少年「きみんちの工場なんていつでも潰せるんだよ」少女「……」(31)

町工場──

父「ふぅ……今月もなんとかなった」

父「この調子でいけば、従業員にボーナスだって出してあげられそうだ」

母「よかったわね、あなた……」



少女(あたしの家は小さな町工場)

少女(一時は潰れそうだったけど、今は苦しいながらもなんとかやっている)

少女(だけどそれには理由があるの……)

小学校──

少年「やぁ!」

少女「なに?」

少年「最近、きみんちの工場、けっこう順調みたいだね!」

少女「う、うん……」

少年「なんで順調かは、知ってるよね?」

少女「もちろん……」

少年「どうしてかな?」

少女「……」

少年「ど、う、し、て、か、な?」

少女「あなたのお父さんが……ウチのお父さんにお金を貸してくれたから……」

少年「そう! そのとおり!」



ガキ大将「あいつ、またイヤミいってんのかよ! あったまくんなぁ!」

手下「やめといた方がいいっすよ。あいつんち、すっげー金持ちだから」

手下「先生もみんな、あいつの味方ですしね」

ガキ大将「ちっ……」

少年「他にも理由はあるよね?」

少女「……」

少年「いってみなよ」

少女「あなたのお父さんが、ウチの工場に仕事を紹介してくれたから……」

少年「そう! よくできました!」



ガキ大将「ホント嫌な性格してるよな」

手下「まったくっすね。ああやっていびって楽しんでるんすよ」

少年「もし、ぼくのパパがいなきゃ、きみは給食費も払えないありさまだったんだよね」

少年「いやいや、夜逃げしてたかもしれない」

少女「う、うん……」

少年「“ありがとう”は?」

少女「……」

少年「ぼくに“ありがとう”は?」

少女「……ありがとう」

少年「よくできましたー!」

少女「……」

少年「さて、と。いつもならここで終わりにしてたけど」

少年「今日はもう一段階進ませてもらおう」

少女「!」ドキッ




ガキ大将「おいおい……あいつ、何する気だ?」

手下「さぁ……」

少年「たとえばさ」

少年「ぼくがパパになにかいえば、パパはきみのパパに手を貸さなくなるだろうね」

少年「あの工場の子にイジワルされた~とかさ」

少年「ぼくは、きみんちの工場なんていつでも潰せるんだよ」

少女「……」

少年「ってことはつまり、きみはぼくに逆らえない……」

少年「分かりやすくいえば、ぼくのいうことを聞かなきゃならないってわけだ」

少年「なんでもね」ニヤッ

少女「……」



ガキ大将「なんでも、だとぉ!? 王さまにでもなったつもりかよ!」

手下「とんでもないやつっす!」

少年「さて、と」

少年「それじゃさっそく、ぼくのいうことを聞いてもらおうか」

少女「……う、うん」

少女「……」ドキドキ…




ガキ大将「もし変なこといったら、クラスのリーダーとして殴ってやる!」

手下「ダメっすよ! あのお坊ちゃんに歯向かったらただじゃ済まねっす!」

少年「じゃあいっちゃうけど……」

少女「……」ドキドキ…

少年「今日の給食のプリン……ぼくにくれないか?」




ガキ大将「なんてやつだ! そんなもん、死刑と同レベルだ!」

手下「ひでえっす……!」

少女「……は?」

少年「え?」

少女「ン~? なにをおっしゃってくれちゃってるのかな、キミは」

少年「え……」

少女「こちとらこの場でスカートとパンツ下ろす覚悟もできてたってのに」

少女「ついに来よったかこの時が、とテンションMAXだったってのに」

少女「あたしのプリンプリンなボディより、プリンのが興味あるってかコラ」

少女「散々期待させといてそれとか、なめとんか? あ?」

少年「あ、あの……」

少女「それともあれか? ポケモンのプリンか?」

少女「お前、あれ給食に出たら食い切れるのか?」

少女「体長0.5m! 体重5.5kg! 食い切れますか!?」

少女「しかもヤツは歌いますよ? 眠くなりますねぇ、春眠暁を覚えずですねぇ」

少女「さぁ食べ切れるんですか!? どうですか!?」

少年「食べられ……ません」

少女「でしょう!?」

少女「グリコのヒット商品に、プッチンプリンてなもんがあるけど」

少女「あたしの堪忍袋の緒も今やプッチン寸前よ」

少女「プッチンしたのに、うまく下にプリンが落ちない時ぐらいアングリーやわ」

少年「ご、ごめん……」

少女「謝らんでええ! 分かってくれたらそれでええねん!」

少女「といったところで、この話はお開き!」

少女「さ、もう一度うかがいまひょか」

少女「あんさん……あたしに何して欲しいわけ? どんなことをして欲しいわけ?」チラッ

少年「じゃあ……給食の牛乳をちょうだい」

少女「牛乳ゥ~!?」

少女「いわゆるひとつのあれですか、牛の乳ですか、ミルクってやつですか!」

少女「ミ、ル、ク! ミ、ル、ク! ミ、ル、ク!」

少女「さあ皆さん、ご一緒に!」



ガキ大将「ミ、ル、ク! ミ、ル、ク! ミ、ル、ク!」

手下「ミ、ル、ク! ミ、ル、ク! ミ、ル、ク!」

少女「そんなもん欲しがる前に!」

少女「きみのミルクが欲しいんだよ、くらいいわんかい!」

少女「そりゃもちろんあたしゃまだまだ母乳なんか出ないガキんちょだけど」

少女「ビーチクぐらいは出せっから! 今なら送料無料でな!」

少年「あ、あの……」

少女「出して欲しい? ねえ、出して欲しい? さぁ、イエスかハイか!?」

少年「出さなくていい……」

少女「クワッ!!!」

少女「も~、なんなのよ!」

少女「あんたがだらしないせいで、牛の鳴き声みたいな声出しちゃった!」

少女「この草食系が! 牛が! 馬が! 鹿が! 象が! 虎が!」

少年「と、虎は肉食……」

少女「シャラップ!!!」

少女「普通、こんな時はこういうもんよ?」

少女「ぼくのミルクをお前に注ぎ込んでやろうか!? ──ってね」

少女「お前を蝋人形にしてやろうか! ──みたいなノリで!」

少女「知ってるでしょ? デーモン小暮」

少年「し、知らないよ……」

少女「知っとけ!」

少女「おめぇの股間についてるこのサオとタマは!」ギュッ…

少年「あうっ……!」ビクン

少女「いったいなんのためについてんだ!? いってみろ!」コリコリ…

少年「お、おしっこ……するため……」ビクッ

少女「ブブーッ! ザーメン! じゃなくて残念! ハズレ!」コリコリ…

少女「正解は子孫を残すためでしたー!」コリコリ…

少年「あっ……んっ……」ビクンッ

少女「Yo! Yo!」

少女「オスにゃチンチン! メスにゃマンマン!」

少女「オスはビンビン! メスはジュンジュン!」

少女「ベッドでアンアン! やらにゃ損損!」

少女「──ってなもんよ!」

少女「さ、残すべ!」

少年「だ、だけど……」

少女「まぁ~だ、ゴチャゴチャぬかしとんのか! ホンマ往生際が悪いやっちゃで!」

少女「もしかして、やり方が分からんのか?」

少女「よっしゃ! ならコーチしたろ!」

少女「ティーチャー!」パチンッ

教師「なんだい?」ササッ

少女「保健体育の実演、頼む!」

少女「このボーイの前で、あの新米女教師の子宮にブチ込んだれや! 大至急な!」

教師「ラジャー! 今すぐ彼女を連れてくる!」タッタッタ…

少女「授業はチンタラしとるが、こういう時だけは早いのう、あいつ」

少女「早漏のおまけつきってか!? ガッハッハッハッハ!」

少年「……」

少年「ま、待ってよ!」

少女「!」

少年「よくないよ……こういうのは」

少女「ほぉ~う? いいたいことがあるなら、いうてみぃ?」

少女「“口は災いの元”にならんとええがなぁ~?」ニヤニヤ…

少年「……」



ガキ大将「いうな! とんでもない目にあうぞ! 沈黙は金っていうだろ!」

手下「黙って従うしかないっす!」

少年「ぼくは……きみのこと、好きだよ」

少年「だから……今までイジワルしてきたんだ。きみんちの工場のことでね」

少年「きみとエッチなことしたいって気持ちもある」

少年「だけど……こんな形じゃダメなんだ! こんな形じゃ!」

少年「いうことを聞くだとか聞かせるとか、そんなんじゃなく……」

少年「お互いにじっくりと互いのことを分かり合ってから……」

少年「そういうことをしたいんだ」

少年「ダメ……かな……?」

少女「……」



新米女教師「実はアタシ、正体はサキュバスなの。全部吸い取っちゃうわね」

教師「たっすけてぇ~~~~~~!!!」

少女「ごめんね……。あたしこそ、つい変なこといっちゃって」

少年「!」

少女「あたしもあなたのこと、好き……もっとあなたのこと、知りたい!」

少女「だから……交換日記から始めよっか!」

少年「……うん!」



ガキ大将「先生ェ~! ダメだ、すっかりひからびてやがる!」

手下「だれか救急車呼んでェ!」

教師「……」ビクン…ビクン…

新米女教師「あ~オイシかった」





おわり

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