男の娘「男のこと、好き」 (74)
タイトルのとおり男の娘×男です。
うわぁ…ないわぁ…という人はお戻り下さい。
あと地の文注意です。
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男が好きだ。
重い荷物を代わりに持ってくれる少し大きな手が好きだ。怪我を負ったり、具合が悪かったりするときにおぶってくれる背中が好きだ。少し垂れた目がすきだ。照れると目を細める癖がすきだ。話している時の優しい目がすきだ。優しい性格が好きだ。おせっかい焼きなのが好きだ。他人のために涙を流せるところが好きだ。笑う時の顔が好きだ。
好きで好きで好きで好きで好きでたまらない。本当に好きで、男のためなら何をしてもよくて、気持ちを伝えたくて、キスをしたくて、抱きしめて欲しくて。
けど、けれど。
僕は男の人だから。
当然、彼も男の人で。
だからこの恋は叶ってしまってはいけない。僕の想いも伝えちゃならない。
彼に迷惑がかかるから。
だからこの気持ちは胸にしまっておくんだ。
けど
「やっぱり、辛いなぁ…」
この気持ちを自覚したのは、つい最近の事だ。
それまでは僕は男と一緒にいるのが普通だと思っていて、永遠にそれが続くものだと思ってた。
ずっと二人で話したり、遊んだり、くだらない事をしてるものだと思っていたのだ。
けれど、あの子が来てからはそうじゃなくなった。
あの子は僕と男の間に強引にも身を捻じ込んできた。
いや、本当はそうじゃないのかもしれない。
本当は男が彼女の手を取って、僕と男の間に…。
だけど、それを考えると、僕は気がおかしくなってしまいそうになるのだ。
まるで身体中に見えない蛇が這い回っているみたいになる。胸が、心臓が鷲掴みにされたみたいに苦しくなって、何より、頭の中の男が消えてしまいそうになる。
あの子のせいだ。そう一瞬考えてしまうけど、それは違う。
僕がおかしいんだ。こんなつまらない事に嫉妬する僕が。男の子なのに男に恋してる僕が。
そう考えても、あの子が男と話している時の、チクチクとした気持ちは消えない。
あの子が来る前に、男が女の人と話しているときになるチクリとした感じ。
それを何倍、何十倍にも、大きくしたようだ。
ベッドの上で、体育座りをして壁に寄りかかるのをやめて、ベッドへと倒れこむ。
ぼふり、と音がなる。勢いがついてしまったのだろうか、少し身体が跳ねる。
もう、こんな事を考えるのはやめよう。あの子に嫉妬するなんて、みっともない。
そう考えながら、布団を被り、深い眠りへと落ちてゆく。
ああ、僕が女の子だったら、こんな想いをすることもなかったのだろうか…。
翌朝、僕は男の家の前にいた。
少し前までは僕一人で男を待っていた。だが、いまはあの子が、女さんが一緒だ。
なんで女さんが、ここまで男と親しいかというと、昔、男とよく遊んでいたようだ。そして僕と入れ替わるようにして転校。それは仲もいいわけだ。
幼馴染みは僕だけなのに。そうだって思ってたのに。なんで、とまた僕の嫉妬が頭を擡げる。今いる環境でもっとも古くからつきあいがあるのは僕じゃないの?
駄目だ、駄目なんだ。だけどずるい。
「ずるいよ…」
「ん、娘ちゃんどしたの?なんか言った?」
「…っへ?あ、ああなんでもないよ、うん」
「そ、ならいいんだけど」
娘ちゃんになんかあったらあたし心配だかんねー、と女さんは続ける。
考えてたことが口に出ていたようだ。気をつけなくては。
いや、こんな事を考えること自体止めなければいけない。
僕の嫉妬心自体がなくならねば。
僕がそう決意をかためていると、玄関のドアが開いた。
「わりぃ!待たせた!」
そこから男がでてきて、玄関が閉まり終わる前にそう言った。
男の背後で重ためなドアの閉まる音がする。
それを合図にする様に女さんが返事をした。
「ホントだよ、毎日遅刻ギリギリ!もうちょい早くおきてよ!」
「すんません…」
そう言われた男は見るからにションボリしていた。少し垂れた目が申し訳なさそうにさらに垂れて、視線があっちこっちに動いている。
「まあ、なんだかんだで何時も学校には間に合ってるし、いいよ、大丈夫」
僕がこうフォローを入れると、男はありがと、といって元のように戻る。いつものことだ。
と、いきなり男が、僕の方に近づいてきた。
そして、男は僕の頭に手をポンと置く。
「ありがとな」
そしてそのまま僕の頭を撫で始めた。
「うりゃー!」
と、少し乱暴に僕の頭を撫でた男はそのまま歩き出した。
別に男はやたらと人の頭を撫でたがる変態さんというわけではない。
ただ、もう話しは終わりだ。行こう、という意味でももたせて、場の空気を変えるためにやったのだろう。
こうでもしないと男と女さんは暫く揉める、というか一方的な女さんの説教が始まる。
それを恐れてさっさと逃げたんだろう。
男、僕はそれ、どうかと思うよ…。
しかし、男のそんな作戦も意味などないようで、女さんは男に説教を始めた。歩きながら。
男はそれを半分きいて半分聞き流すような感じで聞く。時折、ハイ、ハイとわざとらしく、いかにも反省してるような声を出す。
僕はその少し後ろを歩いて、二人についていく。
暫く歩いたら、女さんは怒り、というか不満というか、そんなものを吐き出してスッキリしたのか、どうやって、男の遅刻ギリギリの生活をやめさせるか、という話しに方向を変えた。それはもう詳しく、どんな風に変えるかと。
男の事を思って、怒ってるのだろう。じゃなきゃこんなに詳しくまで話しはしない。自分のためなら、男の家前で待つことを止めればいいのだし、そうじゃなくても、不満をぶちまけて終わりだろう。
なんというか、こんな二人だからこそ、再開してすぐ、また元の仲に戻れたのだと、ある種の確信を抱かせるような物があるのだ。
なんだか、羨ましいなぁ…。そういうの、僕にはないからなぁ。
僕には、男と僕は切っても切れない関係だ、とか、心が通じ合っている、とか、そういう物にたいしての確信が未だに持てずにいる。
もう長い付き合いになる。小学四年生から七年間、いや、もうすぐ八年間だ。気がつけばもう高校一年生を終わろうとしている。
だけど未だに、僕は確信がもてない。
はは、と少し笑いをこぼす。笑い声はひどく乾いていた。
目の前では、まだ女さんがに男の生活習慣改善案を、ああでもない、こうでもないと、男に提案している。
「…だから、あたしがアンタの家の中に行けばいいじゃん!あたしがたたきおこす!」
そういって女さんがガッツポーズをとる。それと連動するように後ろで一つにまとめた髪が揺れる。
「や、だけどさぁ…。おまえなんか起こすときに技かけしてきそうだからやだ」
それに、どうせなら娘みたいな清楚な子におこしてもらいたいし、とそう男は続け、からかうように笑った。
「あんたはまだ怒られたりないのか、あと娘ちゃんは男の子だから!」
「といいつつおまえだってちゃんづけしてんじゃーん」
「…うぐっ」
男の反論にたいして、何も言い返すこともできず、言葉に詰まった女さんがこっちを見る。
フォローしてほしいのか、チラチラとこっちを見る。
ちらり、ちらちら、ちらり、ちらちらちらちらちらり。
僕は生まれて初めて目線が五月蝿いと思った。しつこいよ女さん…。
「男、起こしにいってもいいけど、僕は清楚系女子ではないし、そういう見た目の女の人は高確率で、実際に清楚ではないからね」
女さんの目線チラチラをやめさせるために、僕がそういうと、男は、うそだろ…、とつぶやいている。残念ながらホントだよ、男。女の子に夢を見すぎだよ。まあ僕女の子じゃないから実際どうかはわかんないけど。
そんな茫然自失とした男の隣で、女さんが僕のフォローを追い風に、ここぞとばかりに男に反論し始めた。
「ほーら、みなさいよ。娘ちゃんは、清楚でもなければ女子でもないの!あんた他に家まで起こしにきてくれる人いんの?いないでしょ!だったらせめて女子に当てはまるあたしが、起こしに行くのが最善でしょ!」
そういい終わると、どうだとばかりに男を見て、ふふーんとドヤ顔をする。
が、当然、とんでもない新事実をしってしまった男がそんな事を聞いているはずが無い。
「あ、あれー」
女さんは、自分の自信満々な論理をまったく聞かれていないことに気づいたのだろうか、戸惑ったような声を出す。
「っくく、はははは」
そんな二人の様子をみていたら、自然と笑いが込み上げてきた。さっきの笑いとは違う、本当の笑い。
暗い気持ちは何処へやら。男や女さんと一度話し始めると、そんな気持ちは心の奥へ、隅っこへと追いやられる。楽しい。心底楽しくなる。
こうして集まっているのが一番楽しい。さっき女さんに嫉妬してたのが嘘のようだ。
だけど一人になったりすると、僕は女さんに嫉妬してしまう。
どっちも本当の僕なのに、どっちも本当の僕ではないようだ。
まあ、いまはこれでいいのだ。みんなとの時間を余計な事で無駄にしたくはない。
気持ちをスッキリにさせる為に、少し走ることにした。こうすれば学校にも余裕を持ってつくだろうし。
男たちの前にでて走り出す。
「ほら、二人とも遅刻しちゃうよ!」
そう言うと、女さんが携帯電話で時間を確認して、走り出す。少し遅れて男も。
とりあえず、遅刻ギリギリ、下手したら遅刻、という目先の心配は解決したのであった。
と、いうわけで今日はここまで。
また近いうちに更新するかなぁ、と思います。
投下します
いつも少ないがそれよりも少ない。投下します。
はい、投下してきます。
だいぶ遅れましたはい。申し訳ないです。しかもいつもより量少ないかも。
とーかしまーすはい
すいません今週中には更新します
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