: :{|./7/\\V、/ /:// )
,.-zz--、 r-zzzz-、
/ /_/∧ ____ | {
/ / ////∧´: :._: : `|__ 0 __|
/ / / ,.∨//>―――-:| | | !
/ー' /,.-ィァ_: : : : : : : : : : : :.:.| |__j |:ヽ
`二´' ,.´ィア: : :,: :.|: : |: : :.|: :乂___ノ-、}_ うちは、魔術と自然科学をごった煮にする変人魔術師の一族なんだけどね
/´ , < : : /: :∧: {: :|: |: ∨: : : rミ_--、 `丶、
__、_ ,..ィ: : ,: : : /: :/ |: : :.∧:!マ:.∨: ∨}:>、 \
/ '  ̄7 /: :.∧:_:/_|:_!ノ{: : :| |ト、マ:.∨: ',: : : | : T ー、 }__
/ / / ': ,: !: Ⅵrtォ=ミ \:」 '_ {:_」\|: : : |: : |:\ r===イ-r--=l
---、__/ {/:/|: : :|弋)ソ ´必オヽ/: : :/: |、: :,:.、: :| | [ニ!
/ , /:{/_从:八 , ` ¨ /: : :∧:_|: \: . ! }-
, , /:,/ 〈l \}:. /イ: :/:/||l〉`ヽ: : T¨¨´「、
/ }'´ ̄ 〈l ||',: :ム、 __ ,.ムイ:./ ||l〉 \:_:、| \:.
,: |/`ヽ 〈l ||∨: :| >` ` イ | |: : /__/'l〉 l| | マム
/ 八//∧ 〈l ー=l : | |ヽ`¨ r― | |: /__/フ ,ィ| :. マ :.
{ / ∨//} > |: , | | l: {ー r' //{| {\ , : .
| ' }// | _,.' 〈: {/ l::/ `|: 〉 マ //// | マ//、: :..
| ,..ィ--'、__/ { ̄\|: :〉 ' /{:.ハ _}. |/// : |///\}
. 乂_,.イ: :///////∧ { { 乂}\_.:l:..._/-乂:}|| ; \Ⅳ{l\ 、 }/////\
/: /∨//// /\l|{: :ノ , ̄、 {: ノ|| /、 \ ,/////// \
'//// \// | ̄ /: {--=≦---≧、__〉:{'.イ } `ヽ、イ `ヽ、//////ヽ
/////: :/ / {: :ノ\ <{ニ!ニ|>´ {: :.} \ \ \/////∧
//////: :/ / |: { \ 〉:{ ヽ \ ∨////∧
/////// / 从:〉 从:〉 , \ ∨//// }
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/ミメ、ミr`Y´ -=彡L
_r‐'′ー=≧メ、L >=ミ廴_
「 三二ニ=ミメ、/三二ニ=-‘:,
} 三 ㌢~^~^~^~^~^~^~㍉三ニ{
、__}≧ミ,{ }}三ニ}_ ノ}
_〕= }ニ=-{l rvォ {{二ニ{ 〔_
、_ ノニ=-}ニ=㌢ノ ゝ、 ゝ'′ ノ ㍉= ,′三≦__
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| l:,八 /、__\__/_ ノ} ィ :| 丶
/ :| |‘:、 ` 、 ー‐一 / ! | \
/ | l ∧ \____,/ | | 、
/ | ∨ ∧ /二二二ヘ _,′ | ‘:,
../ | V ヘ _∧ / | | /|
,′ | :, \___/ :| | / :|
|__ \ / | | __| |
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, ´ ̄`ヽ
/ ,.-、 }
|__/ 0 {_/
| / ,. -――-、
∨//>--- 、__ r< ー--、 ヽ
,..</: : : : : : : : : :ヽ、//\ ゚r '__,ノ
/: /: : : : ,: : :/: : : : : |: :\/ ̄ ̄ ̄
,:': : :/: : / : /: ,.ィ: :.イ : : : |: :、: :ヽ
/ : : /: : / : /: / ':/ |,: : :./: : :∨: :、
,.ィ : : /:/:': : :!{/ ̄}' ̄|: : /トl、: :|:|: :.`\ で、特になりたいものとか無かったし、医者ってお金沢山もらえるし、
//: : :/': : : |: : :| == ムイ }'マ: |:|: ∧
//': :/: |: : : :l\:.| u 、 ==/l:/,:!,: : | 医師免許取るだけならそんなに難しくないから
/: ' /: :,: : : ,: : : |、_ __ ,: /:.lリ \}
/ ´ ,: : /: : : : ,: :.:.| :、 乂:.:.:.ソ 八:_:」 ` そのまま言いなりになってずるずるここまで来ちゃってるわけでさ
/ ' ,.-‐-、_/___|: :.∧ 、 イ: :.|
/ / 〈l |::| l|: :{/∧ /` ー ´: /: : :|
/,. イ 〈l |::| ,: |/ / //:/|: : : :{-、: :|
,:/ Ⅵ |::| |:j! {_ ' ∨ !: : :/l〉 ∨ ,.-――---ァ
/:{ ヽ|::,...イ: ノ | ` r| ,: :{ l〉 `ヽ, rく _二≧ア
,: : | 、 }' {:.:ノ | , Ⅵ/' } / ー=rー '
{/!\_} / 「:.ノ | l ∨∨:、 _/ 〈 / 「/
/: //}//>- 、_,.イ、__/:「 < :. \∨}ィ//∧ , ' \__,/--'
,: :/'´ |////// :. {: | ̄T≧=--゙ー--'-ハ'////,/ '
,: : ' ` 7ー ':.| , 从| || ||ム ̄,:' /
/: / /--、:/ ::.,:::. /' || l} ,:'
':. / ///,Ⅵ、 \::::...../............::::::..... /'人\ /
/: / ///'´¨//\ `7ー---― ¨ r―--イ : |: : |` ´
: / // \//\ {l {l /: : : : :.:|: : |: : |
: : : : : : : : : : : :!-―ヘ: : :ヽ: : : : : : : : :|/: j} : : \
: : :|: : : : : : : : :| ヽ : l: : : : : : : :│: 八: : : : \
: : :l.: : : : : : : : |' _,二二l: :ト、: : : : : : :|.:/: ∧: : : : : 丶 お医者様ってそんな簡単になれるものなんですか!?
l: :│ : : : : : : : !〃 l: |ヾ : : : : : : |⌒〈 `、: : : : : \
ヽ:.:|ヽ.: : : : : : :|{{ (:::::)∨ }i : : : : : j^ '. ヽ: : : : : : . / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
'.:{ \: : : : :| ハ : : : : ,'ヽ .} \ : : : : :ヽ | だいたい三日くらいでなんとかなるよ |
ヽ \: : :| ミ=- _ イ: !:│: ∧ ノ 丶 : : : : i \_____________________/
r::. \| |/j:/|: /ノ' / i : : : : |
u j/ / | : : : : | 三日?!
/ー<_ | : : : : | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
__ イ:::::::::::::: `丶、 | : : : : | |私は一家で馬鹿な方だから臨床医になってるんだしねー|
、(二二二), / |:::::::::::::::::::::::::: \___ | : : : : | \_____________________/
\ イ ,|::::::::::::::::::::::::::::::: } :::::::::`l : : : : |
えっ……ええっ!?
< ̄ ̄ > 、
` < > 、
,.. ----、<_ >、
/ ,.ィ//∧ |////|
/ /、////∧>===≠- 、
/> ´ \//: : : : : : : : : : :> 、
// ,-//: : : : : : : : : : : : : : : : :.ヽ
〈´/ ,: : {/: : : : : : : : : : : : : : : : : : :.ム
´ /: :': :': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :. うちの妹とか、幅広いジャンルをカバーしつつ、
/: : |: :|: : :、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.
': : : |: :|: : : ∨: : 、: : : : : : : : : : : : : : : : . 私の専門分野でも私より凄いもの作るしね
| |: : |: :|!:、: : :',: : :.∨: : : : : : : : : : : : : : : :.
|_|: : |: :|{: ∨:∧: : :.∨: : : : : : : : : : : : : : : :.
\{: :|:>∨:∧、: : ∨: : : : : : : : : : : : : : : :. あのステッキとかもうどうやって作ってるんだろう……
|/ ',: :∧\: ∨: : : : : : : : : : : : : : : : .
/ ∨: :|, : \}: : : : : : : : : : : : : : : : : : .
_/ ∨:|∨: : :\: : : : : : : : : : : : 、: : : : \
_,.. -//| Ⅵ l: : : : : : : : : : : : : : : : : : :\: : : : \
, ´ |/ | リ ,: : : : : : : : : |: : : : : :,: : : : : :、 : : : : \
{. |/ | |: : : : : : : : : |: : : : : : :,: : : : : :\: : : : :.\
. 乂___ ,|/∧ |: : : : : : : : : |: : : : : : : :、 : : : : : \: : : : :.\
三三三三三三三ニ\/≧、_,..イ、_ |: : : : : : : : : |: : : : : : : : : ,: : : : : : :.:\: : : : :.\
三三三三三三三三三三三 {. || |: : : : : : : : : |: : : : : : : : : : 、: : : : : : : :.\: : : : :.\
人 マ、 |: : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : \: : : : : : : :.\: : : : :.\
\ \ /: : : : : : : : : ,: : : : : : : : : : : : : : 、: : : : : : : : :\: : : : :.\
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'": : : : : : : : : : : :\
/: : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
/:/: /: : ;'{: : : :,'|ヽ: : : : ヽ: ハ
/:/: :,{: : :ハ: : /│ハ_} : }: :レ}: !
 ̄ {: :从Ⅳ⌒∨ j/_j∧/| /7:│
∧レ.| ━━ , ━━ j/7: : |
|:小 l ノ|: :│ ? 杖ですか? 魔法の杖みたいなものですか?
|: :{ハ. ーt‐ァ┐ /7: : |
|: :\ ゝ_ ∨ .ノ イ /: : /
\:_:ヽ、{>、 __, イ }/: : /
/ ̄ `ヽ:厂∧ ∧ ̄/: ∠.__
| {ハ./=ト、}=ヘ_// }
| {_{ヘヽ{/}//{// │
| N ∨V∨ /7/ │
ゝ_ 〉〉 \/ .{7 /
{ く´ / く /
| } { ノ ノ
,..-=ニニニニニニニニニニニ)
////// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
-―‐ //////
/: : : : : : :/≧=-: :`ヽ
/: : : : : : : :/'´: : : : : : : : :\
′: : : : : : : : : : : __/__|: : : : :.\_
. i: : : : : : : : : : : : : /‐-_|: :|: : : :「 ̄
|: : : : : :/.:イ : : : ャ芯「/.:/ : : : | えーと、それは正確には魔じゅ……
|: : : : :/:(_|: : :|:{ // >: :.イ
|: : : : |/.: :|: : :|: u _ , : : :|:| まあ、ある意味魔法かな?
|: : : : }:、 :八: ル _ /: :/|:レ
/: : : : :ヽ:`^メXxメx ̄ }イメXx
/: : :. : : : : : : : :`マメXxメx、 `^メXx うん……
. /: : :. : : : : : : : : : :∧ / `^|: :\ l: :\
/: : :. : : : : : : : : : : : :∧ \「`\ |:/⌒
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―――━━―――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______―――――____ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____ ̄ ̄ ̄ ̄―━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
______――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄__
――――― ̄ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
______―――━━――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____―━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄____
、 r \:=乂-=ミ: : : : : : \
\ /Y: : : ⌒: : : \:.-==ミ\
_ /⌒: : : : : : : : \: :ヽ
ーァ: : : : :、: : :\: \: : ヽ: ::.
//: : : : : i\: : :\: :>: )_:i スーパー☆キュートでドッキド(以下略
,.: i: : : : :从 ー x=ミY: :≧=- --、 _
{ |: : : : : ix=ミ 从├‐ ィ, ノ ハ
. 乂 、: 八弋リ i: 7/)≧≦へ o,ノニ、
\: :> (:::) 人ハ(ニニニ乂ニニニ\
_ /:ハ 个ーrー彡仁ニ} Yニニ iニヽニニニヽ
乂 \i:| ̄ノ⌒アー‐ 乂⌒iニ彡-== \ニ=リ
―――━━―――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______―――――____ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____ ̄ ̄ ̄ ̄―━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
______――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄__
――――― ̄ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
______―――━━――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____―━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄____
, ´ ̄`ヽ
/ ,.-、 }
|__/ 0 {_/
| / ,. -――-、
∨//>--- 、__ r< ー--、 ヽ っていうか、うちの妹ちゃんの話は今は別にいいんだよ!
,..</: : : : : : : : : :ヽ、//\ ゚r '__,ノ
/: /: : : : ,: : :/: : : : : |: :\/ ̄ ̄ ̄
,:': : :/: : / : /: ,.ィ: :.イ : : : |: :、: :ヽ
/ : : /: : / : /: / ':/ |,: : :./: : :∨: :、 要するに私が言いたいことは、
,.ィ : : /:/:': : :!{/ ̄}' ̄|: : /トl、: :|:|: :.`\
//: : :/': : : |: : :| == ムイ }'マ: |:|: ∧ 私が医者になった理由なんて額縁に飾るような大それたものじゃなくってさ
//': :/: |: : : :l\:.| u 、 ==/l:/,:!,: : |
/: ' /: :,: : : ,: : : |、_ __ ,: /:.lリ \} 雑談の席で繋ぎに語るような、詰まらない閑談にしかならないってこと
/ ´ ,: : /: : : : ,: :.:.| :、 乂:.:.:.ソ 八:_:」 `
/ ' ,.-‐-、_/___|: :.∧ 、 イ: :.| だからあんまり、私へのハードルを上げないで欲しいんだ
/ / 〈l |::| l|: :{/∧ /` ー ´: /: : :|
/,. イ 〈l |::| ,: |/ / //:/|: : : :{-、: :| もう、その……なんていうか、死にたくなるから
,:/ Ⅵ |::| |:j! {_ ' ∨ !: : :/l〉 ∨ ,.-――---ァ
/:{ ヽ|::,...イ: ノ | ` r| ,: :{ l〉 `ヽ, rく _二≧ア
,: : | 、 }' {:.:ノ | , Ⅵ/' } / ー=rー '
{/!\_} / 「:.ノ | l ∨∨:、 _/ 〈 / 「/
/: //}//>- 、_,.イ、__/:「 < :. \∨}ィ//∧ , ' \__,/--'
,: :/'´ |////// :. {: | ̄T≧=--゙ー--'-ハ'////,/ '
,: : ' ` 7ー ':.| , 从| || ||ム ̄,:' /
/: / /--、:/ ::.,:::. /' || l} ,:'
':. / ///,Ⅵ、 \::::...../............::::::..... /'人\ /
/: / ///'´¨//\ `7ー---― ¨ r―--イ : |: : |` ´
: / // \//\ {l {l /: : : : :.:|: : |: : |
!: : : : : : : :/ |: |: : : : : : : |i: |\: : : : : : : :|
/|: : : |: : :/ !:| !: : : : : : l !:| ヽ: : : }: : :ハ
': !: : : :!: :/ i| ,: : : : : ,' |:l ',: : ': : ,': !
!: ',: |: |: /≧ァx、_| ヽ: : : / ノ' _,xィ≦: /: :/: :| ん? 今マスターなんて言いました?
|: : ト|: |i/{ {///卞`vノ\/`Vイ///} |/}/}: :|
|: : :|ヽl '、__ノ ` ^´ '、__ノ イノ/: : !
|: : :|ヽ '、 、 /イ: : : |
,|: : :|‐' 7 、 ,イ`1: : : |_
/ |: : :| {:.:{ヽ r‐---‐ ヽ /}:.} |: : : | ヽ
{ |: : :| ',:.:', >、 ` ‐--‐ ' イ /:./ |: : : | }
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\ ,,_人、ノヽ
- < >─
) て
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_「 ノ
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r- ' ノ
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/xxxxxxxx ヽ
/ ヽ
{ r-zzz、 }
、 |! o |___ /lTrzz 、
,.-|!-.__,r|===ミ、// |l|_o |
, :'/7^乂_ノ: : ∨: :r、/|l| |_,ノ! ううっ……いたたたた……いきなりなにするのさー……
/:,:' _,.-、_T:|: |、:{: : \`乂__ノ
{/ r-:/-|: Ⅵ:\、: :と⌒ヽ:、
, ´ /:{:/ |: |: : :|\_l!:.:.:| ヽ
/ ,.:': =≠={从_} |_| |: : |\ ',
, ´ , イ |: |: :| し' =ミ !: :リ: |、 .
/ /|:.:乂!:.|: :| _ /|:./|:.:| , :.
, ´ ,.:'´ /: :/: |:.|: :| { `¨ヽ 八/: |:/ , ヽ
/ _,.イ/Y^Y⌒\{八:.{、 __',....ィ: : : :/}' :. ',
、 ´ ///j! 、 〈l∨:\}` ¨¨|{: : : {: :/:.イ `TTヽ_':, ヽ
` -// // 〈l ,: : |__. |マ: : :∨{:/ {/||/| \ :.
\_/ 〈l ∧: :! ` r マ: : |l〉'/ |/||/| __」
\__ 〈i_イ〈: :} 、 乂ハ} | _/!/!!/!¨¨ ´
/: : :\/ 〈: ハ Y /}: :} ∨´: |  ̄´
/ \
/ ヽハ
/ ! i ; i .
_/⌒ヽ ' i / ! .イ !i i ! iイ |
// ー=ミ ! | l i l l ! 八/ ハ 从 |
. / / ヽ ! | 八 il个x从 / /斗个i 〃 iリ | マスター、今貴女は言っちゃいけないことを口にしました!
_ノ/ / 〉 ! イ{ i{ヽゞ--ヘ.{ `ゞ--' ル'(ノ.イ |
/ /  ̄`ヽ 人 ー=ミ 丶 x彡 ! |
. / / 〃 {´ ̄ ̄`ヽ\ _ / | | 『死にたい』なんてそんなこと、考えるのだって駄目ですよ!?
{ ,′ 〃 〃 `ヽ ヽ i、 ー一 ..イ | |
. ゙{ 〃 〃 / :. }リ、  ̄>く7 | ′
ヽ 〃 イ :. \ ∧ニi ト、 | / 生きたいと思っても生きられない人が、世の中には何人居ると思ってるんですか!?
. j}、 〃 . : ノ´ ヾ. j} ', ∨」リ ヽ.__|,/
_「 \ヽ . : :/ 〃 \爪{{ |`
_ /\
/ ̄¨¨¨ ̄l| ,. ⌒ヽ、-、///\
/ l|/ // \ \/〉
| ̄| () __| ,// \ \ /
_| | | | /イ \ /
__,.--,-、. / | | / } _,.イ\ }、
/ / ///_\//:{\_二二___/ /: : : : :.\ / \
' ̄`/ / /二,..ァ'': : : :{:\____ノ /: : : 、: : : : \_/ \ やっ……そんな本気にしないでよ
/ / /l//---_ァ: : : : : ∨: ∧: : : l_/: : : : :∨: :.∧: : :、 、
、 / | |_|- 、7/: : : : : : : \: :|: : : :.∨: : : : :∨: : :∨:,: :.、 \ ただの言葉の綾みたいなものだからさ……
\、 ':. | | |\__ア: : :.:.:|: :|:∨:、{∧: : :.∨\: : :∨: : :∨、: : 、 \
` | | } | ' {/: : : : : :.:|: :|: :∨ : ∧、: 、|\:{\: :! : !: :∨\:'\ 、
/{ |_// / ;: : : : : : : |: :|\{\: :∧\} ̄\ ̄| : |: : :|:r 、ヽ \ Y
イ |_/ ,' {: : :|: : : : :|: :|_ノ\ 、 ∧ _ | : |: :.リ:| ` //ヽ、 ,
`ー' |: |:.∨: : :T´从 \:」 -≠'´ |: /: /:∧ {/∧ ` ー /
|/| : ∨: :∧{ 、_ノ u /:イ: /: :| ム} マ/∧ ム、
| ,: : :∨: : :\  ̄ ; __ /イ: : j! ∧ ∨/\__/// :
/ : : : |\: : : :〉、 ,.-.:.':.:.:.:Y l|: : :| /'∧ \////// |
_/_、 |: :/ \:」: :>.,..._ 乂__,/ ィ|: :./ー-' } ` ̄ ̄ ´ /
r/∧∨∧ j:/ (_| ||: : : :|-、 |_`¨´ /´ !: :{ー'ー-' /\
,.....--|∧∨/} (_| ||: : :.∧ 、j ` /|: :| \ /: : : : :\
-――- _
'"´: : : : : :\: : : : \
/ : : : : : }: : : : : : \=ミ、 ヽ
/: : : : {: : : :|ヽト、:X: : : ∨7ヽ:ヘ
. /: : : |: ∧: : :| ,ィ仁Y\: :j/:| : : Y
| j : : ト、_∧: :Ⅳハ:::ノ ∨` | : : :| 言葉の綾……なんです? 難しい言葉を使ってごまかそうとしても無駄ですよ!?
|∧: :.|i仁Y∨ /{: : : |
ハ: 代::ノ ::、 u rヘ : : |
ト:_ゝ 「|: : :|
| :人 -─ | |: :.:|
| : : lヽ、 / .⊥|: : |
| : : | ` ー‐匕二¨ ̄ |: : |
| : : | 「∧ ,ィ j: : |>'⌒ヽ
| : : | /j/ ∧. /ヽ/: :// '、
| : : |厂{7/⌒ヽヘ/、//: :// \
ヽ: :{|./7/\\V、/ /:// )
,.-zz-、
/ ̄ ¨∧,.--∧. ∧
/ //∧==/∧ 0 ∧、
/ //:,: :,.ィ: : : : | l∧: .
{ ': :.|: :.l | : |:_:.乂 }:.ム
乂__ノ':ィT7:{ | : | 、:|、:`¨¨´: : ::.
|:イ: |:.lィ≠ミ ィ≠ミ|: : |:\:.|
l八:.从 ' u: :.:|: : :.:|
Ⅵ : 、 マ 7 /: : /:;: : : :. か、簡単に言うと冗談、ってことかな
/:八 : > _ ィムイ /: : : : :
,: /: :|: : :/-| |: : :./: : : |: ::.
/:/ ̄l|: ://,ノ {: : /|l〉 ̄`ヽ: . 本気で死にたいって思ってるわけじゃないよ
{:/ ∨:.イ/`ヽ イ|: / ||i〉/ ',
_,イ 乂ノ/ 乂ノ ||l〉' `ヽ、
{ /// l:/ {: :}、/ll〉、 _,} 心が苦しくって申し訳なくなって、これじゃいっそ死んだ方がましなんじゃないかと
〉 ん/ー,\.../_,...イ乂:} }、 ,'//\
/// { {{o/  ̄ TT|〉:{ ̄∨:{ ////}、イ
/\/l人 マ{ |!、:.〉 /: : `¨¨{/// ':. ちょっとだけ思っちゃうかも知れない可能性もあるぐらいの意味だから
/ __/∨:>}| -- /イ从 ,: : : : : |: :|: 〉- ,
. 〈 \: : : ||| || {: : : : : :|:./ /:.
\ \:〈 }} _,....- || ヽ: : : :/ /: : :.|
,. . -――-. . .
/ : : : : : : : : : : : \
/: :/ : : : : : : : : : : ヽ: ミi、
/ハ/ : //:{ : : : :|: 、 : :V;|:ヽ
i: |:| : //|ハ : : :ハ|ヽト: |ノ!: |
| A| /廴|!_ ヘ :| lレヘ: K|:| つまり……?
|{ ^Ⅵ' ○ `^ヽ厂○ }/^}:|
|rv十、 u/_イ:.リ
,r||| l,、 __ /ィ7}:.∧
/ | !_Ll ノ ∧ー(_)zチ/7 /:/ }
{.| {´ .小ヘ. トミ|/7/7' {:/ リ
`}.廴, イlリ ヽヽフ/ l{、 |′〈
Y´`¨´`ヽ `´ 〉 ´ /
〉` ̄´__|_____,ん、 {
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
N
| |
「ミ、ィ
{ ィ
,--t--'、
|} |_}!
'==' |
, |r-、ィ _, /:.、 _
' |!o/:|/:イ,、: : //}o}
{ {:Y: :>__<: : //:}
| !: :./ {,.--、} Y: : :/
. .--―{ ∧∧ `¨¨´ |: <
、 /: /: : : :」イ//}-、. ,.-': 、:_\
\_____/: イ: : : -: :∨// |:!r、 /、: :、: \ ` 死ぬのは嫌です!
>_:, : : : :,. : :´: : : : : /´ |:ム }、\}、:.∨: :ヽ
/: : :/: : : : : :/: : >=≠ー':ノ |}⌒ーミ、ヽ: : \
/: : :/: : : : : :/: : : /从:∨¨´、 / }ハ\:_、: ヽ
/:イ/:,': : : : ,. : :´: : : : : :_:_: : : . ` T ー' 、__/ノ、: : 从}: : 、
,: : / /: : : : ///////// Y/////|!l/\〉'⌒ヾ、: : : :,:.!
{: / ,: : : :/:.∨//////// |/| ̄\`ー'/、`ヽ=': /!: : |:|
|/ ' : : /{: : :}////// マ{ `ー ∨//}'/: :.:.|:|
| {: : / | : 〈//// || \ \/、: : :,:'リ
、: { |: ,... イ ___,.r  ̄`ヽ 、 ∧ \
りイ--- ´ \___> \ |\r、`丶、
r  ̄ ̄ ̄ ̄ ´ /__/ // `¨ \〉-、  ̄`ヽ、
| | | | | 〈_ / // マム\ 〉 //`ヽ、
| | | | | /⌒\/ // マム ∨⌒} // / ∧
、 、 、 マ、 {_ / // マム \_,ノ// / / 〉
\\ \\ ) / // マム }イ⌒Y / /
: : : : : : : : : : : :!-―ヘ: : :ヽ: : : : : : : : :|/: j} : : \
: : :|: : : : : : : : :| ヽ : l: : : : : : : :│: 八: : : : \
: : :l.: : : : : : : : |' _,二二l: :ト、: : : : : : :|.:/: ∧: : : : : 丶
l: :│ : : : : : : : !〃 l: |ヾ : : : : : : |⌒〈 `、: : : : : \
ヽ:.:|ヽ.: : : : : : :|{{ (:::::)∨ }i : : : : : j^ '. ヽ: : : : : : .
'.:{ \: : : : :| ハ : : : : ,'ヽ .} \ : : : : :ヽ 嘘っ…………!?
ヽ \: : :| ミ=- _ イ: !:│: ∧ ノ 丶 : : : : i
r::. \| |/j:/|: /ノ' / i : : : : |
u j/ / | : : : : |
/ー<_ | : : : : |
__ イ:::::::::::::: `丶、 | : : : : |
、(二二二), / |:::::::::::::::::::::::::: \___ | : : : : |
\ イ ,|::::::::::::::::::::::::::::::: } :::::::::`l : : : : |
―――-
: : : : : : : : : : \ ご、ごめんなさいマスター!
: : : : : : : : : : ヾ:ヽ
: : :.:∧:.:ト、: : :.:', ヘ、 私ったらとんだ早合点を!
: : :/__j斗ヘ: : : : !/;}\
: : |u ∨ ∧ : j |/∧:.`、 そのせいで、あわわわわ!
\| ((  ̄))ヘ: l |'⌒ハ: :ヽ
 ̄ Ⅵ|) ノ ヽ: \ マスターに怪我を負わせてしまって!
 ̄ ̄ ̄} u |イ \: \
r,―zzz-、
|l ∧__ _
|∧ ∧: :> 、 ,..ィ∨∧
/|/∧ ∧: : : : : :<////∨∧
. ':/イ: :| |: |: : : : : : ヾ' ∨∧
':.//: : : /乂__ノ|: : 、:{: : : : : : :. ∨∧ (それならいいのか……)
/: :{/: : : : : : :.:∧: :/ |: : :!:\: : ',: : : :.. ∨∧
/: : :' : : : : イ´/ ̄|:7ヽ|: : :!: !: \:!: : : : : . ∨∧
': : :/: /:/:./:|:イィr=ォ、 {: :.:.|: |-、:.:.|: :.:.:.ト、: . \_〉
/: : /: イ:/:イ:.:.圦込り 乂:_」 __| |: :l: : : :| `\
,: : :/:´: :'∧ : : lu 之オ|:./:.| ,:.:|
/: : : {: : : : :|\: 〉 ' `¨/': :.八: | いや、別にいいよ……そんなに痛くなかったし
/: : : : :,: : |: :.|: :| 、 r ―.、 /: :|:/ リ
/: :/: : :∧: :, : |: , \ ゝ ン .イ: :./'
/: : :./: : :/: : :, : : |\ ` ._ <:./:イ: .
,: : : ,. ´〈ムー.∨: | /∧ /\|: : : ,: : :ト、:.
/: : / 〈ム }!∨{' //| { /l|: : : l: : :| ,:.
,: : :/ \: 〈ムl| }:ハ/}l| ∨l∧: : :|⌒Y : .
./: : :| \〈ムⅥ: :.} |-、 _∨ l〉,: :! l, }: |
': : : ,' 〈l/{: : 〉l| ∨〈: :ハ. :. l: |
: : :/ | 〉: {/ ::. \〉: :} |:. l: |
: : { 八': :ノ\__ :、 ヽ:ム ヽ ,: :|
: : :\ ____ /´ 从{ マ/ \ Y /\ }' : |
: : : :////////∨ /: :.| }、} \_/---∨:.∨
: : :///////// | {: :从 ||  ̄{/イハ: :{
: : {///r―--、/::::::..¨´... /' | | }: : .
: : :\_j! |:::::、::::::::::::::/,'::::::::::_-- ' ///: : : :. あんまり痛くないって言うのも問題な気もするけど……
: : : : : , {:::::::`::..._/イ_,...<_::::::::....//: : : : : : .
: : : : :, l { { `7¨7 ´|: : : : ,: : : : : .
: : : : , , マ、 / / |: : : : : ,: : : : : : .
__
∧ ̄ ∧
_ |/!. ∧
/ //\ ,. . :--|/!_ ∧
/ /////\,..イ : : : : : : ∨∧ lj {∧
/ // \// : : : : : : : : : : ∨ { }ム:、 ……んー……よし!
. / // /: : : : : : : : |: :|:、: : ∨ 、 ノ |: ::.
/ // ,:': : : : : :|: : :.l: :|: :|: \: 乂_  ̄ ノ: : ::.
, 〈// /: ': : : : :∧: : l: :|-:|-、--、-: 、 ̄:´:∨: : :. じゃあ、こうしよう!
/ // /:.:': :; : |: :|__∨:、:.|从、: \:.\: \\:∨: : :.
ー ' /:/: :/: : l:イ ∨: { ,ィtrォミ、: \:_、-`:∨: ::.
l:イ: : :': : :|: |,.ィtォ`ー' 込zソ {: : : : :.|、: : ∨: |
{ |: : :|: : :|: |必ソ /: ,: : : :| }ト、: ∨: .
| : ∧: :从. ' __ /: イ: : :./ノ: :.\∨:.
|: / |\」ム v´:.:.:.:.} 〈:_:ム.イ: : :.:/: : l\,:.
|,' |: :|: : :∧ ゞ ノ ィ/: ,: : : :,: : : : :. ,: :. アサシン、お詫びにちょっと、私のお願い聞いてくれない?
' |: :|: : : : :}>, . . __,..イ /: / : /: : : : : :. ,: }
. |: 从: : : :|: /: : : :| /: : :/-、: : : : : :.∨:.;
八 : : \: j/: : / |「 ̄!:/,.-===-、: : : : :∨
\:/イ:__ノ-,/^r<ノ/ ,.. -―-ミ、: : : : .
/ 乂/ | |_/:_:ノ,イ / Y: : : : .
/ /:_ノ /_/_:,イ /〉 / } : : : : \
,. ´/:」{/ {: :// /l〉,:' ,.  ̄ ̄`ヽ: : : : : \
/ /从' 乂{,' /i〉/ / \: : : : : : .
, '/ゝ У 从`' / , ヽ: : : : : \
{ \/ / ' / } : : : : : : ヽ
/ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
/: : : : : : : :/: : : :! : : ヽ : : : : : : :ヽ: : :'.
,':/: : : : :,'|: :l: : : : |: : : ∧: : : : : : : ハ: : :i
j l: : : : :/ |: :| : : :ト : : | ' : ! : : : : : |: : :|
/:.| : l: :/ j:.∧: : : | '; : |u |:∧: : : :j:│ :│
/ : j: :.|:.:|\j/_,ハ : : |ハ: | j斗ヘ|: : ,':,ハ: :|
. 厶イヘ: ト、!Yfえト、 \:|^`Vf乏:ハ !: /:/} }: :| お願い……ですか?
ヽ{ヘ{ ゝノ ゝ_ノ |/j/ ノ/: : |
/、ハ/// //// ´ /: : :│
. ,': :ーヘ ` /\/T´| : : : │ 勿論、お詫びなんてなくても聞きますけど……
i: : : :| ゝ、 / ∠;_ : j : : : : |
|: : : /ヽ> `マ⌒ヽ\ /| 、`ヾ_: :│
|: : / { {>,二´ '´ ∨} 人 ヽ:|
/ ̄ヽ ヘ 〉 〃 / 厂\ なんでしょう?
/ ヘ 丶 ∧- -‐/ / ヽ
{ {\ \ |、___ / / / }
| \j\ ヽ|ー─‐/'´ _,..イ ,′
| ヽ \ | / __ '´ // /
| ∧: : : : : : : : : :.:///\ () \
∨ (_l. ∧: :,.------//////\---、 r∧
,:':∨ ∧  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄` : \ `¨¨ }
/: : :∨-、 | ∧: : : :{: : : : : : : : : : :∨\__ノ
/: : : : :∨ \__ノ |:.|: :.:∨: :,: : : : : :.∨:∨: : : : .
': : :.:.:|: : :\ /: |: : : ∨∧: 、|、: : :∨:∨: : : : ,
': : : :.:|: : : : :`T: T´:._∧: : : :\:∨:{-、--、:,: ∨: : ,: :.__ __
|: : : : :| : : : : ィ7T¨T: |l ∨: : : :.\: :. ∨: :|: :.',: : :|: : .ハ ̄ `ヽ
|: : : : :|: : :l: : :||: | |: |__ ∨: |: :∧\} ∨:,:.:.:|: : :!//|/} } そーんな身構えなくて良いよ!
|: : : : :|: : :l: : :|{: |_|:_|__, \{_:」 }: | : |: :|:|//l!/| _,.. '
|: : : : :|: : : :,: :|ィ伝じ刈`ヽ ,ィ≠ミ ∧}:,: |: :|:|//|/j! ' ´ /
|: : : : rⅥ: : : :{、 込こソ , , , , ;: : : }/: ,jリ/イ_/ , 聖杯戦争はもう始まっちゃったみたいだし、
|: : : : 乂、: : :.∧ , , , , ヽ 八: :/: ://, /
,: / ̄ ̄ {`ヽ: : ∧ __ イ: : :/: :/イ , /
/:/ Ⅵ }:l: : :∧:.、 乂 ' イ : |: :./{:.∧ / / 夜も近いようだから、そろそろ探索に出かけようと思うんだけど……
,: ,' | Ⅵ、 : : \> __ < ∧: :|:./=|∧: :、/- 、 '
,/:' | | \、__:〉- 、 / |、:}':、 ∧´:,:' \'_
/ /:. | | ,.:\: :} ヽ |∧: :.}、 ∨ / \
{ /⌒Y l //ノ}: :ヽ 、 \ゝ、: :ヽ', ̄`∨ 〈/7
∧ _/ ヽ ∨イ 乂.ィァ :::::. 〉 乂: : } ヽ\// ……ついでにご飯、食べに行こうよ!
/: : :、 { 、 } ヽ __/ /{ 、:l /__乂:ハ、 }`¨´、
,: : : : ://// ヽ | ` /乂:〉 Y / {///|| 乂:ハ、 /ィ: : : :、
/: : : ://l/∧ ヽ 、|イ / 乂: 〉`ヽ、 }/ \イ| ∧: } ' /: : : : :\
_.> '"  ̄ ̄ ̄ ̄`丶、
,イ //ヽ
ハ ! //::::::l
|:::| j ! l::::::::|
/  ̄ ̄ ̄ ̄\ |__|⊥ニ=-─‐─‐-=ニ⊥L._|
/ /  ̄ ̄\ ヽ /. : :|/⌒ ⌒\|: : :ト、
| | } } ノィ: : :| O O |: : :| \ , --- 、 ごはん……ですか?
 ̄ / / 代 Ⅳ, , , , Ⅵ/}___ノ / ____ \
/ / `ト{ ,、 __ムイ | / ヽ ヽ
/ / |:八(_) / / : | | | } }
l | | : へ / ̄ヽ 〈 /. : :|  ̄ / /
|____| |: : : : :> ._ ̄ ̄ _. < : : : : | / /
|: : : : { }  ̄ { ヽ: : :| / /
Y⌒ヽ \/`ヽ {/ \} }_/ \/
ゝ._ノ / `r‐ ‐y' / 〉 Y⌒ヽ
/\ \ マニニ7 人 ゝ._ノ
ハ \ _ \ // _ / ヽ
l ヽ  ̄ 丁  ̄ / !
| j | / |
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/::::::::::::::::::>ノ ) ヽ.:::::::_:::::::::::::::ノ-―=ヽ 短いですが今回はここまで
,':::::::::::::::::::: ゝ _´) Y- /::::ヽ―ヽ __ i. - 、
|::::::::::::::::::::/ 、_) |, /::::,:::,| l _ _ |丶 ノ
|:::::ヽ:::_:::::ヽ l ) /|:::::::::: | ア .l _ |‐ ´ はやく真名予想とかできる段階に入りたい
ヽ::::::::::_::::::_::ヽ ノ::ィ ‐―‐′-、'_ __|ーr ‐-、
. ゝ:::::::::::::::::::ー-‐<:_::_::_::_フ / ヽ | | 〉
丶::::: ̄:::ー:::‐:::‐::::::、───、 _ノ__ _/-- ‐´ まだ流石にどれも分からないはず(まだ二つしか出てないし)
丶:::::::::::::::::::::::::::::ヽ___ヽ:::::::ヽ/
 ̄ ̄ ̄ ̄¬ー ――一 ̄
六つの家は各々町境付近にひときわ目に付く大きな住居を構えていたが、
その中で最も『豪奢』を知っているのは、誰に聞いても南端にある水城の大屋敷であるといって憚らないだろう。
簡素にして壮麗。
遠目の絢爛さで言えばジュレヴォやアレキサンドライトのものに及ばない。
だがそこには繕った気品や偽りの優雅さではない、高貴を理解するものの佇まいがあった。
真の上流階級たるものは、常に自らを千金の宝石で着飾ったりはしない。
だが、決して襤褸衣を纏うこともない。
常に整えられた上質の布で質素を気取り、然るべき時にこそ真の姿を露わにする。
これはこの家が、『水城家』が過去三百年近くの間、この土地を仕切り続け培ってきた、揺るぎなき『持つ者』のメソッド。
瀬分の旧家、水城家は――――為すべき典雅を知っていた。
,、 ___
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,.ィ㌻ΤΤΤィ癶zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzュ
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|zzzzzz|z|_|i:i:゙゚'㍉。 : \  ̄ ̄``丶、;';';';';';';';'/ ̄`ヽ、Zs。。s≦><|zzzzzzz|
/ヽ;';';';';';';';';';';';'≧s。i:i:i:`=====ミs。 ヽ \;';';';'/ マs。__|i:i:i:i:i:i:i:i:|i:i:i:i:i:i:i:i:|
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〔五月二十日(木曜日)〕
――――聖杯戦争、-1日目
〈午後八時〉
「それじゃあ行って参りますね! お兄様」
宵闇に星の光を浴びてしっとりと照らされた水城家の数寄屋門がからからと音を立てて開くと同時に、
妙齢の女性が中から飛び出してきた。
彼女は派手な洋装で身を固めており、一見すると――――その場の静かな雰囲気に―――――まるでそぐわない。
「待ちたまえ、紀居」
その後を追うように、長身の青年が門をくぐってぬっと現れる。
青年の髪は波立っていて、彼の瞳は眼鏡の反射で隠されていた。
「君はどうも落ち着きが無くて困る。もうすぐ20になるんだ、少しは水城家の令嬢としての慎みを持って」
「何を仰っているんですか、お兄様」
「私はいつでも落ち着いていますよ。ただせわしないだけです」
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〈 《/ //》
/, /心、 ∨Yー'/
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V|: : :八 : : : : : .∨_У 八: : : ヽ. /.::/' /
_人: (‐-\: }: : :} ,.<: : :ヽ: :ハ /.::/`/
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::::ト「 ゝ--ヘ. |/─‐||\ト ゝ-- 'フヽ〉:::::!::ト{l:|!:::::::ノ!:!
ヽ:! -' |「| ̄`|ト、 ー‐ ノ |ヘ::j:ト /リ:::::::j jノ
└ヽ───┘! └─────┘jイノ/ :::::i::::{
| リ´「|!::::l}:ノ`
ハ | / !| ヽ:トし
ヽハ ゝ::::r ' / j:| ヽ、
_/ハ 、_ _ __ _ _, , ' ,'::| l`丶、
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!:::: | ヽ ` ー── '´ /::::::: //::::::| l
_/:::::::| ヽ /:::::::::::: //:::::::::| l
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第一、まだ今日は開始日の一日前じゃないか」
「急がない理由もありませんし」
「急いてはことをし損じるよ」
「ご心配なく、既に石橋はイヤほど叩いてます。それに……どうもきな臭い情報をとある筋から手に入れたんですよ」
「筋? 駄目だ、そういうのは駄目だ。君が裏側と要らぬ繋がりを持てば、それが水城家にとっての汚名に繋がる。
だからそういうことは極力しないようにしてあくまで正々堂々と典雅に水城家らしく……」
「まあ! 何かと思えばお兄様らしくもない御言葉を。私たち水城家の目的は何ですか? この聖杯戦争においては?」
「聖杯戦争をしようとする他五家の波は我々には止めようもない。だからせめて聖杯戦争に枠を確保し……」
「……私たちの手で、この町を守護する。そうでしたよね? お兄様」
「……」
「私は初心を見失わずに行動しているだけです。
私はこの町が大好き。だから、私の力でこの町を守れるなら、そんなに嬉しいことはありません」
紀居の眼差しを直下に受けて、惣右介は溜まらずにはにかんだ。
「……参ったな。やはり君には勝てないよ」
「お兄様は優秀じゃないですか」
「そうかもしれないな。だが聖杯に選ばれるべきは君の方だったようだ。健闘を祈る」
「ええ、勿論」
「……そういえば、キャスターは?」
青年――――水城惣右介の言葉に対応するように、暗闇につむじ風が広がって、
何も無かったところから麗しき女性が現れた。
「私はさっきからずっとここにいるわ」
「おっと、これは失礼」
軽く会釈する惣右介。女性は特に反応せず、紀居の方を見た。
「そろそろ行くわよ、マスター。夜は待ってくれないから」
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「明日になる前に、やることをやっておかないと。だから、ほら、早くしなさい」
そう言って、彼女は紀居の手を引いた。紀居は軽く頷いて、惣右介に視線を移す。
「それではお兄様、今度こそ行って参りますね。水城家の家名を貶めぬよう、正々堂々と聖杯戦争を戦い、
そしてこの町に僅かたりとも混乱を生まぬよう、尽力させて頂きます」
「……頼んだ」
深く頭を下げる惣右介。紀居は屈託無く微笑んだ。
惣右介に背を向け、彼女はキャスターの手を取った。
「―――――『チャリオット』」
彼女の声と共に、屋敷を包むような暴風が生じる。
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風が運んできたのは――――否。
風を運んできたのは、紀居たちの頭上に突如現れた二頭の輓馬。
並みの馬二頭分ほどある化け物のような益荒男だ。毛並みは整い、筋骨隆々の全身が煤けた茶色で覆われている。
上等の轡には、小型の小屋が括り付けられていて、時折中からごうごうと呻いていた。
もはや一つの戦闘要塞の如きその戦車は、しかし傍目には清艶な令嬢水城紀居の所有物である。
彼女はそれに自身の魔術のほぼ全てを結集させていた。
故にその戦車の能力は相当なれど、それ以外に彼女に出来ることは何もない。
清々しいほどに特化したその潔さからは、ある種の男らしささえ想起できる。
「……戦車があると言うのは聞いていたけれど」
その姿を見たキャスターは、分かりやすく視線を逸らして見せた。
眉間に皺を寄せて、露骨に嫌悪感を表現している。
「あり得ない! 貴女も少女でしょ? こんなのってないわ、ロマンスのかけらもない、無骨で無粋だわ」
「私、こう見えても合理主義者なんです」
「……みたいね。ああ、駄目、受け入れられない。で、あれを本当に私のしたいようにしていいのよね?」
「そうしないと、相手とは戦えないんですよね?」
「ええ。いくら可愛さを犠牲にして戦闘力を高めたとしても、相手どるべきサーヴァントはレベルが違うわ。
中世の装備で近代兵器に立ち向かうようなもの。どうやったって1度で粉々にされるのがオチね」
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f!/ `ヽ、-‐=ニニΞ三三三三ミ>、ニニ三三7.::;.:.:.:j`ヽ /´ / /ニΞ>、、:.:.:.)、ニ》 ̄`マ゙ f´__ : : : : :/
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「なら、お願いしますねキャスター」
「まったく……夢の力だって無料じゃないのよ」
キャスターはどことなく不服そうだったが、やがて手元のステッキを空に浮かぶ馬車に向け――――
三言ほど呪詛を唱えた。
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VA__ r‐‐‐‐=ァ< >'´八'//, '/)' |‐-=ニΞ三三三三三ア´\
X A `'<Y^Y´ >''´ r}≧=‐-‐=≦ |‐-=ニニΞ三三三ア´∧:.:.:.:.:.\
匕r'´__」L 」厶=-‐ ´l 厂人 / / '/, '/|‐-=ニΞ三三ア´V//∧:.:.:\.:.\
匕オー‐‐'¨¨´ l / i/ V '/ |‐-=ニΞ三ア´'/,' V//∧:.:.:.:..\:.:\
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焦げ茶色の輓馬が色を失い、やがて白銀の輝きを得る。無造作に発達した巨身も一部が削り取られ、
均整の取れた彫刻のような美しい居姿に。
土の臭いがしそうな轡や鐙は絢爛な装飾に包まれて、まるで王族の誂え品のようだ。
彼らが背負う朽ちた小屋も、金銀によって飾られた厨子の如き輿に変貌していき――――
結果、あらゆる荒々しさは呪詛によって失われて、代わりにどこかおとぎ話のような、
愛らしさすら覚える風貌に変わり果ててしまった。
その変容を見て、キャスターは満足そうに口元を緩ませた。
「これよこれ! こんな風に可愛らしくしてあげなきゃ、やっぱりときめかないじゃない?」
「……貴女はいったい現世に何をしに来たんだ?」
思わず零した惣右介に気づき、見下すように鼻で笑って、
「聖杯戦争でしょ? 女の子にとって、可愛いは戦争なのよ」
「……」
「さ、行くわよ紀居。二度目になるけど――――夜は、待ってくれないんだから」
「は、はい……」
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≪クラス≫:キャスター 【マスター】:水城紀居
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【真名】:? 【消費】:小 【属性】:中立・善 英霊
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【筋】:E(10) 【耐】:E(10) 【敏】:E(10) 【魔】:B+(40) 【幸運】:C(30) 【宝】:C
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【クラススキル】
◆陣地作成:E
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
小規模な”結界”の形成が可能。
◆道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成できる。
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
【キャスターは真名不明組では一番分かりやすいはず】
【今日はここまでー】
〔五月二十日(木曜日)〕
――――聖杯戦争、-1日目
〈午後九時〉
「後始末をしてたら遅くなっちゃったね。アサシン、早く寝たりはしなくていい?」
「いえ、ご心配なく! サーヴァントに睡眠は不要ですし、私は生前から寝なくても死にません!」
「そうなんだ。じゃあ多少夜が深くなっても大丈夫そうだね。すみませーん!」
束子の呼びかけに応じて、奥からエプロン姿の店員が現れる。
健康的な肌が露出の多い制服の隙間から見え隠れして、蠱惑的な瞳が怪しく輝く。
艶のある髪、異国情緒溢れる服飾も相まって、店内のエキゾチックでアダルティーな雰囲気をさらに高めていた。
どうでもいいが男性だ。
『あたたーめマスカ?』
「ところでマスター、ここはどこですか?」
アサシンが問うと、束子は何を当然なことを聞いているのかという顔をする。
実際、見るからに明らかだった。
壁にはインド神話の絵画レプリカがずらりと並び、天井からはカレーのオブジェがつり下がる。
インド感を出そうとしてやったことなのだろうが、やり過ぎてもはや料理を落ち着いて食べられる環境では無くなってしまっている。
もはやそこが料理店かどうか判別する方が、そこがインド関連かどうか見抜くより難しい。
余談だが店主はバングラデシュ人だ。
『あたたーめマスカ?』
「いきつけのカレー屋さん。えーと、この豆カレーと……アサシンはチキンビンダルカレーでいい?」
「はあ……良く分からないですが、サーヴァントは食事も不要ですし、私は生前から食べなくても死にません。
ですから私の分など気にせずに……」
「……」
「どうしました? マスター」
「――――よし、チャガタラヤさん。この店で一番辛いカレーを1つと……豆カレーを1つください」
『かしこまーりマシタ』
「えっ!?」
途端に慌てた様子のアサシン。
「どうしたの? そんなに焦っちゃって」
束子が意地悪い目でアサシンをによによと眺める。
「い、いえ、その……」
「いろいろぶっ飛んだこと言ってても、やっぱり子供なんだね」
「えっと……その。いえ、確かに私のことは気にしないでくださいと言いましたが、しかし。
いえ、そんなに、鬱憤が溜まっていたとは思いませんでした。すみません。
私としたことが、そういうことを考えることが出来ず、迂闊にマスターの心に無理を強いていたとは思いませんでした。
まさか、マスター、その……
……そんなに辛いものが食べたかったんですか?」
,.-zzz-、
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|: : :{: : : :|: : |{込ソ \:_} 込ソ }|: :|:\}: : : .
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|/; :\: : 〉、:_」 ' /: : :./: : :,: : :.
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/,:' 〈i| 「:_ノ //l| 、\ 乂:|l〉 / Ⅵ
〃 〈l{ {イ/イ/ 、 } \乂}l〉 ,' \
/ 〈l_/:ノ-イ \ ∨:. | `〈:l { `ヽ
「意図が伝わってなかったみたいだね。いい? このカレーはアサシン、貴女が食べるの」
「いえ、私はサーヴァントで食事は必要ありません。気遣いは不要です」
「気遣いじゃないよ!?」
「では、なんでしょう? 食事を必要としないサーヴァントに食事を勧めるということの意味が、
慈悲や温情以外の何だと言うのですか?
………
まさか―――――毒味ですか?」
「えっ」
「そういうことならご安心ください! 私がしっかり毒味の任務を遂行し、
マスターが食べても大丈夫な類の食べ物かをきっちり」
「ちょっとアサシン、大声で毒味とか言わないで!」
そう言って、束子はアサシンの口に手を当てた。
既に一部の視線が彼女らのテーブルに注がれていた以上、これは当然の行動と言える。
しかし束子は気づいていなかった。
彼女のこの行動は、暗に、『アサシンに毒味させる』行動を肯定していると―――――
少なくともアサシンにそう捉えさせるだけの意味があるということを。
「……これは失礼しました、マスター」
束子の手が口元から離れると、アサシンは少し反省したように項垂れてテーブルにもたれた。
「極秘任務だとは気づかずに……」
「い、いやだからそういうことじゃなくってね!?」
「ですがご安心ください。不肖私は出来る子です、分かっている子です。
1度犯した失敗は2度犯さないのが私です。
見ていてください、誰にも毒味をしていると感づかれないようさりげなく、かつ確実に
マスターが私に下した毒味の任務、華麗に果たしてご覧に入れましょう」
そう言ってアサシンは胸板をどんと叩いた。
まるで良い予感がしない束子だった。
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…
……
………
『スパイシーカレーデス』
「ありがとうございます! では!」
カレーが届けられた刹那、勢いよく立ち上がったアサシンは店中の全員に見せつけるようにカレーを掲げた。
「アサ……シン?」
「えー……」
大きく息を吸い、周囲を見渡すアサシン。
「私! アサシンが今からやることは! ここにいらっしゃる尊きお医者様、月島束子様のお食事に
誰か悪い人が悪いことを加えていないか毒味するということでは『断じて無く』!
__ _
'"´: : : : :} : : : `丶、
/: : : : : : : : : : : : : : : : : \
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/{ド/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヾミi}
イ_二二二二ヽ∨: : /: : /| /|: : : j\: : : : : : Ⅵ
// `ヽ|: :./: : / ! l |: : :│ ヽ\ : | jハ
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|{ l : |∨ f'弋ト{_ハ,: :lィ仁゙ハ }/ }│
| : : : : : : : : . ヘ: | 辷.j ^´ ∨ └ ' /)/: |
l . : : : : : : : : : : : }|、__ :、 /ノ|: :.|
'、 : : : : : : : : : : : : : : {\:\ _ -┐ /::::::|: :.|
_ イ\ : : : : : : : : : : : : : ト、 \:ト、 / :|, イ:::::::::|: :.ト、 _
/ \ : : : : : : : : : : ノj \_}_>‐=≦/_::ト、 :::::|: :.|::::\「○ヘ __
ノ い : : : : : : : : : : : : : : ノ /_ '"  ̄二二ニニニ二二二ヽ\
/ \ \:ヘ: : : -=: : : ―: : 彡く´: : : : : : : : : : : : : : : : : : . . . . ヽ}、_〉
( \ハ ∨ /: : : : : : : :/: : : :ノ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 人フ
{ l ∨⌒ヽ: : : : : : : :/: : : : : : :/: :_: : : : : : : : : : : : : : /
ハ. i : }\: ∧: : : : :/: : : : : : ノー'^`\⌒'ーv-----‐'´
/ :ヘ l . : : : ⌒ヾ∧: ∠-=≠⌒ ̄::::/::::::::::::::::\
. 〈 '、 l . : : : : : : : : : :廴/// :::::::::::( X)::::::::::::::::::::\
ヽ { . : : : : : : : : : : ノ::::::://::::::::::::::::入::::::::::::::::::::::::::::::\
\ ヽ :`ー---- ‐ァ=イ:::::::://:::::::::::::/ ヘ::::::::::::::::::::::::::::::::::\
ヽ ゝ: _:_:_ : : : イ(く)|:::::://)::::::::∠ =-┬ヘ:::::::::::::::::::::::::::::::::::\
\ : : : : : : : /::::::∨ヽ://::::::::∠|:|====|:|==\:::::::::::::::::::::::::::::::::::\
`ー― 7 ::::::::::::l / ::::∠==|:|====|:|==|:仏::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
あくまで私の『勝手』で、必要の無いことと知りながらもむぐっ!?」
アサシンの口にこんがり焼けた熱々のナンがねじ込まれる。
「だ、代金はここに置いていくね! ごちそうさま! お釣りはいらないよ!」
束子はアサシンの手を引き、財布をテーブルの上に放り投げると、逃げるように店を後にした。
「えっ? あ、あの、マスター!?」
「いいから早く来なさい!」
_ /\
/ ̄¨¨¨ ̄l| ,. ⌒ヽ、-、///\
/ l|/ // \ \/〉
| ̄| () __| ,// \ \ /
_| | | | /イ \ /
__,.--,-、. / | | / } _,.イ\ }、
/ / ///_\//:{\_二二___/ /: : : : :.\ / \
' ̄`/ / /二,..ァ'': : : :{:\____ノ /: : : 、: : : : \_/ \
/ / /l//---_ァ: : : : : ∨: ∧: : : l_/: : : : :∨: :.∧: : :、 、
、 / | |_|- 、7/: : : : : : : \: :|: : : :.∨: : : : :∨: : :∨:,: :.、 \
\、 ':. | | |\__ア: : :.:.:|: :|:∨:、{∧: : :.∨\: : :∨: : :∨、: : 、 \
` | | } | ' {/: : : : : :.:|: :|: :∨ : ∧、: 、|\:{\: :! : !: :∨\:'\ 、
/{ |_// / ;: : : : : : : |: :|\{\: :∧\} ̄\ ̄| : |: : :|:r 、ヽ \ Y
イ |_/ ,' {: : :|: : : : :|: :|_ノ\ 、 ∧ _ | : |: :.リ:| ` //ヽ、 ,
`ー' |: |:.∨: : :T´从 \:」 -≠'´ |: /: /:∧ {/∧ ` ー /
|/| : ∨: :∧{ 、_ノ u /:イ: /: :| ム} マ/∧ ム、
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「……あーもう、最悪だよ。これからあの店に行きにくくなっちゃったじゃん……」
走って五分、町中から僅かに離れた場所にある噴水広場へと到着した束子は
アサシンから手を離すと、息を切らしながらその場にうずくまった。
アサシンが何故あんな行動を取ったのか、とてもではないが彼女には理解できなかった。
嫌がらせなのか、実は自分のことが嫌いなのかとすら考えたが――――
「マスター、どうしてそんなに怖い顔を?」
まったく状況を理解していない彼女の穢れ無き瞳を見ると、そんな考えも吹き飛んだ。
どうやら彼女は善意でやっているらしい。
「あのね、アサシン……」
とすれば、この少女はもしかすると―――――
束子が立ち上がり、うんざりしたように肩を回した。
ちょうどそのときだった。
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―――――爆発。
彼方から音速でやってくる、埃混じりの熱い風。心臓をわしづかみにされる音。
頬を伝う掠れるような刺激。
景色が熱を帯びた赤に侵食されていく。
溜まらず振り向くと、そこには濛々と立つ煙の塔。
先ほどいたカレー屋の方向からだった。
._.. - ,....i;;― _
../゛ .,..-゙ ." `、
./ .″ .,,,..、 .ト、
----iik,,、 ″ 、 l ______
./ ..l .''「 ̄゛
.! ./ /___ !
.l゙ ヽ ./ | ´ ゙̄''''ー ..,,、
l ヽ .'、 ヽ 、 l `''-
゙l、 ´ゝ.. ヽ .'、 丿 /
.l, .‐,,X'" ´ゝ..,,,,、 丿 .'| l゙
.`゙''';;r=,゙ ̄゛ .‐,,X'" `" .´ ` .'/´ .''゙、..._,ノ゛
.l゙ .`>‐ _ "゙゙″ ./ \
./″ .,i'" .゛.,,. .,i'" .゛.,,. .'ー冫 _, ...../゛ .,..-゙ ..ヽ
.| ,..-′ .,..-′ l,, ´゛..../ .″ ヽ
l 'ナ__ ./ l ----iik,,、 .゙‐
_,. |. l、,..-"゙'' ヽ,__.l, ./
./ ! .゙く_./ ゙';;./ l. `゙'-_、 .! ./
.ノ .! ._,./ 、 `''' ..l゙ ヽ
r-/ .リ'-./ . ノ゛ _ l ヽ .'、
. { _| ゙l、 ´ゝ..,,,,
. 弋 .\ .... .i′ .l゙ ..l, .‐,,X'"
─=二 ゙l-''''゙‐ `'r'" ゛ `',./ `゙ l .';;
/ l゙ .{ /ゝ -、 ㍉ ゙l
│ ." .`' ./ `''i ゙ . /
__>┐ .ヽ ._ く .' '|
`''ー ,,ノ゛ `7ト..、
,,| ,,-¬‐″ .,..-ー...,Lノ │ ゙ヘ、 . _.
/ ! .゛  ̄゛ ...ii‐" .イ゛..、 _ / ´
「そんなっ――――――」
息を呑む束子、同時に彼女の傍らから弾丸のようにアサシンが飛び出した。
「あっ、こら、待ちなさい、アサシン!」
\ \ '"´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
\ \ / : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ /'
\ \//: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ハ /:/
-─‐┴ァ:/ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ、:ニて⌒丶、 _ / : /
_ /: : : : : : ィ\/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \ ヽ: : : : : : : : ` ー―一'´ : /
-=、ヽ __, :'´ : : : :/ {:.∨: : : : : /: :/: : : : : : \: : : : : : : : : : :ヽ/:|` ー- _: : : : : : : : : /
\.:.: : : : : : : : :.:/ l∨: : : : : /: :│: :/: : : : : :ヽ、\: : : : : : : ∨  ̄ ̄ ̄ ̄
ー‐─一'´ |;': : : :.:/| /|: :{: : : : : : : l \:\_: : : :\〉
/: : : : / l \|: ∧: : : : : : :l /\:丶: : :Ⅳ
| /|: :/ 〃示ミト、 ヽ : : : : |イィ示ミ、Vヘ: :! }
|ハ ∧ {{ {レ:::::| \: : | {レ::::::| }} ∧|/
ヽ∧ ` 廴._ノ \| 廴__ノ ,_/
〃 ̄`‐ヘ /:.`丶、__________
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アサシンは耳を貸さず、無心に市街地を駆けていく。
爆心地は目視でおおよそ300mほど北にある。
賑やかな繁華街から、無量の人々が雪崩のように逃げ惑い、狭い通路に濁流を形成。
その流れに逆らってアサシンが走る。
その後を追うのは容易ではなかった。
「こっの……! むぐっ……すみません、通し……!」
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【to be continued……】
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─────────── … ……
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――――― 一人しかいないと、分かっていた。
こんなことを成し遂げられる人間は、こんなことをやろうとする陣営は―――――
こんな手を選べる非道な一族は、その家しか無いと知っていた。
その一家は闇に住み、蜘蛛であり蝙蝠であり狼であり蛇である。
爆炎の紅蓮、血に染まった赤は彼らを一層美しく彩っていき、新月の闇と入り交じって彼らの世界を表現した。
これこそが、『悪意』。
これこそが、『外道』。
これこそが――――ジュレヴォ。
___
: : : |\ |: |:l .| .| .| .| .| .|: : |:
: : : |: : :\ |: |:l/|/|/|/|/|/|: : |:
: : : |: : : : :i |: |:l_.|_.|_.|_.|_.|_.|: : |:
、_l!: : : : | |: |: ̄ ̄ ̄ ̄: !:..:.|:
: \i\r‐┴――――――――― ┐ |: |: : : : : : : : : :!:..:.|:
: : : :\l: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.| |: |______|: : |:
: : : : : :|____________|、 |: |:l .| .| .| .| .| .|: : |:
:[l]:[l]:[l.|――――――――――― 、 |: |:l/|/|/|/|/|/|: : |:
: : : : : : |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|、\ |: |:l_.|_.|_.|_.|_.|_.|: : |:
:[l]:[l]:[l.|: :[]: :[]: :[]: :[]: :[]: :[]: :[]: :[]: :|: : :i .|: |: ̄ ̄ ̄ ̄: !:..:.|:
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爆発によってビルが崩落し、地上には瓦礫の山が形成される。
無尽の石片に圧死した者も、かろうじて命を取り留めた者も、摩天楼の最上階からは等しく塵に等しい。
自覚する悪はただ悠然と、下界の群衆を見下ろして笑う。
「ぐははははは!」
男は笑う。笑うことしか知らないように。
目の前に広がる惨状を、まるで望んでいたように。
「鮮やかな光景だ、滑稽滑稽!
流石は名高き炎なだけはある、『屑』共が総『崩』れ! 『町』は『まち』がいなく崩壊だ!」
| ____ .|
| _,.-‐"´ ̄ /ヽ ヽ i
', /,-、 / __,..-i .| ,'
ヘ .| ___ \ .ムニ-i~7| | /
ヘ | | i~゙.>,=,--r‐i"r;7./ムク |/´ヽ /
\ i`゙| `゙ヽ<ム.,<j ̄>、ニ/ ゙゙ .|ニ.} .} /
.\ |.{=| "".r‐-..ヽ-__-='‐"´`ヽ .レ' ./ /
.\ i.ヽ| | __,..-‐‐‐‐‐ -tニ/;i .[.|-< /
`7ヽ|] |゙ヽ、ヨ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;レ";;;;| .| `ヽ__,..-‐"
.,' | .|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / i
,' ヽ |;;;;;;;;;;;;/~ijヽ;;;;;;;;;;;;;リ / リ >-- 、
,' |i ヽ |;;;;;;ry‐-y-‐、ri;;;;;/ / / / / ',
_.-.,' |i .ヽ |/-i に}/ / / / ./ |゙ヽ、
.-‐" .,' .|i .ヘ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / ./ / .i __ |`ヽ、゙ヽ、
_,.-" ,.-,' .|i ヘ ゙‐------‐" / / / ./| { .゙i.| }--、 ゙ヽ、
./ / ./ |i ヽ--------" ./ ム" | ゙~~‐-リ″ | ヽ }-..__
/ / |i / / ヽ---"i .i |`ヽ `゙ヽ、
「……そのセンスはいったい何なんだよ、旦那?」
男の背後に控える青年は、そんな彼を冷めた視線で見つめている。
「ぐはは、悪いな! 趣味なんでね!
面白いだろう、親父ギャグは! ほら、お前も笑え!」
「今は別におもしろおかしい気分じゃねえからな……」
彼の手からは燻る硝煙。
高く高く上がる瓦礫の上の猛煙と、その姿はよく似ていた。
「なんだ? 『堅気』の連中を親の『仇』のように意味もなくぶっ殺したのがそんなに辛いか?
だがこれは戦争だ、殺っても誰も咎めねえ!」
「いや、それはどうでもいい」
青年が握り拳を作ると、彼の手からもうもうと沸いていた煙は潰されて消え去った。
/:::::::::::::::::::::/{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
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f::::::::::::::::::::ノ レ斗\ト、:::::::::::::::::::|
|:::::::::::::Nニーゞ ` ー ォ芹 }ハ从:::::::::|
Nハ::::::ハィ赱 l Y⌒}}::N
Yト、l ' ノ__〃ト 、
ヽ| ` ,__、 r__ノ>': : : }、___
_,ゝ-‐< ̄:::Tー、_ ノ / : : : : ト、/´
r‐イ:::::::::::::::::::::::::::::|::::}:::ヘ:::Y´/: : : : : : :/
. -┤::{:::::::::::::::::::::::::::::::}⌒Y´}´ l´: : : : : : :/
,. ´ |:::::\::::::::::::::::::::::ノ / j ノ〉: : : : : :/
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___. ´ >ー─‐ '´ > ヘ`7:`下 7 > 、ノゝ´ ̄`丶、
>'´ ___,, ,ィ´: : : : : : : : : /: : : : V: : : :\/ /: : : : : : : : : : : 〉
─‐┬イー─ァ 7 /、::::::::::ヘ: : : : : : : : : : :∨: : |: : : ィ´: : : : : : : : : : : : : :/
/ / /, ′: : :>--ヘ : : : : : : : : : : \/:/:レ′ : : : : : : : : : : : /
「俺が今やったのは、いわば前座の出来損ないだ。相手がサーヴァントじゃないからって、
威力を絞ったのが失敗だった」
「……?」
「『こいつ』はもっと上に行ける。そういう兵器だ。
こいつが全力を出していない以上、俺の気分もマックスにハイじゃねえ」
「ぐはは、よく分からねえが……
つまり、お前の武器にはまだ上があるってことだな?」
「ああ、こんなものじゃねえぞ」
, フ{ ̄`ー―-、
/ ハ lハ⌒l /|
/ イr' ミ{ヽ.| | |
ハ∧// , ノ∧ ノノ | \___. | |__
l ∨/ ィイ以⌒ヽ r' | :: \:::.:..\ r--┐ | ト、ヽr┐
| l|| | ノ ! ノl:: {:: ::〉:: / r ' _/フ_| | ||.┐
l ! ! | |、/ ィレ'|/ r '::::ノ::∠ :: く ̄ ̄Y7厂 ∨⌒){||
| | ィrtスr 、ー'゚ -' l:: :: / ̄\ ト--┐|/ / 〃Y'ノ |
|ィレ!リルヘ. l , /:./ | | |l ゞヅr '
/.:: :: :. . :` ーtー' i /:::| ヽヽ __// /
|.::: __三ニミi ー‐ ':::: :| ∨八 /
|厂 ̄ ̄ ̄| ̄ヾト、ヾ:::: :ヽ /〉ヽ 二二二r'
\: : : . }l -― \\:: : :  ̄ ̄ ̄ l/  ̄ ̄'7「ト
\: : . \ ヽ \:: ::.::::.::∨ / || !l\
\: : : . ヾ: : :. ハ |::.:.:.:.:.::/ / il || |
\ \:: >l 」r--イ / l /〃 ト、
l\ : : 'r'⌒: : : 八 /⌒ヽ |:: :|
| \ :lイい: . / ー―‐y' | |: :|
l \ | {l /: : / | |: :|
/rヘ \ l!/: / / ヽ l: ::|
/ru{ \ \: 〃 / \ l: ::|
、_/| | /:: ::!
「これ以上ないくらいの『破壊』を俺は体現できる」
「それは……『来た』る日を『期待』できるな」
「……悪いが黙ってもらっていいか?」
「さて、次だ」
青年は立ち上がり、無数に並び立つビルの中から一つを選んで指さした。
今し方崩れ去ったビルのちょうど対岸にある。
「今日の内にできる限りの破壊を繰り返す。そうすれば聖杯戦争は動き出す」
「当『然』、『善』性の奴らが、俺たちみたいなのを探し始めるわけだ。
で――――俺たちは、やってきた奴らを順『番』に『バーン』していけば良い」
「……そうなるな。さて」
青年が手のひらを狙いに向ける。
彼の手のひらに取り付けられた装置が、喧しくがちゃがちゃと音を立てる。
「全部燃えちまえ」
高熱が収束する。温度差が渦を作り出す。
あらゆるものを破壊する、古の炎が形成されて―――――
 ̄`ヽ、 l:. :.`':. :. :. ヽ//,':. :.l/:. :.'´:. :. ``ー-- 、_
ト、./!:. :. :. :. :./:. /;;;;:. :. :. :. :. :./;;;;; ; ::::::::::::::/
ヽ !:. ヽ!:. :. :. :. :!:. / ;;;;':. :. :. :. /;;;;;;;;; ;; ::::::::::::/___
〉 '´ヽ、:. :. :. /⌒ヽ、. ;;;:. :/:. :/;;;;;;;;;;;; ;;;; ::::::::::::::::::::/
/ : : :`ヽ、/__ `'´'ー‐z__ ;;;;;;;; ::::::::::::::::::::::∠
―ニ二} } l、. 、 , ::::::`ーz:::::::::::::::::::::::::::/
、. ___:::::/`` ッ、ヽ,j / _,,r―ァ::}_::::::::::::::::,rく
: :ヽ、 ``:::::l `ー= ,r='rッーァ'´ ::∠ _:::/:::::::}、
: : ::/\ :::l / :::: == -' ::::::::::::l'´rJ/:::::::::::::::ヽ、
::/. :::::〉、 !. lァ`== 、 ::::::::::::::ノ- '´:::::::::::::::::::::::::::
/ ::/ .:::l.l `、___ノ :::::; -ァ'´::::::::::::::::::::::::::::::, -‐
/ :::::l ` 、 ::;. - '´/:::::::::::::::_, -―<
{. ::::::lヽ  ̄ ̄ ::::::/_, - イ´ ヽ、
ユ /.\ ::::! ヽ ::::::l..ヽ、 l. /⌒ヽ、
/. `` r' :::::::::l `ヽ、l/ `'´
「――――――!」
造次、別方向からやってくる風圧の変化を察知して、青年は中途の熱源を足下目がけて撃つ。
爆風が青年を吹き飛ばし、続いてやってきた馬車の突撃を回避した。
/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/
________/ /´三三三 /
/ ./ ,、 // /三三三三 / ノ彡ミミヾ㌫rツ ノ彡ミミヾ㌫rツ
/ ./ノ/∧//__/三三三三 / 彡´ r ム jl 彡´ r ム jl
//_ .././//__/´ ̄/ ̄ヽr――-、 彡 入 ヶ {l7 彡 入 ヶ {l7
_/ , -''´  ̄ `' 、 / //,r ´  ̄ = ー イ // ヽ _」l // ヽ _」l
=//ヽ | /ハ 'n二二二二二二二二二⊃l { ハ二㌧リ| { ハ ㌧リ
/ /\ V // >、 ',三三//{ レ ! !l } ! !l }
7 .ト、_>-、/_ ゝ',三彡ノ t ヘ l j l j l j l j
| |___it j }ミ=、 | iフ=. 、ヽ>、 ゝ、、_ tヘ / ノ ハ _ tヘ / ノ ハ
{ ハ //不/ヽ`'-i } .`'{ k 〈  ̄{ V-<.ハ  ̄{ V-<.ハ
..ヽ V ./ | ヽ V ./ .l 「 ㌧こ、 y } ㌧ j y } ㌧ j
\ソ-.上__ソ/ ノーl \ヽ } l ヽ‘、 } l ヽ‘、
`''ー---'''´ .ゝー'’ ヽ\ ノン v`、 ノン v`、
辷イ/ yヘ、/ yヘ、
し' 辷 コ 辷 コ
その馬車は空を飛んでいた。二頭の白馬に伴われた、城のオブジェを担いだ馬車だ。
おもちゃのような愛らしい装飾に見合わず、掠めた蹄は屋上のコンクリートを容易くえぐり取る。
ある程度離れた位置に着地した青年は、相変わらず笑い続けている男をかばうように間に立った。
λ ∧ /::::`ヽ /:::::\ /:::::\ /| λ ∧
|::::ヽ i:::::ヾノ:::::::::::i::::\:::ヽ:\/:::::::::::::::\/:::::ヽ /:::i /:::::|
|::::::::::V::::::::::ヽ、:::::/\::::|:::::___:`ヽ、/ヽ /ヽ \/::::::::::::::::i/::::/
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`ヽ、:::::/;;;;;;;//,:-'"uノ ) /― 、::::\ :::::::::::::::::::::/
:-‐''"⌒::::::>;;;;;;|/;;;;l_,:-'";;;;;;;;;; |/ ::::::::| ) :::::::::::::</|
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`ヽ:::::::_:/:::::::::::;;;;;;;;;;;  ̄ :::::/::::::::::::::::::::/ /|
// ⌒-:,:: ,,λ ::::::::::::::::/ ::::::::::::::::::::::|/::::/
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.. ヽ,~,,~‐'"::::::::::::::::::::::,,-'"  ̄ ̄ ~´"''‐-:,::::::::::/
/::::::::::::::::: _,-‐'' ´"''-‐-:,
ヽ,:-‐'´~′ `ヽ、
__,:-‐''"´~ ̄ ̄~´"''‐--:, ''‐-:、
,:-‐''"´~′ __:-''"~´/ ~´"''--‐-、 ,:-‐―''"-、 >
/ ,,,-‐''"´ / /~´"''--‐-、 `ヽ、 i
「旦那、気を付けろ。あんたに死なれたんじゃこいつの威力も試せねえ」
「ぐははは! わるぁって(笑って)、悪かったな! だが、これが笑わずにいられるか!
俺たちの見込み通り、飛んで火に入る夏の虫! 無視できるようなもんじゃねえ!」
宙に浮いたままの馬車と青年が対面する。
距離は二十メートルもない。お互いに、その気になれば一秒掛けずに攻撃を仕掛けられる距離にいる。
「馬車ってことはライダーか?
面白い、その方がいい実験台になる。ビルなんかぶっ飛ばすより……」
馬車の中に乗っているだろう何者かは一言も言葉を発しない。
それもまた良し、と、青年は密かに笑みを浮かべる。
正体不明の仮面を剥いでやるのも面白い。
「英霊ぶっ飛ばした方が、よっぽど『華』だ」
それに相手は間違いなく英霊か、その能力によって強化された存在だ。
ならば正体がなんであろうと箔が付くことに変わりはない。
「――――一応、仮にだが名乗っとくか」
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/::::::::::!/ .::::::::::::::::::i/:::::::::::::::::::レ:'::::/-''"::::/ イ
/.::::::::::::::レ.::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::/::/ .::::::::::::l / !
ト /.:::::::::::::: /..:::::::::::::::/.::::::::::::::::::/::::/ ..:::::::::::::::::! /:::!-―‐--、
ト ヽ !:::V :::::::::::::/::::::::::::::/..:::::::::::::/::::/ .::::/ :::::::::::::::::::::/ .:::::! //
l:゙、.i:、j:::::/::::::::::::::/:::::::::::::: /..::::::::::/:::::::/ .:/ .::::::::::::::::::/ .:::::|/:::/
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l :::v ::. ::iヽ:::::::::::! ::::::: ::/ . ::::::::/:::::/::::l:::::::::::::::.. .:: ...::: .::::::::.::::::::/ ィ
l ::::::: ::::i.:::ヽ:: ::::!:::::::::::l:::: .::::::/:::::/::::::l::::::::::::::::::::::::::...::::::::::::::::::/ //
l :::::::..::i::::::::ヽ :::!::::::::::::::::::::::/::::: /::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::レ':::::/_ アーチャー、
l :::::::::i:::::::!ヽ\:::::::::::::::::::::::wv/ :::::::/,、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::/ "'''‐'''"
>:i:::::::::!:::ヽ{‐-、:,/ ,>、:::i ''}::::::_/^ヽ::::::::::::/:::::::::::::::::'‐''' ちょっとした天才技師だ……覚えとけ
---―、 厂/::/:::::::/:::>ミ , / , r。ッ フ |:/ ,ィ个 }:::::::/:::::::::::::::::::::::::::::
/ __ .\ |/:::/:::::::/\}. ゙ヽ\ / ノ / ,,. '" )丿,ハ/::::::::::::::::::::::::::::::::::
/ /::::::::::::`ヽ /l:::く ::::::::\:::`、 ヾ."ヽ、く∠ イ. ̄ |::| (__ノ/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
_/ /:::::::::::::::::/ | レ' `ヽ、:::ヽ:::ヽ `‐'ヽ l/ ,'´フ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
// ̄ ̄ ̄ ̄><| \ /.iヽ ゝ:\. ! / /`ヽ レ´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
| | ⌒ ⌒ | l└ |〔 二二、〕|:::::::::::::::ヽ、 l_, __/jV´ ) /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
| | | l┌ l ./i i j:::::○::::::::::::\ヾvニ__ニ二--‐' /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
\\二二二二><ヽ.| | lノ``ヽ::::::::::/:::::::::ヽ ̄ ,, -‐-‐--、__::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/フ ̄ ̄ ̄ ̄ ><、 ̄| | /ノ:::::::/ :::::::/:::::::::::::::::ヽ,-' ´ -‐'''"´ `ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::
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\\二二二二><"""´´ヽ .//:::::-‐ '' ´ / , ‐'´゙l、::::::::::::::::::::::::
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≪クラス≫:アーチャー 【マスター】:ボレノフ・ジュレヴォ
┣━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━┫
【真名】? 【消費】:中 【属性】:混沌・善 英霊
┣━━━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┫
【筋】:D++(20) 【耐】:E(10) 【敏】:C++(30) 【魔】:E(10) 【幸運】:A(50) 【宝】:B++
┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫
/{
l八 イ
|/∧ //Ⅳ _ __
Ⅵ ∧ lY///{ /⌒^Y乏廴_}r=x
Ⅵ/∧ |:l //八/ .:ミxノ:::/.:::::/ト、^}ト、
Ⅵ//:\ Ⅵ///〈.::::--─┐.:://.:::::X廴}ト、
∨////\ Ⅵ///f /<:/_//.::/:Ⅳ l
\/////\ ∨//{___/.:: ::.:::: ..::_//i八ト、 ト、 イ
' . \/////\ \ノ⌒ヽ }.:::::::::::::/ イ}′::::::::::::ヽ!::Ⅵ:{ イ
、 \/////≧=-‐‐‐}廴__ノγ⌒ヽ// /::::::::::::::::::::::l::::::::::V厶ィ
ヾ , ; \//// /:/:i:iノ.:弋__乂⌒Y::::、::::::::::::::::::::::}::::::::::/::/
\ {( ≪{ ア /:厶斗.:.::/::{ 廴.ノ::::::::\::::::::::::::::/::::::::::::::{ィ
' :;ト、 ゞ (__ -‐┴ノ /.:/::イ:ア´ ̄::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::ノ
V }ア-/ -//::/:/}^Yミ、::::::::::::≧=‐-云ミ以斗ハⅣ、
-─ァ′ ///::/://⌒l: : ハrミ:::{ ノ {:/ 、 , 厶}イ : :\
_/ /-=彡 ´/::/://} : : : |: : l代_Ⅵ 下/a、 ,_:.}、 ィッ }ハ : : : :ヽ
/ / _/.:,.イ::::/// : : : : : : |l} ーヘ / ̄ ̄⌒{゙ ̄/ \厶斗
/ _{ト、_/.:::::/Ⅳ:::/// : : : : : : : : l」、___\ モ、__、ノ,./ ノトx 〉
__{ <.::.::.::.::.:: イ //:::/〈斗-=====‐--}}.::.::::\/> ̄ ̄/ 勿^}ノ
 ̄ 、 r┘.::.:::/ //:::ノ 廴/イ: : : : : : : :八>'⌒^ⅥⅣ ̄
Ⅵ」.::.::./ //.::::{ / /斗-===': : ≧=- Ⅵ
廴/ //.::___>′ / : : : : : : : : : : : : : : : : : }}≧=-
,イ} //.:::_」 八 : : : : : : : : : : : : : : : : ノ′: : : : : :≧=- 、
_,ィ幺 / _{.::ト、{ /______: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\
/___/ r云{<廴.___/ ̄ ̄ ̄ ̄\ト \_.≧=-: : : : : : : : : : : : : : : : : :\
ノ《:// /: : / `\ \___〉 ‐-≪ : :≧=- : : : : : : : : : : :/
ー ̄イ: : / ‐-≪ : : :≧=-‐ :/
〃^ア´  ̄ ̄ ̄ ̄
l|⌒「
廴ノ
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【to be continued……】
~~~~~~
馬車が滑空する。風を纏い、流星のように輝きを帯びて、メルヘンチックな馬車が走る。
しかしその実は殺意の権化。目の前に立つ重装備の男を、純然なる破壊によって砕かんとする。
「……」
アーチャーが両腕を広げると、肘の部分からジェット噴流が起こり、彼の身体を即時に空へと舞い上がらせる。
馬車の突進は大きく的を外し、誰もいない闇を駆け抜ける。
「―――――背中を向けたな」
アーチャーの手のひらが、馬車の後部に向けられる。
彼の手のひらに備え付けられた『穴』が、赤い光を帯びていく。
「燃料も少ねえ、速やかに片付け――――うっ!?」
しかし、馬車が体勢を立て直し軌道を変えると、アーチャーは直ぐに手を引き下げた。同時に手元の輝きも消えていく。
「……」
馬車が再び、物理法則を無視して突撃してくる。アーチャーの視点が泳ぐ。
「……っ」
再び、手元からジェット噴射を放ち、アーチャーは横に飛び退いた。
「……」
『アーチャー!』
アーチャーの脳裏に、マスターであるボレノフ・ジュレヴォの念話が響き渡る。
そういえば……と、アーチャーは、今更ながらに彼の姿が屋上に見えないのに気がついた。
『何ぐずぐずしてんだァ? これで『さん』ざんなのが『三』度目―――――ッ!』
『攻撃する気あるのかァ―――――!?』
「……いちいちうるせえぞ、マスター。あるに決まってんだろうがよ」
『んならよぉ――――っ! とっとと終わらせろ! 目の前に広がってるメルヘンティックなファン『タジ』ーも『たじ』たじになるのがぁ―――――!
お前の宝具だろォ――――っ!?』
「んなこと言ったことねえよ! お前の下らないギャグに俺を巻き込むな」
「ファンタジーがあああああああっっ!! たじたじィ―――――――――ッ!」
足下から聞こえるボレノフの声。そのときようやく、アーチャーはボレノフの居場所に気がついた。
声はビルの一階下の、開いた窓から聞こえてくる。
どうやら隙を見計らって、階段から下に降りたらしい。
「ッッッッ! 黙れ激寒アフロ!」
「下らない! 確かにそうだ! テンションはまったく下らないィィ! 俺のギャグはテンションを上げるからなァ! 見ろ、この冴え渡るギャグゥゥゥゥ!」
「冴えてねえよ、下げてんだよ! 糞がっ!」
「フハハハハハ――――ッ! アーチャーよ! お前もギャーグのォ!情熱(『じょ』『うね』つ)というものを徐々(『じょ』じょ)に分かってきたよう『だね』!
あっ、どうでもいいが馬車、来てるぞ」
「は?」
アーチャーがはっとして振り向くと、僅か数メートルの距離まで近づいた馬車が、正面に備える輓馬の蹄をぎらぎらうならせている姿が飛び込んできた。
「……っ!?」
『令呪を以て命ずる。アーチャー、回避せよ』
ボレノフの声。無意識下にアーチャーの肉体が超越的な動きを見せ、撥条で弾かれたように跳躍。馬車の突撃を力業で回避した。
アーチャーの姿を一瞬で見失ったせいか、馬車は動きを止めて
「……」
『危ないところだったなあ、アーチャーよ。俺の指摘に感謝してき……き……たらどうだ?』
着地、したアーチャーはしゃがみ込むと、動きを止めた馬車をその天板の上からふてぶてしく見下ろした。
馬車はまだ動きに気づいていない。
「……感謝はしておく。だが、お前がもう少し早く指摘すればよ……」
『これはこれでコレクト。お前を把握しておきたかったからな』
「……?」
『まあ、気に『する』だけ無駄、『スルー』しろ。交戦中だぞ』
一番スルーしがたいのはお前の駄洒落だ、と言いたい気持ちをこらえつつ―――――
「わーってるよ、問題ねえ。これだけ有利な状況なら、流石に―――――」
アーチャーはにやりと笑うと、左腕の手のひらを天板に押し当てた。
再び、手のひらの中央部に熱が集まる。
ちりちりと火花の音が鳴り、空気の流れが僅かに変わったのが感じ取れた。
「―――――俺でも、勝ちどきを見誤らない」
左腕に取り付けられた機械には、いくつかのカートリッジが附属していた。
容器は透明で、中には黒っぽい粉のような物体が充填されている。
「火薬の残りが少ないのが残念だ。フルパワーの実験、したかったんだがなあ」
「ま、ぶっ殺すには十分だ――――そら、吹き飛べ」
爆発音。雷管が火砲を起動する小さな爆発音だ。
同時に、瓦礫が破裂する音。音を聞いて、瞬時に理解、回避しようとしたのだろう。―――――急に動き出した馬車の天板から振り落とされながら
アーチャーは内心でほくそ笑んだ。
「だが、もう遅い」
多少動いた程度では逃れ得ぬ距離。
追尾機能を持たない彼の宝具を確実に当てるには、爆発を拡散させるか、至近距離で放つしか、確実に当てる術はない。
だが、拡散させればマスターにも被害が及びうる以上――――彼が取れる作戦は始めから一つしか無かった。
弾数にも制限がある。破壊活動や回避に燃料の多くを使ってしまった以上、馬車相手に避ける火薬は殆ど残っていなかった。
だが、その『殆ど残っていなかった』火薬でさえ。
馬車を破壊するのには十分であり。
馬車を破壊するのには、十全すぎた。
その業に、破壊以外の性能は無い。
だが、破壊に関しては一流だ。
その後はアーチャーの読み通りに進んだ。
彼の手から放たれた紅蓮の爆風は、馬車を丸ごと包み込むと、そのまま――――花瓶を割るように、馬車の全てを粉々にした。
馬車を撃ち抜いて、小さな穴を空けたかと思うと、炎が風船のように内側から広がって、馬車の壁面を爆発させる。
立ち上る火柱。
めらめらと燃えさかる炎が、僅かに残った馬車の形すら崩していく。
中に人がいたとしても、もはや原型すら掴めない。
「……この馬車がなんだったのかは、結局分からずじまいだったが……」
燃えがらと化した馬車の残り滓を見下ろしながら、アーチャーは呟く。
「……これでひとまず、一陣営は脱落だな」
【to be continued……】
「おい、マスター。穴熊もほどほどに出てこい。終わったぞ」
もくもくと硝煙が舞い上がる摩天楼の最上階、屋上には火薬の臭いが充満する。
開けた場所でありながら、鼻が曲がるほどの激臭が残っていることが、この場で行われた激戦の熱気と、
それによって失われたものの多さを表していた。
「残り5パーセント……」
手元に備え付けられたカートリッジを一瞥して、アーチャーは唇を強く捻った。
圧倒的に足りていない。
アーチャー自身は、自分がいっぱしの英霊に劣ることは無いと自負していた――――燃料さえ足りていれば。
燃料が無ければ自分が凡百の雑魚にも劣りうるということを、彼は誰よりも良く分かっていたし、
また、そんな状態で戦場に留まり続けることを良しとしない程度には、慎重で臆病だった。
「マスター、さっさと撤退だ」
_,,,,,,,,,,,,,,,,_
. ‐''"´ `'ー-、
/ .-' ヽ.
/ //レ'7′ `、 、 、 ヽ
l r ヘ. ', Vヽ「`、 ',
. | ; ,' ノ ヽ l ', l
l ,' i .l /|/ )人 l| l l !
ノイ .i l. トl=-、! レ-=iテリ}l / /
>ト、| | ` ̄´ ` ̄´ .レヘ/
_. -‐'フ `'! :} lイ`ヽ、_
,. =' /. `、 _`__ ./ ノ `、`''ー、=-、
ノ::\  ̄`ー、_ :lヽ. ー ` /./ _Y⌒ ー、 \
/:::::::::::\ ノ ::ト、`、,___,/ / <二-ヘ ノ ヽ
. ノ::::::::::::::;;;;ヽ、 `ー、 :::l. `'ー‐‐''"/ イ-‐-‐'´l └ー-、_ }
~~~~~~
アーチャーたちが撤退してからおよそ10分後、瓦礫の廃棄場と化した繁華街に到着した束子。
繁華街は突然の大事故に巻き込まれた哀れな人々、詰まらない好奇心でやってきた野次馬、
夜遅くに引っ張り出され、倦厭とした態度の救急隊員。
無数の人で埋め尽くされて、
「……サーヴァントは……」
,..-=ニニニニニニニニニニニ)
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ゆっくりと周囲を見渡し、警戒しながら前へ進む。
七家の人間ならば、自分が月島家の人間であるということ、そしてマスターであるということも全て了承済みのはずだ。
『事情を理解してくれる相手』ならいいが、大半のマスターはそうはいかないだろう。
構わず戦闘を仕掛けてくる者、それどころか、寧ろ好機と狙ってくる者……。
何が潜んでいるか分かったものではない。
自ら戦地に飛び込んでおいて何だが、早い内にアサシンと合流しなければ……
「あっ! マスター!」
「!」
跳ねるような甲高い声に、束子は思わず身構えた。全身が引き締まり、
しかし直ぐに、それがアサシンの声だと理解する。
「……アサシン。マスター……って、その呼び方はまずいよ……」
人混みの中から、雑踏に揉まれつつ這いだしてきたアサシン。
それでいいのか、と言いたくて溜まらない。
「では、なんて呼んだらいいですか? まだ、名前を聞いていないので」
「あー、うん。そうだったね……月島束子。束子でいいよ」
「分かりました! 束子さん」
_,r=< ̄ミ:、_
/// />\ ミ{\
,ィ==彡 ´ _xく}\从ハ: :ヽ
/`ー<{ , ー'て入|:::∠ノ_, Yハ: : :',_
∠(X)、__,\斗=爪l> ' ノ_) r-ヘ: : l::::::`丶、
(::::::::::::::::::::::::: /: ハ`ー=ニン /、_ハ : |:::::⌒\\
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/: 〃  ̄`丶、⌒ヽ:Vヽ|: :|/:::::::::::::-=ヘ:::\
/: :∧ 、 `丶、\'|: :|ー<_:::::::::::::\::ヽ
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|:/ i l \ _{二lニヘ:::::::::::::::>=-::::::::\_ /::::::::
| | \{二lニlニハ:::::::::::{:::::::::::::::::/:::::\__________/::::/:::
「 ̄ ̄`l {二lニlニ∧::::/::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_/::::::::
/ ̄ ̄\〔レ-―-、|__ \\>ヘくX:::::::::::::/:::::::::::::::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´/:::::::::::::
| 「丁`\〕 ∨| \>< ::::::::::/:::::::::::::::::;ィ仁「 `丶、 /:::::::::::::
\_」__L=┘\____}_| / \/>、___/>ヘ/__ ヽ、 /:::::::::::::
\<[0 0] __>、 \l二l二l二lニ\} \ \ /:::::::::::::
∨ \::::フ| / \_ (X) ,>l二l二lニlニン \ \{:::::::::::::
\_二ノ し'´\┃┃}\/ー┴┴┴┘ \ \::::::::::
r‐y' , }!│ ヽ. ヽ::::::::
`て_/_/|_/ \ 丶:::::::..
「……うん。それで、アサシン」
今日はなんとかなったが、今後もこの調子では困る。
束子は改めて、アサシンに念押ししておくことにした。
先ほどの行動を見る限り、アサシンは善性の人間だし、嘘をつけるタイプでもなさそうだ。
だが少々、単純すぎる。
「なんでしょう! 突撃命令ですか?」
ああ、本当に単純だ。頭を抱えるくらいに。
「違うよ……お願いなんだけど、勝手にいなくならないでもらわないかな?」
引きつった笑みのまま、細めで訴えかける束子。
「はい! 分かりました!」
アサシンは腰に拳を当て、真面目な表情で答える。
「これからは、一言言ってからいなくなります!」
「違う、そうじゃないよ」
「二言言いますか! 分かりました!」
「そうじゃないって言ってるでしょ……」
_ /\
/ ̄¨¨¨ ̄l| ,. ⌒ヽ、-、///\
/ l|/ // \ \/〉
| ̄| () __| ,// \ \ /
_| | | | /イ \ /
__,.--,-、. / | | / } _,.イ\ }、
/ / ///_\//:{\_二二___/ /: : : : :.\ / \
' ̄`/ / /二,..ァ'': : : :{:\____ノ /: : : 、: : : : \_/ \
/ / /l//---_ァ: : : : : ∨: ∧: : : l_/: : : : :∨: :.∧: : :、 、
、 / | |_|- 、7/: : : : : : : \: :|: : : :.∨: : : : :∨: : :∨:,: :.、 \
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` | | } | ' {/: : : : : :.:|: :|: :∨ : ∧、: 、|\:{\: :! : !: :∨\:'\ 、
/{ |_// / ;: : : : : : : |: :|\{\: :∧\} ̄\ ̄| : |: : :|:r 、ヽ \ Y
イ |_/ ,' {: : :|: : : : :|: :|_ノ\ 、 ∧ _ | : |: :.リ:| ` //ヽ、 ,
`ー' |: |:.∨: : :T´从 \:」 -≠'´ |: /: /:∧ {/∧ ` ー /
|/| : ∨: :∧{ 、_ノ u /:イ: /: :| ム} マ/∧ ム、
| ,: : :∨: : :\  ̄ ; __ /イ: : j! ∧ ∨/\__/// :
/ : : : |\: : : :〉、 ,.-.:.':.:.:.:Y l|: : :| /'∧ \////// |
_/_、 |: :/ \:」: :>.,..._ 乂__,/ ィ|: :./ー-' } ` ̄ ̄ ´ /
r/∧∨∧ j:/ (_| ||: : : :|-、 |_`¨´ /´ !: :{ー'ー-' /\
,.....--|∧∨/} (_| ||: : :.∧ 、j ` /|: :| \ /: : : : :\
「ところで、マスター」
アサシンが頭上を見上げる。束子がそれに追随すると、独特の香りを含んだ煙が、濛々と市街地の上空を覆っているのが見えた。
今宵は新月、曇り空。元々暗かったから、気づけなかったが……
「酷いね、これは……」
血の臭いも僅かにかぎ取れる。
救急車のサイレンが交互に近づき離れていく。
闇が夜だと言っているのに、喧噪は決して止むことは無い。
眠れない魔法をかけられたように、繁華街は血の臭いに目覚めていく。
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γ ⌒ ⌒ `ヘ
イ,,,, "" ⌒ ヾ ヾ
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( 、、 、 ’'', . . ノ ヾ )
.................ゞ (. . .,,,゛゛゛゛ノ. .ノ ) ,,.ノ........... ........
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戦争が始まる前、水城の若き当主が心配していた状況と……今の惨状は、まさに一致してしまっている。
しかもまだ一日目。
戦争が終わる頃には町が滅びていてもおかしくない。
「ええ、許せません! こんな非道なことをするなんて……」
「うん……」
「やはり、今すぐ犯人を捜し出さなければ! 行ってきます!」
ダッシュしようと腕を振り上げるアサシン。束子はそれを即座に掴む。
「あっふんっ!」
するとアサシン、バランスを崩して足を滑らせ、束子に掴まれたまま宙ぶらりんになる。
この単純すぎる脳構造、そしてこのあんまりな非力さ。
どちらから突っ込むべきだろうか……。束子は一瞬考え倦ねた。
「単細胞生物じゃないんだから! ちょっ、勝手に行動しないでって!」
アサシンはじたばたと暴れるが、手も足も空を切るばかりだ。
(あっ、足がぶつかった)
「束子さんは許せるんですか? このような非道!」
涙目混じりになって、束子をにらみつけるアサシン。
口はへの字に曲がっている。
/ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
/: : : : : : : :/: : : :! : : ヽ : : : : : : :ヽ: : :'.
,':/: : : : :,'|: :l: : : : |: : : ∧: : : : : : : ハ: : :i
j l: : : : :/ |: :| : : :ト : : | ' : ! : : : : : |: : :|
/:.| : l: :/ j:.∧: : : | '; : |u |:∧: : : :j:│ :│
/ : j: :.|:.:|\j/_,ハ : : |ハ: | j斗ヘ|: : ,':,ハ: :|
. 厶イヘ: ト、!Yfえト、 \:|^`Vf乏:ハ !: /:/} }: :|
ヽ{ヘ{ ゝノ ゝ_ノつ |/j/ ノ/: : |
/、ハ/// //// ´ /: : :│
. ,': :ーヘ ` /\/T´| : : : │
i: : : :| ゝ、 / ∠;_ : j : : : : |
|: : : /ヽ> `⌒ヽ\ /| 、`ヾ_: :│
|: : / { {>,_´ '´ ∨} 人 ヽ:|
/ ̄ヽ ヘ 〉 〃 / 厂\
/ ヘ 丶 ∧- -‐/ / ヽ
{ {\ \ |、___ / / / }
| \j\ ヽ|ー─‐/'´ _,..イ ,′
| ヽ \ | / __ '´ // /
「えっとね……許せるとか、許せないじゃなくて……」
「こんな酷いことをした奴を……!
一刻も早く止めないと! 今後、どんなことをやらかすか分かった物じゃないですよ!?」
「そ、そうなんだけどね」
「こんな簡単に、誰かが殺されていくのを良しとするなんて……」
「だからね、アサシン。いいからちょっと、私の話を聞いて」
「……なんですか?」
「確かに、こんな大虐殺をやった犯人は許せないし、捕まえないといけない。
だけど、今、闇雲に走り出して……それで、犯人を見つけ出せるの?」
「見つけます! 意地でも!」
/ \
/ \ハ
,′ ヾ.
; ,イ 1 : ,i ,
__ /{ /| イ j| j: |/ | |
_/ \ | | : ,' | | | /ハ. 八 jレ'| |
//´ ー==ミ、 | | | | 、| |i / }/ 1 从| |
/ ,/ \ | | 八 |个xV,,八 ,′ /´_,,.斗 /| /'^リ l
/ 丿 、 ) | jィl{ ヽ、_| {////ト'ヘ {,,.>'゙{///|/〉| メ〈 /,′ |
_// / _ヽ、 | {i{\i{ ` ̄`" ヽ| "  ̄´ |/〈ノ,.イ !
厂 / } 人_`¨`''ヽ、 ` x=彡| |
〃 / 〃 {'"´ ̄ ̄㍉、 \ / | |
/ / 〃 〃 \ \ ヽ r‐- .._ / | |
{ ,′ 〃 〃 〉 ヽ }:、  ̄ ̄_.. ィ<゙ | |
ヽ{ 〃 〃 / ゙:.. }イ  ̄ ,>汽 7 | ;
', 〃 〃 _,.イ ::. \ / ==| 「 | '゙
ヽ 〃 __ノ j} ヽ ∧== |卜、 | /
_}i、 〃 . :_{ ヾ j} ∨ ∨/_」 | \_ | ,′
_}``ヽ 〃 . : :/ 〃 \ 厂゙Ⅵ  ̄¨` |厂ヽ
_} \_ . : : / / ∨==|! |
「……ちゃんと準備してからの方が、早いと思わない?」
「……」
「……」
ここで話が通じるかどうかが、恐らく今後の運命の分かれ目となる。
束子はそんな覚悟で説得に臨んだ。
(もしここで、「それもそうですね」「いいやり方があるんですか?」とか、来てくれたら……
まだ希望は残されてる。だけど、もし話が通じない系単純ならば……
『それでも気合いで何とかします』!
これが一番マズいパターン、もはや私には制御不可能……)
「……」
(さあ、アサシン。貴女はどっち? 話が通じる系単純か、話が通じない系単純か……)
「 ̄ ̄∧ ,.ィ=-- 、
| o _,|∧_. --. ._///\ \
|-、__ノ |: : : : : : : : : `ヽ/\ _ハ
〉、_ノ: : : :.|: : : : : : : : :ヽ \_}
/: :/: : : :.,: :.:.|:|:!: |: :/: |: : : : .
/: /: : : :_/:_|:/:从、:.∧:_|: |: : : :.
':': ':.:|:-|:/: /|' {: : : :| ´l:/`:.:.|:|: :.',
l:|: |: :|: :},ィtォミ∨:_:」ィtュ、Ⅵ|:|',:|リ
;:|: : |:|: 圦込ソ 込ソヽ|: |:| }'
/:|: /|:|: :| , ,: : ル:,
/:/イ: 从:.ム ムイ: : |
/: : : :|: : : |从、 ´ ` イ: : :|: : :|
/: : : : :|: : : : :|\ ` ーュ´、 : : : j: : : :.
/: : :,.--乂,: : : }/∧ | |,: : : : |:_: :., :.
,: : :./ ヽ: : |/ ト、 ∨、: : : |∧:.| }l
/: :./ 、 ,: :| , ` Ⅵ 、: : :. \:|
,: / Y}: :| :. ∨ ヽ: : . `ヽ
/: { |{: ノ } 、:l \ 、:._ }
/: :/\_,.ィ///丶「: ノ_,.--r-r-、ヽ > 乂: } /
, : / /{///////〈: ノ´ || ∨ `Y´ ̄乂_}l∨/\
/:./ /: :| ̄ ̄`Y/从 || || }///,
,: / ,: : ; ,:{_/ 、 jj / /イ :.
「……なるほど」
-――- _
'"´: : : : : :\: : : : \
/ : : : : : }: : : : : : \=ミ、 ヽ
/: : : : {: : : :|ヽト、:X: : : ∨7ヽ:ヘ
. /: : : |: ∧: : :| ,ィ仁Y\: :j/:| : : Y
| j : : ト、_∧: :Ⅳハ:::ノ ∨` | : : :|
|∧: :.|i仁Y∨ /{: : : |
ハ: 代::ノ ::、 u rヘ : : |
ト:_ゝ 「|: : :| 「その発想は……ありませんでした……落ち着いて……考える?」
| :人 -─ | |: :.:|
| : : lヽ、 / .⊥|: : |
| : : | ` ー‐匕二¨ ̄ |: : |
| : : | 「∧ ,ィ j: : |>'⌒ヽ
| : : | /j/ ∧. /ヽ/: :// '、
| : : |厂{7/⌒ヽヘ/、//: :// \
ヽ: :{|./7/\\V、/ /:// )
rzzzzzzz 、 xzzzzzzz.、
∨ハ .Vハ___ / \\ \\
. /∨ハ l/!: : : : : :/ : 、 \\ \\
/ /:/Vハ__ノ/}: : : : : : : : : :\. \\___ノ ノ
/ : /:/: : \_____.ノ: :ヽ: : : : : : : : :‘. ≧=≦
/: : :}/ : : : : : /:./|: :V人 : '. : : ' : : ∧
/: : :/: : :{斗//}:/¨|: : ヾ{:.\{: : : |: :/人
/: : :/: : : :|:./}'xz!_ Ⅵ: :|V{=ミ、 : :!: : : }ヾ
./: :/:/} 八{ 《 込リ`.人:{ zx:ト、Y:|: :|: :|
/ //:イ: : :|ヾ:{ヽ `弋ソ》'}:从: |、人
/://: : :{: : : :弋_\ ' .〃 : /}/ ヾ:{
/:/ /: : :八: : /: : {:}ヽ ` - イ: : :/ / 「……」
./:/ /: : :/: : ∨: : : |\ \ . <ノ/ハ
/: :/ ./:_:_:/:r_、:_:∨: : | ハ >.fヽ_: /: : /{
./: :/ 〃´ \弋 ∨: :∨ノ | { ハ》{ : /八
/: :/ /,′ ∨ハ. ∨: :{/ ! |、,' |〉|: :|_:_:_:}
./: :/ /:,′ .V〈. ヾ:人 |ヽ .{ヽ〉、:人 ヽ
/: :/ ./ ,′ ヾ{ー '}: : :ヾ ∨ \ハ } '.
.{ : { ./:./ \ \:.人 \ .{: :ヽ ハ |
前言撤回。
彼女は。アサシンはきっと、話にならない系単純だ。
繁華街を包み込む煙よりずっと濃い暗雲を、束子は感じずにいられなかった。
【to be continued……】
斜め上の解答に戸惑った束子だったが、さりとて現実から目を逸らしているわけにもいかない。
とにもかくにもこれは要事だ。
秘密裏に行われるべき聖杯戦争が、こんな風に一般市民を巻き込む形であってはならない。
「とにかくね。今から当てもなく闇雲に探し回るよりも、落ち着いて情報を集めながら、
着実に歩を進めていった方が、きっと早く見つかるし、酷い目にあう人の数も、きっと減る」
束子はアサシンに言い聞かせる。
これは本心だ。焦って適当に探して、下手をすれば無関係の相手に喧嘩を売って……では話にならない。
これだけの惨事を引き起こす残虐な精神の持ち主が複数居るとは考えにくい。
まあ、二組くらいならいるかもしれないが……、
ともかく、今は情報を集める方が先だ。
「それに、軍備を整えておくことも必要だよ。今のままの貴女だと、もしかしたら勝てないかもしれない。
勝てないまでもそこで仕留めきれなかったら、追い詰められた相手は焦って魂食いなんかを始めるかも知れない。
そうなったら、より多くの人が犠牲になるよね? 嫌でしょ?」
,ィ-- 、
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ
{二二二二二二二二二ノ
_. . . :|///|=-- 、|//| ̄ ̄\_\
,. <: : : : : マ/>': : : : :> 、 \ \
,.:': : : : : : : : : ://: : : : : : : : :ヽ:ヽ. `ー'
/ : : : : : : : : : : //: : : : : : : : :.:|: : : : :.
': : : : : : : : : : : // : : ,: : : /: : : |:{: 、: : : .
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|: : : : |: :.∨: : |: :/、l∧: : :.|: :| _ ,.イ: |: |
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/: : : /: : : : : /イ乂匸乂\ー-:ム、 ヽ: }、
,:': : : /: : : : : ,: {/ ̄ ̄\乂\_∨:ハ_}ゝ: ヽ
, : : : :/: : : : : :/:/ \ ー乂:_}\\:}
./: : : :/: : : : : :/:/ \ {从 `ヾ、
「……」
無言で首肯するアサシン。その表情は母親にお小言をしつけられた子供のよう。
その純粋さは、誰の言うことに対しても真摯に向き合える清廉な心の有り様を表しているのだろう。
それを見ながら、束子は胸にナイフのようなものが突き刺さる感覚を覚えた。
今の言葉は嘘だ。
先ほどからの一つ一つの挙動を見る限り、たとえ自分にできるあらゆる軍備を整えたとしても、
このアサシンを通常のサーヴァントにあたらせて打ち勝たせるのは難しいだろう。
なにせあらゆる能力についてどん底だ。
筋力に至っては、如何に多少の強化をしているとはいえ、人間である自分より弱い可能性すらある。
サーヴァントが持つ、神秘に対する耐久力……それがあと少しだけでも弱まれば、
自分ですらこのサーヴァントを倒せる自信がある。
彼女は誰かを助けたいと願った。
ある意味、それは当然なのかもしれない。
だってきっとこんななりでは、彼女は生前も、救えなかったのだろうから。
世の中は、屡々不合理にできている。
これほどまでにまっすぐで、これほどまでに純粋で、
これほど前に清らかな心を持っているこの子に対して、神はその使命に値するだけの力を与えなかった。
否。
まっすぐなのに、持っていなかったのか。
持っていなかったのに、まっすぐなのか。
まっすぐだからこそ、持っていないのか。
持っていないからこそ、まっすぐなのか。
その答は私には分からない。
けれども、不合理であるとは、やはり感じる。
その不合理さを直視せず、アサシンの一面を貶めることで、
その光と闇の入り交じった残酷さから目を背けている自分が、情けない。
束子は、一刻も早くこの会話を終わらせたかった。
周囲を見渡すと、救急車やらパトカーやらがぞろぞろと集まって、混乱も次第に落ち着いている。
まるで祭の後のようだ。
しかし催されたのは血の祝祭。
日陰者の魔術師達が、己の身に余る使い魔によって、
他者を蹂躙し願いを叶えようとするこの世で一番利己的な戦争。
現代の戦争は普通『生き残るため』、受動的に起こるものだが、ことこの戦争においては、ほぼ全ての人間が自発的に参加している。
「じゃ、アサシン。適当に聞いて回ろうか。
このへんには巻き込まれた人も沢山いるし、そうじゃなくても、この光景を目の当たりにして、
諸事情を知っているような人が何人もいるはず。
逆に言えば、ここで暴れていた奴らのことを詳しく知れるのは、今しかないかもしれないよ」
束子はそう言って会話を切り上げ、人の多い一帯へと移動しようとする。
しかし、アサシンは動かない。
「……アサシン?」
「マスター。お話を聞くのはいいんですけど、でも、巻き込まれた人って、穢しているんですよね。まずはその……」
「ああ、大丈夫。勿論そのつもりだよ」
そう言って束子が頭に付けた耳飾りを外すと、それは忽ちに変形しだし……
「……!?」
: : : : : : : : : : : :!-―ヘ: : :ヽ: : : : : : : : :|/: j} : : \
: : :|: : : : : : : : :| ヽ : l: : : : : : : :│: 八: : : : \
: : :l.: : : : : : : : |' _,二二l: :ト、: : : : : : :|.:/: ∧: : : : : 丶
l: :│ : : : : : : : !〃 l: |ヾ : : : : : : |⌒〈 `、: : : : : \
ヽ:.:|ヽ.: : : : : : :|{{ (:::::)∨ }i : : : : : j^ '. ヽ: : : : : : .
'.:{ \: : : : :| ハ : : : : ,'ヽ .} \ : : : : :ヽ
ヽ \: : :| ミ=- _ イ: !:│: ∧ ノ 丶 : : : : i
r::. \| |/j:/|: /ノ' / i : : : : |
u j/ / | : : : : |
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、(二二二), / |:::::::::::::::::::::::::: \___ | : : : : |
\ イ ,|::::::::::::::::::::::::::::::: } :::::::::`l : : : : |
……瞬く間に救急箱の形になった。
「こんなこともあろうかと、常に準備はしているんだ」
__,,.. -‐ '‐- .
, -'": : : : : : :: : : : : ヽ
{: : : ': :.|: :.l | : |:_:.: : : : : .ム
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|: |: |:.| { 从{__」 リ Ⅵ: : 、 : : |
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「で、でっかく……」
「月島の科学力は世界一、なんてね。
さ、応急処置程度になるだろうけど、怪我を治してあげながら話を聞きに行こう」
―――━━―――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______―――――____ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____ ̄ ̄ ̄ ̄―━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
______――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄__
――――― ̄ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
______―――━━――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____―━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄____
一番最初に目についたのは、頭からたらたらと血を流しながら、道路沿いの花壇に座り込んでいる一人の老人だった。
そこは、木の陰に隠れて見つかりにくい場所。
周囲の人も疎らで、救急隊員などもこの近くには来ていなかった。
「お爺さん……」
アサシンがその姿を見つけ、束子がそれに続く。
髪がまったくはげ上がった、よれよれの和服姿の老爺は、その容貌に見合わない可愛らしいデザインのプレゼントボックスを脇に添えて、
目の前に崩れたビルの残骸を呆然と眺めていた。その目は虚ろで、生気が感じられない。
「おじいさん、頭から血が流れてますよ、このままじゃ死んじゃいます!」
死ぬ、は大げさだろう。
アサシンが大慌てで老人の前をあたふたする姿を見ながら、束子は嘆息した。
血が流れていると言っても少量だ。
身体が弱っている老人のこと、何があるかは分からないとはいえ、
あの程度で大事にいたることはまずない。
とはいえ、痛々しい怪我を放置出来るほど薄情な性分でもない。
束子はアサシンより前に進み出て、救急箱からガーゼとテープ、それから消毒液を取り出した。
「この方がお医者様だから、怪我の治療は任せてください! さあ、マスター!
治療をお願いします!」
また余計なことを……そう思った束子だったが、
しかし直接言いつけるわけにもいかない。どこで誰が聞いているとも知れないのだから。
(マスターは止めてって)
念話でアサシンに呼びかける。
「ひゃいっ!?」
―――-
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: : : : : : : : : : ヾ:ヽ
: : :.:∧:.:ト、: : :.:', ヘ、
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\| ((  ̄))ヘ: l |'⌒ハ: :ヽ
 ̄ Ⅵ|) ノ ヽ: \
 ̄ ̄ ̄} u |イ \: \
(人前では束子さん、くらいにして、ね?)
アサシンは念話を使えない。代わりに黙って頷いた。
「さあ、お爺さん。頭を出してください。このまま放っておくと、傷口からばい菌が入りますよ」
`
\ ,,_人、ノヽ
)ヽ ( r-〈`, 三 バシィ!!
- < >─ | ', ',`, 三
) て ! ', ', ',
/^⌒`Y´^\ l ', ', ',
{`ヽ } ', ', ', 三
',´ ヽ / }
', ヽ、_/ /
ヽ /三三
`, 〃
ゝ ,'三
ヽ !三
l l三
| !
しかし、そうやって差し伸べた束子の手を、老人はぱしんと撥ね除けた。
「……要らん」
死んだような目のままなのに、弾く手はやたらと力強い。
束子はその様子に違和感を覚えたが、確かにいきなり現れた女に治療してやると言われてうかうかさせる大人もいないか、と納得した。
「ごめんなさい。たまたま救急箱を持ち歩いていたので、お節介やいてしまいましたね。
でもその怪我、放っておくと悪化するかも知れませんよ。
他に怪我はありませんか? ここにずっといても人通りが少ないので、病院の人も見つけてくれませんよ。
もし立てないようなら、私が救急車のところまで運んで……」
「要らん」
老人はぶっきらぼうにそう言うだけで、まったく動こうとしない。
「……」
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……困ったことになった。
この近くも延焼の被害がそこらかしこに見受けられる。
あまり多くはないが、瓦礫の下敷きになった死体も一つ二つ、目にとまった。
(少なくとも瓦礫からはみ出ている部分は)傷つかずに息絶えていることが、より一層残酷さを際立たせる。
ブロック塀の隙間から垣間見えるデスマスクは、死人の展覧会のようでどことなく不気味だった。
そのほか……
街路樹も一部倒れていたり、壊れた看板が地面に横たわっていたりと、先ほどまでの混乱の残響が、まだありありとこの場所には残っている。
そして、それ故に――――この老人を襲った悲劇の正体が、束子には分かってしまった。気づいてしまった。
この落胆も、そして老人が今何を考えているのかも見当がつく。ついてしまう。
だからこそ、彼女には分からなかった。
こんな悲劇に直面した彼に対し、自分に何ができると言うのだろう?
こんな絶望に直面した彼を、いったいどんな言葉で励ませるというのだろう?
「……」
声を出そうとしたが、出なかった。
でももしかしたらそれは、幸いだったのかもしれない。
声を出して言葉を紡いでも、正しいことを言える気がまったくしなかったから。
...-―-...
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目の前には、少女の姿がある。
まだ十にもならぬ位の、人形のように小さな愛らしい少女だ。
サクランボの髪飾りは塵で煤けていたが、柔肌は白く顔立ちはすっきり整って、
大きくなったらとびきりの美人になっただろう、とても愛らしい顔だった。
ただ一つ、彼女の顔に愛らしくない部分があるとすれば、それは胴体と繋がっていないこと。
瓦礫の中には、首元からぶっつりとちぎれた肢体が埋もれているのが僅かに見えた。
そして彼女の小さな頭は、瓦礫と老人の間にある僅かな隙間に転がっていた。
自分の手がべっとりと血で汚れているのに気づく。
白かったガーゼが赤く染まっていく。
老人の手も全く同じ色だった。
【短いですがここまで】
「要らないってどういうことですか! だったら、死んじゃってもいいってことですか!」
束子が二の句を継ぐ前に、老爺をアサシンの大喊が貫く。
!: : : : : : : :/ |: |: : : : : : : |i: |\: : : : : : : :|
/|: : : |: : :/ !:| !: : : : : : l !:| ヽ: : : }: : :ハ
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!: ',: |: |: /≧ァx、_| ヽ: : : / ノ' _,xィ≦: /: :/: :|
|: : ト|: |i/{ {///卞`vノ\/`Vイ///} |/}/}: :|
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/ |: : :| {:.:{ヽ r‐---‐ ヽ /}:.} |: : : | ヽ
{ |: : :| ',:.:', >、 ` ‐--‐ ' イ /:./ |: : : | }
「こんな怪我、放っておくと死んじゃうってマスターが言ってましたよ!」
言ってない。
「今もお爺さん、見るからに死にそうな顔色です! はやく傷を塞がないと!」
顔色が悪いのは全く別の理由だろう。
その理由は推し量れるが、口に出すのは憚られた。
仮定が真実なら現実は絶望的で、悲嘆と悲哀に塗れている。
今、自分がこうして黙って立っていられるのはあくまで自分がその事実を公然とは知らないからであり、
確認すれば、公然と知ってしまう。
公然と知ったなら、それに対して行動を起こさないわけにはいかなくなる。
だが、どうしたら良いのか分からない。
恐らく孫娘と思われる少女の無惨な死体を前にして、私はこの老爺になんと声を掛ければ良いのだろう?
アサシンはといえば、相変わらず目の前しか見えていないようで、
手を伸ばせば届く距離にある死体には目もくれない。
もしかしたら気づいているのかもしれないが、ともかく興味を示さない。
「……」
老爺はずっと黙り込んでいる。
アサシンの声だけが空を舞い、人目のない裏路地に響き渡る。
「そんな……助かるのに、敢えて自分の命を犠牲にしようだなんて……」
束子が色々と考えているうちに、アサシンの中でどんどんと話がふくれあがっていた。
「どういうつもりでそういうことをなさっているかはしりませんが!
でも、私は……そういうの、嫌いです!」
/ \
/ \ハ
,′ ヾ.
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_/ \ | | : ,' | | | /ハ. 八 jレ'| |
//´ ー==ミ、 | | | | 、| |i / }/ 1 从| |
/ ,/ \ | | 八 |个xV,,八 ,′ /´_,,.斗 /| /'^リ l
/ 丿 、 ) | jィl{ ヽ、_| {////ト'ヘ {,,.>'゙{///|/〉| メ〈 /,′ |
_// / _ヽ、 | {i{\i{ ` ̄`" ヽ| "  ̄´ |/〈ノ,.イ !
厂 / } 人_`¨`''ヽ、 ` x=彡| |
〃 / 〃 {'"´ ̄ ̄㍉、 \ / | |
/ / 〃 〃 \ \ ヽ r‐- .._ / | |
{ ,′ 〃 〃 〉 ヽ }:、  ̄ ̄_.. ィ<゙ | |
ヽ{ 〃 〃 / ゙:.. }イ  ̄ ,>汽 7 | ;
', 〃 〃 _,.イ ::. \ / ==| 「 | '゙
ヽ 〃 __ノ j} ヽ ∧== |卜、 | /
_}i、 〃 . :_{ ヾ j} ∨ ∨/_」 | \_ | ,′
_}``ヽ 〃 . : :/ 〃 \ 厂゙Ⅵ  ̄¨` |厂ヽ
_} \_ . : : / / ∨==|! |
きっと貴女がやった方が、より正しい治療ができるのかもしれませんが……ここは、私にやらせてもらいます」
「……えっ、ちょっと待って、あなた今何を……」
束子が静止する間もなく。
アサシンは一歩前に進み出て、老爺の両手を握りしめる。
同じランクEでも、筋力に比べて移動速度はまだいくらかましなようで、
俊敏な動きに怯んだ老爺は、一瞬動きを止めた。
瞬間、アサシンの右手は彼の手から離されて、傷口を包み込むように彼の額へと伸びていった。
そして手のひらから、ぴゅっ、と水が出て、老爺の頭に降りかかった。
「……」
忽ちの出来事だった。
アサシンの手のひらから飛び出した水滴は老爺の額に降りかかり、彼の傷口へと染みこんでいく。
すると水滴は瞬く間に傷口に開いた皮膚の割れ目を塞いでいき、同時に脳天から垂れる血液を蒸発させていく。
ものの五秒もしないうちに、老爺の傷口は完全にふさがっていた。
「……あ、あなた……」
「これで大丈夫です、お爺さん」
アサシンは老爺ににっこりとほほえみかける。老爺は暫く呆然としていたが、
しばらくするとはっと目を見開き、花壇の塀に頭を打ち付け始めた。
「!? お、お爺さん?!」
「余計なことを! 余計なことを! ああああああ!!!」
何度も何度も、老爺のはげ上がった額が煤けた煉瓦と衝突する。
づん、づん、と、人の身体が傷つけられていく嫌な音がする。
先ほどまでは傍観していた束子も、流石にこれはまずいと思ったか、老爺の所に駆け寄ってその身体を羽交い締めにした。
「落ち着いて下さい! お爺さん、気を確かに!」
_, ,..--- 、
/:,. :': : : : : : :!: : : :>'、
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/: : :/:./:/:/:∧_!__l|:、:.{: : |: :|: ::.
': : :/:{/:イ,-:/ _{_|_八: :.ト,-、: :,: : .
/: : /: :/^Y } 〈必リ-、、_」_}:_|l: :|、}:|
/: : /イ/ | . u / } 、{芯/Ⅵ リ
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,.: : : : :,|: : ,' / {:ノ/ / ̄ 八 : |
,.ィ/: : : : /:|: :, { l-/ /`ー' .イ: : __」
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/:イ/: : :/´ / ー ´ l|:_:_|:/ ア:|
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/: : /: : : :/ -―- 、_,| / 、 ム| ヽ ,ィ ,.:'_,.ィア
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':,:': : : : : /: : : : 、// / { 乂 _,..イ\ \ `ヽ ヽ、 } / ,.- ' - ´`¨ィァ
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「死なせてくれ! いっそ、死んだ方がましじゃあ!」
老爺はばたばたと暴れたが、魔術で強化された束子の手から逃れるのは不可能に近く、両手両足がじたばたと空を切るのみだった。
ああ、もう、勘弁して欲しい。
束子は老爺を捉まえながら、心の中で嘆息した。
どうして自分がこんなことに巻き込まれなければならないのか。
アサシンもアサシンで、よりにもよってこんな面倒くさい老爺に照準を合わせなくてもいいのに、と。
しかしそこまで思い浮かべて、束子は慌てて猛省する。
そんな言い分では、まるでこの老爺が悪のようではないか。
この哀れな老人は、聖杯戦争という利己的な儀式の中でもとりわけ利己的な悪の権化のような代物に巻き込まれた、あまりにも悼むべき被害者だ。
望んで踏み行った道ではないとはいえ、自分もその利己的な儀式の一端を担っている。
老爺に詫び、老爺を助けようとするならまだしも、蔑み、ましてや見捨てようなどと、どうして考えられようか。
顔を平手打ちしたい気分だが、生憎両手はふさがっている。
/ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
/: : : : : : : :/: : : :! : : ヽ : : : : : : :ヽ: : :'.
,':/: : : : :,'|: :l: : : : |: : : ∧: : : : : : : ハ: : :i
j l: : : : :/ |: :| : : :ト : : | ' : ! : : : : : |: : :|
/:.| : l: :/ j:.∧: : : | '; : |u |:∧: : : :j:│ :│
/ : j: :.|:.:|\j/_,ハ : : |ハ: | j斗ヘ|: : ,':,ハ: :|
. 厶イヘ: ト、!Yfえト、 \:|^`Vf乏:ハ !: /:/} }: :|
ヽ{ヘ{ ゝノ ゝ_ノ |/j/ ノ/: : |
/、ハ/// //// ´ /: : :│
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i: : : :| ゝ、 ∠;_ : j : : : : |
|: : : /ヽ> `マ⌒ヽ /| 、`ヾ_: :│
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/ ̄ヽ ヘ 〉 〃 / 厂\
/ ヘ 丶 ∧- -‐/ / ヽ
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| \j\ ヽ|ー─‐/'´ _,..イ ,′
| ヽ \ | / __ '´ // /
「死なせてくれ……死にたい……なんて……そんなの……」
そして背後ではアサシンが何かぶつぶつと言っている。
後でそちらの話も聞いてあげないと。
だが今はそんな余裕はない。兎にも角にも、まずはこの老爺を落ち着かせることが先だ。
「すみません、お爺さん。ちょっと手荒くなります」
羽交い締めにしたまま、束子はぼそりと呟いて、それから、
llliii, llllllli, .゙!lllll| ,,iiilll!゙".,iillllllllll|
lllllll 'llllll .,.'!lll ,,ill!l゙°.,illllllllll!!゙′
llllllli、 '!llll / ` ,,,il!l° ,,iilllll!l゙゙,iiilllli、
llllllll、 .llll ヽ ___ :゙゙゙` ,,iilll!゙゙liilll!!゙゙゙°
lllllllll, .゙! \ _,,,―'''"^_,,,"''i、 ,,il!l゙|llll!゙゙゜
lllllllllli,, ヽ ,,,-‐゙,,,,,iiiiiiiiiilllllllllllllllllllliii,, ‘`″
llllllllllllli,,、 ゙l .i″ .~゙゙゙゙゙!!llllllllllllllllllllllllllllllliiii,,,、
lllllllllllllllllii,,, ゙l!liiiiiiiiiiii,,iilllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll!i、
lllllllllllllllllllllllii,,,、 ゙!lllllllllllllllllllllllllllllllllll!!!!!゙゙゙゙゙゙’ ヽ
lllllllllllllllllllllllllllllli,!、 ゙゙llllllllllllllllllllllllllll゙゜ .゙l, __
lllllllllllllllllllllllllllllllト`'i、 .”゙!llllllllllllllllll!° ゙l ,,,illl
llllllllllllllllllllllllllllllll| `'、、 .゙!lllllllllllll ゙l .,,,illllllll!
lll゙!lllllllllllllllllll!lllllll lii,,、 ゙゙lllllllll, _,,,,,〃 ,,,,iilllllllllll、
゙!li,.゙゙!lllllllllllll .'llllll llllllii,,、 ゙!llllllli, _,,―'"^ ,,,iillllllllllllllllllll
: ゙llL .゙゙l!llllllli、 ゙!lll llllllllll'y ゙゙゙!!!l←'''"゛ ,,illlllllllllllllllllllllllll
.゙゙l, .゙゙゙!lli,、.゙lll .lllllllll|.liiii,、 .'=n,!-,,,ッyuii〟 .,,,iillllllllllllllllllllllllllllllll
.゚li、 ゙゙!ll、'!li 'llllllll |lllllllii,,,  ̄` .,,,,,iiillllllllllllllllllllllllllllllllllllll
.″ ゙゚・ .゙・ 'l!!!!".!!!!!!!!!l!‐ 'l!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!°
かぷり。
犬歯を鋭く突き出して、老爺の首筋に噛み付いた。
「むぐっ……なにをして……ぇ……」
ぎょろりと目を剥いて首を捻る老爺だったが、程なく意識を失った。
がくりと項垂れる彼の頭部からは、最初より多くの血がだばだばと流れ出していた。
束子は口を離すと、彼の身体をそっと塀の上に寝転ばせた。
犬歯の中に入れておいた睡眠薬。自衛のためにと備えておいた代物が、まさかこんなところで役立つなんて。
そう思いながらティッシュを取り出し、口の中をぬぐう。放っておいたら自分まで意識を失ってしまう。
「あの、マスター、今のは……」
アサシンもその様子を見ていたようで、ぽかんと口を開けて束子を眺めていた。
「ああ、これはね。……うん、ちょっとした手品みたいなもの」
「……そ、そうなんですか……?」
「うん。なんにせよ、このお爺さんの傷を治療してあげないとね。
アサシン、お願いしていいかな?」
「えっ?」
アサシンは目を丸くした。何故自分が、と言いたげだ。
「でも、マスターはお医者様ですし……」
「外傷は専門外だし、それにアサシンの方がきっと上手にできると思って」
その言葉に間違いはない。
先ほどのアサシンが出した水は、老爺の傷を一瞬にして治療して見せた。
あの快復力は、自分が持つあらゆる手札を上回る。
まさにサーヴァントがやること、と言ったところだろうか。
スキルなのか、それとも生来の能力なのかは分からないが。
「そ、そうですか……?」
アサシンは戸惑いながらも、指示通りに老爺に近寄って、再び手のひらから出る水を振りかけた。
またしても彼の傷は、水が染みこむと同時に癒えていく。
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「は、はい。あまりの大怪我には対処できませんが……このくらいの怪我なら、簡単に。
あと、飲めば元気になりますよ」
言われてみれば、水を振りかけられてから、老爺の肌色に多少血色が増した気がする。
便利な水だ。
聖杯戦争中に少し拝借して、瓶詰めにして取っておけないかな、そんなことすら思い浮かんだ。
聖杯戦争中にあって、恐らく戦争に似つかわしくない能力。
大怪我に対処出来ないというのがどの程度かは分からないが、恐らく戦闘に活かすのは難しいのだろう。
でも、そんな能力だからこそ、ひたすらに平和の象徴であれる。
聖杯戦争初日から、港湾に溜まったヘドロのような血なまぐささを味わっただけあって、
束子にはそんなアサシンの優しい力が、一種の癒やしのようにも感じ取れた。
「素敵な力だね。貴女の優しさが良く分かるよ」
/ . . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ、
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∧:l: : : :l : :L_」: L_ _, \: : :|レ'´ Vハ: : : : N: :: :.',
!: :l.: : : l: :.l l:/ \| イィ 示ミト、: : :.ハ: ::: .', そっ、そうですか!? あ、ありがとうございます
!: :l: : : :l: :.l 〃示ミヽ {.:.:.:.:.:i } ト、: l ',: :: ::',
l : :.l: : : :ト、l l:l l:.:.:.:.:. } 廴.:。ノノ lハ l ',: :: :.i
l : :.ト、: : V リ ヽ. .:.:ノ ´  ̄ l )V i: :: :.l わ、私の『宝具』なんか、どうせたいしたことないと思ってましたから……
l: : :Lヽ: :.ヽ. `¨´ ,.::: //// uレ'! l: :: :.l
l: : : :l{ い\ ////// ノ ノ l: :: ::l
l: : : :l \ヽ(_ _ 、 / !:: :::l まさか、褒められるなんて!
l: : : :l `ー`ヽ、 、 _」 / l::. :.l
l: : : :l 丶、 _,. イ_ /⌒ヽ、: .:l
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l: : : :l ノ  ̄ `7 ⌒ ト、 {.:_」.ヽ \ これしかないからどうしようとか思ってましたけど、良かったです!
l: : : :レ' ⌒ヽ、 __,.イ〈 /\__」 \{.:_」: :ヽ ヽ
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/\/l人 マ{ |!、:.〉 /: : `¨¨{/// ':.
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――――今何か、聞き捨てならない言葉が聞こえたような……。
【to be continued……】
思わず耳を疑った。
頭の兎耳を外したから、耳が悪くなったかとも思った。
……あれはただの飾りだけれども。
「えーと、アサシン? 今、『宝具』って言った?」
「はい、言いました」
「それだけ?」
「はい、これだけです」
「能力は?」
「簡単な傷なら治せますし、それに元気になりますよ!」
「他には?」
「……」
黙り込むアサシン。
束子は悟った。
この聖杯戦争、早いこと切り上げて安全圏に逃げないと、死ぬ。
__,,.. --- 、_
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: / // \//\ {l {l /: : : : :.:|: : |: : |
「えーと……」
あまり直視したくない現実が、土砂崩れじみて襲ってくる。
家に帰ってから落ち着いて考えるとして、今はもう疲れた。一刻も早く忘れたい。
何か話題を変えよう、変えようと思って、束子は周囲を見渡した。
すると一番に飛び込んできたのは、あの無惨な少女の生首……駄目だ、余計に駄目だ。
「と、とりあえず、お爺さんの怪我は治ったみたいだから……次行こう、次」
そう行って束子は喧噪騒がしい大通りへと歩み出す。
老爺にもアサシンにも目もくれない。焦りや申し訳なさ、恥ずかしさで一刻も早く、この場を離れたい気分だった。
加えて、この場を離れたい、と自分が思っていることそのものが恥ずかしくて、さらにいたたまれなくなる。
悪循環だ。この場にいても良いことは一つも無い。
「ああっ、待ってくださいよマスタ……へぶっ!」
アサシンを置いて勝手につかつかと去って行く束子を、慌てて追おうとしたアサシン、道路の縁に足を引っかけて躓いた。
音で気づいて振り向いた束子は、げんなりとした表情でアサシンに手を差し伸べた。
「……立てる?」
「あっ、はい! 大丈夫です!」
いったいこの先、このサーヴァントでどうやって生き抜けばいいのだろう。
空に濛々とあがる硝煙がこの先の未来を示しているような気がして、束子は僅かに噎せ込んだ。
―――━━―――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______―――――____ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____ ̄ ̄ ̄ ̄―━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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――――― ̄ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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―――━━―――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______―――――____ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____ ̄ ̄ ̄ ̄―━━― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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――――― ̄ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄______ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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人気の少ない一帯を抜けて開けた場所に着くと、既に僅かながらこの騒ぎが収束しつつあるのが分かった。
野次馬の数は疎らになり、怪我人も既にあらかた運び出されたようで、見渡しても殆ど見当たらない。
しかし、それはあくまで『騒ぎが収束しつつある』ことを表すのみに留まり、
決して『事態が収束しつつある』ことを意味しなかった。
如何に怪我人が減っていったとしても、それだけで野次馬が減るわけではない。
興味本位、物見遊山で顔を突っ込む輩が目減りしたのには、それ相応の理由がある。
束子はその場所に辿り着いた途端に、その理由を理解した。
怪我人や倒れた子供を運び出していたのは、病院の人間ではない。
救急車ですらない
周囲一帯は誰が貼ったとも知れぬ紫色の結界に覆われて、装甲を身に纏った覆面の兵士が、
ある二人の男を囲って構えている。
一人、髭面の青年。一人、スポーツ刈りの少年。
一見、どこにでもいる普通の若者に見えるその二人が、重厚な装甲に身を包んだ兵士たちを顎で使っている様は異様の一言。
「貴方たちは……!」
その姿を見たとき、束子の口から思わず声が漏れ出して、そして男達に気づかれる。
少年は興味なさそうにそっぽを向いたが、青年の方はにこやかに微笑み、兵士の中をかき分けながら束子の元へと迫ってきた。
「……ああ、こんばんは。監督役として出会うのは、初めてになるな」
独特のねっとりとした声が耳元から滑り込み、ぞわぞわと、背筋の凍るような感覚が訪れる。
この青年のことは知っている。以前に1度会っただけだが――――
「今回の聖杯戦争で監督役を務める、陽向シゲルだ。よろしく頼む」
――――出会い頭、近寄ってはならない存在だと悟った相手だ。
陽向教、なる新興宗教がこの町に侵入してきたのは、今から約2年ほど前。
キリスト教カトリックの流れを汲む教団と言われていたが詳細は不明で、
海沿いの小高い丘に教会を建てると、そこを拠点として徐々に勢力を伸ばしていった。
その教団の若き教祖がこの男、陽向シゲルである。
自ら神の手を持つ男だと自称する彼は、信者相手に『奇跡』なる怪しげな儀式を行うことで、
瀬分町の中に自らの勢力を漸増させていた。
どうも話を聞く限り、その『奇跡』というのは性的な『奇跡』らしく、
『奇跡を体験した』と語るのは、専ら女性だというのが胡散臭い。
これは束子の勝手な予想だが、あの陽向シゲルという男は性技に卓越しており、
それで女性を次々に落として、教えではなく技術によって信者を拡大しているのではないだろうか。
否、それならばまだ良い。あまり勧められたことではないが、他人の事情だ。
踏み入ることではない。
だが、もし陽向シゲルが魔術を、女性を落とすために特化した魔術を習得していたなら?
魔術師が自然と集まる傾向にあるこの瀬分町という町。
そこに突如現れた正体不明のカルトの教祖が魔術を使えたとしても、何ら不思議なことではない。
もしそうなら、神秘の秘匿という観点においても、非人道的行為という観点においても、ゆゆしき事態だ。
束子自身、いくら純粋な魔術ではないとはいえ、魔術と科学のハイブリッドのような術式を医療に少し使用している。
よって前者についてはあまり咎められる立場ではないが、後者については、束子はことのほか拘りが強い。
幼い頃からこの町と親しみ、今は町医者として町の一部のようになっている。
この町の守護者たる水城家とも懇意にしている。
そんな彼女にとって、町を侵食し、破壊するような行いは、断じて許せるようなものではなかった。
だから、彼女はまず彼のことが嫌いだった。この上なく嫌悪していた。
しかし、あるとき彼女は偶然、その男と一対一で接することになった。
その邂逅は一瞬だったが、その経験は彼女のシゲルへの感情を、嫌悪から畏怖へと変化させた。
彼の言葉に、ではない。
彼の行動に、でもない。
彼の心、など分からない。
シゲルのことは、まだ何も分からない。
だが、この男には関わってはならない、と―――――彼女の本能が全力で警鐘を鳴らした。
そして今、その危険人物は彼女の目の前に立っている。
少し軽薄そうなだけの、人畜無害な皮を被って。
「あんたも聖杯戦争のマスターなんだったか? 幸運を祈ってる」
彼は、そう告げた。
恐らく嘘偽りではないだろう。本心からの言葉だろう。
だからこそ恐ろしい。
「……」
「俺も監督役として忙しくてね。ところで、実はこの後は少し時間が空いているんだが……
今後は更に忙しくなる。その前のつかの間の夕食だ。
もし許されるなら、あんたみたいな美人とご一緒させて貰えると嬉しいんだけど……どうかな?」
「……?」
「ああ、勿論金は俺が出すぞ」
「い、いや……」
驚くほどナチュラルに口説いてきたので、一瞬束子は、彼が何を言っているのか理解出来なかった。
まさかこのタイミングで、そんなことを言うのか、普通?
いや、目の前の相手がいわゆる普通から逸脱した価値観を持っていることは重々承知していたが、
だからといって、まさか、こういう方向に逸脱しているとは……。
「ああ、もしかして恋人がいたか? それは済まなかった。よく考えたら、こんな美人を世間が放っておくはずがないか。
ちなみにその恋人とは何ヶ月? 倦怠期になってない? 仲は良好?」
「えっ、いや、恋人がいるから渋ってるとかそういうのじゃ……」
「恋人のことはどうでもいい? 良くないな、そういうのは実に良くない。
契りを結んでいる相手のことは大切にしないと、正しい愛は生まれないぞ!」
「えっと、そうじゃなくて、そもそも恋人がいな……」
「いない!? ああ、それはなんたる勿体ないことを!
恋人がいないなら直ぐに作るべきだ! 俺がなってやってもいいが、生憎俺は手が足りない。
なんならうちの信者から、相性の良いのをあてがおうか?」
「い、要らない、です。余計な、お世話……」
「心配するな。俺の慧眼を信じてくれれば、抜群の相性の男を調達してやる!
そうだな、あんたみたいな体型なら、男のカリは長い方が……」
「――――ちょっと待ってください。一体何の話を……」
「ん? いや、身体の相性の話だが」
刹那。
シゲルの顔面に食い込む、束子の全霊賭けた正拳突き。
魔術によって強化されたその一撃はシゲルの身体を吹き飛ばし、彼を兵士の輪の中へと弾き出した。
――――思っていたほど、この男は危険ではないのかもしれない。
だが、まともな価値観を有していないということに関しては、予想は間違っては居なかったようだ。
「マスター!? いったい何をしているんですか?」
いつの間にか背後に来ていたアサシンが目を丸くしていた。
「……アサシン、あの男には絶対に近づかないでね」
そういって、吹き飛ばされていった放物線の先を指さす束子。
「……どうしてですか?」
「なんでって、それは……」
「?」
「……汚染、されるから」
【to be continued……】
多分このまま放置すると一ヶ月経つので、一応生存報告……というか、続行意思報告をば。
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