勇者「女神から能力を授かった」(1000)

――――うしゃ…。勇者よ…。私の声が聞こえますか。

女神「私は女神です。この世界を創造したもの…」

女神「かつて封印された滅びの神が、再び甦ろうとしています」


女神「滅びの神が復活すれば、全ての生き物は死に絶えるでしょう…。復活を止めなければいけません…」

女神「その為には、滅びの神の創り出した、魔物の王を倒さなければいけません…」

女神「勇者よ…魔王を倒しなさい…。かつて、伝説の勇者がそうしたように…」

女神「そのための力をあなたに授けましょう…」

勇者の家。

勇者「……という夢を見たんだが」

ヴゥウウゥン……

勇者「……なんだ、これ? 右腕が変な機械になってる?」

勇者「……これって、姉ちゃんが夜な夜な使ってる大人のオモチャなんじゃ……」

…………

勇者「ぎゃあああああ!!」

うるさいわよ!

勇者「やべっ、下に姉ちゃんがいるんだった」

勇者「これ、どうしたもんかな。いや、実はそれっぽい外見だけで、実は伝説の武器とかじゃ?」

ヴゥウウゥン…………

勇者「いや、絶対に違うよ! これどう見ても巨大なバイブじゃん!」

静かにしなさい!

勇者「…………」

勇者「どうしよう…取り敢えず包帯を巻いておくか…」

勇者「……振動していてめちゃくちゃ巻き辛い」

・・・

勇者「どうにか巻き終えたぞ……」

ヴヴゥン……

勇者「今日も稽古だけど、利き腕がこれじゃ剣も握れないし…」

ガチャッ

勇者姉「アンタ、さっきからうるさい…って、その腕どうしたの?」

勇者「ああ、ちょっと……痛めてね」

勇者姉「大丈夫なの…? お医者様のところに行きましょう」

勇者「いや、大丈夫だよ、折れてるわけでもなさそうだし……」

勇者姉「自己診断しないの! そういうのは危ないのよ! さっ、早く、行くわよ!」

勇者「いや、その……」

ヴゥ……

勇者姉「ん、なんか揺れてない?」

勇者「うっ……あっ、け、稽古があるから行ってきます!」

勇者姉「あ、ちょっと……!」

勇者は家を飛び出した!


家の外。

勇者「勢いで出てきたものの…どうしようかな」

「そこのお前」

勇者「はい?」

「間違いないか?」

「ああ、神託の証が光っている。こいつで間違いないな」

「ふうん、こんな冴えないガキがな……」

「俺の方がまだ強そうだな」

勇者(なんだ、こいつら?)

勇者「…何か用事でも?」

「私たちは勅令で神託を受けた勇者を迎えに来た」

「この神託の証によると、どうやらお前らしい」ぺかー

「そういうわけで、私たちと来てもらおう」

勇者「え、ちょっと」

「さっさとついてこい」

勇者(扱いが悪いな……)

東国城・王の間

勇者(初めて来たけど、城、立派だなあ)

東王「来たか。神官よ、この者が勇者で間違いないか」

神官「はい。大いなる女神の加護を彼者から感じます」

東王「ふむ! 昨日の神託は本物であったか」

勇者(王さまも夢で女神さまに会ったのか)

東姫「……」

東王「勇者よ、よくぞ参られた」

勇者「は、はい」

東王「呼び出したのは他でもない。近頃、魔物との戦いは苛烈を極めている」

東王「そこで魔物の親玉である魔王を倒して欲しいのだ」

東王「当然だが、支援もするし、倒した暁には褒美をやろう。引き受けてくれるな?」

勇者(…すげえ急な話だ)

勇者(……でも、俺は魔物から、姉ちゃんや村のみんなを守れるようになりたかったんだ)

勇者(魔王を倒せば、きっと平和になる。そうすればもう姉ちゃんが哀しむこともないはずだ)

勇者(これはまさに天啓なんだ。…俺が魔王を倒すんだ!)

勇者「俺が、俺が必ず魔王を倒して、世界を平和にします!」

東王「うむ、頼んだぞ。……ところで、女神の力をわしに見せてくれんかの?」

勇者「……え?」

東王「女神より何か力をいただいたのだろう?」

勇者「あ、はい、一応…」

王「その力を実際に見て信ずるに値するか確かめたいのだ。こちらも相応の援助をするつもりなのだから、それくらいいいだろう?」

勇者「え、えーと……」

神官「ふむ、その右腕から、凄まじい神の力を感じます」

勇者「う……」

東王「何をしている。早く見せい」

勇者「……」

勇者は右腕の包帯をほどいた!

ヴゥウウウウゥン…………

東王「…………」

神官「…………」

東姫「…………ぷっ」

東王「き、きさま、わ、私を愚弄しに来たのだなっ!」

勇者「そ、そんな! 違います!」

東王「このような不敬は初めてだっ! 其奴を捕らえよ! 処刑しろ!」

ザザザッ!

勇者「なっ……」

神官(確かに神の力を感じるんだが、これは不都合だ)

神官(…東王が短小包茎のせいで、妻とはセックスレス。妻は大人のオモチャで性欲を満たしている)

神官(そんな醜聞が飛び交っている中で、これだもんな。そりゃ、東王もキレるわ)

神官(少年には悪いが、俺もまだ職を失いたくないしな)

神官「……あの包帯で誤魔化していたのです! どうやら、あの包帯は魔の力を隠し、神の力に見せかける呪具のようです!」

勇者「はあっ!?」

東王「ゆ、許せん。無礼者め! この場で斬り殺せ!」

東姫「お待ちになって、お父様」

東王「む!」

東姫「何もそこまでする必要はないじゃない」

神官(姫さまナイス! 流石にこれで処刑されたら、私も寝覚めが悪い)

東王「…ならば国外追放じゃ! 二度とこの国に、足を踏み入れさせるな!」

勇者「そ、そんな……! 神託を受けたのは本当だ!」

ヴゥウウゥン……

東王「ええい、黙れ黙れ! 早くしろ!」

勇者は捕らえられた!

勇者「くっ、離せ!」

抵抗むなしく、勇者は追放の刻印を顔に焼き付けられた!

ジュウウウッ!

勇者「がああぁぁああぁ! いだいっっ! いだいぃぃ!」

勇者は悶え苦しむ!

勇者は気絶した!


ガタガタ…

勇者「……ん」

兵士「目覚めたか。災難だったな」

勇者「ここは……?」

兵士「馬車の中さ。お前を国外まで運ぶための」

勇者(ああ、そうか。俺……)

勇者「……姉ちゃんは、どうなるんだ?」

兵士「他人の心配してる場合かね…」

兵士「…財産は没収されるから、家族は路頭に迷うだろうな」

勇者「そんな……」

勇者(姉ちゃん……)

――――――――

お母さんもお父さんもマモノにころされちゃった……ひっぐ……。

『わたしがお父さんとお母さんになるから! だから泣かないで! ほら、笑って! 笑顔!』

無理だよ…。

『無理やりでいいの! ほら、にっこり!』

…こう?

『そう! そうすれば今は無理でもきっと笑えるようになるから!』

…うん。姉ちゃんは凄いや。

『当たり前でしよ! これからは私がアンタを守るんだから!』



『ひっぐ……お母さん……お父さん……寂しいよ……不安だよ……』

――――――――

勇者「……ちくしょう」

兵士「……着いたぞ。降りろ。」

勇者は馬車を降りた!
勇者は手枷を外された!

兵士「このまま西へ真っ直ぐ行けば、中央国に出る」

兵士「…だが、どこに行こうとその追放の刻印がある限り受け入れては貰えないだろう」

兵士「というか、腕がそんな化け物な時点で、救いようがないけどな」ハハ…

勇者「……」

兵士「ま、強く生きてくれ」ガタガタ

勇者「……」

勇者は西の方角へと歩き始めた!

勇者「…………」

勇者は立ち止まり地面にうずくまった!

勇者「……これから、どうすりゃいいんだ」

「あなたが選定を受けた者ですね」

勇者「……!?」

勇者が顔を上げるとそこに天使がいた!

天使「初めまして。女神さまの使いで降臨しました」

勇者「……何の用だよ」

天使「…実はですね、女神さまは手違いをしてしまったのです」

勇者「手違い?」

天使「非常に聞き苦しい内容なのですが……」

――――――――

女神「ああー、そろそろ干渉しないと下界滅んじゃうわ」

女神「でもその前にスッキリしておこー。オナニーは心の洗濯ね!」

天使「…女神さま、それ何回目ですか? もっと早い段階で手を打てば、魔物たちの勢力がここまで広がることもなかったんですよ。下界の者たちが可哀想じゃないですか。大体、以前もですね……」くどくど

女神「あー、分かった分かった。ほんと天使ちゃんて小姑みたいだよね」ハアァ…

天使「私は女神さまや、下界の者たちのことを考えてですね……!」

女神「わーった、わーった。勇者を選定して、力を与えて来ますー」ヤレヤレ…

天使「もう……」


・・・

女神「大きな過ちを犯した。何てことなの」

天使「どうしました?」

女神「勇者としての力を授けるはずが、私の自慰用の能力を授けてしまった。あれがないと、最高のオナニーができない」

女神「うがああぁぁああ! やっちまったぁあああ!」ゴロゴロ…

天使「いや、知りませんよ」

女神「バカヤロー! 」バキッ

天使「あうっ! な、何するんですか!?」

女神「最高のオナニーができないことがどれだけの痛手か分からんのか!? 最高のオナニーもせずに最高のパフォーマンスは発揮できねーんだよ! 天地創造7日目に休息? オナるに決まってるだろうが! むしろオナニーのエッセンスとして世界を創造したんだっての! 世界は私の最高のオナニーのために産まれたんだよ!」

天使「……」

女神「アレには私の7分の1もの力が秘められているのよ…。最高傑作だったのに…」

天使「いや、力の配分おかしいでしょう!?」

女神「うるせえ! オナニーもしないような薄っぺらい生き方しかしてない奴の言葉など聞きたくないわ!」

天使「ひどいっ!?」

女神「そういうわけで、天使ちゃん、私の能力を回収してきて!」

天使「うえぇ……」

女神「あー、やる気出ないなー。別の人間にちゃんとした勇者パワーあげるの面倒だなあ」チラッチラッ

天使「……分かりましたよ。回収してきます」

女神「さすが天使ちゃん!」

――――――――

天使「こういうことがありまして、ここに来たわけです」

勇者「…何だよ、それ。そんなアホみたいな理由で、俺は右腕をバイブにされて、国を追放されたのか?」

天使「……申し訳ありません。本当に上司が迷惑かけてしまい申し訳ありません」ペコペコッ

勇者「…………」

勇者「どうやって能力を回収しろと」

天使「…力はあなたの魂と結びついているので、その…肉体と魂を離さなければいけません」

勇者「……俺に死ねと」

天使「…ええと、率直に言ってしまうとそうなります」

勇者「ふ、ふざけるなよっ! 俺は絶対に死んでやらないぞ!」

天使「まあ、そう言うのが当然ですよね…。大変申し訳ありませんが強引な手段を取らせてもらいます」

天使は魔法を唱え始めた!

周囲の大気が大きく揺れる!

勇者「うげっ!?」

天使「究極破壊魔法!」

莫大なエネルギーが一点に凝集し、勢いよく爆散した!

辺り一面が消し飛んだ!

天使「やはり下界だと制御が難しいですね…。それにしても、酷いことをしてしまいました」

油断した天使の背後に、ピンク色の物体が飛んで来る!

天使「えっ!? きゃあっ!」

天使の背中に巨大なピンクローターが直撃した!

勇者「一応、女神さまの力だけあって凄い耐久力だ。それに大きさも自在で、変化もする」

天使「……」プルプル…

勇者「俺だってそう簡単には負けられないんだ」

天使「んあああああっ……!」ビクッ

勇者「……大丈夫?」

天使「い……」

勇者「い?」

天使「イクぅううううううぅぅぅッッ!」プシャァッ

勇者「……え、え?」

天使「…………」ピクピク

東国・西の森。

パチッ…パチッ…

天使「……最低です」グスッ

勇者「わ、悪かった。あんなことになるとは思わなくて」

天使「もうお嫁に行けません…」

勇者(天使って結婚するのか?)

天使「堕天してしまったし、どうすればいいんですか…?」

勇者「……堕天?」

天使「天使は汚されると翼を失い、天上界に帰れなくなるんです」

勇者「……そうなの?」

天使「翼、なくなってますよね?」

勇者「う、うん。確かに」

天使「…責任とってください」

勇者「せ、責任?」ダラ…

天使「……冗談ですよ。むしろ償わなければいけないのは私たちの方です」

勇者「…いや、そんなことないよ。君は巻き込まれた側じゃないか」

天使「…そんなこと」

勇者「それに、帰るところに帰れないのは同じだろ。似た境遇同士、仲良くしよう」

天使「…………」

勇者「あ、お腹すいてないか。食べられそうな木の実を少しだけ採ってきたから食ってくれ」

天使「…それじゃあ、有難くいただきます。あなたは?」

勇者「俺はさっき食べたから大丈夫」

グウゥ…

天使「……」

勇者「…あはは、参ったな」

天使「ああ、もうっ! どれだけお人好しなんですかっ! その腕で木の実を集めるのがどれだけ大変なのか、こうして火を熾すのがどれだけ大変か、想像がつかないとでも思っているんですか! それなのに、平気な顔して、自分の空腹もガマンして…もう、もう…っ!」ボロボロ

勇者「な、泣かないでくれよ」

天使「こんなお人好しを不幸な目に合わせるなんて、最低です!」グスッ

勇者「分かったから、落ち着いてくれ」

天使「だって、だって……!」

勇者「ほら、深呼吸して。そして笑顔、笑顔」ニッ

天使「この状況で笑えませんよ…」

勇者「まずは形だけでいいさ。そのうち本当に笑えるようになる」

天使「……こうですか」ニコッ

勇者「そうそう。まるで天使みたいだ」

天使「……もう」

勇者「ははは」

パチッ…パチッ…

天使「これからどうするつもりですか?」

勇者「……少し考えたんだ。俺は、大切な人たちを守りたい。けれど、もう大切な人たちのそばにはいられない」

パチッ…パチッ…

勇者「だけどさ、さっき君の魔法を防いだ時、このふざけた力も何か役に立つかもしれないと思ったんだ」

天使「…………」

勇者「…俺、魔王を倒そうと思う。多くの人を守るために。かつての伝説の勇者みたいにさ」

天使「…それなら」

勇者「ん?」

天使「それなら、私も手伝います。勇者さま、あなたを支え、あなたが魔王を倒す手助けをします!」

勇者「……ありがとう」

天使が仲間になった!

東国・勇者の故郷。

勇者姉「……」

剣士「……お姉さん、お風呂空きましたよ」

勇者姉「ええ、ありがとう……」

剣士「……大丈夫ですよ。あいつ、しぶとさだけは異常ですから」

勇者姉「そうね……。あの子ならきっと大丈夫。強い子だもの。きっと、そのうち、ひょっこり帰ってくるわ」

剣士「そうですよ」



剣士「あのバカっ! まったく何してんのよ!」

剣士「……勝手にアタシのそばからいなくなるなんて許せない!」



剣士「お父さん!」

師範「ん、どうした?」

剣士「アタシ、ちょっと旅に出てくるから!」

師範「は?」

剣士「ちょっと、あのバカ連れ戻してくる!」

師範「年頃の娘が何言ってる。そもそも、あの子は追放刑にあってしまったのだから、それは無理だろう」

剣士「だから、ついでに魔王を倒してくる。そうすれば恩赦で許して貰えるはずよ」

師範「おいおいおいおい。何バカなことを言ってるんだ」

剣士「じゃあ、荷造りも終わってるし、行くわ」

師範「え!? もう行くの!?」

剣士「思い立ったが吉日なの! 達者でね! 」

師範「ちょっ、おい!」

剣士「お姉さんに手を出したら血祭りにするから!」

魔の国・魔王城。

黄竜「…………」スピ-

赤騎士「……おい、黄竜、起きろ」

黄竜「んあ? お、赤騎士じゃーん。久し振りー、元気ー?」

赤騎士「変わりない。お前は相変わらず寝汚いようだな」

黄竜「んはは、まーねー。どうして帰ってきたの? 中央国の方に侵攻してたよね?」

赤騎士「緑鬼と入れ替わったのだ」

黄竜「ふーん、お疲れ様ー」

赤騎士「ありがとう。だが、できれば早く中央国の前線に戻りたいところだ」

黄竜「仕事熱心だねー」

赤騎士「緑鬼に任せると、無益な血が流れることになるからな」

黄竜「確かに。あいつって性悪だもんなー」

赤騎士「それで黄竜よ。しばらくの間、お前と共に、西国征圧の任につくことになった。分かると思うが、無意味な殺しはするなよ」

黄竜「赤騎士に従うから大丈夫だよー。君のこと、信頼してるからさ」

赤騎士「そう言ってもらえると助かる」

続きはまた今度で

中央国・東の森

天使「ていっ」

天使の攻撃!

ベキャアッ

魔物を倒した!

天使「たあっ」

天使の攻撃!

ゴキュッッ

魔物を倒した!

勇者「……天使さんって魔法をメインに戦うタイプだと思ってた」

天使「そうですよ?」

勇者「いや、この前からずっと、魔物が落としたロッドでぶん殴ってるところしか見てないからさ」

天使「この程度の魔物に魔法を使う必要もないですから。さあ、行きましょう」

勇者「た、頼もしいなあ…」

勇者(というか、撲殺天使さんが強すぎて一回も攻撃してねえ…」

天使「あ、村が見えましたよ。これで旅に必要なものを揃えられますね」

勇者「……天使さん。俺は顔に追放の焼印があるから村に入れないよ」

天使「それなら、私の魔法で隠してるから大丈夫ですよ」

勇者「え、本当に?」

天使「だから、心配しないでください。右腕も魔法をかけた包帯で封じ込めてるし、何の心配もありませんよ」

勇者「な、何から何までありがとう」

天使「気にしないでください。まずは魔物の素材などを売ってしまいましょう」ニコ

ドサドサッ

勇者「これを換金したいんだが」

商人「……ふむ」

パチパチッ

商人「こんなものだな」

勇者「……安過ぎる。これは流石に不当だ」

商人「文句があるなら引き取らないが。見た所、金に困っているようだがな」フフン

勇者「人の足元を見て…!」

商人「ふん、こちらも、紛争続きであまりゆとりのある商売ができてないんでね」

天使「勇者さん、ここは、妥協しましょう」

勇者「……分かった。その額でいい」

勇者「買い物すら上手くいかないなんて先行きが不安だ…」

天使「支度金には充分ですよ。旅に必要な物を買いましょう」ニコ

勇者たちは必要物資を買い揃えた!

勇者「ふう、これで大分円滑に旅を進められるな。

天使「そうですね!」

勇者「あと、剣も買ったけど、左手じゃ、あまり戦力にはならないだろうな」

天使「私に任せてください。だいたい撲殺しちゃいますから」ニコ

勇者「ははは、頼もしい…。さて、宿を取ろうか」

天使「そうしましょう」

宿屋。

勇者「……一緒の部屋で良かったのか?」

天使「切り詰められるところは切り詰めないと!」

勇者「なんだか、さっそく、俗っぽくなってきたな」

天使「もう、そんな意地の悪いこと言わないでください!」

勇者「ごめん、ごめん。頼もしく思ってるよ。それで、魔王を倒すににしても具体的にどうしようか」

天使「魔王自体は南に行けば会えるんですけどね」

勇者「魔国が世界の南にあると聞いて育ったんだけど、そもそも世界がどうなっているのかイマイチ理解できてないんだ。村から出ることさえ滅多になかったし……」

天使「ええと、まず東西に広がる巨大な大陸と、その南に位置する一つだけ離れている比較的小さな大陸があります」

勇者「うん」

天使「巨大な大陸は主として四つの大国からなっていて、勇者さんの出身地である東国、魔物との戦いが激しい中央国、土地は貧しいけれど、平和な北国、領土は広いけれど砂漠が多い西国となっています」

勇者「そこまでは大丈夫」

天使「そして南側の小さな大陸に魔国があります。北側には、中央国へと大きく突き出している細い半島があります」

勇者「その半島を通って、中央国に侵攻してるのか。だから中央国が一番魔物の被害を受けているんだな」

天使「そうですね。『悪魔の角』と呼ばれていて、強力な魔物が数多くひしめいています。最近ではこの付近の中央国領土は、魔物の支配下に置かれてしまっているようです」

勇者「中央国の人々が可哀想だな…。何とかできないかな」

天使「そうですね……取り敢えず、中央国に行って現状を見ましょうか」

勇者「それが良さそうだ」

――翌朝。

天使「ふぁ……?」パチ

天使「……あれ、勇者さんがいない?」


勇者(…この右腕、使いこなせれば、魔王討伐に役立つはずだ!)シュルッ

ブウウウゥゥウウウン!!

勇者「ちょっ、勢いが強い!? 鎮まれー、鎮まってくれー!」

ブウウウウウゥゥウウウン!!

勇者「…そうだ! この前みたいに変身させればいいんだ!」



天使「…こっちの物陰から、例の音が聞こえましたが」

シュルッ

天使「へ?」

天使は触手に巻き付かれた!

勇者「わっ、天使さん!?」

天使「勇者さん! これは何ですか!?」

勇者「み、右腕を変化させたらこんなのが出てきたんだ!」

ニュルッ

天使「ひゃうう! は、離してくださいっ!」

勇者「ど、どうすれば良いのか分からない」

ニュルッニュルッ

天使「あっ、そんなとこに入っちゃ……! あっ……! いやぁ……!」ビクビクッ




勇者たちは中央国南部へと向かうために村を出た!

天使「…………」つーん

勇者「……天使さん、その、朝はごめん」

天使「…………」じろっ

勇者「ご、ごめんな」

天使「……ふう。別に勇者さんのせいだけではありませんから」

勇者「う、うん」ほっ

天使「でも、取り敢えずは魔法をかけた包帯を外さないでください」ニッコリ

勇者「…はい」


東国・西の森

剣士「…あー」

剣士「迷ったわね…」

剣士「ここはどこなのよ……」ガサガサ

剣士「出てくる魔物もやけに強いし、変なの」

剣士「……お、洞窟」

老龍「…ほう、ニンゲンか」

剣士「うわ、龍だ」

老龍「ニンゲンがここまで来たのはいつぶりだろうか。昔は多くの荒くれ者たちが挑んできたものだったが」

剣士「ああ、そう」

老龍「ふ、すべて返り討ちにしたがな」

剣士「ふうん。アタシ、中央国の方に行きたいんだけど、どっちか分かる?」

老龍「我が護る聖なる秘宝。欲しくば我を倒してみよ!」

剣士「いや、別にいらないわよ」

老龍の攻撃!

剣士はひらりと躱した!

老龍「む、やるな」

剣士「もう一度言うけど、戦うつもりはないわ」

老龍「ふ、次も躱せるか!」

老龍の攻撃!

剣士はひらりと躱した!

剣士「分かったわよ。そっちがヤる気なら…」チャキッ


・・・

老龍を倒した!

老龍「ぐっ、つ、強い……」

剣士「あーあ、剣がボロボロになっちゃったじゃない」

老龍「まさか、ニンゲンの小娘にやられるとは……聖なる秘宝を持っていくがいい……」

剣士「はいはい、貰えるなら貰っておくわ」

『聖なる剣』を手に入れた!
『生命の樹の種』を手に入れた!
『エルフのマント』を手に入れた!

剣士「ふうん。まあ、新しい剣が手に入って良かった」

剣士「そんなことより早くあのバカを見つけないとね」

剣士「それで、ここはどこなのよ…」

中央国・魔物の拠点地

緑鬼「あー、やれやれ。赤騎士のやつ、本当に小言が多い。あいつは鬼嫁か!」

緑鬼「それじゃあ、オレの嫁じゃねえか! ひゃあっはっはっは!!」

「はは……」

緑鬼「あーん、なんだその笑いは?」

「も、申し訳ありません!」

緑鬼「上司が笑ってるなら同じくらい笑うだろうが!」

「はっ! 大変失礼しました!」

緑鬼「ったくよー、これから侵攻を再開しようとしてる時に盛り下げてくれるじゃねえか」

「…お言葉ですが、赤騎士さまは無闇な侵攻は止めるようにおっしゃっておられました。」

緑鬼「あ?」

緑鬼の『殴り殺す』!

緑鬼「今、指揮権限が有るのはオレだ。文句あるやつは殺してやるから出てこい」

「緑鬼さま」

緑鬼「あん?」

・・・

緑鬼「はーん、隠れてた人間たちか」

「はい。最近、食糧がやけに減ると思っていたら、10人ほど地下に隠れていたようです」

緑鬼「はーん、美しきモグラ根性だな」

「始末しますか?」

村人1「ま、待ってください。せ、せめて子どもたちだけでも助けてやってください…!」

緑鬼「そうだなあ」

緑鬼「別に俺だって鬼じゃな……鬼だったわ」

緑鬼の『殴り殺す』!

子ども「うわぁぁん!! おかーさーん!!」

緑鬼「夜泣きをする子は食べちゃうぞー」

緑鬼の『喰い殺す』!
緑鬼の『絞め殺す』!
緑鬼の『蹴り殺す』!
緑鬼の『犯し殺す』!
緑鬼の『嬲り殺す』!
緑鬼の……

緑鬼「ひゃあっはっはっは!! もっと叫べ! もっと悦ばせろ! 恐怖こそが美しい!」

続きはまたそのうち
反応があるとやっぱり嬉しいね

中央国・南の町。

勇者「へっくし!」

天使「あら、大丈夫ですか?」

勇者「いや、ただのくしゃみだよ。誰か俺の噂でもしてるのか?」

ドンッ

勇者「いてっ!」

「邪魔っ!」

勇者「な、そっちからぶつかってきたじゃないか」

店主「食い逃げだ! そいつを捕まえてくれぇ!」

「ちっ」

勇者「あ、おい! ……逃げ足速いな」

天使「……?」


店主「この辺りも大分治安が悪くなっちまった。出入りするのも兵士や傭兵ばっかり。さっきみたいな食い逃げ野郎も増えた」

勇者「随分と物騒ですね」

店主「一般人が立ち入れる最南端だからな、この村は。そんな奴らしかいないのさ」

勇者「ああ、なるほど。大変ですね」

店主「あんたらみたいな冒険者もよく見かけるぜ。近くにあるエルフの棲む森があるからだろうな」

勇者「へえ、エルフですか」

店主「尤も、エルフの森は魔物の軍勢に侵攻されて、燃えかすになっちまった」

勇者「それじゃあ、エルフも?」

店主「死に絶えたらしい。あんたらもその焼け跡に、お宝探しにきたんじゃないのか?」

勇者「いや、俺たちはこの辺りの情報や、魔国についての情報を集めてるんです」

店主「ふうん。そうかい。あまり危険地帯に突っ込むなよ」

勇者「忠告ありがとうございます」

天使「勇者しゃん! ふぉの赤いおみず、おいひいですー!」ヒック

勇者「…それ、アルコールだよ」

天使「いいキブンですー!」ヒック

勇者「ははは……」

天使「いっちょ、ゼンブふっとばしましょー!」ヒック

天使は魔法を唱え始めた!

周囲の大気が大きく揺れる!

勇者「ちょっ、ダメだって!」

天使「もがもが……!」

魔法の詠唱が中断された!

勇者「うわ、酒くさい!」

天使「……すぴー」

勇者「この人にお酒を飲ませちゃダメだ……」



天使「うー」ヒック

勇者「ほら、宿屋までもう少しだよ」

天使「うー、ここで寝ます」

勇者「ダメだって。ほら、歩いて」

町人A「このクソガキ!」

「うっ!」

町人B「人の財布に手を出すなんていい度胸してやがんな!」

町人C「懲らしめてやる!」

「ぐっ! うぁ!」

勇者「あ、さっきの食い逃げ」

天使「う?」

勇者「……」

天使「こらー! 多勢に無勢で何してるんですか!」ヒック

勇者「ちょっ」

町人D「何だこの女?」

町人E「酔っ払いは引っ込んでろ!」

天使「なんですってー!」ヒック

天使は魔法を唱えた!

天使「『全体即死魔法』!」

町人たちは生命活動を停止した!

天使「ふふ、悪は滅びた」ヒック

勇者「いや、殺すなよ!」

天使「電撃魔法・微!」ピリピリッ

町人たちは生き返った!

天使「そせー完りょーです!」ヒック

勇者「…気軽にそういうことしないでくれよ」

天使「だいじょーぶですかー?」ヒック

「うわ、酒くさい!」

勇者「立てるか?」

「あ、ああ。どうも。じゃあ…」

勇者「おっと待て」ガシッ

勇者「いや、殺すなよ!」

天使「電撃魔法・微!」ピリピリッ

町人たちは生き返った!

天使「そせー完りょーです!」ヒック

勇者「…気軽にそういうことしないでくれよ」

天使「だいじょーぶですかー?」ヒック

「うわ、酒くさい!」

勇者「立てるか?」

「あ、ああ。どうも。じゃあ…」

勇者「おっと待て」ガシッ

「な、なんだよ!」

勇者「この人たちに財布返してないだろ?」

「わ、分かったよ」ヒョイッ

勇者「…お金だけ、抜いてるな?」

「…ちっ、返せばいいんだろ!」ジャラジャラッ

勇者「まったく、さっきの食い逃げといい、声変わりもまだの子どもが何をしてるんだ」

「…うるさいな。放っておけよ」

天使「こらー、その態度はなんですか!」ベチンッ

「いたっ!」

ポロッ

「あ、帽子!?」ファサッ

勇者「女だったのか。…というかその耳」

エルフ「……」


宿屋。

天使「すぴー……」

勇者「連れが悪かったな。普段はとても礼儀正しくて優しい人なんだけど」

エルフ「酒癖は最悪だな」

勇者「俺も初めて知った。もう飲ませないようにするよ」

勇者「…それにしても、エルフの生き残りか。大変だったな」

エルフ「何も知らないヤツに同情されたくないな」

勇者「…それもそうか」

エルフ「…アンタら、何者? そっちの女は魔法を使ってたし、アンタの顔や包帯からも魔力を感じる」

勇者「俺は勇者だ。それで、酔っ払って寝てるのが天使さん」

エルフ「…勇者?」

勇者「ああ。魔王を倒す旅の途中だ」

エルフ「…信じられないな」

勇者「まあ、そうだろうな」

エルフ「この人からは強大な魔力を感じる…天使というのは信じてもいいが」

勇者「お、信じるか。さすがエルフ」

エルフ「でも、お前が勇者…信じられない」

勇者「うーん…まあ、そう言われても仕方ないか」

エルフ「弱そう、馬鹿そう、ちょろそう、軟派そう、貧しそう、駄目そう、汚そう、臭そう」

勇者「おま…怒りを通り越して悲しくなってきたぞ…」

エルフ「…本当に勇者なら現れるのが遅いよ」

勇者「……」

エルフ「…お前に言っても、仕方ないことだ」

・・・

天使「昨日、そんなことがあったのですか。道理で彼女から魔力を感じたわけです」

勇者「彼女は他にも色々と情報をくれた。結構長いこと南部を徘徊しているらしいから」

天使「そうですか。彼女も辛いのですね…」

勇者「…それで、彼女の話だと、最近は魔物との小競り合いが増えているそうだ」

天使「また、魔物の侵攻が始まる前兆かもしれませんね」

勇者「うん。それまでは少なくとも表面的には静かだったらしい。噂だと指揮官が替わったとか」

天使「そのような噂が」

勇者「うん。魔物と交易している商人もいるから、そういうところからの情報かな」

天使「なるほど」

勇者「ここは、一般人の立ち入れる最南端らしいし、この街も危ないかもしれない」

天使「どうしますか?」

勇者「離れた方が安全ではあるけど、むざむざと魔物に占領されるのは気に入らないな」

天使「……私たちなら負けませんよ! 究極破壊魔法を打ち込んでやります!」

勇者「ははは…。人間を巻き込まないようにね」

天使「あと、朝からとても頭が痛むのですが…」ズキズキッ…

勇者「完全に二日酔いじゃないか」

ところ変わって…

中央国・東の村

剣士「じゃあ、この辺りに顔に追放の焼印がある男は来なかったのね?」

宿屋「そだな人がいたら村中で噂になるべな。最近だと、若いアベックが宿泊してったぐらいしか若い客はいねえだ」

剣士「うーん……一応どんな感じだった?」

宿屋「男は右腕をケガしたのか、包帯を巻いてだな。女の人はすんげえ美人だったべ」

剣士「右腕に包帯! ……お姉さんもそんなこと言ってたわね。刻印はカモフラージュしてたのかも」

剣士「……って美人な女と一緒?」

宿屋「あ、ああ、んだ。あんな美人がいるだなんで、おら、知らなかっだだ。まるで女神さまみてえだったべ」

剣士「ほーん……」ピクピクッ

宿屋「しかも、部屋は一つしか借りてなかっただ。おら、『昨夜はお楽しみでしたね』が言いたくてしょうがなかっただ」

剣士「あのバカ、ずいぶん調子にのってるわね。このアタシというものがありながら、許さないわ、変な虫がつく前に、連れ帰らなきゃ…」ブツブツ…

きゃああ、魔物だあ!

剣士「あら?」

宿屋「この村の中まで魔物が入ってくるなんて珍しいな」

剣士「この辺の魔物は弱くて臆病だしね。一応見てくるわ」

死の鳥「ギギ……ギ……」

剣士「なんか強そうね」

村人「あ、あれは、伝説の、死をもたらす鳥だべ」

剣士「有名なのね」

村人「こ、この国のモンは『悪い子は死の鳥に連れて行かれる』って脅されて育つべ」

剣士「あ、それアタシも聞いたことあるかも…って、こっちに飛んできたわ」

死の鳥「ギギ……老龍ヲ破ッタラシイナ……」

剣士「なんか成り行きで」

死の鳥「ギギ……オモシロイ……勝負ダ……!」

剣士「え、イヤよ」

死の鳥「ギギ……何故ダ……」

剣士「先急いでるから。あのバカに問い質したいこともあるしね」

死の鳥「ギギ……ナ、ナラバ村人ヲ殺スゾ……!」

剣士「…はあ。そういう面倒くさいこと言うなら、さっさと始末してあげる」チャキッ

死の鳥は『即死魔法』を放った!

剣士には効かなかった!

死の鳥「ギッ!?」

剣士「聖なる剣のおかげで即死魔法は効かないのよね」

死の鳥は『風魔法・大』を放った!

剣士はひらりと躱した!

死の鳥の『毒の爪』

剣士はひらりと躱した!

剣士「エルフのマントは、魔法も攻撃も躱しやすくしてくれるの」

死の鳥「ギギ……強イナ……愉快ダ……」

剣士「愉快なまま死ねると良いわね」

・・・

死の鳥を倒した!

死の鳥「ギギ……ヤル……ナ……」

剣士「アナタも結構強かったわ」

死の鳥「ギギ……コレヲヤロウ……」

死の鳥は口から何かを吐き出した!

剣士「うっ、口から……」

剣士は『奇跡の腕輪』を手に入れた!

剣士「んー、何かしら力を秘めてそうね。役に立つかな」

村人「す、すげえだ! あの死の鳥を無傷で倒しただ!」

剣士「いや、それはたまたま。結構苦戦したわよ」

「いや、ホントすげえだ」

「あの死の鳥を倒すだなんて……」

村人「しかもピカピカ光る剣で……も、もしかして勇者さま!?」

剣士「いや、違うわよ」

「ほ、本当に勇者さまなのか!?」

「あの強さ、そうでもおかしくねえべ!」

ざわざわざわざわ…………

剣士「いや、だから…」

宿屋「勇者さまにせよ、違うにせよ、この人はオラたちの救世主だべ! みなでもてなすべ!」

「んだ、んだ!」

「勇者さまのために宴の準備だ!」

「あの死の鳥を倒すなんて、とてもめでてえべ!」

剣士「勝手にやって欲しいんだけど…」

宿屋「そんな哀しいこと言わねえで、勇者さまも楽しんでいってくだせえ」

剣士「だから、勇者じゃないってば…まあ、いいか」


ところ変わって…

西国・南西海岸。

伝令魔物「赤騎士さま……」パタパタ

赤騎士「む。どうした」

伝令「実は……」


黄竜「なんだってー?」

赤騎士「緑鬼が中央国南部への更なる侵攻を開始したらしい」

黄竜「あー、やっぱり彼は勝手だねー」

赤騎士「一応、策は打っている。あいつが過度な独断に走ることは食い止められるだろう」

黄竜「さっすがー」

赤騎士「私たちは私たちの任務を果たすだけだ。西の国を征圧するぞ」

黄竜「りょーかい」

南国・南部の街

「魔物の軍勢がここにまで迫っているぞ!」

勇者「来たか!」

天使「迎え討ちましょう!」

勇者「ああ!」



魔物の軍団が押し寄せてきた!

勇者「くっ、すごい数だ。だが密集しているなら都合がいい!」

天使「任せてください!」

大気が大きく揺れる!

天使の『究極破壊魔法』!

魔物の軍勢は壊滅的な被害を受けた!

勇者「よし! 魔物は狼狽えている! 畳み掛けよう!」

うおお!

人間たちの反撃!

魔物たちは退却を始めた!

勇者「好機だ! 追い討ちをかけよう!」

おう!

勇者「天使さん、街に残って追撃に備えてくれ」

天使「し、しかし大丈夫ですか?」

勇者「俺は勇者だ。信じてくれ」




伝令魔物「緑鬼さま! ニンゲンたちが攻めてきています!」

緑鬼「はあっ? 攻め込ませたヤツらはどうした?」

伝令魔物「侵攻役の大隊は魔法攻撃により壊滅的な被害です!」

緑鬼「あーん? ニンゲンにも魔法が使えたのか?」

伝令魔物「しかも、相当強大な魔法で、一撃で大隊が瓦解したようです!」

緑鬼「…ちっ、聞いてねえよ。おい、巨人! 大蛇! 森の中でニンゲンどもを挟み撃て! 鳥人たち! こいつらの後方を支援しろ!」

「はっ!」

緑鬼「クソがっ、まさかこんな目に遭うとはな」


勇者「……! 横から来るぞ!」

巨人が現れた!

大蛇が現れた!

鳥人の群れが現れた!

勇者「…予想通りだ。引きつけよう」

傭兵1「ほ、本当に大丈夫なのか?」

傭兵2「囮役なんて聞いてねえよ!」

傭兵3「こちとら、死ぬ気はないんじゃ!」

勇者「…俺を信じてくれ」

勇者は右腕の包帯を解いた!

ヴゥウウウウウゥゥゥンーーー!

傭兵3「……は?」

勇者「……うっ!」ブリュリュッ

勇者はバイブから大量のローションを放った!

辺りの空気が凍りついた!

勇者は右腕をピンクローターに変化させた!

傭兵4「な、なんだよその腕?」

勇者「説明は後だ! 蛇は俺がやる!巨人は任せた! 」

傭兵5「…鳥人の矢に気を付けろよ」ニッ

勇者「そっちこそ!」ニッ

勇者は蛇にピンクローターを飛ばす!

蛇はひらりと躱した!

大蛇「そんなもの食らうか!」

大蛇の尻尾攻撃!

勇者「げふっ!」

勇者は大きく吹き飛んだ!

大蛇「ファファファ、弱いぞ! その程度か!」

勇者「…まさか」

ピンクローターが大蛇の身体に巻き付く!

大蛇「なっ!?」

勇者「油断したな。自在に動くとは思わなかったか」

大蛇「ふ、ふん! 縛ったくらいで何を偉そうに! 見くびるなよ!」

勇者「…見くびってるのはそっちだ」

大蛇「ぐっ、解けん…!」

勇者「こいつは振動しないタイプなんだが、もっと恐ろしい機能がある」

大蛇「な、なにをする気だ!?」ゾクッ

勇者「…女神さまの変態ぶりには心底ドン引きだよ」

勇者の『超高圧電流』!

大蛇「あばばばば……」

大蛇を倒した!

巨人「うがあ!」

傭兵6「ひいっ!」

巨人の攻撃!

しかし、巨人は白濁ローションで滑った!

巨人「うがあ!?」

傭兵7「…今だ! やるぞ!」

傭兵8「俺たちも滑らないように気を付けるぞ!」

傭兵1の攻撃!

傭兵2の攻撃!

傭兵3の攻撃!

・・・

巨人を倒した!


鳥人A「くそっ! 後ろにも敵がいたのか!」

鳥人B「分隊していたとは…!」

鳥人たちは狼狽えている!

兵士長「弓兵部隊! 撃ち落とせ!」

「はっ!」

兵士長「投石部隊も続け!」

「らじゃっ!」

・・・

鳥人たちを倒した!



伝令魔物「緑鬼さま! 巨人、大蛇、鳥人たちも敗北しました!」

緑鬼「…クソがぁ! どいつもこいつも役立たずだ!」

伝令魔物「緑鬼さま!? 何処に行かれるのですか!?」

緑鬼「こうなったらオレが直接殺るしかないだろ!」


緑鬼が現れた!

勇者「……!?」

緑鬼「調子に乗ってるのはテメーらか!」

勇者「こいつ、強いぞ…!」

緑鬼「四天王最強の緑鬼サマが、ブチ殺してやるよ!」

緑鬼の『鬼没』!

「「姿が消えた…!?」」

緑鬼の『殴り殺す』!
緑鬼の『刺し殺す』!
緑鬼の『咬み殺す』!

傭兵1「や、やばい! 逃げるぞ!」

傭兵たちは逃げ出した!
しかし、回り込まれてしまった!

緑鬼の『叩き殺す』!
緑鬼の『踏み殺す』!
緑鬼の『裂き殺す』!

勇者「くっ!」

勇者はバイブで殴りかかった!

緑鬼はひらりと躱した!

緑鬼「…テメエ、聖なる力を持ってやがるな!? ナニモンだ!?」

勇者「…俺は勇者だ!」

緑鬼「…なるほどなぁ、だったら絶対殺す!」

緑鬼の『鬼火』!

勇者の身体を青い炎が舐め上げる!

勇者「ぐあっ!?」

緑鬼「ひゃあっはっはっは!! 苦しんで死ね! 喚いて死ね! 絶望して死ね! 死の叫びこそが生きる価値だ!」


「氷結魔法・小!」

鬼火が打ち消された!

緑鬼「あん、魔法だと?」

勇者「君は……」

エルフ「緑鬼…! お前に復讐する日を待っていた!」

緑鬼「エルフの生き残りか! 全員殺してやったと思ってたんだがな!」

勇者「……エルフの森を焼き払ったのはお前か!」

緑鬼「ひゃあっはっはっは!! あいつらいい悲鳴を上げてたぜぇ! 思い出すだけで射精モンだ!」

エルフは『氷結魔法・中』を放った!

しかし緑鬼は魔法を無効化している!


「氷結魔法・小!」

鬼火が打ち消された!

緑鬼「あん、魔法だと?」

勇者「…君は」

エルフ「緑鬼…! お前に復讐する日を待っていた!」

緑鬼「…エルフの生き残りか! 全員殺してやったと思ってたんだがな!」

勇者「…エルフの森を焼き払ったのはお前か!」

緑鬼「ひゃあっはっはっは!! あいつらいい悲鳴を上げてたぜぇ! 思い出すだけで射精モンだ!」

エルフ「ゲスがああぁッ!」

エルフは『氷結魔法・中』を放った!

しかし緑鬼は魔法を無効化している!

エルフ「くっ…!」

緑鬼「あの時も『魔封じの指輪』をつけてたからな、エルフなんて、ゴミカスだったぜ! 」

エルフは矢を放った!

緑鬼は矢を掴み取った!

緑鬼「今でもエルフどものことは覚えてるぜぇ。小さい骨からポキン、ポキンって折っていくとなぁ、可愛い声で鳴くんだ、これが。ああ、最高だったなぁ…」

エルフ「きさまぁ!」

エルフは『火炎魔法・中』を込めた矢を放った!

緑鬼はひらりと躱した!

緑鬼「おいおい、そんなんで復讐できると思ってんのか?」

エルフ「差し違えてでも殺す…!」

緑鬼「ひゃあっはっはっはっ!! ハナから勝つ気のないザコに負けるかよ!」

勇者はピンクローターを飛ばした!

緑鬼はひらりと躱した!

緑鬼の『鬼没』!

緑鬼「鬼さん、どーこだ?」

勇者「くっ!?」キョロキョロ

緑鬼「鬼さん、うしろ」

緑鬼の『殴り殺す』!

勇者は大きく吹き飛んだ!

勇者「ごぽっ!」

勇者は大量に吐血した!

エルフ「っ!」

エルフの攻撃!

緑鬼はエルフの腕を掴んだ!

緑鬼の『投げ殺す』!

エルフ「きゃあっ!」

緑鬼「ひゃあっはっはっは!! カスどもが! せいぜい美しい絶叫を奏でろや!」

勇者「く、くそ……」

天使は『氷結魔法・極』を放った!

緑鬼は魔法を無効化している!

天使「勇者さん、大丈夫ですか!」

勇者「うっ、て、天使さん…。不甲斐ないところを見せちゃったな…」ゲホッ

天使「…いえ。勇者さんの活躍は千里眼の魔法で見ていました。ご立派でしたよ…」

緑鬼「……この魔法の威力、テメエが侵攻部隊を壊滅させたのか」

天使「…邪悪な魔物よ! 私が浄化します!」

天使は『電撃魔法・極』を放った!
天使は『火炎魔法・極』を放った!

緑鬼は魔法を無効化している!

緑鬼「ふん、オレに魔法は効かん!」

天使は『星霊魔法』を放った!
天使は『聖霊魔法』を放った!

緑鬼は魔法を無効化している!
『魔封じの指輪』にヒビが入った!

緑鬼「なんだとっ!?」

天使は『重力魔法』を放った!
天使は『結晶魔法』を放った!

緑鬼は魔法を無効化している!
『魔封じの指輪』が砕けた!

緑鬼「くっ!」

緑鬼の『殴り殺す』!

天使はひらりと躱した!

天使の攻撃!

ミシミシィッ!

緑鬼「ぐおぉぉ!」

天使は『氷結魔法・極』を放った!

緑鬼の全細胞が一瞬で凍り付いた!

緑鬼を倒した!



天使「勇者さん、大丈夫ですか!」

勇者「ああ…。いつも、助けられてばかりだな…」

天使「そんなことありませんよ」ニコ

天使の『回復魔法・大』!

勇者の傷が癒えていく!

勇者「…ありがとう。エルフや、他の皆にも頼む」

・・・

天使「これで皆さん全快ですね」ニコ

「美しい…」

「女神さまだ…」

勇者(女神じゃなくて、天使だけどな)

勇者「……死んだ人間は生き返らないんだな」

天使「魔法にも限界はあります」

勇者「…そっか」

エルフ「……う」パチ

勇者「お、目覚めたか」

エルフ「……緑鬼は!?」

勇者「あそこ」

緑鬼「」カチンコチンッ

エルフ「……」



「よっしゃー! このまま、南部の町と村を解放するぞ!」

「おおー!」

「『火炎魔法・大』」

緑鬼の身体がみるみる氷解していく!

緑鬼「ぐっ……」

エルフ「なっ…!?」

緑鬼「…げっ、赤騎士!? なんでここに…」

赤騎士「緑鬼、なんだこの体たらくは。多くの兵を失い、あまつさえ自分もやられるとは」

緑鬼「うぐっ…」

赤騎士「まあ、いい。後は私がやる。お前は撤退しろ」

緑鬼「…ちくしょうが!」

緑鬼は逃走した!

エルフ「待て!」

赤騎士が立ちはだかった!

赤騎士「先に行かせることはできない。このままでは士気に関わるのでな」

赤騎士は剣を構えた!

天使「…皆さん、下がってください!」

赤騎士「四天王が一柱、赤騎士、参る!」

天使は『聖霊魔法』を放った!

赤騎士の『魔封剣』!
『聖霊魔法』を吸収した!

天使「『魔封剣』ですって!?」

赤騎士の『連続魔』!
『火炎魔法・極』!
『火炎魔法・極』!

『撃滅の獄炎』となった!

天使「しかも『連続魔』!?」

天使は『氷結魔法・極』を放った!
『撃滅の獄炎』を弱めた!

エルフは『氷結魔法・中』を放った!
『撃滅の獄炎』を弱めた!

勇者はバイブを巨大化して盾にした!
『撃滅の獄炎』を何とか防いだ!

赤騎士「やるな!」

天使は『究極破壊魔法』を放った!

赤騎士の『魔封剣』!
『究極破壊魔法』を吸収した!

天使「やはり魔法は通じないようですね…!」

赤騎士の『火炎斬り』!

勇者の腿に掠った!
傷口が燃える!

勇者「がああああぁぁぁぁ!!」

エルフは『回復魔法・中』を放った!

赤騎士の『魔封剣』!
『回復魔法・中』を吸収した!

エルフ「くっ!?」

赤騎士「敵に回復の余地は与えん」

赤騎士の『火炎斬り』!
エルフは何とか躱した!

赤騎士「良い体捌きだ!」

天使の攻撃!
赤騎士は盾で防いだ!

赤騎士の攻撃!
天使は何とか躱した!

天使「今の内に回復を!」

赤騎士「健気だな」

赤騎士の攻撃!

天使「うぅっ……!」

天使は深手を負った!

エルフは『回復魔法・中』を放った!

勇者の傷が癒えた!

赤騎士の『連続魔』!
『火炎魔法・極』!
『火炎魔法・極』!

『撃滅の獄炎』となった!


天使は『氷結魔法・極』を二回放った!
『撃滅の獄炎』を弱めた!

天使は『撃滅の獄炎』を食らった!
天使の全身を赤黒い炎が焼き尽くす!

天使(う……声が出ない……これじゃあ……魔法が……)

赤騎士「一番厄介なあなたから倒させてもらう」

勇者「て、天使さん…っ!」

勇者(……今まで散々、天使さんに助けられたんだ! 俺だって…彼女を助ける!)

勇者(頼む! 俺に、守る力を!)

勇者の思いを引き金に、勇者の右腕が強大な力を発する!

ディルド「やあ(´・ω・`)」

勇者「…え?」

ディルド「君の想い、しっかり届いたよ(´・ω・`)」

勇者「……」

ディルド「僕を信じて欲しい(´・ω・`)」

勇者「あ、ああ」

ディルド「さあ、敵に僕を向けて(´・ω・`)」

勇者「…ホントに信じるからな!」

勇者は右腕を赤騎士に向けた!

勇者の迸る熱い性欲(パトス)が右腕に凝集する!

ディルド「一点に向けて噴出された水は鉄を穿つ…そういうことさ(´・ω・`)」

勇者の『渾身の一発』!

赤騎士「……!」

赤騎士の盾を貫いた!
赤騎士の鎧を貫いた!
赤騎士の体を貫いた!

赤騎士「ぐうっ……!」

勇者「エルフ、今の内に天使さんの回復を!」フラッ

勇者は気絶した!

エルフ「勇者!?」

ディルド「今の彼じゃあ本当に一発が限界なんだ(´・ω・`)」

天使(回復してからの魔法では間に合わない。無詠唱でできる魔法で見出せる活路……)

天使(女神さま、いつも頑張って働いているんですから、幸運を私にくださいね)

天使『勇者さん、エルフさん、後はお願いします』

エルフ「なにを…、」

天使は『転移魔法』を放った!

勇者とエルフは何処かに転移した!

天使『皆さん、私が時間を稼ぎます。できるだけ遠くに逃げてください』

ざわっ……

天使『早くっ!』

全員逃げ出した!

赤騎士「素晴らしい自己犠牲だ。敵ながら賞賛に値する」

赤騎士の『火炎斬り』!

天使はロッドで防いだ!

天使の攻撃!

赤騎士は盾で防いだ!

赤騎士の……

・・・

赤騎士の攻撃!


天使(…堕天した私はきっと天上の世界に帰れないのでしょうね。どうなるのでしょうか…)

天使(…勇者さん、短い間でしたが、楽しかったです)

天使(……あなたは、きっと、強くなります……私は信じてますから……勇者さん……)



赤騎士「…敵ながら素晴らしい人物だった。あなたと戦えたことを誇りに思う」

赤騎士は『火炎魔法・大』を放った!

天使の亡骸は、大地と大空へと還っていった……

続きはそのうち書きます。

北国・剣の山

勇者「う…」パチ

エルフ「…やっと起きたか!」

勇者「あれ、ここは…俺は何を…」

エルフ「ここは、北国の剣の山だ。お前はもう二週間以上眠っていた」

勇者「に、二週間? …天使さんは!? 天使さんはどうなった!?」

エルフ「…彼女は、おれたちを北の国まで飛ばした。けれど、おそらく彼女は…」

勇者「…俺は、なにもできなかった」

エルフ「……」

勇者「ちくしょう…ちくしょう……ッ!」

オーク「お、目覚めたか。正直ダメかと思ったが、しぶといな」

勇者「…魔物か」

エルフ「待て、悪い魔物じゃない」

勇者「…お前、偽物か?」

エルフ「…急に何言い出すんだよ?」

勇者「どうして魔物を憎まないんだよ! 酷い仕打ちを食らって、どうして平気な顔ができるんだよ!」

エルフ「…憎いに決まってるさ! けれど、全ての魔物がそうとは限らないだろ」

勇者「だったら……!」

エルフ「おれは人間だって憎いんだ。でも、人間にはお前みたいなお人好しもいる。魔物だって同じだろ」

勇者「そんなの分からないだろう!」

エルフ「…少なくともこの魔物は一週間、寝たきりの勇者をここに置いて、面倒を見てくれたんだ。信頼したっていいじゃないか」

勇者「……」

勇者「分からないんだよ。何を信じればいいか」

エルフ「……」

勇者「信じられる人たちは、みんな俺から離れていってしまう。俺は何を信じればいいんだよ…」

エルフ「この……ヘタレッ!!」

勇者「……!」

エルフ「誰かに甘えてばかりいるなよ! お前には足が二本生えてるだろうが! だったら、自分の足だけで立ち上がれよ! 自分の足だけで前に歩いていけよ!」

勇者「……」

エルフ「まずは、自分を信じろよ!」

勇者「……」

エルフ「……ふんっ」

エルフは外に出て行った!

オーク「……ほら、粗末なもんだが飯だ。ずっと飲まず食わずだったんだ。まずは英気を養いな」

勇者「……」

オーク「あの嬢ちゃんはずっと付きっ切りで看病してたんだぜ。その嬢ちゃんに報いるためにも食いな」

勇者「……」

勇者は食事に手を付けた!

勇者「…うまい」

勇者は勢いよく食べ始めた!

勇者「うっ…ううっ…」

勇者は泣き始めた!

勇者「うっ…くそ、もう泣かないと誓ったのに…」

オーク「誰にだって泣きたくなる日はあるだろ」

勇者「うっ…うっ…」バクバクッ

オーク「泣きながら食うなんて器用な奴だな」

勇者「ただ泣いてるだけの時間なんてない。強くならなくちゃいけないんだ!」

オーク「お、おう。というか、絶食からそんな一気に食べると…」

勇者「うっ」

ぎゅるるるるう

勇者「と、トイレ!」

オーク「言わんこっちゃない」


エルフ「……」

勇者「あの」

エルフ「なに?」

勇者「その、ありがとな。ほんと、色々と」

エルフ「別に」

勇者「…俺、強くなるよ。やっぱり、誰かを信じるために。信じた誰かを守れるくらいに」

エルフ「…ふん、勝手にしろよ」

勇者「それだけ伝えたかったんだ。本当に、ありがとな」

エルフ「…その」

勇者「ん?」

エルフ「その…お前は不甲斐ないヘタレだ」

勇者「…ああ、そう思われても仕方がない」

エルフ「お前を勇者なんて呼んでやらない」

勇者「ああ。右腕もこんなだしな」

エルフ「だから、お前が、本当に勇者になれるか、その、見届けてやるよ」

勇者「…え?」

エルフ「だから、魔王を倒す旅に同行するって言ってるんだ!」

勇者「あ…ああ。…よろしくな!」

エルフが仲間になった!

時は少し遡り…

中央国・南部。

傭兵1「やい! 赤騎士!」

赤騎士「お前たちは先ほどの…。どうして逃げなかった」

傭兵2「女の子を犠牲にしておいて、逃げられるか!」

傭兵3「彼女がいなきゃ、さっきの戦いで死んでいた! この命、餞になるならば惜しくない!」

傭兵4「皆、戻ってきたぜ! お前をこのまま帰らせてたまるか!」

兵士長「ここで引けば、男として胸を張って生きることができんからな」

赤騎士「愚か者たちめ…。だが、嫌いではない! 相手致そう!」

剣士「あのー、お取込み中悪いんだけど、人探しをしてるの」

赤騎士「…状況を考えろ、小娘」

剣士「ごめんなさい。でも、この辺りに右腕に包帯を巻いた男が向かったという話を聞いたの。綺麗な女の人も一緒と聞いたんだけど、あっでも綺麗といっても所詮メス豚だからそこは履き違えないで掃き溜めみたいなものよ、知らない?」

兵士長「その男女ならば、先ほどまで、この半人半馬の魔物と戦っていた!」

傭兵5「別嬪さんは赤騎士にやられちまったよ…。男は少女と一緒に何処かに飛んでいった…」

剣士「あのバカはまた、女と一緒なの。どうしてアタシがこんなに追いかけてるのに遠くに行くのよ。もしメス豚に毒されたりしたら消毒しなきゃいけないじゃない。ずっとアタシのそばにいればいいのに」ブツブツ…

赤騎士「もういいだろう、小娘。我々は命を懸けた戦いをしようとしている。これ以上水を差すな」

剣士「…あのバカは、アナタと戦って、負けたのね」

赤騎士「……」

剣士「アナタを殺すわ許さないアイツを傷つけていいのはアタシだけアナタなんかにその資格はない命で償いなさい」チャキッ

赤騎士「…無礼者め! 万死に値する!」

赤騎士の『連続魔』!
『究極破壊魔法』!
『究極破壊魔法』!

『天地崩壊』となった!

剣士は魔法を切り裂いた!

赤騎士「む!? ……『奇跡の腕輪』か!」

剣士の『会心の一撃』!

赤騎士の盾を切り裂いた!

赤騎士「チイッ…!」

剣士「まだまだ!」

剣士の『超・連続斬り』!

赤騎士「うおおおっ!」

赤騎士は辛うじて全ての斬撃を受け止めた!

赤騎士の『火炎斬り』!

剣士「ッッ!」

剣士は何とか躱した!

剣士の『疾風斬り』!

赤騎士「はあっ!」

赤騎士は剣で受け止めた!

赤騎士「…やるな!」

剣士「アンタもね!」

2人は距離を取って睨み合う!

・・・

赤騎士「はあはあ…! 喰らえい!」

赤騎士の『亜空切断』!

剣士の肩を掠めた!

剣士「ぐううぅ…!」

剣士の肩の肉が空間ごと削ぎ落とされた!

剣士「…いい加減、くたばりなさいっ!」

剣士の『会心の一撃』!

赤騎士「うがああっ!」

赤騎士を倒した!

赤騎士「…よもやこの私が、敗北するとは」

剣士「はあはあ…。よく、言うわ…アンタ、分身か何かでしょう?」

赤騎士「…そこまで見抜いているとは」

剣士「なんか、そんな気がしただけ」

赤騎士「…天才的な勘の持ち主だな。貴様の言う通り、私は本体の全力を出し切れない分身だ」

剣士「…本物はまさに化け物ね」

赤騎士「貴様も大概だがな。貴様からは、まるで魔物――魔王に似たものを感じるな」

剣士「ふん、勝手なことを言わないでよね」

赤騎士「…次に戦う時は全力でやらせてもらうぞ」

赤騎士の分身が消えた!

剣士「もっと強くならなきゃね…」

剣士「ん、なんか落ちてる?」

剣士は『閃光スカーフ』を手に入れた!
剣士は『祝福の指輪』を手に入れた!

剣士「…使えそうね。貰っておきますか」

剣士「しかし、アイツの足取りが掴めなくなっちゃったな…でも、この辺りにアイツの匂いがまだ残ってる…」クンカクンカクンカクンカクンカ…

西の国・オアシスの町

赤騎士「……」

黄竜「いやー、無血で占領できてよかったねー」

赤騎士「…ああ」

黄竜「どうかしたの?」

赤騎士「中央国南部に置いてきた分身が消えてしまった」

黄竜「…君が人間に負けたのー?」

赤騎士「おそらくは。…分身が負けたときは、前線の魔物に撤退の命令を下している」

黄竜「つまり?」

赤騎士「中央国南部の占領地は軒並み解放されるな」

黄竜「うへー。君の努力が無駄の泡じゃん」

赤騎士「この侵攻で亡くなった兵が浮かばれんな」

黄竜「たしかにねー。緑鬼は何してるんだか」

伝令魔物「赤騎士さま」パタパタッ



黄竜「……どうして伝令は赤騎士にだけ報告してくんだー」

赤騎士「お前が伝令の話を聞いてると寝るからだろう」

黄竜「……だって、まどろっこしいんだもーん。それで何だって」

赤騎士「現在の状況報告だ。緑鬼は内地に戻った。療養が終わり次第処罰が下される」

黄竜「そりゃーねぇ」

赤騎士「青魔導師は引き続き例の件に携わっている」

黄竜「青魔導師も心配だなあ。ドジばっかりするし」

赤騎士「私はあの子についてはあまり心配していない。部下に恵まれているしな」

黄竜「やっぱり娘は可愛いもの?」

赤騎士「まあ、否定すれば嘘になるな」

黄竜「子煩悩だー」

赤騎士「それ程でもないさ」

続きは今夜にでも

北の国・剣の山

勇者「なぜ、オークはこんなところに住んでるんだ?」

オーク「切った張ったの世界に飽きたのさ。ここらは険しすぎて人も寄り付かんから隠遁にはもってこいだ」

勇者「なるほどな。それじゃ、どうして俺たちを助けてくれたんだ?」

オーク「昔、行き倒れたとき、エルフの一族に助けてもらったのさ」

勇者「へえ、エルフたちが…」

オーク「彼らは心優しい種族だからな。そんなわけで、その借りを返そうと思ってな」

勇者「そういうことだったのか。だが、エルフの一族もほとんど滅びてしまったのは知ってたか?」

オーク「…なんだと?」

勇者「魔物の侵攻でエルフの森は焼き払われたらしい」

オーク「そうだったか…。嬢ちゃんには酷いことをしちまったな」

勇者「あの、緑鬼とかいう魔物は許せない」

オーク「緑鬼だと!?」

勇者「知ってるのか?」

オーク「あ、ああ。まあ、四天王だからな。緑鬼がエルフの森を…?」

勇者「ああ。俺も見たわけじゃないが」

オーク「…そうか」

勇者「緑鬼を知っているということは、赤騎士という魔物も知ってるか?」

オーク「もちろん。彼はとてつもなく強いな。彼より強いのは魔王さまくらいじゃないか」

勇者「…魔王は赤騎士より強いのか?」

オーク「なんと言っても、魔物を統べる者だからな」

勇者「…さすがは魔王といったところか」

勇者「他の四天王は?」

オーク「俺も魔物だからな。あまりそういった情報は口外したくないが」

勇者「それもそうか……」

オーク「まあ、話してもいい範囲だけ話そう」

勇者「頼む」

オーク「黄竜という魔物と青魔導師という者が残りの四天王だ」

勇者「黄竜、青魔導師」

オーク「ああ。黄竜は電撃攻撃や素早い攻撃を得意とするドラゴンで、青魔導師は青魔法を得意とする魔法使いだ」

勇者「青魔法?」

オーク「一般的な魔法とは一線を画す魔法だ。魔法も珍しいが、青魔法はもっと珍しいし、特異だ」

勇者「連続魔みたいなものか?」

オーク「連続魔とも違うな。連続魔は、魔法の頂点ともいうべき力だ。青魔法は、毛色の違う魔法」

勇者「普通の魔法から縦にずれるか横にずれるかといった感じか?」

オーク「そうとも言えるな」

勇者「うーん」

オーク「すまないが、これ以上は言えないな」

勇者「分かった、ありがとう」

オーク「俺も聞きたいことがある」

勇者「ん?」

オーク「その右腕だ」

勇者「これは、その…」

オーク「女神の力だろう? 魔王を倒すための」

勇者「まあ、一応…」

オーク「その右腕が、そんな形なのにはどういう意味があるんだ?」

勇者「その…女神が渡す力を間違えたらしい」

オーク「…難儀してるんだな」

勇者「ははは…」


数日後

オーク「麓の村までは少し遠いが、日没までには着くだろう」

勇者「うん。お世話になった」

エルフ「一カ月近くも本当にありがとう」

オーク「困った時はお互い様さ。険しいから気を付けて降りなよ」

勇者「うん。達者で」




エルフ「これから、どうするの?」

勇者「一度、村に降りて考えよう」

エルフ「なんだ、無計画だな」

勇者「取り敢えず情報を集めたいんだ。このまま南部に下ってもまた二の舞を踏むだけだし」

エルフ「それは確かに」

勇者「魔物たちは西国からも侵攻しているらしいし、そちらに対する情報も欲しい」

エルフ「魔王を倒すまで長い道のりになりそうだ」


北国・剣の山麓の村

勇者「何とか日没に間に合ったな」

エルフ「途中で魔物から色々とかっぱらってきたから、換金すればお金にも困らなそうだ」

勇者「手癖の悪さも役に立つもんだな」

エルフ「処世術だよ」

勇者「しかし、この顔と右腕を何とかしないと、村に入れないぞ」

エルフ「それじゃ、ここでお留守番だな」

勇者「おい」

エルフ「冗談。間に合わせだけど包帯を巻こう。今は、その、振動しないみたいだし…」

勇者「見苦しくて、ごめんな」

エルフ「仕方ないさ。問題は顔のヤツだな」

勇者「うーん、どうすればいいかな?」

エルフ「顔も包帯を巻けばいいんじゃないか?」

勇者「いや、さすがにおかしいだろ」

エルフ「そこは酷い怪我をしたということで。宿を取ったら引きこもってれば大丈夫だろ」

勇者「うーん…」


宿屋「…では、ごゆっくり」

エルフ「ほら、大丈夫だったでしょ?」フフン

勇者「めっちゃ、不審な目で見られたけどな」

エルフ「借りられたんだからいいじゃないか」

勇者「それはそうだが…」


・・・

エルフ「ふう…。温泉って素晴らしい」ホカホカ

勇者(…女の子の湯上り姿って色っぽいよなあ)

勇者(普段は色気なんてないのに、妙に意識してしまう)

エルフ「……?」

勇者(顔立ちはちょっと中性的で、あどけなさがあるけど、そのせいで女性的な亜麻色の綺麗な髪がより引き立てられているというか)

エルフ「な、なにジロジロ見てんだよ」

勇者(しかも湯上りで紅潮した頬がその童顔と相俟って不思議な妖艶さを演出していて…)

勇者「…可愛いな」ボソッ

エルフ「ば、バカ! 急に何言い出すんだよ……」

勇者「あ、こ、声に出してたか?」

エルフ「……」プイッ

勇者(う…恥ずかしい…)

エルフ「…温泉」チラッ

勇者「え?」

エルフ「今なら誰もいないから入ってきたらどうだ?」

勇者「あ、ああ。…そうするよ」



エルフ「きゅ、急に変なこと言いやがって、あいつめ…」

エルフ「か、可愛いか…」

眠いから続きは明日で。

翌日。

エルフ「じゃあ、おれが情報を集めてくるから大人しくしてろよ」カポッ

勇者「なあ、エルフであることを隠すのは分かるけど、どうして男のフリするんだ?」

エルフ「その方が都合いい…というかエルフの女とバレると最悪だからな…。これも処世術さ」

エルフは出かけていった!


勇者「…ふう、ここしばらくあいつがそばにいたから一人になると変な感じだな」

勇者「…処世術、か。あいつも大変なんだよな」

勇者「俺はあいつのために何ができるんだろう?」

勇者「取り敢えず今は大人しくしておくか」

エルフが帰ってきた!

勇者「ん、お帰り。どうだった?」

エルフ「中々興味深い情報が聞けた。新聞も買ってきたぞ」

勇者は新聞の見出しに目を通した!

勇者「…中央国南部を魔物から奪還した!?」

エルフ「ああ、世界中で大きなニュースとなっている」

勇者「中央国と魔国の海峡以南まで、魔物を撤退させた。……立役者は勇者の再来と思われるみめ麗しい処女(おとめ)」

エルフ「だってさ」

勇者「あ、赤騎士はどうしたんだ?」

エルフ「…侵攻部隊のリーダーは倒されたらしい」

勇者「この、みめ麗しい処女に? なんだか、きな臭いな」

エルフ「あの赤騎士を倒せるとしたら、魔法に対して、対抗手段を持ち、剣術で彼に劣らない戦士だろうな…」

勇者「あ、俺と同じ東国出身と書いてる。…いや、まさかな」

エルフ「あれ程の強者を一人で倒せる人間…そんなのがいるとは思えないが」

勇者「もしかしたら、魔物の作戦の一つだったりするかも…現時点では何とも言えないが」

エルフ「もっと情報が欲しいな」

勇者「ああ」

エルフ「まあ、でも明日は食糧の買い足しに行ってくる」

勇者「そうか…。洗濯から何から任せきりで本当にすまない」

エルフ「酷い怪我人という設定だから仕様がないさ。その分、野営時は任せた」

勇者「ああ」

エルフ「…しかし、その右腕だけでも、何とかならないのか?」

勇者「ん?」

エルフ「元の手に戻したりできないのか?」

勇者「何回か試してみたけど、無理だった」

勇者「……いや、でも待てよ。女神さまほどの変態の力だ」

勇者は包帯を解いて右腕を変化させた。

エルフ「お、普通の右腕になったな」

勇者「…いや、これは俺の腕じゃない。ほら、左右を比べてみろ」

エルフ「ん、確かに右腕の方が綺麗だ。細さと筋肉の均整がとても綺麗に取れている」

勇者「これも一応女神さまのエログッズだろうな」スッ

さわっ

勇者の右腕がエルフの耳を撫でた!

エルフ「んっ、な、何すんだ! ふぁっ…」

勇者「い、いや右腕が勝手に動いて!」

さわさわっ……

エルフ「や……ちょ、ちょっと……んんっ、ほんと、やだ! あんっ」

勇者「あわわ…」

むにむに……

エルフ「あっ……んっ……だ、だめ……やっ……そんな、とこっ」

ついー……

エルフ「ひうっ……!」

くちっ……

エルフ「そ、そこはぁ……やぁ……はぅ……ぁ…んっ…んんっ……ふっ……あぁ…っ!」

さすさすっ……

エルフ「あんっ……つよく…ひゃっ……ぁぁ……しひゃ……」ビクビク

きゅっきゅっ

エルフ「ひゃあっ……んんっ……んあっ!!」ビクビクンッ

勇者「」

エルフ「はぁ…はぁ……」ぐてっ

・・・

エルフ「…この辺で許してやる」

勇者「はひっ、ふみまへんへしは……」ボロボロ

エルフ「…この淫獣」

勇者「うう、女神さまの力のせいなのに…」

エルフ「なに?」ぎろっ

勇者「なんでもないです」

エルフ「……」

勇者「……」

エルフ「…せ」

勇者「せ?」

エルフ「責任、とれよ」

勇者「せ、責任…? どうやって? 」

エルフ「…今のは撤回だ。誰がお前なんかに…」

勇者「あ、はい。…良かった」

エルフ「……」むかっ

エルフ「『電撃魔法・中』!」

勇者「あばばばば」


翌日。

毎度ありー

エルフ「さて、必要なのはこんなものか」

娘「…まったく、この私が使い走りをするなんて」

ガッ

娘「きゃあっ!?」ドテッ

エルフ(何もないところでコケてる…)

娘「うっ、うっ……痛いですわ」

エルフ「あー、お嬢さん。大丈夫? 荷物が散らかってるよ」ヒョイヒョイッ

娘「あら、坊や。ご親切にどうも」


エルフ「……?」ヒョイヒョイッ

娘「…まったく、どうして私がお使いをしなくてはいけないのかしら」ブツブツ

エルフ「それでは、失礼」

娘「助かりましたわ。御機嫌よう」



エルフ「あの女から魔力を感じた。…尾けてみるか」

村から南の森。

エルフ(随分と村から離れたところまで来たわね)

娘「うう……痛いですわ……」

エルフ(というか、さっきから何回コケてるの。見てるこっちが冷や冷やするわ…)

娘「はあ…疲れましたわ」トボトボ…

エルフ(…やっと目的地に着いたのみたい)

猫娘「随分と遅かったですニャ。また道に迷いましたかニャ?」

娘「失礼な! まっすぐ来れましたわ! …帰りは」

淫魔「相変わらずですね。そういうところも可愛いんですけど。ふふ、食べちゃいたい」ペロッ

娘「……」ぞぞっ…

淫魔「…ふふ、怯えてる顔も可愛い」

娘「とにかく疲れましたわ。四天王ともあろう私を使い走りにするなんてなんて酷い部下たちなんでしょう」

淫魔「だって、それが一番怪しまれませんからねぇ」

娘「あなたも人間とほとんど変わりないと思いますけれど」

猫娘「淫魔に任せたら村中の女の子を堕とすまで帰ってこニャくなりますから」

淫魔「うふふ……」

娘「だからって……!」

猫娘「分かりましたから早く、中に入りましょうニャ」



エルフ(…こんなところに相応しくない実力の魔物たちね。しかも、四天王?)

エルフ(…とりあえず帰って、あのヘタレに伝えよう)

ゴッ

エルフ「…っ!?」くらっ…

バタッ

蜘蛛娘「尾けられたのね。やっぱり抜けてるわねえ」

骨娘「殺しちゃうべきカシラ?」

蜘蛛娘「まずは下に連れて行きましょう」




勇者「……遅いな」

勇者「もう日が暮れたぞ。何してるんだ?」

勇者「…………」

勇者「探しに行くか」

・・・

勇者「すみません」

商人「もう店仕舞いだよ」

勇者「いや、買い物じゃないです。ええと、帽子を被った少年が買物しにしませんでしたか?」

商人「ああ、来たね。旅の途中みたいだったな。連れ合いかい?」

勇者「その後、どこに向かったか分かりませんか?」

商人「さすがに知らねえな。……そういや、そのお客の後に尾行するような感じだったかもな。気のせいかもしれねえが」

勇者「そうですか」

商人「んん、暗くて見えなかったが、アンタそんなに包帯を巻いてケガでもしてんのか?」

勇者「い、いえ。ありがとうございました」

勇者はそそくさとその場を後にした!

勇者は更に聞き込みを続けた!
しかし有力な情報を得られなかった!

勇者は一旦宿に帰った!
エルフはまだ帰っていなかった!

勇者「…嫌な予感がするな」

勇者は更に聞き込みを続けた!

村人「ああ、南の方の森に向かっていくのを見たな。最近あそこらへんは魔物がよく出没するんだよな」

勇者は村の南に向かった!

勇者(…無事でいてくれよ)

・・・

勇者「…ん? 小屋か?」

ヒュッ!

勇者「っ!?」

勇者は背後からの攻撃を何とか躱した!

蜘蛛娘「あら、ニンゲンのくせにやるわね」

骨娘「ニンゲンは皆殺しヨ」

勇者「…この辺りの魔物にしては強そうだな」

蜘蛛娘「んふふ、勘が鋭いわね」

勇者「…この小屋に何かあるのか?」

蜘蛛娘「さあね。アナタが知る必要はないわ」

骨娘「ここで死ぬんだからネ」

勇者「人探しをしてるのに面倒だな」

蜘蛛娘「んふふ、もしかしてエルフの娘さんかしら?」

勇者「…彼女をどうしたんだ?」

骨娘「それも知る必要ないワ」バキバキバキ……

勇者「女の魔物には負ける気がしないな」

エルフ「……ん」

淫魔「あら、お嬢さんのお目覚めよ」

エルフ「……ぐっ!」ガシャッ

エルフは鎖に繋がれている!

娘「あなたは何者ですの? どうして私の後を追ってきましたの?」

猫娘「まったく、尾けられるなんて爪が甘いですニャア」

娘「だ、黙らっしゃい!」

淫魔「質問に答えてちょうだい。回答次第ではあなたの処遇も変わるわよ」

花娘「現段階だと、処刑……」

エルフ「…おれは、エルフ族の生き残りだ」

鳥娘「エルフ族って緑鬼に滅ぼされたんだよね? かわいそう!」

屍娘「あうー」

淫魔「どうして、ここまで追ってきたのかしら?」

エルフ「…魔力を持つ者が、ここにいるのは怪しいと思ったからだ」

猫娘「それはたしかに」

花娘「魔力を感知できるなら、魔法も使える……?」

鳥娘「魔法が使えるなら、ボクたちに協力してくれないかな?」

エルフ「……」

娘「『絶対にいや。わたしは魔物を許さない。緑鬼ふくめて根絶やしにしてやる』」

エルフ「!?」

花娘「驚いてる…」クスクス

娘「私、他人の心の中が読めますの。あなたの心の中は、すでに全部読み取りずみですわ」

淫魔「さっきまでのは、ちょっとした戯れよ。うふふ、案外素直なのね」

エルフ「っ!」キッ

青魔「動揺を怒りで誤魔化そうとしても、私には全て筒抜けですわ」

エルフ「…あの間抜けた行いの数々も欺くためか」

淫魔「あ、それは素なのよね」

娘「え、演技ですわ! わ、わたくしは名女優なのですわ!」

エルフ「……」

娘「そこ! 私に対する心象を改めないでくださる!?」

猫娘「あのー…提案ニャのですが、この長い長いモグラ生活の成果である『古代魔法』を試しませんか?」

娘「うふふ、そうですわね。あと、不満は私に向けられても困りますわ」

エルフ「な、なにをするつもりだ」

娘「うふふ…ちょっとした実験ですわ」

娘「古代魔法『憎悪極限化』!」

エルフ「……っ!」ドクッ

――「2人だけでも生き延びて……!」

やだよ、お母さん……!

――「うう、お姉ちゃん……」

ねえ、起きて……起きてよ!

――「ひゃあっはっはっは!! おら、もっといい声で泣け!」

許さない……殺す……殺すっ!!

――「おい、エルフのメスだぜ。捕まえれば高値で売れるぜ」

人間も、最低だ……!

誰か助けてよ!

どうして誰も助けてくれないの……!

……みんな、みんな殺してやる!! 殺してやるんだから!!




蜘蛛娘「くっ、このワタシがニンゲンに遅れを取るなんて……あぁっ……んん……あひっ!」ビクビクッ

骨娘「ア……ン……ンン……ファ……ンアアアッ!」ビクビクンッ

勇者「エルフの居所を吐いてもらおうか。そしてお前たちのことも」

蜘蛛娘「ぜ、絶対に話さないわ……っ」

勇者「抵抗するなら……」

勇者は右腕の力を更に強くした!

蜘蛛娘「あひいいぃぃぃ!!」

勇者は右腕の力を更に強くした!

蜘蛛娘「んほおぉぉぉぉ!!」

勇者「これでもまだ話さないか?」

蜘蛛娘「は、話すからあぁぁぁ! もういやああぁぁぁぁ!」

骨娘「」ピクピク

続きはまた明日で

・・・

勇者「……こんなボロい小屋に隠し階段があるなんてなぁ」コツン…コツン…

勇者「おっ、扉だ」

勇者は扉を開けた!

娘「うふふ、来ましたわね勇者、女神に選ばれし人間」

勇者「……」

娘「うふふ、私は四天王が一柱、青魔導師ですわ」

勇者「……上にいた魔物から話は聞いた。ここは古代文明の遺跡らしいな」

青魔「ええ、その通り。そして私は古代魔法を解明するために此処に来たのですわ」

猫娘「ここまで来たということは、見張りたちを倒したということだニャ」

青魔「私の大切な部下を傷付けた報い、受けて貰いますわ!」

勇者「お前こそ、俺の仲間を返せ!」

青魔「うふふ、それは貴方しだいですわ」

「『火炎魔法・大』」

勇者「っ!?」

勇者は右腕で魔法を防いだ!

勇者「…どうしたんだ、その姿は」

「憎しみに心を堕としたエルフは闇の力を得るのよ」

ダークエルフ「勇者…憎むべきニンゲン…」

勇者「どういうことだよ…」

ダークエルフ「わたしが断罪するわ」

ダークエルフの『電撃魔法・大』!

勇者は辛うじて防ぐ!

勇者「青魔導師! 彼女に何をした!」

青魔「少し古代魔法をかけただけですわ。見た目まで変わったのは想定外でしたけれどね」

勇者「古代魔法だと?」

青魔「かつての魔大戦で失われた魔法ですわ。心や感情、記憶を意のままにできる恐ろしき魔法」

ダークエルフの攻撃!

勇者「…しまっ!? ぐううぅっ!」

ダークエルフ「青魔導師さまはわたしを楽にしてくれた。わたしは、やっとわたしらしくなれたの」

青魔「うふふ、ダークエルフ、その憎らしい男を殺してしまいなさい!」


ダークエルフの攻撃!

勇者「ぐっ……」

ダークエルフ「――わたしは、臆病者だった」

ダークエルフの攻撃!

勇者「ううっ……」

ダークエルフ「憎悪を抱えているのに、復讐したいのに、殺すことをずっと躊躇っていた」

ダークエルフの攻撃!

勇者「ごふっ……!」

ダークエルフ「けれど、憎しみが最大にまで達したとき、悟ったの」

ダークエルフの痛恨の一撃!

勇者「ぅ……」

ダークエルフ「この憎しみに身を委ねれば、わたしは強くなれる。そして復讐することができると」

ダークエルフの止めの一撃!

勇者は左腕で受け止めた!
左腕が折れた!

ダークエルフ「……!」

勇者「――違うよ」

ダークエルフの一撃!

勇者「かひゅっ…!」

ダークエルフ「……」

勇者「君は、臆病者…なんかじゃ、ない」

ダークエルフ「……」

勇者「強いから、憎しみに、染まらなかったんだ」

ダークエルフ「……」

勇者「……俺は強い君に勇気を貰った。だから、また、立ち上がれたんだ」

ダークエルフ「…うるさい」

青魔(心に揺らぎが…?)


勇者「俺はまだまだ弱いままだ。それでも君を信じたい」

ダークエルフ「うるさいっ!! あなたに何が分かるのっ!? 」

勇者「君が優しくて強い人だということは知ってるさ」

ダークエルフの『凍結魔法・大』!

勇者の下半身が凍りつく!

勇者「ぐっ……うぅ……」

ダークエルフ「氷漬けになって死になさい!」

勇者「……君を、信じる…よ」

勇者は完全に凍り付いた!

ダークエルフ「……」

青魔「…さあ、ダークエルフ! 勇者を粉々に砕きなさい!」


ダークエルフ「…………ほんと、バカだな、お前は」


ダークエルフは『火炎魔法・中』を唱えた!

勇者の体が氷解していく!

青魔「なっ!?」


ダークエルフ「『わたし』の邪魔をしないでっ! 臆病者は眠ってなさい!」

ダークエルフ「憎しみのままに行動するのが勇敢なわけないだろ!」

ダークエルフ「『わたし』こそが本当のわたしなの! 強がってる子どもは引っ込みなさい!」

ダークエルフ「強がることもできない『わたし』が一番臆病だろうが! 強がることもできない甘えん坊が『おれ』の体を使ってるんじゃない!」


ダークエルフ「――あああああああぁぁぁぁぁッッッ!!」

ダークエルフは辺り構わず魔法を乱発した!


淫魔「くっ、暴走しているわね!」

猫娘「相変わらず、青魔導師さまは爪が甘いですニャア」

青魔「わ、私の古代魔法は完璧だったはずですわ!」

花娘「きゃあっ……!」

鳥娘「うわああぁぁぁ!」

ダークエルフ「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」

猫娘「ニャアアァ…!」

淫魔「ああぁ…」

ダークエルフは『火炎魔法・極』を放った!

青魔「くっ!」

青魔導師は『泡沫の吐息』を放った!
火炎を打ち消した!

ダークエルフは力の使い過ぎで倒れた!

青魔「みなさん、ご無事!?」

返事は返ってこなかった……

青魔「…ゆ、許せないですわ! よ、よくも…!」

勇者「それは、こっちの話だ」

青魔「…そんな瀕死の体でまだ立ち上がりますの?」

勇者「負けるわけには、いかないんだ」ググッ

青魔(……! なんて真っ直ぐな心なんですの!?)

青魔「…それはこちらも同じですわ!」

青魔導師は『旋風魔法・大』を放った!

勇者「……ぅ」

勇者の脆くなっていた下半身が砕け散った!

辺り一面に夥しい血が溢れた!

青魔「強がっても、もう棺桶入り間近ですわね!」

勇者(俺が、死んだら、エルフも……)

勇者(……もう、喪うのは、いやだ…)

勇者(どんな力だろうが、強い力だっていうなら……)

勇者「俺に、チカラを、よこしやがれエエェェ!」

勇者の魂が、女神の力と同化する!

勇者「ウオおオオオオォォぉォォッッ!!」

ボコボコボコボコッ……!

青魔「なっ、ケガが治ったですって!?」


勇者?「…………ふん」

青魔(こ、心が読めないですわ…!?)

勇者?「小僧のやつ、力に食われやがったか」

勇者?「完全に同化できて、『右腕』だけという不完全な表出が治ったのは良かったんだがな」

勇者?「まあ、後は全て俺に任せてお寝んねしてな」ヒュッ

勇者?の放った紐が、青魔導師を拘束する!

青魔「きゃあっ!?」

勇者「顔の焼印も消すか。俺の責任みたいなものだったしな」シュウウウ…

青魔「は、離しなさい! 私に、な、なにをするんですの!」

勇者?「心配しないでくれ。君を快楽漬けにするだけさ」

青魔「心配しかありませんわ!」

勇者「すぐに君は俺が好きになるさ。エロに関しては世界一だからね、俺は」

青魔「なっ!? は、恥を知りなさい!」

勇者?「精々強がってくれ。その方がやり甲斐があるというものさ」

青魔「か、快楽なんかに負けたりいたしません!」

勇者?「いいね、その言葉」

・・・

青魔「あっ、あひっ……!」

勇者?「指でされるのは気持ちいい?」クチュクチュ

青魔「こ、このていど、んっ…なんとも……」ビクッ

勇者?「ちなみにこんなこともできる」ブゥゥゥン…

青魔「ひんっ…し、振動して……!」

・・・

勇者?「もう下の口はぐじゃぐじゃだな。肘までベトベトだ」ニッチャニッチャ…

青魔「あっ、ああ……ん、ん……」グタッ

勇者?「……」

ズニュウッ

青魔「んほおぉぉっ!?」

青魔(そ、そんな……このような男に……)ポロポロ…

勇者?「泣くほど悔しい? でもさ……」

青魔「んひっ、んくっ、んあっ、あっ、あっ、あっ……!」

勇者?「とっても、だらしない顔してるよ」

青魔(く、悔しいのに、どうしてこんなに……気持ちいいんですの?)

勇者?「俺は痛みを快楽に変えることもできるからね。処女でも気持ちいいままだろう?」

青魔「あっ、んはっ……」

勇者?「ほら、もっと乱れなよ」チュッ

青魔「んむっ!? …んんっ……んっ…ふ…ん……はふ」

ちゅっ、ちぐっ、くちゅ、れろ…

青魔「ふぁ…ぁ…」とろん…

勇者?「可愛いね」なでなで

青魔「ふにゃぁ…」

ズンッ

青魔「んあっ……!」ビクゥッ

勇者?「少し激しくするよ」

ズッ、ズッ、ズッ……

青魔「んあっ…まっ、まってぇ、こわい、怖いぃ……」

勇者?「大丈夫だよ。ほら、捕まって」

青魔「あうぅ…」ぎゅー

青魔(もう、頭の中、まっしろですわ…すべて、忘れてしまいそう)

ヌッチュ、ヌチュ、ヌプ、ズリュッ……

青魔「んっ、んんっ、んはっ、あんっ!」

勇者?「はは、腰が動いてるよ。優秀だね」

青魔「……っ!? うぅ…」

勇者?「そのまま乱れてなよ。その方がもっと気持ちよくなれるよ」

青魔「もう、いやぁ…いやですわ……」ひっくひっく…

勇者?「大丈夫だって」チュウッ

青魔「んっ、んむ、あぅ……」

青魔(こんなの、ダメですのに……そう思えば思うほど、気持ちいいですわ……っ)

ヌプッヌプッヌプッヌプッ……

勇者?「そろそろ出すよ。一緒にイこうか」

青魔「は、はひぃ…」

青魔(もう……このまま……)

パンッパンッパンッパンッパンッ……!

勇者?「……イくぞ!」ビュルビュルッ

青魔「あっ、あっあっあっ……!」

青魔(す、すごいですわ…! あたたかくて、気持ちいい……)

ビューッビューッッ!

青魔(ああ……もうダメ)

勇者?「…はは、堕ちたな」

青魔「は、はいぃ…! もう、身も心も堕とされましたわ……好き、好きですわ、勇者さま」ちゅっ、ちゅうっ…

勇者?「ふふ……」ナデナデ

勇者?「まだまだ、終わりじゃないぜ」

青魔「……え?」

・・・

青魔導師が仲間になった!

勇者「ふう…こんなもんか」

エルフ「……」すーすー

青魔「勇者さまぁ、好きぃ……」すやすや

勇者?「さてと、こいつらを連れて帰らないとな」

ドクンッ

勇者?「…ふん、小僧め。思っていたよりしぶといな」

勇者?「俺はもうお役御免ってか? 別にいいけどよ」

勇者?「困ったら、また代わってやるよ。…それが嫌なら、強くなりな。俺を感心させるくらいな」

勇者?「じゃあな」

勇者「…………」

勇者「これじゃ、助けられてるのと何も変わらないじゃないか」

勇者「……強くならなければ、もっと、もっと。」

勇者「この力も信じられるようになれるくらい」

「フォフォフォ、悩める少年よ、思春期だのう!」

勇者「なっ、誰だ!?」

「ワシじゃよ、ワシ。って分かるわけないのう! フォフォフォ!」

勇者「どこにいる!?」

「ここじゃ、ここ」

勇者は金属の箱を見つけた!


勇者「この中か……?」

勇者は恐る恐る箱を開けた!

中には何もなかった!

「フォフォフォ、この箱がワシじゃよ」

箱は老人に変化した!

「フォフォフォ、お主が勇者に選ばれた者じゃな」

勇者「あ、ああ」

「フォフォフォ、間違いなくかつての勇者よりも弱いのう!」

勇者「な……!」

「かつての勇者はその時代で一番の実力者じゃったがなぁ」

勇者「……」

「しかし、お主は一目で分かる凡人じゃ。およそ、女神さまが手違いを起こしたんじゃろうな」

勇者「……あんた、何者だ?」

「女神さまの力の具現化した存在――勇者の従者じゃゾイ」

勇者「従者?」

従者「左様。勇者の戦闘から生活までをサポートするのがワシの務めだゾイ」

勇者「…なぜここに?」

従者「…如何せん、先の魔王との戦いが熾烈を極めたからのう」

勇者「…1000年前の人魔大戦争か」

従者「うむ。ワシにとっては、つい昨日のことのようじゃが、そんなに時が経ったか」

勇者「…本当にそんな戦いが存在していたんだな」

従者「1000年も経てばそう疑われても仕様がないのう」

勇者「……」

従者「まあ、詳しい話はおいおいしようゾイ。今はそこの娘さんたちを何とかしてやるのが先決だゾイ」

勇者「それもそうだな。…二人を連れて行くのはキツいけど何とかなるかな」

従者「フォフォフォ、ワシの力を見せてやるゾイ!」

従者は勇者の身を包む強化服となった!

勇者「うおお?」

『これで楽に運べるゾイ』

勇者「すげえっ、爺さん、やるなあ」

『当然じゃゾイ!』

従者が仲間になった!


――中央国・王都

「うおー! 勇者さまー!」

「勇者さまー! 魔王を倒してくれー!」

剣士「…なんでパレードなんかやらなくちゃいけないのよ。しかも国を挙げて」

中央大臣「勇者さまは国に大きな貢献をした英雄ですから」

剣士「大したことしてないわよ」

中央大臣「謙遜なさらないでくだされ」

剣士「別に謙遜してるつもりはないんだけどね」

「…ん、おい!」

「なっ…あれは何だ!?」

上空から巨大な魔物が襲来した!

病魔「ゴハハハ! 小娘! 老龍と死の鳥を倒すとは、やるじゃないか」

剣士「…はあ」

病魔「四苦王も残り二柱となったが、その快進撃も終わりだ!」

剣士「アタシと戦うというのね?」チャキッ

病魔「ゴハハハ! 違う! お前を一方的に殺す! 俺は一瞬でこの王都の全人間を不治にすることができる」

剣士「王都全員を人質にするってわけ?」

病魔「ゴハハハ! そういうことだ!」

剣士「…一瞬で、ね」

剣士の『神速斬り』!

病魔を倒した!

剣士「一瞬より速ければいい話じゃないの」カチンッ

中央大臣(いつの間にか魔物の首が飛んでるんだが…)

剣士「ん、何か落としたわね」

剣士は『武神の籠手』を手に入れた!
剣士は『女神のオーブ』を手に入れた!

剣士「…籠手は有用そうだけど、オーブは魔法に関するもののようね」

剣士「魔法なんて使えないから、意味ないわ」

剣士「…………」

剣士「ねえ、大臣さん」

中央大臣「あ、は、はい」

剣士「アタシ、魔法を習得したいんだけど」

月野定規ばりのおとしっぷりですね



西国・砂漠の村。

赤騎士「食料に乏しくなってきたな」

黄竜「生産的にも運搬的にも食料の供給が制約されるからねー」

赤騎士「これ以上侵攻の速度を上げるのは無理だな」

黄竜「兵にも結構、無理を強いてるからねー。君がいるから、ギリギリ統率ができてるようなものさ」

赤騎士「…早くあの四苦王を見つけなければな」

黄竜「同じ魔物なんだからもっと積極的に協力してくれてもいいのにねー」

赤騎士「言っても始まらないさ」

続きはまた今度
>>203
あんなにネットリしたのは書けないっすわ

――宿屋。

エルフ「……ん」パチッ

勇者「ああ、起きたか。良かった」

エルフ「ここは? …何してたんだっけ?」

青魔「勇者さま! 大変ですわ!」

エルフ「…きさまっ! よくもっ、やってくれたな!」ズズズ…

青魔「な、なんですの! 貴方こそ、私の部下たちを殺したくせに…!」

勇者「取り敢えず、二人とも落ち着いてくれ」

従者「フォフォフォ、血みどろの抗争劇が始まるかのう」

ダークエルフ「人を侮辱して、許さないわ!」

青魔「それは、私のセリフですわ!」

従者「フォフォフォ! 譲れぬ戦いがここにあるのう!」

勇者「二人とも、もうやめろって! 爺さんも煽るな!」

・・・

エルフ「……なんでこの魔物が宿屋にいるんだよ?」ムスッ

勇者「それはだな…」

青魔「私は勇者さまに、身も心も委ねたのですわ」ポッ

エルフ「……」じとー

勇者「ま、まあ、色々と事情があってだな…」

従者「わしも見ておったが、凄かったゾイ。あんなエロテクは見たことがないゾイ」


エルフ「ふーん…」じとー

勇者「な、なんだよ」

エルフ「…エロ猿」ボソッ

勇者「おいっ!」

青魔「私、勇者さまに愛してさえいただけるなら、もう何も要りませんわ」ぎゅー

勇者「ちょ、ちょっと、あまりくっつかないで」

エルフ「……」イライラ

従者「ひゃー、修羅場だゾイ!」ワクワク

勇者「あー、もう!! 話が進まねえんだよっ!!」


・・・

勇者「状況を整理しよう。まずは青魔導師」

青魔「はい」

勇者「君が、どうしてこの土地にいたのか、もう一度説明してくれ」

青魔「私たちは、人間を効率よく征服するための手段を求めて、この地を調査していたのですわ」

従者「この辺りは、かつて魔法に優れた都市であったしのう…」

勇者「確かに、王族とか権力者が操られたりすれば、人間側は瓦解してしまうな」

青魔「ええ、私たちはかつての歴史を基に、古代魔法について調査していたのですわ。そして再現に成功したのです」

エルフ「ふん…」

青魔「いいえ、おりませんわ」

従者「取り敢えず、お嬢ちゃんが手元にいる間は古代魔法は脅威にはならんのう」

エルフ「ふん、いつ寝返るか分かったもんじゃない」

青魔「……」ムカッ

勇者(辛い…)

エルフ「だいたい、こいつは心が読めるんだ。そんな奴と一緒にいられるか」

青魔「まあ、貴方みたいに言動と心情が合致しない方は特にそうでしょうね」

エルフ「誰だって嫌に決まってるだろ!」

勇者「…初耳だな。心が読めるのか?」

青魔「え、ええ。まあ…」

勇者(…何か嫌な気持ちにしてしまうようなことを考えてなかったよな? …人の心を読むなんて辛いことの方が多いよな)

青魔「……!」キュンっ

青魔「勇者さま! そんな優しいところも好きですわ!」ぎゅうー

勇者「ちょ、ちょっと…」

ダークエルフ「……」

勇者「憎しみに染まるのやめて!」

・・・

勇者「つ、次にこの爺さんについてだ」

従者「ワシは勇者に見初められた哀れなジジイじゃ」ポッ

勇者「おいこら、ジジイ」

青魔「そんな! 私というものがありながら…」よよよ…

エルフ「節操なし」じとー

勇者「お前らも一々間に受けるな!」

従者「ワシはかつての勇者を支えるために生み出された者じゃ」

エルフ「かつての…って、あの伝説の勇者か?」

従者「うむ」

エルフ「それは心強いな」

従者「しかし、魔王は以前よりも力を増しているようじゃ。ワシには分かる」

勇者「……」

従者「片やこちらは以前よりも遥かにます勇者。参ってしまうのう」

勇者「うっ…」

従者「じゃからこそ、ワシの出番じゃ! ワシは、勇者の力になるため、様々な姿に変身できるゾイ!」

青魔「変身?」

従者「強化服、盾、弓、刀…スプーンからパンツまで網羅してるゾイ!」

勇者「パンツとかスプーンはちょっと…」

青魔「勇者さまが汚れてしまいますわ!」

従者「失敬じゃのう! フォフォフォ!」

勇者「…そういえば、青魔導師」

青魔「はい?」

勇者「さっき、『大変だ』とか言ってなかったか?」

青魔「…ああ、いけない! そうですわ! 魔物の群れが村に攻めてきたのですわ!」

エルフ「…もっと早く言えよ!」

続きはそのうち

>>214の最初一行が抜けてたよ\(^o^)/

勇者「君以外に古代魔法を使える魔物はいるのか?」

指摘ありがとう!

村の北端。

村人A「魔物の群れが出たぞー!」

魔犬A「ニンゲンを喰い殺せ!」

魔犬B「まずはこの村から滅ぼしてやる!」

魔犬C「いつまでもニンゲンの自由にさせてたまるか!」

村の西端。

村人B「きゃあぁ! 魔物よー!」

小鬼A「女を犯せー!」

小鬼B「男を殺せー!」

小鬼C「魔物こそ最強!」

村の南端。

村人C「ここにも魔物だー! 逃げろー!」

グールA「ナカマ、フヤス」

グールB「ナカマ、ナカマ」

グールC「ミンナ、トモダチニナル」

村の東端。

村人C「やばい! 村が囲まれてるぞ!」

大魔猿「ウキャキャ! あのブタもいなくなったし、オレサマの天下だ!」

大魔猿「いけ子分たち! !」

魔猿A「ウキャキャ!」

魔猿B「キキー!」

村の中央。

勇者「手分けして倒すぞ!」

従者「ワシは勇者の支援じゃ」

エルフ「一箇所、隙ができるぞ!」

青魔「殲滅させしだい、駆けつけましょう!」

村の南。

グールD「ナカマ、ナカマ」

グールE「トモダチ」

グールF「トモダチ、フエレバ、シアワセ」

グールG「シアワセ、シアワセ」

エルフ「『火炎魔法・大』!」

強力な火炎がグールたちを舐め上げる!

グールH「アツイ」

グールI「シンジャウ」

グールJ「モウ、シンデルヨ」

グールK「ソウダッタ」

エルフ「ああ、もう! あのヘタレも、あの女も意味が分からない!」

エルフは『火炎魔法・大』を放った!

グールL「ヒドイ」

グールM「デモ、トモダチ」

グールN「トモダチ」

グールO「ミンナ、トモダチ」

グールP「トモダチ」

エルフ「うるさい! さっさと成仏しろ!」

村の北。

魔犬C「ちっ、ニンゲンたちめ! 避難するのが早いな!」

魔犬D「追い込めばいい話だ!」

魔犬E「どうせ、ニンゲンごときでは我らには敵わん!」

青魔「あらあら、結構な数ですのね」

魔犬F「ニンゲンだ!」

魔犬G「喰い殺せ!」

青魔「可哀そうなワンちゃんたち。実力の違いが分からないのね」

青魔導師は『針千本』を放った!

魔犬たちの全身を数多の針が突き刺す!

青魔「愛する人のためなの。悪く思わないでくださいな」

村の西。

従者「ところで、お主は、エロ以外に何が得意なんじゃ?」

勇者「別にエロが得意なわけでもない! ずっと村の道場で、剣術の指導を受けてきた!」

従者「それじゃあ、竹刀になるかのう」ミキミキ……

勇者「竹刀かよ! そこは本物の剣になれよ!」

『殺傷能力は高いゾイ。因みに剣の腕前は?』

勇者「一応、道場ではニ番目に強かった」

『村の道場で二番手かい! パッとしないのう…』

勇者「うるさいな! 先輩が異常に強かったんだよ!」

『…まさか、一番に一度も勝ったことがないとか?』

勇者「…だっ、だって、あの人ほんとに強かったんだって! 先輩なら龍とかを倒してもおかしくないぜ!」

『大袈裟な。かつての勇者じゃあるまいし…』

勇者「…そんなことより、今は目先の敵だ!」

『小鬼の群れに連携を取られると厄介じゃゾイ』

勇者「まずは撹乱する」

勇者は左腕をバイブに変えた!

勇者「くらえっ! うっ…」ビュルビュルッ

バイブから大量の白濁ローションが放たれた!

小鬼D「うげえ! 何だこれ!?7

小鬼E「すげえヌルヌルしてキモい!」

勇者「それはな…猛毒だ!」

小鬼F「な、なんだってー!?」

小鬼G「毒だと!? 死にたくない!」

小鬼たちはうろたえている!

何匹か転んだ!

勇者(よし今の内に!)ミキミキ…

勇者は転んだ小鬼たちの頭を竹刀で思い切りカチ割っていく!

小鬼H「ひいいっ! 逃げろ!」

小鬼I「オレたちじゃ、ニンゲンに敵わないんだぁ!」

小鬼たちは逃げ出した!

『うーん、醜い戦法じゃのう』

勇者「殺し合いに綺麗も汚いもないだろ! それより、早く東に向かうぞ!」

従者は強化服に変化した!

『お主、中々戦闘に向いとるな』

何匹か転んだ!

勇者(よし今の内に!)ミキミキ…

勇者は転んだ小鬼たちの頭を竹刀で思い切りカチ割っていく!

小鬼H「ひいいっ! 逃げろ!」

小鬼I「オレたちじゃ、ニンゲンに敵わないんだぁ!」

小鬼たちは逃げ出した!

『うーん、醜い戦法じゃのう』

勇者「殺し合いに綺麗も汚いもないだろ! それより、早く東に向かうぞ!」

従者は強化服に変化した!

『お主、中々戦闘に向いとるな』

村の中央付近。

村人E「うう…つよい……」

大魔猿「ウキャキャ! もう戦えるヤツはいないのかよ!」

魔猿D「ウッキー!」

大魔猿「あっちにニンゲンたちが隠れてるのか! ウキャキャ! 皆殺しだ!」

エルフ「そうはさせない!」

大魔猿「ああん? 小便くさそうなガキだな」

エルフ「お前みたいな魔物は絶対に許さない!」

エルフは魔法を唱える!

大魔猿「む! こいつ、魔法を使うぞ! 糞投げだ!」

魔猿’s『ウッキー!』

エルフ「うわっ!?」

エルフは何とか回避した!
魔法の詠唱が中断された!

大魔猿「そのまま、休む暇なく攻め立てろ!」

魔猿E「キキーッ!」

エルフ「くっ!」

勇者「だああっ!」

大魔猿「なに!?」

勇者の体当たり!

大魔猿には当たらなかった!

魔猿’『ウキキッ!?』

魔猿たちは動揺した!

エルフ「『電撃魔法・大』!」

魔猿F「アキャキャッ!?」ビリビリッ

大魔猿「動揺すんな! こいつは俺がやる! お前らはあっちだ!」

魔猿G「ウキーッ!」

大魔猿「そうだ! 魔法を使わせるなよ!」

『フォフォフォ、中々指導力のあるボスじゃの』

勇者は右腕をムチに変えた!

勇者「所詮はお山の大将だろ」

勇者の攻撃!

大魔猿「おっと!」

大魔猿には当たらなかった!

勇者の攻撃!

大魔猿「くっ!」

大魔猿には当たらなかった!

大魔猿(くそっ! 躱せるが、反撃する隙がねえ!)

大魔猿「そんなん喰らわねえよ! 悔しけりゃ当ててみな! ウキャキャ!」

『安い挑発じゃのう』

勇者の攻撃!

大魔猿には当たらなかった!

大魔猿「ちっ、乗らねえか!」

勇者「…もう調整はいいか」

魔猿「あん?」

勇者「青魔導師!」

青魔「準備は万端ですわ!」

青魔導師は『針千本』を放った!

大魔猿「ギャアアアァ!!」

魔猿’s『ウキャキャッ!?』

魔猿の群れを倒した!

勇者の攻撃!

大魔猿「ガアアッ……」

大魔猿を倒した!

残りの魔猿たちは逃げ出した!

エルフ「逃がすか!」

エルフの『電撃魔法・大』

残りの魔猿を倒した!

勇者「ふう…。みんなありがとう」

青魔「いえ。ただ、待ち伏せて急襲しようという作戦なのに、飛び出ていくから驚きましたわ」

勇者「いや、エルフが危なかったから」

エルフ「別に危なくなんてなかった!」

勇者「どうして不機嫌なんだ?」

エルフ「別に」ぷいっ

エルフ(何よ、二人して協力しちゃって。私の方が一緒にいる時間が長いのに…)むすっ

青魔「あらあら、うふふ…」

エルフ「あっ!? ひ、ひとの心を勝手に読むなぁっ!」

青魔「読めてしまうものは仕方ないですわ」

エルフ「もう、本当にお前嫌いだ」

青魔「……」むっ

勇者「二人とも止めろって」

『若いのう、フォフォフォ!』

続きはそのうち。
間違ってグループLINEに送信して死ぬほど恥ずかしい。
エロの部分じゃないのがせめてもの救いだ。
マジでやっちまったよ……。

・・・

村長宅。

村長「本当にありがとうごぜえました」

勇者「いえ、当然のことをしたまでです」

村長「こんな小せえ村ですけ、あまり大したお礼はできねえです」

勇者「そんな、お礼なんて…」

エルフはこっそり『電撃魔法・小』を放った!

勇者「はうあっ!?」

村長「ど、どうなせえました!?」

エルフ「ちょっと体調が優れないようで…おやっ、これは大変なケガをしている!?」

村長「な、なんですって!?」

エルフ「先の戦いでの負傷でしょう。このままでは、生命が危ない!」

青魔「な、なんですって!?」

村長「はわわわっ! なにか手立てはねえですか!?」

エルフ「街の方に行けば特効薬が売っているでしょう…。しかし、今の我々ではおそらく購入できません」

従者「困ったのう…! 大変じゃのう…!」

村長「そ、そんだらオラたちもできる限り、お金を募るべ!」

エルフ「そ、そんな! 申し訳ないですよ!」

村長「いや、村の救世主のためだら、みんな惜しまず協力してくれるべ!」

青魔「感謝いたしますわ!」

村長「お互い様だべ!」

勇者「……」

・・・

宿屋。

エルフ「これで暫くはお金に困らないな」

勇者「…………」

従者「まだ気にしとるのか?」

勇者「だって、詐欺と変わらないじゃないか」

エルフ「だって、報酬金を取ろうとしなかったじゃないか。お人好しも大概にしろよ」

勇者「当たり前だろ。金稼ぎが目的じゃない」

従者「そうは言っても、金は要り用じゃゾイ。首が回らなくなってからじゃ遅いからのう」

勇者「それはそうだが…」

青魔「勇者さま。貴方様の善良な心はとても尊いですわ。しかし、あのエルフも心から喜んでやっているわけではありませんわ」

エルフ「ふん、貴様に肩を持たれるなんてな」

青魔「事実を述べただけですわ」

勇者「……すまない。確かに俺が子どもだったのかもしれない。ただ、次は俺が正当なやり方でやるから、もうああいった良心に漬け込むようなことはしないで欲しい」

青魔「……勇者さま!」ぎゅうっ

勇者「うおっ、な、なに?」

青魔「心から苦悩しているのが愛おしくて、つい」

勇者「そ、そうか。離してくれ」

エルフ「……」イライラ

従者「フォフォフォ、青春じゃのう」

深夜。

エルフ「……」

勇者「眠れないのか?」

エルフ「お前こそ」

勇者「これからのことを考えていたら、目が冴えてな」

エルフ「…腕」

勇者「ん?」

エルフ「元に戻ったんだな。それに顔の刻印も」

勇者「ああ、色々あってな…」

エルフ「ふうん」

勇者「なんだ、不機嫌だな」

エルフ「そりゃ、気を失ってる間に、魔物が仲間になってたり、変な爺さんが仲間になったり、お前の腕と顔が変わったりすれば、不機嫌にもなるだろ」

勇者「…それもそうか。でも君にも驚いた」

エルフ「何が?」

勇者「いや、肌の色とか変わったから、それに口調も」

エルフ「…激しい憎しみに心を堕としたエルフは闇の力に囚われる。強大な力を手に入れる代わりに別人格に支配されるんだ」

勇者「そういうことだったか…。エルフみんながそうなのか?」

エルフ「…一応は。だが、普通はならない。おれがああなったのは、あの魔物のせいだ」

勇者「青魔導師か…」

エルフ「なぜアイツを生かしてるんだ。あいつの力は危険だ。それに間者スパイかもしれないんだぞ」

勇者「君の気持ちは分かる。それに言っていることも正しい」

エルフ「そう言うなら、どうしてそうしない?」

勇者「実際の話、彼女を殺すことができるか?」

エルフ「いくら人間の姿をしていると言ったって、あいつは魔物だぞ」

勇者「いや、彼女は正真正銘の人間だ」

エルフ「……?」

勇者「君が気を失ってるあいだに少し話をしたんだ。彼女は元々『サトリ』という能力を持った人間だったが、野たれ死にしかけたところを赤騎士に救われたらしい」

エルフ「…また赤騎士か」

勇者「そして魔力を体に宿したんだ。その方法が特殊なせいで、彼女は君が使うような魔法は使えない」

エルフ「ああ、だから青魔法を使うのか」

勇者「君はそんな彼女を殺す覚悟はあるか?」

エルフ「…逆に訊きたい。お前は殺す覚悟がないのか?」

勇者「ん?」

エルフ「魔王が青魔導師と同じような境遇だったら、アイツのように人間と同じ姿をしていたら、殺せるのか?」

勇者「覚悟はある。大切な人たちを守るためならば、俺は覚悟ができる」

エルフ「…ふん、お前の言う守りたい者たちに殺しの責任を押し付けているだけのように聞こえるな」

勇者「実際、そうだ。だが、理由なく殺害できるほど人格がイカれてるわけでもないからな。信念が必要だ」

エルフ「……」

勇者「これは言葉で語れることじゃない。行動で示すものだ。その時が来たら俺は魔王を殺してみせる」

エルフ「…その時が来る前にくたばらないと良いけどな」

勇者「ははは、それは頑張るしかないな」

エルフ「…もし、青魔導師が裏切ったらどうするつもりだ」

勇者「君や自分を守るために殺すさ。でも、信頼してるからな」

エルフ「会ったばかりなのに随分と信頼を置いてるんだな。それとも色仕掛けで浮かれてるのか」

勇者「彼女だけに信頼を置いてるわけじゃないさ。女神さまの力を信じてるんだ」

エルフ「……」

勇者「好き嫌いは置いといて、何だかんだ何度も助けられてるからな」

エルフ「……」

勇者「だから彼女は大丈夫だ」

エルフ「…やっぱり」

勇者「ん?」

エルフ「やっぱり、アイツに手を出してたんだな」じとっ

勇者「うっ、いや、不可抗力というか、本当の俺じゃなかったというか…」

エルフ「…不潔やろう」

勇者「うぐっ」

エルフ「ふんっ」

勇者「こ、殺すより平和的でいいだろう」

エルフ「節操なしは喋るな」

勇者「……」

エルフ「女なら誰だっていいんだろ、ばーか」

エルフはベッドに戻っていった!

勇者「…はあ、嫌われてるなぁ」

――翌日。

エルフ「新聞はもう読んだ?」

勇者「いや、まだだ」

エルフは新聞を机に出した!

勇者「……なになに、『伝説の再来か!? 可憐な勇者、次は中央国王都を巨大な魔物から救う!』」

青魔「あらまあ」

従者「むむ、別の勇者じゃと?」

エルフ「勇者は二人存在しうるのか?」

従者「いや、ないのう。勇者が存在するならば、ワシは世界のどこでも感知できる。そして、今も勇者の波動を感じるのはそこのお主だけじゃ」

勇者「…ということは、女神に選ばれたわけではないのか?」

従者「おそらくのう。勇者を騙る一介の冒険者は昔もいたものじゃ」

エルフ「…魔物の芝居だったりしてな。そうすれば赤騎士が倒されたというのも頷ける。だが、メリットどデメリットの釣り合いが取れていない気がするな」

青魔「赤騎士さまが倒されるなど俄かには信じ難いですわね。長らくお世話になりましたが、あの方より強い方を見たことがありませんわ」

エルフ「…確かに強かった」

従者「誇張された報道かもしれんな」

青魔「そもそも、伝令の魔物からは、中央国の侵攻の後退と同時に、赤騎士さまが西の国にいると報告を受けましたわ」

勇者「…だが、あの時、彼は中央国にいたと報じられているし、実際、俺たちも戦った」

青魔「…そういえば、あの方は身代わりを作ることができたはずですわ」

エルフ「身代わり?」

青魔「ええ、非常に高度な魔法をさらに応用したものですわ」

従者「そやつバケモノじゃのう…」

勇者「…強さも再現できるのか?」

青魔「いえ、戦闘能力は落ちると思いますわ。確か『連続魔』で魔法を二回しか使えないはず…」

従者「いや、それが普通じゃろう。ただ、二回撃つのではなく、二つの魔法を融合させるのじゃからな」

青魔「赤騎士さまは最高で三回使えたはずですわ」

エルフ「三回!? 聞いたことがないぞ!」

従者「ワシもないのう…」

勇者「前代未聞なのか…」

従者「流石に異常じゃゾイ!」

エルフ「…やはり赤騎士は生きている可能性が非常に高いな」

青魔「分身だとしてもあの方が負けるとは思えませんけれど」

勇者「…とにかく、今のままじゃ赤騎士に勝てないな」

従者「その強さまで来ると物量で押し切ろうとしても無理じゃろうな」

エルフ「かつての勇者と旅をしたんだろう? 何か策はないのか?」

従者「うーむ……散り散りになっている伝説の装備品を集めれば、戦力の増強になるかもしれん」

エルフ「伝説の装備品? そんなものがあるのか?」

従者「うむ。『聖なる剣』、『英雄の盾』、『日輪の兜』『勝利の鎧』、『武神の小手』、『エルフのマント』、『祝福の指輪』、『閃光のスカーフ』、『女神のオーブ』、『奇跡の腕輪』の十個じゃ。どれも強力じゃゾイ」

勇者「何処にある?」

従者「分からん!」

エルフ「おい」

青魔「あの…私、幾つかは聞いたことがありますわ」

勇者「本当か!?」

青魔「ええ…。確か、四苦王が七個を守護していて、二個は赤騎士さまが所有していたはずですわ」

エルフ「九個が敵の手中なのか…」

勇者「四苦王って何だ?」

青魔「ほとんどの魔物は魔王さまの支配下にありますわ。だから、魔物は人間に無条件で襲いかかりますの」

エルフ「ふん、お前は違うのか?」

青魔「私もそうでしたが、勇者さまの愛の力で、私は解放されましたわ。今は、勇者さまに身も心も捧げておりますわ」ぽっ…

従者「愛の力というか、エロの力じゃのう」

エルフ「……」げしっ

勇者「いたっ!? 無言で蹴るな!」

エルフ「ハレンチ野郎!」げしっ

勇者「罵れば良いわけでもないっ!」

青魔「まあ…。勇者さまがそういう趣味でしたら、私も頑張りますわ」ぽっ…

従者「モテる男は辛いのう!」

勇者「だああ! 話を続けるぞ! 四苦王の話だ! 四苦王の!」

青魔「四苦王は、例外的に魔王さまの支配下に置かれていない四柱の強力な魔物ですわ」

勇者「魔王とは争っていたりするのか?」

青魔「いえ。中立か、魔王さまとは協力関係にあったはずですわ」

エルフ「四苦王は強いのか?」

青魔「少なくとも緑鬼や私よりは強いですわ」

勇者「…そうか」

エルフ「厳しい戦いになるのは間違いないな」

勇者「残り一個は?」

青魔「存じ上げません…力になれず申し訳ありません」

従者「おそらく、残りの一個は『英雄の盾』じゃろう」

エルフ「根拠は?」

従者「他の九個は今まで何回も見てきたが、『英雄の盾』だけは一度も見たことがないからのう」

勇者「…それ、本当に存在するのか?」

従者「昔から、伝説が残っているだけじゃ。真偽は分からん」

エルフ「当てにならないな」

従者「あるとは思うんじゃがな」

勇者「…うーん。何か他に強くなる方法はないかな?」

従者「逆転の発想もあるゾイ」

青魔「どういうことですの?」

従者「敵を弱くすればいいんじゃ!」

エルフ「…どうやって?」

従者「混沌の樹が魔王の力の源泉じゃ。それを弱らせればいいんじゃ!」

勇者「混沌の樹?」

従者「なんじゃ、混沌の樹も知らんのか」

青魔「混沌の樹は魔王城の近くにある天高く聳える巨大な樹です。頂部は雲にも届いていて、空を飛ぶ魔物でもなければ、その全貌を見ることはできませんわ」

勇者「規格外だな」

従者「あと、生殖能力を持たない強力な魔物は混沌の樹の根元から産まれるんじゃ。先ほど話に出た四苦王などもそうじゃろうな」

エルフ「どうやって弱めればいい?」

従者「生命の樹を植えれば良いのじゃ」

青魔「生命の樹? それは存じ上げませんわね」

従者「世界創造の原初の時代、多くの命を生み出した母なる樹じゃ。混沌の樹とは対立的な存在じゃからな。その力を中和することができるじゃろう」

勇者「俺たちは何をすればいい?」

従者「何処かにある生命の樹の種子、そして発芽させるのに必要な栄養剤が必要じゃのう。どこにあるかは知らん!」

勇者「どうしようもない!」

従者「西国の方に生命の樹があったからのう。そちらに手掛かりがあるかもしれん」

エルフ「…そういえば、新聞でもう一つ気になる記事があってな」

従者「お、何じゃ?」

エルフ「西国の南東部を中心に次々と町や村が魔王軍の支配下に置かれているらしい」

青魔「西国海岸沿いは今まではあまり急く必要のある攻略地点ではなかったのですけれど、状況が変わったのかもしれませんわね」

勇者「……西国に向かってみるか」

従者「悪くないと思うわい。西国は現在の魔法の発祥地じゃからのう。戦力の点でも得るものがあるかもしれんゾイ」

エルフ「おれたちに足りないのは圧倒的に前衛だと思うけどな」

従者「確かに最弱エロ勇者だけじゃ心許ないのう」

勇者「お前ら…。それじゃあ西国に向かうか」

青魔「長い旅になりそうですし、食糧をもっと買い溜めないといけなさそうですわね」



北国・南西のガレ地。

盗み熊A「ピカピカがほしいクマー!」

盗み熊B「キンピカほしいクマー!」

エルフは『火炎魔法・中』を放った!

青魔導師は『旋風魔法・中』を放った!

相乗効果で『熱風』となった!

盗み熊A「あついクマー!」

盗み熊B「しんじゃうクマー!」

盗み熊Aと盗み熊Bを倒した!

従者「食糧に良さそうじゃゾイ」

・・・

トロールA「うがー!」

トロールB「おおお!」

青魔導師は『泡沫の吐息』を放った!

エルフは『氷結魔法・大』を放った!

相乗効果で『氷河』となった!

トロールAとトロールBは氷漬けになって砕け散った!


勇者「…今日も出番がない」

『戦闘は任せてワシを使って熊の血抜きじゃ!』

夕方。

勇者「お、休みやすそうな平らな大岩だ」

青魔「今日はここで野宿ですわね」

エルフ「お腹すいた」

従者「今日は熊鍋じゃな。フォフォフォ! 血抜きはバッチリじゃゾイ! 毛もワシがささっと捌いてくれるわ!」

青魔「私、青魔法で体を洗ってきますわ」

エルフ(あっ、ずるい!)

青魔「…うふふ、一緒にいかがですか? 火炎魔法があればお湯で体が洗えますし」

エルフ「うっ、しょ、しょうがないな」

勇者「あまり遠くに行かないようにな」

青魔「心配ありがとうございますわ。それでは行って参ります」ニコ

コテッ

青魔「あうっ!」

勇者「だ、大丈夫か」

青魔「ご、ご心配なく」

・・・

勇者「爺さん、手伝うよ」

従者「それなら、鍋の具材を刻んで、あと枝木を集めておいてもらうかのう」ゾリッゾリッ…

勇者「ああ…」

従者「どうしたんじゃ、浮かない顔しおって」ゾリッゾリッ…

勇者「いや、あまり戦闘で役に立ててないからさ」ショリショリ…

従者「ワシだって役に立ってないゾイ」ゾリッ…ゾリッ…

勇者「爺さんは戦闘要員じゃないし、他の部分で大きく役に立ってるじゃないか」ショリショリ…

従者「お主は才能のない凡人じゃからのう」ゾリッ…ゾリッ…

勇者「うん…」トントントンッ

従者「…勇者だからといって、全ての戦闘で活躍しなくてもいいじゃろ」

勇者「え?」

従者「お主は必要な時にやれることを精一杯やる。それでいいじゃろ」

勇者「だが、伝説の勇者は一人で魔王を倒したんだろ? なのに、俺は…」

従者「彼奴は彼奴、お主はお主じゃ。ワシは正直お主の方が勇者らしいと思っているゾイ」ゾリッゾリッ…

勇者「…何でだ?」

従者「英雄、色を好むという点でじゃ」ビリビリッ…

勇者「おい!」

従者「口よりも手を動かさんかい。ワシはもうすぐ仕上がるゾイ」シャッシャッ…

勇者「…わかってるよ」トントントンッ…

その夜。

青魔「ふうっ、やっと眠れますわね」

エルフ「遅くなったのは、誰かさんが水の出し過ぎで、火と焚き木を無駄にしたからだけどな」

青魔「うっ…」

勇者「間違いは誰にでもあるだろ」

青魔「勇者さま!」ぱあっ

勇者「暗い中焚き木をまた集めるのは疲れたけどさ」ハハ…

青魔「うう…」

エルフ「まあ、さっさと寝るか」

勇者「そうしよう」

青魔「はあっ、フカフカですわ…」ふかふかっ

『フォフォフォ! そうじゃろう!』


勇者「テントになってくれるのは助かるが、爺さんは疲れないのか』

『心配ないぞ。快適な旅ライフを手助けするのがワシの使命じゃからのう』

エルフ「ただ、もう少し広くならないのか? 三人で寝ると、くっつかざるを得ないぞ」

『フォフォフォ、あまり無茶を言うでない』

(実は出来るが、狭いほうが面白そうだから黙っておこう)

青魔(お爺さま、ナイスですわ!)グッ

エルフ「勇者、外に出てけよ。狭いし」

勇者「ん…分かった」

青魔「なっ、ダメですわ。風邪をお引きになったら大変ですもの」

勇者「だが、実際、男が同じところで寝るというのもな…」

エルフ(…どうして真に受けるかな)

青魔「エルフさんだって本心では嫌がってませんから大丈夫ですわ」

エルフ「なっ、て、適当なこと言うな!」

青魔「いつまでも、子どもみたいな照れ隠しをするのはやめなさい!」

勇者(本当に出て行きたい…)

(こやつら面白いのう)

・・・

エルフ(ね、眠れない…)

勇者「ぐうっ…」

エルフ(…人の気も知らないで、熟睡しちゃって)

エルフ(…これも、青魔導師に筒抜けなのね。心の中を読まれるのって本当にイヤね)

エルフ(…別に好きで覗いてるわけじゃないのは知ってるけれど)

エルフ(…もう無心にしよう。青魔導師も眠れないだろうし)

青魔「……」

青魔(…こんな人たちにもっと早く会えていれば、違う生き方もできたのかしら?)

青魔(…違いますわね。それは私が成長できたから…)

青魔(生き方や運命を振り返っても仕方ないですわ。大切なのは未来、そして何よりも今のこと)

青魔(私も選択していかなければいけませんわ)

勇者「んー…」

青魔「……」ぎゅっ

青魔(愛しい勇者さま…手でいいのです、握らせてくださいな)

放置していて申し訳ない

西国・魔法の街

勇者「長い道のりだった…行き倒れなくてよかった…」

従者「途中の補給地点になりそうな村も大分魔物のせいで滅んでたのも旅の辛さに拍車をかけたのう」

エルフ「途中で行商人の馬車に同行できて良かったな」

青魔(私はずっと下心を向けられて困りましたけれどね…)

勇者「先ずは宿だな」


勇者たちは宿を取った!


従者「今日はもう寝るゾイ。明日から本気だすゾイ」

勇者「…今日はもう休むのが良さそうだ」

青魔「私たちはお風呂に入ってきますわ」

エルフ「浴室が大きいといいが」

勇者「女の子はタフだなぁ…」

従者「世の中、そういうもんじゃ」


翌日。

従者「取り敢えず、必要なものはワシが買ってくるゾイ! ついでにプロの姉ちゃんと遊んで来るゾイ!」

エルフ「おいコラ、ジジイ」

エルフは『電撃魔法・だ

従者「じょ、冗談じゃゾイ。それじゃあ行ってくるゾイ」

従者は宿屋を出て行った!

青魔「勇者さま、一緒に街中を散策しませんか?」

勇者「ん、ああ」

エルフ「…ふん」

青魔(うふふ、エルフさんには悪いですけれど、ここは知らん振りさせていただきますわ)

二人は宿屋を出て行った!

エルフ「……むぅ」

エルフ(なによ! バカ! バカっ!)

エルフ(二人で勝手にイチャついてなさいよ!)

エルフ(…………)

エルフ(この後どうしようかな)

エルフ(…外で情報集めでもしよう)

魔法の街・市場

従者「ふぃー、買った買った」

従者「帰るかのう」

「街に来てる勇者を見かけたぜ! すげえ美人だった!」
「うおっ、まじかよ!」
「めちゃくちゃ強いから男みたいなナリだと思ってたが」
「凛々しいクール美女って感じだった」
「うひょー、たまらんなあ!」
「一目見て、思ったね! 『この人に見下されながら踏まれたい!』って」
「うわっ、流石にドン引き!」
「気持ちは分かる」
「えっ」

従者(ふーむ、例の偽勇者か。気になるのう)

従者(…美人なら見て損はないのう。探してみるゾイ!)

一方。

青魔「勇者さま! あの服、可愛いですわね!」むにっ

勇者「あ、ああ、確かに」

青魔「あの出店の食べ物、美味しそうですわね!」むにっ、むにっ

勇者「う、うん、そうだな」

勇者(平常心、平常心。剣技の型を考えろ…一の太刀、二の太刀、防いで、三の太刀)

青魔「…もうっ、どうして勇者さまはそうなんですの!?」

勇者「え、え?」

青魔「わ、私だって恥ずかしいんですのよ…。それでも勇者さまに振り向いてもらいたくて…」かあっ…

ドクンッ

勇者?「…まったく、ヘタレもいい加減にしろっての」

青魔(…心が読めなくなりましたわわ。前に伺った『自分じゃなくなる』というあれですわね)

スッ

青魔「きゃっ!? ゆ、勇者さま…?」

勇者?「悪かったね。大丈夫、もう放置したりしないからさ」

青魔「…あなたは、勇者さまじゃないですわ」

勇者?「そんなことはないさ。俺は魂の一部だからね。それに、最初に好きになったのは俺だろ?」

青魔「だ、だとしても…っ!」

ちゅっ

青魔「むっ…!」

ちゅっ、ぴちゃ、ちゅるっ……

青魔「ふあ…」とろんっ…

ざわざわ…

「うわあ…往来の真ん中でよくやるぜ」
「見せつけやがって…」

勇者?「場所を変えて、ゆっくりしてこうか」

青魔「はうぅ…」

・・・

青魔「……はひぃ」びくびくっ…

勇者「……いや、マジで勘弁してくれよ…。この後、ホントどうするんだよ」

青魔「……すぅ」ぎゅぅ…

勇者(心が罪悪感でいっぱいです…)

勇者(少なくとも彼女が起きるまでに心の整理を付けないとな…)

ざわざわ…

「うわあ…往来の真ん中でよくやるぜ」
「見せつけやがって…」

勇者?「場所を変えて、ゆっくりしてこうか」

青魔「はうぅ…」

・・・

青魔「……はひぃ」びくびくっ…

勇者「…いや、マジで勘弁してくれよ…。この後、ホントどうするんだよ」

青魔「……すぅ」ぎゅぅ…

勇者(心が罪悪感でいっぱいです…)

勇者(彼女が起きるまでに心の整理を付けないとな…)


一方。

エルフ(…魔王軍との紛争の最前線はまだまだ南みたい)トボトボ

エルフ(…『英雄の盾』とか『生命の樹』とか色々と知りたいことはあるけど、普通の人は知らないだろうしね)トボトボ

「……んっ?」ピタッ

エルフ(物知りそうな年寄りなら知ってるかもね。大魔導師とかいうかなり高齢の魔導師もいるらしいし、話を聞けないかしら)

「ちょっと、あなた」がしっ

エルフ「…!? …な、なんだよ?」

エルフ(な、なに? 気配がなかった…?)

「あなた、人間じゃないわね。男のフリまでして怪しいわね」

エルフ「な、なんのことだ?」

「……」じろっ

ぱっ

エルフ「あっ!?」ふぁさっ…

エルフ(は、速い!)

「ふうん、その耳、魔物かしら?」

エルフ「ち、違う!」

「じゃあ、何者かしら?」じろっ

エルフ(な、なんて威圧感なの…! )

エルフ「お、おれはエルフ族だ。魔物じゃない」

「…ふうん、ホントみたいね」

エルフ「……」ほっ

「でも、正直そんなことはどうでもいいの」ギロッ

エルフ「ひっ…!」

「なんで、アナタから…」

剣士「あのバカのニオイがするのかしらね?」ニタッ

エルフ(こ、この人、危険だ! に、逃げなきゃ!)

エルフは逃げ出した!

しかし回り込まれてしまった!

剣士「どうして、逃げるのかしら? アタシ、アナタとお話がしたいんだけど…」ニコ

エルフ(た、助けて勇者!)

宿屋。

勇者「あー、あ、あいつら遅いな」

青魔「そ、そうですわね」もじもじ…

勇者「道に迷ってるのかな…?」

青魔「そ、そうかもしれませんわね」もじもじ…

勇者「ちょっ、ちょっと探してくる」

青魔「は、はい。お気をつけて」


勇者「き、気まずかった。心を空にし続けるのも難しい技術だな」



剣士「…やっと見つけた」

勇者「……先輩? それにエルフも…」

エルフ(勇者…早く助けて…)

剣士「ふふ…久しぶりね?」

勇者「本当に先輩だ! 久しぶりだな!」

剣士「ふふ…」

勇者「…それにしても、どうして先輩が此処に? それと、どうして彼女と一緒にいるんですか?」

剣士「アナタを追いかけて来たのよ。この娘には偶然、ね?」ニコッ

エルフ(ぐ、偶然…?)ハハ…

勇者「…追いかけて来たって、東国からか?」

剣士「だって、アタシより弱いあなたが外を彷徨いていたら、すぐ死んじゃうじゃないの」

勇者「確かに先輩にはまだまど敵いそうもないけどさ…」

剣士「そうよ。あなたはずっと私のそばにいればいいの。ずっと、ずっとね…」ニコッ

エルフ(こ、怖い! この人、すごく怖い!)

勇者「あはは、確かに俺は頼りないけれど、流石に過保護だよ」

剣士「…そんなことないわ」

勇者「心配してもらえるのは嬉しいけどさ」

エルフ(勇者が鈍感で良かったと始めて思ったわ…)

剣士「…ねえ、それよりまた別の女のニオイがするのはどうして?」

勇者「え?」

剣士「しかも、随分と濃いニオイね。まるで、裸で抱き合ったみたい」ニコニコ

勇者「え、えーと…」

従者「おーっと!? あそこにおわすは、かの高名な勇者さま!?」

「な、なに勇者だって!?」

従者「美人じゃのう! 勇者さま、握手してほしいゾイ!」

「お、おれも!」
「きゃー! 勇者さまー!」
「勇者お姉さま! 素敵! 抱いて!」
「勇者さま! 踏んでくだされ!」

がやがやがやがや……

剣士「ちっ、面倒ね。今日は帰るわ」

勇者「あ、うん」

エルフ(お爺ちゃん、本当にナイス…!)

剣士「また明日来るから」

エルフ(あ、明日も来るの…)

剣士「ちゃんと説明してくれるわよね?」ギロッ

宿屋。

エルフ「…あの人、何者?」

勇者「村の道場の先輩だ。昔からの幼なじみで、いつも一緒にいたな」

従者「あの娘、ヤバいのう。一勝もできなかったのは彼女じゃろう?」

勇者「ああ。あの人、師範の娘なんだけど、師範より圧倒的に強いんだ。実質的に道場を仕切ってた」

エルフ「赤騎士の分身を倒したという話も信憑性を帯びてきたな…。あの女は、強い。間違いなく強い」

従者「というか、あの娘、伝説の装備を七つも着けていたぞ…」

勇者「え!?」

青魔「…四苦王を倒したということですわね」

エルフ「赤騎士が、分身に装備品を持たせていたら四苦王を二体か三体、持たせていないなら、全部倒してる計算になるな」

従者「身に付けていなかったのは、『英雄の盾』、『日輪の兜』、『勝利の鎧』の三つだけじゃった」。ここまで来るとあの娘が勇者じゃない方がおかしいのう…」

エルフ「…女神さま、あの女とお前を間違えたんじゃないか?」

従者(…あり得る)

勇者(確かに…)

青魔「私はそんなことないと思いますわ!」

勇者「青魔導師…」

青魔「自信を持ってくださいませ。貴方様は勇者足りうる器ですわ」

勇者「…ありがとう」

従者「…さて、これからの話なんじゃが」

勇者「うん」

従者「パーティを一度解散しようゾイ」

「「「えっ」」」

エルフ「こういう時に冗談やめろよな」

従者「冗談じゃないゾイ」

勇者「急に何言い出すんだよ」

従者「あの剣士、このままだと二人を殺すゾイ。最悪、お主も」

エルフ「うっ…」

青魔「……」

勇者「おいおい、先輩を何だと思ってるんだよ」

従者「…お主、幼い時に、あの剣士以外の女の子と遊んだことは?」

勇者「ないけど。先輩とずっと一緒にいたな」

従者「村の女の子に話しかけたりすると、その子たちに怯えられたことは?」

勇者「…あるな。なんで嫌われてしまったんだろう?」

従者「…姉妹を含めて女の子の話をすると、あの娘が不機嫌になったことは?」

勇者「…姉ちゃんの話をすると、不機嫌そうにしてた」

従者「…ダウト!!」

勇者「は?」

従者「あの女、下手な手を打つと、青魔導師とエルフは愚か、お主まで手にかけるぞ」

勇者「はは、冗談を…」

従者「ワシは本気で言ってるんじゃっ!!」

勇者「……」

青魔「…分かりましたわ」

勇者「!?」

青魔「勇者さま、お爺さまとエルフさんは、本気で恐怖しています。ここはそうした方が良いと思いますわ」

勇者「いや、だが…」

エルフ「おれも賛成だ」

勇者「なっ…!」

エルフ「あの女に、本当に殺されるかと思った。痴情のもつれで死にたくない…」

勇者「……」

従者「勇者よ、納得できていないのは承知じゃ。お主が剣士の異常に気付いていたら、お主はこんなに長く生きていなかったかもしれんしのう」

勇者「………ふう」



勇者「分かった。パーティは一度解散だ」

エルフ「……」

青魔「……」

従者「……」

勇者「だけど、永久にじゃない。時期が来たらまた一緒に戦おう」

従者「うむ。ワシもそう言おうと思っとった」

勇者「まだ半信半疑だが、三人の気持ちは分かったつもりだ」

従者「それでいい。お前はやはり魔王を倒せる器じゃゾイ」

勇者「こんな理由で、そんなこと言われても嬉しくないよ…」

エルフ「――勇者」

勇者「え、今、勇者って……」

ちゅっ

勇者「……」ぽかん

エルフ「おれ――わたし、勇者のことが好きだよ」

勇者「……えと」

エルフ「わたし、強くなって戻ってくるから。勇者を守れるくらい強くね」

勇者「あ、ああ」

エルフ「だから、勇者もわたしを守れるくらい強くなってね」

勇者「……おう」

青魔「勇者さま」

ちゅっ

勇者「ちょっ」

青魔「勇者さま、お慕い申しております」

勇者「……」

青魔「次に会う時は、本当の貴方様で私を抱いてくださいませ」

勇者「あ、う…」

青魔「私も強くなって戻ってきますわ」

勇者「…俺も、絶対に強くなるから」

従者「勇者、実はワシも…」ぽっ

勇者「おいやめろ」

従者「差別反対!」

勇者「これは差別じゃない!」

従者「まあ、ワシはお主に同行するがのう」

勇者「あ、そうなのか?」

従者「流石にジジイには嫉妬しないじゃろ。流石に」

エルフ「…もしも、されたら?」

従者「全力でトンズラ」

勇者「おい。いや、いいけどさ」

エルフ「…勇者! 次会う時は誰を選ぶか決めていてよ!」

青魔「責任とってくださいますよね?」

勇者「うっ」

エルフ「わたしだって、責任とってもらわないと困るよ!」

勇者「ううっ」

従者「わ、ワシだって…」ぽっ

勇者「気持ち悪いからやめろ!」

あっはははは!!



勇者たちはパーティを解散した!

夜。

エルフ「結局、今日は同じ宿に泊まるのよね」

青魔「なんだか、締まりませんわね」

エルフ「男女別でよかった…恥ずかしくて顔を見れない」

青魔「…これからどうするか決めてますか?」

エルフ「決めてないけど、この国は全体的に魔法が栄えてるみたいだし、色々と探ってみようと思ってる」

青魔「でしたら、二人で行動しませんか」

エルフ「…そうしたら、歯に衣着せなくなりそうね」

青魔「ふふ、そうですわね」

エルフ「まあ、もう少し素直になりたいし、それも悪くないわね」

青魔「うふふ、確かに」

エルフ「でも、あなたのドジに付き合わされるのも大変そうね…」

青魔「なっ…」

滞って申し訳ない。
またそのうち。

翌日。

宿屋「このお客たちならもうチェックアウトしたよ」

剣士「…………」

剣士「…随分な仕打ちじゃないの」ピクピクッ

宿屋「ひぃっ…!?」


勇者「…なんで、こんな逃げるような真似しなきゃいけないんだか」

『剣士に捕まったら、手錠をされて監禁されるゾイ!』

勇者「あー、子どもの頃の遊びでそんなこともしたな…」

『……だ、大丈夫じゃったのか?』

勇者「三日くらいその状態だったから、遊びとはいえ辛かったな。姉さんには心配をかけた」ハハ…

『……お主、実は意外と大物なのかもしれんな』



剣士「やっぱり、また監禁しなきゃいけないみたいね」


勇者「うおっ!? 先輩!?」

『きょ、強化服状態に追い付いたじゃと!?』

剣士「どうして、逃げたりするの? そんなにアタシが嫌い?」

勇者「まさか。ただ、先輩を危険な目に遭わせたくないだけだ。俺たちは魔王を倒しに行くんだ」

剣士「それはアタシも一緒よ。大体生意気よ。アタシより弱いくせに」

勇者「そうだけどさ」

剣士「それより、他のメスどもは?」

勇者「…パーティは昨日解散した。今日からは爺さんと二人旅さ」

『わ、ワシはジジイだゾイ! 変身できるだけのジジイだゾイ!』

剣士「…ふうん」

勇者「先輩こそ、どうしたんだ?勇者なんて、呼ばれてるらしいし」

剣士「アナタを見つけようと旅して、魔物を倒していたらそうなっただけよ」

『伝説の装備もその途中で集めたんじゃな?』

剣士「そうよ。ところで、いつまでその姿でいるつもり? 本当は老人なんかじゃなくて、メス豚なの?」ジロッ

従者は元の姿に戻った!

剣士「……この前の老人じゃない」

従者「いやあ、昨日は悪かったのう!」

剣士「……」ギロッ

従者「ふぃー、そんな怖い顔しないで欲しいゾイ」


剣士「まあ、いいわ。‘‘今は”許してあげる。それより、アナタは街に戻ってお留守番よ。危ないんだから」

勇者「まさか。これでも勇者に選ばれたんだ。黙ってじっとしているなんてできないさ」

剣士「アタシに逆らうの?」

勇者「俺だっていつまでも子どもじゃないよ」

剣士「……なるほどね、よく分かったわ」

勇者「そっか、それなら良かった」ほっ

剣士の『神速斬り』!

勇者「…………ぇ」

勇者の四肢が斬り落とされた!

剣士「もう何処にも行けないようにしなきゃいけないみたいね」カチンッ

勇者「がアアァァァあ!!」

従者「ゆ、勇者!」

ドクンッ

剣士「……!?」

ボコボコ…

勇者の体が復元していく!

剣士「…………」

勇者?「ふう……ちょっとおいたがすぎるな、お嬢ちゃん」

剣士「…アンタのせいで、このバカが、国から追放されたのね」チャキッ

勇者?「鋭いな。まあ、わざとではなかったんだがな。魂との同化が中々上手くいかなかったんだ」

剣士の『神速斬り』!

勇者?「ぐうっ…!?」

勇者?は何とか躱した!

勇者?「おいおい、小僧ごと殺すつもりかよ…って四肢切断するようなメンヘラに言っても始まらないか」

剣士「そのバカから離れなさい!」

勇者?「分離させたきゃ、魔王を倒すしかない…な!」

勇者?の『縛り上げる』!

剣士はひらりと躱した!

勇者?「速いもんだな!」

剣士「ふんっ! どうせ一度殺せば分離するんでしょ! その後で砂上の楼閣から魂を連れ帰ればいいわ!」

勇者?「そう生命を軽んじるのはよくないな」

剣士の『究極・連続斬り』!

勇者?「くっ…!」

勇者は全身を硬化させた!

勇者?「うぐぐぐっ…!」

剣士「ちっ、やるわね!」

勇者?「全身、切り傷だらけだがな…!」

勇者は全身から白濁ローションをばらまいた!

勇者?「これで、少しは攻撃しづらいだろう」

剣士「バカの身体で、気色悪いことするな!」ギリリッ

勇者?「ははっ、返す言葉もないな」

勇者?の傷が癒えた!

剣士「ちっ、憎らしい回復量ね!」

勇者?「お褒めに預かり光栄だね」

勇者?は両腕を極太ディルドに変えた!

ディルド「「やあ(´・ω・`)」」

勇者「頼むぜ」

ディルド「「うん、全力でいくよ(´・ω・`)」」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!

高速の白濁水弾が剣士を襲う!

剣士「…はあああああっ!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!

剣士は剣で捌き、マントで軌道を逸らす!

剣士「ぐっ!」

剣士は一撃食らった!

勇者?「ふう…分身の赤騎士ならサシでもこれで倒せたはずなんだがな」

剣士「舐めないでよね!」

勇者?「舐めるのも得意だけどな」

剣士の『真空波』!

勇者?「ちっ、遠距離攻撃もあるのかよ!」

勇者?の『硬化』!

勇者?の体が風の刃に切り裂かれた!


勇者?「うがあぁあっ…!」


勇者?「くっそ…ばら撒いたローションが仇になるなんてな」

剣士「回復が追い付いてない…とっておきを見せるまでもないわね」

剣士の『真空波」!

勇者?の『硬化』!

勇者?は更に深い傷を負った!

勇者?「ふうぅ……!」

剣士「次で終わりよ!」

勇者?「……おいおい、俺はずっと性欲絶倫の変態女神の世話をしてたんだぜ?」

剣士「……!?」

剣士は上空を見上げた!

勇者?「時には相手の予想を超えないといけない時が何回もあったもんさ」

無数のピンクローターが煌めく流星のように降り注ぐ!

剣士「…『魔法剣』『電撃魔法・大』!」

剣士の剣が電撃を帯びて発光した!

女神のオーブが魔法の威力を跳ね上げた!

剣士の『必滅一閃』!

遥か上空の雲海ごとローターを消し飛ばした!

勇者?「化け物かよ…。だが、隙だらけだ」

剣士「さっきから…コソコソと…」

勇者?は巨大触手に変化した!

剣士「くっ…!」にゅるっ

剣士の全身を完全に絡め取った!

剣士「離しなさい!」

勇者?「無力化完了。俺の勝ちだな」

剣士「クソがああぁぁ!!」

剣士は『自爆魔ほ

ぐぽぽっ…!

剣士「んおぉ!?」

魔法の詠唱は中断された!

勇者?「なんて奴だ……軽くお仕置きしてやるか」

・・・

剣士「うっ、ううっ…!」

勇者?「まだ耐えるか…」

剣士「ふう…ふう…」ギロッ

勇者?「…人間相手に全力を出す日が来るとはな」

勇者?はそのエロの力を全て解放した!

剣士「…ぐうっ!?」

・・・

剣士を倒した!

剣士「……」ぐてっ

勇者?「くっそ…。下界でこんなに力を使うとはな」

勇者?「…天界でないとはいえ、心まで堕としきれないとは。大した女だ」

勇者?「…限界か、俺はもう休ませてもらうぜ」

勇者?「後はお前次第だ、小僧」

スウッ…

勇者「…先輩」

剣士「うああぁぁあああ!! 殺してやる! 殺してやるんだから! アタシのものにならないならもう要らない! どうして!? どうしてなの!? アタシはずっとアナタのことだけ見てたのにアナタのそばにいたのにいつもアナタのことだけ考えてアナタを守りたいと思ってたのにアナタの匂いだけを嗅いでアナタの笑顔が見たくてアナタ以外の男には見向きもしなかったのに勝手にアタシの前から消えて知らない女と仲良くして知らないメス豚のニオイをつけてアタシの気持ちも知らないでアタシのこと放っておいてアタシのことなんて何も考えてないアタシはアナタのためならなんでもできるのに何だってあげるのに望むことならなんでもしてあげるのに体だって好きに使っていいのにアナタの身の回りのことはなんでもしてあげるのにアナタのためなら何だって殺すのに人だって魔物だって父親だって殺すのにねえどうしてアタシを好きになってくれないのアタシのものになってよあなたのそばにいたいの愛して欲しいのアナタの全てが欲しいのアナタと心と体を通わせてアナタと幸せに暮らしてアナタの子どもを産みたいの子どもは二人で両方とも男の子でアタシに全然似ないでアナタにとてもそっくりでアタシなんかに全然似ないで女の子はいらないアナタが別の女を可愛がる姿なんて見たくないアタシだけを見ていて欲しいのアタシだけを愛して欲しいのだからアナタは子どもを愛さないでアタシだけでいいのアタシだけがアナタを愛してアタシだけを愛せばいいのねえどうしてアタシじゃダメなのアタシの何がいけないのアナタより剣術がうまいなら剣なんて二度と握らないし体の気に入らない部分があるなら削ぎ落とすしどんな酷い行為も喜んで受けるのにどうしてアタシじゃダメなのどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてアタシがバケモノみたいに強いからなの母親がすぐ死んだからなの母親に愛してもらってないからなの心から話せる友人がいないからなの孤独だからなのアナタに姉がいるからなのアナタには両親がいないのにアタシには父親がいるからなの好き好き好き好きなのに好きなのになんでダメなのなんでなんでなんでアタシを見てくれないのアタシを好きになってくれないならキライキライキライでも好き好き好き好きなのどうしようもなく好きなの他の女が好きならみんな殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すそれでも愛してくれないならアナタも殺す殺す殺す殺す殺す殺す好き好き好き好き殺す好き殺す殺す好き殺す好き殺す好き殺す好きアナタを殺してアタシも死ぬ!!」

勇者「……肺活量すごいな」

従者「そこかい!」

勇者「…先輩、思った以上に自分勝手なこと考えてたんだな」

剣士「だってアナタが好き好き好き――」

勇者「分かった分かった!」

剣士「分かってないわよ分かったならどうしてアタシを好きになってくれないのねえどうしてど――」

勇者「話を聞け! 子どもか!」

剣士「うう…怒鳴ったぁ…」

勇者「そんな子供みたいにぐずらないでくれよ」

剣士「うぅ……」グスッ

勇者「先輩。先輩だって大切な人だ」

剣士「そ、それって…」パアッ…

勇者「でも大切な人は――守りたい
人は他にもいるんだ」

剣士「それじゃあ、他のそいつらを殺せばアタシだけが大切な人になるのねみんな殺せばアナタの特別になれるのね誰なのそれは今すぐ殺して――」

勇者「落ち着け!」グニッ

勇者は両手で剣士のほっぺをつねった!

剣士「ひたひっ!」

勇者「先輩! 俺は先輩に不誠実なことはしたくない。そしね先輩だけじゃなくて、俺に思いを告げてくれた娘たちにも不誠実なことはしたくないんだ」

剣士「……」ギッ

勇者「…俺は本当に先輩に感謝してるよ。いつも側に敵いそうもない先輩がいたから、俺は諦めが悪くなれた。だから、今も諦めずに魔王を倒そうと思えてるんだよ」

剣士「だったらアタシのことを選んでよ…どうしてなの」ポロポロ…

勇者「先輩…」

剣士「ずっと好きだったのに…」ポロポロ…

勇者「…ははは」

剣士「なにが、なにがおかしいのよっ!!」

勇者「いや、先輩も乙女だったんだな、と思って」

剣士「なによ…何なのよ…」

勇者「こんなに愛してくれる人に気付かなかったなんて、俺って最低だな」

剣士「…そんな風に思うならアタシだけを見てよ! アタシの全てをあげるから、アタシを愛してよ!」

勇者「そんなの、愛とは呼ばないと思うけどな」

剣士「最初はそうでも無理やり好きにさせるんだから!」

勇者「そういう自信家なところ、変わらないよなぁ」

剣士「話を逸らさないで!」

勇者「だって、これ以上その話をしても、先輩を傷つけるだけだよ」

剣士「…殺す! アンタも世界の全ても殺して壊してやる! アタシが魔王になって滅ぼしてやる!」

勇者「先輩」

剣士「もう、全部壊してやるんだから! こんな世界もうイヤ! 全部ぐちゃぐちゃにしてやるんだから!」

勇者「…冗談もそれくらいにしてほしいな」

剣士「本気よ! アンタも、アンタの守りたいものも全部壊してやるんだから! 殺す! 殺しやる!」

勇者は剣士の頬をつねった!

剣士「ひはひっ!」

勇者「先輩、もうやめてくれよ」

剣士「うう…!」

勇者「…どうしたらいつもの先輩に戻ってくれるんだ?」

剣士「アンタがアタシのものになればいいのよ!」

ぐいっ

剣士「ひたひ!」

勇者「…冗談もそれくらいにしてほしいな」

剣士「本気よ! アンタも、アンタの守りたいものも全部壊してやるんだから! 殺す! 殺しやる!」

勇者は剣士の頬をつねった!

剣士「ひはひっ!」

勇者「先輩、もうやめてくれよ」

剣士「うう…!」

勇者「…どうしたらいつもの先輩に戻ってくれるんだ?」

剣士「アンタがアタシのものになればいいのよ!」

ぐいっ

剣士「ひたひ!」

勇者「少し落ち着いて」

剣士「……ふぅ……ふぅ!」

勇者「ちょっと疲れてるんだよ。少し休んだ方がいいよ」なでなで

剣士「……そんなことない」

勇者「大丈夫だから。何も不安になることはないから」

剣士「うぅ……」

勇者「一回、眠ろう」

剣士「でも、どっか行くんでしょ……?」ぐすっ

勇者「大丈夫、そばにいるから」

剣士「ほんと……?」

勇者「本当だよ。安心して」

剣士「……どっか行っちゃやだ」

勇者「絶対に一人ぼっちなんかにしないから。大丈夫」

剣士「…………」

勇者「…ふう」

従者「……お主、猛獣使いの才能も間違いなくあるのう」

勇者「そうか? …まあ、何にせよ、一旦街に帰ろう」

従者「逃げるのか?」

勇者「まさか。連れて帰るよ」

従者「……ふぃー、血みどろの惨状はいやじゃのう」


西国・魔法の街

剣士「……」パチッ

勇者「ん、おはよう」

剣士「………」

剣士は一瞬で勇者を組み伏せた!

勇者「うおっ!?」

剣士は勇者の剣を抜いて勇者の首筋に当てた!

従者「ゆ、勇者っ…!」

勇者「……参ったな」

剣士「これが最後通牒よ。アタシのものになるか、ここで死ぬか。選びなさい」

勇者「先輩、俺の返事は変わらないよ。先輩のことを本当に大事だと思っているから、不誠実な答えは出したくないんだ」

剣士「…………………………………………………………………………………………そう」

剣士は剣を捨てた!

剣士「アタシの負けよ」

勇者「……」

剣士「アナタの言う通り、まだ子どもだったみたい。確かにアタシはとてもワガママな子どもそのものね」

勇者「……」

剣士「もっと大人にならなきゃ、ダメよね」

勇者「…そんな意図じゃなかったけど、そう思ってもらえるなら良かった」

従者(四肢切断されて子どもだったの反省で終わる娘も娘じゃが、それを赦す小僧も小僧じゃのう)

従者(まあ、丸く収まりそうじゃし、何も言わんでおくか)

剣士「でも、アナタのこと諦めないから絶対にアタシのこと好きにさせるから絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対だからそれまで付きまとってやるんだからうふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

勇者「」

従者「」

剣士が仲間になった!

・・・

勇者「さ、さて。これからのことだけど」

剣士「どうするの?」

勇者「もう少し南下して、『生命の樹』や『英雄の盾』に関する情報を集めようと思ってた」

剣士「『英雄の盾』は知らないけれど、『生命の樹』についてなら知ってるわ」

従者「なんと!?」

剣士「大魔導師に教えてもらったわ。ちょうどその種子を持っていたから」

剣士は『生命の樹の種』を取り出した!

勇者「でかっ!?」

従者「た、確かに生命の樹の種子じゃ!」

剣士「これをこの国のどこかの砂漠にある『砂上の楼閣』に植えればいいの」

従者「なるほど、『砂上の楼閣』か!」

勇者「なんだ、それ?」

剣士「この世を離れた魂が一度辿り着く場所よ。そこで判決で、魂の、その有り様が決まると言われているわ」

勇者「なるほどな。それじゃあ砂上の楼閣とやらを探そう」

勇者「よしっ、砂上の楼閣を探そう! 何か手掛かりはないのか?」

剣士「大魔導師には砂漠の何処かとしか聞いていないわ」

従者「砂漠の何処かと言われてものう…どれだけ砂漠があると思っとるんじゃ」

剣士「…砂上の楼閣と関係するかは不明だけど、西国への魔物の軍勢の侵略がやたらと激しくなっているらしいわ」

勇者「緑鬼みたいなやつが司令官になったのかもしれない」

剣士「いえ、指揮しているのは赤騎士と黄竜と言われる魔物よ。そして、ごく最近は侵略の報せは聞かなくなった」

従者「…ヤツら、砂上の楼閣を探しておったのかもな。そして、見つけた」

勇者「…なんで探してるんだ?」

従者「砂上の楼閣は魂の来世を定めるところ。そこを支配すれば、魂の来世を全て魔物にすることも可能だろう」

剣士「相手もなりふり構ってられなくなってきたということかしら?」

勇者「ヤツらが目的のものを見つけたにせよ、別の理由で停滞しているにせよ、今は攻撃を仕掛けるときだ」

従者「うむ、戦線の最前に向かおう」

またまたごめんなさい。
保守してくれている方ありがとうございます。
できるだけ期待に応えられるよう頑張ります。

西国・海岸砂漠

黄竜「うーん、霧がすごいやー。それに、昼間なのに肌寒いよ」

赤騎士「この地帯の霧は幾千の間、一度も晴れることはなかったという」

黄竜「へえー、乾燥した砂漠地帯なのにねー」

赤騎士「すぐそばに海があるからな。ただ寒流であるため、極めて大気が安定している。だから雨にはならない」

黄竜「へー」

赤騎士「黄竜よ、砂漠を一望できるほど、高く飛んでくれ」

黄竜「りょーかい」

黄竜は遥か上空まで飛び立った!


赤騎士「…霧よ、失せろ」

赤騎士の『連続魔』!
『火炎魔法・極』!
『火炎魔法・極』!
『火炎魔法・極』!

『火神の抱擁』となった!

砂漠の霧を地表ごと焼き払った!

黄竜「うわっ、ムチャクチャやるなー。だから部下を連れて来なかったんだなー」

黄竜「…おっ、結界見っけー!」

・・・

赤騎士「ふむ…強力な結界だな」

赤騎士の『亜空切断』!

結界を切り裂いた!

砂上の楼閣が現れた!

黄竜「…赤騎士だけで、戦争の全てが上手くいきそー」

赤騎士「実際、そうもいかないさ。黄竜はここで待っていてくれ」

黄竜「君だけで大丈夫かい? 流石にこの中は勝手が違うんじゃ…」

赤騎士「なに、心配するな」

黄竜「うーん…分かったよ…」

赤騎士は砂上の楼閣に入って行った!

黄竜「赤騎士、君はとても強いね。だから誰も君のそばにはいられない」

黄竜「君は、とても孤独だよね」

・・・

勇者「この辺りからさっきの大爆発が発生したはず」

剣士「あの威力、おそらく、赤騎士よね」

従者「赤騎士とかいうやつ、恐ろしいのう…」

黄竜「すぴー」

勇者「…魔物だ。寝てるぞ」

従者「竜系の魔物か。おそらく手強いのう」

黄竜「むにゃむにゃ…」

剣士「隙だらけ、ね」チャキッ

黄竜「ふぁ?」パチ

剣士の『神速斬り』!

黄竜「ひゃー!?」

黄竜には当たらなかった!

剣士(…巨体のくせに、身のこなしは中々ね)

黄竜「うひゃーっ!?」

勇者「その姿…お前が四天王の黄竜か!」

黄竜「そーだけど、どちら様?」

勇者「勇者だ! お前を倒す!」

勇者は大量のピンクローターを放った!

黄竜には当たらなかった!

黄竜「あー、赤騎士が言っていたニンゲンかー」

剣士の『真空波』!

黄竜には当たらなかった!

剣士「すばしこいわね!」

黄竜「まー、それが自慢だからねー」

従者「喋り方はトロいのにのう」

黄竜「いやー、それほどでもー」テレテレ

勇者「褒めてない!」


勇者はスペルマ弾丸を連射した!

黄竜「うわわっ!?」

黄竜には当たらなかった!

勇者「くっ、これも躱すか!」

剣士「改めて見ると、本当に見苦しい能力ね…勇者に選ばれなくてよかったわ」

勇者「……」

黄竜「見た目はアレだけど、やるなー」

黄竜は『電撃魔法・極』を放った!

剣士「無駄よ!」

剣士の魔封剣!

黄竜の魔法を吸収した!

黄竜「うげげっ!?」

剣士は吸収した魔法をそのまま剣に乗せた!

『女神のオーブ』が魔法の威力を跳ね上げた!

剣士の『必滅一閃』!

黄竜の右翼が消し飛んだ!

黄竜「あうっ!」

従者「よっし! 機動力を奪えばこちらのものじゃ!」

黄竜「…あちゃー、これはもうダメだなー」ヒュー

黄竜「…なんてね」

黄竜の右翼が生え治った!

剣士「…しぶといわね!」

黄竜「それも自慢だからねー」

従者「雰囲気は軟弱そうなのにのう」

黄竜「いやあ、それほどでも」テレテレ

勇者「ふざけてる場合か!」

勇者はスペルマ弾丸を連射した!

黄竜「もう見切ったー!」

黄竜には当たらなかった!

勇者「…くっ」

剣士「まだまだっ!」

剣士の『連続斬り・烈』!

黄竜「あだだっ!」

黄竜はダメージを食らった!

黄竜「くそう、こんにゃろう!」

黄竜は高速で旋回して砂嵐を起こした!

剣士「きゃあっ!?」

勇者「ううっ…!」

従者「さ、さすが竜の魔物は強いゾイ!」

勇者「舐めるなぁあっ!」

勇者は超巨大バイブを砂嵐に向けて叩きつけた!

大地ごと砂嵐を砕いた!

黄竜「む、ムチャクチャ! うりゃー!」

黄竜の尻尾ビンタ!

勇者はダメージを食らった!

勇者「ぐううぅ…」

剣士「アタシの最速を見せてあげる!」

剣士の『刹那斬り』!

黄竜「うっ…!」ブシャッ

黄竜は深手を負った!

黄竜「こ、これはホントにヤバイなー…」

剣士「終わりよ!」

剣士の『会心の一撃』!

黄竜「……ただじゃ、やられてやんないよ!」

黄竜(老龍の爺ちゃんに教えてもらった捨て身の呪術を使う日がくるなんてなー…)

黄竜は生命と引き換えに剣士に呪いをかけた!

剣士「……なっ!」

黄竜「……へへ、うまくいったよ、お爺ちゃん」

黄竜は力尽きた!

剣士「……」

勇者「先輩、大丈夫ですか? 最後、呪いみたいなのを受けてたけど…」

剣士「ええ…『祝福の指環』は邪悪な力による呪いを無効化してくれるから」

従者「さすが伝説の武具じゃのう」

剣士(でも、それにしては…変な感じね)

従者「これで残りの四天王は赤騎士と緑鬼じゃな」

剣士「弱くはなかったけれど、赤騎士に比べたら、大したことはなかったわね」

従者「結界に裂け目が出来ておるのう」

剣士「この裂け目…赤騎士ね」

勇者「…一番の敵は、この楼閣の中だな」

剣士「一番上が見えないわね。天を貫いてるみたい」

勇者「…行くか」

ぐにゃぁっ……!

勇者たちは砂上の楼閣に足をふみいれた!

カッ!

魔国・混沌の樹

緑鬼「クソ野郎が…もっと、チカラを寄越しやがれ…赤騎士も、魔王もブチ殺すくらいのチカラを…俺に寄越しやがれ…」

混沌の樹に宿る破滅の力が緑鬼へ流れ込む!

ズズズズズズ…

緑鬼「ぐぎゃあぁアァああアァああぁああっ……!!」

緑鬼「まだ…た、足りねェ…もっと…もっと寄越セ…」

オーク「ふん、力の求道者なんてお前には向いてないな。」

緑鬼「……アニキか。ちっ、見つカっちまッたカ」

オーク「混沌の樹の力を使えるのは魔王さまだけだ。お前みたいな三下じゃ、発狂して終わりさ」

緑鬼「うるせェ! 魔王といっても同じ魔物じゃネェカ!」

オーク「…聞いたぞ、四天王から除籍されたらしいな。そもそもお前は上に立てる器じゃなかったんだ」

緑鬼の『殴り殺す』!

オークは拳を掴んだ!

緑鬼「ぐううウウッ!!」

オーク「お前じゃ俺には敵わねえよ」

オークの『張っ倒す』!

緑鬼「ぐアッ!」

オーク「…エルフを虐殺したらしいな」

オークの『踏み倒す』!

緑鬼「アァあああぁあああっっ……!」

オーク「エルフには恩義がある。落とし前はつけなくちゃいけねえ」

緑鬼「かひュッ……」

オーク「昔の舎弟よ、死んでくれや」

緑鬼(死ヌ…? こんなトコロデ…?)

緑鬼「フ、ざけん……ナアァァぁあああぁああああアァッッッ!!」

ゴッ!!

オーク「ぐっ…!?」

オークは引き下がった!

緑鬼「もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっとモットモットモットモット!!!」

莫大な破滅の力が緑鬼に流れ込み、その姿を変貌させる!

緑鬼?「ガアァアアアアアアァァァッ!!」

オーク「な…魔王さまでもないのに、破滅の力を取り込んで…!?」

緑鬼?の攻撃!

オーク「は、はや…」

メキョッ

オークは力尽きた…

緑鬼?「アヒッ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

緑鬼「モット、モットモットモットモットモットモット!!」

緑鬼「チカラ、チカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラチカラ!!」

砂状の楼閣

勇者「う…」もぞ…

気絶していた勇者は目を覚ました!

勇者「気絶していたのか…」

従者「……」

勇者「爺さん、大丈夫か!?」

従者「ううむ…」

勇者「爺さん、しっかりしろ!」ユサユサ

従者「うーむ…小僧か。ここは…砂上の楼閣か」

勇者「ああ、そのはずだ」

従者「黄色い竜と戦って、楼閣の中に入って…それから覚えておらん」

勇者「俺もだ」

従者「ん、娘っ子はどこにいったんじゃ?」

勇者「…見当たらない。はぐれたみたいだ」

従者「そうか…。あの娘っ子ならばあまり不安はないが『生命の樹の種子』は娘が持っとるし、わしらだけじゃどうしようもないのう」

勇者「とにかく先輩を探そう」

従者「そうじゃのう」

・・・

勇者「至る所に青白い炎がフヨフヨと漂っているな…」

従者「魂が視覚化しているんじゃろう」

勇者「…この中に、父さんや母さん、俺の知ってる人がいるのかな」

従者「かもしれんが、これでは違いが分からんな」

勇者「……」

従者「今は死んだ人々よりも生きておる者を優先しよう」

勇者「…そうだな。しかし、だだっ広いだけな」

従者「うーむ、探すのは苦労しそうじゃ。楼閣もそうとう高かったしのう」

勇者「まあな。だが、言っても始まらないさ」

・・・

勇者「はあっ、はあっ…先輩、どこにもいない…見落としてはないと思うんだけど」

『そろそろ最上階のようじゃな。火の魂もまったくいなくなってしまったゾイ』

勇者「がらんどうだと、とても寂しい場所なんだな」

『そうじゃのう』

「けて……」

勇者「…ん?」

『む、誰かおるぞ』

「……すけて……たすけて…」

勇者「……」

『完全な形をもった魂はこれが初めてじゃのう。特別な存在なのかのう』

勇者「……そんな」


天使「誰か、たすけてください…」

勇者「て、天使さん……」

天使「たすけて…たすけて…」

勇者「天使さん! 俺だ、勇者だよ!」

天使「もう、苦しめないでください…たすけて」

勇者「…天使さん、ねえ、どうしたんだ? 聞こえないのか?」

勇者は天使の腕を掴もうとした!

しかし、その手は天使をすり抜けた!

勇者「な……」

少女「君が何をしようと彼女には届かないさ」

勇者「なっ…だ、誰だ!?」

少女「遠路はるばるようこそ。僕は生命の審判。砂上の楼閣の主であり、魂の管理者だよ」

勇者「…生命の審判? ということは、この女の子が四苦王?」

従者「魔物には見えんがのう…」

少女「ふふ、僕は君たちが知っているような魔物ではないからね」

勇者「…そんなことはどうでもいい。どうして天使さんに触れないし、天使さんは俺に気付いてくれない?」

少女「…その言いぐさは少し傷つくね。…魂に干渉するのは不可能という法則があるからさ」

天使「うう…痛いのは、もういやあ…」

勇者「…天使さんはどうして苦しんでるんだ?」

少女「彼女の魂は、天界に戻るには汚れてしまっている。かといって、現世に残すには清浄すぎる。そのために彼女は何処にも還ることができなくなった」

勇者「……俺の、せいか…」

少女「故に、その魂は此処に幽閉され、番人による拷問を受け続けている。それが規則だからね」

従者「ご、拷問じゃと!?」

少女「話をすればやって来たようだね」

アステリオス「……」ズンッズンッ

天使「たすけて…たすけて…!」がたがたっ

勇者「っ! どうすれば彼女を救うことができる!?」

少女「そんなことは不可能だね。肉体があるうちは彼女の魂に干渉することはできず、また、拷問を行う番人に干渉することもできない」

アステリオス「グモオオオッ!」

アステリオスは天使に向かって棍棒を振り上げた!

勇者「天使さんっ…! くそっ!」

勇者はアステリオスにピンクローターを飛ばした!

アステリオスはローターを掴んだ!

勇者「なっ!」

アステリオス「フシュルルルルッッ!」

アステリオスの『叩きつける』!

勇者はバイブで受け止めた!
バイブにヒビが入った!

勇者「ぐっ…!?」

少女「この場、アステリオス、そして僕には女神の力と同じく、滅びの神の力も宿っているからね、創造の女神の力では、アステリオスは破れないよ。」

従者「それは…魔王、勇者を凌ぐというのか…」

少女「そういうことさ。彼女のことは諦めるんだね」

勇者「触れられるなら、戦える!」

勇者は電撃ムチを振るった!

アステリオス「モ?」ぱしっ

アステリオスは電撃ムチを掴んだ!

勇者「くらえっ!」

勇者は高圧電流を流した!

アステリオス「??」

アステリオスには効かなかった!

アステリオスは鞭を引っ張り勇者を手繰り寄せた!

アステリオス「モオオッ!」

勇者「くっ…『硬化』!」

アステリオスの攻撃!

勇者「ぐうぅぅ…!」メキメキ…!

勇者は大きなダメージを受けた!

勇者「ぐっ…くっ…」

従者「…勇者、無理じゃ。ワシらに何とかできるものではない」

勇者「……できる、できないじゃない…! やるか、やらないか…だ…!」

アステリオス「フシュルルルル!」

アステリオスの『ぶん殴る』!

勇者の右腕が砕けた!

勇者「ぐ、うおおぉぉおおおッ!」

勇者は巨大バイブで攻撃した!

アステリオスには当たらなかった!

アステリオス「ブモオオッ!」ドゴオッ

勇者の左腕が砕けた!

勇者「…ぐうぅぅっ、まだだ…ううっ!」

従者「小僧、もうやめるんじゃ!」

勇者「俺が、俺がやらなくちゃいけないんだ…」

従者「…相変わらず諦めの悪いやつじゃ」

少女「見苦しいくらいにね」

従者「ああ…。だからこそ見捨てることなんてできんのう」

従者は強化服に変身した!

『勇者、ワシも戦うゾイ!』

勇者「爺さん、ありがとう…!」

『なーに、勇者のサポートがワシの使命じゃからな! それより策はあるのか?』

勇者「一応は。…よっ!」

勇者の『きつく縛り上げる』!

アステリオスは紐で捕らえられた!

アステリオス「ブオオォォオッッ!」

ブチブチッ!

アステリオスは紐を引きちぎった!

勇者「今だ、喰らえ!」

勇者は速乾性ローション大量にあびせた!

アステリオス「ギギッ!?」

アステリオスは身動きが取れない!

『筋肉が全力を出して弛緩した瞬間を狙うとは…お主、成長しとるのう』

勇者「お陰様で。…これなら、全力の一発を無防備なアイツに当てられる」

勇者は腕を超硬バイブに変化させた!

全力で助走!

床を蹴り天井に両足を着けた!

勇者は全身の質量を急増させた!

勇者「うおおぉぉおおお!!」

勇者はアステリオスめがけて高速で突撃した!

勇者「喰らえええええッッ!!」

勇者の【水晶少年】!

アステリオスの脳天に直撃した!

アステリオス「グギュ…」

アステリオスは気絶した!

勇者「はぁ…はあ…」

『…案外、あっけなかったのう』

勇者「いや、爺さんの助けが無かったら駄目だった。運も良かった」

従者「…幸運は諦めの悪い奴のもとにしか訪れないんじゃ」

勇者「はは、そうみたいだな」

少女「ふむ、アステリオスをやり込めるとは大したものだね」

天使「アステリオスが…? どうして…。貴女が…?」

少女「いいや、違うとも。ふふ、君を守ろうと必死な誰かさんだよ」

天使「……?」

勇者「天使さん! もう大丈夫」

天使「……だれかいるのですか?」

勇者「…………。天使さん、ごめんな。あの時、守れなくて」

天使「………」

勇者「ありがとう、守ってくれて」

アステリオス「…フシューッッ!」

アステリオスが起き上がった!

勇者「くっ!」

天使「ああ…っ」

従者「…うーむ、もう一度気絶させるのは難しいじゃろうな」

勇者「だとしても、何度だって戦ってやる!」

ミキミキミキミキッ……!

従者「な、なんじゃ」

天使「う、上から嫌な音が……」

ドゴオオオッッ!!

楼閣の上階が崩落した!

勇者「うおっ!?」

天使「きゃあっ!?」

少女「むむ…!?」

アステリオス「グギッ!?」

アステリオスは生き埋めになった!

勇者「な、なんだ? 土埃で何も見えない」ゲホッ

天使「ケホッ…ケホッ…」

従者「ふいー、何事じゃ、まったく」

赤騎士「さすが私の分身を倒しただけはあるな、剣士よ」

剣士「はあ…はあ…。あなたこそ、そんなに強さを秘めていたのね」

少女「さ、砂状の楼閣が、損傷するなんて…」

赤騎士の『連続魔』!
『火炎魔法・極』
『氷結魔法・極』
『電撃魔法・極』

『三位一体の災厄』となった!

剣士の『魔法剣』!
『電撃魔法・大』

女神のオーブが威力を跳ね上げた!

剣士の『必滅一閃』!

『三位一体の災厄』を相殺した!

ゴゴゴゴゴゴッッッ!!

赤騎士「これも効かぬか!」

剣士「はあ…はあ…」

剣士(身体が、熱い…力が出ない…)

赤騎士「どうした、やけに弱っているな」

剣士「うるさい…っ!」

剣士の『竜巻斬り』!

赤騎士「はあッ!」ゴオオッ

赤騎士には届かなかった!

赤騎士「風の刃など、私の火神剣の灼熱の前ではかき消されるわ!」

剣士「はあっ……はあっ……」

赤騎士「どうした! 貴様の実力はこの程度か!」

赤騎士の『灼熱波』!

剣士「くっ…」

剣士には当たらなかった!

ジュウウウッ!

剣士「ううぅっ…!!」

赤騎士「ふん、斬撃を躱しても余熱が貴様を焼き殺すぞ」

剣士「く…ぅ…!」

ドクンッ

剣士「…っ、ぁ…!?」

剣士は倒れた!

勇者「先輩!?」

剣士「ぅぅ……!」シュウウウゥ

赤騎士「これは…竜の呪いか。やはり、黄竜は斃されていたか」

少女「やれやれ、僕の管轄下であまり騒がないで欲しいな…」

赤騎士「四苦王か。少しそこで待っていろ」

従者「…お主、何をしている?」

赤騎士「なんだ、翁? 私は貴様なぞ知らん」

従者「と、とぼけるな! なぜ…なぜ、お主が魔物になっているんじゃっ!?」

赤騎士「私は生まれたときから魔物だ」

勇者「爺さん、何を言っているんだ?」

従者「お主、勇者じゃろ!」

勇者「…?」

赤騎士「意味が分からぬ」

従者「ふざけるな! 甲冑に全身を包まれていても、その姿が変わっても、ワシには分かるゾイ! お主は、先代の勇者じゃ!」

勇者「赤騎士が、前の勇者…?」

少女「…確かに、かつての勇者の魂がここを訪れていない。僕も疑問には思っていたけども…」

赤騎士「……」

従者「本当に覚えとらんのか…!?」

赤騎士「ふん、それが仮に事実であるとして、だから何だというのだ。私は魔物だ。…貴様らを倒すのが私の使命だ!」

赤騎士の『爆炎斬り』!

従者「…っ!?」

勇者「うおおっ!」

勇者は、右腕をバイブに変えて盾とした!

バイブは爆散した!

勇者「ぐうっ…!」

従者「…目を覚ますのじゃ!」

赤騎士「ふん、世迷言は結構だ」

アステリオス「ブオオォオオッ!」ガラガラッ

アステリオスは赤騎士へと襲いかかろうとする!

赤騎士「鬱陶しいぞ、牛め」

赤騎士は『火炎魔法・極』を放った!

アステリオス「ブォッ!?」

赤騎士「ふん、しぶといな」

赤騎士の『絶界斬り』!

アステリオス「モ……ゥ……?」

アステリオスは一刀両断された!

少女「ア、アステリオスが……そ、そんなバカなことが……」

赤騎士「純粋に研ぎ澄まされた力の前には、階位は無力だ」

少女「む、むちゃくちゃだ。世界の調和を乱している」

赤騎士「違う。世界は新たな調和の基準を求めている。もはや、砂上の楼閣、そして貴様は不適格なのだ」

少女「…い、言ってくれるじゃないか」

赤騎士「貴様も魔物だろう。我々に協力しろ。従わないのならば、実力行使をさせてもらう」

少女「い、いや、僕は魔物だが、完全な魔物ではなく、中立であってだね…」

赤騎士「貴様に選択権はない」

少女「あ、うぅ…し、しかしだね…」

勇者「…これ以上、生命への侮辱は許さない!」

赤騎士「…ふん、それならば私を止めてみろ、力無き者よ」

赤騎士の連ぞ

バチバチッ……!!

赤騎士「!?」ピタッ

少女「むむっ…!?」

従者「こ、これは…!」

天使「魔王……?」

赤騎士「……違う」

少女「近付いているね…」

ドゴオッ!

赤騎士「……!!」

赤騎士は大きく吹き飛んだ!

従者「な、なんじゃ!?」

少女「とてつもなく強大な力…っ!?」

緑鬼?「あァぁァァかァァァァきィぃィィぃいシィィい!」

赤騎士「緑鬼…か?」

緑鬼?「こぉぉォォォォろォォォすぅぅゥゥゥ!」

緑鬼?の『殴り殺す』!

赤騎士「!」

赤騎士は何とか回避した!

緑鬼?「シネシネシネ死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネシネシネ死ね死ねシネシネシネ!!」

緑鬼?の『殴り殺す』!

赤騎士は盾で防いだ!

盾にヒビが入った!

赤騎士「この力……滅びの神の力か!」

緑鬼?「ちちちちちちチカラチカラ!!」

赤騎士「ふん、愚か者め。扱えぬ力に踊らされおって」チャキッ

赤騎士の『亜空切断』!

緑鬼?には当たらなかった!

緑鬼?「殺スッ!」

緑鬼の『鬼没』!

赤騎士「………そこッ!」ブンッ

緑鬼?「ギイィッ!?」

緑鬼?は一刀両断された!

緑鬼?「…ギギ……ッ」ピクピクッ

赤騎士「力に溺れる者に勝利は掴めない」

緑鬼?「チ、くしょウ…さイごマデ…カテなかッタ……」

赤騎士「…さらばだ」

緑鬼?「…………」

ボコボコボコッッ!

赤騎士「断面から萌芽が…!?」

緑鬼?「ががががガガががが」ボコココ……ッ

勇者「な、なんだ?」

緑鬼?は巨大な原生生物に姿を変えた!

ズズズズズズ…

従者「どんどん巨大化しているゾイ!」

少女「た、魂を、食べている…っ!?」

勇者「なんだと!?」

ゴポポポッ…

赤騎士「緑鬼の意思は…もうないようだな」

ズルズルズルズル……

赤騎士「…滅びの神といえど、現時点では魔王様にとって障害にしかなり得まい」

赤騎士の『天崩斬』!

破滅の化身は楼閣ごと真っ二つになった!

しかし、すぐに再生を始める!

赤騎士「…斬撃は無効のようだな。ならば」

赤騎士の『連続魔』!
『火炎魔法・極』!
『火炎魔法・極』!
『火炎魔法・極』!

『火神の抱擁』となった!


勇者「ここも巻き込まれるぞ!」

少女「しょうがないな」

生命の審判は『高域障壁魔法』を唱えた!

少女「これで大丈夫さ」

ゴオオオオッ!!

『広域障壁魔法』は辛うじて爆発と相殺した!

少女「い、一撃で吹き飛ぶなんて……。さすがに想定外だね」

凄まじき業火は破壊の化身を丸ごと焼き尽くす!

しかし破滅の化身は魔力の大部分を吸収した!

赤騎士「なんだとっ!?」

ボコココッッ!!

破滅の化身はすぐに再生を始める!

赤騎士「バケモノめ!」

破壊の化身は更に肥大化する!

天使「魂の悲鳴が…なんて非道い…」

従者「ま、また大きくなったゾイ!」

少女「楼閣を漂っていた魂を残らず吸収してしまったようだね。飽き足らないのか、外にも広がりつつある」

勇者「…生きてる人々も取り込もうとしてるのか!」

少女「まさに滅びの神の化身だね。あはは、世界の終わりかな…」

勇者「させてたまるか…!」

勇者の『亀甲縛り』!

破滅の化身はうろたえたように大きく揺れた!

勇者「俺が、絶対に守ってみせる…!」

勇者は超巨大オナホールで破滅の化身を包み込んだ!

勇者「うおおおっっ!」

最大圧力で破滅の化身を締め付ける!

破滅の化身は大きく暴れる!

少女「これはひどい」

赤騎士「抑え込む……そうか、封印の魔法があるか」

赤騎士「しかし、これだけの存在を封印するならば、私の魔力でも足りないな」

赤騎士「…………」

赤騎士「覚悟を決めるか」



勇者「ぐうううううッ!」

従者「やめるんじゃ、勇者! お主も取り込まれることになるゾイ!」

勇者「ううううっ…ぐうっ!!」

オナホールは突き破られた!

勇者「まだまだァ!」

勇者はオナホールを修復した!

しかし、すぐに破られてしまった!

破滅の化身は荒縄を千切った!

勇者「はあっ……はあっ……くそっ……まだ…っ」

従者「止せ! これ以上は本当にお前が食われるゾイ!」

赤騎士「そこの者たちよ、転移魔法で退避しろ。私は今からここら一帯もろともこのバケモノを封印する」

勇者「っ!?」

赤騎士「貴様がバケモノの足止めをしたため、準備ができた。この忠告はそのせめてもの礼だ」

勇者「……」

赤騎士「時間がない。早くしろ」

従者「…嘘では無さそうじゃのう。どの道、ワシらにはこれ以上打つ手はないゾイ」

少女「選択肢をいくつも持てないのは無力な証だね。いやになるよ」

勇者「ぐっ 、くそっ…」

少女「…ところで転移魔法は使えるんだよね?」

従者「え、使えないんか?」

少女「え?」

三人「…………」

天使「勇者さん、私に任せてください!」ぎゅっ

勇者「天使さん!?」

少女「おや、肉の器に納まってるね」

少女(……ああ、アステリオスの亡骸を再構築したのか。さすが創造の女神の使いといったところかな)

剣士「……すぅすぅ」

天使「私も含めて5人ですね。それでは私のそばにいてください」

天使は魔法を詠唱する!

シュルルッ!

少女「危ないっ!」

破滅の化身の触手が迫る!

天使「……あっ」

従者「でやあっ!」

従者は触手に抱き着いた!

勇者「じいさん…っ!?」

従者「ワシに構うなっ! いけっ!」

天使「……っ」

天使は転移魔法を発動した!

従者「勇者、世界をすくうんだゾイ!」

勇者「……ああっ! ありが……」

勇者たちは別地点に転移した!


従者「…どうやらワシにも役目が残っとるようじゃな」

赤騎士「……さて」

夥しい触手が赤騎士に迫る!

赤騎士はわざと捕まった!

赤騎士「ぐううっ……!!」

破滅の化身は赤騎士を取り込もうとする!

赤騎士「ふん、取り込まれるのは貴様の方だ」

赤騎士「これが、私の全力だ! 」

赤騎士の『真・連続魔』!

『究極破壊魔法』!
『究極破壊魔法』!
『天地崩壊』となった!

『究極破壊魔法』!
『究極破壊魔法』!
『天地崩壊』となった!

『究極破壊魔法』!
『究極破壊魔法』!
『天地崩壊』となった!

カオスに近似する!

究極魔法『永遠の黄昏』!

創造と破壊をも超越する擬似的な混沌!

しかし破滅の化身は魔力のほとんど全てを吸収した!

破滅の化身は更に膨張する!

赤騎士(既に私の魔力を多少取り込んだからか、ほとんど無駄なく吸収したようだな)

赤騎士(むしろ好都合)

赤騎士(このバケモノの魔力の大部分は私の魔力だ。結果的に、全体の魔力も私のそれにかなり近いものになっている…!)

赤騎士(これならば利用できる!)

赤騎士「己の吸い取った力で、己を封印するがいい!」

赤騎士は『究極封印魔法』を放とうした!

しかし、魔物の本能がそれを押し留めた!

赤騎士(……っ、身の程は超えられないのか)

赤騎士は破滅の化身に取り込まれていく!

そして”彼”の意識は魂の記憶に触れる。

『赤騎士ー、ひなたぼっこしよー』

『赤騎士さま、魔法の指導をお願いしますわ』

『そのうち、絶対にぶっ殺してやる! それまで誰にも殺されるなよ!』

『赤騎士よ、信頼しているぞ』


『『勇者よ、魔王を倒せ』』

『『勇者さま、勇者さま!』』

『『勇者! 世界のために魔王を倒すゾイ』』

…………。

わたしは、結局、何も果たせずに朽ちてゆく運命なのか。

かつても、今も。

「諦めるには早いゾイ! ワシらの力も合わせれば、上手く制約を抜けられるゾイ!」

「面白いことしてるじゃん、僕も手伝うよー」

……お前たち。

「かつて置いていかれた分、今、力を貸すゾイ」

「にひー、僕は君の友だちだろー」

…………。

ああ!

巨大魔法陣が破滅の化身の表面に浮かぶ!


封印魔法が発動した!

あまりに放置しすぎました、ゴメンなさい…。
多分次あたりから新展開が始まるはず。いや、始まらないかも。

翌日。

魔国・魔王城

伝令係「破滅の力は、赤騎士さまのの封印により、結晶化。その直後、何片かに砕け、世界各地に飛んでいったとの報告が多数上がっております」

側近「…そうですか。それでは、捜索隊を派遣して『破滅のオーブ』の欠片を集めなさい」

伝令係「はっ!」

側近「…これで、四天王は壊滅ですか。所詮は魔物モドキと雑魚の寄せ集めに過ぎませんでしたね」

伝令係「!」

側近「緑鬼ごときの器が破滅の力をあれほど身に宿わせ、魔物モドキの赤騎士が破滅の神の力を抑え込むとは」

伝令係「……」

側近「ふくく、結果的には魔王様にとって都合の良い状況になりつつあります。その点では功績を褒め称えるべきかもしれませんね」

狂爺「ヒッヒッヒ、相変わらず嫌味な奴ジャのう」

伝令係「うわっ」

側近「おや、来ましたか。お久しぶりですね」

狂爺「ヒッヒッヒ、お互いに引きこもっとるからのう」

側近「研究の進捗はどうですか? 早く完成させてもらわないと我々の悲願が達成できないのですよ」

狂爺「ヒッヒッヒ、時間がかかるものなんジャよ。最近はお主が、ニンゲンを大量に流してくれるから研究が捗るがな」

側近「それで、報告にあった通りなのですね?」

狂爺「そうジャ。ニンゲンを魔物に変える毒薬の量産化に成功ジャ。」すっ

側近「…ふくく、これをニンゲンの井戸水や用水に混ぜれば、阿鼻叫喚ですね」

伝令係(ひ、ひでえ)

狂爺「報告の通り、成功率は原液でも五割にも満たないがな。薄めれば致死性もほとんどなくなる。所詮は研究の副産物ジャ」

側近「…使えませんね」

狂爺「文句の多い奴ジャ。とりあえず、一本お主にやろう」

側近は『禁断の毒薬』を手に入れた!

狂爺「それと、もう一つはこれジャ」

混合獣「……ウウウゥ」

伝令係「ひいっ、いつの間に!?」

側近「かなり大きいですね」

狂爺「まあな。元々は非力な魔物たちジャったが、混ぜ合わせることで相当強くなった。ニンゲンも混ぜたのが功を奏した」

伝令係「な、なんて酷い…」

狂爺「ヒッヒッヒ、まあ、こいつも、研究の副産物なんジャがな。言われた通り、少し量産しておいたぞ」

混合獣「ウウウゥ……」

側近「もちろん飛行能力があるのですね?」

狂爺「ヒッヒッヒ、もちろんジャ。お主の注文に応えてやったわ」

側近「ふくく、これでようやく、準備が整いましたね。あなたが『変化の杖』を複製できれば、もっと早かったのですが」

狂爺「ワシは便利屋ジャないからのう」

側近「ふくく、それでは、東国計画をそろそろ実行段階に移しますか。東国からの報告の限り、機は熟したようですので」

伝令係「承知しました」

側近「ふくく」

狂爺「ヒッヒッヒ」

伝令係(こいつら、気持ち悪い笑い方するなぁ。戦狼さまも戦闘狂。魔王軍に穏健派はもういない。もう辞めて故郷に帰りたい)とぼとぼ


側近「はやく『破滅のオーブ』を集めなければいけませんね」

狂爺「あれさえ手に入れば、魔物の勝利ジャな」

側近「ええ」

狂爺「…魔王さまは、本当に運命を変えるやもしれんな」

側近「ふくく」

狂爺「問題は、やはり勇者ジャな。創造の女神の使者と、破滅の神の申し子。もう戦いは避けられん」

側近「そうですね。先代の勇者を、赤騎士を懐柔したようにはいかないでしょう」

狂爺「懐かしいのう。当時を生きたのも、もうワシとお主だけか」

側近「感慨に浸るには時期尚早ですね」

狂爺「分かっとる」

側近「例の勇者と思わしき女は竜の呪いによって極端に弱体化、所在は不明ですが、しばらくは時間が稼げます。その間に、早く研究を完成させてください」

狂爺「分かっとるわい」

側近「ふくく、決着の時は遠くなさそうですね」

二週間後。

東国・修道院

少女「転移魔法によって移動した先は、勇者くんの故郷である東国の教会だった。力の酷使による疲労か、二週間近くも昏睡していた勇者くん。みんなを焦らし切ってからの覚醒後は、天使くんとの感動の再会、従者との哀しき別れ、急に幼女となって記憶を喪った剣士への対応に休む間もない。それでも新たな仲間を加えての彼の冒険は続いていく」

勇者「…随分と説明的だな」

少女「ふふ、老婆心さ」

勇者「使い方を間違えてないか…? というか、新たな仲間って…?」

少女「決まってるだろう。君たちの仲間にしてもらいたいのさ」

勇者「…本気か? だって一応魔物なんだろ」

少女「砂上の楼閣を壊された以上、魔王に恨みがある立場さ。調和を乱すものは許せないのでね」

勇者「……」

少女「それに、居場所がなくなってしまったから、新しい居場所が欲しいのさ」

勇者「…まあ、そういうなら俺たちに協力してくれ。君は、敵には見えない」

少女「ふふ、ありがとう。よろしく」

生命の審判が仲間になった!

少女「ふふ、僕は他のチョロインみたく簡単にいかないからね」

勇者「なんの話だよ…」

バタンっ

けんし「おにいちゃん、ごはんができたわ」

勇者「あ、ああ。今行くよ」

少女「おにいちゃん(笑)」

勇者「俺に言うな、俺だってむず痒いよ」

少女「ふふ、そう言うわりには、まんざらでもなさそうじゃないか」

勇者「…そんなことないぞ」

少女「おにいちゃん(笑)がそういうのなら良いけどね」

勇者「…なんか腹立つなぁ」




シスター「さあさあ、朝食の準備ができましたよ」

勇者「ありがとうございます」

天使「私も手伝いましたよ」

シスター「助かりました。手際もいいですし」

天使「泊めていただいたのだから当然ですよ」

修道女「んふふ、良い奥様になりそうですね」

天使「いえ、そんな…」ちらっ

勇者「…ん?」

天使「なんでもないですっ!」

少女「…鈍感スキルは一長一短だからね、注意しなよ」

勇者「だから、なんの話だよ…」

シスター「静かに。食前の祈りを捧げるのですから」

勇者「はい」

天使(聖職者の方々は、女神さまの実態を知ったら、やはり幻滅するんでしょうね。そして、邪神信仰を始めたりするかも……)

けんし「やさい きらい…」

修道女「あらあら、好き嫌いはいけませんよ」

けんし「むぅ…」

シスター「それにしても、あなた方が突然、礼拝中の壇上に現れたのには驚きました。本当に心臓が止まるかと思いました」

天使「驚かせてしまい、本当にすいません…。慌てていたので、行き先まで正確に決められなかったんです」

少女「転移魔法が使えるだけでも驚嘆に値するけどね、しかも下準備もなしに」

修道女「しかも、あなた方が近頃、勇名を馳せている勇者ご一行だというのにも、驚きましたよ」

シスター「勇者はうら若き少女というのは、誇張だと思っていましたが、そんなことは全くありませんでした。お連れの方も美しい方ですし」

シスター「…ええと、あなたで間違いないんですよね」

少女「うん? …ええ、そうですとも」

天使「あは、あはは…」

修道女「あらやだ、この凛とした顔立ちを見れば分かるじゃないですか」

シスター「そうですわね。すみません」

少女「いえいえ。ふふ、ありがとうございます」

勇者(勇者どころか、魔物なんだけどな…)

けんし「こざかな、きらい…」

修道女「栄養たっぷりなんだから食べなさいな」

けんし「うー…」

勇者(本当はこっちが勇者で…いや、実際は俺が勇者なんだけどな。いや、俺は本当に勇者なのかな…)

シスター「ところで、こちらのお子さんは? …もしかして、孤児ですか」

けんし「ちがうわ! あたし、ゆうしゃよ! マモノをやっつけるんだから!」

修道女「あらあら、小さい勇者様ね」

けんし「ちっちゃくないもん!」

修道女「ふふ、勇者様ならお野菜も小魚ももちろん食べられないと」

けんし「ううー…」

勇者(……先輩、小さいころは大人の前だとこんな感じだったのかな。俺の前だとお姉さんぶってただけで)

シスター「勇者様はこれからどうするのですか?」

少女「もちろん、魔王を倒しますととも。生命と魂の調和を乱す不届き者を野放図にできませんから」

修道女「さすがですね。女性なのに頼もしくて素敵ですわ」ぽっ…

少女「ふふ、ありがとうございます。しかし、この国は僕の故郷。魔王討伐の前に一度家族に顔を見せていこうと思っています」

シスター「それはいいことですね。ご家族も喜ばれるでしょう」

修道女「そういえば、東王には拝謁しましたか?」

少女「……イエ、タブンシテナイデス」

修道女「東王は我らが神に御夢でお告げをいただいたそうですが、現れたのは勇者を騙った偽物だったそうです」

シスター「その偽物、あろうことか王と謁見して、邪悪な右腕で、王を暗殺しようとしたとか」

修道女「神を愚弄する度し難い所業です」

勇者(…それって俺のこと? なんか話が盛られてるぞ…)

天使「そ、それはもしかしたら誤解なのかもしれませんよ!」

シスター「?」

天使「その人こそが本当の勇者である可能性だって充分にあります!」

勇者(…天使さんは、ほんとに天使だなぁ)ほろり

シスター「もしや、お知り合いでしたか?」

天使「あ、えっと… はい…」

修道女「あら、そうとは知らず、申し訳ありませんでした」

天使「いえ……誰が悪いかというと、私の上司なんですけど……」ボソボソ

シスター「しかし、本当の勇者というと、まるであなた方が偽物みたいな言い方ですね?」

少女「神に選ばれたのかと言われれば、違うという話です。僕は、そういう箔付けではなく、自力で勇者と呼ばれるようになったのです」

シスター「そういうことですか。失礼な物言いでごめんなさいね」

少女「いえ、こうして施していただいてるのだから感謝の念しかありませんよ」

修道女「勇者さまは本当に素敵な方ですわね」

少女「ふふ、それほどでも」

勇者(口が上手いなあ……素直に感心だ)

シスター「ところで、最近困ってることがございまして……」

修道女「…お止しなさい、世界を救う方々にお頼みすることではありません」

シスター「しかし…」

勇者「俺たちが力になれることですか?」

シスター「強い魔物が最近、この近くに住み着いて、作物を荒らしていくのです。このままだと飢える者が出かねません」

勇者「魔物退治なら任せてください」

シスター「まあ、ありがとうございます。ただ、大したお礼は出せませんが」

勇者「お礼ならもう十分いただきました。それに困ってる人を見過ごすわけにはいかないですから」

修道女「やはり勇者さまのお仲間は素晴らしい御心の方々ばかりですね」

少女「ハハハ、ソウデスネ」

道中。

勇者「ここから数時間ほど先の洞窟だ。今日中に終わるだろ」

少女「やれやれ、いつもこうやって安請け負いしてるのかい? 勇者だからって、それじゃダメだろう」

勇者「そういうわけでもないよ。困ってる人を助けるのは人間として当然だろう」

少女「君の基準を人の基準にするのは感心しないな」

勇者「…とにかく、俺は困ってる人は助けたいんだ」

少女「損な性格だね」

勇者「損得ばかりが良し悪しの基準じゃない」

少女「君は国を担える人柄ではないな。せっかく神に選ばれて多くの好機を手に入れるというのに」

勇者「俺は、今は魔王を倒すことができればいいんだ。王さまになるつもりもない」

少女「無欲だね」

勇者「そうでもない」

少女「まあ、それはいいや。今後の旅はどうするつもりなんだい」

勇者「魔王を倒すために、魔王のいるところに殴り込む」

少女「明日にでもかい」

勇者「だが、今のままで勝てるとも思えない。赤騎士のような強い奴がいないとも限らないし、敵の本拠地に無策で乗り込んだら、勝てる敵にも勝てない」

天使「そうですね。相手の戦力の底が分からないのに強攻策はやめた方がいいでしょうね」

少女「けれど、赤騎士を失って動揺している可能性もあるんじゃないかい?」

勇者「…そうだとしても、きっと魔王は強い。あの赤騎士にも匹敵するはずだ。今の戦力では無理だろう」

少女「……そうだね。ということは、戦力の増強かな」

勇者「ああ、俺はもっと強くならなきゃ。弱い、弱過ぎる。何も守れない。無力だ。力が必要だ」

天使「……勇者さん?」

勇者「それに、みんなとの約束を果たすためにもな」

少女「君は格好いいことばっかり言うねえ。ロマンチストだ」

勇者「…そうだな」

天使「私も強くなりますよ。もう迷惑をかけたくありませんしね」

勇者「迷惑なんて一切かかってないぞ。天使さんには一生かけても返せないくらいの恩があるよ」

天使「ふふ、それは私もですよ」

少女「僕の目の前でイチャついてくれるねえ」

天使「そ、そういうわけじゃ…」

けんし「おとこのくせにすぐなかないの!」

勇者「うおっ、起きてたのか。別に泣いてなんかないけど…」

少女「いや、今のは寝言だね」

天使「ぐ、具体的な寝言ですね」

けんし「けんのもちかたが、なってないのよ…」ムニャムニャ

勇者「なにそれ怖い」

天使「…この子は何か特別みたいですね」

勇者「多分、女神さまが勇者にしようとしたのは本当は先輩なんじゃないかと思うんだ。常識外れに強いし」

少女「そうだとしても、こんなチビちゃんになってしまっては、どうしようもないね」

天使「そうですね…解呪の方法を探し出さないと」

少女「ところで、僕が聞きたかったのは、この次の目的地だよ。強くなるにせよ、この場に留まるわけではないだろう」

勇者「ああ。とりあえず、一度先輩を自宅まで送ろうと思う。その後は、無駄だと思うが、伝説の装備品……」

天使「どうしました?」

勇者「そうだよ! 伝説の装備品! 君が持ってるんじゃないのか!?」

少女「そうとも。だから、君の荷物のところに置いておいただろう。『日輪の兜』と『勝利の鎧』を」

勇者「…マジか」

天使「聞きかじったことがありますね。邪悪なものを倒す戦いにおいて幾度も使われているとか」

少女「そうだね。僕ら四苦王はそれを守護する使命を破滅の神から与えられてる」

勇者「いいのか、もらっても?」

少女「いいさ。先に決まりを破ったのはあちらからだからね」

天使「これは大きい戦力ですね!」

勇者「…うん。あとは、『英雄の盾』か。これについては、まったく足がかりがないな」

少女「僕もないな。空の国とか海の国ならば何か手がかりがあるかもね」

勇者「…空…海?」

天使「話してませんでしたっけ?」

勇者「あ、ああ」

少女「かつての魔大戦の戦禍を受け、一部の選民思想の人々が造ったのが空の国」

天使「魚人などの亜人による国が海の国ですね」

勇者「……」

少女「どうしたんだい?」

勇者「いや、自分の無知が恥ずかしくてな。世の中のこともあまり知らないし」

少女「ふふ、若いね」

勇者「なんだよ、同い年くらいだろ」

少女「見た目はね。実際は生きてる桁が違うよ」

天使(私もです……。あっ、でも肉体を得てから数えれば最年少ですね!)

勇者「…そうは見えないけどな」

天使「ひどいですっ」うるっ

勇者「えっ」

少女「『英雄の盾』以外には何かないのかい?」

勇者「あとは『生命の樹』を砂上の楼閣に植える予定だったんだが…」

少女「なるほど、それもあって砂上の楼閣に来たのか。残念だけど、砂上の楼閣が無くなった以上、不可能だね」

天使「しかし、砂上の楼閣以外にも生育可能な土地があるのでは?」

少女「この大地では無理だね。『混沌の樹』の力が地上全体の大地に根を張り巡らしているから」

勇者「砂上の楼閣だけが可能だったのか」

少女「その通り。もっとも、僕はそれを是としなかったけどね」

天使「で、でも、まだ希望がないわけではありませんよ。どこかまだ清浄な土地が残ってるかも…」

少女「…そうだね。そこを探すのも旅の目標になりそうだ」

勇者「あとは…別れた仲間たちと合流しないと」

天使「あ、エルフさんですね?」

勇者「うん。それと、もう一人」

少女「ふふ、どうせ女なのだろう?」

天使「……」じとー

勇者「え…まあ…うん。え、 なんでそんな目で見るの?」

天使「どうしてでしょうねっ」ぷいっ

・・・

けんし「ずっと、おぶってくれて、ありがとね…」

勇者「いや、いいよ」

けんし「おにいちゃんのせなか、あたたかいわね」

勇者「そうか?」

けんし「うん。おちつく」

勇者「それは良かった」

けんし「…ねえ、おにいちゃん」

勇者「うん?」

けんし「わたしたち、どこかで、あったことある?」

勇者「…どうだろうね」

けんし「なんだか、よくおもいだせないのよ…なんか、くるしかったような…」

勇者「……」

けんし「…はやく、あいたいな」

勇者「誰に?」

けんし「うちの、きんじょのおとこのこ。すぐになくのよ。おねーちゃん、おねーちゃんってね」

勇者「あはは…それは、それは」

勇者(間違いなく俺だな)

勇者(…姉ちゃん、元気にしてるかな?)

・・・

少女「この洞窟が、例の魔物の住処かな? やれやれ、中々深そうじゃないか」

勇者「真っ暗だな。松明の準備をしないと」

天使「大丈夫ですよ」

天使は『全体光照魔法』を唱えた!

洞窟全体が明るく照らされた!

天使「さあ、これで心置きなく進めますね」

勇者「…さすがだなあ」

少女「紐みたいな蟲が、うぞうぞ逃げてく…うえ…」

・・・

魔物が現れた!

土竜熊’s「シイイイィッ」

勇者「…多いな」

少女「ふふ、ここは僕に任せてもらおうかな」

生命の審判は大鎌を呼び寄せた!

少女「よっと」ビュオオッ

素早く鎌を振り回して土竜熊たちの首を刎ねとばした!

少女「僕はどちらかといえば後衛だけど、必要ならばこの通り前衛にも出るさ」

勇者「それは頼もしいな。どうも前衛の仲間が少ない…というか俺だけか?」

天使「私だって、少しは戦えますよ」

勇者「あ、ああ」

勇者(そういえば撲殺天使だったな… …。あれ、やっぱり俺いらない子なんじゃ…?)

勇者「この魔物たちが作物を荒らしてたのかな」

少女「違うだろうね。見た所、あまり外に出る魔物ではなさそうだ。元凶は違う魔物だろう」

天使「もっと奥にいるのでしょうか?」

少女「ふふ、最奥にいると考えるのが妥当かな」

勇者「いや、でも外に出て作物を荒らす魔物だったら、もっと入り口付近に居着いた方が合理的なんじゃ…」

少女「一概にそうとも言えないさ。この洞窟の中の魔物は割と多様性に富んでるのかもしれない。そうすると縄張り争いなどの理由から奥にいることもあり得る」

勇者「あー、そうか」

天使「それに魔物に合理性を求めちゃダメですよ」

勇者「そ、そうなのか?」

・・・

少女「ふう、割と魔物を倒したね」

天使「久々の戦いには丁度いいですね。そこまで強くないし」

勇者(二人が強すぎて俺の出番がない…。いや、先輩を背負ってるし、荷物持ってるし、助かるんだけどね)

少女「さて、もうすぐ最奥だね」

天使「わくわくしますね。何があるんでしょう」

勇者「さっきからちょくちょく、犯人っぽい魔物を倒してるような…というか、もはや目的が変わってない?」

少女「ハハハ、ソンナコトナイヨ?」

天使「あ、行き止まりですよ。…扉がありますね」

少女「灯りもついてるね。誰かが住んでるのかな?」

勇者「…ノックしてみるか」


コンコンコンッ

「……入りなさい」

勇者「だってさ」

天使「入ってみましょうか」

少女「ふふ、罠だったらかかってみるのも一興だろう」

勇者「ほんと頼もしいな…」

ガチャ

中には老人がいた!

「……ついに来たか。ワシは占いババ。未来を占う者じゃ」

少女「聞いてもないのに急に語り始めたよ」

天使「こら、失礼ですよ」

占いババ「生来ワシは未来を視る眼をもっておった。しかし、ある時に、世界の終わりを視てしまってな。その恐ろしさに両眼を潰した」

少女「頼んでもないエピソードを始めたよ」

天使「だから、失礼ですってば。おそらく、この人は本物の力の持ち主ですよ」

占いババ「ワシは長い間、この場所で絶望に打ちひしがれていた。しかし、ふと思い出したのじゃ。あの終わりの日、微かに煌めいた希望を」

勇者「はあ…」

占いババ「その希望は今、ワシの目の前にいる」スッ

少女「眼が視えないんじゃないのかい?」

天使「視えてないと思いますよ。でも感じるのでしょうね」

勇者(俺、と思わせてまた後ろに負ぶさってる先輩っていういつものあれかな)

占いババ「少年、お主が世界を救う使命を背負っておる。お主が光の中心じゃ」

勇者「……俺?」

占いババ「しかし、過酷な運命を背負っている。耐え難いほど辛いことが多くある。それでもお主は進まねばならぬ」

勇者「……」

占いババ「魔王の手に闇の宝玉が渡ったとき、世界の終わりが訪れる」

占いババ「欠片となった闇の宝玉のみが運命の岐路となる。アルファがオメガまで主を導く。闇の宝玉を魔の者に渡してはいけぬ」

勇者「…闇の宝玉?」

占いババ「主の過酷な運命の始まりに急ぐのじゃ」

勇者「それって…」

占いババ「弱くか細い勇者よ。堪え難きことがあろうと、心を失うな」

勇者「……」

少女「やれやれ、もう少し具体的な言葉をいただきたいものだね」

占いババ「…………」

返事がない。

息絶えているようだ。

少女「えっ」

天使「…呪いをかけていたようですね。この日まで生き永らえるための呪いを」

勇者「…それがこの人の使命、そして意思だったのか」

少女「…人間の執念にはいつも舌を巻くよ」

またそのうち。

ガチャッ!

チビ悪魔「おババっ!」

少女「おや、魔物だね」

チビ悪魔は占いババの屍にしがみつき泣き喚く!

勇者「魔物…この婆さんに懐いてたのか?」

少女「あのご老体が一人では生活できなかっただろうし、おそらく彼が世話をしていたんだろう」

天使「魔物が人間と共に暮らすなんて…生命を滅ぼす破壊衝動があるはずなんですが…」

勇者「あの婆さんは特殊だろうけど人間だった」

少女「まあ、魔物も知的生命体だからね。多少のアンビバレンスは存在し得るさ」

チビ悪魔「ヒッグ、うぇ、うう……」

少女「ところで、作物を荒らしていたのはこの魔物かな?」

チビ悪魔「な、なんだよっ! おいらたちはちゃんとお詫びの品を毎回置いてるじゃないかっ」

少女「おや、それは初耳だね」

チビ悪魔「でも、おババが死んじまった今、これ以上食べ物を盗むこともないぞ…」

チビ悪魔「…うわああん、おババ~~!!」

少女「…もう、倒す必要はなさそうだね」

勇者「ああ…。これ以上、俺たちがいても迷惑だろう」

天使「行きましょうか」

チビ悪魔「ひっぐ…まてっ」

少女「まだ何か用があるのかい?」

チビ悪魔「おババがここを訪れた人に渡せって」

勇者は『邪悪なイヤリング』を手に入れた!

天使「うっ…なんて悍ましい装飾品なんでしょう…」

少女「…ずいぶんと悪趣味だね」

チビ悪魔「なんだとーっ! おババはこれをどれだけ大切にしてたと思ってやがるっ」

チビ悪魔は激昂している!

勇者「いや、ありがとう」

勇者は『邪悪なイヤリング』を大切にしまった!

チビ悪魔「へへっ、にいちゃん良いやつだな! 大切にしてくれよっ」

勇者「あ、ああ」

少女(単純な魔物だね…)

・・・

天使「勇者さんじゃ、もしかしてそれを身に付けるつもりですか?」

少女「お勧めはしないね。というか、やめるべきだよ」

勇者「……」

天使「勇者さんには、伝説の装備があるじゃありませんか」


勇者「…それなんだけど、後で見せたいものがあるんだ」

「「……?」」

けんし「くぅ…くぅ…」

修道院。

シスター「あら、お帰りなさいませ。魔物をお倒しになったのですか?」

少女「ええ、まあ。世界を救おうとしている僕の敵ではありませんでしたよ」キリッ

シスター「まあ、流石。素敵ですわ」ぽっ

勇者「ところで作物が荒らされた後に、何かが置いてあったりという話を聞いたことは?」

シスター「え、うーん、特にはありませんね」

勇者「一応、もう一度作物が荒らされた跡を詳しく見るように、伝えてください」

シスター「はあ…」

後日、小振りながら綺麗な装飾品が多数見つかったとか。

少女「それで見せたいものというのは何かな?」

勇者「これだ」

勇者は『光の剣』を指差した。

天使「伝説の装備品ですね。きっと魔王を倒すのに役立つはずです」

勇者「……」

勇者は『光の剣』を装備しようとした!

バチチチイッッッ!!

しかし装備できなかった!

勇者「くっ……」

天使「……えっ」

少女「……」

勇者「もう一つ試してみるか」

勇者は『勝利の鎧』を装備しようとした!

パアアアンッッ!!

しかし、装備できなかった!

勇者「ぐうっ、やっぱりな…」

勇者は『日輪の兜』を装備しようとした!

キイイインッッ!

しかし装備できなかった!

勇者「ぐぁっ…!」

天使「だ、大丈夫ですか?」

勇者「大丈夫。さて、これで手持ちの伝説の装備すべてに拒絶されたな」

少女「……」

生命の審判は『光の剣』を装備しようとした!

少女「くっ、重いね…っ」

装備するのを諦めた。

勇者「俺ほどは拒絶されなかったな。天使さんも試してみる?」

天使「えっと…はい…」

天使は『光の剣』を装備しようとした!

天使「…ギリギリってところですかね。でもこれで戦うならもっと良い装備がありそうです」

装備するのをやめた。

勇者「まだ二人の方が装備に認められてるみたいだな。俺はダメだ。全部弾かれてしまう」

天使「で、でもこれが勇者の証というわけでもないでしょう?」

勇者「…だが俺には、伝説の装備を身に付けるだけの身に付けるだけの力がないんだ」

天使「そんなこと……」


けんし「なにをやってるの。アタシもまぜてよ」

勇者「…うん。これを持ってみてくれ」

けんし「わっ、かっこいい!」

けんしは『光の剣』を装備した!

『光の剣』は煌々と輝き出した!

天使「……っ」

けんし「おにいちゃん、にあうかしら?」

けんしは『光の剣』を軽々と振り回している!

勇者「…ああ、最高に似合ってるよ」

けんし「えへへ、やったわ」

少女「…認められたというか、もはや服従させているようにすら見えるね」

勇者「…分かったろう。伝説の装備を装備できない以上、別のものを探さなくてはいけない」

少女「その代替品が呪われた装備だといいたいのかい?」

天使「そんなの…私が許しませんよっ!」

勇者「…できれば、俺もそうしたいところだ。その機会がないことを願うよ」

天使「んっ!」

勇者「どうしたの?」

天使「さっきのイヤリングを渡してください」

勇者「…いや、これは俺が持っておく」

天使「ダメですっ」

勇者「悪いが譲れない」

天使「それなら実力行使です!」

勇者「ちょっ」

天使は勇者に飛びかかった!

慌てた勇者は近くにあった瓶を踏んでこける!

天使の足に勇者の足がぶつかる!

天使「きゃあっ!?」

勇者と天使が向かい合う形で倒れ込んだ!

勇者「あ、頭いてー…」

むにゅぅ

勇者(か、顔に柔らかいものが…)

天使「きゃ、きゃあああぁぁ!」

けんし「うわあ…」

少女「…ラッキースケベの呪いでもかかってるのかい?」

・・・

少女「お世話になりました」

修道女「あなたたちに神のご加護がごさいますようお祈りいたしております」

天使「ありがとうごさいます」

少女「一刻も早く世界に平和をもたらせるよう尽力します」キリッ

シスター「凛々しくて可憐な勇者さま、是非またお越しください」ぽっ

少女「ええ、またあなたに会いに参ります」キリッ

シスター「まあっ、照れてしまいますわ」カアッ

けんし「ちゃばん、ってやつね!」

勇者「よく知ってるね」

けんし「えへへ」

天使「……」むすっ

勇者「あのー、そろそろ機嫌を直してよ」

天使「別にこれが普通ですから」ツン

勇者「俺が悪かったって」

天使「心にもないことを言わないでください。結局、渡しもしないで」ぷいっ

勇者「…ごめん」

天使「…頑固者なんですから」

少女「痴話喧嘩はそのくらいにして、先に進もうか」

天使「そ、そんなんじゃありませんっ」

けんし「おにいちゃんたち、なかがいいのね!」


魔物が現れた!

勇者「…よく見る弱いやつだな。小さい頃はこいつらをよく倒してたな」

勇者「よし、たまには俺も…」

けんしの攻撃!

魔物を一網打尽にした!

けんし「よわいわねっ!」

勇者「……」

少女「なんか、勝手に闘ってるし、強いよ、この子」

勇者「うん」

少女「普通に戦力になるんじゃないのかい?」

けんし「アタシ、もうお父さんより、つよいのよ!」

勇者「そういえば、これくらいの年で師範を超えてたかも…」

天使「天才ですね…」

勇者「…いやでも、こんな小さくなった先輩を闘わせるわけにもいかないよ」

少女「でも、心強いんじゃないかい?」

けんし「どんどんいくわよっ」

天使「こらー、道はこっちですよー」

勇者「方向音痴だし…」

少女「んー…」

勇者「…しかし、闇の宝玉か。何なんだろうな」

少女「ご老体が言っていたろう。魔王に渡したら世界が滅びると。きっと魔王の力の源みたいなものなんだろう」

勇者「もっと詳しく分からないのか。君は何でも知っていそうなんだが」

少女「それは買い被りだね。僕は長く生きてこそいるけれど、あの楼閣にずっといたんだよ」

勇者「引きこもりか」

少女「いちいち嫌な言い方をしてくれるね。在宅ワークだよ。家も仕事も失ったけどね…」

勇者「そ、そうか」

少女「そんなことより、君の過酷な運命の始まり、つまり、この国のどこかに闇の宝玉の欠片がありそうだね?」

勇者「まだ断定はできないが、その可能性はあるな。とりあえず俺の村に行けば何か分かるかもな」

少女「どれくらいで着くのだったかな」

勇者「早朝にも言ったが、五日後にはつくはずだ。今日は中継地点になる村に泊まれるはず」

少女「申し訳ないけれど、朝には弱くてね」

勇者「予定くらいは大事だから聞いていてくれよ」

・・・

村。

宿屋「それではごゆっくり」

少女「ふう。長距離移動は疲れるね」

天使「そうですね…」

けんし「くぅくぅ…」

勇者「それでもただの人間よりはずっと早いと思うけど」

少女「ふふ、人外だからね。いっそ肩書きを人外にしようかな。この肩書きは汎用性があるし、こう明らかに僕だという肩書きが欲しいね」

勇者「う、うん?」

少女「僕は、戦闘としては魔法も近接もこなせるけど、やはり魔法寄り。魔法としては少し変わり種の攻撃魔法や支援魔法は使えるけど、普通の魔法はあまり使えない」

勇者「お、おう」

少女「武器としては鎌、斧、槌とかが得手だけど、そこまで、身の守りが堅くないし、体力もないから重戦士というわけでもない」

勇者「そうなのか…」

少女「…我ながら中途半端だね」

天使「万能型で素晴らしいじゃないですか」

けんし「むにゃ…きようびんぼう…」

器用貧乏「実は起きてるのかい? …あれ、肩書きが変わってる!? こんなのは嫌だよ!?」

勇者「じゃあ口が上手いから詐欺師とか?」

詐欺師「これじゃあ、三下の小悪党みたいじゃないか!」

天使「えーとえーと、キラーマシンとか?」

キラーマシン「マシンの要素ないだろう! 無理してボケなくていい!」

天使「す、すみません」

キラーマシン「やれやれいっそ僕が勇者の肩書きを貰い受けようかな」

天使「あ、それは女神さまの加護がかかっているので無理ですよ」

勇者「そんな加護があったの!?」

キラーマシン「も、もうやめようこの話題は。踏み入ってはいけない禁断の領域のようだ」

勇者「ふってきたのはお前だったんだけどな」

キラーマシン「反省しているよ。反省しているから、この肩書きはやめてくれないかな」

勇者「俺に言うな」

天使「それより、おかしくありませんか?」

勇者「ん?」

天使「なんだか、腕節の強そうな方々が大勢いるですよ」

勇者「…確かに、冒険者みたいな装いが多いな。まるで中央国の南部みたいだ」

天使「…傭兵ですかね?」

キラーマシン「傭兵…どこかで戦いでもあるのかな?」

勇者「…聞き込みでもしてくるか」

キラーマシン「僕も」

勇者「ああ、頼む。天使さんは先輩のことを見てやってくれ」

けんし「むにゃ…どいて、そいつころせない」くぅくぅ…

キラーマシン(酒場は勇者が行ったからべつのところで話を聞こうかな)

キラーマシン「…その前に名産品でも見てこようかな。ちょっとくらい観光しても怒られなはずさ」

…メテ…サイ…‼︎

キラーマシン「…おや、物陰から声がするね」

旅娘「や、やめてください…! 大声出しますよっ」

荒くれA「ぐへへ、出してみやがれ。助けに入るヤツなんざいねえよ」

荒くれB「べつに、怯えることねえさ。ちょっとしっぽりデートしようやってお誘いなんだからよぉ」

荒くれC「まあ、悪い思いはさせねえよぉ…げへへ!」

旅娘「いやぁ…っ」

キラーマシン「その娘を離さないか」

荒くれD「なんだぁ、お前ぇ?」

キラーマシン(勇者、と名乗ると面倒かもしれないね)

キラーマシン「通りすがりのキラーマシンさ」

荒くれA「き、キラーマシンだと!? どうしてそんな強え魔物がこんなところに?」

キラーマシン「えっ? ええと…ふっ、女の子の助けを呼ぶ声を聞けば地獄の底からでも駆け付けるさ」キリッ

旅娘「き、キラーマシンさま…っ」

荒くれB「ちっ…逃げるぞ!」

荒くれC「敵う相手じゃねえ!」

荒くれD「ちくしょう、可愛い女の子と一緒に喫茶店でお茶して、お散歩しようと思ってただけなのに!」

キラーマシン「…意外にピュアだね」

旅娘「ありがとうございますっ」

キラーマシン「いや、礼には及ばないさ」

旅娘「…かっこいーじゃないッスか、キラーマシンさま」

キラーマシン「えっ」

旅娘は真の姿を露わにする!

キラーマシン(とはいっても、角が生えただけだが)

鬼娘「助かったッス! 揉め事を起こす前に難を逃れられました」

キラーマシン「…それは良かった」

鬼娘「しかし、見ねえ顔ッスが、今回の作戦の追加人員ッスよね?」

キラーマシン「…ふふ、話がはやくて助かる」

鬼娘「へへへ。さっそく本部からの追加指示を聞かせてもらうッス。待機、待機でうんざりッスよ」

キラーマシン「ここにずっといると勘付かれるかもしれないね。場所を変えよう」

鬼娘「そういうことならオレたちの隠れ場所に案内するッスよ」

鬼娘は角を隠した!

旅娘「しかし、よくできた擬態ですね。キラーマシンなのに、ワタシよりずっと人間に似てますね」

キラーマシン「ハハハ、ソウダネ。キラーマシンナノニネ」

宿屋。

旅娘「ここがオレたちの隠れ家ッス。ニンゲンに化けたならニンゲンの中に紛れた方が安全でしょう?」

少女(まさか同じ宿屋だとは…)

キラー「ハ、ハハハ、ソウダネ」

旅娘「新しくキラーマシンさま宿を取るッスね」

キラー「実はもう取ってるんだよ。君たちと同じ考えでね」

旅娘「おお、さすがッスね!」

キラー「ふふ、それほどでも」

天使「あら?」

キラーマシン(最悪のタイミングだよ)

キラーマシン(僕、スパイ中、他人のふり、プリーズ)シュババババ←全力のジェスチャー

キラーマシン(届いてくれ、僕の思い!)

天使「面白い動きをしてどうしたんですか? そちらの方はもしかしてお知り合い?」にこにこ

キラーマシン「まあ、通じないよね」

旅娘「……?」

キラーマシン「彼女も僕と共に作戦に臨むものだよ」

天使「作戦? 魔王討伐ですか?」

キラーマシン「あちゃあ、察してほしかったな」

旅娘「なっ、どういうことッスか!」

旅娘は角を露わにする!

少女「うん、とりあえず意識でも失っていてよ」

生命の審判は『睡眠魔法』を放った!

鬼娘「ーーーーっ」ぱたんっ

鬼娘は眠ってしまった!

少女「さあ、誰にも見られないうちに部屋に運ばないと。…天使さんも手を貸してほしい。この娘、かなり重い…」ズル…ズル…

天使「え、は、はい」ひょいっ

少女「……見た目に反してに馬鹿力なんだね」

村の酒場。

勇者「…その話は本当なのか? 東国と中央国が戦争を?」

マスター「まだ噂だけどな。しかし、これだけ傭兵を集めてるとなると、ただごとじゃねえよな」

ゴロツキ「国が、破格の待遇で雇ってくれるらしいんでな。歴戦の猛者から口だけの雑魚までどんどん集まってきてるぜ」

勇者「魔物が蔓延ってるなか、人間どうしで争いあってる場合なのかよ…!」

ゴロツキ「へへ、魔物が大人しくなってきたからな。隠れてた軋轢が表面化しつつある証拠さ」

マスター「…良くない方向に話が流れていってるねぇ。客足は増えるが治安も悪くなる。近頃は保安官もずさんな仕事しかしねえ」

ゴロツキ「へへ、王さまが最近、発狂したって噂まで流れ始めてるぜ」

マスター「東国はどうなっちまうんだ。俺たちは無事に暮らしてけるのか」

勇者(魔王を倒すだけじゃダメなのか? …いや、その先のことはきっと俺の領域じゃない)

勇者(…俺の目的は魔王を倒すこと。弱いのならば、切り捨てなければいけないものも出てくる。国家間の戦いなんて俺の出る幕じゃない)

勇者「……」

宿屋。

鬼娘「…………」

少女「さて、彼女をどうしようか」

天使「そのまま帰す、というわけにも行きませんよね…」

けんし「んにゃ…?」パチ

けんしが目を覚ました。

けんし「マモノっ!?」

少女「しーっ。もっと小さい声でね」

けんし「ごめんなさい…。はやく、ころさないの?」

天使「え、えーっと…」

けんし「マモノはころさないと。こいつらムラのひとをころしたのよ。アタシのおかあさんも、マモノにころされた」

少女「…君の言いたいことは分かるよ」

けんし「…だったらねてるうちに、ころさないと! みんなしんじゃうわ!」

鬼娘「……っ」パチ

少女「起きたみたいだね」

鬼娘「……っ!?」ガチャガチャッ

天使「魔力で強化しています。抵抗しても無駄ですよ」

鬼娘は大声で仲間を呼ぼうとした!

鬼娘「……っ!?」ぱくぱくっ

しかし、声が出せなかった!

少女「騒がれると面倒だからね。君にはあとで場所を変えて、色々と聞かせてもらうよ」

鬼娘「……っ!」キッ

少女「取り敢えず今は眠っておいてもらおうかな」

天使「そうですね」

「ニンゲンごときが好き勝手やってくれるじゃないか」

少女「!」

蝙蝠男「ふん、ニオイを追ってみれば……情けないな鬼娘よ。鬼といえどしょせんは女か」

天使「…そういう発言は気に入りませんね」

少女「同感だよ」

けんし「うごかないで! うごいたら、このマモノをころすわよ!」チャキッ

少女(なにこの幼女怖い)

蝙蝠男「ふん、殺したくば殺せ」

蜘蛛男「側近さまの作戦に水をさしやがって」

多目爺「ひゃひゃひゃ、こうなっては村を滅ぼすかのう」

けんし「そんなことさせないわ!」

蝙蝠男「ふん、他の仲間たちを外に出している。私の合図で一斉に動き出すぞ。貴様らの対応次第では、一考してもいいがな」

少女「…村中を人質にとったということかい?」

蝙蝠男「ふっ、そういうことだ。分かったら大人しく殺され…」

ウジュジュ……!!

巨体触手が現れた!

蝙蝠男「なっ!? なんだこいつは?」ズゾゾ…

蜘蛛男「く、喰われっ……た、助けてぇぇ!!」グチグチ…

多目爺「砕か…れっ…!?」ゴキゴキ…

触手は魔物たちを貪り食う!

ジュルッベキッゴキュッ……

少女「…くっ!」

天使「待ってください! 敵ではありません!」

勇者「そうだ」ズズズ…

触手は勇者になった!

勇者「宿屋から魔物たちが出てこようとしたからな。全部捕食したが」

少女(……これもプレイの一つということかな。創造の女神さま、ドン引きしたよ)

天使「他の人たちには見られなかったのですか?」

勇者「…いや、見られた。多分、大騒ぎになってる」

けんし「…おにいちゃん、マモノじゃないのよね? なにかちがうもの」

勇者「ああ」

けんし「でも、いまはマモノみたいだった…」

勇者「色んな姿に変身できるんだ。犬とか、大蛇とか、あと蟲とか…」

天使「…そんなことができるようになっていたのですか?」

勇者「修道院にいる間ずっと寝てたらしいけど、その間、夢の中で女神の能力の人格、みたいなやつと対話してたんだ」

少女「睡眠学習だね」

勇者「それは違うんじゃないか?」

少女「…ボケに本気で返さないでほしいな」

鬼娘「チクショオォ! 離しやがれェェ!」ガチャガチャッ

少女「おやっ、魔法が解けてたか」

バキッ

鬼娘は鎖を引き千切った!

天使「なっ…!」


主人「こっちの部屋から大声が! 魔物はここでしょう!」

衛兵「分かりました。下がっていてください」


少女「…面倒だね」

生命の審判は『睡眠魔法』を放った!

鬼娘は眠ってしまった!

天使「逃げましょうか」

勇者「ごめんな…」

けんし「おにいちゃんはわるくないわ!」

少女「さっ、『不可視化魔法』をかけるよ。

少女「さっさと準備して出よう」

勇者「この魔物は殺さなくていいのか?」

少女「魔物の方で何か企みがあるみたいだ。聞き出さないといけない」

勇者「…そういうことなら」

天使「担ぐのは私に任せてください」ひょいっ

勇者「…天使さん、やっぱり力持ちだな」

少女「それじゃ『不可視化魔法』をかけるよ」

・・・

勇者「ここまで来れば大丈夫か?」

少女「そうだね。ふう…疲れたよ」

天使「そうですね…魔物を背負って移動は流石に疲れます…」

けんし「アタシはおひるねしたから、げんきよ」

鬼娘「…………」

天使「今度は鎖を二本にしました。もう解けませんよ」

勇者「…とりあえず、今日はここらで野営にしよう。みんな食事は大丈夫か」

けんし「アタシと、てんしのおねえさんは、もうごはんをたべたわ」

天使「宿屋で先に食事をいただいてました」

勇者「俺は酒場で、つまみを少し」

少女「僕は何も食べてないよ…」

勇者「少し食料が余ってるから、多めに食べてくれ」

少女「お言葉に甘えさせてもらうよ。それよりも、魔物たちがこの国で、何かを企んでいるようだ。おそらく大掛かりに」

勇者「ああ…じゃあ、俺が口を割らせるから少し離れた場所で夜営の準備を頼む。必要なものはこの袋に入ってるから」

けんし「わかったわ」

勇者「…なあ」

少女「うん?」

勇者「ーーーー」ボソボソ


鬼娘「…くっ、てめえら、絶対に許さねえッス!」

勇者「お前たち何か企んでるそうだな。洗いざらい話してもらおうか」

鬼娘「けっ、死んでも言わねえッスよ」

勇者「…そうか」

鬼娘「はやく殺すッス」

勇者「いや」

鬼娘「……?」

勇者「多分、死ぬよりも辛い」

天使「…火はこれで大丈夫そうですね。天幕も張りましたし」

けんし「ヘンなおねえちゃんも、はやくおぼえてね」

少女「う、うん。早く君たちの手伝いができるように頑張るよ。あ、結界魔法は完璧さ」

天使「あとは勇者さんを待つだけですが…」

けんし「どうしたのかしら?」

天使「何も聞こえませんけれど大丈夫ですかね…?」

少女「…問題ないと思うよ。そうだな…暇だし、夜営の時に大事なことでも教えて欲しい」


鬼娘「あっ、あっ、あっ……」ガクガク

勇者「獣姦、電気ショック、浣腸と水責め、蟲責めまで来てさすがに叫ぶ気力もなくなったか?」

鬼娘「やめて……やあああ…」ビクビク

勇者「蟲に全身を這われたままが嫌なら、はやく情報を吐け」

鬼娘「ぎ……き…ひっ…くけっ………」ピクピク

勇者「…あっ、両耳にでかい蟲が入って蠢いてるから聞こえないのか」

鬼娘「や……や……やら………」

勇者「…失敗したな」



少女「うわあ、惨状だね…」

鬼娘「……たすけて」ピクピク

勇者「天使さんたちは?」

少女「あっちで心配してたけど、もう遅いから眠るように言ってきた。君に言われた通り、防音もバッチリにしたんだけど、逆に不審がってたよ」

勇者「そうか。ありがとな。結構、悲鳴を上げていたし助かったよ」

少女「天使くんに対する配慮だろう。優しいね、勇者くんは」

鬼娘「……もう…やぁ」ピクピク

少女「……そうでもないかな?」

勇者「口は割らせたから先にに戻っておいてくれ」

少女「…この魔物はどうするんだい?」

勇者「殺す」

少女「……っ」ゾクッ

鬼娘「…そん……な…」

少女「まあ、待って。殺すよりもいい方法があるよ」

勇者「なんだ?」

少女「鬼にとって角は誇りらしい。角を折ることで屈服させることができるそうだよ」

勇者「へえ、最初に教えてくれればもっと楽ができたのに。…確かに今思えば、この角を掴んで組み伏せてからはだいぶ弱気になった気もするな」

勇者は鬼娘の立派な角に手をかけた!

鬼娘「ひっ…だめ……ッス」

勇者「…死ぬのとどっちが辛い?」

鬼娘「……っ」

勇者「…俺だってできれば殺したくはない」

鬼娘「……しにたくない」

勇者「利害が一致したな」

勇者は鬼娘の角をへし折った!

・・・

翌朝

勇者「どうやら、魔物がこの国の中枢に入り込んでいるらしい。そして東王を唆し、中央国との戦争を起こそうとしている。その過程で、魔物たちが諸侯含む国の要人と入れ替わり、東国を乗っ取って国を滅ぼすという計画だ。多くの魔王軍お抱えの魔物たち、つまり魔物のエリートが東国にあの手この手で潜伏している。そして、入れ替わり決行の日は遠くない。一月後に、兵士と傭兵を一堂に会しての催しがあるらしい。その時に魔物の大群を送り込み、混乱に乗じて入れ替わるという作戦らしい。そのような今までにない祭典が開かれるのもおそらく既に東王が人に化けた魔物の甘言につられているからだろう。更に要職が入れ替わったら本当に国家を牛耳られてしまうから、何とかしなければいけない」

天使「入れ替わるということは人間に化けるということですよね? そんなことが可能なのですか?」

勇者「入れ替わるというか、皮を被るといった感じだ。死体に奇声する魔物がいるらしい」

少女「そんなことができるなら、もう東国城内は魔物だらけになってそうだけれどね」

勇者「そんなに使い勝手の良いものでもないみたいだ。数も限られているし、知能的な問題もある」

天使「時間をかけて疑惑を広げるよりも、一斉に権力者に成り代わったほうがより効果的ということですね」

勇者「…今までみたいに、力と力のぶつかり合いというわけにもいかなそうだ」

少女「そうだね」

けんし「…ねえ、おにいちゃん」

勇者「うん?」

けんし「どうして、そのマモノが、おにいちゃんにくっついてるのかしら?」

鬼娘「……えへへ」ぴたっ

勇者「…色々あってな。一言でいえば、そこの何だかの審判に騙された」

少女「生命の審判だよ、失礼だね。それに騙してなんかいないよ。嘘は言ってないからね」

勇者「意図的に断片的な情報を与えないのは欺騙と変わらないだろ! なんだよ、角を折ると相手への負の感情が好感情になるって!」

鬼娘「力が全てな鬼なりの進化ッス。旦那さま、愛してるッス!」

天使「旦那さま…っ!?」

けんし「どうしてかしら…すごくムカムカするわ」

勇者「俺はお前の旦那さまじゃない」

鬼娘「ご主人ッスね!」

勇者「…ま、それでいいや。これから、俺の言うことを聞けよ」

鬼娘「はいッス!」

鬼娘が使い魔になった!

少女「性奴隷が増えるよ! やったね勇者くん!」

勇者「おいやめろ」

勇者(そういや、意識的に事に及んだのは、何だかんだで初めてだな)

天使「……」むすっ

勇者「さて、さっさと撤収して、進もう」


魔物の群れが現れた!

天使「……」バキッ!

天使「……」ゴッ! ゴッ!

天使「……」ドゴォ!

天使「……」グシャッ!

魔物の群れを叩き潰した!

少女「天使の八つ当たり怖い」

鬼娘「可哀想な同胞たち…お前らが弱いのが悪いんだからな…」

けんし「てんしのおねえちゃん、こわい…」

少女「まったくだね…どこぞの勇者くんのせいで」

勇者「俺は天使さんに何もしてないぞ」

天使「……」じとっ

勇者「…天使さんは笑った方が可愛いよ」

天使「……調子のいいことばかり言いますね!」つんっ

勇者「ご、ごめん」

少女「ハーレムパーティならフラグ管理をちゃんとしないと詰むよ?」

勇者「意味が分からん」

少女「何もしないのが問題になるときもあるってことさ」

勇者「…なんだかなあ」

・・・

パチパチっ

鬼娘「うええ…きもちわる…」

天使「魔物除けの結界魔法を使ってますからね」

勇者「お前は大丈夫なのか?」

少女「僕は特殊だからね」

鬼娘「やっぱり魔物なんスか?」

少女「一応そうだよ。キラーマシンではないけどね。断じて違うよ」

鬼娘「はあ…」

少女「僕は四苦王だよ。四苦王の生命の審判。聞いたことくらいはあるだろう」

鬼娘「…しくおー? しくおーってあの四苦王スか?」

少女「そうだよ」

鬼娘「………えっ」



鬼娘「えええぇぇえェェッ!!」

勇者「うるさっ」

少女「ふふ、それだけ僕が畏れ多いということさ」どやっ

勇者「引きこもりなのにな」

少女「…イヤな奴だね、君は」

鬼娘「し、四苦王さまが、どうしてここに!?」

少女「色々あって今は勇者くんの味方なのさ」

鬼娘「えっ」

少女「因みに他の四苦王は全部勇者くん“たち”に敗れたよ」

鬼娘「さすがご主人さまッス。というかマジモンの勇者なんスね」

勇者「いや……まあ、うん…」

少女「…ふふ、これは魔王を倒す旅だけど、君は、大丈夫なのかい?」

鬼娘「…魔王さまは偉大ッスけど、実際に組み伏せられた相手の方を優先するのが決まりッス」

少女「鬼の系統も、魔物の中では変わり種だね」

鬼娘「そうッスね。なににせよご主人のために尽くすッス…」ぽっ

天使「……食事ができましたよ」

勇者「うん、ありがとう」

天使「……」ぷいっ

勇者「……」

けんし「おにいちゃんとおねえちゃん、ケンカしてるの?」

少女「ふふ、どうだろうね」

・・・

魔物が現れた!

少女「おや、初めてみる魔物だね」

鬼娘「ぷくぷくしてるッスね」

勇者「あの魔物は……相手しちゃダメだ!」

天使「……」ざっ

勇者「くっ…」

天使の攻撃!

ドゴッ

ぷくうっ…!

天使「えっ…」

ぱあんっ

魔物は破裂して腐食液を撒き散らした!

ジュウウゥゥ……


天使「……うっ……?」

勇者「だ、大丈夫……?」

天使「べ、別に何も…」


勇者「そう…よかっ……」

どさっ

天使「…えっ?」

ジュウウゥゥ…

勇者の背中が焼け爛れている。

けんし「おにいちゃんっ!」

けんしは『回復魔法・小』を放った!
あまり効果はなかった…

天使「勇者さん…!」

天使は『回復魔法・大』を放った!
勇者は全快した!

鬼娘「うおっ、すげえ!」

少女「彼女を怒らせないようにした方がいいよ」

鬼娘「は、はいッス」



勇者「……っ」

勇者は意識を取り戻した!

勇者(…なんだ、柔らかくていい匂い)

天使「勇者さん、よかった……!」

勇者「…天使さん、なにが……あ、そっか、大丈夫?」

天使「はい……勇者さん、ごめんなさい…」

勇者「いや、大したことじゃないよ。ケガがないなら良かった」

勇者(あー、膝枕されてるのか…癒されるなこれ)

天使「…ほんとうに、ごめんなさい! 私が悪いんです…私が!」ポロポロ

勇者「いいからいいから、丈夫さだけが取り柄だしね」

天使「ほんとうに……」グスッ

勇者「泣かないでってば。いつも助けられてるし、怒らせてたし、おあいこってことで」

天使「……」

勇者「初めて会った時も、天使さん泣いてたよな」

天使「…そう、でしたね」

勇者「こういう時は?」

天使「……笑顔、ですよね」にこっ

勇者「そうそう。天使みたいだ」

天使「…もうっ、同じこと言って!」

少女「はーい、おのろけはこの辺りで中断しようか」

鬼娘「砂糖ッ! 圧倒的砂糖ッス!」

けんし「……なぜか、むねがザワザワするわ」

勇者「……あー、あはは」

少女「ま、天使くんも落ち着いたみたいだし、同じようなことは起きないだろう」

天使「うっ……ごめんなさい…」

勇者「どれくらい経った? …また二週間とかじゃないよな?」

少女「まだ十分か、そこらさ」

勇者「そっか、それじゃあ、先に進もう。今日中に中継地の村にいけるはずだ。そろそろ補給しないとまずい」ざっ

天使「あっ…」

勇者「ん?」

天使「いえ…」

天使(もう少しこのままでいたかったです…)

・・・

村・宿屋。

勇者「ふう、暗くなる前につけてよかったな」

少女「やった…今日は宿屋で眠れるね…」ぜぇぜぇ…

鬼娘「角もばっちり隠れたッス」

勇者「俺も顔を知ってる人がいたらまずいから、魔法をかけてもらったし…」

天使「『誤認魔法』は万能ではないので、注意してくださいね。親しい方だとすぐに見破られますから」

けんし「でも、すごいまほうね」

鬼娘「天使ってすごいッスね」

少女「いつも思うのだけど……君たち……もう少しペースを僕に合わせても……いいだろう?」ふぅふぅ…

勇者「結構ゆっくりだったと思うんだけど…ずっと引き篭もりだったヤツにはキツかったか?」

少女「勇者くん、ヒドくない?」

鬼娘「四苦王様って虚弱体質なんスね! なんか幻滅ッス」

少女「君が体力バカなだけだよ…幻滅とか傷つくからやめて…」

天使「…まあまあ、得手不得手は誰にでもあるものですよ。いざとなったら私が背負いますから」にこっ

少女「さすが、天使くん。優しくて頼もしい」

けんし「ひきこもりのおねえちゃんは、きたえないとね!」

少女「結局、引き篭もりに話を戻すんだね…」

勇者「すまん、冗談だよ。取り敢えず補給だ。戦利品の換金もしないと」

天使「それじゃあ、私が換金と買い物に行ってきます」

けんし「アタシもいくわ」

勇者「ん、なら任せてもいいか。もう故郷も近いからちょっと顔バレが怖くてな」

鬼娘「オレも顔見知りがいたら面倒なんで引っ込んでるッス」

少女「僕も疲れたから先に休ませてもらうよ」

勇者「このあたりも柄の悪いヤツらが多くなってきてるから気を付けてな」

けんし「うん、きをつけるわ」



商人「……んー、そうだね」パチパチパチ

商人「こんなところでどうだろう」

けんし「む、このツノはもっとたかいわ」

商人「んー…」

けんし「これだけのオニのツノはきちょうよ。いろいろなクスリのざいりょうにもなるんだから」

商人「そうだね、じゃあ…」パチパチ

商人「これでどうよ」

けんし「……」パチパチ

商人「ちょっ」

けんし「このカワもみごとよ。もっとたかく、かってくれるところもたくさんあるわ」

商人「ぬぬ…」

けんし「これだけのしなをうるのだから、ほかのものもすこし、ゲタをはかせてよね」

パチッ

けんし「これでどう? わるくないでしょう」

商人「こ、これは、女子供だからって調子に乗り過ぎじゃないか…?」

けんし「おんなこどもだからって、てきせいなかかくをつけないのはどうなの?」じっ

けんし「しんようとりひきなのよ? こんなことをしてたら、のちのちのしょーばいにもえいきょうがでるわ」

商人「ぐっ…だが、これは高いぞ!」

けんし「そう。それなら」

パチパチッ

けんし「これならいいわよね? さいしょにやすくかいたたこうとした、ばいしょうもふくめてね」

商人「おいおい…っ」

けんし「……」じろっ

商人(…言ってることといい、この目といい、ただのガキじゃねえな。……まあ、悪い取引では決してないしな)

商人「分かったよ」

けんし「ふふ、はなしがわかるわね」

天使(あのお肉、美味しそうですね…あ、あの服ちょっと可愛いかも…)

けんし「つづけて、かいものがしたいわ。干し肉と、乾燥野菜とーー」

天使(…勇者さんはどういう服が好みなんでしょう? 意外に大胆なものとかかもしれませんね…)

商人「結構買ってくれるね。合計で…はい」パチパチッ

けんし「もうひとこえ!」

商人「無理だ! さすがに譲れんよ!」

けんし「むむ…てんしのおねえちゃん!」

天使「え、は、はい!?」

けんし「ちょっと、えがおをみせて」

天使「えっ? は、はい。」にこっ

けんし「わあ、きれい……じゃなくて、このひとにね」

天使「……?」にこっ

商人「はうぁっ…じょ、浄化されるぅ…」

けんし「このえがおをみて、まだやすくしてくれないというのっ」

商人「…うぅ、敵わねえな…」パチパチッ

けんし「……」

パチッ

商人「悪魔かっ!」

天使「わっ、こんなに安くしてくれるんですかっ?」

商人「え、う、うーん…」

けんし「やさしいわね」

天使「ありがとうございます」にこにこっ

商人「……分かったよ! こんなに綺麗な姉ちゃんと生意気可愛いお嬢ちゃんに出血大サービスだ!」チクショ-!

宿屋・食堂。

勇者「そんなに安く…買い物上手だな」

けんし「ふふん、ぬけめがないオンナなのよ」

鬼娘「というかオレの角を売ったんスね…」

けんし「たかくうれたわ! さすが!」

鬼娘「ま、まあ当然ッスよ!」

少女「悪女になる素質があるね」

鬼娘「おかわりッス!」

天使「わ、私もお願いします」

女将「よく食べるねえ」

鬼娘「美味しいからッス!」ぽよん

天使「わ、私は、鬼娘さんにつられて…」ぽよぽよ

少女「…食事量が大事なのかな」ペターン

けんし「そのうち、きっと、おおきくなるわよ」ぽんぽん

少女「くっ、チビッ子のくせに…いやでも、前に見たときは、普通に……くうっ…」

勇者「スープ美味い」ズズ…

少女「いやしかし、慎ましいというのは、男性の庇護欲を掻き立てる効果があってだね、さらにその様を恥じらう姿は一種のフェティッシュさ。君もそう思うだろう、勇者くん」

勇者「…うん? なんの話だ?」

少女「名言させようとするなんて…このセクハラ勇者め!」

勇者「はあっ!? お前ほんと、失礼なヤツだな!」

少女「君だって僕にたいして心無いことを言うじゃないか」

勇者「それは…冗談のつもりで…」

少女「冗談ならば許されるのかい? 倫理の欠如だね。やれやれ、酷いやつだよ、君は」

勇者「ぐっ…悪かったよ」

少女「いやまあ、それこそ冗談なんだけどね」

勇者「おいこら」ぎゅっ

少女「いひゃい! ほっぺ、ふねるなぁ!」

けんし「…なんだろ、まえに、あれをされたきがするわ」

宿屋・自室

勇者「鬼村の話だと、この村にもやはり魔物が紛れ込んでいるらしい」

天使「倒していきますか?」

勇者「いや、いま大きな悪事を働いてるわけでもないし、色々と勘付かれると面倒だ」

少女「あくまでも、国の乗っ取りを失敗させるのが一番の目標だもんね」

けんし「できれば、たおしてやりたいけど…」

勇者「今回は我慢してくれ」

鬼娘「東城の王都に急ぐんスね?」

勇者「うん、だが、その前に故郷の村を少しだけ見ていきたい。王都からそんなに遠くないしな」

天使「どうせなら身を寄せればいいんじゃないですか?」

勇者「いや…だから追放罪になってるから…」

天使「あっ…す、すみません」

勇者「…それじゃあ、明日以降の打ち合わせはこれで終わり。解散」

少女「なお、今回の部屋割りは2人部屋と3人部屋だ。勇者くん、はやく僕たちの愛の巣に戻ろうじゃないか」

勇者「変な言い方すんな!」

少女「ふふ、そちらも仲良くね」

「「「……」」」

2人部屋。

勇者「お前な…」

少女「ふふ、そんなに怒らないでくれ」

勇者「いや、怒ってはないけど、変な誤解を生むだろ」

少女「おや、僕と誤解になるのは嫌かい?」

勇者「いや、お前…」

少女「冗談だよ。お風呂に入ってきたら。いやあ、備え付けのお風呂があるなんて素晴らしいね」

勇者「値段は高いけどな…。そういや、みんな野営続きなのに全然くさくないよな」

少女「ふふ、女の子の体臭は花の香りなのさ」

勇者「ねーよ」

少女「真面目な話、僕と天使くんの魔法で綺麗にしてるんだよ」

勇者「そうなのか? それなら、俺にもしてくれれば良かったのに…」

少女「それはきっと天使くんの嗜好だ」

勇者「えっ」

少女「あと僕の嗜好だ」

勇者「聞きたくなかった…」

少女「ふふ、ここだけの話にしておいてくれ」

勇者「風呂に入ってくる…」




勇者「…てっきり、風呂に乱入してくるかと思った」

少女「ちょっ…」

勇者「でも、してこなかった」

少女「僕にだって常識はあるよ…」

勇者「だからあえて乱入してみた」

少女「意味が分からないよっ」

勇者「まあまあ、背中流すよ」

少女「それより出てってくれないかな?」

勇者「遠慮するなって、ほらほら」

少女「ご、強引だね」



ごしごし…

勇者「痒いところはないか?」

少女「な、ないよ。もう大丈夫だから…」もじもじ…

勇者「……」

にゅるっ

少女「ひゃあっ!?」

勇者「お前、そんな可愛い声出せたのか」

少女「も、もう出てけぇ!」

勇者「…あー、冗談のつもりだったんだけど、まあムラムラしてたのも事実だが」

ぴとっ

少女「ひっ、あ、当たってるよ!」

勇者「当ててんだよ。いや、お前がこんなに可愛い反応するとは思ってなくてな」

ずりずり…

少女「や、やめてくれ…」

勇者「ぐっ…お前の肌、すべすべで気持ちよすぎっ…」

にゅるにゅるっ

少女「ふっ…んっ…やっ……!」

勇者「な、なあ、いいか?」

少女「だ、だめだっ! 絶対だめっ」

勇者「…悪い、ちょっと我慢できないかも」

少女「…あー、もうっ」ぎゅっ

勇者「うっ!」

少女「て、手でしてあげるから…それで我慢してくれ…」

勇者「あ、ああ」

少女「い、痛くないかい?」しゅっしゅっ

勇者「…うっ、ちょっと強いかな」

少女「す、すまない」

勇者「うぅ…。なあ、抱き締めていいか?」

少女「えっ、う、うん…」

ぎゅう…

少女「うぅ…」

勇者「こ、このまま頼む」

少女「わ、分かったよっ」

勇者「……っ」

少女「ちょっ、ん、やぁ…んむ…ふぁ、れろ…ん…」

しゅっしゅっ…

勇者「……っ」

少女「ぷはっ……いっぱいでたね」

勇者「はあはあ…」

ぎゅう

少女「またっ…んっ…んぅ…はむっ…にゃ…ん…ちゅ」

勇者「性欲が抑えきれませんでした。反省してます」←正座

少女「…僕は君を買い被っていたよ。確かにからかった僕も悪いけれど」

勇者「すみません。最近、能力に奪われていた性欲が戻って、抑えがきかなくて…はい、言い訳です」

少女「…この部屋、ベッドが一つしかないんだ。自制できるのかい?」

勇者「無理」

少女「少しは悩め!」

勇者「いや、だってなあ」

少女「…しょうがないな。ベッドに寝てくれ」

勇者「……おお」

勇者はベッドに横になった!

少女「よいしょ」

生命の審判は勇者に覆い被さる!
勇者は彼女を抱き締めた!

少女「んぅ…もう…『睡眠魔法』」

勇者「なっーーーー」

勇者は意識を失った!

翌日。

鬼娘「雨ッスねー」

天使「ここで延泊した方がいいでしょう。手持ちにも余裕がありますし」

少女「そうだね」

天使「勇者さん、どうしますか?」

勇者「…そうしよう」どよーん

けんし「…おにいちゃん、どうしておちこんでるの?」

勇者「罪悪感が今になってすごくてな…あー」ちらっ

少女「…やれやれ」

天使「何かあったんですか」

少女「ハハハ」

勇者「俺が至らなかったんだ…俺は最低だ」どよーん

鬼娘「ご主人、落ち込んだときは美味しいものを食べるッス!」

けんし「そういうときは、しにものぐるいの、たんれんよ!」

勇者「…ああ、どっちもやってやる!」

3人は外に飛び出ていった!

天使「雨が降ってるのに…これじゃ何のための延泊なんだか分からないですね」

少女「まったくだね」

天使「…それで、何があったんですか?」

少女「ははは、男女が同じ部屋だったら間違いの一つや二つ起きてもおかしくないだろう?」

天使「もうっ、真面目に答えてください」

少女「真面目なんだけどね」

天使「…ほんとですか?」

少女「…まあ、守るべきところは守ったさ、多分ね」

天使「勇者さんが…」

少女「彼だって年頃の男の子ということさ。君も気を付け…ふふ、君にはむしろ喜ばしいことなのかな」

天使「な、何を言ってるんですか!?」

少女「…まあ、冗談だけどね」

天使「……もうっ! やっぱり!」


夕方。

勇者「ただいま…」

鬼娘「…疲れたッス」

けんし「まだまだね。もっとしょーじんなさい」


天使「お帰りなさい。みなさん泥だらけじゃありませんか」

少女「よくやるよ…」

天使「お風呂を沸かしてもらいますから入ってきてください」

けんし「はーい」

勇者「うん、ありがとう」ちらっ

少女「……」ぷいっ


2人部屋。

勇者「で、どうしてまたこの部屋割りになった?」

少女「僕が聞きたいよ…。どうして強姦未遂の人とまた相部屋にならなければいけないんだ」

勇者「…本当にすまん」

少女「信用は得難く失いやすいんだよ? 天使くんが昨日のことを知ったらどうする?」

勇者「ごめん……」

少女「…まあ、僕は海よりも広い心の持ち主だからね。今回は不問にしてあげよう」

勇者「あ、ああ」

少女「それと、これでフラグが立つと思わないでおくことだね。僕の君に対する好感度はダダ下がりだ」

勇者「は、はあ…」

少女「前にも言ったけれど、僕は天使くんや鬼娘くんみたいなチョロインじゃないからね」

勇者「う、うん?」

少女「まあ、何にせよ、手は出さない方がいいよ。みんなヤンデレの素質ありだからね」

勇者「へあっ?」

少女「彼女たちの愛はきっと重いよ。ヘマすると君が死ぬか、みんな死ぬかだね」

勇者「お、おう」

少女「まあ、頑張って。さ、寝ようか。不本意だけど、同じベッドで。不本意だけど」

勇者「…俺は床で寝ようか?」

少女「それはいいね…と言いたいところだけど、宿屋に泊まってるのだから疲労はちゃんと回復しなきゃダメだろう」

勇者「う、うん」

少女「今日はお風呂にも乱入してこなかったし、特別に許そうじゃないか」

勇者「ありがとう…」


勇者「なあ…」

少女「うん?」

勇者「なんでくっつくんだよ」

少女「ふふ、君を試してるんだよ」

勇者「性格悪いなっ」

少女「それに、人の温もりって落ち着くだろう?」

勇者「それは、確かに…」

少女「君のせいで昨日は眠れなかったからね、とても眠いよ…」ふぁ…

勇者「俺も動き回ったから疲れた…」うとうと

二人はすぐに眠ってしまった!

書き溜めがほとんどなくなってしまった。
溜まったらそのうち。

勇者の生まれた村。

勇者「やっと着いたか…本当に大丈夫か?」

少女「 ちゃんとあのお爺さんになってるよ。さすが僕の変身魔法」

勇者(爺さん…。あんたの視点はこんなに低かったんだな…今さら知ったよ)

天使「本当に変わった魔法を使いますね」

少女「ふふ、それ程でも」

鬼娘「ちゃんと角、隠れてるッスか?」

少女「問題ないよ。見た目は人間そのものさ」

けんし「なつかしいわ! ずっと、かえってなかったきがする!」

天使「ふふ、それじゃあ、とても楽しみでしょうね」

けんし「うん!」

勇者「…まず自宅に寄っていいかな?」

天使「もちろんですよ」

勇者の家の跡地

勇者「……本当に壊されたのか。母さんと父さんの遺してくれた家なのに」

勇者は取り壊された家を呆然と眺める。

天使「……っ。本当にごめんなさい!」ポロポロ

勇者「なんで天使さんが謝るんだよ。悪いのは……悪いのは、誰なんだろう。女神さま? 王さま? …俺なのかな」

天使「勇者さんは何も悪くありません!」

勇者「…ごめん、ちょっと話しかけないでほしい。整理がつかなくて……ごめん…」

天使「……」

けんし「ここ、あのこと、おねえさんのうちなのに……どうしてこわれてるの…?」

勇者「…あっ、姉さんは、姉さんはどこにいるんだ」

少女「信頼できる人に聞いてみよう」

勇者「そうだな……やっぱり師範かな」

剣士の家。

けんし「ただいまっ!」

師範「なっ、帰ってきたの…か…?」

けんし「おとうさん、ただいま!」

師範「え、うん?」

勇者「えっと、間違いなく娘さんですよ。小さくなってますが」

けんし「おとうさん、ふけたわね?」

師範「おまえ、なんでこんな…」

けんし「?」

師範「君たち、説明を……っ!」

勇者は変身を解いた!

勇者「……」

師範「なっ……おまえっ! 帰ってきたのか!」

勇者「…お久しぶりです」

師範「……とにかく入りなさい。ここでは人目につく」

勇者「…恐れ入ります」

・・・

師範「竜の呪いでこうなったと?」

勇者「はい。四天王と呼ばれる竜と戦ったときに呪いをかけられたようで」

天使「解呪してみようとはしたのですが、竜の捨て身の呪いであるため、容易には解けませんでした」

師範「そうか…。いや、まず無事に帰ってきただけでも良かった。本当にありがとう」

勇者「いえ。先輩がこうなったのは俺が不甲斐ないせいです。不出来な教え子ですみません」



師範「……やめてくれぇッ!」

勇者「……?」

師範「……俺は、お前に謝られる資格なんてないんだ」ブルブル

勇者「…どうしたんですか?」

師範「……お前の……姉さんは…………」ブルブル

勇者「姉さんが……」

師範「………………」ブルブル

勇者は師範の胸倉を掴んだ!

勇者「姉さんがなんなんだよっ! 早く言えよっ!!」

師範「……へ、兵士に連れてかれて……かえってこないんだ……もう、長いこと」

勇者「…………っ」

師範「…犯罪者の家族がどんどん城に連行されていってるんだ。東王の命令で…」

勇者は勢いよく立ち上がった!

少女「どこに行く気だい?」

勇者「…どいてくれ」

少女「今すぐ城に行ってはいけない。少し待つんだ」

勇者「……邪魔だ」

少女「…もっと強い魂の持ち主だと思っていたんだけどね」

勇者「どけっ!」

勇者は女神の力を解放した!

少女「ぐっ……」

天使は『拘束魔法』を放った!

天使「すみません…勇者さん、本当にごめんなさい」

勇者は指一本動かせなくなった!

勇者「ーーーっ!」ギチギチ…

グググ……

天使「そ、そんなっ!?」

少女「やれやれ、僕も手伝うよ」

生命の審判は『拘束魔法』を放った!

勇者は更に強く拘束される!

勇者「…………ッ」ギッチ…

ギ…………ギ…ギギ…ギ

少女「…ふふふ、そんなにすごい力を出せるのかい? 抑え込む側でなければ素直に賞賛できたのにね」

鬼娘「ご主人、落ち着くッス!」

鬼娘は後ろから抱きついて勇者を抑え込む!

けんし「アタシも!」

けんしは前から抱きつく!


勇者「……っ。…………」


勇者は抵抗をやめた。




ポタッ

けんし「……?」


勇者「…………」ポロッ…ポロッ…


少女「…もう大丈夫だと思うよ」

天使「…はい」

勇者の拘束が解けた。
勇者はふらふらと外に出て行った。

鬼娘「大丈夫ッスかね?」

少女「さっきはあまりにも逆上しただけで、少しでも冷静になれば、ちゃんとした判断を下せるさ…………多分」

天使「……勇者さん…っ」

天使は両手で顔を覆って泣く。

少女「…やれやれ」

けんし「おいかけないと! あんなにかなしいかお、ほうっておいたらダメよ!」

天使「……私ではダメです…私では傷つけてしまいます…」

少女「僕の言葉じゃ、きっと届かないよ」

鬼娘「…オレなんか尚更ッス」

師範「……すまん……すまん……」

けんし「……もうっ、たよりないわね! アタシがいくわ!」


勇者「……」

勇者は自宅をぼんやりと眺めている。

けんし「おにいちゃん!」

勇者「俺は先輩の兄じゃない」

けんし「……?」

けんし「ずっとここにいたら、ひえちゃうわよ。なかにいきましょ」

勇者「放っておいてくれ」

けんし「いいからっ!」ぐいっ

勇者「やめろよ!」

けんし「…やめないわ!」ぐいいっ

勇者「……ちっ」

ふにゅっ

けんし「……………」

ふにゅふにゅ

けんし「~~~~ッ!?」

けんし「さいってい! もう知らないんだからっ」

けんしはその場を立ち去った!


勇者「…………姉ちゃん」


その日、勇者は姿を消した。

・・・

師範「せまいところで悪いが、ここにいる間は泊まっていくといい」

天使「ご厚意、感謝します」

師範「……あの子は大丈夫だろうか。早まったりしないといいが」

天使「…分かりません」

師範「…俺のせいなんだ。俺があの時、兵士を止めていれば…」

天使「そんなことを言うなら、私は…」

少女「そんなことを言い合ってどうするんだい? それより、これから先に同じことが起きないよう、元凶を断つのが先だと思うけどね」

天使「…しかし、勇者さまは、今も苦しんでるはずです」

少女「それくらい自分で乗り越えてほしいね。勇者だというのなら。ただでさえ弱いのに、心まで弱かったら論外だよ」

天使「…その言い草は何ですか! あなたに何が分かるんですか!」

少女「分からないよ。君に何が分かるんだい?」

天使「それは……っ! それ、は…………」

少女「…すまない。言いすぎたよ。僕も冷静さを欠いてるみたいだ」

天使「……いえ、私の方こそ、すみません」

少女「……彼も罪な男だね。まったく、腹が立つよ」



けんし「さいていなのよ! アタシの、む、むねを、もんだの!」

鬼娘「ずるいッス! オレもしてほしいッス!」

けんし「そういうことじゃない!」

鬼娘「あ、はいッス」

またそのうち。
未だに読んでくれる人がいることに感謝。

翌日・朝。

師範「な、ない! ないぞ!!」

けんし「おとうさん、あさからうるさい!」

師範「す、すまん」

天使「どうしたんですか?」

師範「実は我が家に代々伝わる剣が無くなっていたんだ!」

少女「それはそれは」

天使「大変ですね」

鬼娘「泥棒とか許せないッス」

師範「…あの剣が世に出たら恐ろしいことになるぞ」

けんし「…どうして? こんなにちいさいむらの、ちいさいどうじょうに、つたわるていどなのに?」

師範「…おまえ、今でこそ落ちぶれたが、これでも昔は国で一番の流派だったんだぞ……」

けんし「そうなの?」

師範「…まあ、いい。この国には伝説の二振りの剣があると言われる」

けんし「…ふうん?」

師範「一つは『光の剣』という幾多も魔を打ち払ったと伝えられる剣。しかし、今ではその所在は分かっていない」

少女「…おや?」

天使「光の剣って……」

けんし「これのことかしら?」

けんしは『光の剣』を掲げた!

師範「…………」

師範「本物っ!?」

鬼娘「すげえ!」

・・・

師範「取り乱してすまない」

けんし「ごきんじょにめいわくよ」

師範「すまん…」

天使「まあまあ。お話の続きをお聞かせください」

師範「う、うむ。我が家に伝わっていたのは『闇の剣』。『光の剣』と対をなす呪われた剣だ」

鬼娘「呪われた武器ッスか?」

師範「凄まじい力がある代わりに、使い手の心を蝕み、殺戮を愛する殺人狂に変えてしまう。とても常人の扱えるものではないんだ」

天使「そんな剣が盗まれたのですか…」

師範「うむ。地下室に封印していたのに、封印が解かれていた。口外したことは一度もないんだが」

少女「頃合いからして犯人は勇者くんかもしれないね」

師範「…しかし、あの子も『闇の剣』のことは知らないはず」

けんし「…きのうのよる、したからこえがしたわ。だれかがよぶこえ。きもちわるいこえだった…」

鬼娘「耳はいいッスけど、そんなの聞こえなかったッスよ」

天使「きっと剣を使える人を呼んだのでしょう」

少女「というか、勇者くんを呼んだのかもしれないね。彼はいつも強い力を求めていた。そして昨日は尚更だったろう」

天使「……」

少女「まだ断定はできないけどね」

けんし「だいじょうぶかな…」

少女「なんにせよ、二週間後、僕たちは彼に会えるだろう」

天使「例の催し物ですか?」

師範「兵士と傭兵を集めてのパーティーとやらに参加するのか。税金の無駄遣いはやめろと言いたいが、今の国は明らかにおかしい」

鬼娘「……」

師範「…戦争の噂もあるし、この国はどうなっちまうんだ」

少女「鬼娘くんにも協力してもらうよ」

鬼娘「もちろんッスよ! オレはご主人の性奴隷ッスから!」

師範「う、うん?」

天使「あ、あはは、気にしないでください…」

少女「それ、良くない誤解を与えるからやめようか」

鬼娘「ほんとッスか? それならやめるッス」


天使「それで、どういう作戦でいきますか?」

少女「適当に傭兵と兵士側に混じろう」

鬼娘「なっ、どうやってッスか?」

少女「僕は『変身魔法』が使えるからね。適当な傭兵でも襲って、傭兵としての契約書を奪って成り代わるんだ」

天使「手荒ですね。以前の『透明魔法』でよろしいのではありませんか?」

少女「『変身魔法』の方が消耗が少ないのさ。潜り込み、相手の作戦を妨害。それとすでに中枢に入り込んでるであろう魔物の廃除だね」

少女「即座に魔物と判断できる方法があればいいのだけど」ちら

鬼娘「オレもたぶんすぐには分からないッス…すいません…」

天使「心の中でも読めればいいんですけどね」

少女「言っても始まらないさ。でも、やっぱり不意打ちされたくないね」

けんし「マモノは、なんとなくわかるわよ」

少女「うん?」

けんし「なんか、こう、びびっ…て」

鬼娘「ホントッスか?」


けんし「わるいマモノなら、すぐわかるわ!」

少女「信頼していいものかな」

天使「この子はかなり特別なようですし、ある程度は大丈夫な気もします」

少女「……うん、過信しなければ保険にはなるかもしれないね」

師範「待て、話についていけないぞ」

天使「その祭典に魔物が襲撃してくるそうなんです。だからそれを食い止めようという話です」

少女「僕たちにこの国の命運がかかっているみたいだね」

師範「そ、そんなところに着いていくことなんて許さんぞ!」

けんし「なら、おとうさんをたおして、むりやりいくわ!」

師範「な、生意気な! 勝てると思ってるのか……ま、まだこの時期の娘なら勝てるはず…」


試合!


師範「参りました」

けんし「まだまだ、しょーじんがたりないわ!」


師範「なんなんだよ…ウチの娘は…どうしてこんなに強いんだよ…」

鬼娘「うわあ…滅多打ちッスね」

少女「…彼が弱いんじゃなくて、あの子が強すぎるんだ」

天使「そうです、だからそんな目で見てはダメですよっ」

師範(もうやめて!)

師範「だ、だが、可愛い娘を危険な目に遭わせるのとは、話が別だ」

けんし「まけたくせに、おうじょーぎわがわるいわね!」

師範「うるさいっ!」

けんし「…アタシは、しなないわよ。ぜったい、もどってくるんだから」

師範「…だが、お前まで失ったら、俺は…」グスッ


けんし「あまえないでっ!」べちんっ

師範「いでえっ!」


けんし「じぶんだけが、かなしいとおもわないで! アタシだって、おとうさんと、いっしょにいたいわ!」

けんし「でも、ほうっておけないわ! アタシも、ちからになりたいの! このままなにもしないでいることなんて、できないのよっ!」

師範「…………」


少女「なんだか勇者くんみたいだね」

天使「…幼馴染だから似通うところがあるのかもしれませんね」

鬼娘「あのチビ、かっこいいッスね!」

少女「ああ見えて、実は勇者くんの剣の先輩だよ。ご主人の先輩は敬っておくのがベターさ」

鬼娘「そ、そうなんスか? 分かったッス」

少女「しかし、彼といい彼女にはといい、どうやら何かに依存する傾向があるのかな。強いけど、脆いね」

天使「あんなに優しくて強い娘が、勇者さんに酷いことをしたとは到底思えませんが…」


少女「誰が本当はどんな人間かなんて、分からないものなのかもね。勇者くんもそうさ」

天使「……そう、なのかもしれません」



師範「…まったく」

けんし「……」

師範「……好きにしなさい」

けんし「!」

師範「ただし、絶対無事に帰ってこいよ」

けんし「…おとうさん、ありがとう!」ぎゅぅ

師範「はは、まったく。母さんに似たな。敵わない敵わない」ぽんぽん

師範「はあ、それにしても『闇の剣』、大丈夫か…」

・・・

少女「お茶がおいしいね」

天使「…こんなに寛いでいていいんですかね」

少女「慌てたってしようがないさ。勇者くんを見かけたという人もいないし、新しい情報もない。大人しく待つほかないだろう」

天使「そうなんでしょうか…」

鬼娘「オレは道場の子どもたちに差し入れ届けてくるッス」

少女「ああ、うん。君と天使くんが作ったんだよね。きっと喜ぶよ」

鬼娘「えへへ、行ってくるッス」



けんし「もっと、こしをふかく! たたきわるつもりで、うちこみなさい!」

教え子A「お、おっす!」

けんし「そこっ、ちゅうとはんぱなきもちで、けんをふらない!」

教え子B「す、すんません!」


教え子C「あの女の子、誰だ? すげえ偉そうだけど」ボソボソ

教え子D「師範の親戚だってさ。 アネさんに似てるよな」ボソボソ

教え子C「そういえば確かに」ボソボソ

けんし「しゃべってるよゆうがあるなら、はしりこみをさせるわよっ」

教え子C・D「ま、まじめにやります!」


師範「…あいかわらず厳しいなあ」

鬼娘「おやつ持ってきたッスよ!」

師範「おっ、それじゃあ休憩にするか」

教え子E「やっと休めるー」

教え子F「厳しくなったなぁ。最近、ぬるかったのに」

鬼娘「頑張るッスよっ。ほらもっと食うッス」

教え子G「おっ、おっす」

鬼娘(こうやって、ニンゲンを見てみると悪いヤツらって感じがしないッスね)

教え子G「……」そわそわ

鬼娘(ニンゲンを殺すのが、オレたちの本能ッス。でも本能だってうまく扱えば……やっぱり難しいッスかね)

鬼娘「……」ちらっ

教え子G「……」かあっ

鬼娘(まあ、何とかなるッス!)

鬼娘「……」

鬼娘(…戦いかぁ)うずうず

・・・

少女「うーん、今日も良い天気だね」ごろごろ

天使「もうっ…少しは手伝ってくださいよ」

少女「僕は家事炊事はできないんだ。全部アステリオスにしてもらってたしね」

天使「あの魔牛、そんなに家庭的だったんですか!?」


少女「ふふ、君に拷問を加えてるだけではなかったんだよ」

天使「……」

少女「…あー、うん。その件については、仕事とはいえ悪かったと思ってるよ」

天使「分かってますよ。私も他人のことは言えませんから」


少女「…エセ幼女の父親さんは?」ぐてー

天使「村役員の集会だそうです。二人は教え子くんたちと外で遊んでくるって朝から出かけてましたよ」

少女「子どもたちは元気だね。鬼娘ちゃんも中身は子どもだし」

天使「それでも、家事はどこかの引き篭もりさんよりはこなしてくれますけどね」

少女「嫌味な言い方だね。君は小姑か」ごろごろ

天使「……」

天使は『即死魔法』を唱える!

少女「おっと、家事がしたくなってきたよ」がばっ

天使「あら、私の祈りが通じたんですかね?」にこっ

少女「祈り? 君は邪神の使いだったのかい? ごめんなさいなんでもないです詠唱やめて」

ねむい、ねます
次は遅いと思います




鬼娘「ほらっ、花の輪ッスよ!」

けんし「じょうずね」

鬼娘「えへへ、遊び人を極めてるッス」

けんし「たぶん、それはちがうとおもう」

教え子A「ねーちゃん、くらえっ!」

鬼娘「へっ?」

虫<やあ!

鬼娘「…………」ぱたっ

鬼娘は気絶した!


鬼娘「はっ、寝てたッス!」

教え子A「ぐすっ、ごめんなさいぃ」


鬼娘「な、何があったッスか?」

けんし「このこがイタズラしたのよ」

鬼娘「…なんだろう、思い出さないほうがいい気がするッス」

けんし「オシオキもアタシがしておいたから、わすれてしまいなさい」

教え子D「おくれたぁ! ウチの犬もついてきちゃった!」

犬「わんっわんっ」

鬼娘「ひいっ…!」

がしっ!

むにゅむにゅ。

教え子G「わっ、わっ……!」かあっ

犬「うぅぅぅっ…」

教え子B「姉ちゃん、唸られてる」

教え子D「誰にでも懐くのに、おかしいな」

鬼娘「犬、無理ッス!」ギュウウゥゥ

ミキミキ…

教え子G「う…あ…」

けんし「ちょ、ちょっと…!」

犬「わんわんわんっ!」

鬼娘「いやッス! 犬にやられるなんていやぁ!」

バキボキッ!

教え子G「うがっ…」




天使「その手の形じゃ、指を切りますよ。添える手を丸めるんです」

少女「はあ……」

鬼娘「天使さんー、助けてくださいッス!」

少女「助かっ……ごほんっ、なにか困りごとみたいだよ」

天使「……」じとー

少女「ほ、ほらほら、緊急事態みたいだから行ってみよう」



教え子G「う、ううん?」

鬼娘「うわあ、起きてよかったッス! ごめんなさいッス!」ギュッ

教え子G「え、え…」

天使「…ちょっとした熱中症で倒れたみたいですね。今日は帰って休んだほうがいいですよ」

けんし「ほかのみんなも、かえったわ」

教え子G「え、う、うん」




鬼娘「本当にありがとうッス!」

天使「いえ…これくらいなら」

少女「人間は脆いんだ。力加減は気をつけた方がいいよ」

鬼娘「ごめんなさいッス…」

けんし「いぬとむし、はやめになんとかしたほうがいいわ」

天使「どこにでもいますからね」

鬼娘「うう…困ったッス。なんとかするッス」

・・・

天使「ふう、お洗濯も終わりました」

師範「いやあ、家のことを色々としてもらって悪いね」

天使「これくらいは当然ですよ。…ところで、お訊きしたいことがあるんです」

師範「…何だろうか、改まって」

天使「…勇者さんはどのようなお子さんでしたか?」

師範「…こんな別嬪さんに好かれるなんてあいつも成長したなあ」

天使「…そ、そういうのはやめてくださいっ」

師範「すまんな。あいつは…そうだな、良い子だったよ。素直だし真面目だ、今もだが」

天使「そう、ですね」

師範「ただ、父親も母親も魔物に殺されてるからか、魔物に対する憎しみは人一倍強いな」

天使「……」

師範「恃む親類もいないから、あいつはまだ幼い姉とずっと二人で支え合って暮らしていた」

天使「辛かったのでしょうね…」

師範「だろうな。村の皆もできるだけ支えようとはしたが、やはり父と母の代わりにはなれなかったろう」

天使「やはり家族とは特別なんでしょうか…」

師範「そうだな…でも、それだけが全てなわけではないはずだろう。あの子も今までの分、特別をしっかりと見つけられればいいが…」

天使「それを祈ってくれる人がいるというのは、掛け替えのない尊いものだと私には思えます」

師範「…俺にそんなことを言う資格はないんだがな。あいつの大切な特別を守れなかった」

天使「…しかし、村の皆を守るための決断だったと、他の方々から聞きました」

師範「そうだとしても、だ」

天使「…不器用なまでにお優しいのですね」

師範「よく言われるよ。褒め言葉と受け取ってるが」

天使「そうしてください」

師範「……しかし、あの子が勇者とはな。正直、信じられない。あの子は勇者となるには、あまりに普通なように思うが…」

天使「……」

・・・

祭典の前日。

天使「長々とお世話になりました」

師範「…短いくれぐれも気を付けて」

けんし「行ってきます」

師範「…おう! お前の強さを見せつけてこい!」

けんし「もちろんよ」


同刻。

東国・東城

東王「ついに明日か。これは中央国に対する示威になる。魔物が亡びた後、世界の覇権を握るのは東国だ」

東大臣「ええ、そうですとも。東王さまこそ、世界をお治めできる唯一のお方」

東王「ふぁっふぁっ、やめいやめい」


薬師「陛下、お薬をお持ちしました」

東王「…おお、そちか! そちの薬はほんによく効くのう! 見違えるようだぞ」

薬師「私めにはあまりにも勿体なきお言葉です」

東王「そんなことはないぞ。そちは国一番、いや、世界一の薬師だ」

薬師「恐悦至極に存じます」

東王「この前も側室を鳴かせ続けてやったわ。…大臣、少し外せ」

東大臣「は、はっ」


東王「この前に頼んだ薬だが」

薬師「惚れ薬でございますね。こちらになります」

東王「うむ。これを何とか娘に盛ってもらいたい。一計を案じてくれんかのう」

薬師「……」

東王「以前は娘を性的に愛していなかったと思うのだが…今は狂おしいほど抱きたいのだ…」

薬師「…陛下の御命令ならば、謹んでお受けいたします」

東王「…ふぁっふぁっっ、そちは最高の薬師だ。そのうち、爵位を与えてやるぞ」


薬師「有り難きお言葉でごさいます。…ところで陛下。畏れながらお頼み申したいことがありまして」

東王「なんだ、申してみい」

薬師「明日の素晴らしき祭典、不肖も参加させていただきたく存じます。素晴らしき祭典をこの目で見ることができればどんなにか喜ばしいことでしょう」

東王「そんなことか。そもそも傭兵を集めての示威行為も、お主の言葉が発端だ」

薬師「なんと…これほどの喜びを表せる言葉を持ち合わせておりません」

東王「ふぁっふぁっふぁっ」

薬師「まことに恐縮でございます」

東王「…それで、薬を盛るのは、いつになる?」

薬師「……祭典後がもっとも自然でよろしいかと」

東王「…そうだな。心待ちにしているぞよ」

薬師「はっ」



東大臣「陛下。毒見をお呼びしますので、お待ちを」

東王「よいよい。ワシは彼奴を信頼しておる」

東大臣「しかし、万一のことがございましたら」

東王「ふぁっふぁっ、だとしてもワシはおべっかばかりのそちよりも彼奴を信頼しておるぞ」

東大臣「そ、そんなぁ…」



薬師「……」

影男「へっへっ、すっかり信用されてるな。実際は調教されてるんだが」

薬師「……私の部屋以外で、会いにくるなと言っているだろう」

影男「誰もいないのを確認したから大丈夫だぜ。あのジジイはもうお前のクスリの虜だな。俺らの言いなりになるともしらずに」

薬師「……」

影男「面白いくらい俺たちの筋書き通りに進んだな。犯罪への厳罰化。収容所が無くなったから島流し。そして俺たち魔物が拐う。更には、王侯貴族権力者を集めての兵の激励パーティの開催」

薬師「そんな無駄話をしに来たのか?」

影男「感慨に耽りたい気分なのさ。いよいよ明日だな。この国を牛耳れば、側近さまも喜ぶぜ」

薬師「…そうだな」

影男「魔虫はどうだ?」

薬師「何も問題はない。単身でも数日は怪しまれないだろう。後は支援の者をすぐに送り込めば、しばらくはニンゲンでないと悟られないはずだ」

影男「エリート様は流石だな」

薬師「明日、うまく頼むぞ。とくに魔虫」

影男「へへ、任せとけ」

薬師「他の魔物たちも首尾よく動くはずだ」

影男「成功させようぜ」

薬師「…失敗は許されない」

薬師(もし、万が一にも、しくじる時には…アレを使う)

そして当日!

東国・広場

ガヤガヤガヤガヤ…

少女「酷い人だかりだね」

天使「上流階級の方々は少し高いところにいるんですね」

少女「身分の違いを視覚化しているんだろうね。あとは、安全のためかな」

鬼娘「つ、角とか出てないッスよね?」

けんし「だいじょうぶよ。さんにんとも、みごとなブサイクおとこだや」

少女「ふふ、君も不細工な大男だけどね」

天使「しかし、彼らを路地裏に放置しておいて良かったのですかね?」

少女「すぐには起きないから問題ないさ」

鬼娘「そんなことより、ご馳走が食えるらしいッスよ!」ジュルリ

けんし「ここで、いっぱいたべなさい。あなた、おおぐいなんだから」

天使「昨日も今日も食堂で目立ってましたもんね。正体がバレないか不安でした」

少女「君も人のこと言えないよ。二人で店の食料を食い尽くす勢いだったじゃないか」

天使「そ、それは、最近は厚意で食事をいただいてるので、遠慮していることが多かったからしょうがないんです!」

鬼娘「う…なにも考えてなかったッス…」

けんし「いいのよ。おとうさんのところに、おかねをおいていったもの。たべたぶんくらいは」

天使「そうなんですか? それならもっと食べれば良かったです…」


ドンッドンッ


少女「空砲か、パーティの始まりかな」


東軍元帥「よくぞ参られた。今から我が軍を支える誇りある我が国の勇敢な兵士たち、そして我が軍と共に国防を担う勇ましき戦士たちよ。本日はお日柄も良くーーーー」


鬼娘「ニンゲンの儀式もやっぱり最初は偉い人の挨拶から始まるんスね」

天使「天界は女神さまがああいう堅苦しいこと言うの好きみたいなんですけど、毎回途中で飽きてやめちゃいますね」

少女「創造の女神…大らかというかなんというか」

けんし「てきとーなのね」

天使「そうなんです。あんなのが直属の上司だと思うと……はあ……」

・・・

東軍元帥「ーーーー我が国がさらなる繁栄を謳歌するには、ますます国力を増強し、国を富ませ、臣民を養わなければいけぬ。そのためにはーーーー」

鬼娘「ながいッス…」

けんし「べつのひとも、はなしたりするのかしら……」

少女「やれやれ、貧血で誰か倒れるかもしれないよ」

天使「そんな人が傭兵になるんですかね?」

・・・

鬼娘「やっと話が終わったッスね…」

けんし「わあ、美味しそうなご飯が出てきたわ」

東軍元帥「今日は無礼講だ。存分に飲み食いして、存分に騒ぐがよい!」

天使「…お酒を樽ごともらいたいですね…氷結魔法で凍らせれば、料理もたくさん持っていけますね」ぼそぼそっ

少女「強欲な天使だね…」

鬼娘「美味そうッス! ……ん?」

けんし「いただきます」


鬼娘「待つッス!」

けんし「な、なに?」

鬼娘「…毒が入ってるッス」

天使「……っ!」

「ひゃーうめえ!」
「こんな美味い飯にただでありつけるとはなあ!」

天使「食べるのをやめてください!」

「なんだテメエ」
「お前らも早く食えよ。マジ旨えから」

「兵士やっててほんとよかったぜ」

少女「…毒か。解毒はできそうかい?」

天使は解毒魔法を放った!
手元の料理の毒が消えた!

天使「…大丈夫そうです!」ほっ

「お、おい! あれは……!」
「空から魔物の大群が!」

混合獣「ウウゥゥウウウ」

大量の混合獣が襲撃してきた!
混合獣の背中には魔物がたくさん乗っている!

鬼娘「…見たことない魔物ッス」

天使「魔法で撃ち落としますね」

少女「ん、煙が…っ?」

ブシュウウウ……!!

あたりに煙幕が立ち込めた!

天使「くっ! げほっげほっ」

少女「随分と畳み掛けてくれるね…!」

鬼娘「なんも見えねえッス!」

けんし「あわてないで!」

けんしは天使に『女神のオーブ』を手渡した!

けんし「てんしのおねえちゃん、まずは、けむりをとばして!」

天使「は、はい! えーと、えーと」

けんし「うえで、ばくはつのまほうよ!」

天使「は、はい!」

天使は『爆烈魔法』を唱えた!
『女神のオーブ』が魔法の威力を高める!

爆風の余波で煙幕が薄まった!
ついでに上空の魔物を何体か倒した!

けんし「つぎは、みんなのどくをなおして! あと、かいふく!」

天使「はい!」

けんし「オニのおねえちゃん、したにおりたマモノをたおして!」

鬼娘「わ、分かったッス」

けんし「へんなおねえちゃんは、うえにいるマモノをおねがい!」

少女「う、うん」

けんし「アタシは、おうさまのところにいくわ! あとでたすけにきてね!」

けんしは変身を解いた!
王侯貴族のもとに駆けて行った!

3人は変身を解いた!

少女「やれやれ、彼女が一番落ち着いているね」

天使「早くしましょう」

鬼娘「へへっ、腕がなるッス!」



東王「なんじゃ! なにがどうなっておる!」

東大臣「こ、ここは危険です。逃げましょう!」

東姫「……っ」

馬人「逃がさねえよ」

魔物の群れに囲まれた!

東大臣「ひいっ」

東王「く、下等な魔物どもめ! 兵士は何をしている!」

牛人「誰もこねえよ。お前らはここで死んで、俺たちの操りに人形になるんだ」

豚人「でへへっ、ヒメさまカワイイな! なっなっ、ベロベロしていい?」

東姫「……キモッ」

豚人「こ、こここ、このメス豚ァッ!」

豚人の攻撃!

東姫「ひっ……」



しかし、東姫には当たらなかった!


東姫「……?」パチッ


勇者「…大丈夫ですか」

勇者は豚人の攻撃から東姫を庇った!

東姫「え、う、うん」

豚人「じゃ、邪魔するなぁぁ!」

勇者「……」ヒュッ

豚人「プ、ブギイィイイ!!」

勇者は豚人を斬り殺した!

東姫「…あ、ありがとうございます」

勇者「…あなたは、一応、生命の恩人ですから」

東姫「…? ……っ!? あの時の…っ!?」

けんし「おにいちゃん!」

勇者「…先輩、守りは頼んだ」ダッ

勇者の猛攻!
魔物の群れを斬り殺した!

けんし「それ…」

勇者「ああ、『闇の剣』。師範には謝っておいてくれ」

けんし「おにいちゃん、なんだかヘンよ?」

勇者「…そうかもな」



天使は『聖浄魔法』を放った!
『女神のオーブ』が魔法の威力を高める!
あたり一面の人々を解毒した!

天使は『回復魔法・大』を放った!
『女神のオーブ』が魔法の威力を高める!
あたり一面の人々が全快した!

天使「あとは、魔法の効果を受けられなかった人がいないか見ないと…」

巨人「テメエ! ジャマしやがって!」ぶんっ

巨人の攻撃!

天使「きゃあっ!」

天使は巨人の拳を受け止めた!

巨人「えっ」

天使「ていっ」

天使は巨人を投げ飛ばした!

混合獣「ウウゥッ!?」ドゴッ

上空の混合獣に当たった!

混合獣と巨人を倒した!

天使「か弱い乙女に手を挙げるなんて最低です!」




鬼娘「弱すぎるッスよ!」ボゴッバキィッ

鬼娘は魔物の群れを蹂躙している!

鬼娘「オラオラァッス!!」

首なし騎士「き、貴様、魔物のくせいに裏切るのか!」

鬼娘「オレはご主人の味方ッス!」グシャッ

首なし騎士「おのれ!」

首なし騎士は鬼娘に飛び掛る!

鬼娘「遅いッスよ!」

鬼娘の『痛恨の一撃』!

首なし騎士の胴体を吹き飛ばした!

首なし騎士「ど、胴体ーッッ!?」

少女「…みんな、強いね」

混合獣「ウウウウゥゥゥゥ」

少女「僕は非力な美少女だからね」

生命の審判は『睡眠魔法』を放った!

混合獣は眠ってしまった!

少女「落ちてきたところを倒させてもらうよ」スパッ

呼び寄せた鎌で混合獣の首を刈り取った!

少女「安らかに眠りなよ」ニコッ

混合獣「ウウゥゥウウウ!」

少女「って、あれ? 首を刎ねても死なないのかい?」

混合獣の攻撃!

少女「わわっ!」

生命の審判は何とか躱した!

少女「…えー、なんか僕の敵だけ強くない?」

今日はこんなもんかね



けんし「はっ!」ズバッ

けんしは魔物から東王たちを守っている!

薬師「…陛下、この者たちも魔物の一味かもしれません。隙を見て逃げましょう」ボソッ

東王「う、うむ」

東姫「お待ちになって。おそらく、あの方たちは、妾たちの味方です」

東王「…むう、いやしかし薬師がそういうなら、きっと敵のはずだ」

東姫「お父さまは妾よりもその薬師の言葉を信じるのですわね?」

東王「い、いや、それは…」

薬師(ちっ、薬はまだ完璧に効いてないのか…ッ!)


東軍元帥「ぐっ…魔物め! 屍体に魔物を植え付けるなぞ許さん!」

影男「へいへい。軍のトップをすり替えれば、本懐を遂げれるんでね。悪いが静かに死んでくれ」

東軍元帥「魔物にこの国を渡しはせんぞ!」

影男「へっ、老兵が粋がるなよ。さっさと死ね!」

勇者「…死ぬのはお前だ」


影男「うおっ?」

勇者の攻撃!

影男は何とか躱した!

影男「危ねえな。なんだお前、ウザいなあ」

勇者「勇者だよ、一応な」

影男「お前が? 報告では女と聞いてるがな。ニンゲンのくせにまがまがしい装備しやがって」

勇者「だから一応と言ってるだろ」

勇者の攻撃!

影男「ムダだぜ」

影男は元帥の影に隠れた!

影男「影の中にいる間は、俺は無敵だ!」

勇者「……」

影男「ったく、全て上手くいっていたのに、邪魔しやがって」

勇者「…いつから東国に潜り込んでた?」

影男「もう一年も前さ。少しずつ、王を歪めて、今日の計画を進行させていたのによ」

東国元帥「な、何だと…!?」

勇者「…勇者の偽物が国を追い出される前からか」

影男「そういや勇者を見たとか宣った時期もあったなあ。薬のせいでラリっちまったんだな。国宝まで持ち出して迎えに行って、インポをバカにされてやんの」ケラケラ

勇者「…馬鹿らしい話だな」

影男「まあ、おかげで更に取り入りやすくなったんだがなあ。インポの治る薬ありますー、ってな」

影男「まあ、無駄話はこれくらいにしようや」

東軍元帥「なっ…体が…!?」ググッ

影男「へっ、ニンゲンの手で殺されろ!」

勇者「…無駄なことを」

勇者は影男に大量のピンクローターを放った!
影を突き抜けて影男に直撃した!

影男「なっ、んひいぃぃいいいっ!?」

勇者「…こんなクソみたいな能力でも女神の力には変わりないな」

勇者は更に大量のピンクローターを影男に押し付けた!

影男「んおおぉぉおおおおっ!! イ、イクぅウゥうううっっ!!」ビクビク

影男は悶死(テクノブレイク)した!

勇者「…ふん」



天使は負傷兵の傷を癒した!

天使「…間に合って良かったです」にこ

「あ、ありがとう」

「天使だ…結婚してくれ…」
「いや、女神だ…崇めたい」
「あんな優しそうな女性に申し訳なさそうに踏まれたい」

天使「みなさん、もう大丈夫そうですかね?」

「あいたたた! ケガしちゃったなー」ちらっ
「癒してくれー」
「膝枕してほしいです」
「おれ耳かき」

天使「だ、大丈夫そうですね」



鬼娘「ちっ、強えな…」

地獄闘士「ふふ、それほどでも」

鬼娘(…地獄闘士、魔王軍でもかなりの腕前って噂は本当ッスね。前線で、闘いたいために昇級を辞退する変わり者ッス)

鬼娘「鬼と殺し合えるなんて珍しいことですからね。もう少し楽しませてください」

地獄闘士は四本の腕で、再び戦闘態勢に入った!

鬼娘「そっちこそ、あっさり死ぬなッスよ!」

鬼娘(…そうはいいながら、さすがに隙がねえッス。多腕系のヤツは、一本一本の腕力が大したことないのが多いッスけど、こいつは違うッス)

地獄闘士と鬼娘は激しく殴り合う!

鬼娘(一本一本の筋力と速さが、自分と同じかそれ以上…純粋に手数で負けちまうッス…)ハァハァ…

地獄闘士「ほっ!」バゴッ

鬼娘「うぐっ…」

鬼娘は距離をとった!

地獄闘士「おやおや、逃がしませんよ」バサッバサッ…

地獄闘士は不気味な笑みを浮かべて鬼娘に飛びかかってきた!

鬼娘(しかも翼まであるときたッス!)

鬼娘の腹に拳が食い込む!

鬼娘「ぐううっ…ッ! …ウがアァァッッ!」

鬼娘は地獄闘士の腕を抱え込んだ!!

地獄闘士「おや、一本掴んだところで、私には腕だけであと三本あるんですよ?」

鬼娘(…ああ、こいつには失策だったッス……がッ!)

地獄闘士は三本の腕で無防備な鬼娘を痛めつける!

鬼娘「ぎぃ……っ!」

鬼娘「…ぐオオォォオオオォッッッ!」

ゴキゴキッ…!

地獄闘士「…くっ!」

鬼娘は抱え込んだ地獄闘士の腕の骨を砕いた!

鬼娘「があああアアァァァッッ!」

鬼娘はそのまま地獄闘士を投げ飛ばした!

地獄闘士「ぐぐぐ……」

バサッバサッ…

地獄闘士「やってくれますね!」


鬼娘「……っ」ゼエゼエ


天使は『回復魔法・大』を放った!
鬼娘の傷がみるみる癒された!


鬼娘「おおっ!?」

地獄闘士「む…」

天使「大丈夫ですか?」

鬼娘「へへっ、ばっちりッス」

地獄闘士「傷が全快しましたか。…ここは撤退しますか。作戦もほぼほぼ失敗ですしね」

鬼娘「魔王軍のくせに遁走するなんてどういう了見ッスか!」

地獄闘士「敗ける戦いはしない主義なのですよ」

鬼娘「この臆病者ー!」

地獄闘士「ふふ、お好きにお呼びいただいて結構ですよ」

地獄闘士は逃げ出した!



少女「ふう…ふう…」

「ウウゥゥウウウ…」

「ウゥウウウウウ…」

「ウゥゥゥゥウウウ…」


少女「やれやれ今度は複数体同時かい? あまり動物は好きじゃないんだけれど」

少女(この数はちょっとマズいね。魔法を撃ち漏らした隙に喉元を千切られてしまう…)

少女(おっと、天使くんが…。ふふ、合わせてくれよ)

生命の審判は『障壁魔法』を放った!
自分の周囲に透明な防壁を展開した!

混合獣の群れは障壁に飛びかかる!

少女「うーん、大丈夫と分かっていても怖いね、これは。檻に入れられてバケモノの大群の中に落とされた気分だ」


少女「さて、どかんと頼むよ」

天使は『火炎魔法・極』を放った!

混合獣「ウウゥゥウウウ…ッ!?」

生命の審判ごと混合獣を焼き尽くした!

天使「…おびき寄せて、一網打尽。上手くいきましたね」

少女「……っ」

生命の審判はうずくまっている!

天使「あ、あれ? 大丈夫ですか…?」

少女「っふぅ…、ふぅ…ふぅ…」

天使「障壁は無事なのにどうして」

少女「いや、大丈夫。火炎魔法で酸欠になっただけさ」

天使「あ、す、すみません…」

少女「さして問題ないよ。…さて、あらかた倒したかな?」

鬼娘「オレたちの敵じゃないッスね!」

天使「さっさと残りの魔物も倒してしまいましょう」

薬師(くそっ…くそくそくそくそくそっ! 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した!)

薬師(計画は滞りなく行っていた! 下準備も戦力も万全だった!すべてこいつらのせいで! 何者だ! ただのニンゲンじゃない…勇者かっ! ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!)

薬師(この作戦を失敗してはいけなかった! もう俺のキャリアは破滅した! 処刑もあり得る! どうするどうするどうするどうするどうするどうするッ!?)


けんし「アナタ、マモノね」チャキッ

薬師(ッ!? どうしてばれた! 変化の杖による変化は完璧のはず!? いや、あまり周りを見るな! さらに怪しまれる!)

薬師「…一体、何を言うのですか。驚きです」

けんし「にんげんのふりをしても、アタシにはわかるわ」

薬師(何故だ!? 変化の杖は完璧のはず! 声も匂いも人間のもの! 怪しまれる素振りも見せていないはずだ!)

薬師「こんな恐ろしい言いがかりは初めてですね」

けんし「…シッポでてるわよ」

薬師(…鎌かけか。確信があるわけではないのか? ここは上手く逃げなければ)


薬師「…いったい何を言ってるのですか。それより、まだ魔物が来ないとも限りません。陛下、早くこの場を離れた方がよろしいかと存じます」

東王「う、うむ。そうだな」

けんし「ダメよ! ソイツはダメ!」

薬師(ちっ、黙ってろクソガキ! 取り敢えずコイツに取り入っておけば、また機会があるかもしれないんだ!)

薬師「…こんな得体の知れない幼児の言葉を真に受けてはいけません。魔物の手先かもしれません」

東王「む、うむ…」

東姫「お父さま、妾はその子たちを信じます。確かな理由もございますわ」

東王「ぬ、なんだ?」

東姫「…それは後で申し上げます。…私もその薬師は信用に置けないと思っておりますわ」ちらっ

東王「う、うむ…」

薬師(なんだ!? どうして上手くいかない!?)

薬師「陛下ッ! 私は陛下に忠誠を誓っております!」

東姫「お父さま、私を信じてくださらないのですか!」

東王「そ、そんなわけないだろう! この者は魔物じゃ! 討ち取れ!」


勇者「……ッ!」ギリッ

けんし「もどってきたのね!」

勇者「…他の魔物が口を割った。薬を使う者は魔物だってな」

薬師「そ、そんな、魔物の戯言を信じるのですか…」

けんし「へたなシバイは、やめたらどうなの?」

薬師「へ、陛下…」よろよろ…

東王「……寄るなっ、魔物め!」


薬師「……ちっ、クズが」ヒュッ

東王「なっ…」プスッ

薬師は『禁断の毒薬』を東王に打ち込んだ!


どさっ


東姫「お父さま…?」



東王「ぐっ……グゥ…ッ」

東姫「お父さま、大丈夫ですの?」

東王「グオオオォッ!」ブオッ

東王の攻撃!

勇者は東姫を庇った!

東姫「ど、どうなってんの?」

東王「グギギギギギイィィ!!」

東王は魔物化している!

東姫「ね、ねえ、なんなのコレ!?」

勇者「……」




薬師「失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した!!」

メキメキィィッ……!

薬師「おまえらのせいだおまえらのせいだおまえらのせいだ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

薬師は真の姿を現わす!

蛇人「…貴様らは生きて返さん!」

蛇人は『旋風魔法・大』を放った!

けんし「うぅ…っ」

けんしは魔法をなんとか躱した!

蛇人「所詮はか弱き子ども。こんなニンゲンのガキに俺の人生を狂わされた…ッ」

蛇人は『旋風魔法・大』を二回連続で放った!


けんし「きゃああっ…!」

けんしは深い裂傷を負った!
けんしは吹き飛ばされて気を失った!

蛇人「…あれで、八つ裂きにならないだと? …あのガキ、バケモノか?」

けんし「……っ」

蛇人「…貴様は確実に殺す!」

蛇人は気絶したけんしの元にすり寄る!

鬼娘「どりゃあっ!」

鬼娘の不意打ち!

蛇人「ぬ!?」ヒュッ

蛇人は尻尾で素早く鬼娘を薙ぎ払った!

少女「隙あり、だね」

生命の審判は『拘束魔法』を放った!

蛇人「ーーーーっ!」


天使「終わりです!」

天使は『火炎魔法・極』を放った!

蛇人(ちくしょう、使うしかない!)


蛇人(『破滅の力』を!)


蛇人は『破滅の欠片』に宿る力を取り込んだ!

不気味な閃光が迸る!


東王「グオオォォ!」

東王の連続攻撃!

勇者は東姫を庇いながら全て避けた!

東姫「ちょっと、どうなってんのよ」

勇者「知らん」

東王「ガアアァァ!」

勇者「…もう完全に魔物だな」

勇者は東王の両腕を斬り飛ばした!

東王「グウゥゥ…!」

勇者「…自業自得だ」

勇者は東王を袈裟懸けに斬った!
東王は苦悶の叫びを上げる!

勇者「…死ね」

東姫「…待ってよ」


勇者「…?」

東姫「クソ親父はもう弱ってるから、もうこれ以上は手を出さないどいて。キモい姿でも、国王を殺せばアンタもただじゃすまないよ」

勇者「…ふん、こんな国王も国も滅びればいい。こいつが知ってたかは知らないが、魔物に操られて臣民を魔国に送り付けてたような国だ」

東姫「…それ、マジなの?」

勇者「刑務官の口を割らせた。俺の姉さんも魔物の手に渡った」

東姫「……」

勇者「易々と魔物に誑かされて、正統な血筋ならば、こんな無能でも国王か」

東王「グウゥ……」

勇者「…別に国のことを憂慮しようなんて思っちゃいない。俺はただ復讐がしたいだけだ」

東姫「…やめなよ」

勇者「うるさい」

東姫「魔物になって、死にかけてるんだよ? もう充分でしょ?」

勇者「黙れよ」

東姫「ねえ、お願い」ぎゅっ

勇者「…媚びるな、浮かれた世間知らずが」

東姫「…ちょっと下手に出たからって調子に乗んなよ、平民のくせに!」

勇者「…はっ、それが本音だろ。結局、お前もこのクズの血を引いたクズ女だ」

東姫「…ふざけんなっ」ポロポロ…


『女の子を泣かせるなんて最低なんだからね!』


勇者「……っ」

東王「ググ…コ………コロ…セ」

東姫「…え?」

勇者「…意識があったか」

東王「コロ………セ……ハ…ヤ…ク」


勇者「……ははっ」


勇者「殺さない」

東姫「……っ」

勇者「お前の頼みなんて聞かない。お前が殺せというなら殺さない。 この国の兵士にでも殺されればいい」

東姫「……最低ッ!」

勇者「勝手にほざいてろ」

東王「……グウゥゥ」


鬼娘「いてて…何があったんスか?」

少女「よく有る敵のパワーアップさ…面倒くさい」

巨大蛇「…ふはっ、ふははっ、素晴らしい力だ!」

鬼娘「うげっ、何スかアイツ? 初めて見るッス」

巨大蛇「小細工なぞ最初から要らなかった! 有無を言わせぬ圧倒的な力ッ! 必要なのはそれのみだった!」

巨大蛇は彼女たちを中心にとぐろを巻いた!

少女「逃げ道を潰されたね…」

天使「蛇なら冷気に弱いはずです」

天使は『氷結魔法・極』を放った!
『女神のオーブ』が魔法の威力を高める!

しかし巨大蛇は涼しい顔をしている!

巨大蛇「効かぬわ!」

巨大蛇は口から猛毒の息を吐いた!

天使「くっ…!?」

天使は『聖浄魔法』を放った!
吐息は無毒化された!

巨大蛇「小癪な…」

巨大蛇は『旋風魔法・極』を唱えている!

少女「まずいね」

生命の審判は『広域障壁魔法』を放った!

透明な球形の膜が彼女たちの周囲に展開する!

巨大蛇は『旋風魔法・極』を放った!

高圧縮された竜巻は障壁に遮られて消えた!

少女「…そう何度ももたないかな」


けんし「……うっ」ぴくっ


鬼娘「ひどい怪我ッス…。横になってるッスよ」

けんし「はぁ…はぁ…」

天使「すぐに回復します。安心してくださいね」

天使は『回復魔法・大』を放った!

けんしは全快した!

けんし「ありがとう、これならたたかえるわ」

天使「ここは私たちに任せて少し大人しくしていてください」

けんし「でも…」

天使「あなたはもう充分なほど頑張りましたよ。だからお休みなさいね」にこっ

けんし「…ええ、ありがとう」


巨大蛇は『究極破壊魔法』を唱えている!


少女「うっ、あれは受け止め切れないよ…」

天使「任せてください!」

天使は『究極破壊魔法』を放った!

巨大蛇は『究極破壊魔法』を放った!

二つの魔法はぶつかり合う!

巨大蛇「ぐっ…」ジュゥ

少女「今のを押し返すとは…流石だね」

天使「なんとか、といったところですけど…」

鬼娘「うへ、強さの次元が違い過ぎるッス…」

けんし「そうね…」

巨大蛇「羽虫どもが意気がるなよっ!」

巨大蛇は体を巻き付けて絞め殺そうとする!
しかし障壁がそれを阻む!

少女「あまり、長くはもたないよ…っ」

鬼娘「うぐぐ、何とかして逃げるッス!」

けんし「逃げ道なんてないわよ…?」

少女「天使くん、魔法で逃げることはできないかい…?」

天使「それも可能ですが……ここは私に任せてください」

鬼娘「何か手があるッスか?」

天使「私だって伊達に死んでいたわけではありませんよ……『連続魔』!」

巨大蛇「なっ…!?」



天使の『連続魔』!

『氷結魔法・極』!
『氷結魔法・極』!

『未踏の氷壁』となった!


巨大蛇「ぐおおっ!?」

巨大蛇の体が冷気で鈍る!


少女「…連続魔とは恐れ入るよ」

天使「成功して良かったのですが……疲れますね。赤騎士の強さを改めて実感します」

少女「使えるだけでも凄いさ」

鬼娘「…見るッス。決着が着きそうッスよ」

けんし「…そうね」



巨大蛇「く…そ…まだ…!」


勇者「お前が本当の元凶みたいだな」


巨大蛇「きさ…ま…、俺さまの…頭の…上に……っ!」

勇者「全てはお前の手のひらの上のつもりだったか?」

勇者「残念だが、お前の生命は俺の手のひらの上だ」

巨大蛇「ひっ…!」

勇者「お前だけは、絶対に許さない…!」

『闇の剣』が勇者の憎悪に呼応する!

巨大蛇「やめ…ろ…っ!」


勇者は雄叫びを上げながら巨大蛇頭を真っ二つにした!


巨大蛇を倒した!

この辺で。終わりも遠くないな。





一週間後・師範の家

少女「……」ぺらっ

天使「……」

鬼娘「ただいまっす」

天使「…お帰りなさい」

鬼娘「魚が釣れたッスよ。あと、ご近所さんにイモをもらったッス」

少女「よかったじゃないか」ぺらっ

鬼娘「新聞ッスか?」

少女「うん……国中大混乱さ。魔物に危うく国を乗っ取られかけ、巨大な魔物が現れ、王が魔物になったんだ」

鬼娘「でも、おれたちの力で危機は乗り越えたッスよ! 屍体に寄生してたばっちい魔物も片付けたッス!」

少女「そのことも書いてるさ」

鬼娘「謝礼をたくさん貰えたんスよね!」

少女「出し渋っていたが、説得して誠意を見せてもらったさ」


少女「あの程度で脅迫とは言わないよ。それに彼らに貯めこませるよりも、僕たちが使った方がましさ」

鬼娘「この国は大丈夫っスかね?」

少女「東王は現在、正気を失っているからね。王位は剥奪され、弟が王位を継承するんじゃないかな。僕らには関係ない話だけれど」

鬼娘「はー、大変ッスね」

少女「うん」

鬼娘「ところでご主人の先輩さんは…?」

少女「…細い管で、栄養は摂らせているから、酷い衰弱はしていないよ」

鬼娘「……」

少女「眠り姫のお目覚めをどれだけ待てばいいのやら」

天使「…そのことなのですが」

少女「うん?」

天使「私は先に旅立とうと思います」

鬼娘「!」

少女「…勇者くんを追ってかい?」

天使「勇者さんはきっと魔国に向かっているはずです。姉の仇を討つために」

少女「きっと勇者くんは君の助けを拒むさ。そして君もあの娘みたいに斬り捨てられるだろうね」

天使「しかし…」

少女「…僕はこれを集める方が重要だと思う」

生命の審判は『破滅の欠片』を取り出した!

少女「これには数多の魂、そして滅びの神の力が宿っている。つまり魔王の力の根源だよ」

天使「……」

少女「魔王はいわば破滅の神がこの世界で暴れる為の依り代。しかし、今回は何だか色々ときな臭い」

天使「…そうですか?」

少女「まず前回までの人間との戦いは種を根絶させるような組織的大虐殺だったけれど、今回は少し違うように思う」

鬼娘「??」

少女「今回の件も含めて、人間を滅ぼすというよりは、国家機能を奪ったり植民地化を優先しているように思える」

天使「そうですかね…?」

少女「以前の人間の国への侵攻も、最低限の戦闘しかしていなかったのだろう?」

天使「それは、元人間である赤騎士がいたから…」

鬼娘「えっ、ニンゲン?」

少女「むしろ、それが一番の問題さ。かつての人魔大戦では、勇者と魔王の一騎打ちで決着がついたと言われているはずだ」

鬼娘「オレもそう聞いてるッス。勇者が魔王様を倒して、魔物は消えたと」

少女「しかし、魔王と勇者の魂は僕のもとに訪れなかった。それどころか、先代勇者は魔物となっていた」

鬼娘「えっ? …えっ」

少女「魔王は先代勇者を懐柔して、雌雄を決する戦いの終焉を偽装したようだね」

天使「…そんなことできるわけありません。神の目を欺くなんて…」

少女「しかし、君は赤騎士が先代勇者とは気付かなかったね?」

天使「私が察知しなくても、女神さまが気付くはずです」

少女「…ふむ。君の言う通りかもしれない。しかし、何にせよ、赤騎士は魔物として人間の制圧に加担した」

天使「…結局、何が言いたいのかよく分かりません」

少女「それはすまない…。僕が言いたいのは、魔王には今までとは違う目的があるのではないかということさ」

鬼娘「今までとは違う目的? そんなの聞いたことないッス」

少女「……」

鬼娘「な、なんスか!? なんで憐れみの目でみるッスか!?」

少女「まあ、大多数には知られていなかったのかもね、うん」

天使「…貴女の推測がある程度正しいとした場合、魔王の目的は何なのですか?」

少女「人間を滅ぼすのではなく、人間を支配したいのかもね」

鬼娘「で、でもニンゲンと分かり合えるッスかね。…自分が言っても説得力がないかもしれないッスけど」

少女「分かり合うとは思ってないんじゃないかな。人間を奴隷のように扱ったり、玩具にしたりするなんて有りそうな話じゃないか」

天使「……」

少女「何にせよ、今回の魔王はどうも世界の調和を乱そうとしているように思えてならない。創造と破滅は世界の均衡を作り、調和の基礎となるからね」

鬼娘「ほえー」

少女「だから今は勇者くんを探すよりやることがある」

鬼娘「分かったッス! 『破滅の欠片』を集めるんスね!」

少女「そう。そして、魔王が力を得ないようにするのさ」

天使「…しかし、その間に勇者さまに何かあったらどうするんですか?」

少女「そんな簡単に死ぬ男ではないと思うけれど、あまり長くそのままにしておくのは絶対に良くない」

鬼娘「…あの剣とか装飾品ッスね?」

少女「うん…あまりにも長く身に付けていたら精神が完全に蝕まれてしまうだろうね」

天使「…やはり早く何とかしないとダメではありませんか!」

少女「…彼は殺す気で来る。僕たちはそうじゃない。きっと、今のままじゃ、返り討ちで終わりさ」

天使「しかし…!」

鬼娘「焦るのは分かるッス。でも、現状を考えることは大事ッスよ」

天使「…だから、あの娘が目覚めるのを待てと? それこそ同じことになるだけなのでは?」

少女「…まあ、そうかもしれない」

天使「……」

少女「実際、いつ目覚めるか分からない以上、ここで足止めを食らったままでいるのも問題だ」

鬼娘「ちゃ、ちゃんと目覚めるッスよね…?」

少女「そう信じたいね」

天使「…分かりました。それなら、ここを拠点に『転移魔法』で、短期の行程で冒険しませんか?」

鬼娘「そんなことできるんスか?」

天使「『転移魔法』は即席で行使するのは容易ではありませんが、魔法を構成するのに充分な時間があるのなら、可能だと思います」

少女「便利だね。いざとなれば、魔国に乗り込んで奇襲できるんじゃないかい?」

天使「転移先はかなり限定的な上に、あまりにも邪悪な力があるところには転移できません。あと、生命エネルギーが豊富なところも、座標が正しく検知できなくて、悲惨な結果になりかねません」

鬼娘「悲惨な結果?」

天使「…聞きたいですか?」

鬼娘「……えっと、結構ッス」

少女「まあ、それくらいの短所はあっても充分反則的さ」

天使「あとは、続けて何度もできませんね。私にとってもかなり高度な魔法なんです」

少女「…まあ、そうなんだろうね。まあ、でもそれなら、勇者くんの情報集めも同時にできるじゃないか。最初から言ってくれれば良かったのに」

天使「…移動範囲の問題で短期的に勇者さんを探すのは困難に思われるので」

鬼娘「折衷案ということッスね」

天使「ええ…。それでは、勇者さんと『破滅の欠片』の探索を同時に進めるということでいいでしょうか」

鬼娘「分かったッス!」

少女「うん。欲を言えば、あの娘がすぐにでも起きてくれるのが一番いいんだけど…」

鬼娘「…そんなに悪いんスか?」

天使「外傷は完治していますが、どうやら心に大きな傷を負っているのが原因みたいです」

少女「『竜の呪い』も影響してるみたいだね」

天使「…目覚めてくれると良いのですが。お父さんもかなり堪えていますし」

天使(女神さま、あの娘に貴女の御慈悲を)



けんし「…………」

師範「気持ち良さそうな寝顔だな」

師範「最近は本当に寝坊助になったな。いつも規則正しい生活をしていたから疲れたのか」

師範「お前は本当に出来た子だよ。母親もいないのに、弱音なんてまったく吐かないで、甘えもしないで」

師範「何でも卒なくこなすしな。本当に手のかからない子で…剣なんて俺をすぐに追い抜きやがって」

師範「きっと疲れたんだよな。ぐっすり眠れよ」

師範「…だから、ちゃんと起きろよ」


魔国・とある洞窟。

ポツ…ポツ…

勇者「……」ジュウウゥゥ

口惜しや…口惜しや…

勇者「……っ」

高潔な誇りを失いしは口惜しや…

勇者の目の前に瘴気の沼が広がっている!

勇者(体はもう『魔人の鎧』の瘴気でグジュグジュだ…何も躊躇うことはない)すたすた

ジュウウゥゥゥゥゥゥ!!!!

勇者(痛みは鎧が食っている。生命力は女神の力で補えている……いける……)グジュジュウゥゥ…


「…何者だ」

勇者「…一応、勇者だ。『血塗られた盾』、お前が必要だ」

盾「…呪われし装備を身に付け、あまつさえ我を欲っする者が勇者だと?」

勇者「だから一応といっただろう」

盾「何故、勇者が我を必要とする?」

勇者「魔王を倒すための力が必要なんだ」

盾「…呪われし装備を身に付けた者に魔王が倒せると?」

勇者「魔王を倒すためなら、どんな力でも構わない」

盾「…愚かな」

勇者「そうだな」

盾「……」

勇者「力を貸して欲しい」

盾「…いいだろう」

勇者「助かる」

盾「だが、対価が必要だ」

勇者「…対価?」

盾「そうだ」

勇者「一体、何だ?」

盾「魔王を倒したら、その後の生を我に寄越せ」

勇者「……」

盾「それが対価だ」

勇者「…もしも魔王を倒せなかった時は?」

盾「貴様の魂をいただく」

勇者「…………」

盾「止めるか?」

勇者「……いや……分かった」

盾「……契約成立だな」

勇者「…ああ」

勇者は『血塗られた盾』を手に入れた!

洞窟の外。

盾「久しぶりの外だな」

勇者「……」

盾「…それで。いきなり囲まれているな。八方を見渡す限りの魔物の群れだ」

勇者「この数とは……俺も随分と買い被られたものだな」

戦狼「『悪魔の角』を単身で進んできたとは…やるじゃないか勇者よ」

勇者「…勇者、か」

戦狼「隠そうとしても我輩の鼻は誤魔化せんぞ」

勇者「別に隠しているわけではないが…。犬っころだけあって鼻が利くんだな」

戦狼「我輩を侮辱するとはな。我輩は魔王軍大将、戦狼だぞ」

勇者「…それは四天王とどちらが上なんだか」

勇者の攻撃!

戦狼は巨大な大剣で防ぐ!

戦狼「速い……が!」

戦狼の『痛恨の一撃』!

しかし空中に浮かぶ血塗られた盾が防いだ!

戦狼「チイィ…ッ!」

勇者(こいつ、赤騎士以外の魔物とは比べ物にならないほど強いな…)

盾「弱いな、勇者」

勇者「ああ…。取り巻きから殺すことにするよ」

勇者の猛攻!

魔王軍の精鋭たちを斬り殺していく!

魔物の攻撃!
魔物の攻撃!
魔物の攻撃!

しかし血塗られた盾が全て防いでいる!


勇者の猛攻!
勇者の猛攻!
勇者の猛攻!
勇者の猛攻!

戦狼「怯むな! こいつさえ討ち取れば魔物の勝利! 魂を魔王様に捧げろ!」





勇者「……」

盾「やっと静かになったな」

勇者「ああ…」

盾「何日…いや、何週間たったろうか?」

勇者「覚えていないな…戦狼が撤退してからは記憶にない…」

勇者はその場に仰向けになった!

盾「魔物の肉を食らい、血の海と屍の山で眠る。まるで鬼だ」

勇者「俺の知ってる鬼は性格の悪いクソ野郎と、アホ可愛いやつだけだ…」うとうと

盾「眠いなら眠ればいい。我が危険を防いでやる」

勇者「それなら…甘えさせてもらう…」


勇者は深い眠りに落ちた!

うーん、長くても800レスくらいで終わるはず。


少女「…まだ、起きないか」

鬼娘「…ほんとにまた起きるッスよね?」

天使「…信じましょう」

少女「やれやれ、『破滅の欠片』はいくらか集まったんだけどね」

天使「前回ので9つめですか」

鬼娘「この前のも強かったッスね…」


師範「…おかえり」

天使「あ、ただいま帰りました」

師範「ご飯、作っておいたから食べるといい…」

少女「ありがとう」

鬼娘「ちゃ、ちゃんと休んでるッスか? 顔色悪いッスよ」

師範「…大丈夫だ」

鬼娘「どうにかならないッスかね? 可哀想ッス」

少女「…何とかしてあげたいけれど、僕たちには打つ手がないね」

鬼娘「お世話を手伝うので精一杯ッス…」

天使「私は、無力です…」

少女「君には言って欲しくないね」

鬼娘「おれが一番役立たずッス…」

天使「…勇者さんは、何度こういう気持ちを味わったのでしょう」

少女「君は本当に勇者くんが好きだね」

天使「そう、ですね」

少女「完落ち来ました」

鬼娘「ストーリー途中でデレデレだとヤンデレ化するのが定石ッス! 昔の偉人が言ってたッス!」

天使「なんなんですかっ」

どたどた

師範「大変だ! 村に巨大な魔物が現れた!」

天使「何ですって!?」

鬼娘「巨大…また破滅の力を取り込んだやつッスか?」

少女「その可能性が高そうだ」

師範「俺は足止めに行く! 娘を連れて逃げてくれ!」

天使「いえ、私たちが戦います。住民の皆さんを誘導して避難してください」

師範「そういう訳にはいかない!」

少女「僕たちはこんな見た目だけど、人間よりもずっと強いよ」

鬼娘「そうッス! さっさと逃げるッス!」

師範「この村は俺たちの手で守る必要があるんだ!」

少女「…はっきり言おう。君ごときでは、戦闘では役立たずだ。」

師範「わ、分かっている!」

少女「それなら、もっと自分にしかできないことをやってくれないか。村の人たちを安全に避難させるのも村を守ることだろう」

師範「し、しかし……」

鬼娘「…はあっ!」ドッ

鬼娘は拳圧で部屋の壁を砕いた!

鬼娘「これくらいできるッスか?」

師範「ムリムリムリムリ」

鬼娘「最低限、これくらいできないとほんと何の役にも立たないッス。おれも大して役に立ててないッスよ」

天使「そんなことはないと思いますけど…」

少女「色々と助けてもらってるよ」

鬼娘「ほ、ほんとッスか」ヘニャ

鬼娘「あっ、そ、そうじゃないッス! とにかく、戦闘に来られてもむしろ迷惑ッス。早く逃げるッス」

師範「…分かった。無力ですまない」

天使「……」




鬼娘「悪いことしちゃったッス」

少女「そんなことないさ。無駄な犠牲を出さないで済みそうだからね」

鬼娘「壁を壊しちゃったッス」

天使「そこですか」

少女「村が滅ぼされた壁どころじゃないから、しようがないよ」

鬼娘「っと、あれが魔物ッスね」

少女「竜か。厄介だね」

鬼娘「とりあえず…どりゃあっ!」

鬼娘は足元にあった木桶を勢いよく投げつけた!

竜?「……!」

少女「こちらに気付いたみたいだね」

天使「不意打ちで良かったと思うのですが」

鬼娘「あ、ごめんなさいッス」

天使「もう…」

天使は『電撃魔法・極』を放った!

竜?には当たらなかった!

天使「あれ?」

少女「おや、見事な回避だね」

天使「今度こそ!」

天使は『火炎魔法・極』を放った!
天使は『氷結魔法・極』を放った!

竜?には当たらなかった!
竜?には当たらなかった!

天使「ああ、もう…!」

鬼娘「ひらひら躱すッスねー」

少女「まるで、こちらが何をするかはじめから分かってるみたいだね。心の内でも読んでるんじゃないかい?」

天使「戦闘中なんですから、あなたたちも真面目にしてください!」

鬼娘「えー、だって自分が攻撃するには遠いッス」

少女「それに、どうも戦意が無さそうに見えるからね」



竜?は下降してきた!

天使「来ましたよ!」

しかし竜?は姿を忽然と消した!

天使「あれ?」


「あんな強力な魔法を撃ったら危ないだろ」

「竜の姿でしたら当然じゃありませんの。勇者さまに強くなったところを見せたいからって人目に着くところでも竜化するなんて」

「うるさいなあ…」

「村の人たちも心底怯えてしまっていますわよ、もう……きゃっ!」バタッ

「また何もないところでこけてるし…」

「う、うるさいですわ!」



少女「…女の子?」


天使「…エルフさん?」

エルフ「…あの時の天使か!?」

鬼娘「あ、青魔導師さま!?」

青魔「あら、鬼娘さんですの?お久しぶりですわ」

少女「え、なにみんな知り合いなのかい?」

天使「以前、協力してもらいました」

エルフ「命の恩人だ」

鬼娘「元直属の上司ッス」

青魔「昔の部下ですわ」

少女「へえ…」


師範の家。

師範「魔物を倒してくれて本当にありがとう。寝たきりの娘がいるのに家無しにならなくて良かった」

少女「当然のことをしたまでだよ」キリッ

エルフ「……」

青魔「貴女の不始末を穏便に済ませようとしてるのですから堪えなさいな」

エルフ「分かってるよ。だから黙ってるんだろ」

師範「ところで、そちらの娘さんたちは?」

青魔「私は勇者さまの婚約者ですわ」ニコッ

少女「えっ」

天使「なんですって!?」

鬼娘「青魔導師さまが、ご主人の婚約者…?」

エルフ「嘘だからな」

少女「勇者くんは、本当に女誑しだね…」

青魔「貴女も誑かされたのですわね」クス

少女「…さあ、どうだろうね?」



エルフ「そいつ、サトリだから隠し事はできないぞ」

少女「えっ」

青魔「大体の生き物の心は読めますわよ」

少女「…さっきみたいにドジを踏むのも油断させるためかい。抜け目ないね」

エルフ「残念だが、それは素だ」

青魔「うう…このやり取りは嫌いですわ」



エルフ「…ところで、あのスケベは?」

少女「勇者くんならここにいないよ」

鬼娘「スケベで通じるって可愛そうッス…」

青魔「どういうことですの?」

生命の審判は二人に今までの顛末を話した!


青魔「勇者さまのお姉さまが…」

エルフ「…まったく、世話の焼けるやつだな」

天使「魔国への道沿いに探してはいるのですが、情報がなくて…」

エルフ「そういえば、北の国で『魔人の鎧』の封印が解かれたらしいな」

天使「魔人の鎧?」

青魔「『呪われた装備』の一つですわ。聞いたところによると『邪悪なイヤリング』、『闇の剣』、『魔人の鎧』の三つですわ」

少女「ふむ。もしも、封印を解いたのが勇者くんなら、全て手に入れたことになるね」

天使「北の国、ですか。『破滅の欠片』を手に入れただけで、あまり情報収集はしませんでしたね」

鬼娘「それじゃあ、ご主人は今度こそ魔国に乗り込もうとしてるッスか」

エルフ「まさか、そんなことになってるとは思わなかった…」

青魔「そうですわね」

天使「ところで、どうやってここに来たのですか?」

エルフ「新聞を見たんだ。そして、東城で、魔物になってる王さまを助けたらこの村に国の英雄がいることを教えてもらったんだ」

青魔「それで、もしかしたらということでここまで来たのですわ」


少女「ちょっと待った。魔物になった王を治したのかい?」

青魔「私は魔物の使う魔法の類に明るいのですわ」

エルフ「そういうこと」

鬼娘「青魔導師さま、凄いッス…」

青魔「うふふ、それ程でも」

鬼娘「いつもドジってばかりのダメ上司とか思っててごめんなさいッス!」

青魔「…別にいいですわ…知っていましたし…」しょぼん…

鬼娘「あ、で、でも、本当に見直したッスよ!」

青魔「了解しましたから…もうやめてくださいませ…」どよん…

少女「…はあ、愉快な仲間たちだね」

エルフ「お前もだろ」

少女「君たちには敵わないよ」

天使「そんなことないですよね?」

鬼娘「そうッスね」

少女「……」



アハハッ

けんし「…………」

師範「賑やかだな…お前も加われれば良いのにな…」

けんし「…………」

エルフ「竜の呪いか。しかも、捨て身でかけたのか? 随分と強力なようだが」

師範「うおっ!?」

青魔「驚かせてしまって申し訳ありませんわ」

師範「いや…。あ、こいつは俺の娘でな」

エルフ「知ってるさ。こいつに脅迫されたことがあるからな」

師範「え?」

エルフはけんしの頭に手を置いた!

けんしの肌に紅い紋様が浮かんだ!

師範「ぬおっ…」

エルフ「大分進行してるな。早ければ、もって二日か」

師範「そ、そんな…! どうにかできないのか!?」

エルフ「呪いは解けるかもしれないが、必ず助かる保証はない」

エルフ(むしろ、ダメな結果になる可能性の方が高いみたい)

師範「…た、頼む! 助かる見込みが少しでもあるなら…!」ザッ

エルフ「…土下座されても困る。…青魔、手伝ってくれ」

青魔「何をすればよろしいんですの?」

エルフ「少し、心の中に潜り込んで、励ましてきてくれ。気力は大事だ」

青魔「難しいのに簡単に言わないでくださいな」

エルフ「出来るんだろ?」

青魔「ええ、もちろん…っと」

青魔導師はけんしの心の中に潜り込んだ!


青魔「…………」

師範「先ほどからピクリともしないが、大丈夫なのか…?」

エルフ「潜ってる間、体は無防備だからな。いくら悪戯してもばれない」つんつん

青魔「…………」

エルフ「……相変わらず無駄にデカい」ぽよぽよ

師範「ちょっ…」

青魔「おやめなさい」ごつっ

エルフ「あだっ、戻ってきてたか」

青魔「疲れましたわ…」

エルフ「どうだった?」

青魔「上手くいきましたわ。殺されかけましたけれど」

エルフ「何があった?」

青魔「黙っておくべきなのでしょうが…やはり、基本は勇者さまのことですわ」

エルフ「…まあ、だろうな」

青魔「簡単に言えば、勇者さまが自分より姉ばかり優先するからいじけてしまったのですね」

エルフ「…あいつ、本当に重度のシスコンだったんだな」

青魔「唯一の肉親ならば、それも当然ですわよ。私はむしろ好感に思いますわ。私が勇者さまに愛想を尽かすわけがないのですけれどね」

エルフ「ああ、そう…」

青魔「あなたも、ですけどね」

エルフ「あー、もうっ! うるさいっ!」

師範「あのー…娘は?」

青魔「煽って焚き付けましたわ」

エルフ「ん、この女ならその方がいいかもな。さてと…」

エルフは『竜化魔法』を唱えた!

エルフ「ぐっ、抑エメにシテ…」

エルフは部分的に竜の姿になる!

師範「ぬあっ!?」

エルフ「サて、上手クいケヨッ!」

『ドラコラム』が好きです。カッコいいよね。

勇者を力づくで止めようとして切られた→昏睡って感じじゃないか

>>635
大体あってる。こっからかなり展開早いから更に分かりにくくなるかも。



魔王城。

側近「勇者が城近くまで来ましたか」

戦狼「…魔王軍は壊滅的状態だ。師団は全て壊滅し、残兵も殺されている」

側近「狂爺の研究はもう少し時間がかかります。足止めが必要なのですが」

戦狼「…ちょっとやそっと斬りつけても死なない上、盾による護りで致命傷を与えられない」

側近「頑強なのは女神の力によるものでしょう。呪われし装備を使う勇者なぞかつての記録にもありませんが」

戦狼「…マズいな。決して強くはないが、死なない。ゆっくりだが確実に迫ってくる」

側近「やはりバケモノですね」

戦狼「残っている強者は、我輩と…まあ、地獄闘士くらいのものだ」

側近「背に腹はかえられませんね…いざという時は集めていた『破滅の欠片』を幾つか使いましょう」

戦狼「破滅の神の力――魔王さまの力を使えるとは、身に余る光栄だが…」


「その必要はないわ」


側近「…!」

「ここは任せてちょうだい」

戦狼「し、しかし、万一のことがありましたら…」

「だからと言って、アナタたちが勝てるわけでもないでしょう?」

側近「…そうですね」

「それに…あの子に会いたいわ」





勇者「あれが、魔王城か」

盾「距離はそこまでではなかったが、邪魔が多くて手こずったな」

勇者「ああ。…あそこに、魔王がいるのか」

盾「正面から行くか?」

勇者「…いや、罠があるかもしれない。正面以外にも入り口はあるはずだ」


「その心配はもうしなくていいわよ」


盾「…!」

勇者「………………」

「久しぶりね」

勇者「……なんで」


勇者姉?「会えて嬉しいわ」


勇者「…姉ちゃん?」

勇者姉?「そうよ」にこっ

勇者「…死んだはずじゃ」

勇者姉?「生きてるわよ、こうしてね」

勇者「……そんな、どうして」

勇者姉?「あなたがいなくなった後、しばらくして兵隊さんに連れていかれてね。島流しにあったんだけど、そこで他の人たちと一緒に、魔物に浚われたの。それで…」

勇者「そして、魔物のクソ野郎に殺されたんじゃないのかよ!?」

勇者姉?「そんな汚い言葉を遣わないでちょうだい。…他の人は実験の材料となって、あなたの言う通り、亡くなったわ。先にいた人も、後に来た人も。ただ、私は別だった」

勇者「……?」

勇者姉?「私には特別な宿世があったのよ。…アンタは勇者になったんでしょ?」

勇者「…ああ」

勇者姉?「あなたは勇者になったのは偶然? それとも必然?」

勇者「…偶然だろ。俺にそんな資質があるとは思えない」

勇者姉?「本当に? でも、こうしてあなたは魔王の近くまで来て、魔王を倒そうとしてるじゃない」

勇者「それは、運が良かったから…それに、女神から能力を授かったから…」

勇者姉?「本当にアンタはたまたまの運だけでここまで来たと思ってるの? 誰かによって導かれて来たとは思わないの?」

勇者「……」

勇者姉?「私が生きてここに立っているのは定められた運命が歪んだからよ。こうして――」


勇者姉?「魔王になったのもね」


勇者「…何言ってるんだ」

勇者姉?「どうして、私が生きてるか教えてあげるわ。魂だけの存在となっていた魔王の器になったからよ」

勇者「…は?」

勇者姉?「魔王はかつての勇者と結託して世界に細工をしたの。戦いを演じて、敗北。しかし、魂だけは残るようにね」

勇者姉?「魔王は新しい器となる肉体を造らせていた。しかし、なかなか上手くいかない。魂が定着しない」

勇者姉?「魔王というのは特別な因果を持っているの。勇者と同じようにね。そして、私は勇者であるアンタの姉だから少しは因果があった」

勇者姉?「私は魔王の仮初めの器に過ぎないのよ。だから意識も記憶もアンタのよく知ってる私のものなの。もちろん魔王としての記憶と知識も断片的にあるけれど」

勇者「…嘘だろ、姉ちゃん」

盾「確かに尋常ではない気を感じる。勇者、奴の言葉は真実だと思っていいぞ」

勇者「……」

勇者姉?「アンタは勇者。そして、この歪んでしまった世界の運命を修正する使命もある。事の発端である魔王を倒すことによってね」

勇者「……」


勇者姉?「…ねえ、一緒に運命を壊しましょう。魔王と勇者、相容れない存在、そういった決まり事を私は壊したいの」

勇者「よく分からない…」

勇者姉?「共にいきましょう。そして新しい時代を切り拓くの」

勇者「……」

盾「勇者、どうするのだ?」

勇者姉?「さあ、私と世界を変えましょう」


はい
いいえ


勇者「………………」






勇者「いいえ」





勇者姉?「……」

勇者「…姉ちゃん、ごめんな」

勇者姉?「…………」

勇者「…きっと、もうほんとの姉ちゃんは死んだんだな」

勇者姉?「そんなことないわよ。私はここにいる」

勇者「もうほんとの姉ちゃんはいないんだよ」

勇者姉?「アンタは私じゃないのに、そんなこと分かるわけないでしょう? 私が本当はどんな人間かなんて知らないくせに」

勇者「…たしかに俺は分からないことばかりだよ。自分のことさえよく分かってない」

勇者「平凡なりにも、勇者らしく振舞えていたと思ってたし、世界を魔物から救う使命感を抱いていたつもりだった」

勇者「でも、姉ちゃんが魔物に浚われたと知ってからは、使命感なんて嘘っぱちだって気付いちゃったんだよ」

勇者「ただ、憎らしくて、悲しくて、自分の力の無さ、愚かさ、どうしてあの時その事を考えられなかったのか、なんてずっと考えるだけさ」

勇者「俺を勇者と慕ってくれるみんなに会わせる顔もなくて、そんな自分をそれでも止めてくれる大切な人を傷付けて…もう、どうしようもないヤツなんだ、俺は」

勇者「それでも…それでも、やっぱり俺は勇者だ」

勇者「姉ちゃんが魔王だって確かに認めてしまえるんだよ」

勇者「そして、姉ちゃんが苦しんでるのが分かるんだ。魔王によって魂を壊されてもなお、生かされ続けている姉ちゃんの身体が」

勇者姉?「そんなことないわ。アンタの言葉は論旨のすり替えよ」

勇者「…本当の姉ちゃんなんて分からないよ。正直、言葉でどう繕ったって分からないよ」

勇者姉?「それなら…」

勇者「でも、俺は今の姉ちゃんを受け入れるわけにはいかないんだ。勇者としても、弟としても」

勇者姉?「…なるほどね。ここにおいて、勇者と魔王の交渉は決裂。決戦に移るのね」

勇者「……」

勇者姉?「くっくっくっ、騙されなかったな、勇者。貴様の姉のフリをして、懐柔してやろうと思ったんだがなあ!」

勇者「やめろよ……姉ちゃん」

勇者姉?「演技だと言ったろ、バカめ」

勇者「それじゃあ…どうして…」


勇者「どうして泣いてるんだよ…」

勇者姉?「……っ」つうっ…

勇者「……俺はまた間違えたみたいだな。姉ちゃんは魔王になっても姉ちゃんだ」

勇者「いつだって俺の前じゃバレバレなのに強がって、弱虫な俺を励ましてくれて…」

勇者「今だって、バレバレの偽物のフリして、俺に辛い思いをさせないようにして…」

勇者「もういいんだ。姉ちゃんからは、もう、たくさん大切なものを貰ったよ」

勇者姉?「……」

勇者「いつもご飯を作ってくれてありがとな」

勇者姉?「…アンタに美味しいって笑ってほしくて頑張ってたのよ」

勇者「いつも布団や服を洗ってくれてありがとな」

勇者姉?「…アンタが稽古を頑張るのを応援したかったのよ」

勇者「…俺を育ててくれて、そばにいてくれてありがとな」

勇者姉?「アンタがいなきゃ、私は生きたいなんて思えなかったわよ」

勇者「…俺の姉ちゃんでいてくれてありがとな」

勇者姉?「私の弟でいてくれてありがとう」

勇者姉?「不思議よ…私、アンタを敵と認識しているの」ぽろぽろ…

勇者姉?「アンタのことを愛おしく思っているのに、アンタとのたくさんの思い出があるのに…それでも、完全な敵だと思ってしまうの」

勇者「それは、俺も同じだよ」

勇者姉?「ふふ、姉弟愛は勇者と魔王の因縁には勝てないのね」

勇者「比べることじゃないんだよ。もしかしたら、ちょっと壮大な姉弟ゲンカかもしれない」

勇者姉?「それは素敵な発想ね」


勇者「…………」

勇者姉?「…………」



勇者「魔王、勇者として、おまえを倒すよ」


魔王「勇者、魔王として、アンタを倒すわ」



勇者と魔王の戦いが始まった!

こっから時系列前後したりするけど、あまり気にしないでください。
さっさと終わらせたい。

東国・故郷の村


剣士「…迷惑かけたわね」

少女「そんなことないさ。戻れて良かったね」

鬼娘「こ、こんな美人さんだったンスね…」

天使「無事に戻って本当に良かったです」

剣士「ええ……ありがと」

青魔「出来ることをしたまでですわ」にこ

エルフ「…感謝してるなら、もう前みたいのはやめろよ」

剣士「…何のことかしら?」

エルフ「分かってるくせに…」

青魔(…それが本当に何も覚えて何もいないようですわね)

師範「……」

剣士「父さん…その…」

師範「心配かけおって…のこのバカ娘め」

剣士「ええ…」

師範「ほんどに…良がっだ…」ボロボロ

剣士「ほんとに、心配かけてごめんなさい……」

少女「少し二人きりにしてあげようか」ぼそっ

天使「そうですね」ぼそっ





少女「どこで『竜化魔法』なんて修得したんだい?」

エルフ「海の国だ。長いこと修行させてもらった」

鬼娘「どこっスか?」

エルフ「世界で最も神聖な場所だ。世界が魔物によって滅ぼされた時でも、唯一、生命が存続できると言われてる」

青魔「海竜王さまが統治しておられるのですわ」

少女「海竜王…女神の使徒だね。僕の同業みたいたものだ」

エルフ「お前が海竜王さまと…」フッ

少女「あー、その感じなんかエルフっぽい」

鬼娘「高飛車な感じッスね!」

少女「無理やり屈服されて、性奴隷にされる感じのね」

鬼娘「んほおお、ッスね!」

エルフ「ケンカ売ってんのか」

天使「落ち着いてください。お二人もお止めください」

青魔「海の国は時の流れがこちらよりもかなり早いですから、あっという間に数年経ちましたわ…」

天使「それは、まあ…」

鬼娘「女にとっては致命的ッスね…」

青魔「そうなのです…」

エルフ「おれたちもサトリも魔物も、普通の人間に比べたらずっと長生きするんだから大した問題じゃないだろ」






剣士「さて、あのシスコンを探す旅に出るわよ。まずは敵の本拠地、魔国ね」

師範「えっ」

剣士「傷モノにされた責任を取らせなきゃ」

師範「き、傷モノだと!?」ガタッ

少女「いや、刀傷的な意味だと思うよ。…多分」


エルフ「もう少し安静にしていた方がいいぞ」

剣士「もう大丈夫よ。アナタたち全員と同時に戦っても負ける気がしないわ」ニコ

鬼娘「…勝てない気がするッス」

剣士「…まあ、恩人を斬りつけるほど人でなしじゃないわよ」

師範「…本当に行くのか?」

剣士「…親不孝でごめんなさい。縁を切られても文句は言えないわ」

師範「…バカ。お前がいるだけで最高の親孝行だよ。お前は俺の大切な娘だよ。本当に大切な家族だ」

剣士「……」

師範「…こんなこと、いつもなら言わないのにな。俺も年をとった」

剣士「…クサいこと言ったわね」

師範「…風呂には毎日入ってるぞ!」

剣士「…もうっ」にこっ


剣士(……アタシは、こんなにも愛されていることに、気づいていなかったのね)

エルフ「あの変態を探すのは当然として、その前にやることがある」

天使「何ですか?」

エルフ「まずは『破滅の欠片』を安全なところに預けるべきだ。あれは魔王の力そのものだしな」

少女「…確かに敵の本拠地に敵の力の源を持っていくわけにも行かないね」

鬼娘「でも安全な場所ってどこッスか?」

青魔「海の国ですわね。私たちが集めたものも海の国の聖域に安置しています」

剣士「…分かったわよ。その海の国とやらにはどうやって行くの?」

エルフ「北国からさらに北西に行けば入り口の小島に行ける」

天使「北国の北端までは、『転移魔法』で行けると思います」

少女「うっ…また剣の山かい。あそこ険しいんだよね…」

エルフ「『竜化魔法』で飛んでいけばいいだろ」

少女「お、それいい。君、最高だね」

鬼娘「途中で落ちたりはしないッスよね…?」

エルフ「問題ない」

青魔「…今まで何度か落とされかけましたわ」

天使「え……」

剣士「信用に置けないわね」

青魔「本当ですわ」

エルフ「いや、お前が悪い。例えば最初のとき――」


~~~~~~~~~~

青魔「竜の背に乗るだなんて初めてですわ。黄竜は乗せようとしませんでしたしね」

竜?「逆鱗ニハ触レルナヨ」

青魔「逆鱗…? あ、これですの?」ガシッ

竜?「ッッッ!?」グオオッ

青魔「きゃあっ! 暴れないでくださいませ!」

~~~~~~~~~~

エルフ「どうして触るなと言った直後に思いっきり触るんだよ!」

青魔「あ、あれはたまたまなんと言ったか分からなくて、つい……」

エルフ「一回だけじゃなくて何度もあるだろうが!」

鬼娘「うわあ…ドジっ子特性はなおってないんスね」

エルフ「こいつには苦労させられたよ、まったく」

青魔「むっ…! それを言うなら貴女だって!」


~~~~~~~~~~

竜?「ムム? 巨大ナ怪鳥ノ魔物怪鳥ガ……コチラニ気付イタヨウダナ」

青魔「お任せくださいませ!」

青魔導師は『針一万本』を放った!

無数の大きな針が怪鳥に突き刺さる!

青魔「怒りましたわね。真っ直ぐ来ますので左に避けてくださいませ」

怪鳥は突進してきた!

竜?「イヤ、イケル」

青魔「へっ!?」

竜?は怪鳥を受け止めた!
ぶつかった衝撃で青魔導師は空中に投げだされた!

青魔「きゃあああぁぁぁぁぁー!」

竜?「アッ」

~~~~~~~~~~

青魔「危うく殺されかけましたわ! 竜になると血の気が多くなるのはやめてくださいませ!」

天使「それは配慮が足りませんね」

エルフ「…そんなことあったか?」ふいっ

青魔「覚えているのに誤魔化さないでくださいませ!」

少女「遥か上空からの落下はぞっとするね」

鬼娘「うう…怖いッス」

剣士「乗ってみれば危険かどうか分かるわよ」

エルフ「そうだそうだ」

天使「多少の危険は仕方ありませんよ。それより、竜に乗るなんて初めてで楽しみです!」

魔国。魔王城。

側近「……」

戦狼「どちらが勝つか」

側近「魔王様が負けるわけがありません。今や魔王様は歴代で最強です」

戦狼「『破滅の欠片』か。本来は部分的に使うことが不可能なはずの破滅の力を随意に使えるからな」

側近「ええ、魔王様は己の力でお掴みになった覇道をもはや盤石のものになさっている」

戦狼「その魔王様を倒せる唯一の可能性とも言える勇者が死ねば、我らの勝利だ」

側近「…ふくく、そうなれば、我々の野望は殆んど達成されたようなものです」

戦狼「赤騎士――先代勇者が遺したものが、魔王様の覇道を完成させる。何とも皮肉だ」

側近「これも魔王様の御運命なのでしょう」

戦狼「御本人がお耳にすれば、お怒りになるぞ。あの御方は御宿命をお乗り越えなさるようお努めなさっているのだからな」

側近「…そうですね。しかし、御魂は魔王様でも肉体はか弱い人間であり勇者の姉…万一がないとも言え……」

魔王「ただいま…」

側近「…ふくく、言えましたね」


戦狼「ついに勇者が死んだか…」

側近「ふくく、魔王様の時代の始まりですね」

魔王「あの子は死んでないわよ」

側近「…はい?」

魔王「瀕死にまでは追い込んだのよ。呪われし装備は『盾』と『剣』以外は全て砕き、剣はこの通り私が奪った」ひょいっ

パシッ

戦狼「中々の一振りですな。……それで、勇者は?」

魔王「先代勇者に邪魔をされてね。止めを差す前に逃げられたわ。あ、その剣あげるわ」

側近「……くっ、赤騎士め」

魔王「それに、この体も思うように動かなくてね。ほら、やっぱり大切な弟だから」

戦狼「…はあ」

魔王「ああ、魔物は樹から産まれてくるから家族ってものがよく分からないのかな。家族は良いものよ」

戦狼「……」

側近「……」

魔王「とにかく、これくらい心配の種がないと逆に心配じゃない。だからこれでいいの」

側近「……」

戦狼「何はともあれ、ご無事なのが何よりです」

魔王「…それが、そうでもないのよね」

シュウウウゥゥ……

側近「お、御身体が……!?」

魔王「因果を持つとは言っても、か弱い人間の肉体では莫大な破滅の力を扱いきれないみたい。今すぐ朽ちるような心配はないけど、もうこの体で破滅の力は使えないわ」

戦狼「そんな…」


魔王「狂爺は?」

側近「今も研究室に籠りきりです」

魔王「完全な体はいつできるの?」

側近「長年の問題だった因果が、その体でかなり解消されたようなので、もう少しかと」

魔王「そう…早く造ってね。私はもう長くないから」

側近「……」

魔王「私は休んでいるわ」



魔王「…ふふ、あの子、成長したのね。この喜びは『魔王』ではなくて、私のもの…それは間違いないわ」

魔王「――最後に会えて良かった」


北国・剣の山

エルフ「そういえば、この辺りに恩人がいるんだ」

青魔「以前に助けていただいた魔物ですわね?」

エルフ「ああ。この近くに小屋があって、しばらく勇者と一緒に世話になった」

剣士「それは挨拶に行かなければいけないわね。将来の妻として」

天使「はい?」

青魔「あら、それは聞き捨てなしませんわね。それは私ですわ」

剣士「勇者はアタシを選ぶわよ」

青魔「大した自信ですわね」

剣士「他の選択肢を排除すればいい話だもの」にこっ

鬼娘「ひいっ!?」

エルフ「二人ともやめろって」

天使「そうですよ」


青魔「…いいえ。この際ですからはっきりさせましょう。貴女方は勇者さまを慕っているのかしら?」

剣士「愛してるわよ。殺したいくらいにね」

天使「そんなこと、絶対にさせませんよ」

剣士「…もうしないわよ、多分。それくらい愛してるってこと」

エルフ「歪んでるな…」

天使「……私だって、勇者さんをお慕いしてます。勇者さんは生命の恩人ですから」

青魔「生命の恩人だから好きというのは男女の愛とは違いますわ。私は異性として勇者さまをお慕いしております」

剣士「当然でしょ」

天使「……私もです」

エルフ「恥ずかしい奴らだな…」

剣士「アナタは?」

エルフ「お、おれは別に!」

青魔「私たちは二人とも勇者さまに想いを告げていますわ」

剣士・天使「!」

エルフ「い、言うなよぉ…!」かあっ

少女「おやおや…」

鬼娘「ほえー」

エルフ「お、お前たちはどうなんだよっ」

鬼娘「自分はご主人のこと大好きッスよ?」

天使「…あなたは何か違う気がします」

鬼娘「んー、そうッスかね? ご主人の子種ほしいッスよ?」

少女「げほっ…! 急に何を言うんだ君は」

鬼娘「そういう種族ッス」


少女「魔物は本来、混沌の樹から産まれるから生殖本能や機能はないと思っていたけど…」

鬼娘「わりと多様ッスよ。特に鬼はニンゲンと変わらないとこも多いッス」

青魔「鬼娘…貴女と敵対するとは思いもしませんだしたわ」

鬼娘「ふぇ? 自分は別にご主人を愛したいだけで愛されなくてもいいッス。自分が愛したいだけッス」

少女「ヒ、ヒロイン…」

天使「で、ですが愛し愛されることが一番の幸せですよ」

鬼娘「んー、自分にとってはご主人が幸せであることと、ご主人と自分の子どもを育てることが一番の幸せッス」

剣士「そんなことにはさせないわよ。…どんなことをしてでも」

少女「いちいち怖いね…」

エルフ「浮気は許さない」

少女「現状、これだけ想いを寄せられていると、難しいんじゃないかい?」ハハハ…

青魔「あとは、貴女だけですわ。生命の審判さま」

少女「さあ、どうだろうね。サトリなら心でも読んでごらんよ」

青魔「…くっ、上手に隠蔽なさりますわね」

少女「無駄に長生きしてないさ」

剣士「それでどうなの?」ずいっ

天使「どうなんですか?」ずいっ

鬼娘「どうなんスか?」

エルフ「……」じーっ

少女「いや、まあ僕は勇者くんとそんなに深い関係じゃないしね」

青魔「ですが、この前は、動揺していましたわね」

少女「…まあ、脈アリかナシかといえばアリってところだよ。君たちに混じってあーだこーだ言うほどではないってことさ」

天使「好意があるのに、すごすごと諦めるんですか!?」

少女「いや、だから…」

エルフ「…これ以上は勇者がいないと話が進まないだろ」

青魔「…そうですわね」

鬼娘「ご主人、どこにいるッスかね?」

剣士「世界中を虱潰しに探すだけよ。…地の果てまでもね」

少女「ヤンデレだね…」





天使「ここが、その小屋ですか?」

エルフ「ああ」

少女「誰もいないみたいだね」

剣士「相当、留守にしてるわね。換気してないから空気がこもってるわ」

エルフ「…礼を言いたかったが、いないならしょうがないな」

青魔「それでは、海の国に向かいましょう」

海の国・近海

青魔「もうすぐですわね」

鬼娘「風が気持ちいいッスね! エルフさんすごいッス!」

竜?「グルルル…」ドヤッ

天使「……」

少女「おや、顔色が悪いね?」

天使「ちょっと、気持ち悪くて…」

青魔「酔ってしまわれたようですわね」

剣士「大丈夫?」

天使「ダメかもしれません……うぷっ」

鬼娘「あっ」


竜?「ギャアアアア!! 背中デ吐クナアアァァ!」


海の国・入口。

鬼娘「心配してたよりもあっさり着いたッスね」

少女「そうだね」

エルフ「…ひどい目にあった」しくしく…

天使「す、すいません…うっ」

青魔「あらあら」さすさすっ

剣士「こんな小さい島が海の国なの?」

青魔「ここは数ある入り口の一つですわ。この下に海の国はありますの」

エルフ「そういうこと」

エルフは魔法の合言葉を唱えた!

地鳴りと共に小さな穴が開いた!

天使「これが…入り口ですか?」

エルフ「ああ。よっと」ぴょん

エルフは穴に飛び込んだ!

鬼娘「自分も行ってみるッス!」たっ

剣士「っと」ひょいっ

少女「みんな躊躇いなく行くね…それじゃあ次は僕が行くよ」

青魔「それならお先にどうぞ」すたすた…

つるんっ

青魔「きゃっ!?」

青魔導師は足を滑らせて仰向けに転びそうになる!

少女「うわ!?」どんっ

青魔導師は後ろから生命の審判にぶつかった!

少女「にゃ、にゃあああぁぁぁぁぁぁ……!」

生命の審判は真っ逆さまに落ちていった!

青魔「あらあら…」

天使「…だ、大丈夫でしょうか?」

青魔「問題ないですわよ…おそらくですけれど…」

海の国。


剣士「不思議ね。大きな泡の中に国があるなんて」

天使「青く透き通った水や、色彩豊かな海草が美しいですね」

鬼娘「ほえー、海の中なのに明るいッス」

青魔「海竜王さまのおかげですわ」

少女「へー…」げんなりっ

エルフ「海竜王さまは自室にいられるそうだ」

人魚「やっほー、ひっさしぶり!」

エルフ「人魚か」

剣士「お伽話や絵本でしか見たことないけど…実在したのね」

人魚「知ってるー? 最近、人間が漂流してきたらしいよん」

青魔「そこまで珍しいことじゃありませんわよね?」

人魚「まあ、難破した漁師が流れ着くのはねー。でも今回は漁師じゃないのよ! なんと勇者だって!」

六人「!!」

剣士「どこにいるの! ねえ、どこ!? 死にたくなければ、はやく答えなさい!!」ガシッ

人魚「ひっ…!?」

天使「お、落ち着いてください! 殺すのは勇者さまを見つけてからでも間に合います!」

人魚「ふぇっ!?」

少女「君も落ち着きなよ」

青魔「どこにいるんですの!?」

人魚「あ、青ちゃん、こ、怖いよ」

剣士「無駄口叩かないで早く言いなさい」イライラ

人魚「か、海竜王さまのお部屋に行けば分かるんじゃないの?」

エルフ「…っ」ダッ

鬼娘「はやっ!?」

少女「…彼はほんと愛されてるね。僕も安心したけどさ」

海の国・海竜王の間。

剣士「ここね!」

エルフ「ああ!」

バンッ

扉が勢いよく開かれた!


勇者「うおっ!?」


天使「勇者さ……」

勇者「て、天使さん…」

剣士「……」

勇者「げっ、先輩…!?」

エルフ「……」

青魔「……」

少女「……」

鬼娘「……」

剣士「……言いたいことは山ほどあるわ。怒りたいことも謝りたいことも」

勇者「……」

剣士「……でもね…先に言うことがあるわ」

剣士「――なんで女と同じベッドで眠ってるのよ!!」

海竜王「うるさいのう…」

青魔「か、海竜王さま…これは…」ぷるぷる…

ダークエルフ「説明していたたげますよね…?」ズズ…

鬼娘「わっ!? 黒くなってるッス!?」

天使「…………」ぶつぶつ…

天使は『全体即死魔法』を唱えている!

勇者「と、取り敢えず、落ち着いてくれ!」

海竜王「ふふ、勇者、昨日は激しかったな。妾も年甲斐もなく溺れてしまったぞ」

勇者「いや、それはアンタが…!」

少女「……誰でもいいんだね」ボソッ

鬼娘「ご主人、英雄色を好むッスね!」

剣士「取り敢えず、一回男根斬り落としましょ? ねえ、そうしましょ?」スラッ

ダークエルフ「……賛成ね」

勇者「ちょっ…」

青魔「……はあ。皆さん、落ち着きましょうか」

剣士「斬り落としてからね」

勇者「ひいっ…!」

青魔「貴女は少し性急過ぎますわ。事情を聞いてからでも良いのではなくて?」

剣士「……分かったわよ」





少女「つまり、海竜王は、勇者くんを逆レイプしたけれど、それは勇者くんの傷ついた体を癒すためだと?」

海竜王「うむ。妾の好みだったから欲情したのが大部分であるが」

剣士「…遺言はあるかしら?」

海竜王「美味であった。ご馳走さま」

剣士「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」ギリギリッ

鬼娘「簡単に剣を振っちゃ危ないッス!」ガシッ

エルフ「落ち着け! こんなんでも偉大な存在だから! こんなんでも!」ググ…

青魔「そ、そうですわ! こんなんでも!」ググ…

海竜王「そんな、ひどい…」

天使「……ふふふ、あはは」

少女(天使くんも相当キテるみたいだけど…)


剣士「あんたも簡単に犯されてるんじゃないわよ!」

勇者「ご、ごめんなさい?」

剣士「もう許せないわ。アナタ、ここでアタシとしなさい」

勇者「えっ」

剣士「もうこれ以上アナタが寝取られるのはイヤなの。ここで、アナタが誰のものかハッキリさせましょう?」

勇者「いや、ちょっと」

剣士「大丈夫よ、痛くしないから。先っぽだけだから」

勇者「それ、女の台詞じゃないから!」

海竜王「嫌がる者に強要するのは褒められたものではないの」

勇者「お前が言うなあ!」

勇者は魔国での経緯を話した!(あと服を着た)

剣士「お姉さんが…」

鬼娘「ヒドいッス…」

エルフ「魔物め。どこまでもコケにして…」

勇者「俺は、魔王を倒せなかったし、姉ちゃんを救えなかった」

天使「勇者さん…」

青魔「あまり自分を責めないでくださいませ」

勇者「…ああ、ありがとう」

少女「……しかし、完全な肉体か。早く手を打った方がいいね」

勇者「ああ。……だが、女神の力を使い過ぎたせいか、力が使えなくなってしまったんだ」

天使「何ですって!?」

剣士「あんな力ならなくてもいいじゃない」

勇者「いや、魔王に止めを刺せるのは勇者だけだ。姉ちゃんは…魔王は強い。勝つためには最低でも女神の力が必要なんだ」

海竜王「そうだの。今のままでは魔王を倒すことはできん」

剣士「…はあ、上手くいかないことばかりね」






少女「ここは良いところだね。夜でも光る魚たちでとても幻想的だ」

海竜王「そうだろう。…他の者たちは?」

少女「勇者くんとイチャイチしてるさ」

海竜王「そうか」

少女「…『破滅の欠片』は?」

海竜王「創造の女神の力宿る聖域に安置した。もう彼の女神と妾以外に手にすることはできん」

少女「……」

海竜王「妾を疑うたか? 心配は要らぬ、妾は生命の守護者ぞ」

少女「…そうだね。性分だから許してほしい」

海竜王「気にするでない。…しかしこれは、妾の領分を越えているが…そうも言ってられんようだの」

少女「うん。今回の魔王はどうもおかしい。世界の理を壊そうとしている」

海竜王「…生命の審判よ。砂上の楼閣なき今、器を持たぬ魂はどうなっている?」


少女「…どうしてそのことを?」

海竜王「妾は千里眼を備えておる。妾自身はここから動けぬがの」

少女「なるほどね……窮策だけれど僕の中で一時的に停留しているよ」

海竜王「…主は大丈夫か?」

少女「まあ、これが僕の本分だからね。多少無理してでも責任は果たさなければいけない」

海竜王「いじらしいの」

少女「どうも。……それで、勇者くんの力はいつ回復するんだい?」

海竜王「女神の力は以前健在だ。ただし勇者という出力装置に限界が来ていた」

少女「女神のエログッズの力かい」

海竜王「たわけ。そんなもの一側面に過ぎん。創造の女神の性の力であるぞ」

少女「…創造と性衝動は切ってもきれない、ということかい? 女神の本質的な力だと?」

海竜王「うむ。そんな力をそのまま人間に授けたら必ずや深刻な事態になる」

少女「つまりは女神がわざと加工したと?」

海竜王「うむ。いやしかし元々は本当に自分が愉しむためだったのかもしれんの」

少女「…僕は女神に会ったことはないのだけれど、そんなに適当なのかい?」

海竜王「妾たちの創造主だぞ?」

少女「う…何という説得力」

海竜王「まあ、しかし女神が間違って渡したというのは、どうにも白々しい」

少女「何か企んでいるのかな?」

海竜王「そうかも知れんの」

少女「それじゃあ天使くんも共謀かい? とてもそうは見えないけれど」

海竜王「あの天使はまだまだ新参なのだろう」

少女「そうだろうね。以前話したことがあるけれど、一千年前の人魔大戦以前のことについてはあまり詳しくないようだ」

海竜王「お主は、どれくらいの時から存在しておるか?」

少女「…さあ? 少なくとも僕の記憶では、破滅の神が現れたことは一度もないよ」

海竜王「ふむ。草創期以前を知らぬか」

少女「そうだね。僕はいつだって勇者が勝つ物語しか知らない」

海竜王「それより以前は、滅びの神となった魔王が幾度も世界を滅ぼしていたんだがの」

少女「…へえ。それじゃあ滅びの神を知っているのかい」

海竜王「…いや。妾の千里眼では知覚できなかった。使命のため、直接見ることも適わぬ」

少女「それじゃあ、滅びの神を見た者はまだいないと?」

海竜王「見た者は滅びた、が正しいの」

少女「……」

海竜王「話を戻そうかの。勇者の力がいつ戻るか。ぶっちゃけ分からん」

少女「うーん…最近は足踏みしてばかりだね」

海竜王「お主らはの。しかし勇者はかなり無茶を繰り返しておる。それに仮初めの器とはいえ、一度は魔王とも闘っておる」

少女「そうなんだろうけど…」

海竜王「…思うように行かぬのは詰めの一歩手前だからだ。焦っては大局が覆るぞ」

少女「…年の功だね」

海竜王「おいコラ」





夜。

盾「…もっと早く解放しろ」

勇者「悪かった。色々と立て込んでて」

盾「おのれ…あの年増め。我を拘束するなぞ無礼な奴め」

勇者「…一応、偉大な存在らしいぞ」

盾「無理やり己を犯した者を庇うとは、殊勝だな、勇者」

勇者「いや、庇ってないし…もう言わないでくれ…」しくしく…

盾「女々しいな。男ならば女を抱けば喜ぶのではないのか」

勇者「俺もそうだと思ってたけど、抵抗もできないまま、無理やりやられるのは、普通に怖かった…」

盾「でも、致したのだろう? つまり望んでたということだろう?」

勇者「…俺、男なのに…お尻は…指を入れるところじゃないのに…」しくしく…

盾「……う、うむ」

盾「しかし、お主、意外と女に好かれとるのだな。曲がりなりにも勇者ということか」

勇者「…あー」

盾「しかし、我との契約を忘れてはおるまいな」

勇者「…分かってるよ。魔王を倒したら…だろ」

盾「これは呪いでもある。必ずや執行される」

勇者「…今は魔王を倒すことだけを考えさせてくれ。魔王だけは必ず倒す」

盾「魔王は強かったな」

勇者「ああ…。姉ちゃんの時でさえ、一撃も与えられなかった。赤騎士が、先代勇者が助けてくれなければ止めを打たれていた」

盾「突然出てきた人の形をした光か」

勇者「もし魔王が完全な体を手に入れたらもっと強い。きっと手に負えなくなる」

盾「…お主が死んだ時は魂を貰うぞ」

勇者「勝つ。先代勇者、姉ちゃん、みんなのために。…世界のため、人類のため、は俺には向いてないみたいだ」

盾「くっくっ、目的は何であれ、お主に出来ることは、その身体で出来ることだ」

勇者「ああ、その通りだ。俺は今度こそ魔王を倒す」


盾「だが、勇者としての力を失ってるんだろう?」

勇者「…そうなんだよなあ」

盾「力が戻らぬうちは魔王を倒すなぞ夢のまた夢だぞ」

勇者「…分かってるさ。明日の朝起きたら、戻ってればいいのにな」

勇者「……言っても仕方ない。寝るか」

――――うしゃ…。勇者よ…。私の声が聞こえますか。

女神「私です…創造の女神です…」

女神「勇者よ。魔王はかつてないほど強大な力を手に入れてしまいました」

女神「しかし、あなたの肉体は今、魔王を倒すための力を出し切れません…」

女神「…かつて私は7日間で世界を創りました」

女神「そして私があなたに授けた力はおよそ私が持つ全ての7分の1」

女神「数字には大いなる力があり、その力は重なるほど力を補強します」

女神「私の力は創造の力。創造とは即ち今を経て未来への繋がること…」

女神「…つまりあなたたち人にとっては子孫を残すということ」

女神「勇者よ…7人の女性と性交するのです。さすればあなたは力を再び行使できるようになり、また更なる力をも使えるでしょう」

女神「ただし、誰にもこの託宣を告げてはなりません。その場合、私の力は戻らず、この世界は破滅へと向かうでしょう」

女神「勇者よ……破滅の神は必ず倒さねばなりません…そう…必ず……」





勇者「……酷い夢を見た」

盾「ずいぶんうなされていたぞ」

勇者「……ふざけんなあぁ! マジでふざけんなああああぁぁぁぁぁ!!!!」

勇者「なんなの!? ねえ、なんなの!? 久しぶりに夢に登場したと思ったらバカにしてんの!? おい!?」

盾「……何の話だ?」

勇者「がああああぁぁぁぁぁ!!」

盾「…付き合ってられん」

血塗られた盾は窓から部屋の外へと出て行った!

勇者「はあ…くそっ!」

勇者「何を真面目な顔でとんでもないこと言ってんだあの女神は!」

勇者「うがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

どうでもいいけどARIAを全巻読んだ。あれはいいものだ。みんなも読もうぜ。

勇者(世界を救う――それはつまり彼女たちを救うことでもあるから、最悪を逃れるためには必要だ)

勇者(そのためには女神の力を取り戻すことが必要不可欠だ)

勇者(…そのためには、7人の女性と交わる必要がある。ほんと酷い話だな)

勇者(もしも、俺が7人としなければ、世界は崩壊。みんな死んでしまうのは間違いない)

勇者(しかし、力を取り戻すためには、不誠実にならざるを得ない。彼女たち以外の女性と行為に及ぶにせよ)

勇者(…それも今の状況じゃ難しいかもしれない)

勇者(かりに彼女たちと事に及び、その後はどうする? 俺は盾に残りの生命を明け渡す契約を交わしている)

勇者(俺は責任を取れない。彼女たちにどこまでも不誠実にならざるを得ない)

勇者(想いを寄せてもらっているが、どうしようもないんだ)

勇者(…いっそ嫌われてしまうようにするか?)

勇者(その場合、女神の力はどうやって取り戻す?)

勇者(俺は海竜王の助け無くしてここから出られない。そして海竜王に事情を話すこともできない)

勇者(それじゃあ、この海の国の中で相手を探すか? そこまで性行為を重要視していない種族がいる可能性もある)

勇者(しかし、下手をすると、もし成功したとして、その相手が先輩の手で殺されてもおかしくない)

勇者(とことん嫌われてから、他の女性に頼む)

勇者(…時間がかかり過ぎる可能性が大きいな。魔王が強くなるのをうかうか待つわけにもいかない。こんなことで無駄な被害を生み出すのはダメだ)

勇者(最善の道は何だ?)


勇者「……ああぁぁ! 分かんねえぇ!」ぐしゃぐしゃっ


少女「やれやれ、騒がしいね」ガチャッ

勇者「!」

勇者(その場合、女神の力はどうやって取り戻す?)

勇者(俺は海竜王の助け無くしてここから出られない。そして海竜王に事情を話すこともできない)

勇者(それじゃあ、この海の国の中で相手を探すか? そこまで性行為を重要視していない種族がいる可能性もある)

勇者(しかし、下手をすると、もし成功したとして、その相手が先輩の手で殺されてもおかしくない)

勇者(とことん嫌われてから、他の女性に頼む)

勇者(…時間がかかり過ぎる可能性が大きいな。魔王が強くなるのをうかうか待つわけにもいかない。こんなことで無駄な被害を生み出すのはダメだ)

勇者(最善の道は何だ?)


勇者「……ああぁぁ! 分かんねえぇ!」ぐしゃぐしゃっ


少女「やれやれ、騒がしいね」ガチャッ

勇者「!」

少女「どうかしたのかい?」

勇者「い、いや。ちょっと悪い夢を見て…」

少女「そういうことか。…調子はどうだい?」

勇者「…能力はまだ戻ってない」

少女「いや、君の体調だよ」

勇者「…体調自体はすこぶる快調だ。このままここにいるのが申し訳ないくらい」

少女「やれやれ、勇者だからってそう無茶しなくてもいいんだよ。悪夢も見ているみたいだし」

勇者「だが、じっとしてるわけにもいかないだろ。こうしている間も魔王はもっと強くなるかもしれない」

少女「…君は呆れるくらい真面目だね」

勇者「…ほっとけ」

少女「ダメだね。そんなに真面目だと潰れてしまう。危なっかしくて目が離せない」なでなで

勇者「…あまり子ども扱いするなよ」


少女「気に入らないかい?」

勇者「あんまり…。子どもだからな」

少女「ふふ、可愛いいやつだよ、君は」

勇者「ほっとけ」

少女「真面目な話、あまり思い詰めても仕方ないよ」ぽふっ

勇者「…ああ」すっ…

少女「もちろん、君の気持ちは分かるけどさ」すすっ

勇者「…なんで距離を詰めるんだ?」

少女「君が距離を空けるからさ」

勇者「…近い」

少女「いいじゃないか」

勇者「……」

少女「それとも君は僕が嫌いなのかい?」

勇者「そ、そんなことはないけど」


少女「ふふ、だよね。無理やり襲ってきたくらいだもんね」

勇者「うぅっ…」

少女「僕の体を無理やり触って…擦り付けて…」くすっ

勇者「それは…本当に悪かった。償いきれないくらい悪いことをした」

少女「…きもちよかった?」ぴとっ

勇者「へっ?」

少女「僕の手で包まれて、しこしこされるのはきもちよかったかい?」ぼそぼそっ

勇者「あ、うっ…」カアッ

少女「無理やり唇をむさぼって…舌を絡めて…ねえ、どうなの?」ぼそぼそっ

勇者「……き、きもちよかった」

少女「……ふふ」

勇者(…や、やば。心臓の鼓動が速すぎて苦しい。頭に血が回らない…)

勇者(ダメだ、落ち着け、彼女を傷付けるようなことをするな…師範の裸を想像しろ…)フゥ…


少女「……ねえ…またしたい?」

勇者「……っ」ゴクッ

少女「あれ以上のことをさ…」

勇者「お、おれ…は…」フゥ…フゥ…

少女「…僕はちょっと興味あるかな」ぼそっ

勇者「……」プチッ

ぐいっ

少女「わっ…」どさっ

勇者「ふぅ…ふぅ…」がばっ

少女「んっ、ちゅ…んっ…んっ…」

少女「ぷはっ…ふふ、キスって気持ちいいね」

勇者「お、俺…」

少女「シよっか?」

勇者「……!」コクコク


少女「ふふ、必死になって…可愛いね」

少女「…いいよ。ただし…」

勇者「な、なんだ?」ハァハァ

少女「…僕のことをずっと愛してくれる? 他の女の子に言い寄られても」

勇者「あ、えと……」

少女「……」

勇者「…………」

少女「……そう」

勇者「あ、違くて! その…ここで簡単に誓っても嘘だと思われるだろ」

少女「…それもそうだね」

勇者「俺…お前の底知れない雰囲気とか、落ち着いた素振りとか凄く素敵だと思う。それに、とても女の子っぽいところもあって…魅力的だよ」

少女「…っ。恥ずかしからやめてよ…」

勇者「まだ短い付き合いだけどさ…お前のことどこまでも好きになれる気がする…」

少女「…それはありがとう。…それなら、こういうことは本当はもっと後にするべきなんだろうけど…」

勇者「…そうだよな。ご、ごめんな」すっ…


ぎゅっ

少女「…いいよ。君は責任感の強い男だと思うし……僕も君と同じだよ」

勇者「……ありがとう」ギュッ



勇者「……こ、ここだよな?」ニュルッ

少女「っ…んっ、そう…っ。いっきに、たのむよ…」

勇者「あ、ああ…」

ニュルルルッ

少女「……っぅぅ!」

勇者「うぁっ…き、きつ…!」

少女「っうぅ、ふぅ…ふー…」


勇者「だ、大丈夫か?」

少女「ん、うん……いや、ちょ、ちょっとまって…」

勇者「あ、ああ。で、でも…やば……っ!」ドクッ

少女「えっ?」

勇者「ご、ごめん…俺…」

少女「……ふふ、いいよ。気持ちよかった?」なでなで

勇者「き、きもちよすぎて…」

少女「よかった。……ねえ、ちょっとこのままでいよう?」


少女「…また大きくなってきたね?」

勇者「あ、あの今度こそ…」

少女「うん…僕もだいぶ痛みが薄らいできたから」

勇者「う、動くぞ」


ぐっ

少女「んっ…」

ぎしっ…ぎしっ…

勇者「あ、あんまり保たないかも」

少女「んっ、あせらずにゆっくりしようよ」

勇者「あ、ああ。痛みは?」

少女「大丈夫そう。心配しなくていいよ」

勇者「よかった…」ぎゅっ

少女「……」ちゅっ

勇者「むっ…」

少女「ん…ちゅ…」

ずちゅ…ぬちゅ……


少女「んんっ…ちゅ…れろっ…」

勇者(…密着して繋がるの、気持ちいいな。もっと…)グイッグイッ

少女「んあっ……んっ…」

ぎし…ぎし……っ

勇者「…また、でそっ…!」

少女「ん、いいよ。イッて、ねっ、いっぱい出して」ぼそっ

勇者「うあっ……!」どくどく…

少女「んっ、すご…これも気持ちいい…」


少女「さてと、これでも後片付けは完璧かな」

勇者(やってしまった。無責任なことをしてしまった)

勇者(俺は、魔王を倒したら、彼女とは一緒にいられないのに…)

勇者「なあ…」

少女「こういうのは、バレると面倒だし、内緒にしようか。まあ、青魔導師には無理だとしてもね」

勇者「あ、ああ…」

少女「……僕はとても寛容だからね」

勇者「え?」

少女「君が他の女の子と情事に及んでもある程度は知らん振りするよ」

勇者「……」

少女「ふふ、勇者くん」ぎゅっ

勇者「おっ…」

少女「好きだよ」ぼそっ

勇者「あ…お、俺も…」

少女「君の一番になってみせるからね」ちゅっ

勇者「っ!」

少女「ふふ、覚悟してなよ」にこっ

がちゃっ

少女「それじゃあ、また後で」クスッ…

ばたんっ


勇者「……やばい、溺れちまいそう」





鬼娘「本当に不思議ッス! さっきはどうしてもご主人の部屋にたどり着かなかったッス!」

剣士「斬っても、すぐに修復が始まってどうしようもなかったわ」

少女「へえ…不思議なこともあるね」しれっ

海竜王「ここの防衛装置だ」

エルフ「前は無かっただろ」

青魔「あら、ありましたわよ」

エルフ「それはお前が同じところをぐるぐる回ってただけだろ」

天使「それは…」

剣士「本当に抜けてるわね」

青魔「うう…」

海竜王「血は見たくないのでな」チラッ

天使「…?」

少女「……やれやれ」ボソッ

勇者(ああ、気を回してくれたみたいだな……ということは見られてたのか……)

青魔「…勇者さま?」

勇者「な、なんだ?」

青魔「…………いえ、何でもありませんわ」

エルフ「……? 何かあったか?」

青魔「相変わらず勇者さまは素敵で格好いいと思いまして」

勇者「お、おう…ありがとう…」

エルフ「何言ってるんだ、お前。目が腐ってるんじゃないか?」

天使「それは聞き捨てなりませんね!」ばんっ

剣士「アタシの勇者に色目を使い、侮辱するなんて許さないわよ!」チャキッ

鬼娘「天使さん…最近おかしいッス! 剣士さんもいつも通りおかしいッス!」

少女「無闇に干渉すると巻き添えを食らうよ」

海竜王「愉快な輩だの」

勇者「はは…勘弁してくれ…」キリキリ





勇者「…モテるのは、嬉しいけど、申し訳ない気持ちになってくるな…」

勇者「…あー、海の青が綺麗だな」

青魔「勇者さま」

勇者「…うおっ、青魔導師」

青魔「…何がありましたの?」

勇者「えっ?」

青魔「貴方さまの心がまったく見えなくなってしまいましたわ」

勇者「えっ」

勇者(…女神によるものか?)

勇者「そ、それは…」

青魔「……」

勇者「…ごめん。今は言えない」

青魔「そう、ですの」

勇者「ごめんな…」

青魔「いいえ。貴方さま勇者ですもの。私に言えないこともありますでしょう」じっ…

勇者(…相変わらず、すべてを見透かしそうな青い瞳だよな)

青魔「…愛しい人の心が見えないとこんなにも不安になりますのね」

勇者「……」

青魔「他の人々はこのような不安を感じながら人を愛するのですね。なんて怖くて…なんて素敵なんでしょう」にこっ

勇者「そう思えるのは、きっと君が素敵だからだよ」

青魔「……うふふ、恥ずかしい台詞ですわね」

勇者「…そうだな」

ぎゅっ

青魔「嬉しいですわ」

勇者「…それはよかった」ぎゅっ

青魔「ん……うふふ、本当の勇者さまにしてもらったのは初めてですわね」

勇者「…ごめんな。俺は君にひどいことばかりしてる」

青魔「そんなことありませんわ」

勇者「……」

青魔「……もしも、そう思うのならば、貴方さま自身のご意志で、私を抱いてくださいませ」

勇者「……俺は」

青魔「……」ブルブル…

勇者(…震えてる。返事を聞くのが怖いのか)

勇者(…変な同情心や、女神の力のためだとか、そういうことで彼女の気持ちには応えたくない)

勇者(俺は…)


勇者「青魔導師。俺は君が欲しい」

青魔「……」

勇者「君が求めたからじゃない。俺が君を欲しがってるんだ」

勇者「…ただ、俺は不誠実だ。本当に不誠実だ。俺は、自分の意思で生命の審判を抱いた。そして彼女のことも愛している。そして、きっと責任を取れない」

青魔「……」

勇者「…俺はこんな最低な告白しかできない最低の男なんだ。殺されても文句は…」

ぴとっ

勇者「……」

青魔「私は、貴方さまを愛しておりますわ。貴方さまがどれだけ不誠実にならざるを得ないとしても、私は誠心誠意を以って貴方さまを愛しますわ」

勇者「っ…ありがとう」ぼろっ…

青魔「お泣きにならないで、私の愛しい勇者さま」

勇者(本当に君は、どこまでも優しい…)


この後めちゃくちゃセックスした。

文化の日だし、何本かDVDを観てたけど、『グッドウィルハンティング』『スラムドッグミリオネア』『ブルースブラザース』辺りがグッときた

勇者(…青魔導師、ほんとに優しいよな。甘えてしまった)

勇者(本当に最低だよな。都合のいいように彼女のことを扱って)

勇者(俺は出来る限りの範囲で彼女も精一杯幸せにしてあげたいが…)

勇者(…そういえば、血塗られた盾はどこに行ったんだ? 探してもどこにもいなかったが)

勇者(海竜王なら知ってるかな)

勇者(行ってみるか)



青魔『んむ…いかがかしら…?」チュプッ

勇者『き、きもちいい』

青魔『うふふ…もっと強くしますわね…んっ、んっ…んっ」!グッポグッポ…!

勇者『うぅ…それやば…!』


海竜王「いい映りだの」もぐもぐ

勇者「おい」


海竜王「おお、勇者か。妾を孕ませに来たか?」もぐもぐ

勇者「んなわけあるか! 何してんだお前は!」

海竜王「お主らがまぐわってる映像を見ながら飯を食っとる」もぐもぐ

勇者「はあっ!? …というか、食うのをやめろ!」

海竜王「女子が飯を食べるところをまじまじと見るものでないぞ。スケベな奴め」

勇者「どの口が言うんだゴラァァァァ!」


勇者『うぁ…でる…っ』

青魔『んんっ!? …ん…ぅ…」ずるる…ずっ…

勇者『ふぅ…』

青魔『んくっ…。ふふ…3回目なのにたくさんでましたわね。中々飲み込み辛かったですわ』にこっ


海竜王「妾が空腹で尺八をしたら主の一物を噛みちぎるかもしれんぞ」

勇者「頼まねえよ! 取り敢えずこれを消せ! 今すぐ消せ!」

海竜王「ふう、仕方ないの」

海竜王はエッチな映像を消した!

海竜王「しかし、急にガッつきはじめたの。今までは誠実ぶっておったのに」

勇者「そ、それは…」

海竜王「ふぅむ…何かあったようだの」

勇者「…悪いが今は何も言えない」

海竜王「言えぬのならよい。して何用だ」

勇者「あ、血塗られた盾が見当たらないから、どこにいるか聞こうと思ってな」

海竜王「ああ。アレならば、妾が預かっとる。しばらくは任せておけい」

勇者「そういうことなら頼んだ」

海竜王「しかしあの盾と難儀な契約を交わしたようだの」

勇者「…ああ。力が欲しくて形振り構ってられなかったからな」

海竜王「無茶をしおって」

勇者「うん…」

海竜王「…お主が交わした契約は妾にも解けぬ。すまぬの」

勇者「…いや、俺の責任だから。それに、契約してなかったら魔王と闘った時にもう死んでたろうしな」

海竜王「…まあ、幾分か契約を和らげることも可能だろう」

勇者「そんなことができるのか?」

海竜王「妾を誰だと思うとる。それくらい造作もない」

勇者「…ありがとう」

海竜王「なに、その分、お主らの痴態映像を流して余興とするから気にするでない」

勇者「張っ倒すぞ」

海竜王「逆に張っ倒して犯してくれるわ」

勇者「ぐ…青魔導師のためにもやめてくれ」

海竜王「…ふむ。お主だけならば良いかの?」

勇者「はっ?」

海竜王「あへ顔だぶるぴーすで、国一番の人気者になるぞ」

勇者「はっ? ……はっ?」

海竜王「さて、今日はどこまで広がるか限界に挑戦しようぞ」ワキワキ

勇者「い、いや…」


信じて送り出した勇者が(以下略)






勇者(…なんか嫌な夢を見た気がするけど気のせいだよな。うん、気のせいだ。気のせいであってください)

勇者(…夜も遅いし、寝よ)


「……おい」

勇者「…………」

「起きてるか?」

勇者「…………」

「……おーい」

勇者「…………」

「……寝てる、よな」


ギシッ…

勇者(……?)パチッ

モゾモゾ…

勇者「…んー、だれだ?」グシグシッ

びくっ

エルフ「……」

勇者「…お前か。なんか用か? どうして俺のベッドに?」

エルフ「たあっ!」ぐっ

勇者「うお!?」どさっ

エルフは勇者を組み伏せて馬乗りになった!

勇者「な、なんだよ?」

エルフ「な、なんでもない!」

勇者「なんでもないならなんで…」

エルフ「うるさいっ」

勇者「お、おう…」

エルフ「……」

勇者「なぜそんなに睨むんだよ」

エルフ「……お前、約束を覚えてるか」

勇者「や、約束…?」

エルフ「最後に別れた時に言ったろ。俺は強くなるからお前も強くなれって」

勇者「…あ、ああ。覚えてるよ」

エルフ「…おれは、まだ見せれてないけど、強くなった」

勇者「そっか…流石だな」

エルフ「お前はどうなんだ?」

勇者「俺は…女神の力を失って、弱くなったよ」

エルフ「…女神の力か。お前にはそれしかないのか」

勇者「…ないよ。俺は女神の力がなければどこまでも脆い人間だ。魔法も使えないし、剣の腕だって常人の範囲を超えない」


エルフ「それじゃあ、今のお前は役立たずだな」

勇者「…ああ」

勇者(…その通りだ。俺は少なくとも女神の力を取り返さなきゃ役立たずなんだ)

勇者「……」

エルフ「…お前みたいなのを好きにならなきゃ、良かった」

勇者「っ…すまん…」

エルフ「お前は、足を引っ張ることが多いし、こうやって迷惑ばかりかける…」

勇者「…うん」

エルフ「しかも、変態だし、女たらしの最低野郎だ」

勇者「お前の言う通りだよ」

エルフ「お前は…お前は…」

エルフ「……ああ、もう違う!」ズズ…


ダークエルフ「違うのよ! そういうことが言いたいんじゃないの!」


ダークエルフ「惚れたもん負け! 私の負けなの!」

ダークエルフ「期待を裏切られたって、他の女と寝てたって!」

ダークエルフ「それでもやっぱり好きなんだもん! 好きなの!」

ダークエルフ「あなたのことが大好きなの!」


勇者「……」

ダークエルフ「……っ」

ばっ

ボロンッ

勇者「ちょっ…なにして…!」

ダークエルフ「うるさいっ! いいからおとなしくしてて!」

すりすり…

勇者「お、おい…」

ダークエルフ「……なによぉ…わたしじゃ大きくならないの…」じわっ…


勇者「…そんなわけあるか! ガマンしてるに決まってるだろ!」

ダークエルフ「ガマンなんてしないでよ! わたしのこと、抱いてよ…」ぐすっ…

勇者「落ち着けって」ぎゅっ

ダークエルフ「あぅ…」

勇者「本当にごめんな。俺のせいでお前を焦らせてごめん」なでなで

ダークエルフ「……ぅぅ」ぎゅぅ…

勇者「気持ちを伝えてくれてありがとう。すごく嬉しい」

ダークエルフ「ん……」スゥ…


エルフ「…ふん、随分女慣れしてるな」むすっ

勇者「…そうでもないよ」

エルフ「…はあ、ある程度制御できるようにはなったけど、まだまだ完璧には程遠いな。感情の変化がばればれだ」

勇者「鈍い俺にはその方が助かるかも」

エルフ「……ばか」

勇者「ははは」

エルフ「…股間丸出しで爽やかに笑うな」

勇者「あっ……」あせっ

エルフ「待て!」ガシッ

勇者「えっ?」

エルフ「その、元々そういうつもりできたから…」かあっ…

勇者「…いいのか?」

エルフ「…おれ、でも、わたし、でも勇者のことが好きなのには変わらないから」

勇者「俺も、お前のことは、好きだけど…」

エルフ「青魔導師も好き、か? それとも他の女?」

勇者「……ああ」

エルフ「…いいよ、それでも、好きでいてくれるなら、いくらでも都合のいい女でいてやる」

勇者「……」

勇者「……」

エルフ「でも、ちゃんと愛してくれないと…拗ねるぞ」

勇者「ぷっ…」

エルフ「わ、笑うなよぉ…」

勇者「悪い、いや、お前かわいすぎだろ」

エルフ「エルフ族は強くて可愛い最強の種族だからな」

勇者「初めて聞いた」

エルフ「初めて言ったからな」

勇者「でも、本当だな」がばっ

エルフ「あっ、ちょっと…」



そして伝説(朝チュン)が始まった!

やること多すぎで再び更新頻度が減ります
見てる人がいたらごめんなさい

>>719
ちょうど最近色々映画見始めたところだったので週1で1個ずつ見ました
3つとも良かったけど特にグッドウィルハンティングは最高、見終わったあとのすっきりした感じがたまらん
スラムドッグミリオネアは普通にいい話だったがエンディングで急に踊り出して笑った、そういう映画だっけ?みたいな
ブルースブラザーズは100%そういう映画、海外のミュージシャンの知識が全くない俺でもキャラ濃すぎてそこそこ楽しめた、でも一番気に入ったシーンはナチの「好きでした」のとこ

スレ汚しすみません、>>1頑張れ

>>740素晴らしい! 逆におすすめあったら教えてね!

一応最後まで書き終わったし投下しま





鬼娘「あんっ…あはっ♡…うしろから突かれるの…っ、支配されてるって実感できて好きッス♡」

鬼娘「ご主人…じぶんできもちよくなって…あんっ…はげし…♡」クネクネ…

鬼娘「も、もうイキそうッス♡ ご主人も…一緒に…あんっ」

鬼娘「んん…だ、射精すなら、膣内にくださいッス♡ご主人の子種、びゅーびゅーってしてほしいッス♡」

鬼娘「あんっ、きたっ♪ イク…イクイク…ッ♡」ビクビクッ

鬼娘「アハッ…正真正銘ご主人の雌奴隷にされちゃったッス♡」ドロッ…

鬼娘「も、もう一回ッスね♡ ご主人のための雌穴なんだから好きに使ってくださいっス♡」





天使「はんぅ…好きっ…好きですっ勇者さん…!んんっ」

天使「好き好き好き…っ! ぎゅってしてくださいっ…んんっ」

天使「勇者さん勇者さん…ちゅっ…んんっ…」

天使「い、イク時は一緒が…んっ、いいですっ…ぁんん!お、お願いします…!」

天使「い、イキそうですか…っ? あんんっ…わ、わたしも…勇者さんっ」

天使「こ、このまま! このまま膣内で出してくださいっ…! 勇者さんでわたしを満たしてくださいっ…!」

天使「んんんっ…! 勇者さん! 好き好きぃ…ぃっ」

天使「はぁ…はぁ…。勇者さん、愛してます」ギュッ

天使「…ふふ、わたし、とても幸せです…怖いくらい…」

天使「勇者さん…」チュッ





それからどうなった?


勇者「…………」ゲソッ

鬼娘「ご主人、大丈夫ッスか?」ツヤツヤ

天使「元気がありませんね」ツヤツヤ

青魔「お疲れならわたしがお世話いたしますわ」ツヤツヤ

エルフ「お前は昨日もだろ!」ツヤツヤ

少女「君も今朝から勇者くんのを搾り取ってたじゃないか…」

青魔「勇者さまっ」むぎゅっ

エルフ「勇者!」ぎゅっ

鬼娘「ご主人!」むぎゅう…!

天使「勇者さん…」むにゅむにゅっ

少女「両手どころか前後左右に花とは恐れ入ったよ。男冥利に尽きるね」

勇者「ハハハ…」ゲソッ

勇者(…結局、世界を救うためにみんなに手を出したのは失敗だったかもしれない)ゲッソリ

勇者(こ、このままじゃ女神の力を取り戻す前に死んでしまう…)

勇者(は、はやく女神の力を取り戻さないと…)

勇者「せ、せんぱいは、どこに…?」

天使「そういえばしばらく見ていませんね」

エルフ「確かに。…というか、これだけ女の子に囲まれて、まだ他の女のこと考えてるのか?」ムスッ

勇者「い、いや、そういうんじゃなくて…は、ははは…」

海竜王「昼前からベタベタしおって」

青魔「あら、海竜王さま」

海竜王「お主らの爛れぶり、もう国中で噂になっとる」

天使「えっ…」

海竜王「流言したのは妾だがの」

勇者「おいなにやってんだ」

エルフ「た、ただれてなんか…」

海竜王「食事だけ用意して一日中ヤりまくってたメスの言葉とは思えんの」

エルフ「うっ…で、でもあれはおれだけじゃ…というか、海竜王さまもいただろ!」

海竜王「だからこそ言っとるというに」

勇者(あれは死ぬかと思った…)

少女「勇者くんが力尽きても天使くんが魔法で回復させて、永遠に耽る。ひどいものだったね」

鬼娘「そういいながらノリノリだったじゃないッスか」

少女「はて、そうだったかな?」

海竜王「お主らの情事は映像に残しておるぞ」ピッ

『アン…アッ…イクッ…!』

天使「きゃあっ…!」かぁ…

勇者(結局、残してたのかよ…)

青魔(うっ…動物のように本能のまま求めて…客観的に見ると中々見るに堪えませんわね)かぁ…

少女「…ごほん、それは消してもらうよ」

海竜王「どれを? お主が勇者に甘えながらねだっているものか? それとも少し拗ねて勇者の気をひこうとしているところか?」ピッ、ピッ

『たまには…僕だけを見て欲しいな…』

青魔「きゃー! きゃー!」

天使「ひゃぁぁ…」

少女「……っ」かぁ…

鬼娘「赤くなってるッス!」

エルフ「へえ、お前もそういう反応をするんだな」

勇者「もうやめてやれよ…」

海竜王「反応が面白いからついの」ピッ

プツンッ…

勇者「ところで先輩はどこにいるんだ?」

海竜王「…さあ?」

少女「…千里眼を持っているんじゃないのかい?」

海竜王「うむ。しかし全てを同時に見れるわけじゃないからの。今は魔王の仲間どもを中心に見ておる」

天使「けれど、今彼女がどこにいるかは分かるのでしょう?」

海竜王「…それが、探しておるが見つからんの」

エルフ「…どういうことですか?」

海竜王「今、あの娘子はこの世界のどこにも存在しておらん」

青魔「……っ?」

鬼娘「し、死んじゃったんスか!?」

勇者「…!」

海竜王「…いや、亡骸どころか死の痕跡すら見つからんの。文字通り消えてしまっているの」

勇者「先輩が…消えた…?」

少女「……」

エルフ「…あいつなら何の問題もなさそうだな」

鬼娘「そうッスね。先輩さんは強いッス」

少女「…異常なまでにね」

海竜王「……」

青魔「…海竜王さま?」

海竜王「…ところで、一つ、悪い報せがある。非常に、の」

天使「……もしや」

海竜王「うむ」


海竜王「魔王が復活した」





魔国・魔王城。

側近「ふくく…。ふくくくくく…ふくくははははは!!」

狂爺「ヒッヒッヒ、ヒッヒッヒッヒッヒッヒ…ヒッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」

戦狼「気持ち悪い笑いをさらに気持ち悪くしてどうした?」

地獄闘士「せっかくのティーが台無しですよ」

側近「ふくく…これが笑わずにいられますか。ついに…ついに!」

狂爺「ヒッヒッヒ、仕事を終えてしまった」

戦狼「……!? そ、それはつまり…!」

側近「ええ、ええ! 魔王さまの完全復活です!」

戦狼「……ワオオオォォォォンッ!!」

地獄闘士「歓喜の遠吠えですか」

狂爺「長かったんジャ。この千年の研究にようやく決着がついた」

地獄闘士「あなた方は先代の時分から生きていらっしゃるのでしたね」

側近「ふくく、全てを魔王さまに捧げてきました」

狂爺「ワシらはこのためにずっと活動しておったからのう」


戦狼「して、魔王さまは?」


魔王「ここにいるぜ」


戦狼「!!」

魔王「図が高ェ。跪け♪」

魔物たちは魔王のもとに跪いた!

魔王「ふう…ようやく肉体に魂が定着してきやがった」

狂爺「お、お加減はいかがですジャ」

魔王「…もっと見た目は何とかならなかったのかよォ?」

狂爺「規格上の問題で…」

魔王「ちっ…。あ、側近、こっち来て♪」

側近「は、はい」すたすた

魔王の攻撃!

側近「…!?」ドタッ

地獄闘士「おやおや」

魔王「お前さあ、使えなすぎ。俺様が完全復活するまでに人間を制圧しておけと言っただろ」げしっげしっ

側近「ごふっ…も、申し訳ありません…」

魔王「その上、『破滅の欠片』もほとんど集まってないって、どういうことなんだよ、ああ?」ごっ

側近「げふっ!?」

魔王「使えない部下はいらねーんだよ」

側近「ず…ずびまぜん…」

魔王「…おいジジイ」

狂爺「な、なんでしょう?」

魔王「この役立たずを改造しろ。ぶっ壊れてもいいから使えるくらいには強くしろ」

側近「!?」

狂爺「あ、で、ですが…」

側近「か、かしこまりました…必ず魔王さまのお役に立ちます」

狂爺「しょ、承知ですジャ」

魔王「おい、犬っころ♪」

戦狼「い、いぬ…っ、我輩でしょうか」

魔王「他に誰がいるんだよ。テメェは空の国を陥落してこい。俺様を見下ろすなんざ不届き千万だぜ」

戦狼「か、畏まりました!」


魔王「あまり街は壊すなよ。あそこは俺様の新しい住処にするんだからな」

戦狼「はっ!」



魔王「さてと…」

地獄闘士「お茶をお淹れ致しましょうか?」

魔王「…テメェは何もんだ?」

地獄闘士「…私は魔物、地獄闘士。もちろんあなた様の手駒ですよ」

魔王「テメェ、おかしいぞ。なんだ、なにがおかしい」ギロッ

地獄闘士「私は魔物で、あなた様に服従している。それ以外の答えをお望みでしょうか?」

魔王「…けっ、まあいい。テメェが俺様の指示に従っている間は生かしといてやるよ」

地獄闘士「さすが、覇道をゆくものは違いますね」

魔王「ふん…。筋肉達磨、後で俺様についてこい」

地獄闘士「畏まりました。どちらまで? 地獄までついていきますよ、ふふ」



夜・海の国・勇者の部屋の前。

天使「あっ」

エルフ「うっ」

少女「おや」

青魔「あらまあ」

鬼娘「鉢合わせッスね」


天使「もう皆さん、毎日毎日…! 勇者さんの体のことも考えてください!」

エルフ「そういうお前こそどうしてここに来たんだよ」

天使「そ、それは…お疲れの勇者さんを癒してあげようかと…」ゴニョゴニョ…

鬼娘「ご主人に種付けしてほしかったんスね」

少女「僕は違うよ」

青魔「私も一番の目的は違いますわ。…いえ、一番はそうかもしれませんが、他の用事もありますの」

エルフ「えっ…お、おれもだぞ。ま、魔王のこととか」

天使「何ですか、その急に付け足したような反応は」じとー

エルフ「そ、そんなことないっ」

鬼娘「牽制し合ってる間に自分が一番乗りッス!」

天使は『氷結魔法・極』を放った!

鬼娘の全ての細胞が瞬時に凍り付いた!

鬼娘「」カチンコチン


少女「え、えげつない…」

青魔「それはさすがに可哀想ですわよ」

天使「うぅ…だって…」

エルフは『火炎魔法・大』を放った!

凍り付いた鬼娘の体が解けた!

鬼娘「武神さま! ひたすら石を積む修行を終えたッス! …あれ、武神さま?」

少女「それ、見ちゃダメなものだよ…」

青魔「そんなことよりも一旦中に入りませんか?」

天使「…そうですね」

「「「「「…………」」」」」

天使「…お先にどうぞ」

エルフ「…いや、最初にいいよ」

青魔(一回冷静になると入り辛いアレですわね…)

少女(気まずさが気まずさを呼ぶアレだ…いやでも、いつもみたいなことをする予定ではないし…もちろんなったら嬉しいんだけどさ)

鬼娘「ごしゅじーん!」ガチャッ

天使とエルフは『氷結魔法・極』を放った!

鬼娘「」カチンコチン

青魔「ちょ、ちょっと…!」

「「つ、つい」」

少女「やれやれ……おや?」

エルフ「…勇者がいないぞ。厠か?」

天使「むう…」

鬼娘「」カチンコチン

青魔「取り敢えず、この娘を何とかしてくださいませ…」


地獄闘士「ふふ、麗しき花のようなお嬢さん方の、小鳥のような愛らしいご歓談はよいものですね」

海の国・聖域の手前。

勇者「……」

海竜王「勇者…どこに向かっておる」

勇者「…海竜王」

海竜王「この先は聖域。立ち入れるは妾だけぞ」

勇者「先輩を迎えに行く」

海竜王「……」

勇者「いるんだよな?」

盾「うむ。我はしかと見たぞ。あの理不尽に強い娘がこの奥に立ち入っていくところをな」

勇者(…どうでもいいけど、盾なのに目があるんだよな…どれが目が分からんけど)

海竜王「…血塗られた盾、解呪の陣を抜け出していたか。魔王の動向に気を取られ過ぎたかの」

盾「この女狐は信用に置けんぞ。我を浄化しようとしおった!」

勇者「うーん…それはむしろ信用におけるかも」

盾「な、なんだと!」

海竜王「勇者、そやつは、血を啜り続けて許しがたいまで腐りきった魂の持ち主。使い手を滅ぼすことしか考えていない存在ぞ。あまり信用するな」

勇者「…そうかもな」

盾「生命を救ってやってるのに失礼なヤツめ!」

勇者「…悪いが、どちらもある程度信頼してるし、完全には信頼しきれてない。だからこの目で確認するんだ」

盾「むむ…不本意だが、我こそが真実なのだからな。早く道を空けよ、裏切り者め」

海竜王「この先は、女神の勅命より、勇者といえども通せぬ。そもそも、どうして我を疑う? 我は創造の女神の分身よ。勇者に与するこそすれ、仇なすことなぞ有り得ぬ」

勇者「…別にあなたが、敵だとも思っていない」

盾「む、我の言葉を信じぬのか!」

勇者「そういうわけでもない」

海竜王「……」

勇者「味方だからといって、利害が完全に一致してるとも限らないだろ」

海竜王「…ほう?」

勇者「あなたからして、先輩は都合の悪い存在ではないか、というのが一番の仮説だ」

海竜王「何故だ。たかが人間の娘ではないか」

勇者「たかが人間の娘…それにしては先輩はあまり人間離れしてるからな」

海竜王「……」

勇者「本当に、『たかが人間の娘』、なのか?」

海竜王「……ふっ、お主はどんな答えを望む?」

勇者「……」

海竜王「『実はあの娘こそ本当の勇者』か? 『実はあの娘こそ本当の魔王』か?」

勇者「……」

海竜王「答えはの、『分からぬ』
だ」

勇者「……?」

海竜王「『闇の剣」を守護する一族の末裔であることは確かだ。しかし、その家系にはさして因果が存在しない。お主のように特別な運命も与えられていない」

盾「??」

海竜王「…分からぬのだ。どうしてあの娘はあんなにも強い? どうしてまだあれほどまでに資質を持つ? 答えは、妾にはわからぬ」

勇者「…結局、何がいいたいんだ?」

海竜王「あの強さは謎であり、それ故にあの娘も謎なのだ。つまり危険だ」


勇者「…それは暴論じゃないのか」

海竜王「今回の魔王と勇者の因果はひどくねじ曲がっている。一分の危険も持ち込んではいけない」

勇者「……」

海竜王「それに、妾が娘をこの奥に監禁したと思っとるのかもしれんが、それは違う」

盾「なんだと?」

海竜王「あの娘は本来立ち入れないはずのこの先に、妾の知覚せざる内に入り込み、そして姿を消した」

勇者「……」

海竜王「…この先には、聖域と、もう一つ、妾が番をしているものがある。おそらくあの娘はそれに取り込まれた」

勇者「…なんなんだ、それは?」

海竜王「妾さえも全容が掴めぬ不可解なものだ。正直、この件は、妾でさえも持て余しておる。魔王との決着に当たって、藪蛇になるかもしれん」

勇者「……」

海竜王「妾も調査はするが、本格的に行動するのは、魔王と決着をつけてからがよいだろう」

勇者「……」

海竜王「先ほど、何も言わなかったのはすまぬ。分かってもらえたかの?」

勇者「……」

ズズズ…

盾「な、なんだ?」

ボコココココ…………

勇者「……?」

ズオオッッ

聖域の奥から無数の影が現れた!

海竜王「なっ…無間地獄からか…!」

勇者「うおおおっ!?」グオッ

勇者は謎の影に掴まれた!

盾「勇者!?」

海竜王「おのれ……勇者はやらぬぞ!」

海竜王は『聖霊魔法』を放った!

しかし謎の影には効かなかった!

勇者「――っ」


勇者は影に取り込まれた!


盾「…なっ、勇者!」

海竜王「……千里眼でも勇者の所在が掴めぬ」

盾「なんなのだ、これは!」

海竜王「…あの娘によるものか?」


魔王「面白そうなことになってんな」


「「!?」」


魔王「ハロー♪」

海竜王「…魔王っ! 貴様の仕業か!?」

魔王「ちげーよ。そんなことより、破滅の力、返してもらうぜ」

海竜王「……なぜここまで入れる。聖域は滅びの神さえも拒絶するはずだがの」

魔王「なんだ? まだ気付いてないのかよ?」

海竜王「…なんのことだ」

魔王「…さーてね。簡単に言っちまえば、そういう差別、流行らねェわけ」

魔王「俺様とその他愚民、これからはそれだけだ」

・・・

鬼娘「やい、地獄闘士! この前の借りを返すッス! 」←解凍された

天使「東国で戦った魔物ですね…」

青魔「地獄闘士…手練れとは聞きますが、私たちの相手には力不足でなくて?」

ダークエルフ「手は抜かないわよ」

少女「僕は見てても大丈夫じゃないかな?」

地獄闘士「ふーむ、いささか分が悪いですね」

鬼娘「武神さまにミッチリ修行してもらったッス! 免許皆伝ももらったッスよ!覚悟するッス!」

天使「それは幻じゃ……」

地獄闘士「…ふむ、少し本気を出しますか」

ムキキキキキッッッ

少女「う、さらに筋肉が……」

ダークエルフ「…見苦しいわね、さっさと消し炭になりなさい!」

ダークエルフは『火炎魔法・極』を放った!

しかし地獄闘士は魔法を手でいなした!

ダークエルフ「!?」

少女「…油断しない方がいいみたいだね」

地獄闘士(あまり本気を出して魔王さまに目の敵にされても困りますからね、ほどほどにさせてもらいますよ)

青魔「…あなた、何者なんですの!?」

地獄闘士「はてさて何でしょう? とりあえず非力なお嬢さん方、少し眠っていてください」

天使「……来ますよ!」


地獄闘士「あるいは永遠に」ニタッ

???年後・???。


勇者「……」ザッ…ザッ…

勇者は惚けた顔で荒れ地を歩いている…。

ザアァァァァァァァァ……

勇者「……」ぽけー

「久しぶりね? 引きずりこんだもののずっと会えなくて寂しかったわ」

勇者「うあ?」ぽけー

「もう言葉も忘れてしまったのかしら? もう何千年…いいえ何万年かしら? もしかしたらそれ以上の時間が過ぎたものね」

勇者「あー? しぇんぱ…?」ぽけー

剣士?「ええ、そうよ」

勇者「しぇんぱ! しぇんぱ!」キャッキャッ

剣士?「ふふ、言葉を忘れても、アタシのこと覚えてくれてるのね? すごく嬉しいわ」

勇者「あー、あー」

剣士?「…やっぱり『内部者』に、『境界』は耐え難いものなのね。無間地獄の異名は伊達ではないのね」

勇者「しぇんぱ」ぐすっ…

剣士?「アタシに会えて泣くほど嬉しいの? ありがと」ナデナデ

剣士?「寂しかったわよね? 無限に等しい時間を無限に広がる空間で独り過ごしたんだもの」

剣士?は勇者を抱き締めた!

剣士?「大丈夫よ、アタシがそばにいるからね」

勇者「あー?」

剣士?「これからはアタシがアナタの世話をしてあげる。アナタに美味しいものを食べさせてあげるし、フカフカのベッドで眠らせてあげる。溜まって苦しくなったらコスコスしてあげるし、おしめも変えてあげるからね」

剣士?「アナタはここでアタシと永遠の時間を過ごすの。年を取ることもなく、飢えることもなく、何も喪わない幸せな時間をね」

剣士?「アナタの因果はアタシが断ち切ってあげる。どんな因果もね」

剣士?「アタシはアナタのお姉さんよ。アナタの大好きな大好きなお姉さん」

勇者「あー」キャッキャ

剣士?「ふふ、嬉しいね」ナデナデ





剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「少し、言葉も覚えましょう? アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? 痛くない?」





剣士「フカフカのベッドで寝ましょうね」





剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「少し、言葉も覚えましょう? アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? 痛くない?」





剣士「フカフカのベッドで寝ましょうね」





剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「少し、言葉も覚えましょう? アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? 痛くない?」





剣士「フカフカのベッドで寝ましょうね」





剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「少し、言葉も覚えましょう? アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? 痛くない?」





剣士「フカフカのベッドで寝ましょうね」





剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「少し、言葉も覚えましょう? アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? 痛くない?」





剣士「フカフカのベッドで寝ましょうね」





剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「少し、言葉も覚えましょう? アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? 痛くない?」





剣士「フカフカのベッドで寝ましょうね」





剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「少し、言葉も覚えましょう? アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? 痛くない?」





剣士「フカフカのベッドで寝ましょうね」





剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「少し、言葉も覚えましょう? アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? 痛くない?」





剣士「フカフカのベッドで寝ましょうね」




剣士?「ほら、ご飯よ。たくさん食べなさいね。好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? だいじょうぶ。お姉ちゃんが変えてあげるからね」





剣士?「アタシはおねえちゃん。言ってごらん」





剣士?「苦しいの? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて。ほら、力抜いて…ね? お手手かお口じゃないとダメだけどガマンしてね?」






剣士「ほーら、フカフカのベッドで寝ましょうね」





剣士?「ほら、ご飯よ。アナタの好きなものばかりでしょう?」





剣士?「おトイレしたの? お姉ちゃんがおしめを変えてあげるからね」





剣士?「アタシはおねえちゃん」





剣士?「苦しいの? ほら、力抜いて…ね? 」





剣士「ほーら、フカフカのベッドで寝ましょうね。あしたは砂遊びしよっか?」





剣士?「ほら、ご飯よ」





剣士?「おトイレしたの?」





剣士?「おねえちゃん」





剣士?「お姉ちゃんに任せて」





剣士「ベッドで寝ましょうね」





剣士?「ご飯」





剣士?「お姉ちゃん」





剣士?「おねえちゃん」





剣士?「お姉ちゃん」





剣士「寝ましょ」





ごはんごはんごはんねるねるねるねるねるおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんごはんごはんごはんねるおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんごはん



?????年後。無限地獄。

剣士?「どれだけのじかんがたったのかしらね?」

勇者「あー?」

剣士?「いつからアタシたちはここにいたのかしらね?」

勇者「あー?」

剣士?「アタシたちはどうしてここにいるのかしら?」

勇者「あー?」

剣士?「ううん、どうでもいいのよ。だってこんなにしあわせだもの」

剣士?「えいえんのしあわせをかんじているもの」

勇者「あー」ぐいっぐいっ

剣士?「あはは、くるしくなっちゃったの? いいよ、いつもみたいにおててでしてあげるから。おててかおくちじゃないとダメだからね」

剣士?「…どうして、おててかおくちじゃないとだめなのかしら」

勇者「あー! あー!」ぐいっ

剣士?「こらっ、わるいこにはしてあげないわよ」

勇者「あーうー」

剣士?「ふふ、ウソウソ」

勇者「あーあー」ぐいっぐいっ

剣士?「あはっ、そこキモチイイっ、おまた…」

勇者「あーあー!」

剣士?「…おまたにおまたをくっつけたらどうなるのかしら?」

ゾクッ

剣士?「あっ…やっぱりダメ! なんかダメなの!」


勇者「あー!」グッ

ググッ

剣士?「ダメェェェェッッッ!!」


カッ!!



勇者は女神の力を完全に取り戻した!


勇者「…………」

剣士?「あ…ああ……」

勇者「俺は…………そうだ…帰らないと」

剣士?「ダメェェ! ダメよ!」

勇者「俺がいる場所はここじゃない…俺は…」

剣士?「行かないでよ! アタシはそっちにいてはいけないの! アタシを置いていかないでよ…!」

勇者「…先輩」

剣士?「アタシは外部者! アナタたちの因果に縛られようとしても出来損なってしまう異物よ!」

勇者「…そんなこと」

剣士?「本当は存在しちゃいけないの! 許されない! アナタたちの世界を狂わせたのはアタシたちよ!」

勇者「……どういうこと? 『アタシたち』って?」

剣士?「アタシたちのせいなのよ…。全部…全部…」

勇者「……」

剣士?「でも、アナタといたいのよ。アナタが好きなの。愛しているのよ」

剣士?「アタシを、捨てないで……」


勇者「…………」

グイッ

勇者「先輩、一緒に行こう」

剣士?「…ダメなのよ、行けない」

勇者「ダメなんかじゃない」グイッ

剣士「もう、無理なのよ。アタシはもうダメなの。アナタはもうアタシを愛してくれない」


勇者「うるせえ!! いいからついてこい!!」


剣士?「なっ…い、いつからそんな乱暴な男になったのよ!」

勇者「俺は昔からこうだよ! アンタがちゃんと俺を見てなかっただけだろ! アンタにとって都合のいい俺しか見てなかったからだろ!」

剣士?「…そ、そんなことっ」

勇者「ヤンデレだかメンヘラだか知らないが、グチグチうるさいんだよ! 本気で俺のこと好きなら黙ってついてこいよ!」

剣士?「…っ」

勇者「本当に世界を狂わせたのが自分だっていうのなら、尻拭いをするのも自分だろうが! ただし、俺はお節介を焼くからな! どんだけ嫌がろうが、絶対にな!」

勇者「女神さまや海竜王が文句を言ったって知らねえ! 好きな女のためなら道理を全力で引っ込めてやる!!」

剣士?「……」

勇者「はあ…はあ…」

剣士?「ア、アナタ…」

勇者「な、なんだよ」

剣士?「ア、アタシのこと好きって…!」ぱあっ

勇者「…ああ」

剣士?「本当!? ねえ、本当なの!?」ユサユサ

勇者「も、もちろん」グラグラ

剣士?「嬉しいわ! 本当に嬉しい!」ギュウウゥゥ

勇者「お、おう」

剣士?「アナタが愛してくれるなら、アタシ、邪魔するものは全て叩き斬るからね」

勇者「あ、ああ、うん……。ただ叩き斬るものは相談してから決めてほしいかなー、なんて」

剣士?「帰りましょう! 魔王も魔物も破滅の神と女神も海竜王も、邪魔する者はみんな叩き斬ってやるんだから!」

勇者「お、おう…?」

剣士?「さあ、帰るわよ!」


海の国・聖域

魔王は破滅の欠片を手に入れた!

魔王「これで破滅の欠片が全て揃ったわけか。俺様の勝ちだな」

海竜王「ま、魔王…な、なぜお主が聖域に入れるのだ……」

魔王「そんなもん、決まってるだろ。お前の言う聖域が俺様も破滅の神も拒んでないから。つうか、拒んでたら、破滅の欠片も安置できないだろ、バカ」

海竜王「そ、それならば、なぜ…」

魔王「破滅の神がここを滅ぼして、生物を根絶やしにしないかって? そんなの、破滅の神がここを滅ぼそうとしないからだろ」

海竜王「…なっ」

魔王「簡単なことだけどな。気付かないように制御されてたんだろ」

海竜王「…貴様は何がしたいのだ? 滅びの神は何を考えている?」

魔王「滅びの神なんて知らねェよ。俺様は、世界を滅ぼすんでなく支配したいわけ。そんで、この世界のくだらない系を変えたいわけ。ということで聖域ドーン」


魔王の『暗黒』!


聖域は跡形もなく消し飛んだ!


海竜王「き、貴様! なんてことを!」

魔王「そんなこと言ってる場合かよ。次に消えるのはアンタだぜ。年増サン♪」スゥ…

海竜王「……っ」


魔王の『暗黒』!


海竜王「……ぐうぅっ」シュゥゥ…

魔王「さすがに渋といな。どれ、もう一発♪」


魔王の『暗黒』!


海竜王(威力が上がって…っ!?)

海竜王「……!」シュオォォォォ…

魔王「破滅の力がより馴染んできたな。もう一押し♪」


勇者「はあっ!」ビュッ


魔王「!」サッ

海竜王「ゆ…しゃ…」

魔王「…よォ、勇者! また会ったな!」

勇者「……お前が、魔王?」


魔王「はーい♪ 完全体の魔王でーす♪」ちまっ

勇者「…ふん、随分と可愛らしい姿だな」

剣士「完全に幼女ね」

魔王「えへへー♪ ゆーしゃおにーちゃん♪ 死んで♪」


魔王の『暗黒』!


しかし血塗られた盾が防ぐ!

盾「契約者への攻撃は我が防ぐ」

魔王「…うっざ」

海竜王(妾のことも少しは守れというに……)

剣士「死んでもらうわよ」


剣士の『神風斬り』!


しかし魔王には届かない!

剣士「ちっ、邪魔な障壁ね」

魔王「おー、怖い怖い」


剣士の『亜空切断』!


魔王「おっと、それはヤバいかも」

魔王は瞬間移動する!

剣士「すばしこいわね」

魔王(…このニンゲン、筋肉達磨と似た感じがするな)


地獄闘士「魔王さま、そちらは如何ですか?」バサッバサッ

魔王「噂をすれば。筋肉達磨、一旦帰るぞ」

地獄闘士「もうよろしいのですか?」

魔王「一番の目的は達成したしな。勇者のオンナどもは倒したか?」

地獄闘士「ふふ、まさか。私の手には負えませんよ」

魔王「…ちっ、まあいい。帰るぞ」

勇者「待て!」

魔王「やーだ♪ じゃーねー♪」


剣士「……」

地獄闘士「ふふ…」


勇者「魔王、絶対にお前を倒す!」


魔王「やってみろよ、ゆーしゃおにーちゃん♪」


翌日・海の国。


天使「海竜王さまは?」

エルフ「傷は魔法で完治したが、まだお目覚めになってはいない」

少女「……」

エルフ「青魔導師は?」

鬼娘「不安になった国の亜人たちに説明をしに行ったッス」

エルフ「…俺も何か他に被害がないか見てくる」

天使「少し休んだ方がいいですよ。あの魔物との戦いでかなり消耗しているでしょう?」

エルフ「いや、大丈夫だ。この国には恩と親しみがある。こういう時に返さないと」

エルフは部屋を出ていった!

剣士「あの二人、いやに焦ってるわね」

少女「そりゃ、焦りもするだろう。魔王どころかその配下にすら手も足も出なかったんだ。悔しいだろう」

鬼娘「うぅ、地獄闘士があんなに強いなんて知らなかったッス…」

剣士「…アイツは他の魔物と同じだと思わない方がいいわ」

少女「…知ってるのかい」

剣士「知ってる、というより思い出したのよ。アイツが同族だってね」

天使「……え、魔物だったんですか!?」

剣士「違うわよ。とにかく、アイツは特別だから戦ってはダメよ」

勇者「……」

少女「…君は何者なんだい?」

剣士「……アタシは」



魔王「異世界から来た、ねェ…」

地獄闘士「ふふ、そういう反応になりますよね」

魔王「異世界ってのは破滅の神が眠る空間とか、女神のいる空間とかってことか?」

地獄闘士「いいえ、そういったこの世界に繋がりを持つものではなく、本当に何の関わりもない、完全な『外部』なのですよ。ただし、『無間地獄』とも呼ばれる場所で接点をもつため、そこから来ました」


魔王「まさに地獄よりの使者ってか。それじゃあ、その姿はなんだ? 少し奇妙な気配を感じるが魔物そのものだ」

地獄闘士「この世界に存続するには因果が必要ですからね。意思に関わらず無理やり因果に組み込まれたのですよ。あなた様のいう奇妙な気配が因果から外れた本来の私でしょうね」

魔王「…あの海の国にいたニンゲンもか」

地獄闘士「ええ。前回会った時はかなり因果が複雑になっていて気付きませんでしたが、あれも同胞です」

魔王「その話が真実として、どうしてこの世界に来た? 目的はなんだ?」

地獄闘士「元の世界が消滅したのですよ。だから、こちらに来たのです。ちょっとばかり壮大な難民だろうと、その目的は安住ですよ、それ以上はありません」

魔王「……」

地獄闘士「魔物になった以上、あなた様が消えれば私も消える運命。あなた様に仕えるのは何も不思議ではないでしょう」

魔王「……ふん、俺の癪に障らないうちは消さないどいてやる」

地獄闘士「ふふ、さすが偉大な王でいらっしゃいますね」



剣士「アタシたちが来たせいで、因果が乱れてしまった。それが今のこのおかしな魔王と勇者の戦いに発展してしまったのよ」

天使「そんな…女神さまはそれを知っているのでしょうか」

少女「知っているだろうさ。だから勇者くんに特別な力をもたせた」

天使「そ、それじゃあ私はなんで下界に…?」

鬼娘「要らない子だったからッスかね?」

天使「一緒にしないでください!」

鬼娘「ヒ、ヒドいっす!? 」←勇者とのアレが雑だった人

天使「あなたよりはマシです」←同じくらい雑だった人

鬼娘「うぅ……」

少女「まあまあ、やめなよ」←そこそこ丁寧だった人

天・鬼「「けっ」」

少女「……えー」

剣士「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…←一番雑だった人


勇者「俺は悪くない…悪くないぞ…」ゴニョゴニョ


人魚(…こんな人たちが世界の希望なのよねー)←ご飯を持ってきた

数日後・魔国・魔王城。


魔王(…『アレ』が起動しねェ。…先代勇者め、封印魔法に妙な細工しやがったな。腐っても勇者ってか)

魔王(…まあ、いい。破滅の力自体は使えるんだ。今のところ問題はねえ)

狂爺「魔王さま」

魔王「なんだ、ジジイ」

狂爺「戦狼から空の国の制圧が完了したとの連絡がありました」

魔王「見積もりより早かったな。なあの犬っころ、中々やるじゃないか」

狂爺「それと、側近の改造ですが、もうしばらくお待ちを」

魔王「さっさとしろよ。手は抜いてないよな」

狂爺「勿論ですジャ。一度始めると、本気になってしまう性分ゆえ」

魔王「くっく、期待してるぜ」




地獄闘士「魔王さま、お茶でございます」

魔王「ん」

地獄闘士「おや、魔法の術式ですか?」

魔王「知りたがりは賢明じゃねェぞ」

地獄闘士「これは失礼しました」

魔王「まあ、これは余興だけどな」

地獄闘士「余興?」

魔王「勇者と魔王の最終決戦。少しくらい遊びがないとつまらんだろ」

地獄闘士「ほう」

魔王「そのための結界魔法だ。ま、完成してからのお楽しみだ」

一旦休憩。
800までに終わるといったな。アレは嘘だ。
このスレで終わるんで、見てる方はもうしばらくお付き合いを。

オマケ。

魔王「空の国を制圧したか。よくやった」

戦狼「はっ」

魔王「褒美をやろう。こっちに来い」

戦狼「は、はっ…」おそるおそる…

魔王「……」

戦狼「……」ごくっ

魔王「よくやったねー♪ えらーい♪」ナデナデ

戦狼「わ、わふっ!?」

魔王「いい毛並みだな」ナデナデ

戦狼「わ、我輩は犬では…」

魔王「よしよし♪」モフモフ

戦狼(あ、犬でもいいかも…)

更に数日後・海の国。

剣士「というか、海竜王が起きるのを待つ必要はないでしょ。女神の力も戻ったんだし」

鬼娘「確かにそうッスね」

青魔(それで勇者さまの心がまた読めるようになりましたのね)

エルフ「…海竜王さまが目を覚まさないのに、海の国を放っておけないだろ」

剣士「こうやって待っている間にも、魔王は他の場所を滅ぼしているかもしれないわよ? 力も取り戻しているかもしれないわ」

青魔「それは、そうですけれど…」

勇者「…いつでも出られるように出発の準備だけはしておこう」

天使「そうですね…」

少女「一旦、全員の持ち物を集めて、再分配しよう」

青魔「それなら私の古代魔法が役に立つと思いますわ」

勇者たちは所持品を並べた!

エルフ「…こうしてみると結構あるな」

天使「この間、海竜王さまにもらった装備もありますよ」

青魔「それでは…」

青魔導師は古代魔法『品物鑑定』を唱えた!

・『生命の樹の種』今は無き生命の樹の種。生命力に溢れている。
・『光の剣』魔を払う聖なる力が宿った剣。即死魔法が効かなくなる。
・『日輪の兜』古代の賢王が身に着けた兜。知略に長けるようになる。
・『勝利の鎧』身に付ける者に勝利をもたらすとされる鎧。頑強性と柔軟性を併せ持つ。
・『武神の籠手』かつて武を極めた者が身に着けた籠手。攻撃力、防御力を増進させる。
・『エルフのマント』エルフのお姫さまが想い人の無事を祈って織ったといわれるマント。あらゆる攻撃が躱しやすくなる。
・『祝福の指輪』敬虔な祈りで浄められた指輪。邪悪な呪いや災厄から持ち主を保護する。
・『閃光のスカーフ』とても軽くて柔らかいスカーフ。閃光のように早く動けるようになる。
・『女神のオーブ』女神の力が宿る桃色の宝玉。魔法の威力を格段に高める。
・『奇跡の腕輪』持ち主に様々な奇跡的な幸運をもたらす腕輪。信じる気持ちが奇跡を起こす。
・『水の羽衣』海の国の名産品。ただし海竜王によって市販品以上の性能になっている。
・『竜のローブ』海竜王の力が宿ったローブ。刃物で斬りつけると逆に刃物がボロボロになる。
・『天使のローブ』仄かな光を放つ薄いローブ。海竜王によって作られた。
・『死神のローブ』返り血が目立たない海竜王お手製の黒いローブ。除菌消臭の効果もあるスグレモノ。
・『武闘着』動きやすさと体のラインの出やすさを重視して作られた装備。
・『血塗られた盾』大きな代償を払うことで、堅固な守りが獲得できる。
・『慈愛のリング』浄化された邪悪なイヤリングの残骸。とても慈悲深くなる。
・『エルフの弓』両親の形見の弓。小ぶりで扱いやすい。
・『盗賊のナイフ』小ぶりなナイフ。鞄を裂いてスリをするのに便利。
・『青魔導師のロッド』疲れたとき寄りかかれて便利ですわ。
・『青いとんがり帽』かぶれば今日からあなたも青魔法使いですわ。
・『鬼娘の手甲』硬いものは歯を食いしばって殴るッス!
・『魔法金属のこん棒』撲殺天使さんの相棒。

7人「…………」

勇者「後半適当じゃね?」

青魔「え、えーと…」

少女「まあまあ。さっそく分配していこう」

剣士「生命の樹の種」

勇者「一応、俺が持つよ。多分、俺の持ち物は少なそうだし」

剣士「光の剣」

少女「それは間違いなく君だね」

天使「完全に認められていますからね…」

剣士「日輪の兜」

鬼娘「被るッス! 天才ちゃんになるッ …あうっ」バチチッ

天使「拒まれてますね…」

青魔「えーと…四苦王さまがよろしいと思いますわ」

少女「自分が守護してきたものを自分で使うとはね…でも認めてくれてるのなら問題ないか」カポッ

鬼娘「うー…」


剣士「勝利の鎧」

少女「それも君だろう」

勇者「俺は装備できないしな」

剣士「武神の籠手」

鬼娘「自分ッス! 武神さまと夢の中で修行してきたッス!」スチャ

エルフ「げ、幻覚…。まあ、それでも良さそうだな」

剣士「エルフのマント」

青魔「ふふ、これはあなたでしょう?」

エルフ「…おれでいいなら、おれに使わせてくれ」

剣士「祝福の指輪」

少女「天使くんがいいね。他が呪われたら天使くんが解呪できるだろうし」

天使「ありがとうございます」

剣士「閃光のスカーフ」

勇者「先輩かエルフかな」

エルフ「おれはマントを譲ってもらったし、それは遠慮するよ」

剣士「女神のオーブ」

勇者「魔法が得意な人…天使さんか生命の審判、青魔導師、エルフ。候補が多いな」

天使「青魔導師さんがよろしいかと。まだ伝説の装備を持っていませんし」

青魔「…分かりましたわ。しかし、できる限り共有いたしましょう。私たちにとってかなり有用ですもの」

剣士「奇跡の腕輪」

少女「勇者くんに装備してほしいところだけどね…」

勇者「できないからな…やっぱりそれを手に入れた先輩がいいと思う」

剣士「水の羽衣」

エルフ「これ絶対に青魔に向けてだと思う」

天使「そうですね。とても似合うと思います」

剣士「竜のローブ」

青魔「これはエルフのでしょう?

勇者「竜に変身できるようになったんだっけか? 俺はまだ見てないけど」

天使「う、嫌な記憶が…」←吐いた

エルフ「それはおれのセリフだ…」←かけられた

剣士「天使のローブ」

鬼娘「直接的ッス」

少女「ひねりも何もないね」

剣士「死神のローブ」

少女「僕、だろうなあ…。死神か…」

少女「死神少女見参☆あなたの生命を刈り取るよ!」キラッ

6人「……」

少女「な、なんてね…あは、あはは……」カァ…

勇者(かわいい)

剣士「武闘着」

鬼娘「これは俺ッス! 武神さまに見せたいッス」

勇者「さっきから出てくる武神さまって誰だ?」

天使「ふ、触れないであげるのが優しさですよ」

エルフ「そ、そうそう」

青魔(氷漬けにしたことを知られたくありませんものね)

剣士「血塗られた盾」

盾「我は装備品扱いか」

勇者「まあ、盾だしな。こいつは俺が持ち主ということになってる」

少女「代償というのは?」

勇者「え、えーと、なんだっけなぁ」

青魔「……」じー

勇者「うっ…」

勇者(……青魔導師は今日もめちゃくちゃ可愛いなー! どうしてあんなに可愛いんだろう! はやく水の羽衣を着た青魔導師が見たいなー! あんな可愛い子に好かれるなんて俺は幸せ者だなあ!)

青魔「……」ぼっ

勇者(青魔導師可愛いめちゃくちゃ可愛い、優しいところも、気が利くところも、たまにドジッちゃうところも全部かわいい。かわいいかわいい)

青魔「あ、も、や……」ぼぼぼっ

青魔導師は読心をやめた!

青魔「あう…」ぷしゅー

エルフ「…どうした?」

勇者「さ、次に行こう! 次!」

剣士「……慈愛のリング」

勇者「これも俺だな。あのお婆さんにもらった呪われた装備の残骸を海竜王に浄化してもらったんだ」

天使「慈悲深くなる…魔王に情けをかけそうですね」

エルフ「スパッと倒してもらいたいけど」

少女「君たちが、持った方がいいんじゃないの?」

剣士「エルフの弓、盗賊のナイフ」

エルフ「なんか出すまでもなかったな、すまん」

勇者「その弓、形見だったんだな」

エルフ「ん、まあな。最近は2つともあまり使ってなかったけど。」

剣士「青魔導師のロッド、青いとんがり帽」

少女「かなり適当な鑑定だったね」

天使「とんがり帽もロッドもとてもお似合いですよね」

剣士「鬼娘の手甲」

鬼娘「武神さまの籠手があるし、これは使わないッスね。でも長年の相棒だし持ってくッス」

剣士「魔法金属のこん棒」

天使「相棒じゃないですよ! ただの拾い物です! だいたい撲殺天使って何ですか!? 失礼ですよ!」

少女「じっさい撲殺天使…いや、なんでもないよ」


勇者「これで全部か。おさらいするか」

勇者:生命の樹の種、血塗られた盾、慈愛のリング
天使:魔法金属のこん棒、祝福の指輪、天使のローブ
エルフ:エルフの弓、盗賊のナイフ、エルフのマント、竜のローブ
青魔:青魔導師のロッド、青いとんがり帽、女神のオーブ、水の羽衣
剣士:光の剣、勝利の鎧、閃光のスカーフ、奇跡の腕輪
少女:日輪の兜、死神のローブ
鬼娘:鬼娘の手甲、武神の籠手、武闘着

勇者「あとは敵の情報もできるだけ共有したい。まず俺が一人で魔国に乗り込んだ時に出会った戦狼という魔物がとても強かった」

鬼娘「戦狼さまは魔王軍の大将ッス」

剣士「赤騎士とはどちらが強いの」

青魔「白兵戦なら同等以上らしいと聞き及んでいますわ」

剣士「…ふうん、結構強いのね」

エルフ「あとは、この前の馬鹿筋肉か…」

剣士「アイツとは戦っちゃダメよ。本気のアレと戦えるのは私くらいね。出会ったら生き延びることを第一に考えなさい」

5人「……」

青魔「魔王の側近もいるはずです。とても性格が悪くて腹黒いですから、お気をつけてくださいませ。魔法が得意なはずですわ」

鬼娘「側近さまはいい噂を一切聞かないッス」

勇者「あとは…魔王か……」

勇者(……魔王の姿が変わったということは、姉さんは、もう…)

天使「魔王はどのような姿を…? やはり凶悪な偉丈夫ですか?」

勇者「いや、見た目は可愛らしい幼女だ」

剣士「かわいい…」ギロッ

勇者「あ…いや…」

盾「見た目は非力そうだが、女狐を一方的に蹂躙するような凶悪なバケモノだ」

勇者「そ、そうそう。だから気をつけてくれ」


コンコン

勇者「はい」

人魚「あ、大丈夫ですか? 最中だったりしません?」

勇者「あー、変な気を遣わせてごめんなさい…」

人魚「あ、いえいえー。それよりも! 海竜王さまが呼んでるのよー! はやくきてきてー!」

全員「!」


海竜王「あー、お主ら、心配かけたの」

エルフ「いえ…ご無事でよかったです」

海竜王「手も足も出んかった。そもそも戦ったのも初めてだしの」

鬼娘「ほへー、そうだったんスね」

海竜王「戦うというのは……怖いの。戦争はもう数えられぬくらい見てきたが、皆あのような気持ちだったのかと、今になって知ったわ」

少女「ふふ、まだまだ学ぶことは多いよね。僕もそうだけどさ」

海竜王「こんなにも恐ろしいことをお主たちに強いていたのだな……すまぬの」

剣士「今更ね。笑わせるわ」

エルフ「おい!」

海竜王「いや、よい。……娘よ、お主が何者かは大体察しがついておる」

剣士「…そう」

海竜王「その上で頼む。どうかこの世界のために戦ってくれ」

剣士「イヤよ」

勇者「先輩!」

剣士「……アタシはね、世界のためなんかじゃなくて、コイツのために戦うのよ。まあ、あとは父さんと……ここにいる私の敵たちのために?」

青魔「…うふふ、ありがとうございます」

剣士「……その見透かした笑いはやめてちょうだい。見透かしてるのだろうけれど」

少女「いや、サトリじゃなくても分かるさ。ありがとう」

鬼娘「先輩さんは天邪鬼ッスね!」

剣士「オロすわよ」

鬼娘「ヒェ…」

海竜王「勇者、女神の力は復活したようだの」

勇者「…ああ、お陰さまで」

海竜王「くっくっ、エロの力、魔王にとくと示してやれ。くそ生意気な幼女を陵辱してしまえ」

勇者「うわぁ…なんでそんな返事し辛いことを言うかな」

海竜王「おっとすまぬ。つい本音が」

天使(わざとですよね)

青魔(わざとですわね…)

海竜王「魔王を倒し、生きて帰ってこい。勇者、そしてお前たちならばできる」


勇者「…ああ!」





勇者「魔王は空の国に根城を移したのか」

エルフ「天使さんの転移魔法と、おれの竜化魔法、どっちでも行けるみたいだ」

少女「転移魔法は、きっと決まった場所に出るよね。そうすると待ち伏せされる可能性が高いわけだ」

剣士「竜になって飛んでいっても認識されれば同じよ」

鬼娘「どうするッス?」

勇者「そうだな…二つに分割するか。最初に転移魔法、それから直接乗り込む」

少女「どっちにしろ対策されてると思うけどね。できれば相手の作戦に乗りたくないな」

剣士「虎穴に入らずんば、よ」

天使「私、竜はちょっと…」

エルフ「おれも天使さんは乗せたくない…」

青魔「やはり分割の方がよろしそうですわね」

少女「それならこれでどうだい?」

転移魔法:天使、少女、鬼娘、剣士
正面突破:エルフ、青魔、勇者

剣士「む、それならアタシは正面突破にするわ」

少女「残念だけど、勇者くんと君は分かれてもらわないと困る。これがいやなら勇者くんと君は交換だ」

剣士「なんでよ!」

少女「防御力の問題だ。女神の力、それから血塗られた盾の防御力は高い。正面突破に耐えるには少ない人数での起動力と高い防御力がいる。もちろん、天使魔法も然り。だから君たちは分ける必要がある。そして、正面突破の人数を減らす必要がある」

エルフ「ま 確かに乗せる人数が多いと大変だな。勇者なら青魔が落ちても、助けられるし」

勇者「自在に紐が出せるからな。なんだかんだ便利だ」

剣士「……分かったわよ。早くこないとアタシが魔王を倒すからね」

天使「本当に倒してしまいそうですね」

鬼娘「そうッスね」


天使「転移魔法の準備ができました」

鬼娘「さあ、行くッスよ!」

青魔「私たちもすぐに追いつきますわ」

天使「行きますよ」

天使は転移魔法を唱えている!

剣士「勇者!」

勇者「……!! は、はじめて勇者って…」

剣士「絶対に、勝つわよ」

勇者「お、おう!」

剣士「子どもは3人は欲しいからね!」

勇者「お、おう!?」

天使は『転移魔法』を放った!

4人は空の国に転移した!

勇者「……」

青魔「私たちも準備をしましょう」

勇者「そ、そうだな」

エルフ「…女1人、男1人」

勇者「お、おう?」

青魔「私は勇者さまとの子どもなら何人でも嬉しいですわ」

勇者「へあっ!?」

エルフは『竜化魔法』を唱えた!


勇者「お、おお! かっこいい!」

勇者は目を輝かせている!

勇者「竜に乗るってやっぱり男の夢だよなー! エルフ、ありがとな!」

竜?「…フン、逆鱗ニハ触レルナヨ」

青魔「あ、逆鱗はコレですわ」ぺたっ

竜?「…ギャアアァァァァァッッッ!!」

青魔「あっ」

勇者「分かってる。悪意はないんだよな」



竜?は天高く飛び上がった!

空の国・新魔王城。

魔王「――来たか。二手に分かれるなど無駄なことを……どうせ分断されるのにな」

魔王「さあ、楽しい時間の始まりだ♪」

――――――――

鬼娘「うえ…なんかいつもと違って変にグニャグニャして気持ち悪くなったッス」

天使「特殊な結界魔法が張られていたようです……剣士さんとは離れてしまいましたね」

少女「即死の魔法でないだけ良かったと考えるべきかな」

鬼娘「…誰か来たッス!」

戦狼「新しい魔王城によくぞ来た。我輩は戦狼。貴様らの相手は我が致す」

鬼娘「う、戦狼さまッスか」

戦狼「…フン、魔物の分際で勇者に与するなぞ恥晒しめ」

鬼娘「うるさいッス!」

戦狼「万が一にも魔王さまが死ねば、魔物は死に絶えるというに愚かな」

天使「!」

鬼娘「……」

戦狼「本当にバカだな」

鬼娘「……バカでもアホでもいいッス」

鬼娘「大好きなご主人のために、死ねるなら、なんの後悔も恐怖もないッス! 鬼を舐めるなッス!」キッ

天使「…鬼娘さん」

戦狼「底抜けのアホクズめ」チャキッ

天使「…! 見てください! あの剣…!」

戦狼「ほう知っているか……魔王さまからいただいた闇の剣の威力、とくと見るがいい!」

少女「いやあ、もう勇者くんが使ってるの見たしね」

天使「そうですね、大体知ってます」

戦狼「……」

鬼娘「うぅ…いぬ…犬なんかに、負けないッスよ…!」

戦狼「……」イラッ

少女「あ、君の手甲借りてもいいかい」

鬼娘「へっ? 四苦王さまも拳でい、犬と戦うんスか?」

少女「そういうわけじゃないけど」

戦狼「…犬、犬、犬犬、うるさいわ! 斬り殺してくれる!」


――――――――

剣士「…久しぶりね。そう、ほんと久しぶり」

地獄闘士「ふふ、そうですね。まさか敵になる日が来るとは」

剣士「…手加減は一切しないわよ」

地獄闘士「…ふふ、どうして唯一の生き残りである私たちが戦わなければいけないと? あなたもこちらの味方に着きなさい」

剣士「…お断りするわ」

地獄闘士「あなたが私に勝てると?」

剣士「あら? アナタがアタシに勝てるのかしら?」

地獄闘士「…やれやれ」


地獄闘士「本当に憎らしい妹ですね」


――――――――

青魔「あいたた…ここはどこですの?」

エルフ「分からん、魔法で飛ばされたらしい。勇者ともはぐれた」

狂爺「おやおや、青魔導師ちゃんジャないか」

青魔「狂爺!? …お久しぶりですわね」

狂爺「ははは、相変わらずめんこいのう。飴ちゃんいるかの?」

青魔「お気持ちだけで結構ですわ」

狂爺「おやぁ、飴ちゃん、好きジャったろ?」

青魔「いつの話ですの? 私はもう立派な淑女ですわよ」

エルフ「よく転ぶ淑女もいたもんだ」

青魔「うるさいですわ!」

狂爺「そうかいのー、この飴ちゃんは特別な新作なんジャが…」

青魔「うっ、狂爺の手作りですの?」

狂爺「うむ。舐めると、ニンゲンが魔物になっちゃう飴ちゃんジャよ」

ダークエルフ「…東国の王といい、人間が魔物化する事件の黒幕はあなたなのね」ズズ…

狂爺「ほう、ダークエルフ! 珍しい材料ジャ」

青魔「狂爺…旧くからの知り合いでも許しませんわ!」

狂爺「ヒッヒッヒ、あのちゃっこかった青魔ちゃんから叱られる日がくるとは……長生きはするもんジャ」

狂爺「のう、側近?」

ズルズル…

側近?「ドウシテ壁防イデ私喜バレルシナインデス?」ギチチ…

ダークエルフ「う…なにあれ」

青魔「そ…側近……“コレ”が……っ!?」

側近?「お肉ノ父母渡スノ心臓アガルンデス」ギィィ…

狂爺「改造した結果、強くはなったが、完全に自我が壊れてしまったんジャ。今じゃ魔法を連発するだけの肉の塊ジャよ」

ダークエルフ「アナタ、絶対に許さないんだから…!」

狂爺「ヒッヒッヒ、怖いのう」メキャメキャ…

狂爺の肉体が変容していく!

青魔「な……」


極キメラ「ヒッヒッヒッ、若いモンには負けんぞ?」

――――――――

魔王「さて、役者は出揃った。最終決戦の始まりだな」

魔王「雌雄を決する戦い、どちらが勝つか楽しみだなあ。もちろん俺様だけど」

魔王「なあ、勇者♪」

勇者「魔王…」

魔王「少しくらいは楽しませろよ?」

勇者「無駄な語りはもう結構だ…いくぞ!」

勇者は女神の力を解放した!

魔王「もう始めんのかよ。早漏め」

複数のピンクローターが魔王へと飛びかかる!

魔王「様子見してんじゃねえよ。そんなんじゃ障壁は貫けねえよ」

ピンクローターは魔王周辺に展開する障壁に阻まれた!

勇者「……」

勇者は右腕を超極太ディルドに変化させた!

ディルド「やあ( `・ω・)」


勇者「撃ち抜くぞ」

ディルド「任せてよ( `・ω・)」

勇者は超威力のスペルマ弾を放った!

しかし魔王は発射直前に勇者の後ろに瞬間移動した!

魔王「威力は認めるけど、隙がでけえよ」

勇者「人のことは言えないな」

勇者は広背筋を触手に変化させて魔王を襲う!

魔王「うぇ!?」

魔王を障壁ごと確保した!

勇者「今度こそ頼むぞ」グルッ

ディルド「撃ち抜いてみせる( `・ω・)」

しかし魔王は再び瞬間移動した!

勇者「ちっ…掴んでもダメか」ズルル…


魔王「はっ、どっちが魔物か分からないな」

勇者「俺が分かればいい」

勇者は見た目を巨大蜘蛛に変化させた!

魔王に高速で迫る!

魔王「子どもだましだな」

魔王の『滅火』!

全方位を焼き尽くす破滅の炎!

勇者「!」ジュウウゥゥ…

魔王「こんなものかよ、勇者?」

勇者「……っ!!」

勇者は大蜘蛛の腕6本を極太ディルドに変化させた!

魔王「っ!」

超威力のスペルマ弾を乱れ撃つ!

魔王「小賢しい!」

魔王の『邪光』!

破滅の光が勇者に降り注ぐ!

しかし血塗られた盾が防いだ!

魔王「っ!」

盾「我がいることを忘れるなよ」

スペルマ弾が魔王の障壁を破った!

魔王「ちぃっ…」

盾「ふん、これで邪魔な壁は消えたな」

魔王「障壁なんざ、すぐに復活す…」

勇者「ガルルルッ」

大型犬に変化した勇者が魔王の首筋に噛み付く!

魔王「がああァっッ…!?」

そのまま下半身を拘束具と縄に変化させて魔王を捕縛した!

魔王「ぎ……ッ」

さらに両腕を拷問具に変化させた!

グチュチュチュ……

ブチブチ……

魔王「ッッッ……!!」

勇者は髪の毛を巨大触手に変化させて魔王を捕食しようとする!

魔王「ふ……ざけんなァァ!」ブワッ…!


魔王は破滅の力を解放した!

――――――――


側近?「私オ高クテ証拠欲シインデス」

青魔「…強いですわね」

青魔(思考が支離滅裂で読むと精神を消耗しますわ。狂爺の心も何かおかしいですし…)

極キメラの間髪入れぬ猛攻!

ダークエルフはなんとか全て躱す!

ダークエルフ(はあ…はあ…エルフのマントがあってよかった)

側近?は『侵蝕魔法』を放った!

青魔「…っ、エルフ!」

青魔は『風魔法・大』を変質させて放った!

ダークエルフ「…おっと…どうも!」

極キメラ「ひらひら躱すのゥ。それならこれはどうジャ」サァァ…

ダークエルフ「…『解毒魔法』!」

ダークエルフは撒かれた毒の粉を無効化した!


極キメラ「さすがはエルフ族、薬草や毒草には精通しとるのゥ……ジャが」ニヤッ


青魔「…エルフ! 毒以外にも何かありますわ!」


ダークエルフ「…っ?…虫! …『電撃ま…っ!」

ダークエルフはその場に倒れ込んだ!

エルフ(か、体の、感覚が…)

極キメラ「神経麻痺させるだけの虫ジャ。充分ジャがの」

側近?はエルフに『猛毒魔法』を放った!

青魔「…させませんわよ!」

青魔導師は『飛沫の吐息』を放った!

『猛毒魔法』はかき消された!

エルフ(……青魔、ごめんね)

青魔「何を弱気になってるんですの! ここは私が切り抜けますわ!」

極キメラ「ヒッヒッヒ、二対一ジャ。勝ち目はないぞ」

青魔「勝ちますわよ!『万能強化』! そして『閃烈光』!」

側近?「暗イヲ囲マレテ石ト足聞コエルンデス」

極キメラ「目くらましとは…古典的ジャ」

青魔(効いてますわね! あとはエルフが回復するまで、予想の裏をかいて逃げますわ!)タッタッ

ガッ!

青魔「きゃっ!?」

青魔導師はエルフを抱えたまま転んだ!

エルフ(…おいっ!)

青魔「うぅ……」

側近?「ナントコノワシが好キト申スカ」

極キメラ「…ヒッヒッヒ、何もないところで転ぶ癖は治っとらんの。まあ、ワシは非常用の目が何十とあるから目くらましは意味ないが」パチパチパチパチッ

(タスケテ…タスケテ…)
(クルシイナァ…)
(ダレカァ、タスケテクレェ…)


青魔「…!?」

極キメラ「この肉体は多くのマモノとニンゲンを混ぜ合わせた混合獣の完成形ジャ。それくらい当然ジャろ」

青魔「…どこまでも生命を侮辱していますわね!」

極キメラ「ヒッヒッヒ、そうせんと得られぬものもあるんジャ。側近、大きいのをかましてやれ」

側近?「滅ビユク者コソ美シイ」

側近?は「『究極破壊魔法』を放った!

青魔「…貴方たちなんかに負けませんわよ! ――『大宇宙幾何』!」

二つの魔法が相殺する!

青魔導師は猛攻を続ける!

青魔「『風魔法・極』! 『針一万本』! 『死神の爪』!」

極キメラ「グウゥ……青魔法如きにやられる肉体ではないんジャ!」

極キメラの『骨弾連射』!

青魔「ぅっ…!」

青魔導師の体を貫いた!

極キメラ「側近、今ジャ!」

側近?「オキノドクデスガ冒険ノ書ハ消エテシマイマシタ」

側近?は『究極破壊魔法』を放った!

青魔「……っ」

――――――――

剣士の『絶影』!

地獄闘士は受け止める!

剣士の『亜空切断』!

地獄闘士は躱す!

剣士の『天地両断』!

地獄闘士は受け流す!

剣士「…ふん、デタラメな強さね」

地獄闘士「どの口がいいますか。まあ、次は私から…」

剣士「させないわ」

剣士の『諸行無常』! 『生者必滅』!

地獄闘士「っ、ハッ!」

地獄闘士は斬撃を殴りとばす!

剣士「ほんと、デタラメ…!」

地獄闘士の『衝天掌』!

剣士は体を捻って躱す!

地獄闘士の『破砕掌』!

剣士は躱しきれない!

剣士「ぐっ…」

地獄闘士の『超・連続打』

剣士はまともに食らってしまった!

剣士「…っ」

地獄闘士「兄にかなう妹がいると思っていたのですか?」

剣士「…勝った気でいるんじゃないわよ」


地獄闘士の『正拳突き』!

剣士の腹部に直撃した!

剣士「うっ…ふ…! ふん、こんなものなの?」

地獄闘士は剣士を掴み上げた!

グシャッ

剣士「……」つぅ…

地獄闘士「…生意気な。少し折檻が必要ですね」ゴッ

剣士「――っ」

ゴッ…ゴッ…ゴッ…ゴッ…


――――――――

戦狼「この程度では話にならんぞ!」

鬼娘「うぅ…うるさいッス!」

戦狼は鬼娘を吹き飛ばした!

鬼娘「はぎゃっ…! うぅ…やっぱり犬は苦手ッス」

少女「やれやれ…。君、彼は犬じゃなくて狼だ。犬じゃないなら何も怖くないだろう?」

鬼娘「犬じゃない…?」

少女「そう。だから君が恐れることなんて何もないのさ」

鬼娘「…そうだったんスね! もう何も怖くないッス!」

戦狼「だからずっと犬じゃないと言ってるだろ! 貴様らァ…!」

少女「それなら犬じゃないって証明してみなよ」ぽいっ

生命の審判は『鬼娘の手甲』を戦狼に投げた!

鬼娘「ああ!? なにするんスか!?」


ぷぅぅーん…

戦狼「うっ…くっさ…ッ!?」

鬼娘「!!」ガンッ

少女「この程度で臭がるということはやっぱり犬かな?」

鬼娘「…犬っころめー!! 許さないッス!! ギタギタにしてやるッス!」むきーっ

少女(僕も結構臭かったけ)

天使「…もう! 真面目にやってください!」

天使の『連続魔』!

『電撃魔法・極』!
『電撃魔法・極』!

『雷帝の裁き』となった!

戦狼「魔法は効かぬ!」

戦狼の魔封剣!

天使の魔法を吸収した!


ぷぅぅーん…

戦狼「うっ…くっさ…ッ!?」

鬼娘「!!」ガンッ

少女「この程度で臭がるということはやっぱり犬かな?」

鬼娘「…犬っころめー!! 許さないッス!! ギタギタにしてやるッス!」むきーっ

少女(僕も結構臭いと感じてしまったけど、黙っておこう。おかげで効果はありそうだし)

天使「…もう! 真面目にやってください!」

天使の『連続魔』!

『電撃魔法・極』!
『電撃魔法・極』!

『雷帝の裁き』となった!

戦狼「魔法は効かぬ!」

戦狼の魔封剣!

天使の魔法を吸収した!


天使「うっ…連続魔でもダメですか…」

少女「肉弾戦が強くて、魔法が効かない。僕たちにとって最悪の相性だね」

鬼娘「それなら自分が頑張るッス! うおー!」ダダッ

戦狼「ふん、無策に突っ込みおって…この臭女!」

鬼娘「にゃっ…ゆ、許さないッスよォ…!」ブンッ

戦狼「食らわん!」ゲシッ!

鬼娘「ぎゃふっ!」


少女「……天使くん、ちょっと耳を貸して」ちょいちょい

天使「はい…?」


鬼娘「うりゃー! 特攻ッス!」ダッ

戦狼「意味が分かってるのか!? ふん、遊びはこれまでだ…!」チャキッ

少女「剣を使ってるならば…」

生命の審判は『拘束魔法』を放った!

戦狼「ぬっ…」ギチ…

天使「魔封剣を使えないんですね!」

天使は『拘束魔法』を放った!

戦狼「ヌゥ…ッ…!」ググ…

鬼娘「隙だらけッス!」

戦狼「…ハァッ!」ブチチッ

戦狼は『捕縛魔法』を打ち破った!

鬼娘「でやッ!」


鬼娘の『痛恨の一撃』!


戦狼「――っ!」

戦狼は大きく仰け反る!

鬼娘「まだまだァ!」

鬼娘の『追い討ち』!


戦狼「……」ギロッ

戦狼の反撃!

鬼娘は袈裟懸けに斬られた!

鬼娘「ぁ…」

戦狼「ふん、先ずはお前からだ、アホクズめ」

鬼娘「……ぅ」

戦狼は鬼娘に止めを刺そうとする!

少女「訂正してもらうよ」

戦狼「……ッ!?」

生命の審判は召喚した大鎌で戦狼の足を切り裂いた!

少女「その娘はアホだけど、クズなんかじゃない」

戦狼「い…つの間に…!」

戦狼(姿が透明になって…いや、それだけならニオイで……っ! あのクサイ手甲のせいで嗅覚がマヒして…!)

少女「やぁっ!」ビュオッ

戦狼「そんなヤワな攻撃が通じんぞ!」

少女「……」にっ

戦狼(…!!)


天使「っ……『連続魔』!」

『聖霊魔法』!
『星霊魔法』!

『夢幻の鎮魂歌』となった!

戦狼「――――っ」

少女「……君の負けだ」にこっ


・・・

シュウウウウウ……

凄まじい砂埃が舞い上がっている!

天使「…………」

シュウウ……

鬼娘「……ぅ」ぐたっ…

天使「……鬼娘さん!」

天使は駆け寄り、彼女に『回復魔法・極』を放った!

鬼娘「……うう、た、助かったッス。…あ、戦狼さまは!」

天使「…この瓦礫の下です」

鬼娘「…すごい瓦礫の山ッスね。…でも、自分は何ともなかったッスよ」

天使「……おそらく彼女の『障壁魔法』によるものでしょう」

鬼娘「四苦王さまッスか? どこッス?」

天使「……」

――少女『長期戦は圧倒的に僕たちが不利だ。素早く決める必要がある』

――少女『僕が攻撃したら、僕ごと渾身の一発を叩き込むんだ。鬼娘くんがいても構わない』

――天使『し、しかし、巻き添えに…』

――少女『大丈夫、僕を信じてくれ』

天使(あの状況で咄嗟に同時に二つの障壁魔法をかけるなんて不可能なはず…いや、でも彼女なら……)

天使「……きっと、きっと、近くにいます」

ガラッ

天使「!」

鬼娘「あっ、四苦王さ…」


戦狼は『道連れ』の呪いを天使にかけた!


戦狼「ふぅ…ふぅ…ふはは、貴様だけでも殺してやる!」

天使「……」ブチッ

戦狼「貴様らは必ず根絶やしに――」


メゴオォッッ――!!


天使の攻撃!



戦狼「きゅぅ…」チ-ン


戦狼を倒した!

呪いは『祝福の指輪』に阻まれて発動しなかった!

天使「ふぅ…ふぅ…!」

鬼娘「ひぃ……」

カラカラッ…

「「!!」」


少女「や、やあ…」

天使「……よかった、無事だったんですね!」ぎゅぅ…

少女「ま、まあね。『日輪の兜』のお陰でね」

少女(……ほんとは、『不可視化魔法』で隠れて、驚かせようと思ってたんだけど…悪ふざけで撲殺されたくないからね)


鬼娘「あ、闇の剣ッス! 師範さんに返すッス!」

鬼娘「……えへへ、おれたちの完全勝利ッスね!」ぶいっ


――――――――

カランッ…

光の剣が剣士の手から落ちた!

地獄闘士「…ふぅ、やり過ぎましたかね」

剣士「……けほっ」

地獄闘士「…もう一度だけ、機会を与えます。私と共に来なさい。断るならば、あなたを因果ごと破壊します」

剣士「…………」

地獄闘士「さあ、どうするのですか?」

剣士「……アナタの目的はなんなの?」

地獄闘士「目的? 住みよい世界に定住する、それだけでしょう? 魔王さまのもとでなら、私たちは最も恵まれた安穏を享受できますよ」

剣士「……アタシにはね」

地獄闘士「はい?」

剣士「…産んでくれた母さんと、優しい父さんと、シスコンで女好きのヘタレな旦那(予定)がいるわ。あとは……まあ、鬱陶しい仲間もできたけどね」


剣士「…みんな、優しくて、素敵で……アタシの大切な家族よ。そんな家族を捨てて、アナタを取ることなんて死んでもあり得ないわ」

地獄闘士「…残念ですが仕方ありませんね。因果ごと消滅してください」スッ


剣士「それもお断りよ…………躰即是剣」


地獄闘士の『一撃必滅』!


しかし剣士には当たらなかった!


ボトッ

地獄闘士「…私の腕が……?」

剣士「……剣即是躰」

剣士は光の剣を握った!

ぶわあっ……!

地獄闘士「……バカな。もう瀕死のはず…どこに、こんな闘気が…!?」



剣士「逆境だからこそ」すうっ


地獄闘士「悪足掻きは…やめなさい…!!」

地獄闘士の『無限掌』!


剣士「奇跡は起こるのよ」ふっ



『会心の一撃』!!



地獄闘士「な、んで…因果ごと…き、消えたく…な……あ、ああぁァァァァァァァァァァァ!!」


地獄闘士を倒した!


剣士「…この世界に連れてきてくれたことだけは感謝してるわ。おかげで大切な人たちに会えたもの」


――――――――

側近?「ヘンジガナイ。タダノシカバネノヨウダ」

青魔「……ぅ」

極キメラ「ヒッヒッヒ、あの魔法を食らってまだ息があるか」

エルフ(……動いて…動いてよ! わたしの体! また、大切な人が死んでいくのを見てるだけなの!?)

ぎゅっ

青魔「…大丈夫ですわ。わたくし…は…あなたを、置いていったりしませんわ」にこっ

エルフ「…っ」

極キメラ「泣かせるのぉ。安心しろ、屍体は並べて研究に使ってやるわい」

側近?「ブキハ装備シナイト意味ガナイゼ」

側近?の『吸命魔法』!

青魔導師の生命力を吸い取る!

青魔「あ、ああ……っ」

エルフ「……っ」


エルフ(もういやだ…見てるだけはいやだ…!)

エルフ(わたしはもう、目の前で大切な人を喪いたくない! 喪いたくなんかない!)

エルフ「――――ァァァアアアッッ!!」


エルフは『竜化魔法』を進化させる!

極キメラ「…なにが起こっとるんジャ?」

側近?「ヒトノモノ取ッタラドロボー」

エルフ?「そうね、わたしの親友から泥棒するのはやめてよ」

エルフ?は『電撃魔法・極』を二発放った!

側近?「ヌワーーーッ」バチチッ

極キメラ「…なぜ動ける? 神経毒の効果はまだ続くはずジャ」

エルフ?「そう、毒が鬱陶しいから体を再構成したの」

エルフ?は『火炎魔法・極』を二発放った!

極キメラ「ぐぅ…!?」


エルフ?「ダークエルフの力と竜の力を兼ね備えた…ハイエルフとでもいえばいいのかな」

青魔「…エルフ」

エルフ「ありがとね…。『回復魔法・極』」

青魔導師の傷が癒えた!

青魔「…まだ感謝を述べるには早いんじゃなくて?」

エルフ「…うん。さあ、あいつらを倒すよ!」

青魔「もちろんですわ!」

側近?「ユウベハオ楽シミデシタネ」

側近?の『連続魔』!

『腐蝕魔法』!
『吸生魔法』!

『災禍の哄笑』となった!

エルフ「…こんなもの!」

青魔「消し飛ばしてみせますわ!」

エルフは『究極破壊魔法』を放った!

青魔導師は『大宇宙幾何』を放った!

女神のオーブが二つの魔法と二つの想いを完全に融合させた!

合体魔法!!


『新星大爆発』!!


側近?「モシワシノ味方ニナレバセカイノ半分…」シュオッ…

側近?を欠片一つ残さずかき消した!

エルフ「わ、我ながら恐ろしい威力…」

青魔「ですわね…」



極キメラ(…こりゃ逃げるが勝ちジャわい)コソコソ…

青魔「あら、どこに行くんですの?」にこっ


極キメラ「ぐぅ…っ! 急用ジャ! また会おう!」

極キメラは逃げ出そうとした!
しかし、体が動かない!

極キメラ「ほっ…!?」

青魔「貴方の体ならば、私が古代魔法で乗っ取りましたわ。準備に心が複数あって手間取りましたが……」

極キメラ「な、なんジャと!?」

青魔「序盤、本当に私がただ傍観していたと思ってた貴方には予想外ですわよね?」

極キメラ「……す、すまぬ! 今後は心を入れ替えるから許してくれ! 本当ジャ! 今までのことも命令されて仕方なくやってたんジャ!」

青魔「……狂爺、貴方、私がサトリであることをお忘れになって? 貴方の変えようのない穢れた心、私には全てお見通しですのよ?」

極キメラ「ぐぅぅ……!」


青魔「……多くの方々の生命、そして心を陵辱した罪、とくと味わいなさい!!」

青魔「古代魔法『心理爆破』!」

狂爺の心が極微小に弾けていく!

青魔「狂爺、一瞬の間に、貴方の心だけが慣れることのない可算無限回の致命的痛みを受けますわ」

青魔「私たちからして一瞬の時間、永遠に死に続ける――それが貴方の受ける罪です」


極キメラ「――――」


極キメラを倒した!


エルフ「…どぎつい技ね」

青魔「ええ…本当に…。こんな無慈悲な魔法、失われて正解ですわ」

エルフ「…でも、その魔法を復活させたことは後悔しないでよ。だから…わたしたちが会えたんだから」

青魔「…うふふ、気遣い感謝しますわ」

エルフ「そういうんじゃないって」

青魔「分かってますわよ。…ありがとう」

――――――――


魔王「勇者ァ、こんなもんかよォ」

勇者「……」

魔王「…いやァ、普通こんなもんか。これくらいだと破滅の神と大差ないもんな。勇者の手に負えないよな」

魔王の『破壊』!

血塗られた盾が庇った!

盾「ぬぅ…!」

血塗られた盾に一筋のヒビが入る!

魔王「立てよォ。俺様は力が有り余ってんだからよォ」

魔王の『邪光』!

勇者「……」びくっ

魔王「暇つぶしに、お前の体を端から削りとってくぞォ。耳、爪、指、手の腹、つま先、手首、踵……」

勇者「まお…!」

勇者は髪の毛を電撃ムチに変化させた!

しかしすぐに消し炭にされた!


魔王「足首、腕、腕、腕…」

勇者「……」ビクビクッ

魔王「…はァ、つまんね」

盾(…これが、魔王の真の力か。勇者では太刀打ちできんぞ)

魔王「……無敵はつまんねェな。勇者、お前ならば少しは楽しませてくれるかと思ったんだがな」

勇者「……」

魔王「もう障壁も張ってないんだぜ? ほら、傷の一つも負わせてみろよ」

勇者「……魔王、その強さで、お前は何をするんだ?」

魔王「…テメェの姉が全ていったと思うがな。俺様の目的はこのチャチなシステムをぶち壊すことだ。勇者だの、魔王だの、創造と破滅だの、くだらねェ」

勇者「…それならば、俺を殺した後は、もう誰も殺す必要なんてないのか…?」

魔王「そりゃそうだ。魔王は本来、破滅の神がこの世に顕現するための器に過ぎない。俺様の一番の目的は、破滅の神の力を俺様のものにすることだ。そして、それはほとんど達成したと言ってもいい」

勇者「そ、それなら、もう人を殺すな! みなのために平和を築け!」

魔王「はあ? なんで、俺様より弱いゴミどもを俺様の好きに扱っちゃいけないんだ?」

勇者「……!」

魔王「弱さは、悪だ。俺様は悪が嫌いだ。だから消す。何もおかしくないだろ」

勇者「……」

魔王「お前らの人道主義や道徳なんて、弱いゴミ同士の馴れ合いだろう。俺様が尊重する理由もない」

勇者「……よく分かったよ。お前が独りよがりの可哀想なヤツだってことは。だから、俺がお前に並んでやる」ぐぐ…

魔王「…かっこいー♪」

魔王は破滅の力を一点に集中させている!

魔王「やってみろよ!」

魔王の『絶無』!

血塗られた盾が防ぐ!

盾「くぅ……!」

血塗られた盾が大きくひび割れる!


勇者は女神の力を剣へと変形させる!


勇者「…っ、喰らえ! 『性義の剣』!」


魔王「……はっ」


魔王は瞬間移動で攻撃を躱した!

魔王「もういいよ、お前。がっかりだわ」

魔王の『破壊』!

しかし発動しなかった!

先代勇者『…魔王、勇者は殺させない』

人形の光が魔王の攻撃を抑えつける!

魔王「…また出てきたか。裏切りに、裏切りを重ねやがって」

先代勇者『…元をたどれば、私の弱さが起こした不始末、私が始末をつける』


魔王「ああ、テメェの協力でうまくここまでうまくいった。ありがとよォ、裏切り者さん」

先代勇者「…勇者、私が抑えつける! 私ごと斬れ!」

勇者「……っ、ああ!」

魔王「…あーあ、夢にも思わなかったぜ」


魔王「こんなに上手くいくなんてな♪」


先代勇者『…がァァァァ!?』

勇者「!?」

魔王は先代勇者の魂を破滅の宝玉から弾き出した!

魔王「ようやくテメェを引きずり出せて、テメェの封印魔法が綻びた。厄介な封印を編み出しやがって…」

先代勇者『な、なにをするつもりだ…』

魔王「こうするんだよ」


魔王は『破滅の宝玉』を再構成する!


魔王「さあ、楽しい楽しい『世界の終わり』の始まりだ。最高の特等席から見届けな」

疲れたんで寝ます。
明日には完結するはず。




剣士「ところで、最初のうちは『光の剣』じゃなくて『聖なる剣』じゃなかった?」

鬼娘「>>1が完全に間違えたッス。作り込みが甘いッス。というか色々とやらかしてばかりッス! 誤字脱字、すぐ連投、LINEに誤爆、さっきも他のスレッドに誤爆したッス! 一回受精卵からやり直せッス!」

鬼娘「とりあえず『光の剣』に統一するッス! 本当に申し訳ないッス!」


東の国・勇者の故郷の村。

師範「あの子たちは無事だろうか…」

師範「…? なんだ、やけに空が暗いな…」


北の国・剣の山麓の村。

村人A「…今日も冷えるだ」

村人B「…おがしぐねすか? いくらなんでも寒すぎだべ」

村人C「んだな。なんだがゾワゾワするぞ」

村人D「イヤな気がするぞ…」


西の国・魔法の街。

大魔導士「……」

見習いA「師匠、また寝てる…今は講義の時間なのに…」

大魔導士「……っ」パチッ

見習いB「きゃっ!?」

見習いC「……おや、大魔導士さまが急にお目覚めになるなんて珍しいですね」

大魔導士「…なんということじゃ」

見習いA「どうしました?」

大魔導士「大いなる災厄が訪れる……」


中央国・南の町。

傭兵1「最近は平和だなぁ。仕事がねぇ…」

傭兵2「最近は魔物の軍勢との小競り合いすらなくなったもんな」

傭兵3「傭兵稼業も廃業かな。仕事探さないと」

傭兵4「俺も国に帰るよ。蓄えも少しできたし、国で店でを開くつもりだ」

傭兵1「しっかりしてんなー。ん、なんだあれ?」

傭兵2「なんだぁ? 遠くに豆粒みたいのが見えるぞ。なんか…動いてるような…」

傭兵3「……あの距離だと多分魔国だぞ」

傭兵4「巨大な魔物? はは、まさか。……まさかな?」


海の国。

海竜王「…………」

人魚「どーしたんですかー。生理痛がひどい時みたいな顔してますよー?」

海竜王「……こうなることは、想像していたが、実際に見るとやはり応えるの」

人魚「つ、突っ込んでくださいよー! ……何が見えたんですか?」

海竜王「……混沌の樹だ」


空の国。

盾「混沌の樹が魔物に…」

魔王「破滅の神は、魔王と混沌の樹の融合によって顕現する。つまり、アレは俺様の片割れだ」

魔王「見てろよ、勇者。お前が守ろうとしたものが壊れていくところをな」

先代勇者『……そんなことは、させんぞ!』

魔王「魂だけのお前に何ができる? お前はもうすぐに完全に消滅する。お前の役割は全て終わりだ」

先代勇者『ぐっ、うぅ……』シュゥゥゥ…

勇者「…先代勇者、俺の身体に入れ。同じ勇者なら因果とかいうやつも大丈夫だろ」

先代勇者『!! …だ、だが、お前の魂も変容するぞ…』

勇者「勇者になった時点で今更だよ。それに、恩人を目の前で見棄てられるほど器用な人間じゃない」

先代勇者『……勇者』

魔王「くっくっ、泣かせるねェ」

先代勇者『勇者…お前は、強いな』

先代勇者の魂は、勇者の中に入った!

先代勇者『…お前こそ、真の勇者だ。俺の分も、頼む』

勇者「…!!」

先代勇者の魂は勇者の力となった!

魔王「…くはっ、魂を食らったのかよ。もうニンゲンじゃねェな」

勇者「……バカやろう」

魔王「結局、先代勇者は何一つ勇者らしいことをせずに消滅か。クソまたいな存在に相応しい最期だな」


勇者「……それは違う」

勇者は『聖霊魔法』を放った!

魔王「!」

魔王の『暗黒』!

魔王(そ、相殺だと…っ!?)

勇者「はあっ!」

勇者の攻撃!

魔王「食らわねェ!」

魔王は瞬間移動で躱す!


勇者の『連続魔』!

『聖霊魔法』!
『星霊魔法』!
『結晶魔法』!

『三千世界の黙示』となった!

魔王の「…っ」

魔王の『絶無』!


相殺する!


魔王(…なんだこの強さは…!? 足し合わせたなんてもんじゃねェぞ! どうなってやがる!?)


グオオオオオォォォォ!!


魔王(……っ、『混沌の樹』が攻撃されている!?)

勇者「…みんなが戦っているのか…全員無事だったみたいだな」

魔王「…はっ、こっちに加勢せず、混沌の樹の方に行くとはな…オンナどもに見捨てられたな、勇者」


盾「なにを言っとるんだ、貴様は?」

魔王「あ?」

勇者「俺を信頼してるからあっちに行ったんだろ。俺がお前を倒すと信じてくれてるから」

勇者「だから俺は、みんなのためにもお前を倒す!」

魔王「言ってくれるじゃねェか…!」


グゴオォォォォ…………ッッ!!


魔王(チッ、押されてやがる…! どいつこいつも使えねェ!)

勇者「はあっ!」

勇者の攻撃!

魔王「ぐっ!」

魔王は瞬間移動で躱す!

勇者「そこ!」スパッ

魔王「ぐっ…!?」ポタタ…


勇者「まだまだ…!」

勇者の攻撃!

魔王は障壁で何とか防ぐ!

障壁は勇者の一撃で砕けた!

魔王「な、なんでこんな…!」

勇者「うおォォォ!」

魔王「っ…雑魚が調子に乗るなァァ!!」

カッ!

勇者「ぐぅ…!」



魔王は破滅の力を極限まで集約する!


勇者「……!!」

魔王「……全力で貴様を潰すッ!」




勇者「――負けられないんだ!!」


勇者の『真・連続魔法剣』!

『究極破壊魔法』!
『究極破壊魔法』!
『究極破壊魔法』!


女神の力が臨界点を超える!




『創世の剣』となった!




魔王「……!!」

勇者「……独りよがりの王さま気取り! 一からやり直してこい!」ダッ



魔王「ふん、破滅の力をなめるなよ…ッッッ!!」


魔王は集約した破滅の力を解き放つ!


魔王「……滅びろッッ!!」



魔王の『零』!



勇者「魔王ォォォォォォォォォォッッッ!!」

魔王「勇者ァァァァァァァァァァッッッ!!」



創造と破滅の力がぶつかり合った!



1を0にするか、0を1にするか。


それは結局、意思が決めるものである。


――ただ、そう。


始めから信じていた者と、最後に信じた者。


一方にのみ女神が微笑むのならば。


いったい、どちらに微笑むのだろうか。





ドサッ



魔王「……こ、この俺様が……っ」

盾「我がいることを忘れるな、と言ったろう」

勇者「はぁ…はぁ……お前、その姿は…」

盾「――我こそは『英雄の盾』。お前の、その誇り高き勇敢なこころが、我の呪いを解いたのだ」

魔王「ふ、ふざけるな……まだ…まだだ……」

盾「貴様の負けだ、魔王。潔く認めよ」

魔王「俺様は…おれさまはァァァァァッッ! 負けねェェェェッッ!」


ズズズズズズ……


魔王の体に混沌の樹の魔力が流れ込む!



勇者「……!!」

ズズズズズズ……

盾「な、なにをしている!」

魔王「…ふははは! ユウシャ、テメェには勝たせねェ!」ボココ…

勇者「っ!」

魔王「……全部、全部ぶっ壊してやる!」ミキミキ…


カッッッッ!!




『滅びの神」が顕現した!


鬼娘「げっ…混沌の樹が吸い込まれたと思ったら、今度は空の国が降ってくるッス!?」

剣士「あれが落ちたら一たまりもないわ。バラバラに壊すわよ」

天使「し、しかし中には勇者さんが…!」

剣士「アイツならきっと大丈夫よ」

少女「…いや、壊す必要もなさそうだ」

エルフ「…!? 空の国が跡形もなく消えた…!?」

青魔「な、なにが起きてるんですの…? …! あれは、勇者さま…!」

天使「い、いくら勇者さんでもあの高さからの落下は流石にまずいですよ!」

鬼娘「う、受け止めるッス」

剣士「死ぬから止めときなさい」

少女「大丈夫だよ、最適な落下のために落下速度は調整されているようだ」

エルフ「…あの盾ね。なんか見た目が変わってるような…」

少女「『英雄の盾』かな」

青魔「!」

エルフ「…勇者」


どさっ

勇者は魔国の大地に着地した!

剣士「勇者!」

エルフ「ヒドい怪我…『回復魔法・極』」

勇者「……ぐっ、あ、ありがとう。それよりアイツを…!」


「――――」


鬼娘「……まだ敵がいるッスか!」

青魔「魔王……いいえ、もっと強大な……っ」

盾「滅びの神だ」

剣士「…!」


天使「そ、そんな……な、なんで……?」

エルフ「…どうしたの?」

少女「…やはり、そういうことか」


天使「な、何をしているんですか……?」


天使「……女神さま!」


女神「――――」


剣士「女神さまって…創造の女神さまのことよね? 同じ神だから似てるだけじゃないの?」

勇者「…いや、あれは間違いなく、創造の女神さまだ。女神の力がそう語っている」

天使「……っ」

少女「――創造と破滅は表と裏」

鬼娘「ふぇ?」

少女「万物は生まれては消え、消えては生まれる。この流転の中でこそ、調和は保たれる。それならば、創造を司る者がまた破滅を司るのも自然なことだろう」



エルフ「じゃあ、あれが世界を創造した女神…」

剣士「創造の神と滅びの神が同じだったなんて…酷い自作自演ね」

女神「――――」

天使「じょ、冗談ですよね! 」

女神「――――」

天使「た、たしかに、女神さまは、がさつで、ずぼらで、そのくせ見栄っ張りで、性欲の強い干物女です!」

青魔「…貴女、本当に女神さまの使いなんですの?」

天使「で、でも、女神さまは、誰よりも世界を愛し、生命を愛していたじゃないですか! そんな女神さまが自ら世界を滅ぼすなんて嘘です!」

女神「『削除』」

天使「……ぁ」


勇者は『英雄の盾』で天使への一撃を防いだ!

盾「…勇者、さすがの我でも神の一撃はそう何度も防げんぞ」

勇者「……分かってる」

天使「女神…さま…」

勇者「天使さん、あれは君が知ってる女神さまじゃない」

少女「…そうだね、完全に正気じゃないみたいだよ」

女神「『削除』」

エルフ「また来た!」

しかし英雄の盾が防ぐ!

盾「ぬぐぐ…! き、きつい!」

剣士「…戦うしかなさそうね」

女神「――――」グニャァ…

青魔「…な、なんですの? 女神さまの姿が歪んで見えますわ……」

鬼娘「自分もッス!」

勇者「…不完全な復活なんだ。依代だった魔王は瀕死だったから」

少女「僕たちの方も善戦したしね。万全じゃなくてもおかしくない」


盾「だからと言って、勝てるのか…」

剣士「…さあ、それは試してみれ
ば分かるわよ。神さまはどれくらい強いのかしらね!」

剣士の『超次元斬り』!

しかし効果はなかった…

剣士「……やっぱり人知を超えてくるわね」

女神「『削除』」

青魔「っ!」

勇者は英雄の盾で青魔導師への攻撃を防いだ!

盾「グゥゥゥゥ…」

勇者「…大丈夫か?」

盾「当然だッ! 我は英雄の盾だぞ!」

剣士「…もう一度、全力で行くわよ」すうっ

剣士の『会心の一撃』!

しかし効果はなかった…


鬼娘「でやぁっ!」

鬼娘の『痛恨の一撃』!

しかし効果はなかった…

天使「…っ」

天使の『連続魔』!

『究極破壊魔法』!
『究極破壊魔法』!

『天地崩壊』となった!

しかし効果はなかった…

エルフ「『究極破壊魔法』」!

青魔「『大宇宙幾何』!」

合体魔法『新星大爆発』となった!

しかし効果はなかった…

少女「…攻撃は無効か」

エルフ「ど、どうすれば…」


勇者「…有効そうな手はある」

天使「ほ、本当ですか!?」

勇者「…破滅の神は魔王と混沌の樹が融合して顕現する。そこに生命の樹を混入させたらどうだ?」

少女「…なるほど、もしかしたら弱体化できるかもしれない」

剣士「…けれど、生命の樹の種を発芽させるには適切な場所が必要なはずよ」

少女「混沌の樹がなくなった今、おそらく場所は問題ないはず。むしろ栄養剤が必要なんだけど…」

勇者「……ん、大丈夫」

青魔「……勇者、さま」

勇者「多分、大丈夫だって」

女神「――――」

滅びの神は呪文を唱え始めた!

少女「!」

天使「…『滅亡魔法』です! 詠唱終了まで……五分もありませんよ!」

鬼娘「や、やばいッス!」

エルフ「……だけど、今なら攻撃できないはず!」



勇者「これで、最後だ!」

勇者は『生命の樹の種』を抱えて滅びの神へと突進した!

女神「――――」

滅びの神は詠唱を続けている!


女神の『削除』!


勇者「っ!?」

しかし英雄の盾が防いだ!

盾「さ、さすがにもう無理だ…」

勇者「…助かった、ありがとう!」

女神「――――」

勇者「女神さま……さっさと目を覚ませ!」グゥ…

勇者は女神の力を解き放った!

眩い光が世界を包む!


――――み……ま。女神さま。俺の声が聞こえますか。

勇者「なんて、一回やってみたかったんですよ」

女神「……勇者」

女神「私の意識があるということは滅びの神を退けたのですね」

勇者「そうみたい、ですね。よく分からないんですけど」

女神「…ついに魔王、そして滅びの神を倒し、歪んだ運命を正しましたか。空前絶後の偉業です」

勇者「…俺は、みんなの力に助けられただけです。自分で何かをしたわけではありません」

女神「…いいえ、あなたのその心が、大きな運命を作り出したのです」

女神「それは、紛れもなくあなたの力です」

女神「あなたこそ…真の勇者です」

勇者「……ありがとうございます」

女神「……勇者よ、お別れです」

勇者「……俺は、死ぬのですか?」

女神「いいえ。あなたは元の世界に帰り、生を謳歌してください」


勇者「……女神さまはどうするのですか」

女神「私は天界に帰ります。…天使のことよろしくお願いしますね」

勇者「……」

勇者「この世界から消えるつもりですね」

女神「……」

女神「まさか」

勇者「俺は女神の能力をもっているのですよ」

勇者「あなたのしようとしていることは分かります」

女神「あなたたちはもう、与えられた創造と破滅の調和を乗り越えられるだけの強さがあります」

女神「頻繁な初期化を必要とする時代は終わりました。もう滅びの神は必要ないのです」

女神「私は新しい創造と破滅の秩序を作らざるを得ませんが、あなたたちならばそれにも打ち勝てるでしょう」

女神「……だから、この世界に私はもういない方がいいのです」

勇者「女神さま、あなたは誰よりも世界を、そして生命を愛している」

勇者「そんな女神さまが消えるなんて…俺は絶対に嫌です」

女神「…あなたは『慈愛のリング』の影響を受けているのです。一時の優しさで行動してはいけません」


勇者「……そうかもしれません」

女神「……」

勇者「でも、この言葉に嘘はありません。俺は、女神さまと一緒にいきたいです」

女神「…何億年もの間に、充分過ぎるほど、私は多くのものをもらいました」

女神「これ以上は、もう我が儘になってしまいます」

女神「だから、あなたのその優しい言葉だけで私はもう満足なのです」

勇者「……本気で言ってるんですか?」

女神「…もちろんです。心残りは一切ありません」

勇者「…………ふっ」

女神「……何がおかしいのです?」


勇者「オナニーしかしたことない億年ド処女が何をのたまってるんですか」

女神「なっ……! しょ、しょ、処女ちゃうわ!」

勇者「処女女神! セックスも知らずに消えるな!」

女神「な、なんなんですか!? あなたは!?」

勇者「消えるには早いって言ってるんだ!」

女神「本当に罰当たりな勇者ですね! ……大体わオナニーの方がいいに決まってるでしょう!? だいたいセックスなんてたいがい期待外れじゃない! そんな気持ちよくないっていうし! その点、オナニーは最高! 己を一番よく知るは己! オナニーでこそ最高の快感を得られるんだよ!」

女神「あなただってあの娘たちとのセックスで死にかけてたじゃない!自分の満足できるところでやめられる! あらゆる趣向が試せる! ドン引きされることもない! 自分の理想を想像できる! オナニーには何一つセックスに劣ってるところがないわ!!」

女神「オナニーの良さを知らないなんて本当に未熟者です!」

勇者「女神さま。あなたの言う通りオナニーは素晴らしい」


勇者「……けれど、セックスは一人ではできないんですよ」


女神「ッッッ!!」

勇者「そしてセックスとオナニーは比較するものじゃない! だからあなたは億年ド処女なんだ!」


女神「……っ」ガクッ


勇者「女神さま…」ぽんっ

女神「やめて! 私に乱暴する気でしょう? エロSSみたいに!」

勇者「……処女こじらせすぎ」

女神「…うるせぇ、ヤリチンが! テメェみてえな澄ました顔でヤリまくってる男と女がだいっきらいなんだよ!」

女神「…私だってセックスしたいわよ! でも相手もいないんだもの! みんな女神って聞くと恭しくして劣情を抱かないんだもん!」ウワ-ン

勇者「……」

女神「あー、どっかにいないかなぁ! 超イケメンで私のこと大事にしてくれて、ベッドでも甘い言葉を囁いてくれる人いないかなぁ!?」チラ

勇者「…探せばいるんじゃないですか? 一緒にいきましょう」

女神「あ、で、でも、そ、そこまでイケメンでなくても、良い人ならいいかも!」チラチラ

勇者「それならきっとたくさんいますよ。一緒にいきましょう」

女神「……うがぁぁ! 私にはそんなに魅力がないのかぁ!!」


勇者「…………」

女神「だ、ま、る、なぁ!!」

勇者「女神さまは魅力的ですよ」

女神「メンドくさそうな顔で言うなぁぁ!!」

勇者「…どうしろと」


女神「決めました。消える、やっぱり私は消えます」

勇者「はあ…」

女神「で、でも、どうしてもって言うならちょっと考えるかもしれません」チラ

勇者「どうしても」

女神「雑だなぁ! さっきまであんなに引き止めてたのに雑になったなぁ!」

勇者「いや、ちょっとメンドくさくなってきた」

女神「最低のヤリチン野郎ね! 『慈愛のリング』効いてないんじゃないの!?」

勇者「効いてますよ。効いてなかったらとっくに見放してます」


女神「…もう消える。どうせ処女こじらせた腐れ年増は消えたほうがいいのよ」

勇者「……女神さま」

女神「なによ、もうなに言ったって消えるからね。見た目だけ若い更年期性欲の塊ヘンタイババァはさっさとオサラバしますぅ!」

勇者「俺と結婚してくれませんか」

女神「はいはい、そうねー結婚ねー、すごいねー」


女神「……は?」


女神「い、いまなんて…?」

勇者「結婚してください、女神さま」

女神「は…え、なんで……?」

勇者「女神さま、面倒くさいですよね。多分、俺の他に嫁の貰い手がつかないと思います」

女神「やかましいわ!」

勇者「でも、やっぱり見ていてほっとけないです。それに、俺、結構年上好きですし」

女神「…ふは、ふはは、じょ、冗談はやめてよ!」

勇者は女神に口付けした!

勇者「冗談じゃないですよ」

女神「……」ぽかんっ

女神「……ッ!」かぁぁ…

女神は赤面している!

女神「なな、なにしてんの…!? アホか!」




勇者「女神さま」ギュッ

女神「ちょっ…手…」

勇者「ずっと俺のそばにいてください」

女神「えっ? ……あっ、は……はい」






それからどうなった?


勇者「何とかなった」

少女「いやいや……」

勇者「お、調子はどうだ。」

少女「…まだ戸惑ってるよ。魂の管理をしなくなる日がくるなんて思ってもみなかったからね」

勇者「でも、楽になったろ」

少女「そうでもないよ…。天使くんに家事を厳しく教えられてるし」

勇者「そ、そうか」

少女「…ま、君の奥さんとして頑張るよ」

勇者「お、おう」

少女「ふふ、それに、これからはもっと頑張らないといけなそうだしね」

勇者「?」

・・・

褐色娘「む…勇者! 帰ってきたか」

勇者「ああ、『英雄の盾』か。ただいま。いやあ、ちっこいな」ナデナデ

褐色娘「ええい! 頭を撫でるな! ……貴様の生を我に寄越す約束ではなかったか!」

勇者「だから結婚したんだろ。共に同じ人生を歩むということは生を渡したのと同じ…ってことで納得したろ」

褐色娘「それは詭弁だ!」

勇者「いや、でも、そういうことにしなかったら、多分、お前、先輩に斬り捨てられてたぞ…」

褐色娘「ぐ…う…そうだが……だ、だいたいこの体もなんだ! 女神め! 余計なことをしおって!」

勇者「まあまあ。その姿も可愛くて好きだぞ」

褐色娘「あぁっ、うぅ……責任とれよ!」

・・・

鬼娘「あ、ご主人! お帰りなさいッス!」だきっ

勇者「おう」

鬼娘「えへへ」

勇者「どうかした?」

鬼娘「えへへ、ご主人を見ると嬉しくてこうなっちゃうッス」

勇者「お前、ほんと犬みたいだな」

鬼娘「い、犬ッスか? 犬はまだちょっぴり苦手ッス。虫も抵抗あるッス」

勇者「犬は可愛いと思うけどな」

鬼娘「そ、そうッスか?」

勇者「うん。で、お前は犬みたいで可愛い」ナデナデ

鬼娘「えへへ。ご主人にそう言われるなら犬でもいいッス」


勇者「…バカだなぁ」

鬼娘「…バカでいいッス。バカじゃなかったらご主人の味方でいれなかったッスもん」

勇者「うん?」

鬼娘「だって魔王さまを倒したら普通、魔物って消えちゃうんス」

勇者「…まあ、前はそうだったな。今はまた変わったから、俺は未だに勇者なんだけども」

鬼娘「でも、バカだからご主人のために何も考えず戦えたッス! だからバカでいいッス!」

勇者「…お前はいいバカだよ。うん、可愛いバカだ」

鬼娘「えへへ…そういえばッスね!」

勇者「ん?」

鬼娘「えへへ、まだ秘密ッス」

勇者「?」

・・・

青魔「あら、勇者さま。お帰りなさいませ」

エルフ「おかえり、勇者」

勇者「うん、ただいま。青魔導師、弁当ごちそうさま」

青魔「お粗末さまですわ」

勇者「いやいや。…ただ、塩と砂糖、間違えてたぞ」

青魔「……えっ、ご、ごめんなさいませ!」

勇者「まあ、全部食ったけど、次は気をつけてな」

青魔「…! は、はい!」にこにこ

エルフ「勇者、明日はわたしが作るからね。残しちゃダメなんだから」

勇者「ん、全部食うよ、ありがとな、エルフ」


青魔「……」

エルフ「……」

勇者「ん、どうかしたか?」

エルフ「ちょ、ちょっと、今後の魔法指導の方法について考えてただけ」

青魔「そ、そうですわ!」

勇者「おう、二人とも評判いいし、頑張ってくれ」


青魔「……」

エルフ「……」

・・・

天使「いい加減働いてください! 特に今日くらいは働いてもいいじゃないですか!」

女神「やだ! もっとゴロゴロするんだ!」

天使「他の方々はみんな仕事をしているんですよ!

女神「私は特別なんだー!」

海竜王「客が来てるんだから、少しはシャキッとして欲しいの」

女神「しょっちゅう来るやつは客じゃないわ」

天使「客というか家族ですからね。でも女神さま、他の人にもそういう態度じゃないですか。そういうのは失礼ですよ」

勇者「賑やかだな…」

天使「あ、勇者さん、お帰りなさい」にこっ

勇者「ただいま。海竜王も来てたのか。体はもう大丈夫なのか」

海竜王「うむ。お主が、篤く看病してくれたしの」

勇者「看病…? 貪られた気が…」


女神「勇者! きいてきいて! 天使ちゃんがいじめるの!しかも海竜王ちゃんまで!えーん! 」

天使「いじめてません! そもそもなんですか、その口調は! 年を考えて…」

女神「あっ?」ゴゴゴ…

天使「ヒッ……」

女神「勇者は年上が好きだから年上でもいいもんね!」

勇者(実年齢で俺より年下なのって鬼娘だけなんだけどな)

天使「と、とにかく少しは部屋の外に出てください!」

勇者「天使の言う通りだよ」

女神「うぐっ、嫁を働かせるなんて甲斐性なし!」

勇者「い、いや、別に働けと言いたいんじゃなくて…」

天使「勇者さんは甲斐性なしなんかじゃありません! だいたい、あなたはいつも…」くどくど…

女神「あーうー」

勇者「じゃあ、俺はこれで。海竜王、ゆっくりしてってな」

海竜王「うむ。主の家ということは妾の家でもあるしの」


天使「とにかく、今でも一応女神なんですからしっかりしてください! 弛んでます!」

海竜王「心のだらしなさがそのうち体に出そうだの」

女神「ふぎゃっ!?」

海竜王「体までだらしなくなったら勇者でも見向きもせんぞ?」

女神「そ、そんなことないよ。勇者ちゃんはどんな姿でも私のこと好きだもんね」

海竜王「勇者はもう行ったぞ」

女神「そんな、ヒドい…」

天使「はぁ、女神さまはもう…」

海竜王「…しかし、時期が時期だ。女神もあまり天使を怒らせるな。天使もすぐに怒るでない」

女神「うっ…はい」

天使「…そうですね」

・・・

剣士「ただいま」

勇者「お帰り」

剣士「今日は早かったのね」

勇者「まあね」

剣士「……」クンカクンカ

剣士「……浮気はしてないわね」

勇者「しないよ…死にたくない」

剣士「散々言ってるけど、許すのは一桁までだから。二桁いったら……」

勇者「分かってる! 分かってるから! 正直今で精一杯だから」

剣士「ほんと文字通りね」

剣士「数を減らしたいのなら気軽にいってちょうだい。減らしてあげるから」

勇者「…いや、そういうのほんといいから!」

剣士「…冗談よ。……一割は」

勇者「九割本気かよ…絶対にやめてくれよ」

剣士「ま、アンタがアタシを愛してくれるうちはね」

勇者「…愛してるよ」

剣士「そうでないと、困るわ。特にこれからはもっとね」

勇者「……?」



勇者(父さん、母さん、姉ちゃん。今でも俺は勇者として元気にやっています)

勇者(女神の力と先代勇者の力、あと嫁たちの力で、どんどん出てくる魔物を倒したり、人助けをしたりしてます)

勇者(毎日毎日、大変ですが、充実しています)


勇者「お、なんか今日の料理は豪華だな」

剣士「……やっぱり忘れてるのね」

勇者「……え?」

少女「勇者くん、誕生日おめでとう」

勇者「……あ、今日俺の誕生日か!」

鬼娘「おめでとうッス!」

エルフ「おめでと」


天使「今日はいつも以上に頑張りました」

褐色娘「今日は勇者にとって特別な日らしいからな我も手伝ったぞ」

女神「わー、おいしそー!」

青魔「私から勇者さんにプレゼントがありますわ」

エルフ「わたしも…というか全員そうよ」

勇者「ま、まじか」

海竜王「妾の贈り物は凄いぞ」ドンッ

精力剤’s<ヤァ‼︎

勇者「……」ヒクッ

海竜王「さすがにこれだけでなく、他にもあるぞ」


勇者「…みんな、ありがとうな」



少女「もう一つ勇者くんに重大発表があるよ」

勇者「うん?」


少女「……赤ちゃんできちゃった」

勇者「……え、えっ?」

褐色娘「我もだぞ」

勇者「……えっ?」

鬼娘「自分もッス!」

勇者「……え」

青魔「私たちの愛しい子、名前は何にしましょう」

エルフ「まだ男か女かも分からないでしょ。…わたしたちの子の名前は勇者がつけてよね」

勇者「……」

天使「えへ、勇者さん、喜んでくれます…よね?」ぽっ…

海竜王「妾に子を産ませるなぞ、贅沢なヤツめ」

女神「女神をも孕ませるなんてとんでもない勇者ねー!」

勇者「…」

剣士「ふふ、アタシたちの愛の結晶、大切に育てましょ」さすさす…

勇者「」

問.女神から能力を授かるとどうなる?

答.女神含む嫁がたくさんできる。



勇者(……父さん、母さん、姉ちゃん)


勇者(……俺、一気に九児の父になります)




勇者「女神から能力を授かった」

完。

これで終わりです。
長編を完結させたのは3年振りくらいですが、ちっとも上手くなってる気がしない。9ヶ月もかかってぶん投げなかったのが一番の成長な気がします。
最後まで見てくれた方に多謝。最初から付き合ってくれてる人とかいたら泣いて喜んでしまう。
またご縁があったらよろしくお願いします。

明けましておめでとうございます。
どうせなら1000レスまで埋めようと番外編と小ネタを書きました。
書き溜めは去年のうちに終わってたのですが、2週間ちょいベトナムを一人旅してたら新年になっちまいました。海外からだと規制に引っかかるようです。

【デートの行き先は?】


鬼娘「だいたい美味しいご飯を食べに行くッス」

天使「私も一緒にご飯を食べることが多いですね」

勇者(二人とも大食いだから見てて清々しいんだよな。お財布に響くけど)

少女「僕はよく王都の方に行くかな。図書館とか」

褐色娘「我もだな。人間になったからは服などをよく見るようになったわ」

勇者(王都の近くに越したし、手軽なんだよな)

青魔「村近くの丘によく行きますわね。そこでお弁当を食べてお話ししますわ。暖かいときは夕焼けや星を見たりもしますわね」

女神「私は家デートかなぁ」

天使(部屋から出るのが面倒なだけでしょう)


剣士「……山で剣の鍛錬」

((……修行?))

【女子力とオカン力(?)】


天使「みなさん、ご飯が出来ましたよ」

天使「お洗濯、終わりました」

天使「掃除はしっかりしないと!」

天使「あら、隣の奥様。いつも旦那がお世話になっております」


褐色娘「……天使が一番嫁として出来てる気がする」

少女「…確かに。冒険中も色々と身の回りの世話をしてくれてたしね」

鬼娘「…それなら嫁としての相応しさに順位をつけるとどうなるッスかね?」

海竜王「ふふふ、そういうこともあろうかと嫁としてのスペック、すなわち女子力とオカン力の測定結果を分析集計して順位付けしてみたぞ」

エルフ「仕事が早いですね…」

海竜王「結果はこうだ」


・女子力及びオカン力
(高)天使>>剣士≧エルフ>青魔>鬼娘>>>>少女>海竜王≧褐色娘>>《圧倒的干物の壁》>>女神(低)

【女子力とオカン力(?)2】


海竜王「まず、天使はあらゆる点で女子力、およびオカン力が高い」

少女「オカン力……母性で良くないかい?」

剣士「アタシが二番目なのね。まあ、長いこと父さんと二人暮らしだから家事は得意だけど」

青魔「しっかりしていますものね」

海竜王「長生きしている者が、有意に低い傾向にあるな」

少女「だいたい決まったところから動かず、しかも配下がいることが多いもんね」

褐色娘「我なんぞついこの前まで無機物だったぞ」

女神「てか、コレ私をバカにしたいだけでしょ? ねえ、こういう陰湿なイジメ良くないと思うの」

剣士「アナタはもう少し働きなさい。穀潰し」

女神「そんな、ヒドい…」

褐色娘(ご、穀潰し呼ばわり……我も頑張らねば…)

【ランキング好きの海竜王さま】


海竜王「…しかし少し抽象的過ぎたかの。もう少しはっきりしたものでやるか」

青魔「なんですの?」

海竜王「お○ぱいランキングだ」

鬼娘「おっ○いの大きさッスか」

少女「隠す気ないね…」

・おっぱ○の大きさ
(高)女神>海竜王≧天使>青魔>>《巨乳の壁》>>鬼娘>少女>剣士>エルフ>>《平均の壁》>>褐色娘(低)

女神「ふふ、女神なのだから当然ですね」たぷーんっ

褐色娘「胸なぞ別にいらんだろ」ぺたーん

剣士「鍛えてるからあまり大きくはならないわね」

鬼娘「自分は鍛えてるわりには出ちゃうッス」

少女「そういう体質なんだろう。女神さまとその使徒は、僕以外は巨乳なんだね」

海竜王「…そのうち大きくなるだろう、たぶん」ぽんっ

少女「べつに気にしてないから慰めとか要らないよ。……本当だよ? ねえ、その顔やめてよ」

【ランキング好きの海流王さまとちっぱいエルフ】


エルフ「…平均の範囲…よしっ」

海竜王「エルフは少し前までは英雄の盾とともに二枚目の壁の向こうだったが、ハイエルフになって少し大きくなったからの」

鬼娘「盛ったッスね!」

エルフ「う、うるさいっ!」


天使「気にしてたんですね」たゆんっ

海竜王「いじらしいの」ばいんっ

青魔「大きくなって良かったですわね」ぽよんっ

女神「正直、大きいと肩こりが辛い」たぷーんっ

エルフ「…この乳牛どもめ!」ウワ-ン

【英雄の盾】


褐色娘「むぅ…人間の身体は不便だ。空中にも浮かべん」

勇者「…しかしなんでお前はあんなところにいたんだ。しかも呪われた状態で」

褐色娘「ふっ、簡単なことだ。我の存在を畏れた邪悪な存在により呪われて封印されたのだ」

勇者「…ずっと昔のことだよな」

褐色娘「ふっ、今となっては一瞬のようにも感じる」

勇者「辛かったな…」ナデナデ…

褐色娘「ええい、撫でるな」

勇者「そうか」パッ

褐色娘「本当に止めるな!」

勇者「はいはい」ナデナデ


鬼娘「あ、ずるいッス! 自分も、してほしいッス!」

褐色娘「あ、コラ! 今は我だけのナデナデ勇者なのだ!」

【堕天使? いいえ、撲殺天使です】


天使「天気がいいしお布団を干しましょう…よいしょ」


天使「ふう……残りの布団は…はぁ……」

女神「あはは、古代人のアート『マンガ』はやっぱり面白いわねー」

天使「女神さま、布団を干すので起きてください。というか手伝ってください」

女神「えー、私のところはいいよ。女神パワーでお日様の匂いだから干さなくても大丈夫、大丈夫」ごろん

天使「…いいから、早く起きてください! 布団叩きでお尻を叩きますよ!」

女神「…ひぃ、わぁった、わぁった起きますよー! 乱暴だなー! この暴力天使め! もはや堕天使だよ!」

天使「……」

女神「ご、ごめんなさい。先ほどの言葉は冗談ですから、手を降ろしてください。死んでしまいます」

【優しいサトリ】


青魔(今日は…久々に勇者さまを独り占めできる日ですわ!)

青魔(王都で、可愛い雑貨を見て、お芝居を見て、ディナーを食べて、その後は…うふふ!)

青魔(服装よし、髪型よし、お化粧もばっちりですわね!)

青魔「勇者さま」

勇者「ん、出かけようか」

勇者(…昨日の魔物は手強かったから、すごく疲れたな…眠い…)

青魔「……やっぱり今日は外に出かけたくない気分ですから、お家で寛ぎましょう?」

勇者「……? あ、気を遣わなくていいんだぞ……?」

青魔「いいえ、その方がよいのですわ」にこっ

【優しいサトリと優しい鈍感】


青魔(……さすがにちょっと残念ですわね)

青魔(……いいえ!勇者さまが喜んでくれるのが一番嬉しいのですわ!)

勇者「…くぅ」

青魔(こうして勇者さまに膝枕するのも幸せですものね。可愛い寝顔)くすっ


青魔(……あら、いつのまにか私も寝てしまっていましたわね。逆に勇者さまに膝枕されて……これも良いですわね)ポ-

勇者(……青魔導師には悪いことしちゃったな)

青魔(……)

勇者(…今日のこと楽しみにしてたんだろうな。服も髪型も、化粧も)

青魔「……っ」

勇者(…心が読めるからって、いつも周りのことにばっかり気を遣うんだもんな)

勇者(助けられてるけど、俺は鈍感な方だし、それにちゃんと気付いてあげられてないことも多いだろうな )

勇者(…とにかく、今度、青魔導師に何か埋め合わせしないと)


青魔(……そのお気持ちだけで、私はどうしようもなく嬉しいのですわ)ギュ

【エルフの森】


エルフ「……一旦エルフの森に帰ろうと思うの。魔物の侵攻でもう焼け野原しか残ってないけど、供養と少しでも綺麗にしてこようと思って」

勇者「…俺もついていっていいか?」

エルフ「…これはわたしの問題だから」

勇者「エルフの問題は俺の問題なんだよ。君を助けるのはもう俺の義務だし、俺は君の力になりたい」

エルフ「……ありがとう」

・・・

勇者「…ここか。酷いな」

エルフ「…うん。ここがわたしの家だった。両親と、妹と暮らしてた」

勇者「……」

エルフ「わたしだけが助かったの…きっと復讐するために生き延びたんだと思った」

エルフ「でも、今は違うよ。わたしは、みんなの分も幸せに生きようと思うの。自分勝手かもしれないけど…」

勇者「いや、それは正しいと思う」

エルフ「うん…」

勇者「さてと、片付けるか」

【エルフの森2】


勇者「ふう……もう少し残骸を集めたら魔法で完全に壊して……」

エルフ「…勇者! 来て!」

勇者「ん、どうした?」

エルフ「これ見て……焼け跡から植物の若木が生えてるの。この森はまだ生きてる。時間はかかるけど、また昔と同じような森に戻るかもしれない」

勇者「……新しい生命の息吹だな」

エルフ「うん、…最初の内は荒らされないように強力な結界魔法を貼っておかないと」

勇者「……なあ、お前はここに住むのか」

エルフ「……うん、いずれはね。かなり後になるとは思うけど」

勇者「……そうなんだよな。俺の方がエルフより早く老いるし、早く死ぬ。多分お前を置いていっちゃうんだよな」

エルフ「……うん。だから……」

勇者「……だから?」

エルフ「だから、その分もわたしを幸せにしてくれないとダメなんだからね」

勇者「……当然だろ」

【勇者のもう一人の人格?】


青魔「…そういえば、めっきり勇者さまの変な人格が出なくなりましたわね」

勇者「ん、ああ…。あれは俺じゃなくて、女神の力の人格なんだ、、今はもう、ぐっすり眠ってるよ。青魔導師にはあいつがたくさん酷いことしたよな、ゴメンな」

青魔「……いえ。そのお陰もあってこうして夫婦になれたのだから感謝すらしていますわ」

勇者「そうか……」

青魔「……しかし、どうして眠ったままで起きないんですの?」

勇者「色々な戦いを経て、俺があいつに認められたからかな。アイツが眠りにつく前は…死ぬほど色々と語られたよ。下ネタだから今、心は読まないほうがいいかも」

青魔「…手遅れですわ」

勇者「…ごめんな。まあ、あいつは女神さまのこともよく語ってたからな。良くも悪くも女神さまと結婚することを選んだのはあいつのおかげかもしれない」

青魔「そうだったんですわね」

青魔(……でも、女神さまの力が女神さまのことを語って、勇者さまをその気にさせたってことは、ある意味では女神さまの自作自演ということかしら?)


女神「……あー、ベッドだけを生活空間にしたい」

天使「…………」

女神「お、起きますぅ……!」

【女神さまは本当に処女だったのか?】


女神「はっ、急になんなの?」

剣士「だって、あなたの自慰用の能力、自我があったじゃない」

女神「まあね」

剣士「だったら、もうセックスだったんじゃないの」

女神「いやいや、仮によ? 自分の手が意思を持ち、私の命令を絶対に聞くとして、その手で処女膜破ったらセックスなの?」

剣士「……」

女神「私は違うと思う。だって自分の一部じゃん」

剣士「……でも、その理屈で行くと、女神はこの世界の誰とセックスしてもオナニーってことになるんじゃ」

女神「いやいや、自分に息子がいてさ。その息子とセックスしたら、それはオナニーなの? 違うよね、それはセックスだよね」

剣士「……それだと、今度は母子相姦になるんじゃないの」

女神「え、女神だよ。それくらい普通じゃん」

剣士「えっ」

女神「えっ」


【ホワイトウィンドは連続魔(キリッ】

少女「連続魔ってさ、たくさん種類があるよね」

天使「そうですね。より強力な魔法になるかは組み合わせ次第ですけど」

少女「回復魔法を重ねるとどうなるんだい?」

天使「『回復魔法・極』二つだと『純白の微風』で、広範囲を一気に治癒できます。この前、勇者さんと、災害で怪我人がたくさん出た村で使いました」

少女「本当に有用な力だね。他にはあるのかい?」

女神「だいたい見たことがあると思いますが…あ、『全体即死魔法』二つの『冥府の徴収』なんてありますよ。試してみますか?」

少女「いや、生命を取り立てられたくないからいいかな…」

【勇者さん家の経済事情】


褐色娘「取り立てる、でふと思ったが、やはり我が家の収入は勇者の稼ぎか?」

少女「どうして取り立てるでそうなるのさ…まあ、いいけど」

天使「魔物を倒したり緊急時に対応したりでいただく謝礼金や報奨金は臨時の収入ですね」

少女「基本給は東王を丸め込んで取り付けさせたよ。僕と剣士くんがいるうちは我が家が傾くことはないね」

天使「彼女も凄いですよね。道場を大きくするだけでなく、さらに鬼娘さんによる武道と、私たちによる魔法指導を加えて包括的な対魔物武術の道場を開いたんですから」

少女「うん。しかも勇者の宣伝、資金集めを始めとした場での交渉力、人々の要望に的確に合わせた調査力…彼女の商才には舌を巻くよ」

天使「中々認可を下さない役所に対して壮絶な交渉もしてましたね」

褐色娘「すごいな…」

【勇者さん家の自宅事情】


勇者「えー、我が家を紹介します」

勇者「場所は俺の故郷の村でなく、王都郊外の村です。色々と便宜になる場所です。子どもが産まれた際に必要なものを買うのにも便利でしょう」

勇者「ちなみに家ができるまでは東城に住まわせてもらってました」

勇者「我が家は結構大きいです。10人が暮らして、なおゆとりがあります。子どもが産まれても手狭で困ることは少なそうです」

勇者「一番のポイントはお風呂。全員で入ることも可能という広さです。しかも一悶着あって温泉も出るようになってます。子どもなら水遊びもできそうですね」

勇者「庭ではみんなが好き勝手植えてます。一番熱心なのはエルフ…と思わせて英雄の盾です。わりとそういうのが好きなようです。ただ、みんな出産したらそれぞれ苗木を植えてほしいと言ってます」

勇者「共用の空間は10人座ってもまだ一応座れる広さがあります。やはり子どもが産まれても大丈夫でしょう」

勇者「……こ、子どもかぁ」※本編終了直後。

【光の剣と闇の剣】


師範「娘のお陰で、最近、道場の人気はこれまでく高まっている。全国から修行に来る者もいて、最近では新しい道場を全国各地に作り、俺の教え子たちが、そこで剣を教えている」

師範「これは大変喜ばしいことだ。しかし、我が家は元々『闇の剣』を守護する家系」

師範「それが一番の使命だが、代が替わる際まで、そのことを告げぬ。使用者が若気の至りで振るわぬよう分別が付くようになって初めて使命を果たせるという考えだ」

師範「しかし、最近は『光の剣』も共に安置している』

師範「我が家の教えでは、闇の剣を振るってはいけぬ、とある。俺もそれを忠実に守ってきた」

師範「……しかし『光の剣』ならば何の問題もないはず」

師範「ふふふ…光の剣か……。やっぱり闇より光だよな。カッコいいぜ」スッ

師範は『光の剣』を装備しようとした!

師範「はぐぁ!?」バチチッ

しかし『光の剣』に拒まれた!

師範「……」


師範「『闇の剣、そして光の剣を振るうことを禁ずる』と」かきかき…

剣士「ただいま、ちょっと道場の様子を見に来たわ……何してるの」

【光の剣と闇の剣2・もはや懐いた犬】


師範「む、これは我が家の新しい家訓だ。時期が来たらお前にも見せよう」

剣士「ふうん。あ、『光の剣』」

ひゅっ

師範「剣がとんだ!?」

剣士「よっと」ぱしっ

『光の剣』は眩いばかりに光を放ち始めた!

剣士「なに、アタシに会えて嬉しいの? 可愛い子ね」

師範「……」

剣士「…最近は別に戦ってないわよ。戦う相手もいないし…それでもいいの? ……分かったわよ。持ち歩くわ」

師範「……」

剣士「父さん、やっぱり、これ持ち帰るね。見ててくれてありがとう」

師範「ああ、うん…」ビリビリッ


師範「光が許されるのは小学生までだよな。うんうん、やっぱり男は闇だろ。……扱えんけど」

【あへ顔だぶるぴーす】


海竜王「海の国では、勇者のあへ顔だぶるぴーすが大人気だ」

海竜王「ふぃぎゅあ、複製画、同人作品が多数出回っておる」

勇者「俺もう海の国、歩きたくない」

海竜王「そのうち、我が国の新しい名産として外国市場に…」

勇者「却下ァ!」

海竜王「何故だ。妾の旦那はこんなにも可愛いと教えたいのに。可愛くておもしろ…ぶふっ……!」プルプル

勇者「……世界中に出回った暁には俺が魔王になるからな」

海竜王「闇堕ち勇者のあへ顔だぶるぴーすモノ、もはや公式でも同人でも使い古された内容だの」

勇者「海の国の闇の深さに慄いた」

人魚「海の中にあるしねー!」どやっ

勇者「ドヤ顔できるほどうまいこと言ってない!」

【ナンパ撃退法】


チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

少女「…会話で有意義な時間を過ごせるだけの知性をつけてからなら考えてもいいよ」


チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

エルフ「…後ろのポケットに財布を入れておくのは盗ってくださいと言ってるようなものよ。気をつけて」ぽんっ


チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

鬼娘「お茶ッスか? 奢りでご飯ならいいッスよ!」
・・・
鬼娘「これも頼むッス! あとコレもコレもコレも…」

チャラ男「は、破産する…!」


チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

褐色娘「…なんだ貴様は?」

ロリコン… ロリコンネ…
ヒソヒソヒソヒソ…

チャラ男「なんでもない」

【ナンパ撃退法2】


チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

剣士「旦那がいるの、遠慮するわ」

チャラ男「えー、いいじゃん。旦那のことなんか今だけ忘れてさ」すっ

スパッ

チャラ男「……」パラ…

剣士「次触ろうとしたら殺す」


チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

天使「『仮死魔法』」ボソッ

チャラ男「――――」バタッ

天使「安心してください。そのうち蘇生するはずですから」スタスタ

【ナンパ撃退法3】


チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

海竜王「……」スタスタ

チャラ男「お、おい無視すんなよ」ぐいっ

海竜王「……」ズルルル…

チャラ男「……あっ、がががが…!? と、とれねぇ…!?」ズルズル…

海竜王「…む、人間が袖にくっついておったのか…気づかんかった」

チャラ男「……」ガクッ


チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

女神「え、わ、私!?この私ですか!? うそナンパなんて初めて…でも私は人妻夫以外にこの身を許すことなんてできないでも少しの仲違いが昨日あってほんのすこしムシャクシャしていていつもなら乗るはずのないナンパにのった私お茶をしてるうちにやはり冷静になって帰ろうとするもお茶にはあらかじめご都合主義の媚薬がいれられていて私は抵抗虚しくホテルに連れ込まれ夫以外に許したことのない身体を…あれ、いない?」キョロキョロ

【ナンパ撃退法4】

チャラ男「君ぃ、可愛いねェ、お茶しない?」

青魔「結構ですわ。…きゃっ!?」こてっ

チャラ男「うわぁお、大丈夫かい? そこのホテルで休んでこう」

青魔「いたた…お気遣いだけで充分ですわ」

チャラ男「いいから、ほらほら」ぐいっ

青魔「…や、やめてくださいませっ」

勇者「…人の嫁に触ってるんじゃねぇぞ」

チャラ男「ゆ、勇者さま!? ひい、すみませんでしたー!」

青魔「勇者さま…ありがとうございます」

勇者「青魔導師…お前は危なっかしくて見てられない」

ぎゅうっ

勇者「ずっと俺の隣にいろよ、守ってやるから」


青魔「うふふ、勇者さま、素敵ですわ…」スヤスヤ…

エルフ「どんな夢見てるの…」

【結論はそれでいいのか?】


剣士「今考えると、アンタたち人外ばかりよね」

天使「へ?」

鬼娘「そうッス?」

少女「まあ、確かに」

女神「姿は人間に近いのばかりだけどねぇ」

青魔「私も純粋な人間ではありませんし…」

エルフ「わたしも」

褐色娘「我は元々生物ですらないぞ」

剣士「純粋な人間はアタシだけじゃないの」

海竜王「主も普通の人間ではないと思うがの」

女神「私からすれば異世界の存在なんて一番トンデモだわ」

天使「そんな私たちも受け入れる勇者さんは器が大きいですね」

青魔「そうですわね」

鬼娘「さすがご主人ッス!」

【天啓】


――――うしゃ。勇者よ…。私の声が聞こえますか。

女神「私は女神です。この世界を創造したもの…」

女神「私は……今日のお昼に甘いパンケーキを所望しています」

女神「天使にそれとなく伝えておいてください」


天使「馬鹿げたことに神の奇跡を使うのはやめてください!」

女神「ゆ、勇者!? なんで喋ったの?」

少女「ちょっとそういうのはね…」

海竜王「自重してほしいの」

女神「私の使徒たちが、みんな私に冷たい!」


勇者「平和だよなぁ…」

※パンケーキは作ってもらえました。

【ケモノ成分】


勇者「…はっ! また天の声が…! 女神さま…いつも通り『お菓子買ってきて』かな」

勇者「なになに、『ケモノ成分が足りてなくない?』…どういうことだ?」

褐色娘「勇者ー! たすけてくれー」

勇者「ど、どうした?」

褐色娘「我の耳が奇妙なことに! しかも尾まで…!」

天使「ふはは、ケモミミ幼女だー!」

褐色娘「おのれ、女神め!」ふしゅー!

勇者「…いや、結構かわいいぞ。アリだな」

褐色娘「む……ほんとか?」

女神「ちなみに時たまケモノ具合がより発展する日もあるよ。私ってできる女神!」ぶいっ

【勇者のストライクゾーン】


褐色娘「…勇者は、結局誰が一番好みなんだろうな」

「「!!」」

少女「…正妻は決めないことにしようという了解だったろう」

エルフ「血は見たくない……気になるけど」

鬼娘「でもやっぱり気になるッスね」

剣士「そうね…。一番はアタシだろうけど」

天使「…それはどうでしょうか」

青魔(ああ、良くない流れに…)

褐色娘「我はよく頭を撫でられるから我だな」フフンッ

勇者「みんな怖い顔してどうした? あ、女神さま。借りたマンガ? を返します。面白かったです」

女神「コレ面白いでしょ! で、どのキャラクターが一番可愛かった」

勇者「そうですね……この『男の娘』というのが、グッときました」

「「!!??」」

想いを寄せてるのに絶対に結ばれることのない切ないところがグッとくるそうです。

【頭を撫でろ!】


褐色娘「勇者、頭を撫でろ」どさっ

勇者「ん、おう。お前コレ好きだな。俺を椅子にして撫でられるやつ」ナデナデ…

褐色娘「うむ、いいものだぞ、これは」うっとり

勇者「ふうん…」ナデナデ…

勇者(…ほかの嫁の頭も撫でてみるか)



鬼娘「…ご主人?」

ナデナデ…

鬼娘「えへへ、もっとしてくださいッス!」

勇者(いつも通りの可愛い反応。まあ、けっこう撫でてるしな)

【頭を撫でろ!2】


エルフ「勇者?」

ナデナデ…

エルフ「え、な、なに急に? ん、イヤじゃないよ」

ナデナデ…

エルフ「…結構好きかも。またしてほしいかな…」

勇者(可愛い)


少女「おや、どうしたんだい?」

ナデナデ…

少女「な、なんなんだい? 子ども扱いしないでほしいな。…そういうのじゃない?」

ナデナデ…

少女「う、て、照れるから…二人きりのときだけにしてよ……?」

勇者(ときめいた)

【頭を撫でろ!3】


天使「勇者さん、お風呂がわきましたよ」

ナデナデ…

天使「ど、どうしたんですか……え? …まあ、気持ちいいですけど…」

ナデナデ…

天使「頭を撫でられると天使の輪を失ったことを実感しますね」

勇者(面白い反応だ)


青魔「勇者さま?」

ナデナデ…

青魔「……。ああ、そういうことですのね。もちろん頭を撫でられるのは好きですわ」

ナデナデ…

青魔「勇者さまのことを愛してますもの。嫌なわけがありませんわ」にこっ

勇者「なんか泣きそう」

【頭を撫でろ!4】


海竜王「勇者、来たぞ」

ナデナデ…

海竜王「…………」←すごい目で見てる

ナデナデ…

海竜王「…やめい。嫌……というか、困る。なにぶん初めてのことだしの。ふむ……まあ、悪くない……うーむ、なるほどの」

勇者(戸惑う姿も悪くない)


女神「勇者ちゃん、ごめん、この古代人の偉大な発明『げぇむ』がいいところなの。あと三年くらい待って」カチカチ

ナデナデ…

女神「ひゃぁっ!?」ビクン

ナデナデ…

女神「あ、な、なに勇者ちゃん。頭ナデナデとかドキドキしちゃ……あ、死んだー!? なんてこったー!」ウワ-ン

勇者(…邪魔しないでおくか)

【頭を撫でろ!5】


剣士「…どうかしたの」

ナデナデ…

剣士「……アナタに頭を撫でられる日が来るなんてね…アタシもやってあげるわ」

ナデナデ…

剣士「… 背、高くなったわね。昔はアタシの方が大きかったのに」

勇者「…それだけ時間が経ったんだよ」

【女神は実質6日間で世界を造った】


剣士「四苦王って結局なんだったの?」

少女「創造の女神と滅びの神が世界の管理のために置いたものさ。もっとも同一存在だったけどね」

剣士「…倒して良かったのかしら?」

少女「今は新しい秩序が作られたから結果的には大丈夫さ。僕も使命から解き放たれたしね」

剣士「それなら良かったわ。ところでなんで伝説の装備とか持ってたの」

少女「それも使命だからだよ。女神さまに聞いた方が詳しいよ」

剣士「それで聞いてみたのよ。そしたら…」

女神『えー、な、なんでだっけ? な、なんかその方が都合が良かった気がする……あはは…忘れちゃった!』

少女「…………」

剣士「…ご、ごめんなさい」

少女「…いや、君は悪くないよ。うん、だいたい女神が悪い」

【女神の時間感覚】


女神「え、勇者の従者? あ、ああ、あのお爺さんは元々私の力の一部だから、帰ってきたよ」

女神「魂…は、ちゃんと摂理に従ってるから、きっとそのうち転生してくるんじゃないかな?」

女神「え? うーん、千年後くらい? 転生なんてほんとうにすぐだよ」

女神「天界だとちょっと疲れたときはもっと寝ちゃうしね」

女神「だから、ご両親や、お義姉さんもすぐに転生するよ!」


勇者「スケールがちげぇ」

【先代勇者のお話】


海竜王「む…先代勇者がなぜ魔王と手を組んだか知りたいと…?」

海竜王「…まあ、確かに事の顛末は知っておるが、妾は彼奴と対面したことはない。それでも良いのか」

海竜王「ふむ……傍目八目とも言うしの…別によいか」

海竜王「…先代勇者は歴代でも最高と言われているのは知っとるだろう? 人々の間でも広く逸話となっているだろう。実際にそれは正しいの」

海竜王「当時も英雄として扱われてはおったが、あまり喜んではおらんかったの」

海竜王「千年前の魔大戦――人魔大戦とも呼んだかの――では多くの人々が死に、多くの魔物が死んだ」

海竜王「彼奴は絶対的な強さを持ちながらも、仲間を幾度か失った」

海竜王「そんな中で、英雄扱いされて喜ぶには、彼奴はあまりに謙虚であったし、そして慈愛の心に満ちていた。…だからこそ勇者に選ばれたのだろうがの」

海竜王「だが、その勇者の資質が結果的には裏目に出た」

海竜王「誰も犠牲にしないために生き残った仲間さえも置いて独りで戦う道を選んだのたが……」すっ

もぐもぐ

海竜王「このお菓子うまいの。この濃いがしつこくない甘さ、お茶との相性がよい」

【先代勇者のお話2】


海竜王「…む、話の腰を折ってすまぬな。先代勇者が独りで戦うことを選んだところまで話したか。…うむ、そうか」

海竜王「そうやって独りで戦っているうちに、いつからか奴は魔物を虐殺し続ける自分に疑問を持ち始めた」

海竜王「余りにも人外の強さを得た奴は、人間と魔物のどちらも同じ生命に見えてしまった。どちらも自分が護るべき生命に見えてしまった」

海竜王「独りでどこまでも苦しんでる中、ついに奴は自分に匹敵する強さの者を見つけた」

海竜王「…………当時はもっと威厳に満ちておったし、敵ながら好感がもてる芯のある奴だったんだがの」

海竜王「それこそ、苦しむ勇者が『世界の半分』を選択するほどにはの。……なに、比喩だ」

海竜王「その後、妾は勇者が魔王を刺し違えて倒したと思ったんだがの…どうやって世界を欺いたのかは見破れなかった妾には分からぬ」

海竜王「魂は形に影響を受け、形もまた魂に影響を受ける」

海竜王「しかし、赤騎士としての奴は、殺生をできる限り抑えていたの。それは間違いなく奴の魂の影響だろう。魔物になっても奴の勇者の魂が残っていた証拠だ」

海竜王「一度は道を誤っても…むしろ道を誤ったこそ、己の全てを失っても償い続けたその姿勢…妾は紛れもなく勇者だと思うがの」

海竜王「同じように道を踏み外しかけた主が引っ張り戻されたのは独りでなかったからだ」

海竜王「いつか主は言われておったの『光の中心』と……くっくっ、中心には独りではなれぬ…中心が全てを動かすわけではない。そのことを忘れてはならぬぞ」

海竜王「……この妾すらも取り込んで、中心にいるのだからの」

【竜とは】


海竜王「竜は全て妾の剥がれた鱗から産まれおる」

剣士「へぇ」

海竜王「老龍、黄竜…あいつらも妾の鱗から産まれたのだ」

剣士「老龍…あの話を聞かない四苦王ね。黄竜は忘れもしないわ、憎らしい」

海竜王「老龍は四苦王の使命を受けて海の国を去っていった。どうも四苦王はそういう存在らしい」

剣士「ふうん…生命の審判もかな」

海竜王「おそらく。黄竜は優しい性質であったの。先代勇者がその強さ故に人々から讃えながらも恐れられているのをある日見ての」


黄竜『僕だけでもあの人の味方になるんだー!』


海竜王「そう言って、海の国を出て、先代勇者を追いかけていった。まあ、先代勇者と魔王の対決には間に合わなかったがの」

海竜王「その後の結末は主のほうが詳しいだろう」

剣士「……」

【新婚旅行(※結婚後すぐの話)】

剣士「新婚旅行に行きましょう」

勇者「んー、でも俺がいないときに何か有事があったら」

女神「私に任せて! 女神だよ!?」

勇者「んー……」

海竜王「妾が更に監視するから大丈夫だ。有事には海の国の手練れに指示を出そう」

勇者「海竜王がそう言うなら大丈夫かな」

女神「信用されてない…私、女神なのに…」

鬼娘「わぁい! 旅行ッス!」

天使「どこに行きますか? 東国の南東の海岸とか、北国の温泉の都とか、西国の幻想砂漠とかが定番らしいですよ」

青魔「どれも面白そうですわね」

少女「砂漠は見飽きてるかな…」

海竜王「海はもちろん好きだが、新婚旅行でか…」

鬼娘「それじゃあ温泉ッスね!」

エルフ(勇者と温泉か…懐かしいな)

【新婚旅行2】

鬼娘「温泉ってなんスか? 美味いッス?」

女神「そう、すごく美味しいのよ。下界で一番美味しいの」

海竜王「嘘を教えるでない」

少女「温泉は天然のお風呂みたいなものさ。入ると健康によかったり色々といいことがあるね」

褐色娘「お風呂は我も好きだぞ」

勇者「それじゃあ温泉に行くか」

剣士「ちょっと待った。みんなで行く気? 別々じゃないの?」

鬼娘「みんなで行った方が楽しいッスよ」

褐色娘「うむ」

剣士「それじゃあ新婚旅行の意味がないじゃない」

エルフ「…二人きりで出かけたい気持ちも分かるけど、勇者がいつまでも休むわけにもいかないし」

天使「そうですね…気持ちは非常に理解できますけど……」

剣士「…はぁ、仕方ないわね」

勇者(先輩も丸くなったなぁ」

【新婚旅行3】


青魔「ここが北の国の温泉街ですわね」

エルフ「転移魔法で移動って、なんかね…」

少女「道中も楽しみの過程なんじゃないかな…」

天使「だって、陸路できたら遠いじゃないですか。途中で絶対にあきますよ」

女神「せっかく移動の暇つぶしにトランプ持ってきたのに出番はなしかぁ…」

勇者「後で宿でやればいいじゃないですか」

鬼娘「わ、川から湯気が出てるッスよ!?」

少女「地下から湧き出た源泉だそうだよ。ちなみにこの温泉街には主に2つの泉質があって2種類を楽しむのが良いそうだよ」

勇者「なんだ、やけに詳しいな」

海竜王「此奴、温泉を実は結構楽しみにして調べておったぞ」

少女「う……ま、まあ入ったことないからね」

鬼娘「自分もッス。楽しみッスね!」

女神「温泉は良いよねー。温泉に浸かりながらお酒飲むと五臓六腑に染み渡るわ」

海竜王「それ、結構危ないんだがの……女神には関係ないか」

【新婚旅行4】

女将「遠路はるばるいらっしゃいませ。この度は精一杯のおもてなしをさせていただきます」

天使「こんにちは。よろしくお願いします」


剣士「古いけど、すごく綺麗ね」

エルフ「…木の良い匂いがする」

勇者「…エルフがそう言うってことは中々すごいな」

褐色娘「ふむふむ……これが、わびさびというヤツか…」

少女「それは違うと思うけど…」

勇者「……俺たちの他に客がいないのか?」

海竜王「貸し切りだからの」

勇者「え!?」

剣士「二人きりになれないのに、これ以上、雰囲気邪魔を壊されたくないのよ」

青魔「…そうですわね」

鬼娘「わあい、さっそく温泉に行くッス!」

【新婚旅行5・ところでカポ-ンは何の音?】

カポ-ン

鬼娘「あー、気持ちいいッス…」

天使「温泉ってこんなにいいものなんですね」

褐色娘「あ、熱いぞ。一旦出る」

少女「温泉は普通のお風呂よりも温度が高いからね。短い間隔で出たり入ったりするのが良いんだよ」

青魔「そうなのですか? それなら私も一度出ますわ」

女神「あー、酒がうまい」ぐびっ

海竜王「うむ」くいっ

剣士「アンタたち、よくこんな強いお酒飲めるわね…」ポ-

エルフ「…酔い過ぎには気をつけてね」

女神「これくらいじゃないと酔えないのよ。ほら、飲みねぇ、飲みねぇ」トクトク…

剣士「あ、ちょっと…! …もう!」ぐいっ

海竜王「うむ、よい飲み振りだの」ポ-

天使「そんな一気に飲んだら危ないですよ…!」

【新婚旅行6・わたし、気になります】

エルフ「……」ちらっ

女神「んん、沁みるぅ…さいこぉ!」ぷかぷか…

海竜王「ふぅ、妾もさすがに少し酔ってきたの…」ぷかぁ…

天使「もう…気をつけてくださいね」ぷか…

エルフ(なんであの人たちの胸は水に浮いてるの…)

鬼娘「…それで、その緑鬼が仕返しに赤騎士さまの盾を緑に塗ったッス」ぽよっ

少女「…魔物たちも随分幼稚だね」

剣士「うー…」ポ-

エルフ(やっぱり私より大きい…)

褐色娘「そろそろまた入るか」ちゃぽん

エルフ(…無乳。さすがにアレよりは……でもなぁ)

青魔「あまり気にしないのが一番ですわよ」わしっ

エルフ「ひゃっ!?」ビクンッ

【新婚旅行7・温泉 is GOD】


剣士「だいたい、なんで混浴じゃないのよ! 一緒に温泉に入ってイチャイチャするのが楽しみなんじゃないの!」ヒック…

少女「だって、勇者くんの裸を見ると見境なく発情しちゃう人が結構いるからさ」

海竜王「誰とは言わんがの」

剣士「だれよっ!?」ヒック

((お前だ…))

女神「誰?」

((お前もだ…))

天使「もう…本当に困ったものですよね」

((わりとお前もだ…))



勇者「あー、温泉いいなぁ。疲れが癒える…」

勇者「魔物も人間も一緒に温泉に入れば、分かり合えるんじゃないだろうか」

一方の勇者は温泉を一人で堪能していた。

【新婚旅行8・のぼせた時はポカリを飲みましょう】


勇者「先輩がお風呂でのぼせるはんてな」

剣士「うー…」

少女「どっかのアホたちが無理に飲ませるから…」

女神「あは、あはは…! ゴメンね!」

海竜王「すまぬ、妾も酔って自制が効かなくなっておった」

剣士「…飲んだのはアタシの責任よ…心配かけてゴメンなさい…」

勇者「謝ることなんてないって。夫婦だろ」

剣士「うん…」

褐色娘「我らは先に部屋に戻っているぞ」

【新婚旅行10・まあ、新婚旅行ですから…】

少女「…二人きりにしてあげるためにわざと飲ませたのかい?」

女神「ふふ、貸しだよ。後でなんか恩返ししてもらわなきゃ」

海竜王「その理屈だとお主はまず日頃世話になってる恩を返さんといけぬの」

女神「それとこれは別なんですー!」

天使「もう、女神さまはいつもいつも…!」

女神「ひぃ、天使さんのお説教は旅先では聞きたくないぃ…」

エルフ「…でも、彼女が勇者と二人きりになったということは……勇者、がんばって」



勇者「せんぱい…もう…ムリだって…」

剣士「まだ足りないの…! ほら、腰を振りなさい…!」

勇者「ぐぅぅ…っ」

【新婚旅行11・温泉旅館のご飯はおいしい】


鬼娘「ご飯、美味しかったッス」

褐色娘「品数が多くて豪華だったな」

女神「まあ、天使ちゃんのご飯の方が美味しいけどね!」

天使「そんなあからさまに褒めても懐柔されませんよ」

勇者「いやぁ、でも天使さんのご飯はほんとに美味しいよ」

天使「あ、ありがとうございます…」

女神「けっ、男に色目使っちゃって」

天使「旦那さんは特別でしょう! 他の方にはしません!」


勇者「あとは、寝る準備して、まったりするかぁ」

女神「おっとおっと! せっかくの旅行なのに寝るには早いんじゃないかな!?」

エルフ「なにするつもりですか…?」

青魔「もしや枕投げですの?」

少女「それは行事が違うと思うよ…」

【新婚旅行12・アルハラは撲滅しよう】


女神「…ふっふっ、もっといいものよ」

女神「……勇者とその仲間たちよ、創造の女神が特別に神の恩寵を授けましょう」

鬼娘「…………酒ッス!?」

天使「まだ飲む気ですか!?」

女神「こういう時じゃないとみんな飲まないでしょ! 今日は無礼講だー!」

勇者「いや、ちょっと…」

女神「うるさーい! さぁ、たくさんあるぞ! 潰れるまでのめのめー!」


※お酒は節度をもって楽しめる範囲で飲みましょう。
他人にお酒を強要してはいけません。
粗相をした際はきちんと片付けをしましょう。

※妊娠する前のお話です。妊娠中の飲酒は控えましょう。

【新婚旅行13・酒乱しかいねえのか!】

勇者「…で、酔っ払った結果がコレか」

少女「にゃー、にゃー…」スリスリ…

勇者「猫かよ、可愛いやつめ」

鬼娘「踊るッスよー!!」

勇者「変な踊りするな。そして服を着ろ」

エルフ「あはは、勇者だ! あはははははは! あははは!」

勇者「笑い上戸め」

青魔「ふんふーん! らんらんららー!」

勇者「歌い始めた…ちょっと音痴だな」

褐色娘「…口惜しや、どうしてなのだ…」シクシク…

勇者「こっちには泣き上戸がいた」

剣士「きにいらないのよ! いつも自分が正妻ですってつらひて! 斬り殺すわよ!」ヒック

天使「そっちこそ、なんなんれすか、!? いつも、なにかにつけておさななじみをきょーちょーして! 『即死魔法』がほひいんですか!?」ヒック

勇者「こいつらが一番飲ませちゃいけない奴らだな…」

【新婚旅行14・勇者の本気】


天使「ぐぁぁ…ぐぁぁ…」

勇者「元凶は寝てるし…布団も被らずにお腹出して寝たら風邪引きますよ…」ファサッ

ギュッ

海竜王「勇者…ちゅ…ん、んん…ちゅぅ…ちゅっ、んん…んっ」

勇者「ぷはっ…酒臭いぞ…」

海竜王「勇者…妾も抱け。主のせいで身体が疼いとる…」さすさす…

勇者「俺のせいって…こんなところでそうしたら」

剣士「なにやってるのよー! アタシを抱きなさい!」

天使「こんろはわらひです!」

エルフ「あははは! 勇者が、あははは! わたしも…えへへ!」

褐色娘「勇者はどうせ、我のことなんてどうでもいいのだ。抱いてくれなどせぬ…」シクシク…

勇者「やっぱりこうなるよな。……よし、頑張るか」


中居「しゅ、しゅごい……」←覗き見

【新婚旅行15・出来たての温泉饅頭はほんとに美味い】


鬼娘「この出来立ての饅頭おいしいッス! ほかほかで甘々ッス! もう一個食べるッス」

青魔「ほんと美味しいですわね」

勇者「うん。……」チラッ

どよーん…

少女「なんか大切なものを失ったきがする…」

エルフ「…笑い過ぎて喉が痛い。何があんなにおかしかったんだろ」

褐色娘「うぐぅ…人前で泣くとは……恥を晒してしまった…」

海竜王「うーむ、さすがに飲み過ぎたかの…」

剣士「…昨日はゴメンなさい」←記憶アリ

天使「へっ、何ですか?」←記憶ナシ

女神「いやあ、楽しかったわ。あ、饅頭ほんとうまい」

勇者「…まあ、大丈夫か」

鬼娘「あっちにも名物料理がるらしいッスよ! 行って見るッス!」

各所の温泉を楽しんだり、食べ歩いたりと、普通に観光して帰った。

【女神ってやっぱりしゅごい…】


鬼娘「温泉最高だったッス」

少女「そうだね、毎日でも入りたいくらいだよ」

褐色娘「掘れば出るのではないのか」

剣士「この辺りは安定した陸塊だから出ないでしょうね」

女神「無いのなら創ればいいじゃない!」

女神は『神の奇跡』を使った!

エルフ「…!」

お風呂から適温の温泉が出るようになった!

女神「これが女神の力です……どやっ」

海竜王「いや、確かに凄いがの…」

天使「そういう利己的な奇跡の行使はやめてください!」

女神「ゴ、ゴメンナサイ…」

※ただし温泉は残された。

【勇者は完璧人間?】


近頃は国同士の外交の場にも引っ張り出される勇者。

貴族「平民の出ときくが、色々と嗜みがある青年だ。下手な諸侯よりもずっと品位がある」

貴婦人「あの所作は一朝一夕で身につくものではないわ。やはり勇者というのは生まれついて特別なのかしら?」

老伯爵「あの若者の風流への玄人振り…よほどの粋人と見受けられる。あの歳で大したものだ」

北姫「…とても紳士的な方でいらっしゃいましたわ。優しくて、とても頼もしくて…」ぽっ…


海の国・無間地獄。

勇者「先輩、もう帰りたい」

剣士?「ダメよ。この楽器を習得するまでは帰さないわよ」

勇者「うう…何か習い事をするたびにここに来るの嫌なんだが…気が狂いそう」

剣士?「ここでは年を取らないし、時間が止まってるのと同じくらい遅いからちょうどいいのよ。旦那の恥は女房の恥。アタシたちに恥をかかせないでよね」

勇者「うう…辛いぃ…」

【勇者は(これ以上)フラグを立てたくない・西1】


西国・西王城

魔物「ふはは、西姫はもらうぞ」

西姫「いやぁ…!」

近衛兵長「くっ、姫を魔物から救い出せ!」

近衛兵「し、しかし、もう立ち向かえる者がおりません!」

魔物「雑魚どもが! この女は我らが魔王さまにささ…」

勇者の攻撃!

魔物を一瞬で倒した!

西姫「きゃあっ」

ガシッ

西姫「……ゆ、勇者さま!」

勇者「たまたま近くに居合わせたため騒ぎを伺い馳せ参じました。お怪我は……ございませんね」

西姫「は、はぃ!」

勇者(…魔王、だと? ついに新しい秩序の下での魔王が誕生したのか? ……また、あの俺様幼女じゃないだろうな)

西姫「あ、あの…お助けしてくださってありがとうございます」

勇者「当然のことをしたまでです……」ハッ

勇者(いつまでも抱きかかえたままだと、海竜王の千里眼づてにまた嫁たちから文句が言われる)

勇者「それでは、私はこれで」すぅっ

勇者は優しく姫を降ろしてそそくさと立ち去った!

西姫「勇者さま…なんて素敵なの…」ぽっ

※この後、嫁たちがめちゃくちゃ拗ねた。

【勇者は(これ以上)フラグを立てたくない・東1】


勇者「東姫殿下…」

東姫「…そんな他人行儀はやめて」

勇者「しかし…」

東姫「いいから!」

勇者「あ、ああ…。東王陛下の…」

東姫「いいわよ、あんなバカ親父に敬語使わなくて」

勇者「あぁ、うん…。東王が無事に王位に戻れて良かったな」

東姫「…あなたが口添えしてくれたのもあるでしょ」

勇者「いやいや、そんな」

勇者(…その方が都合がいいと嫁たち…というか生命の審判に言われたからな…まあ、憎しみに囚われて行った罪の償いでもあったか)

東姫「……何度も助けてくれてありがと」

勇者「いや……」

東姫「そして、本当にごめんなさい。あなたのこと、あなたのお姉さんのこと、あなたの壊された家のこと」

勇者「……姉さんのことは…魔物に操られていたのもあったしな。掘り返しても誰も幸せにならないさ。誰かが連鎖を断ち切らないといけないんだ」

【勇者は(これ以上)フラグを立てたくない・東2】


東姫「…でも、それをアンタが背負う必要はないでしょ」

勇者「恵まれたことに、重荷を一緒に背負ってくれる奴らがいるから、俺は大丈夫」

東姫「……そっか。…ところで新しい家はどうなの? みんな元気?」

勇者「もちろん。不自由ない広さで、楽しく暮らしてるよ」

東姫「あたしは、みんなが城から出て行って少し寂しいかな」

勇者「また、みんなで遊びにくるよ。みんな君のことが好きだしな」

東姫「うん……。……でもあたしは勇者がいなくなったのも寂しいかな」

勇者「えっ?」

東姫「……今思えば、あなたのことをずっと考えてたの…最初は憎いだけだったんだけど、 それがそのうち…さ」

勇者(これはまずい流れになるかもしれない)

勇者「そ、それでは用事がありますので!」そそくさ

東姫「あ、勇者……そうよね、ゴメン」

※この夜、嫁たちと修羅場になった。

【千里眼と海竜王の広い心】


勇者「海竜王、なんでもかんでもみんなに話すのはやめてくれ。体がもたない。別に浮気するつもりが、ないのは見ていて分かるだろ」

海竜王「妾のところに来たと思えば、それか…。妾は少し哀しいの」

勇者「いや、ほんとキツいって…。常に監視されてるようなものだから囚人みたいだ」

海竜王「…勘違いしとるようだが、妾は基本的に主のことを他の者に話しとらん」

勇者「え?」

海竜王「つれあいである妾が主をいたずらに困らせるわけなかろう。万一主が一夜の過ちを犯したとしても、妾はできる限り主の味方をするつもりだ」

勇者「…海竜王」

海竜王「…千里眼は妾だけが使える者でもないしの」

勇者「あ…」



女神「…ば、ばれたか」

【罪の告白】


女神「はい…。私が勇者のフラグを逐一報告していました」

女神「何故かと? 理由は簡単」

女神「勇者に不満や嫉妬を向かわせることで、その分だけみんな(天使)が私を責めなくなるからです」

女神「私はもっとゴロゴロしていたいのです! そのためには旦那をも犠牲にします!」

女神「女というのはそういうものなのです」フッ

勇者「……今の俺の中で、女神さまの心証どん底に近いですよ」

女神「あれ、どん底じゃないの?」

勇者「素直なのは評価します。それに、大切な奥さんだし、嫌いにはなれませんよ」

女神「うぅ…私の欠片の良心が…!」チクチク

勇者「女神なのに欠片しか良心がないんですか」

女神「……ハッ、でもそれならもっと甘えられる!?」

勇者「夫婦なんだから多少は慮ってくださいよ…」

女神「わ、分かったわよ。女神なりの罪の償いをするから」

勇者「……?」

【頭骨挫傷ってレベルじゃねぇ!】


魔国•旧魔王城

勇者「…久しぶりに来たな。やっぱり今の魔王もここにいるのか?」

「その通り」

勇者「!!」

勇者「お、お前は……生きてたのか!?」

戦狼「ニンゲンを根絶やしにするまで死なんぞ…!」

勇者「…いや、ほんとよく生きてたな、お前。頭蓋骨が恐ろしいくらい陥没してるけど大丈夫か……?」

戦狼「ふ、ふん! この程度で死ぬ我輩ではない! 行くぞ! 『魔人の斧』の威力をとくと味わえ!」

勇者「…ああ、見せてみろ! ……あとで頭治してやるからな…?」

戦狼「え、本当か? た、頼む……」

【瞬きする時間さえかからなかったってよ】


魔王「戦狼を倒したか。ふっ、よくぞここまで来たな」

勇者「お前が、魔王……?」

魔王「左様…貴様を倒し、この世界を我が物にしてくれるわ!」

勇者「あの幼女じゃないのか…よかった」

※魔王は尻穴を犯され、この世界にアヘ顏を晒しましたとさ。

【因果応報】


勇者「魔王…を名乗る魔物も倒したし、一応、東王に報告して帰るか」

「あー、もう! この体不便なのよ!」

勇者「…?」

老夫「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」

「あ、ごめんなさい、この馬車に乗りたいんだけどうまく乗れなくて…」

老夫「そうかい…お、そこの兄さん、そのお嬢ちゃんを馬車に乗せてやってくれないかい?」

勇者「構いませんが……、っ!?」

「あ」

勇者「ま、魔王……!?」

「魔王…って最初に言うセリフがそれなの? まぁ、そうっちゃそうだけど…」

勇者「……力尽きたと思ってたが、生きてたのか」

「なんか気付いてたらね…。というか、さっきから姉に対して失礼じゃない? そりゃ、斬り殺しかけたけど…」

勇者「……ふざけるなよ」

【勇者はシスコン、はっきり分かんだね】


勇者「……姉さんを犠牲にしただけじゃなく、今度は姉さんを騙ろうとするのか!? テメェ、許さねぇぞ!」ぐいっ

「いたいっ…! 女の子には優しくしなさいっていつも言ってるでしょ!」

勇者「!」

「…やっと信じてくれた?」

勇者「そんなにしてまで、姉さんの振りをしようとしてんのか…! 絶対に許さねぇ…!」

「……あくまで信じる気がないのね。分かったわよ、それなら一発で私がアンタの姉ってことを知らしめてやるわ」

勇者「…やってみろよ」

「アンタは1×歳のとき、私とのいかがわしい夢で下着を汚して……」

勇者「ぎゃあぁぁ!!」がばっ

「むぐぅ…っ!」

勇者「わ、わかった。信じたから、信じたからもう口に出さないでくれ…」

姉幼女「分かってるわよ。二人だけの秘密だもんね」

勇者「多分、もう二人どころじゃなくなった…」ズゥン…

【勇者の悪知恵】


勇者「どこに向かおうとしてたんだ?」

姉幼女「とりあえず東国へ。この体じゃ大変だけど」

勇者「危ないだろ…。魔物も人間も。俺が見つけて良かった」

姉幼女「アンタに会おうと思ってたから、本当に幸先がいいわね。アンタの家に行きましょう」

勇者「え、えーと」

姉幼女「なによ、姉を見捨てるってわけ?」

勇者「まさか! ただ、家はちょっとなあ」

勇者(嫁が複数いるなんて姉に言いづらい。しかも、このよく分からない状況だと尚更……もう少し落ち着いた後に報告したいところだ)

勇者(……そうだ、オークの家がある。あそこはもう家主が亡くなって、俺とエルフが管理してるからな。あそこを俺の家ということにしておこう)

勇者「分かったよ。今俺は、北の国の剣の山っていうすごく険しいところに住んでるんだ」

姉幼女「どうしてそんなところに…?」

勇者「え、えーと、修行かな。色々あって俺はまだ勇者のままだしな!

姉幼女「そうなの…大変ね…」

勇者「さっそく行こうか。『転移魔法』!」

【お義姉さんは幼女】


剣士「お義姉さん、久しぶりね」

天使「初めまして、お義姉さん」ニコッ

エルフ「こ、こんにちは、お、お義姉さん」

青魔「初めましてですわ、可愛らしいお義姉さまでいらっしゃいますわね」

姉幼女「ね、ねえ、この人たちは? さっきから『おねえさん』の呼び方になんか含みがあるんだけど…」

勇者「み、みんな何でここに…」

女神「みんなにこの事を話したら挨拶に行く流れになってねー」

少女「あ、実の姉で夢精した変態シスコンくん、お帰り」

勇者「」

鬼娘「ご主人大丈夫ッス! 自分はご主人がどんな変態でも大好きッス!」

海竜王「ここまでの“本物”だとは思ってなかったがの」

褐色娘「うむ…」

勇者「」

女神「私は全然気にしてないよ! 人のことあまり言える性癖じゃないしね!」グッ

【一枚のピザとそのピースということです】


姉幼女「全員、奥さん……?」

勇者「ハイ」

姉幼女「みんな妊娠してる……?」

勇者「ハイ」

姉幼女「ちょっと、よく分からない」

勇者「ソウデスヨネ」

姉幼女「…ちゃんと養えるの」

勇者「多分大丈夫デス」

姉幼女「みんな…こんな弟でいいの? あ、いいんだ、へえ…」

姉幼女「あ、うんうん。いや、そんな力説されても…いや、自分の弟を褒められるのは悪い気がしないけど」

姉幼女「…どうしてこうなったの」

勇者「三角形はたくさん集めると円になる。これが一番丸く収まった」

姉幼女「いや、上手いこと言われても…」

【姉の危機管理能力】


姉幼女「へえ、こっちが本当の家なんだ。じゃあ、さっきの家は邪魔な姉を追い出すためのものなのね」

勇者「違うって! 」

姉幼女「…冗談よ」

勇者「…とにかく、姉さんとまた会えてすげえ嬉しい」

姉幼女「…わたしもよ。こんな小さくてよく分からない体になっちゃったけど」

褐色娘「我とほとんど変わらぬではないか」チマッ

勇者「……」

姉幼女「……」そー…

勇者「…なんで遠ざかる?」

姉幼女「いや、体が勝手に…」

少女「それが正解だよ」

剣士「お義姉さんの反応間違ってないのよね。正直アタシもどうかと思うもの」

姉幼女「私の育て方が悪かったのかしら…」

勇者「そういうのはマジで傷つくからやめて」

【身内のこういう話はほんとエグい】


姉幼女「この家に来てから一月が経ったわ」

姉幼女「……家族とはいえまだまだ新婚の夫婦のお邪魔をしてるのは悪いと思ってるわ」

姉幼女「それに貴方たちも若いし、まだまだお盛んなのは…まあ、分かるわ」

姉幼女「でもね、さすがに限度があるでしょう! 毎日毎日、夜中にうるさいのよ!」

勇者「き、聞こえてた? 建てる際に防音はしっかりしたはずなんだけど……」

姉幼女「よく聞こえてるわよ! お陰でこっちは寝不足よ!」

勇者「ご、ごめん」

姉幼女「毎晩毎晩、相手も違うし…アンタも体大丈夫なの?」

勇者「まあ、慣れたよ。たまにキツいときもあるけど、やっぱり愛してるし」

姉幼女「弟の口からそういうこと聞くのキツイわね……鳥肌が……」ゾゾ…

勇者「ごめん」


姉幼女(私なんてそういう経験もないまま死んだのに…)

【姉の困惑】


姉幼女(この体って変なのよね)

姉幼女(正直、魔王になったときと身体能力とか変わらないし、腕力なんかただの人間とは比べ物にならないくらいあるもの)

姉幼女(さすがは魔王の身体だったというだけはあるわね)

姉幼女(ただ、これ以上は成長しないって奥さんの一人にも言われた…)

姉幼女(…小さいから高いところの物が取れないのよね)

姉幼女(なによりも…)

勇者「姉さん、おはよう」

姉幼女「……こんなに大きかったっけ?」

勇者「いや、姉さんが小さくなったんだよ。前から俺の方が背は高かったけど」

姉幼女「うーん」

勇者「じゃあ、俺は今日仕事あるから」

姉幼女「魔物を倒すの?」

勇者「いや、国賓のお出迎えをするんだ」

【元凶の大体は女神】


姉幼女「…なんか遠い人になっちゃったな」

勇者「そんなことないよ」ぽんっ

姉幼女「……その頭の上に手を置くのやめてくれる」

勇者「あ、ごめん。なんかちょうどいい高さだから」

姉幼女「私はこんな姿になってもアンタの姉なんだからね」

勇者「分かってるよ」


姉幼女(そう、私は姉。だから……)

姉幼女(この胸の高鳴りは気のせいのはず……)ドキドキ

姉幼女(弟に胸を高鳴らすとなおかしいわよ!)

姉幼女(……でも、この身体なら血は繋がってないのよね)

姉幼女「違う! そういう問題じゃない!」

姉幼女「……気のせい、気のせいよ」ドキドキ


女神「ふふふ……筋書き通り」

はい、これで小ネタと番外編も終わりです。
ここまで付き合ってくださりまことにありがとうございました。
暇人なので、またそのうちファンタジーものでも書くと思います。
2016年があなたにとってよい年であるように……

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月16日 (木) 14:55:27   ID: 7DRsNNCO

LINEワロタwww

2 :  SS好きの774さん   2015年05月19日 (火) 13:29:35   ID: ColQt7qf

続きまだかなー?
続き気になります!

3 :  SS好きの774さん   2015年06月05日 (金) 01:17:33   ID: GGnmnoiS

続きがすごく気になります!

4 :  SS好きの774さん   2015年06月16日 (火) 16:34:28   ID: lV43TuiF

LINEどんまい過ぎるwww
続きが楽しみ!

5 :  SS好きの774さん   2015年09月27日 (日) 21:22:52   ID: kyp-6TXu

相変わらず面白い
これからも頑張って欲しいです!

6 :  SS好きの774さん   2015年10月20日 (火) 15:05:55   ID: AlGY1tGN

乙 

7 :  SS好きの774さん   2015年11月19日 (木) 00:06:26   ID: qilAVHvQ

最後まで付き合うぜ!頑張れ!

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