「あなたは生きていますか?」(18)
さぁな
「では死んでいると?」
知らん
「何か感じますか?」
何も感じない
「どういう状況かわかりますか?」
知らん
ただ……俺は事故に遭ったんだ
「……そうです」
ここは病院なのか
「はい」
逆に質問だ
俺は死んだのか?
生きてるのか?
「………それを決めるのは、あなたです」
じゃあもうひとつ
何であんたはそういう質問ばかりなんだ?
「お答えできません」
なぜだ
「あなたの運命を左右してしまうからです」
……意味がわからん
「わかるときが来ます」
絶対か
「それを決めるも、あなたです」
……
この話はやめよう
「はい」
まて……今俺はベッドの上なのか?
「いえ」
どこにいるんだ
「お答えできません」
そればっかりだな
もういい、腕が痒い
掻いてくれ
「残念ながら……事故で両腕は……」
そんなことはないはずだ
感覚がある
「最初は皆、そのような感覚です」
……
じゃあ足だ
足の裏を掻いてくれ
「残念ながら……」
足もないのか?
「はい」
これじゃあ死んでるのも生きてるのもわからん
「それはあなたが決めることです」
なんなんださっきから!
俺はどうなったんだ!
「お答えできません」
ふざけるな!
もういい!迎えを寄越せ!帰る!
「……」
おい、何か言え
「残念ながら、その御体では……」
「そしてあなたが事故に遭った日より、約150年経っています」
なんだと!?
それじゃあ……
「恐らく、親戚も、兄弟もあなたを知りません」
……死んだのか?
いや、こうして会話してる以上………どうなんだ?
「……お答えできません」
あぁもうどうなってるんだ!
こんなに頭に血が昇ったのは初めてだ!
「……お言葉ですが、あなたは今、血は流れておりません」
……!?
「ですが………」
……なんだ……なんなんだ!
「……」
なぁ……答えてくれ………俺は……………死んだのか?
「……それを決めるのは、あなたです……」
クソッ!
「あなたが死んだ、生きてる、それは私共が言えるようなことではありません」
私共………ここにまだ人がいるのか!?
「…はい」
声を……声を聞かせてくれ
「出来ません」
なぜだ!
「複数の声を認識できる脳の部分が……ないのです」
なっ……
「今、あなたに別の誰かを相手させたとします」
「結果、あなたは情報処理が出来なくなり……………」
なんで……なんでそこから先をいってくれない……
「…申し訳ありません」
「今一度、お聞きしてもよろしいでしょうか」
……
「あなたは生きていますか?」
「それとも、死んでいますか?」
……
………死んでるも同然だ
「……」
こんな訳のわからん状態で、脳も、手も、足もない
死んでるも同然だ!
「では……死んでいると……?」
あぁ……
「仮に、生きる希望があったとしても……」
何度も言わせるな!
俺は死んでる!
医学、科学が発達して霊と交信が出来るようになったんだろ!?
「……それがあなたの答えですか」
ああ!
「……失礼します」
―――プツッ
bad end
>>8
「今一度、お聞きしてもよろしいでしょうか」
……なんだ
「あなたは生きていますか?」
「それとも、死んでいますか?」
……わからん
「焦らなくてもいいんです」
「ゆっくりと、考えてください」
……すまない
「いえ」
……
……
…………………………
……なぁ
「はい」
……もしも……もしもだ
「はい」
……俺が脳が無い状態だとする
でも俺は会話してる
……これは生きてるの内に入るのか?
「……何とも言えません」
「ですが、脳が全て無いわけではありません」
……少ししか無いのか
「……事故が酷かったようで……」
……
お前はなんで俺に話しかけてくる?
「……仕事……とはいってはなんですが……」
だろうな、じゃなきゃこんなのに話し掛けたりしない
「でも、あなたと話すのは楽しいです」
脳が少ししか無いのにか?
「はい」
変わったヤツだな
「よく言われます」
はは、そうか……
……
……俺も楽しいな、こんな会話をするの
「約150年振りですからね」
そうだな、そうなんだよな……
……またこんな会話がしたいな……
死ぬのは嫌だ……
「……」
さっき聞いたな?
生きていますか?って
「はい」
……その答えだ、俺は楽しみを感じた、会話した、それで希望を感じた
仮にお前しか話し相手がいないとしても、それでいい
希望があるってことは生きてるってことだ
俺は……生きている!
「……それが答えですね」
あぁ!もう変わらん!どんな姿になろうとも、俺はまだ生きている!
「……わかりました」
「おめでとうございます……」
―――
「教授、聞きましたか?」
「あぁ、この人はまだ生きる希望がある」
「私達にもやりがいがあるもんだ」
「そうですね……医療が進歩したお陰で、こうして脳だけの存在となった方とも会話ができる……」
「そうだな、よし、早速身体を造るんだ」
「この人が生きる意欲を失わないうちにな」
「はい!」
2xxx年
時代は急激な進歩を遂げた
水槽のなかに浮かぶ、1つの脳は心なしか喜んでるようだった
―――俺はまだ生きている!
こうした生きる意欲があるものは、身体を造られ、また世界を踏める
だが生きる意欲が無いものは……
true end
参考元、星新一の本
と言うか軽く変えただけなんですけどね
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